開発途上国における文化財保護とWeb-GIS(学校法人明星学園 高橋珠州彦様)...
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開発途上国における文化財保護とWeb-GIS-「Angkor Web-GIS」構築の試み-
髙橋珠州彦(学校法人 明星学園)
本発表は、独立行政法人国際協力機構の青年海外協力隊として2009年1月~2011年2月に活動した内容を基礎としている。
派遣国:カンボジア王国派遣職種:文化財保護配属機関:シェムリアップ州/アンコール地域保護管理機構
(APSARA機構)技術支援局GISユニット
発表の構成
1:はじめに
2:カンボジアにおけるGISデータの整備状況と活用事例
3:APSARA機構GISユニットの現状と課題
4:導入したWeb-GISの概要と有効性
5:おわりに
1:はじめに問題の所在
開発途上国における地形図の需要 ⇒ 大都市基盤整備・都市計画分野文化遺産保護分野・環境保護分野 …等
地形図整備の現状 ⇒ 未整備
地形図整備と効果的な活用は急務
★カンボジアの場合★・遺跡観光や首都への人口集中による急激な都市開発・地形図データは整備済み…活用面には疑問
例:アンコール遺跡周辺の世界遺産登録ゾーニングマップ
・広大な保護エリア・近接する市街地・直線的に描かれた境界線・保護エリアを分断する国道
紙地図としての供給のため、利用効果は限定される。
2:カンボジアにおけるGISデータの整備状況と活用事例
APSARA機構とはシェムリアップ州/アンコール地域保護管理機構
・アンコール遺跡群の調査/保護・都市基盤整備・都市計画・農村環境整備・林野管理・観光開発 …など
14局で構成
アンコール遺跡群とシェムリアップ州全域を管轄遺跡群保護にかかわる各部門を総合的に扱う国家機関
2:カンボジアにおけるGISデータの整備状況と活用事例
カンボジアにおける地形図データ整備事業1996~2005年日本の技術協力で開始成果品として地形図データ・航空写真等を納品(「JICA1998」「JICA2003」「JICA2005」等の呼称)
※APSARA機構GISユニットPC・大型プロッタ・GISソフトウェア等も寄贈以降、青年海外協力隊員(コンピュータ技術職)による技術指導を継続
2:カンボジアにおける近年のGISデータの整備状況と活用事例
各国機関による地形図データを利用した主な取り組み
①フランス極東学院(EFEO)・カンボジア文化芸術省CISARK ≪http://www.site-archeologique-khmer.org/≫
②デンマーク国際開発援助活動(Danida)The Atlas of Cambodia ≪http://www.cambodiaatlas.com/≫
③シドニー大学・APSARA機構ASIMS ~Angkor Spatial Information Management System~
≪APSARA機構内での限定利用≫
①フランス極東学院(EFEO)・カンボジア文化芸術省CISARK ≪http://www.site-archeologique-khmer.org/≫
②デンマーク国際開発援助活動(Danida)The Atlas of Cambodia ≪http://www.cambodiaatlas.com/≫
3:APSARA機構GISユニットの現状と課題
①日常的な取り組み・地形図データの管理・書類申請に応じた地図の提供(印刷した紙地図)
②課題・地形図データの需要が急増・書類申請による情報公開の限界・データ更新作業の滞り
(「JICA2005」以降は部分修正にとどまる)・慢性的な“資金不足”
⇒業務の停滞・士気の低下
4:Web-GISの途上国支援における有効性
APSARA機構GISユニットにおけるWeb-GISの導入
システム名【AngkorWeb-GIS】
概要:Free and Open Source Software for Geospatial(FOSS4G)を用いたWeb-GISシステム。Mapserverを使用。*(株)Orkneyのサンプルデータを応用し、APSARA機構の実情に合わせて開発。
想定利用者:遺跡保護関係の研究者、開発事業者、途上国支援団体関係者のほか、一般観光客など。
4:Web-GISの途上国支援における有効性
FOSS4Gを途上国で用いる利点・無償利用・再配布可能である意義
→著作権やライセンス管理の体制が未整備な状況下で効果を発揮。
・多くの情報がインターネット上で公開→特定のテキストブックに依存せず問題を解消できる。
★Angkor Web-GISの操作画面
B-5-3
移動・拡大縮小
凡例表示
画面切り替え(地図/検索)
レイヤー切り替え
★Angkor Web-GISの操作画面
市街地付近の土地利用表示
★Angkor Web-GISの操作画面
アンコールワット周辺の土地利用と建造物の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
州内の遺跡分布の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
州内の遺跡分布と世界遺産登録エリアの表示
★Angkor Web-GISの操作画面
等高線の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
道路網の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
群域の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
村域の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
小中学校分布の表示
★Angkor Web-GISの操作画面
遺跡詳細データの表示(複数検索の結果画面)
4:Web-GISの途上国支援における有効性
Web-GIS導入の問題点
人的課題…データ活用する意義の共有著作権管理と情報公開のバランス認識(管理職と現場スタッフとの連絡体制)
⇒利用者・開発者間で双方向の情報交換が必要
4:Web-GISの途上国支援における有効性
途上国における文化財保護/都市開発分野への応用
シェムリアップ州が抱える諸課題・観光関連施設の建設誘導・道路網の整備(交通体系の再整備)・遺跡周辺や市内での不法占拠者の居住地移転
⇒都市開発のゾーニング⇒未調査遺跡の保護を考慮した開発計画⇒集落整備に関わる設備配置計画
5:おわりに
開発途上国における諸課題(事例:急激な都市開発×文化遺産の保護)
部局間での情報の共有化が必須
管轄する機関で所有する基礎データを有効活用
著作権・ライセンス管理の問題と資金難
解決策として、FOSS4Gを活用したWeb-GISの導入
ご清聴ありがとうございました。