23
3.3 相模川を流下する土砂の構成 3.3.1 洪水時の細粒土砂(砂・シルト)の移動に関する調査
相模川における洪水時の砂・シルト等の細粒土砂(浮遊砂・ウオッシュロード)の移動実態
把握を目的として、洪水時河川水を採水し、河川水中の土砂移動量および粒度分布を分析した。
(1)採水場所の選定 河川水の採水地点の選定は、置き砂の上下流で計測することとし、諏訪森下橋(33.2k)、相模
大堰(12.0k)、および置き砂上下流低水河岸(20.8k 左岸、19.0k 左岸、17.0k 右岸)を選定
した。また、河川水を採水する橋梁の選定は安全性を考慮し、水面から橋梁までの差が小さい
橋梁を選定した。
(2)採水方法
1)相模大堰(12.0k)、諏訪森下橋(33.2k) ・ 橋梁上より下流側に向かって河川水採水器(FL-SS)を投下し、水中採水した。 ・ 採水深度は以下の通りとした(図 3-26 参照)。
相模大堰 :河床から 1m 及び 3m 地点 諏訪森下橋:河床から 2m 地点
・ 同時に布バケツによる表層採水を行った。 (橋梁からの河川水採水器による採水は各橋梁 2 深度を予定していたが、諏訪森下橋は流れが急であり、深い深度
の計測は安全性の面から行っていない)
2)置き砂試験施工地点周辺河岸:20.8k 左岸、19.0k左岸、17.0k右岸 ・ 低水河岸沿いより布バケツによる表層採水を行った。
相模川 12.0k
6789
101112131415161718192021
-50 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500m
T.P
.m
Q=200
Q=400
Q=600
Q=800Q=1000
Q=1200
H.W.L
相模川 33.2k
62636465666768697071727374757677
-20 0 20 40 60 80 100 120 140 160m
T.P
.m
Q=200Q=400Q=600Q=800Q=1000Q=1200H.W.L
図 3-26 採水地点横断図(左:相模大堰、右:諏訪森下橋)
(3)調査期間および採水間隔 ・ 平成 18 年 10 月 6 日 10:30~平成 18 年 10 月 7 日 14:00 ・ 採水作業時間は、採水作業開始より約 24 時間とし、概ね 2 時間毎に採水した(計 13 回)
図 3-27 河川水採水器による採水イメージ図(表面流速 0~2m/s 程度)
図 3-28 洪水時流砂量調査地点位置図
目印
蓋閉塞用ワイヤー
(手動でフリー状態) 固定用ワイヤー
人力操作(2 名で実施)
河床より 1m
河床より 3m
河床より 2m
17.0k 右岸(河岸から)
19.4k 置き砂地点 右岸
19.0k 左岸(河岸から)
20.8k 左岸(河岸から)
33.2k 諏訪森下橋(橋梁上から)
12.0k 相模大堰(橋梁上から)
24
(4)調査結果
1)洪水中の細粒土砂の移動量(土砂移動濃度) 洪水流量と河川水中の土砂濃度の関係を図 3-29 に整理した結果、次の特徴が確認できる。
A)洪水流量と土砂濃度の関係 ・ 洪水流量と土砂濃度に大凡の相関性が見られる箇所
諏訪森下橋:(●・◆)、19.0k(●)、17.0k(●) ・ 洪水初期の土砂濃度が高く、その後徐々に土砂濃度が低下してゆく箇所
20.8k(●)、相模大堰地点(●・◆・■) これらの観測点は堰下流に位置するため、堰の湛水域に堆積した細粒土砂の巻き上
げによる一時的な土砂濃度の増加の影響を受けているものと考えられる。
B)河川水中土砂の鉛直濃度分布 ・ 諏訪森下橋および相模大堰では鉛直方向の河川水採取を行ったが、土砂濃度の鉛直分布
の違いは見られなかった。 ・ その理由として、採水地点が相模大堰管理橋より 12m 以下の地点にあり河川水採水器
(FL-SS)のコントロールが困難であったこと、堰湛水域に堆積していた細粒土砂の巻
き上げが卓越したために安定した鉛直土砂濃度分布が得られなかったことが考えられる。
C)置き砂土砂流下による影響 置き砂土砂流下の影響は、置き砂土砂中の細粒土砂成分が少ないこと、磯部頭首工堆積土砂
の巻き上げの影響から、その影響を確認できなかった。 城山ダム放流量、厚木流量H18 10/6 1時~10/8 0時
0
200
400
600
800
1,000
1,200
0:0
0
2:0
0
4:0
0
6:0
0
8:0
0
10:0
0
12:0
0
14:0
0
16:0
0
18:0
0
20:0
0
22:0
0
0:0
0
2:0
0
4:0
0
6:0
0
8:0
0
10:0
0
12:0
0
14:0
0
16:0
0
18:0
0
20:0
0
22:0
0
0:0
0
流量
(m3/s)
城山ダム放流量
厚木地点流量
10/6 10/7
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
SS(m
g/l)
表層
上層
6日 7日
城山ダム放流量・相模大堰流量 諏訪森下橋地点土砂濃度
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:00
12:00
14:00
16:00
18:00
20:00
22:00
0:00
SS(m
g/l)
20.8k左岸:表層
19.0k左岸:表層
17.0k右岸:表層
6日 7日
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
110
120
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:0
0
12:0
0
14:0
0
16:0
0
18:0
0
20:0
0
22:0
0
0:00
2:00
4:00
6:00
8:00
10:0
0
12:0
0
14:0
0
16:0
0
18:0
0
20:0
0
22:0
0
0:00
SS(m
g/l)
表層
上層
下層
6日 7日
置き砂地点周辺土砂濃度 相模大堰地点土砂濃度
図 3-29 H18.10.6~7 洪水時の土砂濃度経時変化
2)洪水流量と土砂輸送量の関係 ・ 今回出水での河川流量と土砂移動量の関係を整理した結果、相模川の土砂移動量は、他河
川での実測データに対して小さいことが確認できる。
観測浮遊砂量と流量の関係
0.00001
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10
10 100 1000 10000流量Q (m3/s)
実測
浮遊
量Q
s( m
3/s)
● 矢作川 日名橋 × 吉野川 中央橋 △ 木津川 飯岡 ○ 長良川 墨俣 □ 成願寺川 今川橋 △ 旧信濃川 帝石橋 ◆ 天塩川 39k ◇ 天塩川 49k ○ 豊川放水路 ━ 白川 12.2k ━ 白川 7.0k □ 筑後川 大城橋 □ 筑後川 小野橋 ○ 仁淀川 * 貫志川 + 矢場川
観測地点流量と土砂移動量の関係 諏訪森下橋
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10 100 1000 10000
河川流量(m3/s)
土砂
移動
量(m
3/s)
実河川実測下限値(S51)
実河川実測上限値(S51)
表層
上層
観測地点流量と土砂移動量の関係 置き砂周辺
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10 100 1000 10000
河川流量(m3/s)
土砂
移動
量(m
3/s)
実河川実測下限値(S51)
実河川実測上限値(S51)20.8k左岸:表層
19.0k左岸:表層
17.0k右岸:表層
観測地点流量と土砂移動量の関係 相模大堰
0.0001
0.001
0.01
0.1
1
10 100 1000 10000
河川流量(m3/s)
土砂
移動
量(m
3/s)
実河川実測下限値(S51)
実河川実測上限値(S51)表層
上層
下層
図 3-30 洪水時土砂移動量実測値
城山ダム放流量ピーク
10/6 17:00
城山ダム放流量ピーク
10/6 17:00
厚木地点流量ピーク
10/6 19:00
全国の河川にて観測された浮遊砂・ウォッシュロードの輸送土砂量の一般的な範囲※
諏訪森下橋
置き砂周辺 相模大堰
出典:水理公式集[平成 11 年度版]、p170~171、(社)土木学会
25
洪水時に流下する土砂の粒度分布
洪水時の河川水中に含まれる土砂の粒度分布(図 3-33 参照)より、洪水時に流下する細粒
土砂の実態について、以下の特徴が確認できる。
A)土砂の粒度分布 ・ 今回出水時における河川水中を浮遊砂・ウオッシュロードとして流下する土砂の粒径は
0.005~2mm 程度の範囲であった。その内訳は次の通りである。 最も含有率の多い粒径集団は 0.2mm 程度であった。 シルト分(0.005~0.075mm)成分の含有率は約 40%~50%程度であった。 粘土分(0.005mm 以下)は殆ど含まれていなかった。
・ 土砂還元の観点からみると、海浜の回復のために必要な粒径成分(0.2~1mm)の含有率は
約 30%程度であった。 表 3-18 今回出水での河川水中の浮遊砂・ウオッシュロードの粒径成分の割合
粒径区分(mm)
12.0k相模大堰
17.0k 19.0k 20.8k 33.2k諏訪森下橋
平均値 備考
1.0~70 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 0.0% 河道を構成する成分
0.2~1.0 24.6% 29.1% 24.6% 26.3% 32.2% 27.4% 海浜を構成する成分
0.2以下 75.5% 70.9% 75.8% 73.5% 67.8% 72.7%
3)粒度分布毎の土砂流下量の把握 ・ 今回出水にて海域へ供給される細粒土砂量を相模大堰地点の土砂移動量・流下土砂の粒度
分布より予測した結果、今回出水での海域への供給土砂量は約 3,200m3 程度、このうち
海浜の維持に寄与する 0.2~1mm 成分は約 800m3程度と見積もられた※。(図 3-31 参照) ・ なお、置き砂中の 0.2mm 以下成分の流下量は 10m3(9 ページ表 3-5 参照)であり、流
下した細粒分総量に対し、ほとんど無視できる程度の量であった。
3,195
0794
2,401
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
0.2mm以下 0.2~1mm 1mm以上 合計粒径区分(mm)
流下
土砂
量(m
3)
※ここでの土砂移動量は、寒川堰や河口部での堆積を考慮していないものである
図 3-31 H18.10.6 出水での河口部への供給土砂量推定値
細砂 粗砂 細礫 中礫 粗礫
土質材料 岩石質材料礫砂
シルト粘土 コブル ポルダー
0.005 0.074 202.0 75 3000.42 5.0 (mm)
図 3-32 土粒子の粒径の工学的分類(「日本統一土質分類法」より)
相模川 諏訪森下橋表層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 諏訪森下橋上層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 置き砂周辺20.8k左岸表層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 置き砂周辺19.0k左岸表層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 置き砂周辺17.0k右岸表層図表層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 相模大堰表層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 相模大堰上層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
相模川 相模大堰下層 浮遊砂濃度分布
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
0.001 0.01 0.1 1 10 mm
粒度
の割
合%
平均
図 3-33 河川水中の土砂粒度分布
26
3.3.2 相模川の河床材料と河川水中の土砂粒径からみた土砂移動特性 相模川下流域(城山ダム下流)における河床材料および洪水時の河川水中に含まれる土砂の
粒度分布の特徴から、相模川の土砂動態として以下のとおり推定される。 ・ 相模川下流域の河床材料中にシルト・粘土分(0.075mm 以下の粒径成分)が含まれてい
ないが、洪水時の河川水には砂・シルト分(0.050~1.0mm)の土砂が浮遊状態で流下し
ている。 ・ これらの土砂は、相模川の低水路河床に含まれないことから、流域の山腹表層により供
給されたものと考えられる。
今回の洪水時浮遊砂観測結果より、相模川では置き砂試験施工とは関係なく、通常の出水時に
もシルト分・砂分等の細粒土砂が流下していることが確認された。
H18年度 置き砂試験施工 構成材料粒度分布
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
%
上流側置き砂(上流寄り)
上流側置き砂(下流寄り)
下流側置き砂(中間)
平均
相模川 相模大堰(12.0k)表層 洪水時浮遊砂粒径加積曲線
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)6日 15:006日 17:006日 19:006日 21:007日 1:007日 3:007日 5:007日 7:007日 11:007日 14:00
相模川10.0k地点 河床材料調査結果(経年変化)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)
S47
H12地中
H12表層
H15
相模川 10k 付近
相模川 20k 付近
相模川 20.8k地点表層 洪水時浮遊砂粒径加積曲線
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)
6日 15:006日 17:006日 19:006日 21:007日 1:007日 3:007日 5:007日 7:007日 11:007日 14:00
相模川19.4k地点 河床材料調査結果(経年変化)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)
S47(19.0k)H12地中H12表層H15(表層)H17-1H17-2H17-3
相模川 34k 付近
相模川 諏訪森下橋(33.2k)表層 洪水時浮遊砂粒径加積曲線
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)
6日 15:006日 17:006日 19:006日 21:007日 1:007日 3:007日 5:007日 7:007日 11:007日 14:00
相模川34.0k地点 河床材料調査結果(経年変化)
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0.001 0.01 0.1 1 10 100 1000粒径(mm)
通過
重量
百分
率(%
)
S47H12地中
H12表層H17-1H17-2H17-3
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