トキソプラズマ症(Toxoplasmosis - 鹿児島大学 共 … 1 -...

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- 1 - トキソプラズマ症(Toxoplasmosis(仮訳)鹿児島大学 岡本嘉六 概要(ECDC: Toxoplasmosisトキソプラズマ症は、寄生虫 トキソ プラズマ原虫によって引き起こされる感染症で ある。猫のこの寄生虫の保有動物である。猫は、環境中にシスト(虫卵)を排泄してその 他の多くの動物に感染可能とする。ヒトは、シストを口に入れるか(猫との直接接触また は猫の糞で汚染された食品や水を介して)、豚肉や羊肉などのシストを加熱不十分なまま 食べることによって感染する。 一般的に、トキソ プラズマ症はヒトおよび動物に症状を引起さないが、健康者でもリ ンパ腺が腫れることがある。ただし、免疫不全者には命にかかわる病気を引き起こすこと がある。妊娠中に感染すると、胎児に影響を与える。 妊娠中の女性も症状はないが、胎児に感染すると、流産、早産、周産期死亡(播種性ト キソプラズマ症)、あるいは目と脳に影響を与える深刻な奇形を伴う先天性感染症になる ことがある。免疫不全者の感染は、中枢神経系に深刻な影響を与える傾向があり、その他 の臓器にも影響する。そのような患者は、長期の治療を必要とする(生涯に亘って随時)。 トキソプラズマのシストは、環境中で長期間生き残ることができ、果物や野菜を汚染し、 食肉中のシストは肉が食用可能である限り感染性を維持する。 訳注: 日本では豚の感染率が 1990 年代に激減し、食肉検査において摘発されること もなくなったため、ヒトのトキソプラズマ症は社会的関心が低くなってしまった。しかし、 放浪猫は増え続けており、トキソプラズマの虫卵を排泄する猫がどの程度いるのか判らな い。すなわち、感染した猫の糞で汚染された飲食物によるリスクは残っており、患者の会 もできているように、ヒトのトキソプラズマ症がなくなった訳ではない。 岡本の解説:共生と競争の生物界(13)トキソプラズマ2004/7/6EU/EEA 20082012 年に報告された確認済みトキソプラズマ症の症例数と 発生率報告があった国のみ2012 2011 2010 2009 2008 ドイツ 20/3.02 14/2.06 14/2.06 ポーランド 10/2.58 3/0.73 7/1.68 3/0.73 8/2.07 英国 5/0.62 7/0.88 9/1.14 10/1.27 5/0.65 チェコ 1/0.52 2/1.68 2/1.67 2/1.66 2/1.74 アイルランド 1/1.35 1/1.34 1/1.33 0 2/2.79 ルクセンブルグ 1/17.12 0 0 0 0 ラトビア 1/5.38 0 0 0 0 リチュアニア 1/3.31 0 0 0 0 フランス 186/23.01 244/30.58 266/33.32 スペイン 0 1 0 1 1 ブルガリア 0 0 0 17/24.1 64/92.86 ハンガリー 0 0 1/1.05 3/3.09 1/1.04 オーストラリア 0 0 1/1.32 1/1.3 0 ルーマニア 0 0 0 2/0.91 0 スロベニア 0 0 0 1/4.57 0 EU 40/1.49 214/5.99 279/7.85 306/10.57 83/4.07 Number-and-rates-of-confirmed-toxoplasmosis-reported-cases-EUEEA-2008-2012.xlsx 訳注:この報告書ではヒト症例データが示されてないので、ECDC の前年の報告書から表 のみを抜粋した。年間 10 名以上発生した欄を色づけしたが、フランス、ドイツ、英国、ブ

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トキソプラズマ症(Toxoplasmosis) (仮訳)鹿児島大学 岡本嘉六

概要(ECDC: Toxoplasmosis)

トキソプラズマ症は、寄生虫 トキソ プラズマ原虫によって引き起こされる感染症で

ある。猫のこの寄生虫の保有動物である。猫は、環境中にシスト(虫卵)を排泄してその

他の多くの動物に感染可能とする。ヒトは、シストを口に入れるか(猫との直接接触また

は猫の糞で汚染された食品や水を介して)、豚肉や羊肉などのシストを加熱不十分なまま

食べることによって感染する。

一般的に、トキソ プラズマ症はヒトおよび動物に症状を引起さないが、健康者でもリ

ンパ腺が腫れることがある。ただし、免疫不全者には命にかかわる病気を引き起こすこと

がある。妊娠中に感染すると、胎児に影響を与える。

妊娠中の女性も症状はないが、胎児に感染すると、流産、早産、周産期死亡(播種性ト

キソプラズマ症)、あるいは目と脳に影響を与える深刻な奇形を伴う先天性感染症になる

ことがある。免疫不全者の感染は、中枢神経系に深刻な影響を与える傾向があり、その他

の臓器にも影響する。そのような患者は、長期の治療を必要とする(生涯に亘って随時)。

トキソプラズマのシストは、環境中で長期間生き残ることができ、果物や野菜を汚染し、

食肉中のシストは肉が食用可能である限り感染性を維持する。

訳注: 日本では豚の感染率が 1990年代に激減し、食肉検査において摘発されること

もなくなったため、ヒトのトキソプラズマ症は社会的関心が低くなってしまった。しかし、

放浪猫は増え続けており、トキソプラズマの虫卵を排泄する猫がどの程度いるのか判らな

い。すなわち、感染した猫の糞で汚染された飲食物によるリスクは残っており、患者の会

もできているように、ヒトのトキソプラズマ症がなくなった訳ではない。

岡本の解説:共生と競争の生物界(13)トキソプラズマ(2004/7/6)

EU/EEAで 2008~2012 年に報告された確認済みトキソプラズマ症の症例数と

発生率(報告があった国のみ) 2012 2011 2010 2009 2008

ドイツ 20/3.02 14/2.06 14/2.06 ― ―

ポーランド 10/2.58 3/0.73 7/1.68 3/0.73 8/2.07

英国 5/0.62 7/0.88 9/1.14 10/1.27 5/0.65

チェコ 1/0.52 2/1.68 2/1.67 2/1.66 2/1.74

アイルランド 1/1.35 1/1.34 1/1.33 0 2/2.79

ルクセンブルグ 1/17.12 0 0 0 0

ラトビア 1/5.38 0 0 0 0

リチュアニア 1/3.31 0 0 0 0

フランス ― 186/23.01 244/30.58 266/33.32 ―

スペイン 0 1 0 1 1

ブルガリア 0 0 0 17/24.1 64/92.86

ハンガリー 0 0 1/1.05 3/3.09 1/1.04

オーストラリア 0 0 1/1.32 1/1.3 0

ルーマニア 0 0 0 2/0.91 0

スロベニア 0 0 0 1/4.57 0

EU 計 40/1.49 214/5.99 279/7.85 306/10.57 83/4.07

Number-and-rates-of-confirmed-toxoplasmosis-reported-cases-EUEEA-2008-2012.xlsx

訳注:この報告書ではヒト症例データが示されてないので、ECDCの前年の報告書から表

のみを抜粋した。年間 10名以上発生した欄を色づけしたが、フランス、ドイツ、英国、ブ

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ルガリアが該当し、とくにフランスが飛び抜けている。日本では過去の問題とされている

が、患者の発生状態は正確に把握されていない。以下はこの報告書からの抜粋である。

―――――――――――――――――――

要旨

ヒト: 2014年の EUにおける先天性トキソ プラズマ症のデータはこの報

告書には含まれないが、データは ECDC発生動向調査アトラス(準備中)で利

用可能になる。

動物: 2014年に、14の加盟国と非加盟の 2ヶ国が動物におけるトキソプ

ラズマのデータを提供した。陽性例(間接的または直接的な解析方法で)は、

豚(4加盟国で検査したサンプルの 9.7%が陽性)、牛(9加盟国で 3.9%が陽性)、

羊と山羊(12加盟国と 2つの非加盟国で 26.2%が陽性)および犬と猫(10加盟

国と 2つの非加盟国で 23.9%の犬と 12.3%の猫が陽性)で見つかった。それに

加えて、鹿、ロバ、キツネ、野ウサギ、馬、オオヤマネコ、野生オオツノ羊、

ウサギ、ペット動物、水牛、野生ネズミやオオカミからも検出された。

2.4. データの出典 Data sources

以下の節において、報告した国によって政教されるデータの種類は説明され

る。ヒトの発生動向調査システムに関する情報は、2014年の ECDCへの各国の

報告に基づいている。

2.4.10. トキソプラズマのデータ

ヒト: 2014年の EUにおける先天性トキソ プラズマ症のデータはこの報

告書には含まれないが、データは ECDC発生動向調査アトラス(準備中)で利

用可能になる。

動物: トキソプラズマ症は、ラトビア、ポーランドおよびスイスにおいて

は全ての動物、フィンランドにおいては野ウサギ, ウサギおよび齧歯類を除く全

ての動物について通知を要する感染症(届出伝染病)であるが、スイスでは積

極的監視計画は実施されていない。ドイツでは、豚、犬、猫のトキソプラズマ

症は通知を要する。オーストリア、デンマークおよびスウェーデンにおいて、

トキソプラズマ症は通知を要しない。ベルギー、ブルガリア、キプロス、チェ

コ、エストニア、フランス、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、

リトアニア、ルクセンブルグ、マルタ、オランダ、ポルトガル、ルーマニア、

スロバキア、スロベニア、スペインおよび英国の情報は不明である。

3.10. トキソプラズマ

附属文書には本節の動物についてのデータの要約が全てリンクされている。

また、顕著な知見がないので本節に含めなかったトキソプラズマを要約した図

表へのリンクもある。要約したデータは、件名が一覧表示され、Excel と PDF

ファイルがダウンロード可能である。

3.10.1. ヒトにおけるトキソプラズマ症

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2014年の EUにおける先天性トキソ プラズマ症のデータはこの報告書には

含まれないが、データは ECDC発生動向調査アトラス(準備中)で利用可能に

なる。

3.10.2. 動物におけるトキソプラズマ症

データの比較可能性: 報告した国のほとんどは、採取したサンプルの種類

および検査に用いた解析方法に関する情報を提供した。これらの方法(免疫組

織染色、PCR、組織学)は、データのより適切な解釈と説明を容易にしている。

一部の国は、トキソプラズマのシストや抗体の存在を肉やその他の組織を検査

する直接的方法を用い、他の国はトキソプラズマ特異抗体の存在を血液や肉汁

サンプル検査するため間接的な血清学的試験(凝集反応と螢光抗体検査法、

ELISA法、補体結合試験)を用いた。さらに、一部の結果は監視および特定の

全国調査に由来し、別の結果は臨床的調査研究に由来した。異なるサンプリン

グ方式とともに異なる検査と解析方法を使用したので、様々な国の結果を直接

比較できない。また、家畜におけるトキソ プラズマ感染の有病率は検査した動

物の年齢および農場の生産システムと飼育条件によって大きく影響することに

留意しなければならない。

動物: 2014年に、14の加盟国と非加盟の 2ヶ国が動物におけるトキソプ

ラズマのデータを提供した。

2014年に動物のトキソプラズマのデータを報告した国の概要

動物種 報告した国の数 国

猫 9

加盟国:エストニア、フィンランド、ドイツ、

ハンガリー、イタリア、ラトビア、オランダ、

ポーランド、スロバキア

2 非加盟国:ノルウェー、スイス

羊 10

加盟国: フィンランド、ドイツ、ハンガリー、

アイルランド、イタリア、ラトビア、オランダ、

スロバキア、スペイン、英国

2 非加盟国:ノルウェー、スイス

牛 9

加盟国:ドイツ、ハンガリー、アイルランド、

イタリア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、

スペイン、英国

1 非加盟国:ノルウェー

山羊 9

加盟国: フィンランド、ドイツ、アイルラン

ド、イタリア、オランダ、ポーランド、スロバ

キア、スペイン、英国

1 非加盟国:スイス

犬 8

加盟国:エストニア、フィンランド、ドイツ、

アイルランド、イタリア、ラトビア、オランダ、

スロバキア

2 非加盟国:ノルウェー、スイス

キツネ 2 加盟国:ドイツ、イタリア

1 非加盟国:スイス

野ウサギ 3

加盟国: フィンランド、イタリア、スロバキ

1 非加盟国:ノルウェー

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豚 4 加盟国: ドイツ、イタリア、スロバキア、英

単蹄動物 3 加盟国:ドイツ、アイルランド、イタリア

羊、山羊 2 加盟国:キプロス、イタリア

オオカミ 2 加盟国:エストニア、イタリア

ネズミ 2 加盟国:イタリア、オランダ

アルパカ 2 加盟国:アイルランド、イタリア

クマ、カナリア、カンタベリー・シャモア、シ

カ、イルカ、オオツノ羊、ヨーロッパケナガイ

タチ、イノシシ、ウサギ、リス、ペット、家禽、

ケッシ類、カメ、水牛、その他の動物

加盟国:イタリア

アルプス・シャモア、ラクダ、ハリネズミ、野

ウサギ、サル 非加盟国:スイス

鳥、カンガルー 1 加盟国:アイルランド

オオヤマネコ 1 加盟国:スロバキア

野生動物 1 加盟国:ポーランド

合計 13

加盟国:アイルランド、イタリア、エストニア、

フィンランド、ドイツ、ハンガリー、ラトビア、

オランダ、ポーランド、スロバキア、スペイン、

英国、キプロス

2 非加盟国:ノルウェー、スイス

IEアイルランド、ITイタリア、EEエストニア、FIフィンランド、DEドイツ、HU ハンガリ

ー、LVラトビア、NLオランダ、PLポーランド、SK スロバキア、ESスペイン、UK英国、

CYキプロス、NOノルウェー、CHスイス、

加盟国の 4ヶ国のみが豚におけるトキソプラズマのデータを報告した。全体

的として、2,557検査単位の 9.7%がトキソプラズマ陽性だった。豚について検

査されたサンプルの大半(80.2%)は、イタリアによるものだった。ただし、分

析法、飼育方法、豚の年齢は特定されていない。農場における絞込みサンプリ

ングでは、16.6%の群(検査した 905の内)が陽性だったが、他方、と畜場で

の割合は検査した 1,104 バッチの内 6.4%であった。全体として、報告された個

別動物(n=490)の 5.5%、ならびに群(n=963)の 15.6%がトキソプラズマ陽

性だった。英国で臨床調査中に集めた 13サンプルはラテックス凝集反応で調べ

た血清が陽性であったが、ドイツとスロバキアで検査した 434頭と 2頭の豚か

らは検出されなかった。

豚におけるトキソプラズマ、2014

国 対象 検査単位 検査法 検査数 陽性数 陽性率

英国 農場、疑い検査 個体 LAT 13 13 100

ドイツ 農場、無作為 個体 ? 434 0 0

農場 群 ? 57 0 0

イタリア

農場 個体 ? 41 14 34.15

農場、絞込み 群 ?

ELIZA

902

3

149

1

16.32

33.33

農場 群 IFAT 1 0 0

と畜場、絞込み バッチ ? 787 52 6.61

と畜場 バッチ PCR 317 19 5.99

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スロバキア 農場、疑い検査 個体 CFT 2 0 0

計 と畜場 1,104 71 6.43

計 農場・群 963 150 15.58

計 農場・個体 490 27 5.51

合計 2,557 248 9.7

LAT:ラテックス凝集反応、IFAT :免疫蛍光抗体法、CFT:補体結合反応、IHC:免疫組織

学検査、微:米生物学的検査、?:区分外

加盟国 9か国とノルウェーが 2014年における牛のトキソプラズマについて

のデータを報告した。全体として、加盟国で検査された 3,471単位の 3.9%はト

キソプラズマ陽性であった。豚と同様に、イタリアはほとんどのデータを提供

し、ドイツがそれに続いた。全体として、個体別報告(n=1,000)では 6.2%、

群としての報告(n=1,306)では 2.7%がトキソプラズマ陽性であった。個体レ

ベルでは、報告された有病率は、使用した検査方法に関わらず 0~100%の広い

範囲に分布した。イタリアにおいて、臨床調査中に得た一部のサンプルを除い

て、群れまたはと畜場のバッチ・レベルでは有病率が通常低かった。ドイツと

アイルランドの報告された有病率は 5%以下だったが、一般的に少数の動物の疑

いサンプリングを行ったポーランド、スペインおよび英国ではそれより高かっ

た。ハンガリー、ラトビア、スロバキアおよびノルウェーからは、トキソプラ

ズマ陽性例は報告されなかった。

牛におけるトキソプラズマ、2014

国 対象 検査単位 検査法 検査数 陽性数 陽性率

ドイツ

農場、無作為 個体

群 ?

599

113

16

0

2.67

0

農場、無作為、1歳以下 個体

群 ?

46

35

0

0

0

0

農場、無作為、乳牛 個体

群 ?

128

86

0

0

0

0

イタリア

農場、臨床調査 群

?

IFAT

PCR

11

9

18

2

3

1

18.18

33.33

5.56

施設 15 0 0

農場、絞込み

個体

群 ?

7

1,016

0

28

0

2.76

個体

群 ELISA

14

16

0

1

0

6.25

群 IFAT 1 0 0

個体 微 4 2 50

個体

群 PCR

3

1

1

0

33.33

0

と畜場、絞込み バッチ ?

PCR

775

375

31

7

4

1.87

と畜場、無作為絞込み 個体 IFAT 24 6 25

ラトビア 農場、臨床調査 個体 LAT 2 0 0

ポーランド 農場、絞込み 個体 PCR 58 25 43.1

スロバキア 農場、疑い検査 個体 LAT 3 0 0

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プペイン 農場、疑い検査 個体 ELISA 8 8 100

英国 農場、疑い検査 個体 LAT

IHC

2

2

2

0

100

0

計 と畜場 1,150 38 3.3

計 農場施設 15 0 0

計 農場・群 1,306 35 2.68

計 農場・個体 1,000 62 6.2

合計 3,471 135 3.89

LAT:ラテックス凝集反応、IFAT :免疫蛍光抗体法、CFT:補体結合反応、IHC:免疫組織学検

査、微:微生物学的検査、?:区分外

羊と山羊におけるトキソプラズマ、2014

国 対象 単位 検査法 検査数 陽性数 陽性率

キプロス 羊・山羊 農場、疑い検査 個体 ELISA 522 164 31.42

フィンランド 山羊

羊 農場、疑い検査 個体 組織

11

133

0

2

0

1.5

ドイツ

山羊 農場、無作為 個体

群 ?

19

1

6

0

31.58

0

羊 農場、無作為 個体

群 ?

84

20

5

0

5.95

0

ハンガリー 羊 農場、臨床調査 個体 6 1 16.67

アイルランド 山羊

羊 農場、臨床調査 個体 不明

6

697

0

62

0

8.9

イタリア

山羊

農場、臨床調査

個体

施設

?

?

ELIZA

IFAT

PCR

PCR

80

3

10

3

5

7

37

2

6

2

1

0

46.25

66.67

60

66.67

20

0

農場、絞込み 群 ? 1 0 0

農場、臨床調査 個体

PCR

1

4

1

0

100

0

農場、臨床調査

個体

個体

施設

?

ELIZA

IFAT

IFAT

PCR

375

36

31

6

1

14

168

19

28

4

0

0

44.8

52.78

90.32

66.67

0

0

農場、絞込み

個体

?

ELIZA

1

94

6

1

9

6

100

9.57

100

羊・山羊

農場、臨床調査 群

個体

ELIZA

PCR

134

9

31

3

23.13

33.33

農場、絞込み

個体

個体

?

?

PCR

PCR

8

766

27

195

1

232

1

84

12.5

30.79

3.7

43.08

と畜場、絞込み バッチ ?

PCR

758

51

43

2

5.67

3.92

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ラトビア 羊 農場、臨床調査 個体 LAT 10 0 0

オランダ

山羊 農場、臨床調査

農場、定期検査 個体 LAT

6

175

1

0

16.67

0

羊 農場、臨床調査

農場、定期検査 個体 LAT

10

387

6

6

60

1.55

ポーランド 山羊 農場、定期検査 個体 PCR 35 15 42.86

スロバキア 山羊 農場、臨床調査 個体

CFT

LAT

7

5

1

2

14.29

40

羊 農場、定期検査 個体 CFT 1 0 0

スペイン 山羊

羊 農場、定期検査 個体 ELIZA

31

10

8

8

25.81

80

英国

山羊 農場、定期検査

農場、臨床調査 個体

LAT

IFAT

81

64

57

7

70.37

10.94

農場、臨床調査

農場、定期検査

農場、臨床調査

個体

LAT

LAT

IFAT

865

571

865

244

421

200

28.21

73.73

23.12

ノルウェー 羊 農場、臨床調査 個体 IHC 6 0 0

スイス 山羊 農場、臨床調査 個体

IFAT

PCR

2

5

0

0

0

0

羊 農場、臨床調査 個体 PCR 5 1 20

計 と畜場 バッチ 809 45 5.56

計 施設 21 0 0

計 農場・群 1724 590 34.22

計 農場・個体 4694 1262 26.89

合計 26.17 26.17 26.17

LAT:ラテックス凝集反応、IFAT :免疫蛍光抗体法、CFT:補体結合反応、IHC:免疫組織学

検査、微:米生物学的検査、?:区分外

加盟国の 12ヶ国と非加盟 2ヶ国が、その他の動物種に比較してより多くの

羊と山羊におけるトキソプラズマ情報を報告したが、おそらく、これらの動物

種における寄生虫の臨床的重要性のためだと思われる。全体として、加盟国で

検査された 7,248単位の 26.2%がトキソプラズマ陽性であった。前年と同様に、

一部の国では血清学的検査の割合が高く、とくに臨床調査と疑いサンプリング

においてそうだった。全体として、報告された個体別(n=4,694)の陽性率は

26.9%であり、群別(n=1,724)では 34.2%がトキソプラズマ陽性であった。

加盟国の 10ヶ国と非加盟 2ヶ国が猫と犬における主として臨床調査による

トキソプラズマのデータを提供し、主に血清学的検査を用いて陽性サンプルが

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- 8 -

しばしば見つかった。全体として、加盟 10ヶ国と非加盟 2ヶ国で検査した 1,263

例の猫の 23.9%がトキソプラズマ陽性であったが、他方、犬では 1,767 例中

12.3%が陽性であった。最も多くの動物調べたイタリアは、猫と犬の両方におい

て高い血清学的陽性率を報告した。他方、フィンランドは、血清学的検査の代

わりに組織学的検査を使用したにもかかわらず非常に低い(<2%)猫の有病率

を報告し、犬では陽性例がなかった。

猫と犬におけるトキソプラズマ、2014

国 対象 検査法 検査数 陽性数 陽性率

エストニア

猫 ペット 無作為 ELISA

LAT

2

7

1

1

50

14.29

犬 ペット 無作為 ELISA

LAT

1

4

1

1

100

25

フィンランド 猫

犬 ペット 無作為臨床調査 組織

217

712

4

0

1.84

0

ドイツ 猫

犬 ペット 無作為 ?

143

215

3

0

2.1

0

ハンガリー 猫 動物病院 臨床調査 1 1 100

アイルランド 犬 繁殖場 臨床調査 不明 1 0 0

イタリア

ペット 無作為臨床調査 IFAT 40

611

0

231

0

37.81

繁殖場 絞込み調査 ELISA

PCR

1

3

0

0

0

0

放浪 無作為臨床調査

?

ELISA

IFAT

37

6

1

8

3

0

21.62

50

0

犬 繁殖場 無作為臨床調査

LAT

IFAT

PCR

3

1

692

1

1

1

0

188

0

0

33.33

0

27.17

0

0

絞込み調査 ELISA 9 1 11.11

ラトビア

猫 ペット 無作為臨床調査 LAT

ELISA

66

28

16

14

24.24

50

犬 ペット 無作為臨床調査 LAT

ELISA

45

8

5

1

11.11

12.5

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- 9 -

オランダ 猫

犬 ペット 無作為臨床調査 ELISA

26

58

5

15

19.23

25.86

ポーランド 猫 繁殖場 無作為臨床調査 22 0 0

スロバキア

猫 動物病院 無作為臨床調査

CFT

ELISA

LAT

37

33

2

0

14

0

0

42.42

0

絞込み臨床調査 LAT 506 3 0.59

犬 動物病院 絞込み臨床調査

CFT

ELISA

LAT

9

5

2

1

1

0

11.11

20

0

ノルウェー 猫

犬 ペット 無作為臨床調査 IHC

1

2

1

0

100

0

スイス 猫

犬 無作為臨床調査 IFAT

129

53

0

0

0

0

合計 3,556 519 14.6

LAT:ラテックス凝集反応、IFAT :免疫蛍光抗体法、CFT:補体結合反応、IHC:免疫組織学検

査、微:米生物学的検査、?:区分外

さらに、8加盟国と非加盟の 2ヶ国は、その他の動物種のデータを提供し、

鹿、ロバ、キツネ、野ウサギ、馬、オオヤマネコ、オオツノヒツジ(コルシカ

原産)、ウサギ、水牛、野生のネズミやオオカミのトキソプラズマ陽性例を報

告した。イタリアは、かなりの数の馬について報告し、検査法によって有病率

が相当変化したが、陽性サンプル・群の割合は常に 5%以下だった。

その他の動物におけるトキソプラズマ、2014

国 対象 検査法 単位 検査数 陽性数 陽性率

エストニア 全種 動物園 無作為

ELIZA 個体

30 14 46.67

LAT 43 30 69.77

オオカミ 動物園 無作為 LAT 個体 1 0 0

フィンランド 野ウサギ 野生 組織 個体 75 11 14.67

ドイツ

キツネ 野生 無作為 組織 個体 4 1 25

単蹄動物、馬 家畜 無作為 ? 個体

10

9

0

0

0

0

アイルランド

アルパカ 農場 臨床調査 不明 個体 1 0 0

鳥 野生 臨床調査 不明 個体 1 0 0

カンガルー 動物園 臨床調査 不明 個体 1 0 0

単蹄動物 家畜 臨床調査 不明 個体 1 0 0

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- 10 -

イタリア

アルパカ 動物園 絞込み PCR 個体 1 0 0

熊 野生 絞込み IFAT 個体 1 0 0

カナリア ペット 無作為 PCR 個体 1 0 0

シャモア 野生 絞込み IFAT 個体 4 0 0

鹿 野生 絞込み IFAT 個体 7 4 57.14

ノロジカ 野生 絞込み PCR 個体 1 0 0

イルカ 野生 絞込み PCR 個体 22 0 0

キツネ 野生 絞込み PCR 個体 3 3 100

野ウサギ 野生 絞込み PCR 個体 110 12 10.91

オオツノ羊 野生 絞込み 個体 90 11 12.22

その他の動物 家畜 無作為

絞込み

PCR

ELIZA 個体

5

15

0

13

0

86.67

その他の動物 野生 臨床調査 ?

PCR 個体

2

2

0

0

0

0

ペット 農場 臨床調査

無作為

IFAT

PCR

個体

個体

3

148

2

55

66.67

37.16

ケナガイタチ 農場 絞込み ? 個体 1 0 0

家禽 農場

と畜場 絞込み PCR

個体

バッチ

59

276

3

16

5.08

5.8

ウサギ 農場 臨床調査 PCR 個体 21 1 4.76

ネズミ 野生 ELIZA

PCR 個体

10

1

0

0

0

0

ケッシ類 野生 PCR 個体 1 0 0

単蹄動物、ロバ 農場 臨床調査

絞込み

IFAT

? 群

7

25

0

2

0

8

単蹄動物、馬

農場

臨床調査 IFAT 個体

1

47

0

2

0

4.26

無作為 IFAT 個体 1 0 0

絞込み IFAT 群 1124

10

35

0

3.11

0

と畜場 絞込み ?

PCR バッチ

396

311

16

10

4.04

3.22

リス 野生 臨床調査 ? 個体 1 0 0

カメ ペット 無作為 PCR 個体 144 0 0

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- 11 -

水牛 農場 臨床調査

絞込み

PCR

施設

個体

1

39

0

1

0

2.56

熊 野生 絞込み IFAT 個体 28 0 0

オオカミ 野生

臨床調査 PCR 個体 2 0 0

絞込み

?

IFAT

PCR

個体

2

2

1

1

1

0

50

50

0

オランダ ネズミ 野生 無作為 PCR 個体 57 1 1.75

ポーランド 野生動物 野生 無作為 PCR 個体 154 31 20.13

スロバキア 野ウサギ 野生 狩り CFT 個体 22 0 0

オオヤマネコ 動物園 絞込み ELIZA 個体 4 4 100

ノルウェー 野ウサギ 野生 臨床調査 IHC 個体 2 2 100

スイス

シャモア 動物園 臨床調査 PCR 個体 1 0 0

ラクダ 動物園 臨床調査 PCR 個体 1 0 0

キツネ 野生 無作為 PCR 個体 1 0 0

ハリネズミ 野生 無作為 PCR 個体 1 0 0

猿 動物園 臨床調査 PCR 個体 1 0 0

計 と畜場 バッチ 983 42 4.27

計 施設 1 0 0

計 農場・群 1,222 39 3.19

計 農場・個体 1,133 199 17.56

合計 3,339 280 8.39

LAT:ラテックス凝集反応、IFAT :免疫蛍光抗体法、CFT:補体結合反応、IHC:免疫組織学検査、微:米

生物学的検査、?:区分外

その他の動物におけるトキソプラズマ、2011~2012

国 2012 2011

動物 検査数 陽性数 陽性率 検査数 陽性数 陽性率

フィンランド 野ウサギ 96 10 10.4

フランス

マスクラット

ヌートリア

269

84

31.2

546

193

148

60

27.1

31.1

ドイツ 馬

キツネ

60

0

0

43

377

0

1

0

0.3

イタリア 野生イノシシ

野生イノシシ

218

35

185

0

84.9

0

267

183

1

8

0.4

4.4

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- 12 -

ハト

ケッシ類

水牛

30

56

34

24

0

3

80.0

0

5.9

ポーランド

鹿

鹿

野生イノシシ

野生イノシシ

34

43

586

105

3

5

201

8

8.8

11.6

34.3

7.6

スロバキア 野ウサギ

ケッシ類

95

0

0

120

0

0

ノルウェー キツネ 110 0 0

3.10.3. 考察

トキソプラズマの監視と発生動向調査ならびに食肉検査の近代化に関する

EFSAの意見で強調表示されているように、トキソプラズマはヒトの健康に重

大なリスクをもたらしており、豚、羊、山羊、飼育されたイノシシと鹿につい

ての食肉検査の改定に取組むべき相当の危害と見做さなければならない(EFSA

BIOHAZ Panel, 2007a, 2013b,c; EFSA BIOHAZ, CONTAM and AHAW

Panels, 2011)。加盟国によって報告された情報は、トキソプラズマが EU全域

でほとんどの家畜種に存在していることを示している。このことは、報告した

国のほとんどでトキソ プラズマが直接または間接的な方法で検出されるとい

う事実によって裏付けられる。陽性サンプルは、猫(自然宿主)、犬とともに

いくつかのその他の家畜において報告され、様々な家畜、飼育動物および野生

動物の間で広範に分布していることを示している。

報告された結果のより詳細な疫学的解釈は、様々な検査と解析法、サンプリ

ング方式、検査対象の動物の年齢、農場で適用される飼育方法に関する情報が

ないため不可能である。

最近、主な家畜種の血清学的陽性率と食肉中の Toxoplasma gondiiの存在と

の間の関連性が、EFSAの資金で支援された欧州研究機関連合によって精力的

に吟味されている。

―――――――――――――――――――――――――