VSOP-2 による水メガメーザーの研究
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VSOP-2 による水メガメーザーの研究
萩原喜昭、 Maser Sub-working Group
研究の背景 系外銀河中に存在する水メーザーの中でも桁違いに光
度が明るく、典型的な天の川銀河中の水メーザーの百万倍以上の光度をもつメーザーは総してメガメーザー (MM)と呼ばれる。水 MM のその巨大光度と活発な強度変動はAGN の活動性に付随していることが知られる。メーザーはサブパーセクスケールの高速回転円盤をトレースしていたり、ジェットを背景とした分布が知られる。 このようにサブパーセクスケールで AGN 降着円盤外縁部のダイナミカルな構造の直接撮像を可能にする方法は、現時点では VLBI による水 MM 観測だけである。さらに回転円盤 (disc-maser) を利用して MM 銀河までの測距が可能であり、 Ho の精密決定にも利用できる。
科学目標1) SMBH の質量の精密計測 , AGN を取り巻く多様なサブパーセクスケール円
盤構造の研究 Case1: Thin disc 2-1) 円盤パラメータの測定 (disc thickness 等 ) 2-2) ケプラー回転するメーザー円盤をマッピングすることで中心の BH mass を精密に出来るだけ多くの AGN で求める。 2-3) メーザー源の proper motion の測定 - BH への質量降着プロセスの解明に向けて 2-4) AGN の dynamical center の同定 - 円盤を貫く連続波 bipolar outflow の検出 (22-43GHz でスペ クトルの測定 => 円盤モデルの推定 ?) Case 2: Thick disc 2-5) plasma torus とガス円盤の境界領域の研究 2-6) Angular momentum の測定 - もしあれば
2) ハッブル定数 (Ho) の精密決定
AGN の幾何学的距離を、回転メーザー円盤モデルを利用して求める。スペース VLBI の最高分解能を利用して地上観測で得た円盤モデルを改善し , セファイドで測定される Hoの決定精度3%を上回る観測精度を達成する。
目標 1: 最低1銀河で Hoの決定精度3%未満を達成する
目標 2: Ho の決定精度 3%未満を 5-6 天体各々で達成し、 N1/2乗則で 1% の Ho 精度を達成する
観測戦略• AGN の中心から典型的に 0.1-1 pc スケールに分布する水
メーザー源をマッピング - メーザースペクトルから円盤構造を示唆する disc maser を選択的にマッピング ( 距離の決定 (Ho) に必要 )
• メーザー源と中心連続波源の相対的位置関係を明らかにして、円盤 /torus 状構造などの幾何学的解釈をし、サブパーセクで分布する降着円盤外縁部の構造を求める。円盤であれば、半径、厚みなどの物理量を測定する。
• 位置ー速度図を利用してダイナミカルな構造を測定する。ケプラー回転が検出されれば、回転速度、回転半径から中心のBH 質量を求める
• 水メーザー源の proper motion の測定を試みる。 - 中心部方向へ移動するメーザー源があれば、質量降着の証拠
Ho の精密決定にはさらに以下が要求される - Disc maser の円盤モデルの精密化 (VLBI モニター要 ) - 系統速度付近のメーザーの速度ドリフトを単一鏡モニターで実施水 MM 源サーベイの実施 (BH/AGN, Ho共通 ) - disc maser は現在 10 天体程度だが、打ち上げまでに候補天体を
増やす。 MM 源を擁する AGN のサンプル数 ~100程度。 - 多様な AGN(Narrow-line 、 broad-line AGN) で実施 - GBT, NRO45m での単一鏡サーベイの実施 - 打ち上げ前、年間 200-300 時間、計3年間 - 100 天体 /year 観測、 ~10-15% の検出率 - 3年間で30天体の検出、その内新 disc-maser は 10-20 %程度か
観測側からの要求 - 位相準拠しないと検出不可能のメーザーが殆ど (< ~200mJy)
- 円盤上メーザー源の proper motion 測定に絶対位置精度が 必要 (30μ秒角 /year) (BH, Ho)
- 微弱なドップラー成分の観測のために rms ~ 3 mJy /channel(7σ~20mJy /channel が必要 )
- outflow の検出は連続波で rms< 1mJy (BH)
- 円盤上メーザー源の proper motion 測定 (BH)
- 円盤モデルの精密化にモニターが必要 (Ho)
- 2年間、約2ヶ月毎 ( 各々のメーザー源の短い life-time) (Ho)
天体リスト (BH/AGN sub-structure)
galaxy Vsys(km/s)
Flux 強度(Jy)
Disc ?
(Y/N)
Phase-refence (Y/N)
Accel.
(Y/N)
NGC4945 560 10 Y N NNGC4258 450 5 Y Y YNGC1068 1150 0.6 Y N NNGC1052 1510 0.2 ? Y NCircinus 450 10 Y N NIC2560 2930 0.3 Y Y Y
天体リスト (Ho 精密決定 )
galaxy Vsys
(km/s)
Flux 強度(Jy)
Disc ?
(Y/N)
Phase-refence (Y/N)
Accel.
(Y/N)
UGC3789 3325 0.13 Y Y/N YNGC6323 7772 0.07 Y Y YNGC3393 3750 0.07 Y Y YMrk1419 4932 0.04 ? Y Y
観測時間要求概算
• SMBH 質量 /AGN sub-structure 観測 (~5 天体 )
- 2回観測 (一回の観測で2軌道とする )
15 hr (衛星 :7.5hr x 2軌道 ) x 2 回 x 5 天体 = 150hr
• Ho 決定 (~3 天体 ) - 2ヶ月おき2年間モニター
15 hr x 12 回 x 3 = 540hr