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研究の成果と課題
沼垂小学校 教諭 若林 徹
1 学力を高める手段として・・・電子情報ボードの活用
「第6学年 算数 分数のかけ算とわり算」
ソフトは SMART Technologies Inc. [SMART Notebook]を使用した。
電子情報ボードの利点として以下の場面での活用をした。
(1)意欲付け 効果的に電子情報ボード上のものを移動したり,隠したりすることで,児童の意欲を高め
ることができる。 (2)課題把握
静止画や動画を簡単に見せたり,書き込んだりすることができるので,課題把握が容易に
なる。 (3)表現
ワークシートを即座に映し出すことができるので,子供同士の説明がスムーズに行えたり,
かかわりをもたせたりすることで,思考の過程を共有することができる。 (4)理解
板書を保存できるので,学習が進んだ際に即,以前の板書を見せることができる。これに
より,学習を振り返りやすくなる。また,電子情報ボード上での書き込み,移動により,児
童同士の考えを交流させ,理解を深めることができる。 意欲付け 単元導入時における,単元の意味付けの際に活用した。これまでに学習した整数・小数・分数の式
を四則演算ごとに分けていくと,分数のかけ算とわり算の表がうまらない。このことから,これか
らの学習で,分数のかけ算とわり算をすることを意識付ける。本単元でこれらを学習することで,
整数・小数・分数の四則演算が完成することを意識させることができた。電子情報ボード上の式を直
接動かすことができるので,それを児童に操作させることで楽しく,意欲をもって学習することが
できる。また,授業展開の中で意図的に文字や図形を隠したり,それを出したりすることで,電子
情報ボードを注視させ,集中力を持続させながら,学習に望ませることができる。
言葉を表示したり,式を移動したりする最初の提示
課題把握
教科書をスキャナで読み取り加工したものを教材として用いた。課題を把握させる場面で,児童
一人一人が教科書を見るのではなく,電子情報ボード上に映し出された課題を全員に見せた。しか
も教師や児童がそこに書き込んだり,動かしたりしながら補足説明をすることができる。 元の課題をコピーして,その場で教材を作ることも容易であり,説明を行うこともできる。これ
らにより,課題を把握させたり,共 有させたりするのが容易になる。ま
た,児童に付属のペンで電子情報ボ
ード上に書き込ませることで,自分
や自分たちの課題として捉えやすく
なる。
表現 児童同士の考えを発表したり,説明し合ったりする際に,電子情報ボードを使う。児童の考えを
比較検討するには,考えを説明する必要がある。その説明に,電子情報ボードに書き込んだり,図
形を動かしたりする機能を用いることで,考えを表現しやすくなる。また,それに対する意見のか
かわり合いを促すこともできる。
教科書をスキャンで読み込んだ画面 児童が課題把握のために書き込んだ画面
授業中に補足説明のために作成した画面 わり算の課題把握の際に作成した画面
理解 新しい課題に取り組む際に,前時までの復習をした方がよいとき,ページソータ機能により簡単
に以前の学習を振り返ることができる。分数のわり算の計算中に逆数の考えを使っていることを学
習するときも,電子情報ボード上に保存されていた板書を呼び出し,逆数を想起することができる。
また,児童の考えをKJ法的な手法を用いて,まとめていくことも簡単である。電子情報ボード
上に児童の考えを書き込ませ,その後,移動,付け足しをさせることで,理解を深め,新たな気付
きや課題の発見へとつなげることも容易である。これらのことにより理解を深めることができる。
電子情報ボード上の面積図に戻
して考えさせる。
ページソータ機能による振り返りの画面
数人の児童が発表した画面 KJ法的手法により分類した画面
2 研究の成果と課題
授業後に行ったアンケートの結果は以下の通りである。 調 査 項 目 (意識レベルが A高い – C低い) A B C
電子情報ボードを使うと,授業は楽しいですか。 27 2 0 先生が電子情報ボードを使うことで授業の内容が分かりやすくなりましたか。 25 4 0 あなたが発表するときに電子情報ボードを使いたいと思いますか。 20 6 3 これからも電子情報ボードを使った授業を受けたいと思いますか。 29 0 0
(1) 意欲付け
ICT機器を使うこと自体が児童の興味を引くことができる。電子情報ボードは,これま
での黒板がもっていた機能である「書き込む」に加え,「移動」,「予め作成」といった機能も
もっているため,児童の興味を引き,意欲を高めていくことができる。アンケート結果から
も,「電子情報ボードを使うと,授業が楽しい。」と感じる児童数が圧倒的に多い。
(2) 課題把握 教科書をそのまま取り込んで映し出し,書き込み,加工できるというのは大きな利点であ
る。また,元の課題を加工するのも簡単で,授業中にその場で補足説明用の教材を作成した
り,移動させたりしながら指導もできる点が児童の課題把握を助ける。このことがアンケー
ト結果の「授業の内容が分かりやすい。」につながっていると考えられる。 この際に使用するソフトは,教材の移動が容易であることが望ましい。また,アニメーシ
ョン機能があるソフトとの併用も有効であろう。
(3) 表現 児童の考えを発表する場面では,自分の考えを説明する際に電子情報ボードの「移動」「書
き込む」という機能を活用することで,より自由な発表ができる。 児童の作成したものを黒板に貼り,説明用として電子情報ボードを用いたが,児童のワー
クシートをスキャナや実物投影機から電子情報ボードに読み込ませることも可能である。こ
れにより,児童が発表用に拡大したものを書く手間が省ける。また,それにより,児童が説
明する際に児童自身のワークシートに書き込むことができたり,考えの比較を電子情報ボー
ド上で行ったりすることが可能となる。その上,保存することもできる。コンピュータ室で
の SKYMENU 等ソフトの活用も考えられる。 アンケート結果の「発表するときに電子情報ボードを使いたい。」という項目については,
説明するものにより有効性を見出している。様々な発表形態を体験させることで,数値が上
がっていくものと考える。
(4) 理解 既習事項を想起させる際に,保存されていた板書を呼び出す機能は有効となる。板書し直
したものを見るのではなく,以前と同じものを見ることができるので想起しやすい。比較検
討の場面で,児童の考えをKJ法的な手法を用いて分類することも容易となる。理解を深め
る場面では,児童の考えを交流させ,お互いに高めあわせるのに電子情報ボードの活用は有
効となる。
(5) その他
「電子情報ボードを使った授業を受けたい。」と答えた児童が多いことから,授業中の活用
全般については,有効であるといえる。しかし,各校1台体制では,授業への活用も設置に
かかる手間の面から難しい。全教室にあることが望ましいが,当面は,情報ボード常設の普
通教室を作り,クラス配当することも考えられる。 電子情報ボード用のソフトがあり,これらの活用も望まれる。