英国のEURATOM離脱に係る動向
日本原子力研究開発機構核不拡散・核セキュリティ総合支援センター政策調査室
英国のEURATOM離脱 (1/4)
この1年の動き(その1) 2019年2月1日 ONRは、合意なき離脱となった場合、核物質等のEUからの輸入の際に必要と
なるライセンスの発給に係る申請手続きを開始 2月14日 EURATOMからの離脱期限(3月29日)を控え、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略
省(BEIS)は、EURATOM離脱の手続きの進捗状況報告の中で、次のように表明- 離脱協定が採択されれば、2020年12月末までは既存のEURATOMと第三国との二国間
協定及びIAEA保障措置協定が暫定的に英国に適用されるため、その間は新たな協定等は不要となる
- 2019年1月より、ONRはEURATOMと並行して国内計量管理制度(SSAC)を運用し、保障措置情報管理報告システム(SIMRS)を通じて事業者から受けた報告により、国際約束に合致する申告書の作成が可能となった
2月22日 日英両国は日英原子力協力協定に基づく交換公文を署名。英国のEURATOM脱退後は「日英協定の対象となる核物質は、英国内において上記の二者間保障措置協定及び英国の国内保障措置制度の適用を受けること」を合意 4月10日 EU理事会は英国のEU離脱期限を最長2019年10月31日まで延長することを承認
し、この期間内に速やかに離脱協定案を英国議会にて批准するよう強く要請 4月12日 ONRは、EU及びEURATOMの全ての取極めは英国が離脱するまで有効であること、
国際保障措置義務に合致する英国の国内計量管理制度(UK SSAC)は準備が整い、現在EURATOMが実施しているものと同等の効果的な保障措置の枠組みを提供できる旨を発表
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英国のEURATOM離脱 (2/4)
この1年の動き(その2) 2019年5月14日 ONR発行の経営計画19/20(ONR Corporate Plan 19/20)において、
EURATOMから提供されているものと同等の保障措置システム構築に向けて対処し、2020年12月までに独立した英国の核物質計量管理システム(SSAC)を組み込むことを表明 6月4日 日英両国は、日英原子力協力協定の改正交渉を行い、改正の内容や今後の交渉の
進め方について協議を実施 10月17日 EUと英国は、将来の関係枠組みに関する政治宣言を発出し、原子力の平和的利
用に関するEURATOMと英国の間の広範な原子力協力を規定する協定には、保障措置、原子力安全、IAEAとの協力等、相互に有益な分野における情報交換を含むべきで、これによりEURATOMと英国及び英国内省庁との協力が可能になると表明 11月5日 英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省はEUTATOM離脱戦略を発表、その中で今
後のEURATOMとの関係については協議中と記載 2020年1月31日 英国はEU及びEURATOMから正式に離脱し、翌2月1日以降、英国は欧
州議会のメンバー国ではなくなり、政治的にはEU外の存在となった。一方、貿易や出入国管理等、経済、法律面では同年12月31日まで移行期間として暫定的に現行のEU等の規則が適用され、この間、今後の関係についてEUと追加的な取極の交渉を行うとされている
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国内保障措置体制、二国間原子力協力協定の何れもEURATOM離脱後の準備は整い、あとは、離脱に係る移行期間の終了を待っている状況である
英国のEURATOM離脱 (3/4)
英国の保障措置 英国はNPT上の核兵器国であり、包括的保障措置の締結義務はないが、ボランタリーオファ
ー協定をIAEA及びEURATOMとの三者間で締結している (INFCIRC/263)。この協定に基づいて、現在IAEAは英国内の濃縮・再処理の3施設を査察対象として指定している。 一方、英国の全ての民生用原子力施設の核物質はEURATOM保障措置の対象で、計
量報告と設計基礎情報はEURATOMを通じてIAEAに提出されている。 英国政府は2017年7月に発出した「核物質と保障措置の課題に関する方針」において、
EURATOM離脱後も「二国間原子力協力協定(後述)で規定されている保障措置義務は引続き継続する」旨を表明した。
⇒ 国際保障措置義務に合致する英国の国内計量管理制度の準備が整い、現在EURATOMが実施しているものと同等の保障措置を提供できる旨を発表
二国間原子力協力協定 英国は他国との間で原子力資機材の移転、技術供与、研究協力等を行う際、当該国との
間で二国間原子力協力協定を締結し、その規定に基づいて実施しており、その数はEU域内・域外合わせて30ヶ国以上に及んでいる。 これらの原子力協力協定の中には、英国内の平和利用の核物質に対する保障措置を
EURATOMが実施する旨を規定しているものがある。 英国がEURATOMから離脱した場合、保障措置の実施に係るEURATOMの規定の改定
が必要となる。⇒ 該当する米・豪・加との協定改定について、2018年12月19日に批准を完了 69
英国のEURATOM離脱 (4/4)
日英原子力協力協定
日英原子力協力協定(1998年10月12日発効)では、協力の条件として「NPTに関連する英国、EURATOM、IAEAの間の協定の実施(第2条)」、「英国内におけるEURATOM保障措置の適用(第4条)」が規定されるなど、英国がEURATOMの加盟国であることを前提としている。 英国のEURATOM離脱後は、日本から英国に移転された核物質等について、日英協定の
見直しとともにEURATOM保障措置に代わるIAEA保障措置の適用が必要となる。
⇒ 2019年2月22日に署名された日英協定に基づく交換公文では、EURATOM離脱後の保障措置の実施について、以下のように記載
- 英国のEURATOMからの脱退を反映するために、適当な時期に日英協定を改正する必要性を認識
- 英国/IAEA/EURATOMの間で締結している保障措置協定及び追加議定書が、英国のEURATOMからの脱退を反映させたもの(英IAEA保障措置協定)に置き換え
- EURATOMに代わって英国国内の保障措置を適用するための国内保障措置制度の整備が完了
- 英国のEURATOM脱退後は、日英協定の対象となる核物質は、英国内において上記の英IAEA保障措置協定及び英国の国内保障措置制度の適用
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