― ―403
本稿では、音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する先行研究を19編収
集し、研究目的ごとに )音楽療法、 )教育活動、 )特定の運動動作学習、 )活動水準への1 2 3 4
影響に整理し、概観した。そして、対象児者の「音の聴取による身体表出」、及び「物を用いた音表
出」に関して具体的な記述がある文献をより精査し、検討課題を明らかにすることとした。
該当文献では、「音の聴取による身体表出」として �音源となる楽器や関わり手を志向した身体
表出や�他者への伝達的行為、�喜びを表すような身体表出の活性化の 点が記されていた。また、3
「物を用いた音表出」では、�用いられた物は「振る」・「叩く」といった動きで操作可能な楽器で
ある。�音表出の前提として、音の聴取による身体表出の活発化や関わり手との関係形成がある。
�音表出の生起から終息までの過程は、呈示された音のリズムやテンポと関係があるといった 点3
が記されていた。
検討の結果、「音の聴取による身体表出」では、能動的な聴取を示す種々の行動の連続性につい
て、「物を用いた音表出」では、音表出の「探索・操作行動」と「伝達行動」への影響について充分
に検討されていないと考えた。今後、これらの点に関して検討を進める必要がある。
キーワード:重症心身障害、教育・療育的対応、音の活用、音の聴取による身体表出、物を用いた
音表出
. はじめに1
重症心身障害児(者)(以後、重症児者とする)への教育・療育的対応に際しては、対象児者個々
の障害や今現在おかれている状況を把握し支援を行うことが必要である。様々な障害をあわせもつ、
かつ障害の程度が重い重症心身障害や重度・重複障害とされる児童への教育的対応において、特に
視覚や聴覚に障害のある児童には様々な配慮を要するとされている(松田,2002)。中でも聴覚は、
重症児にとって、心理的安定、言語獲得、コミュニケーション、覚醒的行動、空間認知、音楽の享
受などに不可欠な感覚であるとされる(菅原,1991)。
一般に、我々が耳にする音は空気の振動であり、物体同士がぶつかったり、こすれたりすること
音を活用した重症心身障害児(者)への
教育・療育的対応に関する研究動向
中 村 友 亮*
川 住 隆 一**
*東北大学大学院教育学研究科博士課程後期**東北大学大学院教育学研究科教授
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
― ―404
等で生ずる。それら、物体同士が影響しあう中で生まれる音には、ヒトの動きによる音も含まれ、
我々は日常生活の中で多くの音を聴きつつ、同時に音を生み出している。
ヒトの音と関わる行動は、音の聴取と表出に二分される。聴取による行動は、いわゆる「聞き入
る」ような身体運動が静止した状態から、身体運動を活発化させた表現的な行動が含まれると考え
られる。また、音表出は、表出者自身の発声、歌唱といった行動から、物を操作して表出する行動
も含まれると考えられる。
音の聴取に関して、今井・金山(1987)は、このような聴覚活用の発達を「音が聞こえる」、「音
に注意する。音を定位する」、「音を弁別する」、「音の意味がわかる」、「音を選別する」、「フィード・
バック作用(音やことばを出す時の自己調整)」といった段階を踏むとしている。これらのような段
階を経るならば、「聞く」ことの中には、音の生起に関わる事象を目で捉えたり、それらを手で触れ
確かめたり、時には自ら音を表出することも含まれると考えられる。
また、音表出に関して、ヒトにとって原初的な行動である発声は、乳幼児期において母親との音
声相互作用を支えるものであるとされている(庭野,2005)。また、歌唱は、ヒトにとって音楽的行
動の中心であり、「歌う」ことによる遊びが児童の言葉の発達を促すとされている(梅本,1999)。
一方で、発達初期における楽器等の物を用いた音表出は、物への探索・操作行動の発達を示すもの
で、ガラガラ等の玩具によって生後 ヶ月ころに現れるとされ、乳児に外界に対して積極的に働き5
かける構えを生じさせるものとされる(津守・稲毛,1965)。また、������,������������� ���
(1934)は、「乳児行動の規準的特徴」中の「ベルの行動」において、乳幼児が楽器であるベルを用
いて音を表出する行動の他に、ベル自体への探索行動や、母親や他者へベルを渡すといった伝達的
な行動が次第に現れることを示している。よって、物を用いた音表出には、物自体への働きかけを
促す側面と、周囲に対する伝達的側面とがあるものと考えられる。
重症児者の聴覚活用は、菅原(1991)によって、主に四肢の運動機能に重篤な障害のある重症児
を対象とし、聴性行動判定を踏まえた感覚活用やコミュニケーション援助の取り組みがなされてい
る。だが、一方で「音・音楽の聴取による身体表出」や「音表出」に関する重症児者にとっての発
達的意義等に関して、未だ整理・検討が不十分な状態と考えられた。
そこで、本稿は、まず音を活用した重症児者の教育・療育的対応に関する先行研究を整理・概観
する。その上で、重症児者の「音の聴取による身体表出」、及び「音表出」に関して今後の検討課題
を示すことを目的とした。
. 先行研究の整理・概観2
本項では、音・音楽を用いた重症児者への教育・療育的対応に関する研究を概観することとする。
縦断的観察研究より、発達早期の音楽的介入は重度障害児者の音・音楽への感性を高め他者との
コミュニケーションの促進に効果があるとされている(田中・針谷,1996�)。
だが、音楽を用いることには、活動に音楽を付随させる内容から種々の楽器演奏に児を参加させ
る内容まで広い範囲の働きかけが含まれ、さらに重症児者へのはたらきかけの効果をどのような指
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
― ―405
標によって確認すればよいのかも明らかではないとされている(斉藤・鎌倉・石附・大田・高畑,
2000)。そのため、重症児者の教育・療育的対応において音・音楽を用いた取り組みには多様な形態
があり、それらの取り組みにより課題やはたらきかけを評価する方法も異なると考えられた。
以上のことより、本項においては重症児者(及び重症心身障害に相当する者)を対象とした教育・
療育的対応に関する先行研究を、研究目的を基に概観することとした。収集対象となる文献は、重
症心身障害、もしくはそれに相当する状態の者を対象としていることを診断名等により明記してい
るもの、かつ重症児者への教育・療育の促進を目的として、対象児者への働きかけに音・音楽を用
いているものとした。
収集の結果、収集文献は学会誌11誌(������������� ���������、���������� ��������
��������、��������������� �������������������������������、���������������� ���������
��������、������������� ��������、音楽療法研究、音声言語医学、作業療法、重症心身障害研
究会誌、小児の精神と神経、特殊教育学研究)と研究報告書 誌(重度・重複障害児の事例研究、2
科学研究費補助金(総合研究�)重症心身障害児の聴性行動判定の基準化と感覚活用プログラムの
作成)に渡り、全部で19編であった。収集した各文献の対象児者の人数、暦年齢や障害の状態といっ
たプロフィール、目的、評価の方法に関しては文献中より転載して����� にまとめた。1
)音楽療法1
音楽療法において、音楽は障害のある児童の一般的な成長に貢献するものとされる。音楽は広い
範囲の感覚的、情緒的、知的、社会的経験を体験させることができ、その中には音楽でなければ与
えられないものも含まれているとされる(�����,1965)。音楽的活動において、児童に提供される
楽曲の律動的旋律的構造は、児童の活動を支え、その制御に秩序を引き起こすとされる。そのこと
によって、音楽は児童にとって経験の領域となり、他者との相互伝達の手段となるとされる
(��������������,1971)。
本項 )音楽療法に該当する文献は����� に示したように 編であった。重症児者、またはそ1 1 5
れに該当する者への音楽療法による対応は、対象児者の行動の頻度等の量的測定による音楽療法の
有効性の検討(��������������,1990)を経て、対象をさらに重度な障害のある者へと広げたり
(鹿島、1998;2001)、絵画療法等の他の療法との併用(������������� �,1991)や「タッチ
ング」とされる独自の臨床技法を付加する(今村・宍戸,1999)など、様々な点で発展がみられる。
また、これらの研究における対象児者の変容は、セッション時の身体表出の出現数や継続時間が
指標として検討されているが、対象者と関わり手との関係性の発展等に関して質的に記述する方法
が主に用いられている。
��������������(1990)は、肢体不自由のある最重度精神遅滞者12名を対象として、個々の対
象者の治療目的にそって遊戯活動と音楽療法を実施し、 つの活動を比較することを通して音楽療2
法の効果を検討した。検討対象者は12名からランダムに選定した 名の対象者であり、活動実施前4
に定めた治療目的達成を示す行動の出現回数が指標とした。その結果、音楽療法が 名全員におい4
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
― ―406
て、大きな効果があったことが示されとした。
������������� �(1991)は、最重度精神遅滞であり、かつ統合失調症と考えられる一人の
女性を対象として、ダンス、絵画、音楽療法を実施した。対象者は児童期から家庭の事情や本人の
意思により教育サービスを受けておらず、重い認知障害と情緒障害を抱えている状態であった。
������������� �は、クライアントの敵意(���������)や、クライアントが他者を自身の近く
から遠ざける傾向を減じさせること、そしてクライアントとセラピストとの相互作用やクライアン
トの志向性や注意時間、グループへの参加、課題解決能力を向上させることを治療目的として各活
動を実施した。その結果、直接的に自身の感情を表出することに依然として困難はあったものの、
絵画活動等で間接的に自分の感情を表す等、セラピストとの社会的相互作用や、グループでの相互
作用の許容等の点で進歩がみられたとした。そして、音楽療法による活動では、対象者が他者に対
する恐れを示さなくなり、沈静化していく(�������)様子がみられた。そして、次第に楽器や自
らの発声によってセラピストの働きかけに応答するようになり、グループ活動にも参加するように
なったとしている。
また、���������(2003)は、音楽的相互作用(�������������� )と一般的なコミュニケー
ション発達には関連があるとの立場から、主に脳性麻痺のある重度・重複障害児10名を対象として
即興的音楽療法を行った。そして、個々の対象者のコミュニケーション発達を���������自身が
作成した��������������� ���に基づいて、10名の対象児個々のコミュニケーションの発達水準
が、対象児とセラピストとの音楽的相互作用に与える影響に関して検討した。その結果、 名の対4
象児が応答的コミュニケーション能力(������������������� ����)の水準にあり、音楽やセ
ラピストへの注意やセラピストとの相互作用が十分に持続しないものの、音楽による喜びや情動の
高まりによる身体表出や発声を用いてセラピストの働きかけに応答しているとした。また、 名の3
対象児が、主体的・非意図的コミュニケーション(������������������� �������������)の
水準にあり、セラピストとのやりとりの交代を予期・認識しており、目的的な行動を示していると
した。そして、 名の対象児は非形式的・意図的コミュニケーション(�����������������4
�������������)の水準にあり、セラピストとの音楽的相互作用に長い間持続していた。そして、
対象児が自分自身や、自分の出した音、セラピストやセラピストの出す音楽に対して注意を向けて
いることが示されたとした。これらのことや実践内容より、���������は考察において、音楽療
法の即興性とコミュニケーションに関して、記述的・質的な枠組みによる研究が求められていると
し、同時に音楽療法士の実践に関する暗黙知(����������� �)を実証し、それを一般的なコミュ
ニケーション発達のモデルに関連付けることを今後の課題とした。
鹿島(2001)は、大島分類 群に該当する重症児者を対象として集団保育における音楽療法の導1
入方法と評価に関して検討している。鹿島は、過去の保育記録、病棟職員や重症児・者の家族から
の情報収集に基づいて選定した音・音楽を呈示することで、快反応や身体反応が得られるとしてい
る。そして、これらの反応に繋がる要因として、重症児・者の体調、覚醒状態、体位や指導者のス
キンシップなどが関与するとしている。スキンシップとの関連では、今村・宍戸(1999)が、対象
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
― ―407
者との関係を良好にし、かつ不安や緊張の緩和、情動の安定といったことを企図して、通常の音楽
療法中に対象者に直接触れる「タッチング」という技法を実践、検討している。その結果、対象者
への音楽呈示による状態変化をつぶさに把握できたことが示されている。
四肢の運動機能に重篤な障害のある重症児者の場合、関わり手が呈示する音楽への応答が微弱、
かつ乏しく、関係を形成することが困難である場合がある。音楽への応答を生理的レベルのみで捉
える取り組みもあるが、このような重症児者との関係形成のためには、快・不快反応や身体各部の
緊張の緩和の有無等、反応を身体の運動レベルにて捉えることが必要となると考える。
)教育活動への活用の検討2
本項 )教育活動への活用に該当する文献は����� に示したように 編であった。 教育活動は、2 1 7
音楽療法とは異なった視点で、対象である重症児者の発達上の諸課題に対して個別に目的を設定し、
音・音楽を用いてアプローチし、検討を行ったものである。
中でも、「音楽治療教育」は、重症児者の自発的な活動を引き出し、知覚認知能力やコミュニケー
ション能力の向上を目的とした取り組みとされる(緒方・上野・松本・中村・盛本・松井・上村、
1990;緒方・上野・森永・上村,1992)。緒方ら(1990)は、大島分類1に相当する重症児への療育
に、対象者にとって受容されている聴覚的な音(音楽)と平衡感覚的な揺れの刺激を結び付け、治
療教育として実践した。そして、音楽に合わせ身体を揺らす活動や、対象者の動きに合わせた即興
演奏を行う等の複数の活動を行った結果、ゆったりとした揺れと音楽による活動では、表情が和ら
ぎ、緊張状態が緩和された等の変化がみられた。また、緒方ら(1992)は、����症候群の児童を対
象として、音楽と多様な活動経験を組み合わせることを企図して、緊張緩和及び活動への動機付け、
非言語サインへの使用や、手の使用についての活動経験の拡大、等への狙いとした音楽治療教育を
行った。その中で、楽器の生演奏を聞く活動や、大型遊具を用いた運動活動と音楽を組みあわせた
活動等を行い、取り組みから 年を経過したときには、音楽に聴き入る様子や音楽に合わせて身体2
を動かす等の変化がみられたとしている。
音楽治療教育において実施される方法は、基本的に音楽療法と相違は無い。だが、目的に応じて
セッション内容を導入から終息まで明確に構造化する点と、個々の狙いに応じた複数の音楽活動を
実施する点で従来の音楽療法の方法と異なると考えられる。取り組み後の評価においても、対象児
の変容を呈示された音楽への応答行動の有無等で厳密に検証するのではなく、対象児の情緒の安定
や関わり手との関係性の進展等、長期的な視点からの検討がなされている。
また、中山・小林(2000)は四肢体幹機能障害・精神運動発達遅滞であり、自傷行動を有してい
る重度・重複障害児を対象として、音楽導入が及ぼす適切行動、不適切行動の影響に関して検討し
た。中山・小林は、音楽活動によって自発的行動が増加することにより、競合効果で自傷行動等の
不適切行動が減少するものと仮説をたて、標的行動を人や楽器への接近行動、また音を作り出すな
どの行動と設定し音楽活動を実施した。そして、即興音楽、既成音楽を用いた介入の結果、両条件
下で適切な自発的行動が増加し、身体を動かしたり、楽器を演奏するピアニストや保母への接近行
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
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動がみられるようになったと述べられている。この中では、シングルケースデザインが組まれ、各
指導期での標的行動の出現数が指標とされ計測された。
また、川住(1997)は、ウィリアム症候群児を音や音楽への興味を糸口として、本児の「音との
係わり」、および「人との係わり」を促していった実践経過を示した。キーボードやCDプレーヤー
の音や、生活音・自然音等を対象として「音や音楽を聴く」、ハンドベルやギターや太鼓等の様々な
楽器を用いた「種々の楽器で音を出す」、身体接触等をしつつ「人の声を聴く」といった経過で取り
組みが進められた結果、本児が種々の音や音楽に耳を傾ける行為が種々の楽器の音を出すようガイ
ドすることの前提となったこと、身体接触を伴った状況では、人の声に対して音楽とは異なった聴
き方であったこと等が示された。これら諸研究は、対象児者の音に関わる活動(「音・音楽を傾聴す
る」、「物を操作して、音を表出する」、「音を仲立ちとして他者と関係をもつ」等)に応じて、対象
児者、関わり手、音の関係が形成されていったことが示されている。
また、大石・菅原(1991�)は、施設に入所している重症児者13名を対象として玩具音への聴性
行動を観察し、重症児者の聴覚学習に関して検討している。玩具音である聴覚刺激の他に、視覚刺
激と触覚刺激を組み合わせた 通りの刺激を呈示した結果、 事例において驚愕反射というような4 9
意思や感情の伴わない行動から探索などの行動へ変化があった。これらのことより、重症児者にとっ
て特定の音を認知し、それに感情的な意味を見つけるという過程には、集中的な指導が向いている
ことが考えられると述べている。
さらに、大石・菅原(1991�)は、保育所に入所している重症児 名を対象として、対象児と関1
わっている保育士の観察記録を資料とし、重症児の聴性行動を中心としたコミュニケーションの変
遷を検討し、その援助のあり方に関して考察した。この中で、眼球や頭及び顔、発声器官といった
身体部位で聴性行動が出現したとされ、このような行動の変化には保育士による対象児の行動への
肯定的な解釈をそって、意味を発見することが重要であるとしている。
また、田中・三谷(1996�)は、脳障害のある重度精神遅滞者 名を対象として、コミュニケー6
ション手段として音楽を導入し、その有用性に関して検討している。その中で、音楽療法士が、ギ
ターやピアノ、鈴等の様々な楽器を駆使して、対象者が日ごろから聞きなれているメロディーや歌
の聴取を促した。すると、 名の対象者が、言語刺激には応答しなかったものの、音楽刺激には情3
緒的な反応を示したとした。また 名では、音楽に対し身体運動、歌いだす、発声する、微笑する5
等の反応がみられたとした。これらのことから、田中らは、音楽が重度脳障害者の情緒反応を刺激
する効果的手段であること、そして発達早期からの音楽的環境での養育が重要であることを指摘し
ている。
)特定の運動動作学習への活用の検討3
本項 )特定の運動動作学習に音を活用した研究は、����� に示したように 編であった。こ3 1 3
れらの文献において、形成や学習の目標行動とされた行動は、要求行動(��������,����,�
������������� �,����)や、着席行動(����,����������������,����)、手指による操作
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
― ―409
行動(��������,����)であった。
��������,����,����������� �(1980)は最重度精神遅滞のある重複障害者16名を対象
とし、物へのリーチング、タッチングの行動の形成を目的として、強化子として音楽とジュースを
用い検討した。その結果、行動の形成は成されたものの、 つの強化子において明らかな差はみら2
れず、行動への賞賛(������)そのものが有効であったことが示唆されたとした。また、��������
(1996)は、小頭症・小人症・四肢麻痺・皮質盲のある者と、大頭症・筋緊張等のある者 名を対2
象として、スイッチへの操作的な手の動きの形成を目的とし、音楽もしくは飲料を強化子として用
いた。その結果、両強化子においてスイッチ操作行動、及び音楽もしくは飲料への要求行動が増加
したとした。
これらの研究においては、味覚刺激としての飲料と聴覚刺激としての音楽とが行動の形成への強
化子として大きな差異はないことが示されているとしている。ただ、これら 種の刺激によって強2
化された行動の質的な差異に関する記述は見られない。
)環境刺激としての活用の検討4
本項 )、音楽の聴取が重症児者の運動、生理学的状態へ及ぼす影響に関しても検討している文献4
は 編であった。行動・運動の活動水準の検討として、�������������(1982)は、四肢の動き4
が制限されている最重度精神遅滞者を対象として、同一の楽曲でボーカルの異なる曲を使用し、対
象児者の腕や足、頭部や発声の動きの発現頻度を計測した。使用した曲は、それぞれボーカル部分
が歌いかけ(����)と話しかけ(������)であった。その結果、四肢の動きが歌いかけの場合で
増加したことを示された。また、音楽により活発化した行動を質的に詳細に検討した研究として、
斉藤・鎌倉・石附・太田・高畑(2000)は運動制限の著しい重症児を対象として、音楽を用いない
場合(非音楽介入期)と用いた場合(音楽介入期)の作業療法を実施し、音楽を用いた場合で増強
される反応があるかを検討した。対象児の反応は、セッションでの対象児の様子を①活動と刺激の
内容、②はたらきかけと児の反応、③母親のコメントおよび児の反応に対する実施者の解釈の 項3
目ごとにノート記録とした。そして、ノート記録の全文を対象児の反応ごとに区切って個々をラベ
ル化し、さらにラベル化したものを分類してカテゴリーを作成し、非音楽介入期と音楽介入期のセッ
ションを比較分析した。その結果、音楽介入期では「笑顔になる」、「声を出して笑う」等といった
喜びの表現や「手を動かして要求や自己表現をする」、「物をもっている」等といった能動的な動き
の表出の増加がみられたとした。斉藤らが示した対象児者の行動カテゴリーは、音楽呈示の効果を
捉える際だけではなく、音楽に関わる活動における指標の検討に資するものであると考えられる。
また、生理学的レベルでの活動水準に音楽が及ぼす影響に関しては、矢島・岸・武田・田畑(1996)
が、対象となる重症者を、聴覚等の発達が12 ヶ月未満と、それ以上の群に分けた上で、重症者の聴
覚の発達と音楽受容に関して検討した。この中で、呈示された音楽は音程、音階、テンポ、音の強
さ、歌声の有無等で異なる様々なわらべ歌を用い、呈示前・呈示中・呈示後の 区間の平均心拍を3
もとに 検討を行った。その結果、特に聴覚等の発達が12 ヶ月以上の対象者児において「歌声の有
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
― ―410
り」で、また年齢に関係なくテンポが100拍の曲で心拍数の減速反応が顕著であったとした。これら
のことから、矢島らは、重症児者の音楽受容が、比較的速いテンポを共通のベースにして、歌声の
有無など音楽の諸要素に対する受容は聴覚的な発達に比較的沿って、しかも選択的に行われている
可能性が示唆されたとした。今後、わらべ歌以外の楽曲の呈示等、条件を変えた場面での検討が期
待される。
. 「音の聴取による身体表出」、及び「音表出」に関する検討3
本項では、先行研究の整理・概観を踏まえ、「音の聴取による身体表出」、及び「音表出」に関す
る検討項目を挙げることとする。
音の聴取に関しては、身体表出が特に乏しい四肢に重篤な運動機能障害等のある者を対象とし、
聴性行動やコミュニケーションの形成に関する検討が行われている(今村・宍戸,1999;鹿島,
1998,2001;菅原,1991)。だが、一方で上肢等の運動動作がある程度可能である者を対象とした検
討は十分に成されていないと考えた。
さらに、対象児者の「音表出」に関して、発声は音・音楽に対する応答性や、音楽療法等の諸活
動の効果を実証する指標として用いられている(�������������,1982;緒方・上野・森永・上
村,1992;������������� �,1991)。一方で「物を用いた音表出」は、対象児者の関わり手へ
の応答性の高まりとともに対象児者の楽器の使用がみられた(������������� �,1991)こと
や、楽器が関わり手と対象児との共同注意の中心となる(���������,2003)ことが述べられて
いる。だが、重症児者の物を用いた音表出は、物を用いることや他者とのコミュニケーション等に
関して十分な検討がなされていないと考えた。
以上のことを踏まえ、上記の問題に関係する文献を対象とし、さらに検討を加えることとした。
「音の聴取による身体表出」に関しては、四肢の運動がある程度可能な者を対象とし、かつ音の聴
取による身体表出に関して具体的な記述があるものとした。「物を用いた音表出」に関しては、対象
児者による物を用いた音表出に関して、具体的な記述があるものを対象とした。
その結果、これら2点に関して詳細な記述がみられた文献は、川住 (1997)、中山・小林(2000)、
緒方・上野・森永・上村(1992)斉藤・鎌倉・石附・太田・高畑(2000)、田中・三谷(1996�)の
編であった。���������(2003)や������������� �(1991)は音楽の聴取や楽器を用いた5
音楽療法を実践しているものの、結果において対象児者の身体表出に関して具体的な記述はみられ
なかったため、今回の検討対象からは除外した。
また、物を用いた音表出の中でも、関わり手のガイドによって音表出がなされた記述は、音表出
の仕方等に関わり手の意図が反映されたものである可能性があるため、今回の検討からは除外した。
以上のことより、該当する文献(川住,1997;中山ら,2000;緒方ら,1992;斉藤ら,2000;田
中ら,1996�)より、 )音・音楽聴取による身体表出と )物を用いた音表出に関する記述を抜1 2
粋し、対象児者のプロフィールを合わせて����� に示した。2
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)「音・音楽聴取による身体表出」1
各文献より、音・音楽の聴取による対象児者の身体表出の変化に関する記述を抜粋し、����� 2
に示した。ほとんどの事例において、笑顔や発声、上下肢の身体運動の活発化が記述されている。
まず、各文献にてみられた身体表出としては、音を発する物や関わり手への接近行動が挙げられ
る。例えば、川住 (1997)の事例では、��プレーヤーに接近して顔を近づけた後で声を出しなが
ら両手を振り始めたことに対して曲を流すと、「顔を上げて横にいた筆者に視線を向け、そのまま身
体を起こした姿勢」になったことが記されている。また、中山ら (2000)の事例では、太鼓に対し
て「視線を向ける」、「つかまって立とうとする」行動があったことが示されている。
関わり手への伝達的行動もみられる。斎藤ら (2000)の事例��では、行動カテゴリー「人に対
して手を伸ばして関わる」が音楽呈示中に多くみられ、事例��では行動カテゴリー「下肢を蹴る
ように動かす」が新たな要求行動として解釈されている。また、田中ら (1996�)の事例�����で
は、「嬉しそうに声を上げて笑い、手をたたき指さしして教える」、また、事例����では「車椅子に
乗ったまま職員と手を取り合い、回転したり」したことが記されている。
また、発声行動として、緒方ら(1992)の事例のように音楽を「リラックスして聴き入り、会話
のような声を発する」場合や、斎藤らの事例��、��では行動カテゴリー「声を出して笑う」こと
があったことが記されている。
以上のことより、該当文献における「音聴取による身体表出」は �音源となる物、関わり手を志
向した運動や、�他者への伝達的行動、�喜びを表すような身体表出の活性化の 点が記述されて3
いた。
)「物を用いた音表出」2
各文献より、対象児者の物を用いた音表出に関する記述を抜粋し、����� に示した。音表出に2
活用された物はベルや鈴、チャイムといった手によって把握し、振る動作を要する楽器や、太鼓の
ように叩く動作を要する楽器で、いずれも粗大な動作でも働きかけることが可能なものであった
音表出と呈示された音・音楽との関係性については、田中ら(1996�)の事例����で「(鈴を)は
じめは耳元で勝手に鳴らしていたのが、曲のリズムが次第に合うようになり「お終い」でしっかり
ととめることができるようになった」、事例����では「(楽器を)はじめは好き勝手に鳴らしてしま
うが、曲の終わりの方で合うようになる」という記述がみられた。さらに、緒方ら(1992)の事例
では、ピアノの音楽に合わせて鳴らされるベルの音を聴きながら「ベルを握った際、わずかに手指(中
指、薬指)を動かして、自ら鳴らす。」という記述がみられた。これらは、対象児者の音表出の生起
と終息に、呈示された音・音楽が関与していることを示していると言える。
また、川住 (1997)の事例では「リズミカルな曲を聴きながら声を出し両手を振って身体を動か
したり、ばちを握らせると不安定な持ち方ながら木琴を叩く」といった音楽聴取による身体表出の
活発化が音表出に結びついたことや、「(エナジーチャイム用の)棒を握らせると大人とともに振っ
たり、あるいは、自ら振って音を出す。」といった音表出による関わり手とのやりとりが示されてい
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
― ―412
る。
以上のことより、「物を用いた音表出」に関して、該当文献の記述では次の 点が記されていた。3
�用いられた物は、「振る」「叩く」といった動作により操作可能な楽器である。�音表出の前提と
して、音聴取による身体表出の活発化や関わり手との関係形成がある。�楽器を用いた音表出に伴
う運動の生起、終息の過程は、呈示されている音のリズムやテンポと関係がある。
. まとめ4
重症児者の「音の聴取による身体表出」、及び「物を用いた音表出」に関して、先行研究の中から
該当する文献を選定し、検討した。以後、これまでの検討に基づき、重症児者の )音・音楽の聴1
取による身体表出、 )物を用いた音表出を支援する上での今後の検討課題を整理することとする。2
)「音・音楽の聴取による身体表出」に関する検討課題1
文献記述からも検討したように、呈示された音・音楽を能動的に聴取することにより、対象児者
に「笑顔」や「発声」等の情動的行動や、他者や物への「手を伸ばす」等の要求行動や接近行動が
あることが示されていた。(川住,1997;中山ら,2000;緒方ら,1992;斉藤ら,2000;田中ら,
1996�)。これらのように、音を聴取することは単に聴覚刺激を受動的に受け止めるのではなく、音
を発する他者や物に対して静止して体を向けたり、音に合わせて体を動かしたりといった形で何か
しらの構えを作り出すものであると言える。さらに、それが次第に他者や物への接近行動や探索行
動といったさらに積極的・能動的な動きとして現れるものと考える。これら呈示された音・音楽の
聴取を示す行動に関しては、その行動の発現の背景にある呈示された音の特徴や呈示者の働きかけ
に焦点が当てられてきた。だが、一方で、これら能動的な聴取を示す各行動の関係性は十分に検討
されていないと考える。出現した各行動の連続性の変化を呈示された音・音楽とともに対応させて
把握することで、重症児者の呈示された音の聴取や音源となる物に対しての働きかけの変化を理解
することに繋がるものと考える。
)「物を用いた音表出」に関する検討課題2
発声が乳幼児と母子との相互関係を作り出す(庭野,2005)ように、音を表出することは本質的
に社会的な行為であると考える。そのため、発達初期において楽器等の玩具を用いた音表出は探索
や操作行為の一部だけではなく、音表出を通して自己と物、他者との関係性を意味づけする行為の
一つとしても捉えられる(村瀬,1990)。よって、物を用いて音を表出するという行動には、物への
探索・操作としての側面と、音による周囲への自己の意思の「伝達」としての側面があるものと考
える。本稿で精査した文献(川住,1997;中山ら,2000;緒方ら,1992;斉藤ら,2000;田中ら,
1996�)においても、対象児者が音を伝達的に用いていること(中山ら,2000;田中ら,1996�)が
記述されていた。
だが、物を用いて音を表出する中での「探索・操作」、及び「伝達」との関係に関しては未だ十分
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
― ―413
に検討されてないものと考える。このことは、表出した音を「聴く」ことと、「物に手指で働きかけ
る」という「聴覚」と「触覚」の関係、そして音を聴きながら物に働きかけるという「聴覚」と
「触運動」との関係について検討することでもあると考える。
これらの点に関して検討することは、四肢の運動に制限があり、また視覚等の感覚障害がある重
症児者への物や他者との関係形成を促す上で、視覚に拠る手がかりではなく、聴覚による手がかり
を用いる点で意義のあることと考える。
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― ―414
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�������������������� ����������������������������������� ���������������������� �����18(2)��139-148�
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
― ―415
Table 収集文献一覧1
評価方法目 的
対象児(者)
文献分類 主なプロフィール人数
(人数)(��)※ 1
ビデオ記録から作成したセッションの様子の質的記述を基に、セラピーの参加者間で児童のコミュニケーションの水準に関する討議。
1.音楽療法中の相互作用において、子どもの発達的コミュニケーションの水準はどのように影響を受けるのか? 2.障害に関係する、他のコミュニケーション課題や、その課題のコミュニケーションは、音楽療法中の相互作用にどのように反映されるのか?
脳性麻痺 (7)、小頭症(2)、ノ リ ー 病(1)
10(5-11)���������(2003)
1)
松井(1995)を参考にした音楽療法診断チェック・リスト「聞くこと」の項目を援用し、音楽療法実施前・後の変化を 段階で評価。6指導者間の話し合い。
大島分類 の重症児・者に対する1音楽療法の効果についての、集団保育における導入の方法、評価の視点からの整理考察
大島分類1群(20)20(不明)鹿島(2001)
セッション中の継時的な報告。���の検討。家族介護者への聞き取り調査(紙面によるものも含む)、セッション終了後の意見交換。
音楽療法に「タッチング」を付加することによる、対象児の情動の安定、及びコミュニケーションの促進
小脳失調症・てんかん・気管支喘息(1)、核黄疸・脳性マヒ・てんかん・四肢体幹機能障害(1)
2(18)今村ら(1999)
療法実施前・後で敵意を示す発語や行動・相互作用・志向性や注意時間・グループ活動への参加・課題成果でセッション中に占める継続時間の変化の割合を把握。各療法での対象者の変化を質的に記述。
重度精神遅滞であり、統合失調症である女性に対して、ダンス、動作、絵画、音楽療法を用い、その効果を検証すること。
最重度精神遅滞・統合失調症 (1)
1(51)�������������(1991)
12名の対象者全員に音楽療法と遊戯活動を実施し、ランダムに選定した 名を検討対象とした。指標4は個々の対象者で治療目的の達成を示す行動の発現数とした。
重度精神遅滞者を対象として音楽療法と遊戯活動を設定し、 つを2比較することで音楽療法の効果を検証すること。
最重度精神遅滞・身体障害(9)、最重度精神遅滞(3)
12(不明)�������� ������(1990)
即興音楽・既成音楽・音楽なしによる条件交替デザインを使用。行動カテゴリーチェックリスト(肥後、1995)を参考に行動カテゴリーを設定し測定。
音楽的介入による適切行動、不適切行動の変化の検討。既成音楽と即興音楽が自発的行動に及ぼす効果と双方の比較
四肢体幹機能障害・精神運動発達遅滞(1)
1(4)中山ら(2000)
2)
対象児の音との係わりの経過を音や音楽を聞くこと、種々の楽器で音を出すこと、人の声を聞くことの つの整理した上で、各々での3人との係わりについて検討。
��������症候群の男児における、他者との身体接触等を伴った活動による「人との係わり」、楽器の音や音楽を聴いたり、自身で種々の楽器に働きかける活動による「音との係わり」の整理・検討
��������症候群・点頭てんかん・運動発達遅滞・外斜視・聴力損失(主に右耳)(1)
1(7)川住 (1997)
活動経過を 期に分け、各課題に3対する対象児の反応を快(+)・不快(-)で整理。各経過ごとの対象児の変化の概要を質的に記述。
����症候群児への音楽治療教育:ヴァイオリン、ピアノの演奏の聴取。音楽を用いた運動活動。歌遊び。楽器、玩具等を用いた遊び、その使用。
����症候群(1)1(13)緒方ら(1992)
玩具音の聴覚刺激の他に触覚、視覚の刺激を組み合わせた4種の刺激を呈示し、各々の聴性行動を判定。
重症心身障害児の特定玩具音に対する聴性行動の変化の過程を明らかにし、重症心身障害児の聴覚学習のあり方について考察すること
精神薄弱(4)、溺水後遺症(2)、水頭症(1)、脳性まひ(6)
13(5-38)大石ら(1991�)
日常生活から採取した音等をランダムに配列したカセットテープを設置。保母の観察記録に聴性行動に関する欄を設け、記述された文章を検討対象とした。
保育所に在籍する重症心身障害児と保母との交渉記録より、聴性行動を中心としたコミュニケーションの変遷について検討し、その援助のあり方について考察すること
重度精神発達遅滞・四肢マヒ(1)
1(6)大石ら(1991�)
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
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評価方法目 的
対象児(者)
文献分類 主なプロフィール人数
(人数)(��)※ 1
実践による対象者の変化の概要を、実施した活動ごとに質的に記述して、検討の資料とした。
重症心身障害児者を対象として療育を目的とした実践として、音楽療法の導入を検討
強直性四肢麻痺・最重度精神遅滞・てんかん(1)
1(26)緒方ら(1990)
2) セッションごとに呈示した音楽、及びそれへの反応を対象者ごとに整理し、反応の変化を質的に記述し検討。
言語獲得が困難な重度脳障害者における、コミュニケーション方法としての音楽の有用性の検討
重度精神遅滞・身体障害(3)、重度精神遅滞(3)
6(40-55)田中ら(1996b)
個々の対象者の状態に合わせ設置されたスイッチを押すことで音楽、飲料が与えられる状況を設定。スイッチを用いた応答行動の頻度を指標とした。
重度重複障害者に対して、飲料と音楽を強化子とした行動形成の手続きを用いて、操作的な手の動きを形成すること。
小頭症・小人症・四肢麻痺・皮質盲・側わん(1)、大頭症・隔離症・筋緊張(1)
2(39,46) ��������(1996)
3)
着席行動を標的行動とした���デザインを設定し、ロック・ジャズ・ラップ・クラシック音楽を強化子として使用。着席の継続時間を指標とした。
重度精神遅滞であり、不適応行動を示して椅子への着席を拒否する女性を対象として、着席を促す強化子としての音楽の効果を検討すること。
最重度精神遅滞・全盲(1)
1(12)�����������(1989)
標的行動である鈴に手を伸ばし触れる行動を、強化因子を用いなかった期間(ベースライン期)、用いた期間、逆ベースラインとなる期間で出現回数を計測。
重度知的障害児における物へのリーチング及びタッチングの指導プログラムでの、強化因子としての 食 事 及 び 音 楽 の 相 対 力(������������� )の評価
最重度精神遅滞のある重複障害(16)
16(不明)�������������(1980)
セッションのノート記録を用い、対象者の反応を分類の上カテゴリーを作成し、音楽的介入期・音楽的非介入期の各カテゴリー数を整理し、相互に比較。
重症心身障害児に対して音楽を用いない場合と音楽を用いた場合の作業療法を実施し、後者において増強もしくは減少する反応があるかの把握
小頭症・痙直型脳性麻痺(1)、痙直型脳性麻痺(1)、無酸素性脳症・痙直型脳性麻痺(1)、痙直型脳性麻痺(1)
4 (5-10)斎藤ら(2000)
4)
音階・テンポ・楽器・楽器に対応した歌声(男声・女声)をランダムに組み合わせたわらべ歌の呈示前・中・後の心拍反応の様相を測定。
重症心身障害者の言語理解を含む聴覚の発達と音楽受容に関する検討
大島分類2群(1)、5群(6)、6群(3)、10群(2)、17群(2)
14(22-44)矢島ら(1996)
対象児の食事行動を��������(1981)の行動カテゴリーを用いて計測
学校の昼食時間における、重度障害児の小グループの食事経過への、構造化された音環境及び非構造化された音環境の効果を検討すること。
重度障害(6)6(6-10)�����(1987)
第 実験では音楽のボーカルが歌1いかけであるものを用い、第 実2験では話しきかせるものを用いて音楽呈示と不呈示を繰り返し実施し、(�)カセットテープもしくは関わり手への注視、(�)腕や手指の動き、(�)足の動き、(�)頭部の動き、(�)発声の行動カテゴリーで計測。
四肢の動きが可能である最重度精神遅滞児の活動水準に対しての、歌の抑揚(����������)が異なる2つの音楽の影響を実験的手法を用いて検討すること。
水頭症・最重度精神遅滞(1)、最重度精神遅滞・痙攣性麻痺・てんかん(1)、水頭症・痙攣性麻痺・てんかん(1)、最重度精神遅滞・水頭症・てんかん・四肢麻痺(1)
8(11-29)����������(1982)
※ :対象児者の暦年齢の範囲を示す。1
東北大学大学院教育学研究科研究年報 第54集・第 号(2006年)2
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Table 該当文献中の )音・音楽聴取による身体表出、 )物を用いた音表出に関する記述2 1 2
)物を用いた音の表出2 )音・音楽聴取による身体表出1
対象児(者)
文献 主なプロフィール人数
(人数)(��)
(ツリーチャイムの) ~ 本の2 3金属棒を手で握り、握って音を出すようになってきた。(エナジー・チャイムの)棒を握らせると大人と共に振ったり、あるいは、自ら振って音を出すときもあった。
「左耳を��プレーヤーに密着させて聞き始めたが、間もなく顔を上げて横にいた筆者に視線を向け、そのまま身体を起こした姿勢で聴いていた」
��������症候群・点頭てんかん・運動発達遅滞・外斜視・聴力損失(主に右耳)(1)
1(7)川住(1997)
「楽器をならしたあと、ピアニストや保母に視線を向け笑うことが頻繁にみられるようになった。」「楽器をならしながら身体を動かす」などの複合的な動作が見られるようになってきた。
「(即興的演奏条件下で)膝で立ち身体を上下させながら跳ぶように進む」、「太鼓の場面では、太鼓へ視線を向ける、「太鼓につかまって立とうとする」
四肢体幹機能障害・精神運動発達遅滞(1)
1(4)中山(2000)
「ピアノの比較的高音域での音楽に併せて鳴らされるベルの音を聴きながら、ベルを握った際、わずかに手指(中指、薬指)を動かして、自ら鳴らす。」
「ピアノの比較的高音域での音楽に併せて鳴らされるベルの音を、静かにリラックスさせて聴き入り、時には、会話のような声を発する。」
Rett症候群(1)1(13)緒方(1992)
「鈴をもって振る」(��)声を出して笑う」、「下肢を蹴るように動かす」(��)。「体を上下に動かす」(��)。「笑顔になる」、「声を出して笑う」(��)。「笑顔になる」、「人に対して手を伸ばして関わる」(��)
小頭症・痙直型脳性麻痺(1)、痙直型脳性麻痺(1)、無酸素性脳症・痙直型脳性麻痺(1)、痙直型脳性麻痺(1)
4(5-10)斎藤ら(2000)
太鼓を叩いては職員の顔をのぞきこんだりしてよく笑う(����)。(鈴を)はじめは耳元で勝手に鳴らしていたのが、曲のリズムが次第に合うようになり「お終い」でしっかりとめることができるようになった(����)。(楽器を)はじめは好き勝手に鳴らしてしまうが、曲の終わりの方で合うようになる(����)。
「自分の好きな曲や知っているときには、嬉しそうに声を上げて笑い、手をたたき指さしして教える」������)。「車椅子に乗ったまま職員と手を取り合い、回転した」(����)。「ゆったりとした動きであるが職員が隣で足を高く上げたり腕を大きく広げたりするのと同じように動く」(�����)
重度精神遅滞・身体障害(3)、重度精神遅滞(3)
6(40-55)田中ら(1996)
音を活用した重症心身障害児(者)への教育・療育的対応に関する研究動向
― ―418
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