JEITA 国際戦略・標準化セミナー1
JEITA 国際戦略・標準化セミナー
~Society5.0を創造する新たな標準化の取組み~
AIに関するルール・標準化の動向と今後の展望
三菱電機(株) 開発本部(JEITA国際標準化戦略研究会 委員)小川雅晴
2019年10月17日幕張メッセ 国際会議場 303会議室
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目次
1. Society 5.0のカギとなるAIの普及に向けた課題2. AIのルール・標準化の動向
• 一般原則(内閣府、総務省、IEEEなど)• 法的責任・契約• 品質保証(AIプロダクト品質保証コンソーシアム)
3. 今後の展望(JEITA国際標準化戦略研究会 報告書(’19/3)より)• 標準化の種類と想定されるAIの標準化領域• 分野別に今後進むAIシステムの標準化• 保険制度に必要な標準化と認証
4. まとめ
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目次
1. Society 5.0のカギとなるAIの普及に向けた課題2. AIのルール・標準化の動向
• 一般原則(内閣府、総務省、IEEEなど)• 法的責任・契約• 品質保証(AIプロダクト品質保証コンソーシアム)
3. 今後の展望(JEITA国際標準化戦略研究会 報告書(’19/3)より)• 標準化の種類と想定されるAIの標準化領域• 分野別に今後進むAIシステムの標準化• 保険制度に必要な標準化と認証
4. まとめ
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出典:Society 5.0「科学技術イノベーションが拓く新たな社会」説明資料 (内閣府)
• どこまでAIの判断を信用できるの?• もしAIの判断ミスで事故が発生したら
誰が補償するの?• 私のプライバシーは守られるの?などなど
【AI に関わる心配事】AIを普及させSociety 5.0を実現するには
心配事の解消が必須
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AIに関わる心配事の解消には、AIを採用する製品・システム・サービスの開発および利用に関する(業界、国に共通する)ルール作り・標準化が進む
• どこまでAIを信用できるの? 一般原則、品質保証ガイド• AIの判断ミスで事故が発生したら誰が補償? 法律、契約、保険制度• 私のプライバシーは守られるの? 一般原則、契約
JEITA国際標準化戦略研究会では、報告書「人工知能のルール策定動向と標準化戦略」(2019/3発行)にて、AIのルール策定動向をまとめ、AIの標準化戦略を検討したので概要を報告する。
AIの普及に必要なルール作り・標準化
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目次
1. Society 5.0のカギとなるAIの普及に向けた課題2. AIのルール・標準化の動向
• 一般原則(内閣府、総務省、IEEEなど)• 法的責任・契約• 品質保証(AIプロダクト品質保証コンソーシアム)
3. 今後の展望(JEITA国際標準化戦略研究会 報告書(’19/3)より)• 標準化の種類と想定されるAIの標準化領域• 分野別に今後進むAIシステムの標準化• 保険制度に必要な標準化と認証
4. まとめ
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AIの一般原則に関する各国の動向• 日本:「人間中心のAI社会原則」(2019/3/29、内閣府統合イノベーション戦略推進
会議)– 人間中心、教育・リテラシー、プライバシー確保、セキュリティ確保、公正競争確保、
公平性・説明責任及び透明性、イノベーションの7原則• 米国:「倫理に沿った自律/知的システムの設計指針」 (2019/3/25、IEEE)
– 人権、幸福、データ仲介、効能、透明性、アカウンタビリティ、悪用への警戒、技能• 欧州:「信頼できるAIのための倫理ガイドライン」 (2019/4/8、欧州委員会)
– 4つの倫理原則と7つの要求条件、これらを評価するリスト• 中国:「次世代AIガバナンス原則―責任あるAIの発展」 (2019/6/17、国家次世
代AIガバナンス専業委員会)– 調和・友好、公平・公正、包括・共有、プライバシー尊重、安全管理、責任の共同
担当、開放・協力、速やかなガバナンスの8つの原則• OECD(経済開発協力機構、42カ国):「AIに関するOECD原則」(2019/5/22)
– 包括的な成長、持続可能な開発、幸福を推進– 法の支配、人権、民主主義的価値観、多様性を尊重– 透明性と責任ある情報開示– ライフサイクルを通じて堅牢でゆるぎなく、かつ安全な方法で機能– 開発、導入、運用している組織および個人は、上記の原則に沿って、AIシステムが適切に機
能していることを示す説明責任を持つ
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AIの一般原則に関する日本の取り組み
基本理念
ビジョン(AI-Readyな社会)
人間中心のAI社会原則
AI開発利用原則(個別原則・指針・ガイドライン・ルール等)
内閣府「人間中心のAI社会原則」の構成
第2章
第3章
第4章7つの原則
開発者及び事業者において、「基本理念」及び「AI 社会原則」を踏まえた「AI開発利用原則」を定め、遵守するべき
社会(特に、国などの立法・行政機関)が留意すべき「AI 社会原則」
総務省 AIネットワーク社会推進会議• AI開発ガイドライン(2017)• AI利活用ガイドライン(2019)は、「OEDC原則」に反映
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AIネットワーク社会推進会議(総務省 情報通信政策研究所主催)
• 「AI開発ガイドライン」:報告書2017(2017/7/28)– 連携、透明性、制御可能性、安全、セキュリティ、プライバシー、倫理、
利用者支援、アカウンタビリティの9原則• 「AI利活用ガイドライン」:報告書2019(2019/8/9)
– 適正利用、適正学習、連携、安全、セキュリティ、プライバシー、尊厳・自律、公平性、透明性、アカウンタビリティの10原則
*アンダーラインは、開発と利活用に共通– 狙い:AIの便益の増進とリスクの抑制を図り、AIに対する信頼を醸成す
ることにより、AIの利活用や社会実装を促進する。– 内容:10原則それぞれにおける論点に関する解説。計画、AI構築、シ
ステムへの実装、デプロイ、運用・利用の各フェーズにおいて各原則・各論点を考慮すべきタイミングを提示。
JEITA 国際戦略・標準化セミナー10
AIに関する主な標準化委員会組織 概要
IEEE-SA Ethically Aligned Design (EAD)機械学習を念頭にリスクを洗い出し。一般原則等10テーマで整理され、政策提言的な要素も盛り込まれた最新版レポートを公開(2019/3)。P7000~P7014標準化プロジェクト透明性、プライバシ、差別、フェイルセーフなど機械学習の実務上の課題を対象に規格策定中。
ISO/IEC JTC 1 SC 42 Artificial IntelligenceWG1 (基盤的規格群)、WG2 (ビッグデータ)、WG3 (Trustworthiness)、WG4 (ユースケース)、WG5 (計算的アプローチと特性)とJoint WG(SC40とAIのガバナンス上の意義に関する検討)が活動中。
IEC SMB/SEG 10 (Ethics in Autonomous and AI Applications)「AIアプリケーションに関連する倫理的側面に関するIEC委員会に広く適用されるガイドラインの作成」などを目的に設置、2019/1始動。
ITU-T AIを活用しテレコム運用自動化の観点で各種活動中。例)SG13: FG-ML5G(5Gへの機械学習技術の応用検討)など。
OCEANIS AIシステム開発のための標準規格に関心を持つ機関に議論や協調の場を与える国際フォーラム。IEEE-SAが設立提案。日本規格協会(JSA)やIECは設立メンバーの一員。
JTC:Joint Technical Committee、SC:Sub Committee、SMB:標準管理評議会、SEG:システム評価グループ、SG:Study Group、FG:Focus Group、ML:Machine Learning (機械学習)
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人間の普遍的な価値
政策の自己決定とデータの仲介*
技術的信頼性
EADの一般原則
EADの柱 EADの章構成 EADの章構成(課題、勧告)一般原則
自律/知的システムにおける古典的倫理
幸福感情コンピューティング
データと個人仲介自律/知的システム
設計手法持続的開発のための自律/知的システム
自律/知的システムへの価値埋め込み
政策法律
課題
勧告
Ethically Aligned Design (EAD)の概念的枠組み – 原則から実践へ -
IEEE-Standards Association• 産業界連携プログラム「自律/知的システムの設計における倫理的配慮のグローバルイニシアティブ」を
立ち上げ(2016/4)、人類はAIや自律システムに対して優位であるべき、という視点で議論• “Ethically Aligned Design (EAD)” (倫理に沿った自律/知的システムの設計指針)の1st
Editionを公開(2019/3/25)。設計・運用時の倫理的配慮に関する課題に対する勧告を原則から導き出し、実践を促している。
P7000シリーズ
IEEE規格
人権幸福
データ仲介効能
透明性
悪用への警戒設計・運用
能力
理論的根拠
*仲介(Agency):データ元の人物に代わって実行すること
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Project # プロジェクト名称 Project承認P7000 システム設計における倫理的配慮のモデルプロセス 2016/06/30P7001 自律/知的システムの透明性 2016/12/07P7002 データプライバシーのプロセス 2016/12/07P7003 アルゴリズミックバイアス(差別) 2017/02/17P7004 子供と学生データのガバナンス 2017/03/23P7005 従業員データのガバナンス 2017/03/23P7006 パーソナルデータAIエージェント 2017/03/23P7007 倫理的ロボティクスと自律/知的システムのオントロジー 2017/05/18P7008 人を倫理的につき動かす自律/知的システム 2017/06/15P7009 自律/知的システムのフェイルセーフ設計 2017/06/15P7010 自律/知的システムにおける幸福の指標 2017/06/15P7011 ニュース源の信頼性の特定と信頼性評価 2017/12/06P7012 機械可読の個人プライバシー規約 2017/12/06P7013 自動化された顔分析の包摂とアプリケーション 2018/05/14P7014 自律/知的システムの模倣された共感における倫理的考慮事項 2019/06/13
注:プロジェクト名称はJEITA国際標準化戦略研究会による仮訳
IEEE-Standards Association• P7000シリーズで規格策定中。倫理問題、ふるまいの可視化などをカバー 2019/10/10現在
JEITA 国際戦略・標準化セミナー13
法的責任• AIシステムの動作不良によりユーザに損害を与えるケースが想定される。
– 「製造物責任法」 :AIを搭載した製品に適用されるがサービスは対象外。– 必要な法律の改正は議論中。契約・保険でカバーされるケースも。
契約• 「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」(経産省、2018/6/15)
– AI(学習済みモデル)の開発契約と利用契約のポイントと留意点。– AIの開発プロセスの段階ごとに、契約の論点とオプションを提示(下図)。
モデル契約書を掲載。①アセスメント ②PoC ③開発 ④追加学習
秘密保持契約書 導入検証契約書 ソフトウェア開発契約書
AIの開発プロセスと契約
JEITA 国際戦略・標準化セミナー14
品質保証AIプロダクト品質保証(QA4AI)コンソーシアム(国内の専門家39名)が「AIプロダクト品質保証ガイドライン」を発行(2019/5)• AIプロダクトの品質保証に関する共通指針• 5つの分類軸における指針を提示、分類軸毎のチェックリスト案あり
• 「生成系システム(画像等)」、「スマートスピーカー」、「産業用プロセス」、「自動運転」のためのガイドラインにブレークダウン
• 本ガイドラインは今後更新される見込み
分類軸 指針の概要Data Integrity データの質と量の確保や、学習用/検証用データの独立性などModel Robustness 学習済モデルの精度と頑健性、デグレード防止などSystem Quality AIプロダクト全体での品質の確保 (意味ある単位での評価など)Process Agility 開発プロセスの機動性 (開発が臨機応変か、自動化されているかなど)Customer Expectation
顧客との関係性 (顧客のAIプロダクトへの期待度や特性理解への配慮など)
JEITA 国際戦略・標準化セミナー15
目次
1. Society 5.0のカギとなるAIの普及に向けた課題2. AIのルール・標準化の動向
• 一般原則(内閣府、総務省、IEEEなど)• 法的責任・契約• 品質保証(AIプロダクト品質保証コンソーシアム)
3. 今後の展望(JEITA国際標準化戦略研究会 報告書(’19/3)より)• 標準化の種類と想定されるAIの標準化領域• 分野別に今後進むAIシステムの標準化• 保険制度に必要な標準化と認証
4. まとめ
JEITA 国際戦略・標準化セミナー16
標準化の主な種類と狙い
A社システム
B社システム
C社システム 製品
用語
【用語規格】 【インターフェース規格】 【試験規格】 【マネジメント
システム規格】
[狙い] 共通理解
通信プロトコル、データ形式 試験方法 設計/製造プロセスの管理手法
Interoperability(相互接続性)による多様な市場要求へのソリューション提供
品質・性能の公正な比較
システムの品質・安全性向上
Plan
Do
Check
Action
[例] スマートグリッド、工場内ネットワーク
半導体の信頼性、磁性材料の特性
品質マネジメント、情報セキュリティ
[種類]
JEITA 国際戦略・標準化セミナー17
想定されるAIの標準化領域
赤字部分が標準化領域
アルゴリズム+DNN
AI用語
AI構成設計段階 AI学習段階(Deep Learning)
アルゴリズム+DNN
学習データの形式
Plan
Do
Check
Action
DNN: Deep Neural Network
開発指針と管理手法・透明性・安全性・公正性・倫理・…
AI性能評価方法ISO/IEC JTC 1
SC 42
IEEE-SA、AIネットワーク社会推進会議など
他のAIシステム
情報交換のためのプロトコル・情報形式
JEITA 国際戦略・標準化セミナー18
AIネットワーク化が進んだIoT/AIによる社会のイメージ
分野別に今後進むAIシステムの標準化
人に寄り添ったサービスの提供
生産・製造システムの自動化
自動走行システムの実現
インフラ管理の高度化
AI
AI
AI
AI
AI
【製造プロセス】
【スマートホーム】
【モビリティ】
【インフラ】
AI
総務省 情報通信審議会 情報通信技術分科会 技術戦略委員会(第7回)IoT/AIを取り巻く最近の動向について(三菱総研2015/12/14)をもとに作成
JEITA 国際戦略・標準化セミナー19
AI AI AI AI AI AI AI
AI AIAI
コア・ネットワークAI AI AI AI
AI AI AI AI
個人 / 組織 / モノ / コト / 情報
デバイス
エッジサーバ
コアネットワーク
クラウドサーバ
スマートホーム インフラ 製造プロセス モビリティ
:AIシステム連携のための通信プロトコル・データ形式(分野別の規格)総務省 AIネットワーク化検討会議 中間報告書 (2016/4/15)をもとにJEITA国際標準化戦略研究会が作成
各レイヤにAIが浸透していく
車
交差点
交通管制センター
AIネットワーク化のアーキテクチャと標準化(相互運用性)
JEITA 国際戦略・標準化セミナー20
AIネットワーク化の事例「自動走行システムでの車の合流」における標準化の案
産業競争力懇談会 2016年度 プロジェクト 最終報告「人工知能間の交渉・協調・連携による社会の超スマート化」 (2017/2/15)をもとにJEITA国際標準化戦略研究会が作成
互いの経路計画の交換と、その承認により、「譲り合い」が生まれ、スムーズな合流を実現
AI②
AI①
AI同士の通信手順(プロトコル)の例・AI①AI②:合流と経路計画を通知・AI②AI①:承認と自車の減速を通知
交換情報の例・自車のID・走行経路の計画
標準化すべき項目・合流時の通信手順(プロトコル)・走行経路の表現形式
JEITA 国際戦略・標準化セミナー21
出典:損保ジャパン日本興亜News Release (2017年8月23日)
①②
③
④
⑤
【参考】ロボット認証保険制度のイメージ
損害を補償する保険制度に必要な標準化と認証• 従来より第三者認証機関によって一定の品質が保証された製品やサービス
が損害保険の対象となっている。AIシステムやAIサービスも同様。• 認証試験の手順や合否の基準を標準化しておく必要あり。
JQA:(一財)日本品質保証機構JET:
(一財)電気安全環境研究所
第三者認証機関
JEITA 国際戦略・標準化セミナー22
まとめ• AIの利活用や社会実装を促進するため、AIの便益の増進とリスク
の抑制を図る「一般原則」(安全、セキュリティ、プライバシー、透明性、アカウンタビリティなど)が各国政府や民間団体から発表されている。
• 総務省AIネットワーク社会推進会議が、「AI開発ガイドライン」、「AI利活用ガイドライン」を策定。開発者及び事業者が「AI開発利用原則」を定め、遵守することが求められている。
• AI搭載製品の品質保証に関するガイドライン作りが進む。• 今後は、AIシステム同士が高度な情報交換を行うための通信プロトコルやデータ形式の標準化が利用分野ごとに進む見込み。
• AIシステムやAIサービスの不具合によって発生する損害を補償する保険制度の普及には、性能を試験する方法・手順・合否基準を標準化し、第三者認証機関による品質の保証が必要。
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