Zero to One 読書会資料

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ZERO TO ONE 読書会資料 2015/09/05 (Sat.) @windfall_j

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ZERO TO

ONE

読書会資料

2015/09/05 (Sat.)@windfall_j

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目次• 鳥瞰図による本書の要約

• 鳥瞰図の補足

• 各章の要約と意見交換

• Contrarian Questionsに対する各自の答え

• なぜ英語版も読むべきか

• 参考文献の紹介

15分

60分

15分

10分

5分 後片付け 15分

Page 3: Zero to One 読書会資料

・・・

・・・

2014年の上梓時点 ={ ○ , △ , △ , … }“developed / Best Practice” “developing”

◯と△は「国、または商品」の質を表す

[用語名 <章番号> ] [用語の書籍内での定義または特徴付け]

コピーN

コピー2

[ 逆説的な質問 (Contrarian Question) <1,3>][ 「賛成する人が殆どいない、大切な真実は何だろう?」

「誰も築いていない、価値ある企業は何だろう?」 ]

答え1

答え3

答えN

コピー1

Singularity

[完全競争<3>] [利益0に向かう 為、善を考える 余裕が無い状態]

答え2

その企業は実現不可能(impossible)か? <8>

New [technology] による未来 ={ ◎ , ◎ , ◎ , … }自動的には実現しない<1> .

より平和で「一層の豊かさgreater abundance」のある世界 . 明確な楽観主義<6> .

[to do more with lessという奇跡を起こすもの]

Takeoff

[ スタートアップ ] [ 未来を変える上で適正サイズ⇔効率(インパクトとスピード)最大の人間集団。このサイズを超えると既得権益への動機で変更困難に。行き過ぎていないカルトぐらいの強い仲間意識を持つ<10> ]

[ 独占企業の特徴<5> ]プロプライエタリな技術を持つ / ネットワーク効果 / 規模の経済 / ブランド価値 / 小さく始めて独占している / 破壊しない

環境バブル期のスタートアップが答えていなかった、 [ 全ビジネスが答えを出すべき7つの質問<13> ]

1. エンジニアリング:段階的な改善ではなくブレークスルーとなる技術を開発できるだろうか?

2. タイミング:このビジネスを始めるのに今が適切なタイミングか?

3. 独占:大きなシェアがとれる小さな市場から始めているか? 4. 人材:正しいチーム作りができているか? 5. 販売:プロダクトを作るだけでなく、届ける方法があるか? 6. 永続性:この先10年、20年と

生き残れるポジショニングができているか? 7. 隠れた真実:他社が気づいていない、

独自のチャンスを見つけているか?

ZERO TO ONE鳥瞰的要約

[独占<3>] [他社とは替えがきかないほどそのビジネスに優れているため価格決定力を持ち、指数的な利益<7>を生み出せる状態]

{ ○ , ○ , ○ , … }= [Globalization]による未来 燃料/食糧/環境問題により持続困難<1> 均質な個人で満たされた、ゼロサムゲームの世界 曖昧な楽観/悲観主義、明確な悲観主義<6> Plateau

[adding more of sth familiar]

・・・

・・・

×98 - 00年

メキシコへの雇用流出

X = ネット

ドットコムバブル

ペイパル生存 <2>

06 − 08年 スモッグで覆わ

れた北京

X = クリーンテクノロジー

環境バブル テスラ生存 <13>×

次二来ルノハ ダ !

未来ハ デ変ワルンダ!X

最終変更:2015/09/05 @windfall_j

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前ページの図に関する補足• 見通しを良くするため、いくつかの情報(たとえば国と商品に関するold⇔newの違いなど)を故意に捨象し

て描いている。そのため、書籍より種々の概念の説明は不正確になっている。 • 1960年に人々が思い描いたようなnew technologyに溢れた未来は自動的にはやってこなかったので、そ

のような未来に向かうための→の数、すなわちスタートアップの数を増やす必要がある。ティールが本を上梓したのはそれが理由[1]。

• 世界を”developed” (発展済み)と”developing”に分ける考え方は近年のものだが、実際にはdevelopedな国であってもテクノロジーの進化は終わっていない。「そういった考え方には、意識して反対していかなければならない」[2]。

• 0 to 1した→はどれも不揃いであり、コピー出来ない。「次のザッカーバーグはFacebookを作らない」。一方で1 to n は、「答え1」を出した矢印と同一。

• [ 逆説的な質問 ]は採用試験版とビジネス版の二つがあるが、どちらも、目の前にあるのに誰も気づいていないタイプの秘密について考えを巡らせ、イノベーションを誘発させる思考実験[1]。

• 独占は定義(日本語版書籍p.45、原書版pp.24-25)上、類似商品を出す他の会社が存在しても(つまり寡占でも)、圧倒的優位性を築けていれば問題がない。実際、作中に出てくる検索エンジンの例では、MicrosoftとYahoo!がそれぞれ市場シェア19%と10%を占める”competitors”として紹介されている。

• 矢印と矢印の間は空隙がない方が良いが、「独占」がそれぞれの矢印ごとに存在していることを表現する方を優先した。

• ティールの定義では「スタートアップ」はIT企業に限られていない。あくまで「テクノロジー」= “to do more with less” (原書版p.2、日本語版p.20では「より少ない資源でより多くの成果を」と踏み込んでる)

• グローバリゼーションによる未来とテクノロジーによる未来は、片方だけ起こることも、両方共起こる/起こらないこともあるため、排他的ではない。単にティールが嫌うのは持続不可能だから。

[1] http://www.1101.com/peter_thiel/2015-04-27.html [2] http://www.1101.com/peter_thiel/2015-04-24.html

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各章と図との対応関係はじめに テクノロジーの定義

第1章「僕たちは未来を創ることができるか」 現在 / 未来の定義 / 2つの未来 / スタートアップの定義と→ 「違う」を集合の元のような表記で表した

第2章「1999年のお祭り騒ぎ」 先のない矢印 (倒産したスタートアップを暗示)

第3章「幸福な企業はみなそれぞれに違う」 独占の特徴付け / 矢印のテクスチャ / 長さ 長さも考慮したのは、eBayのような「生きているが小さすぎる独占」を表現するため。

第4章「イデオロギーとしての競争」 対応物なし

第5章「終盤を制する」 独占の特徴 / 小さく始めること (長期独占する)new ≠ (短期独占する) firstを主張している点で大事な章

第6章「人生は宝クジじゃない」 曖昧/明確な楽観/悲観主義スタートアップは明確な楽観主義か曖昧な楽観主義に基づく(後者は失敗する)

第7章「カネの流れを追え」 指数的な利益 この章をよく読むと、ティールは必ずしも起業を薦めてはいないと分かる

第8章「隠れた真実」 [逆説的な質問] に対する実用不可能性の疑問

第9章「ティールの法則」 対応物なし「創業を引き伸ばす」話は、一つの→の形を変形させるということなので、図示が高度のため省略した

第10章「マフィアの力学」 スタートアップの定義内で示唆マフィア≒この章で述べられている「マイルドなカルト」

第11章「それを作れば、みんなやってくる?」 スタートアップの定義内で示唆

第12章「人間と機械」 対応物なし

第13章「エネルギー2.0」 先のない矢印 (倒産したスタートアップを暗示)

第14章「創業者のパラドックス」 対応物なし

おわりに:停滞かシンギュラリティか Singularityの★マーク / プラトー / テイクオフの2曲線

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第1章「僕たちは未来を創ることができるか」(“The Challenge of The Future”)

要約: 未来を「今後訪れる時間」という広義でなく「今とは違う世界」という狭義で捉えると、その未来は新しい何かを生み出す「テクノロジー」と現在のベストプラクティスを増やす「グローバリゼーション」のどちらか、または両方によって変わるのだと考えられる。「テクノロジー」による発展はもう終えたと勘違いしている先進国の人々は、グローバリゼーションによって未来が定まると思っているが、環境/燃料/食料問題を考えると、テクノロジーによってまだまだ新しい何かが生まれなければ、21世紀は過去よりも平和で繁栄した時代にはならない。そしてそのようなテクノロジーを最速かつ最も効率よく生み出せるのは、スタートアップという小さな人間集団である。

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第2章「1999年のお祭り騒ぎ」(“Party Like It’s 1999”)

• 逆説的な質問とは「賛成する人がほとんどいない、大切な真実は何か?」というもの

• 原題は「1999年みたいにパーティしようぜ」である(partyは、章末のプリンスの歌詞からして動詞)。すなわち、ティールは個人的に、失敗だったバブル当時の熱狂はもうあってはならない、という主張も間違っていると考えている。だが邦題がこう訳したということは、「1999年のお祭り騒ぎから、その時代時代の大衆が信じることは間違っているということを整理しよう」という意図ではないか

• 「New companyを作る前段階として、new thinkingを頭の中に作る必要がある」が主張である

逆説的な質問に答える前段階として、大半が賛成することを整理してみよう。バブルのときには、今見るとバカみたいな幻想に大半が賛成している。バブルのときに信じていたことは間違っている。だがそれよりも重要なこととして、バブルというあまりにも巨大な失敗で反射的に学んだ教訓も、間違っている。大衆の幻想の逆を取っても真は保証されない。整理では答え自体が見つかるわけではないのだ。答えはあくまでも、自分の頭から生み出すしかない。

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第3章「幸福な企業はみなそれぞれに違う」“All Happy Companies Are Different”

• ここで独占とは、競合他社が追いつけないほどの圧倒的優位性が商品にあることを指すため、一般的な用法での「寡占」の状態を含む。これに限らずティールの二項対立は極端である

逆説的な質問をビジネスに当てはめてみると「独占利益を得られる企業は何か?」となる。変な話だが、利益追求が全てにならないために実質的な独占、すなわち競争にならないほどの圧倒的優位性の構築が必要である。完全競争下では容易に損失が出るため日銭を稼ぐことに精一杯で、明るい未来の設計など考えている余裕がない。一方で独占企業はGoogleのように競争のフリだけで済む。頭では長期計画の立案と倫理的な検討、裏では高額な研究開発を行う余裕があるため、世界をよい方向に変えるテクノロジーを次々と生み出す可能性が高い。顧客が高い値段を払っても欲しいと思う新商品を生み出している独占企業について、彼らが手にする利益は社会に一層の豊かさを与えた見返りとして認められるべきだろう。つまり独占は企業の成功度合いを決めており、成功企業の必要条件になっている。

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第4章「イデオロギーとしての競争」 “The Ideology of Competition”

• 8章でも「企業収益を定量分析すれば、競争によって収益が失われることがわかるはずだ」と語られる

大半が賛成することを2章で整理したが、資本主義に生きる我々の誰もが誤って認めている、「資本主義社会では競争し続けることで成功できる」というドグマについても整理しておくべきである。実際には資本主義と競争は正反対なのだ。資本主義は資本の蓄積を前提にして成り立つのに、完全競争下では利益がゼロに向かう。だがそれでも、人は競争を健全だと思い込んでいる。なぜか?と言えば、我々は教育される中でそのドグマを説かれ続け、学歴競争に勝ち進むことでアイデンティティを確立し、身体化し、潜在意識クラスの自然さでドグマが説くところを実践するからだ。ビジネスで、このような歪んだ内面に囚われて競合他社と不必要な競争を始めると最悪、倒産に陥る。競争は進んで実践すべき立派な行いではなく、必要最小限行えばいいことだと納得するだけで、自分の過去から学んだ誤った教訓、すなわち誰もが賛成する幻想について、整理できたことになる。そのクリアになった頭で、もう少し深く考えてみよう。「独占利益を得られる成功企業はどうすれば創れるのか?」

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4章以下は時間の都合上扱いませんでした

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なぜ英語版も読むべきか

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原書版は形容詞など単語レベルで話が密接に結合されている(例1:new)

• 上表からは「0 to 1はnewなものを生み出すこと」→「過去に起きてきた発展もnewなものによる」→「バブルで期待されたのもnew」→「PayPalがやろうとしたのもnew」→「newによる独占はよいことだ」/「だけどnewなだけでは失敗することもある」/「newなものが作りづらい分野が存在している(創薬)」という、章を越えて存在する理路の流れが明確に読み取れる

役割 原書版 日本語版

後の議論で用いる二項対立の設定

(new ⇔ old)“Vertical or intensive progress means doing new things — going from

0 to 1.”「もうひとつの垂直的進歩、または集中的進歩とは、新しい何かを行

うこと、つまりゼロから1を生み出すことだ」p.24

過去にあったnewの具体例 “They created new sources of wealth only rarely, …” 「富の源泉はめったに生み出されず、」p.27

( 原文に new があったことが読み取れない! )

newに関わる概念の紹介 “New technology tends to come from new ventures — startups.” 「新しいテクノロジーを生み出すのは、だいたいベンチャー企業、つ

まりスタートアップだ。」 p.28 (newが1つ消えている)歴史的な用語とのすり合わせ(二項対立が一致すると暗示)

“By indirect proof, the New Economy of the internet was the only way forward.”

「消去法でいくと、インターネットによるニューエコノミーに頼るしか道はなかった。」p.35

過去にあったnewの具体例

としてPayPalを紹介“… we wanted to create a new internet currency to replace the U.S.

dollar.” 「僕たちはドルに代わる新たなインターネット通貨を創ろうとしてい

た。」p.37

newなだけでは必ずしも成功しないと主

張“When you hear that most new restaurants fail within one or two years,

…”「新しいレストランのほとんどが一,二年以内に潰れると聞けば、

…」p.50

newが0から1、即ちない領域を開拓する

ことを表現“Creative monopolists give customers more choices by adding entirely

new categories of abundance to the world.”「クリエイティブな独占企業は、まったく新しい潤沢な領域を生み出

すことで、消費者により多くの選択肢を与えている。」p.55

過去にあったnewの具体例

“Creative monopoly means new products that benefit everybody and sustainable profits for the creator.”

「クリエイティブな独占環境では、社会に役立つ新製品が開発され、クリエイターに持続的な利益がもたらされる。」p,58

“Zynga scored early wins with games like Farmville and claimed to have a "psychometric engine" to rigorously gauge the appeal of new releases.”

「ファームビルなどのゲームが初期に大当たりしたジンガは、新製品の訴求力を厳格に評価する「心理測定システム」があると吹聴した。」p.74

“In 1843, the London public was invited to make its first crossing underneath the River Thames by a newly dug tunnel.”

「一八四三年、ロンドン市民はテムズ川の下に掘られたトンネルを初めて渡った。」p.96 (newlyは消えている)

“ … that the number of new drugs approved per billion dollars spent on R&D halved every nine years since 1950.”

「… 一〇億ドル単位の研究開発費に大して承認される新薬の数は、一九五〇年依頼、九年ごとに半減しているという …」p.107

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章、あるいは書籍を越えてすら密接に結合されている(例2: moon)

• 本文中に単語moonは合計3度、1章と6章と8章に登場し、それらは恐らく意図的に編まれている

章 英語版 伝えたい主張

1 They looked forward to a four-day workweek, energy too cheap to meter, and vacations on the moon.

月への旅行の一般化は(曖昧な楽観主義の蔓延により)実現さ

れていない

6 Apollo Program began in 1961 and put 12 men on the moon before it finished in 1972.

月面歩行は明確な楽観主義に基づいた長期計画により実現され

8 “And take the hidden paths that runTowards the Moon or to the Sun. “ (指輪物語からの引用)

大衆に認知されない隠れた真実を見つければ、月面歩行クラスの偉業ができるのではないか

• また、Googleの研究開発部門がよく使う単語としてmoonshotsがあるこれもおそらくは意識しているhttps://www.solveforx.com/

• これらは英単語レベルや表現レベルでのレトリックであるため、日本語版だと発見しにくい → 原書を読もう

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• 現在8章までで合計65枚

僕は単語帳を作りながら読んでいます

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より深く読みたい人のために(1)• “Zero to One”原書版のオーディオブック

(朗読は著者であるBrake Mastersなので、強調が非常にわかりやすい)

• Internet Watchの記事 http://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/20150416_698116.htmlゼロトゥワンの上梓から約半年後、3章で登場したGoogleが検索分野でEU競争法(独占禁止法)に違反とEUの機関が届け出た

• 『天才!成功する人々の法則』(原著 “Outliers”, Malcolm Gladwell)6章, 7章はこの本に対する書評を兼ねている気がする…読むと生年月日に対する捉え方がまるで変わる

• J.F.ケネディのスピーチ https://en.wikipedia.org/wiki/We_choose_to_go_to_the_Moon を踏まえたGoogleのCM “Moonshot thinking” https://www.youtube.com/watch?v=0uaquGZKx_0 (2013年アップロード) “we choose to go to the moon in this decade and do the other things, not because they are easy, but because they are hard, …” 更にCM中にはimpossibleという語も出てきており、8章のeasy, hard, impossibleの3項対立の発想元になっている気がする

• ”Physical Menaces to Long Term Sustainability” (地球の長期的持続可能性に対する脅威群) http://www-formal.stanford.edu/jmc/progress/menaces.html「人工知能」という言葉を初めて用いたとされる、楽天家の学者 J. マッカーシーの文章ティールと違って「現状のテクノロジーでも燃料問題は解決できる」と考えており、対照的

• 『HARD THINGS -答えがない難問と困難にきみはどう立ち向かうか-』(ベン・ホロヴィッツ)ティールと同じくドットコムバブルで生存したスタートアップ・ラウドクラウドの物語「ドットコム・バブルの破裂と同時にラウドクラウドの顧客の大部分は倒産し、われわれのバランスシートは壊滅状態に陥った」

• 「おわりに」に出てくる哲学者ニック・ボストロムのTEDでの講演http://www.aoky.net/articles/nick_bostrom/what_happens_when_our_computers_get_smarter_than_we_are.htm

• 日本語版に関する書評 http://m0ch1.hatenablog.com/entry/2015/08/02/223932「ティールは全ての章で同じ論理構造を用いている」という視点のもとで要約しており、非常に明快

『ゼロ・トゥ・ワン』は半ば信じられないほどにハイコンテクストな文章(理解の前提となる知識が多い文章)です

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より深く読みたい人のために(2)• CS183のノート http://blakemasters.com/peter-thiels-cs183-startup

本の出典元となった、米国・スタンフォード大学での講義ノート(ThielではなくBrake Mastersによるもの。書籍と比べると遥かに例が多く、詳細に説明されている。たとえば6章冒頭のstrategically humbleのstrategicallyとはどういう意味か、など。また、使っている語も書籍と異なる。曖昧な楽観主義の「曖昧」は、書籍ではindefiniteだが、ノートではindeterminate)

• 『綻(ほころ)びゆくアメリカ』(2014,須川綾子訳)ティールの伝記が載っている。ゼロトゥワンだと彼は自らの挫折を「最高裁判所の面接で落ちたこと」だとしているが、事実はもう少し長い。彼はその後の転職活動も連続で失敗し続けている、就活失敗者なのである。

• “Peter Thiel, technology entrepreneur and investor. AMA”(『ピーター・ティールだけど何か質問ある?』) http://www.reddit.com/r/iama/comments/2g4g95/peter_thiel_technology_entrepreneur_and_investor“In the class, I wanted to teach everything I knew about business. In the book, the goal was to pack this three-month class into a very disciplined 200 pages.” と言ったように、CS183と書籍の違いをティール自身が語っている

• 僕の書いた書評 http://windfall.hatenablog.com/entry/2015/06/16/121733 「就活失敗者としてのティール」という視点でまとめている

• 糸井重里とティールの対談録 http://www.1101.com/peter_thiel/失敗からは学べないというティールの発想は、いちばんこれが分かりやすい

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当日の質疑応答(一部)• 2章でバブルを最後肯定したのは起業家への資金流入を加速させるためのポジショントークか?

答:違うと思われる.ティールは[1]で執筆理由を「人々を自分の関心事に巻き込みたかったから」「多くの人に成功するビジネスをはじめてもらいたい」と述べている。また、ティールの個人資産を考えると自身への資金流入も企図していないだろう。

• 1章では新しいテクノロジーを生み出すスタートアップは小さくあるべきとしているのに、3章で大きくなった独占企業が多額の利益を研究開発に回して次のテクノロジーをと…矛盾では?答:スタートアップにおいて不可欠なのは、Newなテクノロジーの源となるNewな考え方のため1章が3章に優先する。一方で3章のGoogleは持株会社化によって、研究開発部門についてスタートアップレベルの小サイズに保ったまま、資金を供給する組織体制を構築し両立しているのでは

• ティールは一体誰を救いたいのか?バブル期は他起業家を単に揶揄して救ってない答:未来の(誰とは指定して居ない気がする。人類全体の?)平和が今より広がる状態に辿り着くために、今後の起業家を援助しているのではないか。当時の対応は余裕がなかったため?不明だが、起業家は起業最中に助ける余裕などなく、投資家に転向してから考えだすのではないか

• 独占企業は必ずしも稼いだカネを研究開発に回してなくないか?答:正しい。だが独占企業には寿命があり、次の独占を確立することで延命できるため、研究開発への動機はある。その前提を破るとヒューレット・パッカードのように、独占(圧倒的優位性)を短期で失い企業価値激減のリスクがある

• タイムマシン経営はグローバリゼーションとテクノロジーのどちらに入るのか?答:どのようなグローバリゼーションも、新天地で新しい要素と結合して普及することを考えると、グローバリゼーションに含めて問題無いと思われる。

• 彼がテクノロジーと言っているものの具体例は?答:無政府な水上人工都市や不老不死研究にも投資していることから、政治形態や医療など。一般にテクノロジーと呼ばれる事例を遥かに越えて、本当にto do more with less程度の広義

[1]http://www.1101.com/peter_thiel/2015-04-27.html