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2019 年年 年年年 1990 年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年年 ―年年年年年年年年年年年年年年年年年年―(年) 年年年年年年 年年年年年年年年年年年年年年 4 年 年年 年年 1

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2019年度 春課題

1990年代以降の日本とイングランドの就学前教育制度改革の政策過程―構成主義的政策過程論を用いた比較分析―(仮)

慶應義塾大学文学部人文社会学科教育学専攻 4 年

髙橋 佳歩

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アブストラクト 本研究の目的は、就学前教育制度改革が起こる際にどのような過程をたどるかというこ

とを明らかにすることである。就学前教育政策内容ではなく、その政策が加工されるプ

ロセスを、1990年代以降の日本とイングランドの事例を参照して、明らかにすることによって、就学前教育政策に関するより深い理解を目指す。その際に、政治学の領域で発展

し、近年では教育政策過程の分析にも用いられてきた、構造主義的政策過程論のアプロー

チを援用して、分析を行う。

 本研究の意義は、以下の三つである。第一に、多様なステークホルダーが存在する就学

前教育政策形成の過程で、どのような利害が衝突し、その結果としての政策がどのよう

な形で存在しているかを明らかにすること、第二に、ある政策に対する批判や評価を展

開するのではなく、実証的に政策過程を記述すること、第三に、政策過程論を用いた研究

が少ない、就学前教育政策の領域に政策過程論を適用することである。

以下に、本研究の概要を示す。序章では、本研究のテーマ設定と背景について言及し、

研究の目的と意義を提示する。第 1章では、研究を進めるうえで前提となる知識を整理する。就学前教育や幼保一元化といった用語を定義し、1990年代以降の日本とイングランドの就学前教育制度改革の動向を簡潔に説明する。第 2章では、本研究で用いる構造主義的政策過程論に言及し、「政策の窓モデル」と「言説的制度論」という 2つの方法論を用いることを述べ、これらの方法論を用いる理由を述べる。第 3章と第 4章では、第 2章で提示した方法を用いて、それぞれ日本とイングランドの制度改革の過程を分析する。

第 5章では、両国の制度改革の過程を比較し、考察する。また、本研究の持つ限界も指摘する。最後に、本研究のまとめを示す。

以下、構想中の箇所やその箇所に対しての注に関しては、赤字で示す。

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目次

アブストラクト······································································································2序章······················································································································4第 1節 テーマ設定の背景···················································································4第 2節 本研究の目的と概要················································································6第 1章 日本とイングランドの就学前教育制度改革の動向··········································7第 1節 就学前教育とは何か················································································7第 2節 日本の就学前教育制度の概要と動向··························································8第 1項 制度の概要··························································································8第 2項 幼保一元化の定義づけ········································································10第 3項 1990年代以降の制度改革の動向·························································12第 3節 イングランドの就学前教育制度の概要と動向···········································14第 1項 制度の概要························································································14第 2項 1990年代以降の制度改革の動向·························································15第 3項 比較対象国としてのイングランド························································17

第 2章 教育政策と政策過程論··············································································17第 1節 政策過程論と構成主義的アプローチ························································18第 1項 政策過程とは何か··············································································18第 2項 政策過程論の構成主義的アプローチ·····················································20第 2節 本研究で用いる方法論···········································································22第 3章 日本の就学前教育改革の分析·····································································23第 4章 イングランドの就学前教育改革の分析························································23第 5章 考察·······································································································23第 6章 結論·······································································································23参考文献リスト····································································································24春課題の反省·······································································································29

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序章第 1節 テーマ設定の背景

近年、世界的に幼児教育への関心が高まっている。Starting Strongという就学前教育(ECEC, Early Childhood Education and Care)政策の動向に関する報告書が、2001年に OECD から出されたことを皮切りに、各国で様々な取り組みがなされている。OECD(1996)によれば、諸外国の就学前教育政策への関心の高まりは、以下の 2つの理由による。すなわち、質の高い就学前教育への平等なアクセスを保障することによって、

第一に全ての子どもに対しての生涯学習の基礎を強化し、第二に女性の就労の増加に伴う

拡大したニーズを補うことができるということである(pp.113-115)。前者については、経済学的観点からも注目が集まっている。アメリカの経済学者 Heckman(2006)は、成人に対する投資よりも幼児期の子どもたちに投資をするほうが、効果が高いという研究

結果を発表している。

日本でも 2006年に教育基本法が改正され、新たに「幼児期の教育」が「生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの」であることが確認された。また、待機児童数は 2017年 4月の時点で、2万 6000人を超えており、東京都だけでその約 3分の 1を占める(厚生労働省, 2018)など、特に都心部において保育が量的に不足している。このように、日本でも上記の 2つの理由から就学前教育に関心が高まり、近年就学前教育制度改革が行われている。具体的には 2006年に幼稚園と保育所の両方の機能を持つ認定こども園という就学前教育施設が新設され、2015年には子ども・子育て支援法が成立した。このような潮流を反映して、就学前教育に関する研究の傾向にも変化が見られる。

2010年以前は保育もしくは教育のどちらかの視点からの研究がその多くを占めている。保育の領域では発達心理学的な観点から、乳幼児の認知的・精神的発達について研究した

ものや、現場での保育実践、保育者と子どもの関係に関する研究が多くみられる。一方教

育の領域では幼稚園における教育に関する研究や、幼小連携に関する研究が見られるが、

いずれも研究の数としては少なかった。しかしながら、近年保育と教育の境界があいま

いになってきていることは注目に値する。『教育学研究第 81巻第 4号』では、「保育学と教育学の間」と題した特集が組まれ、保育学の分野でもこれまであまり目が向けられ

てこなかった、保育政策に関する研究が増えている。

就学前教育政策に関する研究は、認定こども園制度に対する批判的な見解を示したもの

(櫻井, 2014; 山内, 2014; 研, 2015; 戸田, 2015)や、幼保一元化という観点で改革の動向をたどることを試みたもの(田澤, 2011; 丹治, 2019)、また教育学的観点から幼小連携に関して分析したもの(酒井, 2014; 千葉, 2019)など多岐にわたる。とりわけ関心が集まっているのは、諸外国の就学前教育政策の動向についてである。

池本(2011)は、諸外国の就学前教育制度の施策を紹介しながら、就学前教育政策をセーフティーネットとしての福祉制度体系から、エビデンスにもとづいた人的投資のための

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教育制度体系に位置づけ、保育の質を高めようとする国が増えていることを指摘してい

る(pp.33-38)。すなわち、近年の就学前教育において重要なトピックは、第一に幼稚園や保育所といった、義務教育段階の前の児童に対する教育や保育が、公教育の中に位置づ

けられることによる制度の改革、第二に保育の質を高めるための施策や評価制度である。

実際に国内でも諸外国の就学前教育制度改革を分析した研究や、保育の質やその評価に注

目した研究が行われてきている。

後者に関しても、様々な研究がなされてきているが、本研究で着目したいのは前者で

ある。田澤(2011)は、過去の 5度にわたる幼保一元化の試みにもかかわらず、それが実現されておらず、今後も幼保一元化を目指す試みが行われることを示唆している。後述

するが、2000年代以降の日本では幼保一元化ではなく幼保一体化が進められ、認定こども園という就学前教育施設が新設された。このように日本でも就学前教育制度の変更が相

次いでおり、池本(2011)が指摘した海外の制度改革に類似する動きが見られる。そのため、就学前教育制度改革に関して、日本と海外の事例を比較検討することは一定の価値が

あるといえる。

就学前教育制度に関する研究に目を向けると、その研究内容のほとんどが実現した政策

の内容に関するものであり、村上(2016)も指摘しているようにその政策が形成される過程に着目した研究は少ない。就学前教育政策の形成過程に注目した研究としては、ニュー

ジーランドの就学前教育改革を分析した七木田(2005)の研究、スウェーデンの幼保一元化からナショナルカリキュラムの策定に至るまでの過程を福祉国家という観点で分析し

た大野(2015)の研究、カナダの全日制幼稚園の導入の過程を分析した松井(2018)の研究が存在する。

七木田(2005)の研究は、ニュージーランドの就学前教育政策に関して、1986年の幼保一元化からカリキュラムが策定される 1996年に至るまでの過程をたどったものである。七木田(2005)自身が指摘しているように、ニュージーランドは社会福祉制度を推進しており、1980年代に財政構造改革の一環で教育の自由化が行われたものの、福祉国家としての伝統を保っている。また、大野(2015)の研究は、スウェーデン社会において、国が保障すべきひとりひとりの子どもが持つ権利として就学前教育が捉えられてきたことを

明らかにした。しかしながら、日本の現状を踏まえるとニュージーランドやスウェーデ

ンの事例が必ずしも参考になるとは限らない。というのも、ニュージーランドやス

ウェーデンは日本とは異なり、伝統的に就学前教育の公費負担の割合が高い国だからだ。

1998年時点での対GDP比の就学前教育に占める公的支出の割合は、日本が 0.09%であるのに対して、ニュージーランドは 0.21%、スウェーデンは 0.59%だ。(OECD, 2001)松井(2018)の研究も、就学前教育制度改革の過程について取り上げた希少な論文であるが、以下の 2点からさらなる検討の可能性があると考えられる。まず、論文が分析の対象としているのが半日制幼稚園から全日制幼稚園へと変わる過程であるということだ。

就学前教育のうち、保育の領域に関する内容は考慮されておらず、必ずしも包括的な視点

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で就学前教育制度改革をとらえきれているとは言えない。さらに、日本に政策を導入す

る手がかりとして、カナダにおける政策過程を研究していることに問題がある。松井は、

カナダのオンタリオ州とブリティッシュコロンビア州の 2つの事例を比較検討している。しかし、カナダは連邦制の国家体制を取っており、カナダの州政府の政策過程を日本が参

照することには困難が伴う。

以上のように、就学前教育制度改革の過程に関して分析した研究は存在するものの、い

ずれの研究も①就学前教育に対する公的支出の割合が低く、②教育と保育が行政的に分断

しており、③国が中央集権的に教育の方針を策定している日本の文脈を十分に考慮できて

いるとは言い難い。

第 2節 本研究の目的と概要

 上記で見たように、就学前教育に対する関心が国内外で高まっており、様々な観点で就

学前教育政策に関して研究が行われてきた。一方で、就学前教育改革がどのような過程で

行われたかというメカニズムに関して、日本の文脈を考慮した知見はあまり蓄積されて

いないということがわかった。これを踏まえ、本節では本研究の目的と意義について言

及し、次章以降の展開を簡潔に述べる。

 本研究の目的は、就学前教育制度改革が起こる際にどのような過程をたどるかというこ

とを明らかにすることである。すなわち、政策内容そのものではなく、政策が形成され、

決定される過程を分析することである。日本の就学前教育政策の内容に関しては、これま

で様々な批判がなされてきたが、そのような政策がどのように形成されるのかを解き明

かすことこそが本研究の目指すところである。その際に、90年代末に制度上の幼保一元化を達成し、従来は私的な領域と見なされてきた育児の公費負担が近年増加しているイン

グランドの事例を参照し、両国の制度改革の過程を比較的に検討する。(比較対象国は仮)  本研究の意義は、以下の 3つである。 第一に、多様なステークホルダーが存在する就学前教育という領域において、どのよ

うな利害が衝突し、その結果として政策が形成されているかを明らかにするための手が

かりを得られるということである。前述の通り、とりわけ日本においては保育と教育の

制度上の分断が存在し、どちらか一方の視点で研究を試みることが多かった。今後、保育

と教育の領域が連携し、ひとりひとりの子どもにとってより良い就学前教育を提供する

ためにも、就学前教育政策の形成過程における、両者およびそれを取り巻く様々なアク

ターの役割や立場について解明することは重要である。

 第二に、ある政策について、それに対する批判や評価を展開するのではなく、実証的

に記述することで新たな知見が得られるということだ。市川(2000)は、高等教育政策研究について、「大別すれば規範的研究と実証的研究とに分けることができる。前者は政策

の内容および過程の批判・評価であり、後者は政策の内容および過程の客観的な記述・説

明である。」(p.26)と述べている。市川の言葉を借りれば、日本の就学前教育政策研究に

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ついて、規範的研究は多くなされてきた。具体的には、日本において保育の質が低下し

ていることや、保育の市場化が進んでいることを批判する、もしくは諸外国の改革動向

や先進事例を評価する研究である。しかしながら、就学前教育政策の「実証的研究」はま

だまだ少ない。本研究では、「実証的」なアプローチを通して、就学前教育政策を分析す

ることを目指す。

 第三に、就学前教育政策について、政策過程論という観点から分析することである。前

述の通り、政策過程論を用いた就学前教育政策研究は非常に少ない。海外の研究では、就

学前教育段階にも政策過程論を用いた研究が存在するが、国内では依然としてこの視点か

ら分析した研究は少ない。本研究では、就学前教育政策をその形成過程をたどることで、

就学前教育政策に関するより深い理解を目指す。

 以下で、この論文の構成を簡潔に述べる。第 1章では、研究をするうえで前提となる用語の定義を行い、日本とイングランドの就学前教育制度改革の動向を、1990年代以降に関してたどる。そして、第 2章で就学前教育政策改革の政策過程を分析するための枠組みについて言及する。第 3章で、日本の改革の過程を、第 4章でイングランドの改革の過程を分析し、第 5章で両者を比較して得られる視点および研究の持つ限界を指摘する。最後に、この論文を通して明らかにした内容をまとめる。(第 3章以降は構想中)

第 1章 日本とイングランドの就学前教育制度改革の動向 本章は、今後の論を展開する上で必要となる事項を簡潔に説明することを目的とする。

第 1節では、汎用されている幼児教育という言葉と就学前教育を異なるものとして定義する。第 2節では、日本の就学前教育制度の概要とその改革の動向を 1990年代以降について示すこととする。第 3節では、前節と同様にイングランドの就学前教育制度の概要と 1990年代以降の改革の動向をたどる。

第 1節 就学前教育とは何か

 本節では、就学前教育という用語について定義づけることで次章以降の論の展開の前提

を共有する。その際に、幼児教育という言葉の意味に着目し、本論文では広義ではなく、

狭義の「幼児教育」に関して論じることを述べる。

 日本では小学校入学前の児童に対して行われる教育について、幼児教育という言葉が使

用されることが多い。例えば、中央教育審議会初等中等教育分科会(2004)は、幼児教育について次のように定義している。

幼児とは,小学校就学前の者を意味する。幼児教育とは,幼児に対する教育を意味し,

幼児が生活するすべての場において行われる教育を総称したものである。具体的に

は,幼稚園における教育,保育所等における教育,家庭における教育,地域社会にお

ける教育を含み得る,広がりをもった概念として捉えられる。(下線は筆者による)

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また、『教育社会学研究第 88集』では、「幼児教育の社会学」という特集が組まれている。特集論文の中で、濱名(2011)は幼児教育を次のように定義している。

「幼児教育」という言葉は通常、発達段階が「幼児」の時期である子どもたちを対象

に行われる教育をさす。(中略)小学校に入学する前の子どもの育ちに関わる場は、現在大きく次の 4つに分けられる。第一は、子どもの養育者によってしつけ等の働きかけが行われる家庭である。第二は、子どもが近所の子どもと一緒に遊んだり、養

育者以外の地域の大人と関わる場としての地域社会である。第三は、幼稚園や保育所

といった正規の就学前教育(保育)機関である。そして第四が、お稽古事や通信教育、

幼児向けの塾などの幼児教育産業が提供する幼児教育の場である。 (pp.88, 下線は筆者による)

濱名(2011)は、中央教育審議会初等中等教育分科会(2004)が「広がりをもった概念」と称した幼児教育を4つに分けている。本論文で注目する「幼児教育」は、濱名 (2011)の言葉を借りれば、「幼稚園や保育所といった正規の就学前教育機関」で行われる教育であ

る。以後、この狭義の「幼児教育」を「就学前教育」と呼称する。

第 2節 日本の就学前教育制度の概要と動向

本節では、日本の就学前教育制度の概要と改革の動向を示す。はじめに、戦前から存在す

る就学前教育施設である、幼稚園と保育所の起源について言及したうえで、現在の就学前

教育施設の概要を示す。次に、幼保一元化という用語を定義し、最後に 90年代以降に日本の就学前教育政策がどのような変化を経てきたかを概観する。

第 1項 制度の概要

本項では、幼稚園と保育所、認定こども園という性質の異なる就学前教育施設の概要につ

いて簡潔に説明する。以下、戦前にさかのぼって幼稚園と保育所の起源、両施設が戦後に

得た制度的位置づけについて順を追って言及する。そのうえで 2006年に新設された認定こども園を含めて 3つの教育施設の制度的相違を示す。

①幼稚園・保育所の起源

 日本における最初の幼稚園は、1876年に設立された東京女子師範学校附属幼稚園であ

る。世界における幼稚園の生みの親であるフレーベルにならった、教育玩具(恩物)を

中心とする教育を行った同校に続き、19世紀末には特に都市部の富裕層の指定が通う施

設として、その数が増えていった。1926年に、幼稚園に関する「幼稚園令」が制定され

るなど、幼稚園は教育施設としての性格を早くから色濃く持っていた。

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 一方で、保育所の成立は 19世紀末の都市労働者社会の問題と密接に関わっている。産

業革命により、都市で劣悪な環境で働く労働者が増え、そのような家庭の子どもに対して

保育が行われるようになった。1900年に設置された二葉幼稚園はその代表である。その後、1920年代になると、内務省が積極的に児童保護に取り組むようになった。補助金制

度も開始され、主として労働者子弟の保育を担う施設として託児所は発達していった。

(湯川, 2017, pp. 135-137) このことは、小玉(2011)が見出した、幼児教育に作用する 3つのポリティクスのうち、

「階層のポリティクス(pp.15-17)」と一致している。幼稚園は、中上流階級に浸透して

いったが、同時に工場労働者の家庭に育つ子どもたちのために、保育施設が必要とされ

ていた。

②幼稚園・保育所の制度的位置づけ以上で見たように、両施設は戦前に異なるニーズに応える形で生じた。戦後に、教育制

度が再編される際にも、幼保二元体制は維持された。

 幼稚園は、1947年制定の学校教育法において、文部省が管轄する学校として制度化さ

れた。学校の一種として位置づけられており、幼稚園の設置者は行政もしくは学校法人・

社会福祉法人である。入所できる年齢は、3歳以上であり、入所を希望する子どもは各園

と直接契約を結ぶこととなっている。

一方、保育所は 1947年制定の児童福祉法において、厚生省が管轄する保育施設として

制度化された。幼稚園との大きな違いは、その目的が「日々保護者の委託を受けて、保育

に欠けるその乳児又は幼児を保育すること」(第 39 条)であることだ。すなわち、「保

育に欠ける」と市町村が判断する就学前段階の子どもを対象とする施設が保育所なのであ

る。対象が限定されるため、入所を希望する利用者は市町村を通して契約を結ぶことと

なっている。なお、2000年に行われた規制緩和により、社会福祉法人だけでなく企業や

NPOなどが保育所を設置することも認められた(中山・杉山, 2004, pp.38-44)。

③幼稚園・保育所・認定こども園の制度的相違

 上記の経緯で幼稚園と保育所は制度化され、2006年以降は両者で行われている教育と保育を一体的に提供する就学前教育施設として、認定こども園が誕生した。以下の表 1は、丹治(2019)がまとめた 3つの施設の相違点を一部抜粋・加筆したものである。

幼稚園 保育所 認定こども園

根拠法律 学校教育法(1947年) 児童福祉法(1947年) 就学前の子どもに関する

教育、保育等の総合的な

提供の推進に関する法律

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(2006年)

成立の

経緯

・幼児への教育を重視

・富裕層の子弟多い

・社会救済、児童保護の一

・都市の労働者子弟多い

・幼稚園と保育所の機能

をあわせもつ施設の導入

・子育てネットワークの

起点

目的 義務教育及びその後の教

育の基礎を培うものとし

て、幼児を保育し、適当

な環境を与えて、その心

身の発達を助 長するこ

と。

保育を必要とする乳児・幼

児を日々保護者の下から通

わせて保育を行うことを目

的とする。

義務教育及びその後の教

育の基礎を培うものとし

ての満 3 歳以上の子ども

に対する教育並びに保育

を必要とする子どもに対

する保育を一体的に行

い、これらの子どもの健

やかな成長が図られるよ

う適当な環境を与えて、

その心身の発達を助長す

るとともに、保護者に対

する子育ての支援を行う

こと。

所管 文部科学省国立: 文部科学省公立: 教育委員会私立: 都道府県・主に学校法人が運営

厚生労働省および市町村 内閣府および都道府県

設置者 国・地方公共団体(主として市町村)、学校法人、その他法人、個人

地方公共団体(主として市町

村)、社会福祉法人、その他

法人、個人

国、地方公共団体、社会福祉法人、学校法人

保育内容の

基準

幼稚園教育要領に準拠 保育所保育指針に準拠 幼保連携型認定こども園

教育・保育要領に準拠

保育者の

資格

幼稚園教諭の免許を有す

る者

保育士資格証明書を有する

保育教諭(幼稚園教諭+保

育士)※一定の経過措置あり

就学率 3 歳: 41.3%4 歳: 53.2%5 歳: 56.1%

0 歳: 9.8% 3 歳: 42.0%1 歳: 28.2% 4 歳: 42.5%2 歳: 35.7% 5 歳: 41.8%

表1. 幼稚園・保育所・幼保連携型認定こども園の制度的相違

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※丹治(2019, pp.20-21)を一部抜粋・加筆。就学率は、OECD(2015)を参照。

表 1からもわかるように、幼稚園は裕福な家庭の子ども向けに初等教育の前から教育

を施すことを主眼においた教育機関であり、保育所は子どもの面倒を見ることができな

い親の代わりに保育を提供するという社会福祉的な側面が強い。そして、新設された認定

こども園は幼稚園と保育所の機能をあわせもつ、すなわち両者を「一体化」させた施設

である。

第 2項 幼保一元化の定義づけ

本項では、幼保一元化とは何かということに関して、筆者の見解を述べることで、次章

以降で論を展開するための前提を共有したい。とりわけ、以下では幼保一元化と幼保一体

化という言葉の差異に注目する。

 中澤(2010)は、『教育学用語辞典』において、幼保一元化について次のように説明し

ている。

幼保一元化 幼稚園は文部科学省に管轄される学校で、保育所は厚生労働省に管轄さ

れる児童福祉施設であり、本来その性格を異にするものであった。(中略)文部科学省と厚生労働省も幼稚園と保育所を一体化した施設の建設・運営を許容する方針を出し

ており、この動きはさらに進展すると思われる。(p.230, 下線は筆者による)

ここで、中澤は前項で筆者が指摘した、幼稚園と保育所の制度的な性質の違いについて

説明したうえで、両者が(一元化、ではなく)一体化した施設を政府が推進していくだろうと述べている。この説明からは、一元化と一体化の違いは読み取れないため、別の論を

参照する。

 森川(2017)は、従来の幼保二元体制を念頭に置きつつ、幼保一元化の流れを以下のよ

うに説明している。

幼稚園と保育所を一体的に運営する「認定こども園」制度は、小泉政権下での閣議

決定「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」で打ち出され、規制改革

の流れから生まれたものだった。

 もとになった総合規制改革会議の答申では、「幼保一体化」ではなく、「幼保一元

化」が盛り込まれた。幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省という二元化行政を

改め、一元化することや、幼稚園と保育所で異なる職員配置や施設の基準の統一を提

言した。(p.360, 下線は筆者による)

以上から、幼保一元化というのは、幼保二元化体制に対して、制度上の区別をなくし、

11

Page 12: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/wp-content/uploads/2019/05/04be7dcba... · Web view千葉 聡子 (2019) 「教育投資としての幼児教育無償化の社会的意義は実現されるのか:幼児期における非認知的能力の育成と初等教育との接続で求められる教育環境」

その教育(保育)内容や職員の養成や配置に関する規定も1つにまとめるということを

指していることがわかる。

一方で、中澤と森川の両者の説明からは、現在政府が推し進めているのは、一元化では

なく一体化であることが読み取れる。次に、政府が進める幼保一体化とは何かというこ

とを、中央教育審議会初等中等教育分科会(2011)の配布資料を参照して示す。

3. 幼保一体化1. 基本的な考え方 すべての子どもの健やかな育ちと、結婚・出産・子育ての希望がかなう社会を実現

するため、以下の三点を目的とする幼保一体化を推進する。

・質の高い学校教育・保育の一体的提供

・保育の量的拡大

・家庭における養育支援の充実

すなわち、一体化という言葉は既存の幼稚園や保育所といった既存の施設があること

を前提としながら、両者の性質を近づけていこうとする動きを指していることがわかる。

 以上で、幼保一元化と幼保一体化の差異に注目しながら、幼保一元化とは何かを探って

きた。本節のまとめとして、幼保一元化と幼保一体化の定義を『保育用語辞典』から以下

に示す。

幼保一元化 幼稚園は文部科学省、保育所は厚生労働省にそれぞれ所管が分かれてい

るが、これを一元化し、保育の制度、保育内容、研究・研修棟についても、そのすべ

てを一元化する。

幼保一体化 幼児の保育が幼稚園と保育所の2つに分かれている現行制度を維持しな

がらも、両者の設置基準や最低基準、保育内容、免許と資格、待遇、職員の設置、研

修などをできるだけ近づけ、両者の関係を密にしようとするもの。(p.49, 下線は筆者による)

なお、論文によっては幼保一元化と幼保一体化を同一の用語として用いているものが少

なくない。しかしながら、以後筆者は論を進めるにあたってこの2つの用語を上に定義

したように明確に異なるものとして扱うこととする。

第 3項 1990年代以降の制度改革の動向

 本項では、日本の就学前教育制度改革がどのように進展したかを 1990年代以降に関してたどることとする。以下の表 2は、内閣府(2018, pp.34-41)および中央教育審議会初

12

Page 13: matsusemi.saloon.jpmatsusemi.saloon.jp/wp-content/uploads/2019/05/04be7dcba... · Web view千葉 聡子 (2019) 「教育投資としての幼児教育無償化の社会的意義は実現されるのか:幼児期における非認知的能力の育成と初等教育との接続で求められる教育環境」

等中等教育分科会(2010)をもとに筆者が作成したものである。

年.月 出来事

1990 1.57 ショック1994.12 「今後の子育て支援のための施策の基本的方向について(エンゼルプラ

ン)」の策定(文部、厚生、労働、建設の 4大臣の合意)→1999年を期限とし、実施

1999.12 「少子化対策推進基本方針」重点的に推進すべき少子化対策の具体的実施

計画について(新エンゼルプラン)」(大蔵、文部、厚生、労働、建設、

自治の 6大臣合意)の策定

→2005年を期限とし、実施2001 「仕事と子育ての両立支援策の方針について」→待機児童ゼロ作戦の策定

2002 「少子化対策プラスワン」

2003.6 「経済運営と構造改革に関する基本方針2003」閣議決定

2003.7 次世代育成支援対策推進法・少子化社会対策基本法制定

2004.12 「少子化社会対策大綱に基づく基本的実施計画について(子ども・子育て応

援プラン)」 の策定

→2009年を期限として実施2004.12 中央教育審議会幼児教育部会と社会保障審議会児童部会の合同の検討会議

による審議のまとめ

2005.1 中央教育審議会答申「子どもを取り巻く環境の変化を踏まえた今後の幼児

教育の在り方について」

2006.10 認定こども園制度の創設

2006.12 教育基本法の改正: 「幼児期の教育」が「生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なもの」であることを確認

2009.3 認定こども園制度の在り方に関する検討会

2010.1 「少子化社会対策大綱(子ども・子育てビジョン)」の策定2012 子ども・子育て支援関連三法の成立

2015 子ども・子育て支援関連三法の施行

表2. 1990年代以降の日本の就学前教育制度改革の動向※内閣府(2018)および中央教育審議会初等中等教育分科会(2010)を参照し、筆者作成。

 1990年に、前年度の合計特殊出生率が 1.57となり、少産化の傾向が浮き彫りになっ

たことを契機として、1990年代は「エンゼルプラン」や「新エンゼルプラン」の策定な

ど、「少子化対策」に注目が集まっていた。

13

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 2000年代に入ると、「少子化対策」という観点だけでなく、「幼児教育」すなわち就学前教育についても関心が持たれるようになっていった。総合規制改革会議 (2003)では、重点検討事項のひとつとして、「幼稚園・保育所の一元化」があげられ、それに続いて

2003年 6月に閣議決定された「経済運営と構造改革に関する基本方針2003」には、

具体的な方針が示された。「新しい児童育成のための体制整備」と題して、「近年の社会

構造・就業構造の著しい変化等を踏まえ、地域において児童を総合的に育み、児童の視点

に立って新しい児童育成のための体制を整備する観点から、地域のニーズに応じ、就学前

の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする(平成 18 年度までに検討)。 あわせて、幼稚園と保育所に関し、職員資格の併有や施設設備の共用を更に

進める。」(経済財政諮問会議, 2003)と示された。 その後、中央教育審議会と社会保障審議会の合同検討会を経て、認定こども園制度の概

要がまとめられ、2006年より認定こども園制度がスタートした。その後、2015年には子ども・子育て支援新制度が開始され、保育ニーズを市町村に認定してもらい、教育施設

に受け入れるようになった。

 以上で見てきたように、日本では 1990年代以降注目が集まった、少子化問題を契機と

して、就学前教育に関心が高まった。その後、様々な保育ニーズに応えるために幼稚園と

保育所の機能を一体化させた認定こども園が設置され、就学前教育が義務教育段階の基礎

を作る時期として重視されるようになっていった。

第 3節 イングランドの就学前教育制度の概要と動向

 前節では、日本の就学前教育制度に関して、言及した。本節では、はじめにイングラン

ドの就学前教育制度の概要を示し、次に 1990年代以降の制度改革の動向について言及する。なお、以下ではイギリスではなく「イングランド」と記述する。イギリスは連合王

国であり、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドとイングランドで、異なる教

育制度を有している。本研究では連合王国のうちのイングランドの就学前教育制度につ

いて取り扱うため、混乱を避けるために「イングランド」と記述する。

  イングランドでは、教育省(Department for Education)が置かれ、初等・中等から高等教育、訓練及び教員まで、国の教育制度全般を統括している。学校監査を行う教育

水準局(OFSTED, The Office for Standards in Education, Children's Services and Skills)など教育関連政府機関も置かれている。地方当局(LA)は、初等・中等学校などを設置・維持しており、公立の就学前教育施設は地方自治体が行っている。 (文部科学省, 2019)

第 1項 制度の概要

 本項では、イングランドの就学前教育制度の概要を示す。以下は、イングランドの多様

な就学前教育施設の概要をまとめたものである。なお、イングランドは日本とは異なり、

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義務教育の開始年齢が 5 歳である。

名称 設置

主体

対象

年齢

就学率 施設概要

Nursery Class 公立 3-4 歳 3-4 歳 : 21%

半日制。小学校付属の保育学級。

Nursery School 公立 3 歳 0-2 歳 : 6%3-4 歳 : 14%

保育学校。

Reception Class

公立 4 歳 3-4 歳 : 22%

就学準備学級。

Day Nursery 私立、

非 営

利、独

5 歳 以

0-2 歳 : 19%3-4 歳 : 17%

施設での保育サービス。保育所。

PlaygroupPreschool

私立、

非 営

利、独

2-4歳 0-2 歳 : 6%3-4 歳 : 14%

半日制が多い。保育所。

Childminders (Family Day Care)

0-7 歳 0-2 歳 : 6%3-4 歳 : 5%

家庭的な環境での少人数の保育

サービス。

表3. イギリスの就学前教育施設

※Tagumaほか (2015)をもとに筆者作成。

表 3からもわかるように、イングランドには多様な就学前教育施設が存在する。次項でも確認するが、イングランドでは近年就学前教育に対する公費負担が増加している。公立

と私立のどちらの就学前教育施設に在籍しているかを年齢別に示したのが、図 1である。

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図 1. 在籍校の設置主体ごとのイングランドの就学前児童の割合

※Department for Education(2018)より。後で作成し直します。

 このように、特にイングランドにおいては伝統的に 3 歳以下の児童についての保育は

私的なものと見なされ、公的なサービスがあまり普及してこなかった。しかしながら、

近年公立の就学前教育施設に通う 2 歳児の割合が増えている。

 また、就学前教育には The Early Years Foundation Stage(EYFS)と呼ばれるカリキュ

ラムがある。全ての公立の就学前教育施設およびOfstedという学校監査機関に登録する

就学前教育提供者は、このカリキュラムに従わなくてはならない。このカリキュラムに

従って、5 歳になる年の学年末に教員により生徒を観察することによるアセスメントが行

われることになっている。(Gov.ukイギリス政府公式サイト)

第 2項 1990年代以降の制度改革の動向

 本項では、1990年代以降のイングランドの就学前教育制度改革の動向をまとめる。

年.月 出来事

1989 Children Actの制定1994 4 歳児向けの就学前教育施設バウチャー制度を試験的に導入 (保守党政権)1997 保守党から労働党へ政権交代。ブレア政権の誕生。

1998 全ての 4 歳児に対する就学前教育を無償化

1998 Sure Start Local Programmeの開始

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1998 保育の責任が教育省へ移管され、幼保一元化

2000 3-6 歳児向けのカリキュラムガイドラインの導入

2004 3 歳児向けの就学前教育を無償化

2006 Childcare Actの制定。初めての幼児教育のみを規定した法律の制定。

2008 The Early Years Foundation Stage(0-6 歳児向けのカリキュラム)の導入2010 保守党と自由党の連立政権の成立

2012 2 歳児向けの就学前教育を一部無償化

表 4. 1990年代以降のイングランドの就学前教育制度改革の動向※Faulkner&Coates (2013)及びMelhuish(2016)を参照し、筆者作成。

 

1990年代後半に政権交代が行われ、政権の強い意向のもと 2000年代にかけて就学前教育の無償化が段階的に行われてきた。また、1989年に国連の子どもの権利条約の採択

を契機として制定された、Children Actの影響もあり、社会的に弱い子どもたちの権利

を保障するという観点で、公的な就学前教育制度が拡大されてきた。1998年に導入された Sure Start Programmeは、そのような社会的な階層が低い子どもたちに向けたプロ

グラムであった。

ただ、上記の無償化は週に 10から 15時間の範囲内でのことであり、それ以上の時間

に関しては、親が負担しなくてはならない。国から最も高いレベルで補助を受けている

世帯ですら、保育費用の 30%を負担している(ガンバロほか, 2018, p.68)。このことによる経済的負担は、石橋(2016, pp.15-17)も指摘している。また、これまで導入されてこなかったナショナルカリキュラムを就学前教育に導入し、

2001年以降は就学前教育施設も Ofstedの監査の対象となる(椨, 2017, p.136)など、就学前教育におけるアカウンタビリティーが強化されてきている。

上記で見てきたように、イングランドで 1990年代に就学前教育に対する関心が高まった背景には、社会的に弱い立場にある子どもに対するアプローチを強化するという潮流

がある。イングランドの就学前教育への公費投入は、学力向上政策とも結びついており、

日本とは異なる背景のもと、就学前教育制度の改革が展開されてきた。

第 3項 比較対象国としてのイングランド

以上において、イングランドの就学前教育制度の改革の動向をたどってきた。本項で

は、日本の就学前教育制度改革の過程を探る際に、なぜイングランドを比較対象国とする

かに関して、3つの観点から述べたいと思う。

第一に、前項で見たようにイングランドでは 90年代以降就学前教育への公的支出が大幅に増加したことである。元来、イングランドにおける幼児への保育や教育は私的なも

のとみなされ、育児の社会化が遅れていた(山田, 2007, pp.45-47)。日本も、長きにわ

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たって育児は家族が担うものという意識が根強く(舩橋, 2006, pp.57-61)、とりわけ 3歳児以下の保育に関しては家庭で担われることが多かった。1990年代以降、イングランドでは公費負担が増加し、日本では幼児教育を初等教育の前の段階として、重視されるよ

うになっている。就学前教育への関心が近年高まっている両者を比較することで日本の

制度改革を客観的に分析することができる。

第二に、イングランドは国が就学前教育制度の大まかな枠組みを策定し、地方当局が就

学前教育施設を設置・運営しており、教育行政という観点で日本との類似性が見られると

いうことだ。前述のように、連邦制のカナダの州政府における制度改革の過程を分析し

た研究は既に存在しており、その意味でも日本と教育行政のあり方が類似しているイン

グランドを取り上げて分析することには一定の価値がある。

最後に、イングランドが社会的弱者への公的投資という観点で就学前教育政策を展開し

ているのに対し、日本は少子化対策が起点になっており、両者が就学前教育への関心を持

つ背景は異なっているということである。日本では 90年代末から 2000年代はじめにかけて、幼保一元化の議論が再燃し、幼保一体型施設としての認定こども園の新設という形

で帰結している。イングランドは、幼児期から生じてしまう格差を是正することや保育

の質を向上させるための評価体制の構築に注力している。

このように、日本とイングランドは、就学前教育制度に対する公的支出が元来少なく、

国がその方針の大枠を決定するという類似点を持っている。しかしながら、決定される

政策の内容は大きく異なっており、イングランドの制度改革の過程をたどることによっ

て、日本の制度改革の過程を客観的に分析することができるだろう。以上の理由から、日

本とイングランドの就学前教育制度改革の過程を比較しながら分析する。次章では、分析

をする際の方法論である政策過程論について言及する。(①90年代以降の就学前教育制度改革を全て分析する、その流れを概観する、もしくは②ある制度改革を部分的に取り上げ

て分析する、どの時代・どの改革を分析するかは今後検討します。)

第 2章 教育政策と政策過程論 本章では、次章以降で日本とイングランドの政策過程分析を行うために必要となる方法

論の提示を行う。第 1節で、主として政治学の領域で発展してきた政策過程論とその様々なアプローチのうち、構成主義的アプローチに関して言及する。第 2節で、本研究で使用する方法論を提示し、そのアプローチを用いる理由を述べる。

第 1節 政策過程論と構成主義的アプローチ

 本節では、政策過程を定義づけ、その理論的アプローチを西岡(2011)と佐野(2014)の分析を提示してまとめる。

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第 1項 政策過程とは何か

 本項では、本研究が着目する政策過程の定義づけを行う。そして、政策過程論が理論的

前提とする、政策の段階について言及する。

①政策過程の定義 草野(2012)は、政治過程、政策過程、政策決定過程といった類似する用語の定義に関する議論が、研究者の間でも単一と定義がされているわけではないと指摘している

(p.39)。そのため、政策過程を明確に定義することは困難を伴うが、政策過程を分析することを目的とする本研究を進めるにあたって政策過程とは何かを考えることは重要であ

る。ここでは政策過程を以下の 2つの視座から考える。それは第一に政策内容と政策過程

の区別、第二に政治過程と政策過程の区別である。

 前者について、秋吉(2015)はアメリカの政治学者ラスウェルが提示した政策に関する「inの知識」 と「ofの知識」という概念を用いて説明している。表 5が示しているように、「inの知識」とは、ある政策問題を解決する際に必要となる、問題の構造化、問題状況の予測、政策案の事前評価といった事項に関する分析によって得られる知識である。一

方、「ofの知識」とは、政策決定、政策実施、政策評価という各段階を前提としている。そのうえで、各段階で利益、制度、アイディアといった政策形成の変数がどのように影

響を及ぼしあっているか(西岡, 2011, p.97)を分析することによって得られる知識を「ofの知識」と呼んでいる。

inの知識 (knowledge in process) ofの知識 (knowledge of process)定義 政策の形成に利用される知識 どのような政策が、誰によって、ど

のように決定、実施されているかと

いう知識

学問

領域

「政策分析論」「政策デザイン論」

・政策決定のための情報分析

・政策案のデザイン

・政策評価に関する研究

「政策過程論」

・政策決定に関する研究

・政策実施に関する研究

・政策評価に関する研究

表5. 公共政策学の2つの知識※秋吉(2015)p.8より抜粋。

 第二の政治過程と政策過程の区別という観点では、佐藤 (2018)の指摘を引用しながら

説明を試みる。

過程、プロセスというのはなにものかが加工されていることを示す語だが、政治過

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程というのは権力と政策の加工を指す。政策過程というのは政治過程の中で政策の加

工を強調して見ようとするということだが、権力過程から切り離されて存在してい

るわけではない。(p. 16, 下線は筆者による)

 すなわち、政策過程とは、政治に影響を与える権力を念頭に置きつつも、政策そのもの

に焦点を当てた政策形成や実施の過程であるということがわかる。

 以上において、政策過程とは何かということについて説明した。政策過程とは、政策

の実施や決定に伴うプロセスであり、政治的な権力の影響を受けながら政策が加工され

る過程のことである。

②政策の段階 橋本(2005)は、政策過程の段階について H. D. Lasswellが 1950年代に 7段階モデルを提唱し、その後国内外で Lasswellに依拠したモデルが展開されてきたことを指摘し、

各モデルに共通してみられる段階を 7つに分けて説明した(pp. 54-55)。 以下、7つの段階を順に示す。

1. イシューの認識・集約マスコミや世論の影響を受けながら、解決されるべき課題群が認識され、集約され

る。

2. 課題設定(アジェンダ・セッティング)1で確認されたイシューについて、政府、政党、利益団体の影響力を受けながらアジェ

ンダが設定される。

3. 政策生成・形成2で提示された問題を解決するための政策案が作成される。

4. 政策採択・決定

政策案を採択し、法律として決定し、予算を獲得する。

5. 政策執行

政策が行政組織によって実行される段階。

6. 政策評価政策が社会に与えたインパクトを評価する。政策のアウトカムの推定。

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7. 終結目的が達成された、もしくはされなかった政策が終結する。

表6. 政策過程における段階※橋本(2005, pp.54-55)をもとに筆者作成。

橋本(2005)が提示したモデルは、宮川(1995, p.173)やDye(2013, p.34)の提示したモデルとも一致している。そのため本研究では、政策過程における段階として、表 6に示された 7つの段階を想定する。ただし、橋本(2005)が指摘しているように、実際の政策はこれらのモデルが提唱しているほどには直線的ではない(p.55)ことに注意したい。

第 2項 政策過程論の構成主義的アプローチ

 前項では、政策過程を定義づけ、橋本(2005)の論を引用して、政策過程論の理論的前

提となる段階論について説明した。

本項では、西岡(2011)および佐野(2014)による政策過程論のアプローチの分類を引用

して、政策過程論に対するアプローチのうち、構成主義的なものについて整理する。

西岡(2011)は、政策形成の 3つの変数 I(Interest, Institution, Idea)に対応した 3つの理論的アプローチの中でも新たなアプローチとして近年台頭し、 Ideaという変数に注目する構成主義とそのインパクトを「観念主義的転回」と名付けた(pp.97-98)。以下に、西岡(2011)による「構成主義的政策過程論」の定義を引用する。

構成主義的政策過程論とは、政策過程において観念的要素が果たす役割をとくに重視

する研究群のことを指し、第一に世界を実在視せずに、アイディア、言説、規範など

の観念的要素を通して社会的に構成されるものと考えることを基盤とする、第二に

それら観念的要素がアクターの思考や認識に作用して彼らの行為を規定し、結果的に

政策の形成や決定を左右するものであることに政策過程の核心を見出す、そうした

アプローチである。(p.101)

つまり、政策過程の中で、利害を持ったアクターでも、歴史的に規定された制度でもな

く、アイディアや言説といった要素に着目して、政策過程のメカニズムを解明しようと

するのが、構成主義的政策過程論の手法である。このアプローチの教育政策への援用の可

能性に関しては、佐野(2014)が構成主義的アプローチを用いた教育政策研究が近年増加しており、日本の教育研究は教育政策の持つ規範や意味内容に関心を持ってきたことから

今後もこのようなアプローチを行う研究は増加する可能性が高いと指摘するように

(pp.44-45)、マスコミや世論の言説に左右されやすく、教育という規範的な言説が飛び

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交う領域でこのアプローチを用いた分析をすることは意義があると考えられる。

 西岡(2011)は、このアプローチをさらに「ソフトな構成主義」と「ハードな構成主義」に二分している。端的に言えば、前者は実証主義的・分析的な構成主義、後者は解釈

志向的・批判的な構成主義である(pp.102-104)。本研究では、序章でも述べたように前者の「ソフトな構成主義」の立場から分析を試みる。そのため、以下では「ソフトな構

成主義」に分類されるアプローチに絞って、概観することにする。

 佐野(2014)は、西岡(2011)による「ソフトな構成主義」と「ハードな構成主義」という観点に加え、政治的次元と社会的次元という観点で、アプローチを類型化している。

図 2. 佐野(2014, pp.47)による構成主義的政策過程論の分類※あとで作成し直します。

ここでいう、「政治的次元」とは「政治家や官僚、政治に関心をもつ利益団体の活動が政

治的決定にかかわる直接的な局面」(佐野, 2014, p.45)を指し、「社会的次元」とは「ある事象が人々の間主観的な相互作用においてどのように形成されるのかという社会的レ

ベル」(佐野, 2014, p.46)を指している。前者が政治活動という点に注目するのとは対照的に、後者は政治を取り巻く社会や背景に焦点を当てる。

 「アイディアの政治」の代表的なアプローチとして有名なのは、キングドンが提唱し

た「政策の窓モデル」である。森(2018)によれば、このモデルにおいては 3つの流れの存在が仮定され、これらの流れが合流すると「政策の窓」が開き、アジェンダ設定が行

われるということから、通例このように呼ばれている。ここでいう 3つの流れとは、「問題」、「政策」、「政治」の流れである。すなわち「問題」の流れは多数存在する問

題の中から一定の問題が注目を集めるという流れであり、「政策」の流れは様々なアイ

ディアのうちあるアイディアに関して政策提案がなされ検討されるという流れであり、

「政治」の流れは多様に存在する政治的アクターが特定の活動を受容するようになると

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いう流れである(pp.127-131)。 図 2からもわかるように、「政策の窓モデル」に代表される「アイディアの政治」は政治的な局面に注目したものである。アイディアを制度のなかに位置づけたモデルを提

唱したのが、Schmidt(2008)による「言説的制度論(Discursive Institutionalism)」である。Schmidt(2008)によると、「言説的制度論」は①アイディアや言説を真剣に(seriously)とらえ、②アイディアや言説を制度的な文脈に位置づけ、③言説をコミュニ

ケーションの論理(logic of communication)に従うものと見なし、アイディアを意味的文脈に位置づけ、④政策上の変化をより動的なものとしてとらえる点に特徴があるとし

ている(p.304)。このように、アイディアや言説が飛び交う制度や社会といった文脈があ

ることを前提とし、そのアイディアを文脈の中に位置づけようとしたのが、「言説的制

度論」のアプローチである。この点で、「言説的制度論」は、図 2にも示される通り「アイディアの政治」よりも社会的次元を考慮したものである。

 以上で、政策過程論における構成主義的アプローチを整理した。図 2で示されるように、政策過程論の構成主義的アプローチは、分析的か批判的か、また政治的次元か社会的次元

かという観点で分類することができる。

第 2節 本研究で用いる方法論

 前節では、政策過程論における構成主義的アプローチを整理した。本節では、前節で整

理したアプローチのうち、次章以降で「政策の窓モデル」と「言説的制度論」を用いて、

日本とイングランドの政策過程を分析することを示し、その理由付けを行う。

 まず、「政策の窓モデル」を用いるのは、このアプローチを用いることで政策形成過

程における様々なアイディアを分析することができるからである。前述の通り、このア

プローチは、政策決定に至るまでの 3つの流れをたどるものである。つまり表 6の政策段階のうち 1から 4すなわちイシューの認識、課題(アジェンダ設定)、政策生成・形成、政策採択・決定を分析するためのアプローチだということができる。前章で、日本とイ

ングランドの 90年代以降の制度改革を概観した。そこで明らかになったのは、日本とイングランドでは同時期に制度改革が進んだものの、制度改革が進んだ背景や結果として

成立した政策の内容が異なるということだ。そのため、政策の前決定段階について分析

することで、なぜ一方の文脈では重視された課題が、他方では重視されなかったかとい

うことを知ることができる。

 さらに、これに加えて「言説的制度論」のアプローチも援用する。就学前教育の文脈で

政策過程論的分析をした松井(2018)の研究では、研究対象がカナダ国内の 2つの州であったことから、制度的文脈は考慮されていなかった。しかしながら、本研究では日本

とイングランドの事例を比較する。橋野(2006)は、1つの分析単位を対象とするケース

スタディ的な事例分析からでは、因果関係に関する研究課題には貢献できないとし、比較

分析の意義を唱えている(p.431)。同時に、教育政策過程の比較を行う際に注意すべき点

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として、制度の違いを指摘し、その例として日本とイギリスは同じ議員内閣制を採用し

ているが、その政治的な実態は大きく異なるということを述べている(pp.435-436)。これに加えて、就学前の児童に対する望ましいと考えられる教育のあり方も、国によって

異なることが容易に想像できる。このように、日本とイングランドの比較分析をするう

えで、佐野(2014)が指摘するところの「社会的次元」は無視できないと考えた。

 最後に、複数のモデルを用いることによって、より良く事象を捉えることができると

考えたため、「政策の窓モデル」と「言説的制度論」の双方を用いることとした。橋本

(2014)も、「政策の窓モデル」は提唱から 30年以上が経過しており、モデルの持つ限界の指摘があると述べている(p.69)。 また、草野(2012)も特定のモデルを用いて全ての政策過程を解明することは不可能であり、各モデルは相互補完的であることを指摘してい

る(pp.4-5)。 上記の理由から、政策の前決定過程という「政治的次元」を「政策の窓モデル」を用い

て明らかにし、日本とイングランドがそれぞれに持つ「社会的次元」すなわち制度上の

文脈にアイディアを位置付ける「言説的制度論」のアプローチを相互補完的に採用する。

これらのアプローチを援用して、本研究では日本とイングランドの就学前教育制度改革

の過程を分析的構造主義の観点から解明していく。

(以下、構想中)前述の通り、日本とイングランドの就学前教育改革のうち、90年代以降全体に焦点を当

てるのか、どこか一部分に焦点を当てるかは、未定です。

第 3章 日本の就学前教育改革の分析

第 4章 イングランドの就学前教育改革の分析

第 5章 考察

第 6章 結論

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春課題の反省松浦先生、ゼミ生のみなさま

ここまで私のつたない論文を読んでくださり、ありがとうございました。

今回の論文の反省点としては、まだまだイングランドの就学前教育制度に対する理解や

先行研究の読み込み(とりわけ海外文献)が不足していること、研究を進めるうえで必要な政策過程の方法論に対する理解が不足していることです。

昨年の夏課題の際も、先生やゼミ生の皆からたくさんの為になるコメントをいただきま

した。コメントの内容もさることながら、熱心に論文を読んでアドバイスをくださるゼ

ミ生の皆さんの姿勢が、私にとってとても励みになりました。

今回も、どんなアドバイスでも役に立つと思うので、読んでいてわかりにくい部分、矛

盾していると感じている部分に関して、ご指摘をいただきたいと思います。

特に 18期の方々には、率直に読みにくい部分を指摘してもらえると、より読み手を意識

した文章を書けるのではないかと思っています。よろしくお願い致します。

今後の論の流れや展開については、まだまだ迷っている部分が多いのですが、

以下に私が現時点で持っている考えや構想、反省を記します。

①比較対象国について暫定的にイングランドにしていますが、まだ迷っています。

家族主義的な観点でより近い→ドイツ

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地理的・文化的範囲が似ている→台湾

いち早く幼保一元化を達成した→スウェーデン

上記も比較対象国として、検討していましたが、今回イングランドにしたのは、以下の

ような理由です。

・今後政策文書を読むことを想定すると、原典にアクセスできるほうがよいこと。

・日本と同様、もともと保育がプライベートな領域だと捉えられている国のほうが検討

しやすいと考えたこと。

・スウェーデンなど公費負担がもともと大きく、人口が少ない国は、日本とは前提が大

きく異なると思ったこと。

・イギリスは他の先進国に比べて、日本と政治体制が近い。ドイツや北米の国々は連邦制

で、日本と教育政策決定のプロセスが異なる。

②政策過程分析の際の方法論政治科学の領域で、今まで学んだことがない要素が多く、もっと勉強が必要だと思いま

した。

方法論だけでなく、日本と分析対象のイングランドの政治体制、政治の風土がどう違うの

かをまとめた上で分析を進めることが必要だと感じています。

使用するモデル・方法論をあまり批判的にとらえることができなかったことも反省点で

す。

③比較対象国候補イングランドに関して

イングランドの政治、教育に関する知識が不足しており、これからイングランドを比較

対象とするのであれば、もっと勉強が必要だと思っています。

最後までお読みくださり、ありがとうございました!

引き続きどうぞよろしくお願い致します。

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