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Title 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設 計法( Dissertation_全文 ) Author(s) 松尾, 真太朗 Citation Kyoto University (京都大学) Issue Date 2009-03-23 URL https://doi.org/10.14989/doctor.k14566 Right Type Thesis or Dissertation Textversion author Kyoto University

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Title 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設計法( Dissertation_全文 )

Author(s) 松尾, 真太朗

Citation Kyoto University (京都大学)

Issue Date 2009-03-23

URL https://doi.org/10.14989/doctor.k14566

Right

Type Thesis or Dissertation

Textversion author

Kyoto University

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外ダイアフラムを用いた

角形鋼管柱梁接合部の耐力と設計法

松尾 真太朗

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外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設計法

目  次

第1章 序 論

 1. 1 本研究の背景および目的 ………………………………………………………………… 1

 1. 2 既往の研究 ………………………………………………………………………………… 4

 1. 3 本論文の構成 ……………………………………………………………………………… 6

第2章 角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法

    (中柱を対象として)

 2. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 9

 2. 2 塑性解析 …………………………………………………………………………………… 10

   2. 2. 1 塑性解析モデル

   2. 2. 2 崩壊機構

   2. 2. 3 応力仕事

   2. 2. 4 崩壊荷重

   2. 2. 5 最大耐力

 2. 3 降伏耐力算定法 …………………………………………………………………………… 14

   2. 3. 1 既往の降伏耐力算定法概要

   2. 3. 2 本研究で対象とする外ダイアフラムに対する降伏耐力算定法

 2. 4 設計用の最大耐力算定法 ………………………………………………………………… 16

 2. 5 降伏耐力および最大耐力の近似算定式 ………………………………………………… 17

   2. 5. 1 x,x*の近似式

   2. 5. 2 降伏耐力と最大耐力の近似算定式

   2. 5. 3 降伏耐力と最大耐力の精算値と近似値の比較

 2. 6 隅肉溶接部の設計式 ……………………………………………………………………… 21

 2. 7 接合部の引張実験 ………………………………………………………………………… 22

   2. 7. 1 実験概要

   2. 7. 2 実験結果および考察

 2. 8 まとめ ……………………………………………………………………………………… 31

 付 2. 1 崩壊機構の領域 IIIの応力仕事 IIIWdについて ……………………………………… 32

 付 2. 2 l-D/t関係 ……………………………………………………………………………… 33

 付 2. 3 x,x*の近似式の誘導 ………………………………………………………………… 33

 付 2. 4 接合部の現実的な寸法詳細 …………………………………………………………… 36

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第3章 角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法

    (外周構面梁が取り付く外柱を対象として)

 3. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 37

 3. 2 耐力算定式の誘導 ………………………………………………………………………… 38

   3. 2. 1 塑性解析モデル

   3. 2. 2 崩壊機構

   3. 2. 3 応力仕事

   3. 2. 4 崩壊荷重

   3. 2. 5 最大耐力

   3. 2. 6 降伏耐力

   3. 2. 7 設計用最大耐力

   3. 2. 8 耐力式の解析上の処理

   3. 2. 9 降伏耐力および設計用最大耐力の近似算定式

   3. 2. 10 隅肉溶接部の設計式

 3. 3 外柱を想定した接合部引張実験 ………………………………………………………… 46

   3. 3. 1 実験概要

   3. 3. 2 実験結果

 3. 4 まとめ ……………………………………………………………………………………… 52

第4章 梁が偏心して取り付く外ダイアフラムの耐力算定法

 4. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 53

 4. 2 有限要素法解析 …………………………………………………………………………… 54

   4. 2. 1 解析モデル

   4. 2. 2 解析結果

 4. 3 偏心梁が取り付く外ダイアフラムの耐力 ……………………………………………… 58

   4. 3. 1 降伏耐力

   4. 3. 2 設計用最大耐力

   4. 3. 3 降伏耐力および設計用最大耐力の近似算定式

   4. 3. 4 降伏耐力計算値と有限要素法解析結果の比較

 4. 4 まとめ ……………………………………………………………………………………… 61

 付 4. 1 予備解析による有限要素法解析の精度検証 ………………………………………… 62

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第5章 分割外ダイアフラムの提案と設計法

 5. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 63

 5. 2 分割外ダイアフラムの概要 ……………………………………………………………… 64

 5. 3 梁フランジと高力ボルト接合された外ダイアフラムの耐力算定 …………………… 65

   5. 3. 1 降伏耐力

   5. 3. 2 最大耐力

 5. 4 接合部の引張実験 ………………………………………………………………………… 67

   5. 4. 1 実験概要

   5. 4. 2 実験結果

 5. 5 直交力を考慮した接合部設計 …………………………………………………………… 72

   5. 5. 1 直交力の算定式

   5. 5. 2 直交力に対する添板の耐力

   5. 5. 3 添板の必要板厚

   5. 5. 4 高力ボルト接合部の設計

 5. 6 まとめ ……………………………………………………………………………………… 78

第6章 アルミ溶射添板による摩擦接合部のすべり係数

 6. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 79

   6. 1. 1 本章の目的

   6. 1. 2 アルミ溶射の概要

 6. 2 高力ボルト 2面摩擦接合部のすべり試験 ……………………………………………… 81

   6. 2. 1 実験計画(シリーズ I)

   6. 2. 2 実験結果(シリーズ I)

   6. 2. 3 実験計画(シリーズ II)

   6. 2. 4 実験結果(シリーズ II)

   6. 2. 5 実験計画(シリーズ III)

   6. 2. 6 実験結果(シリーズ III)

 6. 3 実験結果に基づくすべり係数の検討 …………………………………………………… 108

 6. 4 まとめ ……………………………………………………………………………………… 111

 付 6. 1 摩擦係数に関する基礎実験 …………………………………………………………… 112

   6. 1. 1 はじめに

   6. 1. 2 実験計画

   6. 1. 3 実験パラメータ

   6. 1. 4 実験結果

   6. 1. 5 まとめ

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第7章 分割外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の部分架構実験

 7. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 117

 7. 2 載荷実験シリーズ I

   (添板摩擦面処理と外ダイアフラム分割方向をパラメータとして) ………………… 117

   7. 2. 1 試験体

   7. 2. 2 載荷および計測概要

   7. 2. 3 すべり試験

   7. 2. 4 実験結果および考察

 7. 3 載荷実験シリーズ II

   (外ダイアフラムと梁の接合法,柱の部位・種類,梁偏心をパラメータとして) ……… 128

   7. 3. 1 試験体

   7. 3. 2 載荷および計測概要

   7. 3. 3 すべり試験

   7. 3. 4 実験結果および考察

 7. 4 まとめ ……………………………………………………………………………………… 152

第8章 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の設計法

 8. 1 はじめに …………………………………………………………………………………… 155

 8. 2 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計項目 ………………………………… 155

   8. 2. 1 外ダイアフラムの耐力

   8. 2. 2 設計荷重

   8. 2. 3 梁-外ダイアフラム継手の設計

   8. 2. 4 溶接継目の設計

   8. 2. 5 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計フローチャート

 8. 3 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計例 …………………………………… 165

   8. 3. 1 【例題 1】外ダイアフラムと梁フランジを溶接接合,ウェブプレートと梁ウェ

ブを高力ボルト接合とする場合(中柱を対象として)

   8. 3. 2 【例題 2】外ダイアフラムと梁フランジ,およびウェブプレートと梁ウェブ

を高力ボルト接合とする場合(中柱を対象として)

   8. 3. 3 【例題 3】外ダイアフラムと梁フランジ,およびウェブプレートと梁ウェブ

を高力ボルト接合とする場合(外周構面梁が取り付く側の外柱を対象として)

 8. 4 45°方向の地震荷重に対する検討 ……………………………………………………… 170

 8. 5 まとめ ……………………………………………………………………………………… 172

 付 8. 1 異形隅肉溶接の脚長の考え方と耐力 ………………………………………………… 173

   8. 1. 1 異形隅肉溶接の定義

   8. 1. 2 前面隅肉溶接の耐力

 付 8. 2 ウェブプレート-外ダイアフラム間の溶接継目の設計法 ………………………… 174

   8. 2. 1 はじめに

   8. 2. 2 設計手順

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第9章 結 論

 9. 1 本論文の結論 ……………………………………………………………………………… 177

 9. 2 今後の課題 ………………………………………………………………………………… 180

付 録

 A. 1 記号一覧 …………………………………………………………………………………… 181

 A. 2 参考文献 …………………………………………………………………………………… 189

 A. 3 発表論文 …………………………………………………………………………………… 195

 A. 4 謝 辞 …………………………………………………………………………………… 198

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第1章  序 論

1. 1 本研究の背景および目的

 兵庫県南部地震(1995年)で鋼構造建築物が受けた被害として特筆すべき点は,被害を受けた中低

層鋼構造建築物の大部分が柱梁接合部に重大な損傷(例えば,角形鋼管柱梁接合部の場合,完全溶込

溶接部近傍の梁フランジや通しダイアフラムの破断,スカラップ底を起点とした母材の破断など)を

被っていたことである 1.1).これを受けて溶接部の詳細や梁端形状に関する研究がこれまで精力的に実

施されており,それらの成果については文献 1.2)にも記載されている.これらの成果が,今後発生す

る大地震時における柱梁接合部の被害軽減に貢献することは間違いないが,溶接品質は溶接工の技量

など,溶接条件によってバラつくため,完全溶込溶接部近傍における柱・梁の被害を完全に防止でき

る保証はない.

 柱と梁の接合方法の一つとして図 1.1に示す外ダイアフラムがある.これは,柱外周に鋼板を溶接

する形式をとっていて,柱貫通形式であることや梁端が溶接部から離れた位置にあることから,溶接

部近傍における柱・梁の被害を防止するために非常に有効な手段である.また柱貫通形式であるので,

通しダイアフラムに比べて加工工程が少なく,溶接施工も簡単となる.しかしながら,鋼構造建築物

への外ダイアフラムの適用例は,他の接合形式(通しダイアフラム形式,内ダイアフラム形式)に比

べて非常に少ないのが現状である.その最大の理由として,現行の指針 1.3)で採用されている設計式

が (1.1)式で表される実験式 1.4)であるため,柱断面や外ダイアフラムのサイズが実験範囲内に制限さ

れるなど設計の自由度が小さいことが考えられる.

P y = 2.22D

t$

t+hd

tdf p

32

D

t+hde oD 2

Y

vdy (1.1)

ここで,Py:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の短期許容耐力,D:鋼管幅,t:鋼管板厚,

td:外ダイアフラムの板厚,hd:外ダイアフラムせい(図 1.2参照),vdy:外ダイアフラムの降伏応力,

Y:外ダイアフラムの降伏比(SS400,SM400:0.58,SM490:0.66)である.なお,上式の記号は本

論で使用する記号と一致させているため,一部の記号は文献 1.3)と異なる.上式には,以下に示す適

用範囲の制限がある.

外ダイアフラム板厚

角形鋼管柱

hdi

D t

td

45c

a

外ダイアフラム 角形鋼管柱

i

hd

D t 45c

図 1.1 本論で対象とする外ダイアフラム 図 1.2 文献 1.5)で対象とした外ダイアフラム

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t d

D/2+hd#

vdy

24  (外ダイアフラムに局部座屈が生じないための条件) (1.2)

17 #t

D# 67 ,

D

hd# 0.4 , 0.75 #

t

t d# 2.0 , i # 3 c0   (実験範囲) (1.3)

ここで,iは水平ハンチ角度(図 1.1,1.2参照)である.

(1.1)式よりわかることは,鋼管の機械的性質の影響が反映されていないことである.これは,簡便な

設計式を得ることを目的として,接合部耐力に最も強く影響する機械的性質として外ダイアフラムの

引張強さを選択したことによる 1.4).

 高強度鋼を用いた柱梁接合部の適用も考えられるが,(1.1)式による設計では外ダイアフラムの耐力

を過小評価し,接合部を過大に設計してしまう可能性がある.そこで文献 1.5)では,有限要素法解析

を利用して外ダイアフラムの応力状態を推定することにより,(1.4)式で表される外ダイアフラムの耐

力式を立てた.さらに,文献 1.3)の設計式の基となった実験結果 1.6)とよく一致することを示している.

P y = 2vdy$t d (x+t/2+hd) (1.4)

ただし,上式において,

x = t 2.5t d

te o

21

t d

De o

41

vdy

vcyf p

21

(1.5)

ここで,vcyは鋼管の降伏応力である.

(1.4)式により,鋼管の機械的性質を考慮した接合部設計も可能になったといえる.文献 1.5)の成果

は文献 1.2)の解説で述べられている.(1.4)式よりわかることは,水平ハンチ角度や外ダイアフラム

出寸法 a(図 1.1)の影響が反映されていないことである.これは,図 1.2のような形状の場合,外ダ

イアフラム側面(一定値 hdの幅をもった領域)の引張降伏により接合部耐力が決まるからである 1.5).

2方向に梁が取り付く場合には,必然的に図 1.1のような形状をとることになるが,上記のように外

ダイアフラム側面の引張降伏を仮定した場合,接合部耐力をかなり過小評価する可能性がある.外ダ

イアフラムの加工のし易さという観点では,水平ハンチ角度を 45°とすることが多いと考えられる例

えば 1.31)が,そのような形状の実験はほとんどなく,文献 1.5)の有限要素モデルも i=30°しか検討さ

れていない.また,外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接部の設計については触れられていない.任意

形状の外ダイアフラムに対して設計式が構築できれば設計の自由度が増し,要求される耐震性能を有

した外ダイアフラム形式のラーメン構造の設計も可能になる.また,外ダイアフラムは通しダイアフ

ラムに比べて柱フェイスから突出する部分が長いため,梁との高力ボルト摩擦接合が容易であり,信

頼性の高い鋼構造建築物の実現が期待できる.

 以上より,本論文では図 1.1に示す任意形状の外ダイアフラムに対する耐力式を構築し,外ダイア

フラムと角形鋼管柱の溶接部や外ダイアフラムと梁の継手も含めた外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁

接合部の設計法を提案することを目的とする.実際に構造設計する際に,外柱の設計や梁の偏心に対

応した外ダイアフラムの設計は不可避な検討項目であると考えられる.本論ではこれらの設計法につ

いても言及している.

 外ダイアフラムと角形鋼管柱の従来の接合形式は,図 1.3に示す 2種類に大別される 1.7).図 1.3(a)

は 4枚の鋼板を角形鋼管柱に溶接する形式であり,鋼板同士は角形鋼管柱の 45°方向で突合せ溶接さ

れる.そのため,応力(歪)集中箇所となる角形鋼管角部近傍に溶接部が存在することになり(図 1.3(a)

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の点線で示す部位),溶接部での早期破断 1.6)が懸念される施工法でもある.一方,図 1.3(b)は,鋼板

から 1枚板として切り出した外ダイアフラムを角形鋼管柱に溶接する形式であるため,図 1.3(a)に対

して想定される早期破断の問題は解消される.しかしながら,施工時には柱端部から外ダイアフラム

を通して所定の位置に設置する手間がかかったり,外ダイアフラムと柱の間の隙間が大きくなるなど

の精度誤差上の特別な管理が必要となる.そこで,解決策の一つとして図 1.4に示す接合形式(以下,

分割外ダイアフラム形式)を提案することも本論の目的としている(本接合形式の詳細については 5

章を参照のこと).

 外ダイアフラムを用いることで通しダイアフラム形式柱梁接合部に見られるような柱の溶接部にお

ける破壊の心配は無くなる.その結果,外ダイアフラムを用いた柱梁接合部では,外ダイアフラムと

梁の継手近傍で破壊が生じると考えられ,このような部位には安定した品質が望まれる.品質安定化

のため,外ダイアフラムと梁を高力ボルト接合することが考えられる.摩擦接合部の一般的構成は

F10Tの高力ボルトと 0.45のすべり係数(赤錆あるいはブラスト処理(表面粗さが 50nmRz以上の

ショットまたはグリッド))の組合せである.このような摩擦接合では,必要ボルト本数の増加に伴っ

て外ダイアフラムの寸法が過大になり,接合部の施工性の悪化やコスト増を招く可能性もある.これ

までに高摩擦係数化の試み 1.8~ 1.14)や,高力ボルトの高強度化 1.15~ 1.17)が進められてきた.本論では,

分割外ダイアフラムと梁の摩擦接合部に,F14Tの高力ボルト 1.18)とアルミ溶射 1.8,1.12,1.13)の組合せを

前提として,ボルト本数を低減させることを考えた.アルミ溶射はもともと金属の防錆を目的として

1枚板

溶接

応力(歪)集中箇所

図 1.3 従来の外ダイアフラム

(a) 溶接タイプ (b) 1枚板タイプ

図 1.4 本論で提案する分割外ダイアフラム形式柱梁接合部(第 5章参照)

隅肉溶接隅肉溶接

スリット

高力ボルト接合 角形鋼管柱

分割外ダイアフラム

H形断面梁

(a) 組立後 (b) 組立前

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開発された技術であるが,建築分野の近年の研究によれば,摩擦接合面にアルミ溶射を施すことによ

り高いすべり係数が得られること 1.8,1.12,1.13)や,実物件の摩擦接合面にアルミ溶射が適用されたこと 1.12)

などが報告されている.しかしながらアルミ溶射を摩擦接合面に適用した研究例は非常に少なく,安

定して高いすべり係数が確保できるための条件は未だ不明である.そこで,本論では,添板にアルミ

溶射を施した高力ボルト摩擦接合部のすべり試験を実施し,種々のパラメータがすべり係数に及ぼす

影響を明らかにし,高いすべり係数を得られる諸条件を見出すことも目的としている.

1. 2 既往の研究

 柱梁接合部がラーメン架構を設計する上で最も重要な部分の一つであることは言うまでもない.通

しダイアフラム形式は,中空断面柱を使う中低層のビル形式のラーメン架構に近年最も多く採用され

ている接合形式である 1.2).この種の接合部は,ダイアフラムを介して梁フランジの曲げ応力を接合部

へ伝達するメカニズムが比較的わかりやすく接合部の局所的な変形も小さいため,曲げ耐力式は既に

確立され,接合部は一般に剛接扱いとされている.一方,本研究対象である外ダイアフラム形式の場

合,中空断面柱の内部にダイアフラムがないために生じる鋼管壁の局部変形や外ダイアフラムへの応

力(歪)集中が,接合部への応力伝達機構を複雑にし,曲げ耐力や弾性剛性の算定を難しくする原因

となっている.このような問題には,これまでに多くの研究者が取り組んできており,得られた主な

成果は文献 1.2),1.3)に取り入れられている.本節では,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部に

関する既往の研究を総括する.

 外ダイアフラム形式柱梁接合部の耐力に関する研究は,仲ら 1.19)がはじまりだと考えられる.文献

1.19)では接合部パネルの挙動を主題としているが,接合部の降伏荷重がダイアフラムの局部変形に

より決まることを示唆する記述が認められる.それ以降 1970年代に入ってからは,耐力に関する研

究が盛んに行われ,田渕・金谷 1.4),伴・今井 1.20),1.21)により耐力式が提案され,それらは文献 1.3)に

も記されている.これらの耐力式は,外ダイアフラム形式柱梁接合部の破壊形式の一つである局部破

壊(梁フランジ応力によって生じる鋼管壁の局部的な崩壊,あるいは鋼管壁の局部変形によって生じ

る柱の角部近傍の応力集中によるその部分の亀裂または局部座屈)に焦点を当てて行った実験から得

た回帰式である.田渕・金谷 1.22)~ 1.24)はさらに,同形式の柱梁接合部のパネルと外ダイアフラムの耐

力に関する一連の実験から精度よい推定式を誘導した.また,森田ら 1.25)は外ダイアフラム形式柱梁

接合部にはじめて降伏線理論を導入し,全塑性耐力および最大耐力算定式を誘導した.外ダイアフラ

ムの形状は様々であり,以後の研究では,中村・松尾により 4枚板外ダイアフラム 1.26)(4枚の長方形

の鋼板を柱の回りに正方形状に溶接する形式)やリング形外ダイアフラム 1.27)(正方形のリング状に

切断した鋼板を柱の回りに溶接する形式),越智らにより 4分割形式の外ダイアフラム 1.28)や鋳鋼製の

外ダイアフラム 1.29),1.30),杉本らにより高力ボルト接合による外ダイアフラム形式柱梁接合部 1.31)など

が提案された.これらはいずれも田渕・金谷らの式((1.1)式)1.4),あるいは森田の降伏線理論 1.25)を

応用して耐力を算定している.そして,田中ら 1.5)により外ダイアフラム形式柱梁接合部の弾性限に

ほぼ対応する降伏耐力評価式が理論的に誘導された((1.4)式).

 以上の研究はすべて中柱を対象としたものである.外ダイアフラム形式柱梁接合部の外柱に焦点を

当てた研究としては,松井・河野 1.32)の研究が挙げられる.松井・河野は,従来の外ダイアフラム形

式にサイドスチフナを併用した柱梁接合部に関して,接合部の引張実験および部分骨組実験を行い,

接合部の性状および骨組性状を検討し,接合部の耐力式を提案した.サイドスチフナは,伴・今井 1.20)

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の実験で一部適用されており,松井・河野によって確立された構法といえる.以後,黒羽らが行った

外ダイアフラムの実験 1.33)や福元らの研究 1.34)にもサイドスチフナが適用されている.その他,中村・

松尾 1.27)は,リング形外ダイアフラムが側柱に利用されることを想定して,梁偏心の影響を考慮した

最大耐力式を塑性解析により誘導した.これらの研究成果で共通していえることは,梁が偏心して取

り付く接合部は,無偏心に比べて耐力は同等以上であり変形能力は小さいということである.

 以上のように外ダイアフラム形式柱梁接合部の耐力に関する研究は,これまでに多く実施されてき

たが,接合部の力学的挙動を記述する上で必要となる剛性に関する研究は非常に少ないのが現状であ

る.剛性に関する研究は,山成ら 1.35)~ 1.37)によって精力的に行われてきた.山成らは,外ダイアフラ

ムのような複雑な応力状態を呈する接合部の剛性を解析的に得ることは困難なので,外ダイアフラム

形式柱梁接合部のモデルを多数作成して有限要素法解析により弾性剛性および 2次剛性を求め,それ

らを回帰分析により数式モデルとして提示した.また,半剛接合設計の可能性を考慮して,接合部の

局部変形を考慮したラーメン骨組の解析法を提案した 1.38).また,上場ら 1.39),1.40)は外ダイアフラム形

式柱梁接合部の部分架構モデルを多数作成し,有限要素法解析により局部変形挙動が骨組の挙動に及

ぼす影響を検討している.ここでは,局部変形の影響を必ずしも考慮する必要はなく,外ダイアフラ

ム形式柱梁接合部を剛接合と見なせる場合があることが示されている.さらに,上場らは有限要素法

解析の結果を利用して局部変形に関する復元力特性を得ている 1.41).

 外ダイアフラム形式は鋼管内部にダイアフラムが存在しないためにコンクリートの充填性がよいの

で,コンクリート充填(角形)鋼管柱梁接合部への適用を目的とした研究も多数行われている.コン

クリート充填角形鋼管柱梁接合部の耐力式は文献 1.3)および文献 1.42)に提示されており,次式で与

えられる.

P y = 2.63D

t$

t+hd

tdf p

32

D

t+hde oD 2

Y

vdy (1.6a)

P y =3

4hd$t d$vdy+2 (4t+t d) tvcy (1.6b)

ここで,vcyはvdyより大きいときvcy=vdyとし,Yは SS400,SM400で 0.59,SM490で 0.66

とする.

(I) i # 3 c0 のとき,(1.6a),(1.6b)式のうち,大きい方の値による.

(II) 3 c0 # i # 4 c5 のとき,(1.6b)式による.

適用範囲:20 #t

D# 50 , 0.75 #

t

t d# 2.0 , t d $ t f

     D

hd$ 0.1$

t d

t f((1.6a)式 ),

D

hd$ 0.15$

t d

t f((1.6b)式 ),tf:梁フランジ板厚

(1.6a)式は文献 1.4)の実験式に基づいているが,コンクリートが充填された場合の効果を取り入れて

いる 1.43).(1.6b)式は,鋼管中心から 45°方向の外ダイアフラム断面に降伏線(軸方向力とせん断力

の組合せ応力)を仮定して得られる耐力と,柱のウェブ協力幅を考え,その部分が軸方向力で降伏す

るとしたときの耐力との和より求めている 1.43).

 コンクリート充填角形鋼管柱梁接合部局部の荷重-変形関係モデルに関しては,河野ら 1.44)が外ダ

イアフラム形式柱梁接合部の引張実験および弾塑性有限要素法解析結果に基づいて,所定の変形に対

応する耐力を統計的に求めたモデルを提案している.さらに文献 1.45)では,この荷重-変形関係モ

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デルを十字形部分架構の解析に適用し,架構全体の挙動を精度よく予測できることを示している.他

方,福元 1.46)は,外ダイアフラム形式コンクリート充填角形鋼管柱梁接合部の荷重-変形関係モデル

化に際して,鋼管フランジに対応する板材を材軸方向と周方向に梁材を配置することで,また鋼管ウェ

ブを引張材に置き換えることで対処している.さらに,既往の実験資料 1.43),1.44)と解析結果を比較し,

接合部の塑性域(塑性率が 10程度)まで概ね推定できることを示している.

1. 3 本論文の構成

 本論文は 9章から構成され,各章の概要は以下のとおりである.

 第 1章「序論」では,本研究の背景および目的を述べ,既往の研究についてまとめた.

 第 2章「角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法(中柱を対象として)」では,中柱

を対象とした外ダイアフラムの耐力式を塑性解析を利用して誘導し,設計用に簡略化した近似式を提

案する.現行の指針 1.2), 1.3)では,外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接部の設計法が記されていない.

そこで,外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接部が破断しないための条件を設計式として提案する.接

合部の引張実験結果と提案式による耐力計算値を比較し,設計式として十分適用できることを確認す

る.さらに,外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接部の設計式を満足しない試験体については,溶接部

の破断で終局に到ることを確認する.

 第 3章「角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法(外周構面梁が取り付く外柱を対象

として)」では,柱芯と梁芯が一致する無偏心の外柱を対象とした外ダイアフラムの耐力式を誘導し,

設計用の近似式を提案する.外柱を対象とした既往の研究では,松井・河野の研究 1.32)に代表される

ように,外ダイアフラムの外側をサイドスチフナ形式とする接合部詳細に限られ,本論で扱う形状(図

3.2に詳述する)に対する検討はこれまでにない.外柱の場合,外側(外壁と接する側)に突出する

外ダイアフラムの寸法を意匠上の制約により小さくすることも考えられるが,本提案式によりその影

響も考慮できる.接合部の引張実験を行い,耐力実験値と計算値の比較を行い,設計式として適用で

きることを確認する.

 第 4章「梁が偏心して取り付く外ダイアフラムの耐力算定法」では,梁が柱に偏心して取り付く外

ダイアフラムを対象とした有限要素法(FEM)解析を行い,外ダイアフラムと角形鋼管柱の間での応

力伝達機構に及ぼす偏心の影響を分析する.第 3章で提案する無偏心の場合の耐力算定式を基本とし

て,FEM解析による分析結果に基づいて偏心の影響を考慮できる修正式を提案する.さらに,FEM

解析結果と計算値の比較により,この修正式が偏心の影響を簡便に評価できることを示す.

 第 5章「分割外ダイアフラムの提案と設計法」では,従来の外ダイアフラムに比べて施工性の向上

がはかれる分割外ダイアフラムを提案し,その概要ならびにそれを適用するにあたっての注意点を述

べる.本接合形式では高力ボルト摩擦接合を前提としているため,まずは梁フランジと高力ボルト接

合された外ダイアフラムの耐力算定法について述べる.接合部の引張実験により,耐力算定法が妥当

であることを確認するとともに,従来形式である 1枚板タイプの外ダイアフラムの力学性能と分割外

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ダイアフラムの力学性能が同等であることを確認する.また,分割外ダイアフラムと梁の継手を構成

する添板と高力ボルト接合部の設計では,分割外ダイアフラムのスリットが開こうとして発生する力

を考慮する必要はなく,従来どおり梁フランジ応力に対する設計を行えばよいことを解析的に明らか

にする.

 第 6章「アルミ溶射添板による摩擦接合部のすべり係数」では,2面摩擦接合を想定したすべり試

験を 3シリーズにわたって実施し,各種パラメータがすべり係数に与える定性的・定量的影響を明ら

かにする.シリーズ Iでは,溶射皮膜厚,ボルトの種類・列数および添板の厚さを主なパラメータと

したすべり試験を行う.またシリーズ IIでは,母材がすべり発生に先行して降伏する場合にすべり係

数が受ける影響について検討する.シリーズ IIIでは,施工現場で生じうる諸問題(肌すき,雨天に

よる摩擦面の水濡れ,引っかき傷など)とすべり係数の関係を検討する.

 第 7章「分割外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の部分架構実験」では,分割外ダイアフ

ラム形式のト字形部分架構による繰返し漸増振幅載荷実験を 2シリーズにわけて実施し,分割外ダイ

アフラム形式角形鋼管柱梁接合部の力学挙動を検討する.シリーズ Iでは,外ダイアフラムと梁フラ

ンジを接合する添板の摩擦面処理(アルミ溶射あるいは赤錆)の違いと外ダイアフラムの分割方向の

違いが接合部の力学挙動に与える影響を検討する.さらに第 2章および第 5章で提案する設計式の適

用性について検討する.シリーズ IIでは,シリーズ Iで得た知見をもとに設計し直した試験体を基本

として,外ダイアフラムと梁の接合法(高力ボルト接合,溶接接合),柱の用途(中柱,外柱),柱の

種類(中空,コンクリート充填)および梁偏心の有無をパラメータとした各種試験体の力学性能を比

較検討する.

 第 8章「外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の設計法」では,第 2章から第 7章で得られ

た知見をもとに,(分割)外ダイアフラムを用いた場合の角形鋼管柱梁接合部を設計する際に必要と

なる項目をまとめ,接合部の設計手順をフローチャートとして提示する.さらに,提示した手順に基

づいていくつかの設計例題を示す.

 第 9章「結論」では,本論文で得られた結論を示し,今後の課題について言及する.

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第2章  角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法(中柱を対象として)

2. 1 はじめに

 外ダイアフラム形式柱梁接合部の許容耐力を与えているものに文献 2.1),2.2)がある.文献 2.1)で

採用されている耐力式は文献 2.3),2.4)に基づくものであり,図 2.1(b)に示す外ダイアフラムを単調

引張載荷し,接合部の局部破壊に関係する寸法因子の影響を考慮して回帰分析の手法を用いて誘導し

たものである.しかし,この耐力式は実験式であり,適用には接合部寸法に関する制限がある.具体

的には,鋼管外径を D,鋼管板厚を t,外ダイアフラムせいを hd,外ダイアフラム板厚を td,水平ハ

ンチ角度を iとした場合に,17 # D/t # 67,hd/D # 0.4,0.75 # t d/t # 2.0,i # 30cという制限

が設けられている.また,文献 2.5),2.6)では,図 2.1(b)の形状を対象として,塑性解析を行っており,

文献 2.6)より得られた結果が文献 2.2)に設計式として採用されている.ただし,文献 2.1),2.2)では,

角形鋼管柱と外ダイアフラムの溶接部の設計に関しては記述されていない.

 本章の目的は,図 2.1(a)に示す直交梁の取付けも可能な任意形状の外ダイアフラムを対象として,

柱梁接合部の短期許容耐力に相当する耐力(以下,本章では降伏耐力と称する)および設計用の最大

耐力を簡単かつ精度良く評価できる算定式,ならびに角形鋼管柱と外ダイアフラムの溶接接合部の設

計法を提示することである.図 2.1(a)のような複雑な形状に対して降伏耐力を算定することは容易で

はないので,本章では,文献 2.6)で提案されている塑性解析結果を用いる手法を拡張した算定法を提

案する.さらに,提案する算定式を設計式として使用するために簡単かつ精度の良い近似式を誘導し,

その精度を検証する.最後に,地震時における外ダイアフラム形式柱梁接合部の引張側を模擬して単

調引張載荷実験を行い,提案する算定式が妥当であるかを確認する.

外ダイアフラム板厚

角形鋼管柱

hdi

D t

td

45c

外ダイアフラム 角形鋼管柱

i

hd

D t 45c

(a) 本章で対象とする形状 (b) 文献 2.2)~ 2.6)

図 2.1 外ダイアフラムの形状

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2. 2 塑性解析

2. 2. 1 塑性解析モデル

 本章では,中柱の柱梁接合部に地震時応力が作用する場合を対象としている.中柱の柱梁接合部に

作用する地震時応力は図 2.2左図のように表される.このとき外ダイアフラムに作用する応力は,角

形鋼管柱を挟んで逆対称に分布するものと考える.この場合,接合部の引張側と圧縮側の応力は同じ

分布を示すが,外ダイアフラムと角形鋼管柱との隅肉溶接接合部については,引張側で検討する必要

がある.そこで本章では,引張側だけを検討対象とする.なお,圧縮時に外ダイアフラムが座屈する

場合の耐力算定に関しては本論の対象外とする.接合部の引張側を図 2.2右図のようにモデル化する.

図 2.2右図に示すように荷重方向と直交する角形鋼管柱の中心線に位置する外ダイアフラム断面を無

応力状態と考え,以下の塑性解析では図 2右図に示す塑性解析モデルを用いる.

D

s s

D2

t P

無応力状態

両面隅肉溶接 or 異形隅肉溶接

梁フランジ

角形鋼管(中柱)

外ダイアフラム

地震時の応力状態

モデル化

板厚

i

無応力状態

B fBd

i

4 c5

hd

td

2. 2. 2 崩壊機構

 外ダイアフラム形式柱梁接合部に仮定する崩壊機構を図 2.3に示す.これは,鋼管フランジの面外

崩壊機構(図 2.4参照)と鋼管フランジから水平ハンチ部にかけて形成される外ダイアフラムの降伏

場からなる崩壊機構である.図 2.3は,梁フランジ幅 Bfが外ダイアフラム幅 Bdに比べて小さい接合

詳細(2.7節で述べる No.10試験体のような形状に相当)にも対応できるように,Bf<Bdの場合につ

いて示している.

2. 2. 3 応力仕事

 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部が梁フランジから引張荷重を受ける場合に,鋼管角部から

水平ハンチ部にかけて外ダイアフラムを三角形要素に分割し,各領域(以下,領域 I,II,IIIと呼ぶ)

が一様歪状態で降伏しているものと考える(図 2.3参照).三角形要素mにおける変位関数 mu,mvは,

一般化座標 ma1,...,ma6を用いると次式で表される 2.7).ただし,領域mを前下添え字で表す.

mu = ma1+ma2X+ma3Y (2.1a)

mv = ma4+ma5X+ma6Y (2.1b)

図 2.2 塑性解析モデル

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3つの節点番号を j,k,l(反時計回りに j,k,l)とし,各節点座標を Xj,Yjなどで表し,各節点変

位を uj,vjなどで表すと,ma1,...,ma6は次式で表される.

ma1 =2mA

(XkYl-XlYk) u j+(XlY j-X j Yl) uk+(X j Yk-XkY j) ul (2.2a)

ma2 =2mA

(Yk-Yl) u j+(Yl-Y j) uk+(Y j-Yk) ul (2.2b)

ma3 =2mA

(Xl-Xk) u j+(X j-Xl) uk+(Xk-X j) ul (2.2c)

ma4 =2mA

(XkYl-XlYk) v j+(XlY j-X j Yl) vk+(X j Yk-XkY j) vl (2.2d)

ma5 =2mA

(Yk-Yl) v j+(Yl-Y j) vk+(Y j-Yk) vl (2.2e)

ma6 =2mA

(Xl-Xk) v j+(X j-Xl) vk+(Xk-X j) vl (2.2f)

ここで,mAは領域mの面積である.

 mfX(X方向の歪),mfY(Y方向の歪),mcXY(面内せん断歪)は (2.3a~c)式で表されるので,mfX,

mfY,mcXYは (2.4a~c)式で与えられる.

mfX =2X

2mu , mfY =

2Y

2mv , mcXY =

2Y

2mu+

2X

2mv (2.3a),(2.3b),(2.3c)

mfX = ma2 , mfY = ma6 , mcXY = ma3+ma5 (2.4a),(2.4b),(2.4c)

一方,次式で表される von Misesの降伏条件および塑性流れの法線則を用いると,mfX,mfY,mxXYは

(2.6a)~ (2.6c)式で表される.

Y

X

u

v

a

bc

D 領域 I

領域 II

領域 III

角形鋼管柱

外ダイアフラム

梁フランジ

領域 II

領域 III

x+2

t

B fBd

hdp1d

i

P p

d

p1p2d

dd

x+2

t

D-t-2x

{

21

43

5

i

1

34

2

5 cb

hd

図 2.3 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の崩壊機構

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U = mvX2 -mvX$mvY +mvY

2+3mxXY2 -vdy

2 = 0 (2.5)

mfX = m (2mvX -mvY) (2.6a)

mfY = m (-mvX +2mvY) (2.6b)

mcXY = 6mmxXY (2.6c)

ここで,mvX:X方向の応力,mvY:Y方向の応力,mxXY:面内せん断応力,vdy:外ダイアフラムの

降伏応力,m:非負の比例係数である.(2.4a)~ (2.4c),(2.6a)~ (2.6c)式より,領域mにおける応力

と歪が求まるので,領域mの応力仕事 mWinは次式で表される.

mWin = (mvX$mfX +mvY $mfY +mxXY $mcXY) dVmV

# (2.7)

以下,図 2.3の領域 I,II,IIIにおける応力仕事を誘導する.

 まず,図 2.3に示すように各領域の節点番号を 1~ 5とする.このとき,各節点座標および節点変

位を以下のように設定する.

X1 = X3 = 0 , X 2 = X5 = a , X 4 = ld sin{ (2.8a),(2.8b),(2.8c)

Y1 =-(x+2

t) , Y 2 =-b , Y3 = 0 (2.8d),(2.8e),(2.8f)

Y 4 = ld cos{ , Y5 =-c (2.8g),(2.8h)

u1 = u 2 = d , u3 = u 4 = 0 , u5 = p1d (2.8i),(2.8j),(2.8k)

v1 = v 2 = v3 = v 4 = 0 , v5 = p1p2d (2.8l),(2.8m)

ここで,a:外ダイアフラムの出寸法,b:梁フランジ縁から鋼管角部までの距離,c:外ダイアフラ

ム端部の角部から鋼管角部までの Y方向距離,ld:境界線③④の長さ((2.9)式参照,ただし,i:水

平ハンチ角度,hd:外ダイアフラムせい),{:境界線③④と Y方向のなす角度,d:荷重方向(X方向)

への仮想変位,p 1,p 2:比例係数(0<p 1<1),x:鋼管フランジの降伏領域を表す寸法,t:鋼管板厚

である.

ld =cos{+tani$sin{

1+tani$hd (2.9)

(1) 領域 I の応力仕事

 (2.2),(2.4),(2.8)式より領域 Iの歪を,(2.5),(2.6)式より領域 Iの応力を求め,それらを (2.7)式

に代入することにより,領域 Iの応力仕事 IWdは次式で得られる.

IWd = 23

1x+

2

t-be o

2

+4

a 2

* 4 $t dvdyd (2.10)

ここで,td:外ダイアフラムの板厚である.

(2) 領域 II の応力仕事

 領域 Iの場合と同様の手続を行うことにより,領域 IIの応力仕事 IIWdは次式で得られる.

IIWd = 23

11+

4

tan2{e o $

1+tan{$tani1+tani

$hdtdvdyd (2.11)

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(3) 領域 III の応力仕事

 図 2.3より領域 IIIは 3辺のうち 2辺の変形拘束がゼロであるため,領域 IIIの応力仕事の最小値

IIIWdは非常に小さいものと考えられる.そこで本論では IIIWdを無視する.IIIWdを無視することの妥

当性については付 2.1に述べている.

(4) 鋼管フランジの応力仕事

 鋼管フランジの応力仕事Wcに関しては,図 2.4に示す面外崩壊機構を仮定することにより,次式

で得られる 2.8).

Wc =x

td+2s+

lx

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r) 3 t 2vcyd (2.12)

ここで,s:溶接脚長,D:鋼管幅,l:鋼管フランジの降伏領域を表す係数,v cy:鋼管フランジの降

伏応力である.

xx

降伏線 降伏場

角形鋼管フランジ

d

d

lx

t d+

2s

D - t - 2s

lx

Pc

Pc

2. 2. 4 崩壊荷重

 前項の結果から,外ダイアフラム形式柱梁接合部の応力仕事Winは次式で得られる.

Win = IWd+IIWd+Wc (2.13)

外力 Pに対する外力仕事はWex=Pdとなるので,仮想仕事の原理より外ダイアフラム形式柱梁接合

部の崩壊荷重 Ppは次式で得られる.

P p =d

IWd+IIWd+Wc (2.14)

上記の最小値を得るために次式を満足する x,l,{を求める.

2x

2P p= 0 ,

2l

2P p= 0 ,

2{

2P p= 0 (2.15a),(2.15b),(2.15c)

上式から次のような関係が得られる.

図 2.4 角形鋼管フランジの面外崩壊機構

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12 (x+t/2-b) 2+3a 2

t dvdy (x+t/2-b)-

4x 2

t 2vcy {t d+2s+(D-t) /l}= 0 (2.16a)

2 (r+4l logel) x-(D-t)r = 0 (2.16b)

{ = arctan (4 tani) (2.16c)

(2.16a)~ (2.16c)式より得られる x,l,{を (2.14)式に代入すると,Ppは次式で表される.

P p =3

2x+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd* 4$t dvdy

+x

td+2s+

lx

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcy (2.17)

2. 2. 5 最大耐力

 外ダイアフラム形式柱梁接合部の最大耐力 Pmは,崩壊荷重 Ppに含まれる各鋼材の降伏応力を引張

強さに置き換えて算定するものと考える.すなわち,Pmは次式で表される.

Pm =3

2x *+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd* 4$t dvdu

+x *

t d+2s+

lx *

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcu (2.18)

ただし,上式において,

12 (x *+t/2-b) 2+3a 2

t dvdu(x *+t/2-b)-

4 (x *) 2

t 2vcu {t d+2s+(D-t) /l*}= 0 (2.19a)

2 (r+4l* logel*) x *-(D-t)r = 0 (2.19b)

ここで,x *:最大耐力時の鋼管フランジ降伏領域を表す寸法,l *:最大耐力時の鋼管フランジ降伏領

域を表す係数,vdu:外ダイアフラムの引張強さ,vcu:鋼管フランジの引張強さである.

2. 3 降伏耐力算定法

 本章では,文献 2.6)の耐力算定法を拡張して 2.2節の塑性解析より得られる結果を利用した降伏耐

力算定法を提案する.

2. 3. 1 既往の降伏耐力算定法概要

 文献 2.6)では,図 2.1(b)の外ダイアフラムに対して図 2.5に示す崩壊機構を仮定し,降伏耐力時に

は図 2.5(b)のハッチをかけた領域で外ダイアフラムの X方向応力が降伏応力に等しく,残りの領域は

応力を負担しないという考え方に基づいて降伏耐力式 jPyを誘導している.すなわち,ハッチ部分の

幅は 2(x'+tcf/2+hd)であるから,

jP y = 2t dvdy ( lx +tcf /2+hd) (2.20)

ただし,上式における x'には次の近似式が与えられている.なお,文献 2.6)では鋼管フランジ降伏領

域を表す記号として xを用いているが,本論では図 2.3や図 2.4の xと区別するために x'で表す.

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lx , tcf 2.5t d

tcff p

21

t d

Df p

41

vdy

vcyf p

21

(2.21)

2. 3. 2 本研究で対象とする外ダイアフラムに対する降伏耐力算定法

 本章でも文献 2.6)の考え方を参考にして,次のように仮定する.

・ 図 2.6に示す境界線①③④における外ダイアフラムの X方向応力の総和で降伏耐力を評価し,

角形鋼管フランジの中心付近(D-2x-t)で応力は伝達されない.

このように仮定したのは,降伏耐力時では,角形鋼管フランジ中心付近のフランジ面外曲げによる応

力伝達が期待できないためである.

 本章で対象とする外ダイアフラムの崩壊機構では,平面応力状態を仮定してMisesの降伏条件を適

用しているため,外ダイアフラムが負担する X方向応力に降伏応力を採用することはできない.そこ

で,本章では以下に示す手続で X方向応力を算定する.

D

X

I

II

1

4

5

2

i

3

応力の伝達を無視する

x+2t

x+2t

D -2x -t

鋼管ウェブ

鋼管ウェブ

鋼管フランジ

{svX

IvX

svX

Py

h d

h d

I

II

i

図 2.6 降伏耐力算定時に仮定する伝達応力

d

t cf

D -t cf

x' x'

D

hd

hd

dt cf

x'

x'

X

j Py

l'x'

l'x'

図 2.5 文献 2.6)の崩壊機構

(a) 角形鋼管フランジの面外崩壊機構 (b) 外ダイアフラムの崩壊機構

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- 16 -

 降伏領域 2(x+t/2)で負担する X方向応力を塑性解析より得られる領域 I(図 2.6参照)の X方向

応力 IvXとすると,降伏領域 2(x+t/2)で負担する X方向応力の総和 Pfyは次式で与えられる.

P fy = 2IvX (x+t/2) t d (2.22)

ただし,上式において,

IvX = 2vdy 3 1+4 (x+t/2-b) 2

a 2

) 3 (2.23)

外ダイアフラムの領域 IIから角形鋼管ウェブへ伝達される X方向応力 svX(図 2.6参照)は,塑性解

析より得られる領域 IIの X方向応力 IIvXと面内せん断応力 IIxXYを用いて次式で与える.

svX =-{IIvX cos (r-{)+IIxXY sin (r-{)} (2.24)

ただし,上式において,

IIvX =3 {1+(tan2{) /4}

2vdy=

3 (1+4tan2i)

2vdy (2.25a)

IIxXY =-2 3 {1+(tan2{) /4}

vdy tan{=-

3 (1+4tan2i)

2vdy tani (2.25b)

であり,これらは (2.4a)~ (2.4c),(2.6a)~ (2.6c)式より求められる.なお,(2.25a),(2.25b)式の 2

つめの等号において (2.16c)式を適用した.

したがって,角形鋼管ウェブで負担する X方向応力の総和 Psyは次式で与えられる.

Psy = 2 (IIvX cos{-IIxXY sin{) ld t d =3 (1+4tan2i)

4 (1+tani)$hdtdvdy (2.26)

仮定より降伏耐力 Pyは (2.22),(2.26)式の和で与えられる.

Py=3 {1 + a2 /4 (x + t/2 - b)2 }

4 (x + t/2)+

3 (1 + 4 tan2i)

4 (1 + tani)hd

R

T

SSS

V

X

WWW$ t d vdy (2.27)

2. 4 設計用の最大耐力算定法

 文献 2.2)では,梁端接合部の設計条件として次式が与えられている.

j M u$ a $ bM p (2.28)

ここで,jMu:梁端接合部の最大曲げ耐力,bMp:梁の全塑性モーメント,a:梁端の接合部係数である.2.2.5

項で提案した外ダイアフラム形式柱梁接合部の最大耐力は,実験値を過小評価するものの,そのとき

の鋼管面外変形は非常に大きい(2.7節参照).実験結果を参照すると,最大で 10mmを超えるものも

見られ,梁端回転角に換算する(仮に,梁せいが鋼管径の 1.5倍とする)と 1/20rad以上の過大な変

形時に対応していることになる.そこで本章では,2.3節で述べた降伏耐力算定法を準用して,(2.28)

式の jMuに適用するために必要な設計用の最大耐力算定式(以下,最大耐力)を提案する.すなわち,

最大耐力 Puは vdyを vduに置き換えて次式で与える.

Pu=3 {1 + a2 /4 (x *+ t/2 - b)2 }

4 (x *+ t/2)+

3 (1 + 4 tan2i)

4 (1 + tani)hd

R

T

SSS

V

X

WWW$ t d vdu (2.29)

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- 17 -

(2.29)式は,角形鋼管フランジの中央付近の応力負担を無視して誘導したものなので,(2.18)式によ

る最大耐力 Pmに比べて小さくなる.

2. 5 降伏耐力および最大耐力の近似算定式

 (2.27),(2.29)式で外ダイアフラム形式柱梁接合部の降伏耐力と最大耐力を算定する過程で,x,l,

x *,l *の算定に数値解析を要するため,個々の接合部に対して耐力を得るには計算が複雑で実用的で

はない.本節では,x,x*の近似式を用いて接合部の耐力を算定する方法を提示する.

2. 5. 1 x,x* の近似式

 付 2.3に示す誘導にしたがって,x,x*を次の近似式で表す.

D

xap=

4l

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcyf p

3

1

+3

1

D

b (2.30)

D

xap*

=4l*

3

t d

t

D

t

D

a

vdu

vcuf p

3

1

+3

1

D

b (2.31)

ここで,x,x*の下添字 apは近似式であることを表している.

2. 5. 2 降伏耐力と最大耐力の近似算定式

 (2.27)式の xに (2.30)式を,(2.29)式の x *に (2.31)式を代入して,降伏耐力と最大耐力の近似式

Py,ap,Pu,apを次式で与える.

Py,ap=3 {1 + a2 /4 (xap+ t/2 - b)2 }

4 (xap+ t/2)+

3 (1 + 4 tan2i)

4 (1 + tani)hd

R

T

SSS

V

X

WWW$ t d vdy (2.32)

Pu,ap=3 {1 + a2 /4 (xap

* + t/2 - b)2 }

4 (xap* + t/2)

+3 (1 + 4 tan2i)

4 (1 + tani)hd

R

T

SSS

V

X

WWW$ t d vdu (2.33)

以下,本章では,(2.27)式を降伏耐力の精算値,(2.29)式を最大耐力の精算値,(2.30)式を降伏耐力の

近似値,(2.31)式を最大耐力の近似値と称する.

2. 5. 3 降伏耐力と最大耐力の精算値と近似値の比較

 (2.30),(2.31)式で降伏耐力と最大耐力を算定するためには,(2.30),(2.31)式に含まれる l,l *の

値を仮定しなければならない.付 2.2より,lは鋼管幅厚比 D/tと梁フランジ幅 Bfの違いに対して大

きく変動する.以下では,降伏耐力と最大耐力の精算値と近似値を,D/tおよび Bf/Dとの関係を用

いて比較検討する.

 耐力 p-鋼管幅厚比 D/t関係の計算例を図 2.7に示す.ただし,pは各耐力算定値(Pyまたは Pu)

をvdy $ t d $ Dで無次元化した値を表す.パラメータおよび凡例は図中に示すとおりである.降伏耐力の

精算値は,l=1.0による近似値とよく一致している.ここで,l=1.0とは,図 2.4に示す降伏場に正

円を仮定することに対応する.最大耐力の精算値は,Bf/D=0.5の場合,l *=1.0による近似値とよく

一致し(図 2.7(a),(b),(e),(f)),Bf/D=0.75の場合,l*=1.5による近似値と概ね一致している(図

2.7(c),(d),(g),(h)).D/tは近似値と精算値の差にほとんど影響しない.

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- 18 -

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35

p

t

D

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

0.0

1.0

2.0

15 20 25 30 35t

D

p

図 2.7 p- D/t関係の計算例

hd/D=0.1, Bf=Bd, vdy=235N/mm2, vcy=295N/mm2

vdu=400N/mm2, vcu=400N/mm2

共通パラメータ

凡例

実線:py,点線:pu,●:py,ap (l=1.0),■:pu,ap (l*=1.0),○:py,ap (l=1.5),□:pu,ap (l

*=1.5)

(a) a/D=0.5, D/td=20, Bf/D=0.5

(c) a/D=0.5, D/td=20, Bf/D=0.75

(e) a/D=0.75, D/td=20, Bf/D=0.5

(g) a/D=0.75, D/td=20, Bf/D=0.75

(d) a/D=0.5, D/td=30, Bf/D=0.75

(b) a/D=0.5, D/td=30, Bf/D=0.5

(h) a/D=0.75, D/td=30, Bf/D=0.75

(f) a/D=0.75, D/td=30, Bf/D=0.5

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0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

図 2.8 p- Bf/D関係の計算例

Bf=Bd, vdy=235N/mm2, vcy=295N/mm2

vdu=400N/mm2, vcu=400N/mm2

共通パラメータ

凡例

実線:py,点線:pu,●:py,ap (l=1.0),■:pu,ap (l*=1.0),○:py,ap (l=1.5),□:pu,ap (l

*=1.5)

(a) a/D=0.5 , hd/D=0.1

D/td=20 , D/t=20

(d) a/D=0.5 , hd/D=0.1

D/td=30 , D/t=30

(e) a/D=0.75 , hd/D=0.1

D/td=20 , D/t=20

(f) a/D=0.75 , hd/D=0.1

D/td=30 , D/t=20

(c) a/D=0.5 , hd/D=0.1

D/td=20 , D/t=30

(b) a/D=0.5 , hd/D=0.1

D/td=30 , D/t=20

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0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

0.0

1.0

2.0

0.4 0.6 0.8 1.0

p

D

B f

(h) a/D=0.75 , hd/D=0.1

D/td=30 , D/t=30

(g) a/D=0.75 , hd/D=0.1

D/td=20 , D/t=30

(l) a/D=0.75 , hd/D=0.2

D/td=30 , D/t=30

(k) a/D=0.75 , hd/D=0.2

D/td=20 , D/t=30

(i) a/D=0.75 , hd/D=0.2

D/td=20 , D/t=20

(j) a/D=0.75 , hd/D=0.2

D/td=30 , D/t=20

図 2.8 p- Bf/D関係の計算例

Bf=Bd, vdy=235N/mm2, vcy=295N/mm2

vdu=400N/mm2, vcu=400N/mm2

共通パラメータ

凡例

実線:py,点線:pu,●:py,ap (l=1.0),■:pu,ap (l*=1.0),○:py,ap (l=1.5),□:pu,ap (l

*=1.5)

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- 21 -

 次に耐力 p-梁フランジ幅 Bf/D関係の計算例を図 2.8に示す.凡例は図中に示すとおりである.

降伏耐力の精算値は,l=1.0による近似値とよく一致している.最大耐力に関しては,Bf/Dが小さ

い場合に近似値が精算値より 30%程度小さくなる場合(例えば,図 2.8(c),(d))もあるが,l *=1.0

による近似の方が l*=1.5による近似より精度は良い.

 以上の検討結果より,現実的な寸法を有する接合部(付 2.4参照)の耐力は,l=1.0を (2.30)式,

l*=1.0を (2.31)式に適用した近似耐力式により精度良く算定できる.

2. 6 隅肉溶接部の設計式

 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の終局状態が,外ダイアフラムと鋼管の隅肉溶接部の破断

で決定される場合,終局時の鋼管面外変形は非常に小さい(2.7節参照).本節では,隅肉溶接部の早

期破断を避けるために必要な隅肉溶接脚長 sの条件を,「接合部の最大耐力時においても隅肉溶接部

の破断を避ける」こととし,1回の計算で sの必要値が求められる設計式を提示する.

 最大耐力時においても隅肉溶接部の破断を避けるためには,隅肉溶接部の最大耐力が図 2.9に示す

pswuや pfwuよりも大きければよい.図 2.9に示すように,領域 Iと鋼管フランジの間の溶接部が受け

る応力を引張応力(X方向)とせん断応力(Y方向)の組合せ応力と考える.角形鋼管ウェブの溶接

部が受ける応力に関しては,圧縮応力(Y方向)を無視して,せん断応力(X方向)のみ作用するも

のと考える.隅肉溶接部(両面隅肉を対象)の単位長さあたりの最大耐力 qswuは,溶接部に作用する

応力の方向を考慮せずに,せん断力を受ける両面隅肉 T継手の耐力として次式で与える 2.9).

qswu=6

2svwu (2.34)

ここで,vwuは溶接金属の引張強さである.

 sの必要値 sreqは,qswu $ pswuかつ qswu $ p fwuを満足する sとして次式で与えられる.

sreq= g $ t d $ vwu

vdu (2.35a)

g = max1+4tan2i

2 2 (1+tani)

D

hd,

2 {a 2+4 (x *+t/2-b) 2}

a 2+16 (x *+t/2-b) 2

* 4 (2.35b)

なお,pswuと pfwuは次式で表される.

X

p fwu

1

Y

x* +2t

2D

-x* -2t

p swu無視する

領域 I

領域 II

鋼管フランジ

鋼管ウェブ

IvX* td

IxXY* td

1

図 2.9 設計用の最大耐力時に溶接接合部に作用する単位長さあたりの力 pswuと pfwu

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pswu=D/2

svX* l d t d

(2.36a)

p fwu= t d ( IvX* )2+ ( IxXY

* )2 (2.36b)

ただし,上式において, IvX* :最大耐力時における領域 Iの X方向応力((2.37a)式), IxXY

* :面内せ

ん断応力((2.37b)式), svX* :(2.24)式に含まれる vdyを vduに置き換えて得られるものである.

IvX* = 2vdu 3 1 +

4 (x *+ t/2 - b)2

a2

* 4 (2.37a)

IxXY* =-

2 (x *+ t/2 - b) 3 {1 + a2 /4 (x *+ t/2 - b)2 }

avdu

(2.37b)

2. 7 接合部の引張実験

 本節では,ここまでで誘導した各耐力算定式の検証を目的として,外ダイアフラム形式の角形鋼管

柱と引張側梁フランジの接合部を取り出した試験体を対象に引張実験を実施する.

2. 7. 1 実験概要

(1) 試験体

 図 2.10に試験体,表 2.1に試験体一覧,表 2.2に鋼材の機械的性質,表 2.3に溶接金属の機械的性

質を示す.試験体数は 10体で,実験変数は鋼管板厚 t,外ダイアフラムせい hd,外ダイアフラムの板

厚 td,水平ハンチ角度 i,継手鋼板の幅(梁フランジ幅)Bf,溶接脚長 sである.図 2.2の無応力状態

を再現するために,図 2.10に示すようにスリットを設けている.図 2.10の角形鋼管柱の中心線より

右側の外ダイアフラムと角形鋼管柱が実験の対象となる部分であり,グレーのハッチをかけて示して

いる.その他の部分については載荷途中で降伏しないように寸法および鋼種を設定した.No.8試験体

を除くすべての試験体は文献 2.1)の提案式の適用範囲外である.

継手鋼板

外ダイアフラム

D

t

s

スリット

角形鋼管柱変形拘束用鋼板

600

mm

P

P

A A

A-A断面

No.5試験体 No.9試験体No.8試験体

No.6試験体 No.7試験体

外ダイアフラム端部降伏防止用鋼板

4 c5

Bd = 200mm

3 c0

hd

i

D = 250mm

B f

td

Bd

P

P

4 c5

4 c5

図 2.10 試験体

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表 2.2 鋼材の機械的性質

鋼種板厚 降伏点 引張強さ 破断伸び

mm N/mm2 N/mm2 %

SM490A 12 363 516 27

SS400 28 258 425 33

BCR295

6 374 454 37

9 400 469 36

12 383 441 39

表 2.3 溶接金属の機械的性質

ワイヤ脚長 降伏点 引張強さ 破断伸び

mm N/mm2 N/mm2 %

D4301 5 496 557 -

YGW11 16 542 616 -

YGW18 9 481 579 29

 No.1,5~ 10試験体の溶接脚長を外ダイアフラム板厚の 0.7倍にあたる 9mmとした.No.2試験体

は,側面隅肉溶接部と前面隅肉溶接部が破断することを想定したものであり,溶接脚長を 5mm,外

ダイアフラムせいを 75mmとした.No.3試験体は,前面隅肉溶接部が破断することを想定したもの

であり,溶接脚長を 5mmとした.また No.4試験体は外ダイアフラムの板厚が 28mmなので,溶接

方法を図 2.11に示す異形隅肉溶接とし,等脚隅肉溶接の脚長が外ダイアフラム板厚の 0.7倍である場

合の有効のど厚と等しくなるように溶接脚長を設定した.No.4試験体の積層要領は図 2.11のとおり 3

層 4パスであり,それ以外は 1層 1パスとした.外ダイアフラムと角形鋼管柱の溶接は,表 2.1の溶

接脚長を目標に同一の溶接工によって施工された.その結果,No.1,5~ 10試験体の溶接脚長の平均

値は 10.3mm,No.2,3試験体では 6.1mm,No.4試験体では 15.8mmであった.すべての試験体の側

表 2.1 試験体一覧

試験体

角形鋼管柱 外ダイアフラム *1 溶接部 *2

梁フランジ幅幅×板厚 せい 板厚 出寸法 水平ハンチ角度 脚長

D× t hd (hd/D) td (td/t) a (a/D) i s Bf

(D/t) mm mm mm deg mm mm

No.1

250× 12

(21)

25 (0.1)

12 (1.0)

75 (0.3)

45

9

200

No.2 75 (0.3) 175 (0.7)5

No.3

25 (0.1) 75 (0.3)No.4 28 (2.3) 16*3

No.5

250× 9

(28)12 (1.3)

9

No.6 50 (0.2) 125 (0.5)

No.7 75 (0.3) 175 (0.7)

No.8

25 (0.1)

112 (0.45) 30

No.9 250× 6

(42)12 (2.0) 75 (0.3) 45

No.10 150

*1:外ダイアフラムの鋼種は No.4のみ SS400,その他は SM490A

*2:溶接材料は No.2,3に D4301,No.4に YGW11,その他は YGW18

*3:異形隅肉溶接の脚長を表す(図 2.11参照)

外ダイアフラム

鋼管フランジ

9941

2 m

m

数字は溶接順1

43296

28 m

m 6 c09916 m

m

4

16 m

m

異形隅肉溶接の脚長

図 2.11 異形隅肉溶接詳細

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面隅肉溶接は,外ダイアフラムの切断面(スリット位置)までとし,スリット部に回さないようにした.

なお,隅肉溶接の有効長さは一般に全長から溶接脚長の 2倍(始終端分)を差し引くが,次節での耐

力計算においては,この始終端分を減じず,すべての試験体の側面隅肉溶接長を D/2としている.

(2) 載荷方法と計測方法

 2000kN万能試験機により,試験体が最大耐力に到達するまで単調引張載荷を行う.図 2.12に示す

ように変位計を設置し,変位計から得られる鋼管フランジの面外変形 uを鋼管局部変形と定義する.

また,鋼管フランジ表面から 15mmの位置の外ダイアフラム表面に 1軸ゲージを貼付し,荷重方向の

歪分布を調べる.

P

角形鋼管柱

外ダイアフラム

A-A断面

A A

計測ジグ(山形鋼)

高感度変位計

角形鋼管柱

P

P P

計測値 u

鋼管局部変形

計測値 u

鋼管局部変形

高感度変位計

図 2.12 変位計設置方法と鋼管局部変形の定義

2. 7. 2 実験結果および考察

(1) 荷重−変形関係

 図 2.13に荷重 P-鋼管局部変形 u関係を設計用最大耐力レベルまで,図 2.14に荷重 P-鋼管局部

変形 u関係を終局状態まで,それぞれ実験変数ごとに比較して示す.図の縦軸は図 2.10の荷重 P,横

軸は図 2.12の鋼管局部変形 uである.各凡例を図中の凡例表に示す.凡例表の記号は次の通りである.

・ expPy,(1/3):P-u関係の接線剛性が初期剛性の 1/3となるときの荷重 2.3).

・ expPy,(0.15%):0.15%オフセット耐力.0.15%は P-u関係における残留変形の鋼管幅に対する割

合を表し,expPy,(0.15%)は梁せいを鋼管幅の 1.5倍としたときに鋼管局部変形による梁端の残留

回転角が 1/500radに留まる荷重に相当する 2.6).

・ expPu:最大耐力実験値.

・ calPy:(2.27)式による降伏耐力計算値.

・ calPy,ap (l=1.0):l=1.0とした場合の (2.32)式による降伏耐力近似値.

・ calPp:(2.17)式による崩壊荷重計算値.

・ calPu:(2.29)式による設計用最大耐力計算値.

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500

1,000

1,500

0 2 4

P [kN]

u [mm]

No.4No.1 No.5

No.9

No.1500

1,000

0 2 4

P [kN]

u [mm]

0 4 8 12

P [kN]

u [mm]

500

1,000

1,500

No.6No.7

No.5

No.8No.5500

1,000

0 2 4

P [kN]

u [mm]

250

500

0 2 4

P [kN]

u [mm]

No.10No.9

calP y

calP y, ap (l = 1.0)

calPu

calPu, ap (l* = 1.0)

calP pexpP y, (1/3)

expP y, (0.15%)

凡例

500

1,000

0 2 4

P [kN]

u [mm]

No.2No.3

No.1

図 2.13 荷重 P-鋼管局部変形 u関係(設計用最大耐力レベルまで)

(a) tdの影響 (b) tの影響 (c) i,aの影響

(d) hd,aの影響 (e) Bfの影響 (f) sの影響

・ calPu,ap (l*=1.0):l*=1.0とした場合の (2.33)式による設計用最大耐力近似値.

・ calPm:(2.18)式による最大耐力計算値.

図 2.13より expPy,(1/3),expPy,(0.15%)のときの鋼管局部変形 uは試験体によらず 0.5~ 1mm程度であり,

鋼管板厚に対して 5~ 10%程度である.calPpのときの鋼管局部変形 uは 1~ 3mm程度であり(ただし,

No.2,3試験体を除く),鋼管局部変形 uが急激に進展しはじめる付近の耐力を捉えている.expPuの

ときに関しては,No.2,3試験体が他の試験体に比べて著しく鋼管局部変形 uが小さいこと,No.8試

験体の鋼管局部変形 uが No.5試験体に比べて著しく大きいことが挙げられる.また,いずれの P-u

関係についても expPy,(1/3)以降の耐力上昇は大きく,溶接部強度の小さい試験体(No.2,3),外ダイア

フラムの端部幅 Bdに比べて梁フランジ幅 Bfが小さい試験体(No.10)を除けば,expPu/expPy,(1/3)は 2

以上を示した(表 2.4参照).これらの結果は文献 2.10)の結果ともよく対応している.P-u関係より,

実験変数が降伏耐力と最大耐力に及ぼす影響は以下のようにまとめられる.

・ 外ダイアフラムが厚いほど降伏耐力と最大耐力は増加する(図 2.13(a),2.14(a)).

・ 鋼管が厚いほど(幅厚比 D/tが小さいほど)降伏耐力と最大耐力は増加する(図 2.13(b),

2.14(b)).

・ 外ダイアフラムの出寸法 aが大きいほど降伏耐力と最大耐力は大きくなる(図 2.13(c),

2.14(c)).

・ 外ダイアフラムせい hdが大きいほど(aが大きいほど)降伏耐力と最大耐力は大きくなる(図

2.13(d),2.14(d)).

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0 10 20 30

u [mm]

1,000

P [kN]1,500

500 No.8No.5

0 10 20

u [mm]

No.4No.1

1,000

2,000 P [kN]

0 10 20

u [mm]

No.5No.9

No.1

1,000

P [kN]1,500

500

0 10 20

u [mm]

1,000 P [kN]

500

No.10No.9

0 10 20

u [mm]

1,000

P [kN]1,500

500No.2No.3

No.1

図 2.14 荷重 P-鋼管局部変形 u関係(終局状態まで)

(a) tdの影響 (b) tの影響

(c) i,aの影響 (d) hd,aの影響

(e) Bfの影響 (f) sの影響

表 2.4 各耐力の実験値と計算値

No.

実験値 計算値

expPy,(1/3) expPy,(0.15%) expPu

expP y, (1/3)

expPu calPy calPy,ap calPp calPu calPu,ap calPm

kN kN1 490 581 1069 2.18 595 641 666 791 852 8612 669 790 1021 1.53 - - - - - -3 427 517 718 1.68 - - - - - -4 753 954 1885 2.50 823 911 908 1186 1341 13145 398 470 849 2.13 460 521 527 613 695 6986 538 619 1195 2.22 660 721 744 903 979 10107 646 760 1519 2.35 866 922 965 1197 1268 13278 445 554 1145 2.57 485 541 621 647 723 8359 314 381 734 2.34 329 372 396 451 503 54410 298 318 480 1.61 304 231 369 419 354 509

calPmexpPu

凡例

0 10 20 30

u [mm]

No.6No.7

No.5

1,000

P [kN]1,500

500

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・ 梁フランジ幅 Bfが小さい方ほどが降伏耐力は小さくなる(図 2.13(e),2.14(e)).

以上の傾向は,耐力計算値にも認められる.

(2) 耐力の実験値と計算値の比較

 図 2.15に降伏耐力の計算値と実験値を比較して示す.各凡例の意味は図中に示すとおりである.図

の縦軸が耐力実験値に対する計算値の比を,横軸が試験体番号を表している.図 2.15より,calPyは

expPy,(1/3)より大きく,最大で 33%の差がある(No.7試験体).calPy /expPy,(1/3)の平均値は 1.15,変動係

数は 0.087である.一方,calPyと expPy,(0.15%)はよく一致していて,calPy /expPy,(0.15%)の平均値は 0.97,変

動係数は 0.098である.同図に l=1.0による calPy,apと実験値の比較を●,■印で併記する.近似値と

精算値の比は,Bf /D=0.8である No.1,4~ 9試験体で 1.07~ 1.13,Bf /D=0.6である No.10試験体

で 0.76を示し比較的よく一致している.

 図 2.16に崩壊荷重計算値と降伏耐力実験値を比較して示す.各凡例の意味は図中に示すとおりであ

る.図の縦軸が耐力実験値に対する計算値の比を,横軸が試験体番号を表している.calPp /expPy,(1/3)は

1.21~ 1.49,calPp /expPy,(0.15%)は 0.95~ 1.27であり,いずれの降伏耐力実験値に対しても calPpは大き

めの値となる.この要因として,外ダイアフラムの面内剛性に比べて鋼管フランジの面外剛性が小さ

いので,expPy,(1/3)や expPy,(0.15%)のときにおける鋼管局部変形に対して,外ダイアフラムは崩壊機構を形

成しているが,鋼管フランジは崩壊機構に達していないことが挙げられる.

 これを裏付ける一例として図 2.19を示す.図 2.19は鋼管幅厚比 D/tを変化させた No.1,5,9試験

体の荷重-変形関係であり,鋼管局部変形 u=2mmまで示されている.図中の点線は,鋼管フランジ

の応力仕事を無視した崩壊荷重,すなわち calPp-Wc /dを表しており,点線と calPpの差が鋼管フラン

1

2

0No.1 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10

calP y, ap/expP y, (0.15%)

calP y/expP y, (0.15%)calP y/expP y, (1/3)

calP y, ap/expP y, (1/3)

1

2

0No.1 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10

calP p/expP y, (1/3) calP p/expP y, (0.15%)

1

2

0No.1 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10

calPu/expPu calPu, ap/expPu

1

2

0No.1 No.4 No.5 No.6 No.7 No.8 No.9 No.10

calPm /expPu

図 2.15 降伏耐力計算値と実験値の比較 図 2.16 崩壊荷重計算値と降伏耐力実験値の比較

図 2.17 設計用最大耐力計算値と最大耐力実験値の比較

図 2.18 最大耐力計算値と実験値の比較

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ジの崩壊荷重に対する寄与分である.(calPp-Wc /d)/expPy,(1/3)は,No.1試験体が0.73,No.5試験体が0.81,

No.9試験体が 0.96を示しており,いずれも expPy,(1/3)は calPp-Wc /dと calPpの間に位置するとともに,

鋼管幅厚比 D/tが大きいほど,calPp-Wc /dに近づく.これは,鋼管フランジの面外曲げ剛性が小さ

くなるにしたがい,expPy,(1/3)のときの鋼管局部変形量に対して,鋼管フランジの面外曲げによる応力

伝達が期待できなくなることを意味している.

 次に,expPy,(1/3)のときに外ダイアフラムがほぼ崩壊機構に到達していることが確認できる例として

図 2.20を示す.図 2.20は No.1,5,9試験体の外ダイアフラムに貼付した 1軸ゲージより得られた

歪分布である.○印は expPy,(1/3) /2のときを,◆印は expPy,(1/3)のときをあらわしている.グレーのハッ

チは (2.16a,b)式より得られる x+t/2の範囲を表している.x+t/2の範囲において expPy,(1/3) /2のとき

の歪は弾性域に留まっているが,expPy,(1/3)のときの歪は降伏歪を超えているものが大部分である.し

たがって,expPy,(1/3)のときの鋼管局部変形に対して外ダイアフラムは降伏場を形成し,その範囲は

(2.16a,b)式で予測した範囲とほぼ一致することがわかる.

 図 2.17に設計用最大耐力計算値と最大耐力実験値を比較して示す.各凡例の意味は図中に示すとお

りである.図の縦軸が耐力実験値に対する計算値の比を,横軸が試験体番号を表している.図 2.17よ

り calPuは expPuより低い値を示し,最大 40%程度過小評価している.この原因としては,最大耐力時

の鋼管局部変形がかなり進行しているため,鋼管フランジには曲げ応力のみならず引張応力も生じる

ことになり,その結果耐力上昇が大きくなること,さらに鋼管フランジの中央付近における応力伝達

を無視していることが挙げられる(2.4節参照).図 2.13より設計用最大耐力に対応する鋼管局部変形

は 2mm付近のものがほとんどであり(No.6と No.7は少し大きい),仮に梁せいが鋼管幅の 1.5倍と

u [mm]

1,000

500

0 2 2 2

P [kN]expP y, (1/3)

expP y, (0.15%)

calP p

calP p-Wc/d

P P P

歪 (%) 歪 (%)歪 (%)

1軸ゲージ貼付位置

1軸ゲージ貼付位置

降伏歪

1軸ゲージ貼付位置

降伏歪 降伏歪

:(2.16a,b)式から得られる x+t/2expP y, (1/3)expP y, (1/3)/2

0 0.5 0 0.5 0 0.5

図 2.19 荷重-変形関係

(a) No.1 (c) No.9(b) No.5

図 2.20 外ダイアフラムの歪分布(a) No.1 (c) No.9(b) No.5

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した場合,設計用最大耐力時の梁端回転角はおよそ 1/100rad程度であり,それほど過大な変形では

ない.同図に l*=1.0による calPu,apに対するの比を◆印で併記する.近似値と精算値の比は 0.84~ 1.13

であり,良い近似値が得られている.

 図 2.18に最大耐力計算値と実験値を比較して示す.calPmは calPuより大きくなるので,実験値との

差はさらに大きくなる.それでも試験体(No.1,4~ 9)に関しては 10%以上の過小評価を与える結

果となる.これは,calPuと expPuの比較でも述べたように,鋼管フランジに生じる引張応力が影響し

ているものと考えられる.なお,No.10試験体に関しては,7%の過大評価を与える結果となってい

るが,これは,梁フランジ幅 Bfが外ダイアフラムの端部幅 Bdよりも小さく,外ダイアフラムと梁フ

ランジが入り隅を形成するため,外ダイアフラムと梁フランジの溶接部の始終端部に歪集中が発生し,

比較的早期に溶接部に延性亀裂が生じ,最大耐力が亀裂の進展によって決まったためである.図 2.14(e)

の No.9と No.10の荷重-変形関係を比較すると,No.10の 2次剛性が著しく小さいのは,この亀裂

の進展に起因しているためである.

(3) 既往の実験値との比較

 文献 2.11)には expPy,(1/3)の結果が記載されているので,expPy,(1/3)と calPyの比較結果を図 2.21に示す.

calPy/expPy,(1/3)の平均値は 1.10,変動係数は 0.083であり,両者は精度よく一致している.近似値と精

算値の比は 0.95~ 1.08を示し,よく一致している.

 図 2.22に expPuと calPuの比較結果を示す.大半の結果は,図 2.17の傾向と異なり,calPuが expPuよ

り大きいかあるいは同程度の結果となっている.この原因として,文献 2.11)の試験体の大半が外ダ

イアフラム端部の幅より梁フランジ幅が小さい形状をとっているため,外ダイアフラムと梁フランジ

で形成される入り隅における歪集中に起因する亀裂の進展によって終局状態に到ったことが挙げられ

る.同図には◆印で近似値に対する結果も示している.近似値と精算値の比は,0.83~ 1.12の範囲に

あり,いずれも良い近似値が得られている.

(4) 隅肉溶接脚長の必要値

 隅肉溶接部の設計式((2.35)式)を検討する.試験体の溶接脚長の必要値 sreq,実測値 sexp,必要値

に対する実測値の比 sexp /sreqを表 2.5に示す.sexp /sreqが 1より小さい試験体にはハッチをかけている.

これらの試験体(No.2,3)は隅肉溶接部の破断で終局に到った(次節参照).表 2.5の ( )内の数値は,

l *=1.0として得られる (2.31)式を (2.35)式の x *に適用した結果である.この結果から,No.1,4試験

体の溶接脚長の実測値 sexpは必要値 sreqに対して 1~ 2%不足する結果となっているものの,本提案

0

1

2

1 2 3 4 5 6 7 8 9

計算値/実験値

試験体番号

0

1

2

1 2 3 4 5 6 7 8 9

計算値/実験値

試験体番号

図 2.15 降伏耐力計算値と実験値 2.11)の比較 図 2.17 設計用最大耐力計算値と最大耐力実験値 2.11)の比較

calP y/expP y, (1/3) calP y, ap/expP y, (1/3) calPu/expPu calPu, ap/expPu

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表 2.5 溶接脚長の必要値 sreq,実測値 sexp,sexp /sreq

試験体sreq sexp sexp /sreq

mm mm

No.1 10.2 (10.5) 10.3 1.01 (0.98)

No.2 9.5 (9.9) 5.5 0.58 (0.56)

No.3 11.1 (11.7) 6.6 0.59 (0.56)

No.4 15.0 (15.9) 15.8 1.05 (0.99)

No.5 9.0 (9.6) 10.5 1.17 (1.09)

No.6 8.3 (8.8) 10.7 1.29 (1.22)

No.7 8.0 (8.3) 11.0 1.38 (1.33)

No.8 8.5 (8.9) 9.9 1.16 (1.11)

No.9 7.7 (8.1) 9.9 1.29 (1.22)

No.10 7.1 (6.9) 9.9 1.39 (1.43)

図 2.23 終局状態と崩壊機構の比較

(a) No.9 (b) No.10

式による隅肉溶接部の設計は概ね妥当であるといえる.なお,表 2.4の sreqは全て鋼管フランジと外

ダイアフラムの溶接部で決定されたものである.

(5) 終局状態

 図 2.23に No.9,10試験体の終局状態と図 2.3の崩壊機構を比較して示す.いずれの試験体につい

ても,外ダイアフラムの塑性化状況が想定した崩壊機構と良く対応していることが確認できる.なお,

他の試験体(No.1,4~ 8)についても想定どおりの崩壊機構を呈することを確認した.

 No.2,3試験体の終局状態を図 2.24に示す.No.2試験体は,側面隅肉溶接部の終端部(スリット部)

に亀裂が発生し,その後側面隅肉溶接部から前面隅肉溶接部にかけて脆性的に破断して終局を迎えた.

No.3試験体は,外ダイアフラムの塑性化が進展し最大耐力を迎えた後,鋼管角部の歪集中により前面

隅肉溶接部が脆性破断して終局を迎えた.

角形鋼管柱

側面隅肉の破断

前面隅肉の破断外ダイアフラム

外ダイアフラムの降伏領域

角形鋼管柱

前面隅肉の破断

外ダイアフラム

図 2.24 溶接部の破断(a) No.2 (b) No.3

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2. 8 まとめ

 本章では,中柱の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を対象として,任意の接合部寸法に適用

できる耐力式を構築するために,外ダイアフラムに一様歪の三角形要素を導入して塑性解析を行い,

その結果に基づいて降伏耐力算定式と設計用最大耐力算定式を提案するとともに,現実的な寸法を有

する接合部の設計を簡単にするために,降伏耐力と最大耐力の近似式を提案した.さらに,隅肉溶接

部の早期破断を避けるために必要な溶接脚長の設計式を構築した.さらに,本手法が妥当であるかを

確認するために,外ダイアフラム形式の角形鋼管柱と引張側梁フランジを取り出した接合部引張実験

を行った.以下に,本章で得られた知見をまとめる.

[1] (2.27)式による降伏耐力の計算値は,実験値に対して最大で 3割程度の過大評価を与えるもの

もあるが,全体的に両者は精度良く一致した.

[2] (2.29)式による設計用最大耐力の計算値は,概ね実験値より低い値を示す.また,設計用最大

耐力の計算値に対応する変形は,梁端回転角に換算すると概ね 1/100radであり,過大な変形

ではない.

[3] 外ダイアフラムと角形鋼管柱の隅肉溶接脚長の実測値と (2.35)式による必要値の比較を通し

て,隅肉溶接部の設計式の妥当性を確認した.

[4] (2.27),(2.29)式の算定は数値解析を要するので,簡単かつ精度良く耐力算定するための近似

式((2.32),(2.33)式)を誘導した.また,(2.32),(2.33)式にそれぞれ l=1.0,l *=1.0を適

用することによって得られる耐力近似値は,(2.27),(2.29)式による耐力算定値と精度良く一

致することを示した.

[5] No.1,4~ 10試験体の終局状態は,想定した崩壊機構とよく対応した.No.2試験体は,側面

隅肉溶接部と前面隅肉溶接部の破断,No.3試験体は,前面隅肉溶接部の破断で終局を迎えたが,

これらも想定どおりの結果であった.

 以上より,接合部の設計において,以下の設計式を用いることを提案する.

[6] 短期許容耐力(降伏耐力)に対する検討:(2.32)式を適用する.ただし,(2.32)式の xapには (2.30)

式および l=1.0を適用する.

[7] 最大耐力に対する検討:(2.33)式を適用する.ただし,(2.33)式の xap* には (2.31)式および

l*=1.0を適用する.

[8] 隅肉溶接部の必要脚長に対する検討:(2.35)式を適用する.ただし,(2.35)式の x *には (2.31)

式および l*=1.0を適用する.

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付 2. 1 崩壊機構の領域 III の応力仕事 IIIWd について

 領域 I,IIの場合と同様の手続を行うことにより,領域 IIIの応力仕事 IIIWdは次式で得られる.

IIIWd =D1p1

2+D 2p1+D3

2 (E1p12+E 2p1+E3)

$ (a-ld sin{) t dvdyd (A2.1a)

=lD1p1

2+ lD 2p1+ lD3

2 ( lE1p12+ lE 2p1+ lE3)

$ (a-ld sin{) t dvdyd (A2.1b)

ただし,上式において,

D1 = (18+27C12)p2

2+197C1p2+18C12+243 (A2.2a)

D 2 =-(54C1+27C 2)p2-36C1C 2-162 (A2.2b)

D3 = 18C 22+27 (A2.2c)

lD1 = (18+27C12)p1

2 (A2.2d)

lD 2 = 197C1p12-(54C1+27C 2)p1 (A2.2e)

lD3 = (18C12+243)p1

2 (36C1C 2+162)p1+18C 22+27 (A2.2f)

E1 = 3C12p2

2+14C1p2+4C12+9 (A2.2g)

E 2 =-(5C1+2C 2-4)p2-8C1C 2+2C1-12 (A2.2h)

E3 = 4C 22-2C 2+3 (A2.2i)

lE1 = 3C12p1

2 (A2.2j)

lE 2 = 14C1p12-(5C1+2C 2-4)p1 (A2.2k)

lE3 = (4C12+9)p1

2-(8C1C 2-2C1+12)p1+(4C 22-2C 2+3) (A2.2l)

C1 =a-ld sin{

b+ld cos{ (A2.2m)

C 2 =a-ld sin{

c+ld cos{ (A2.2n)

(A2.1a),(A2.1b)式を考慮すると (2.14)式は厳密には次のように表される.

P p =d

IWd+IIWd+IIIWd+Wc (A2.3)

したがって,(A2.3)式を最小化するためには (2.16a~c)式に加えて次式を満足する必要がある.

2p1

2P p= 0 ,

2p2

2P p= 0 (A2.4a),(A2.4b)

(A2.4a),(A2.4b)式より次式が得られる.

2D1E1p13+3D 2E1p1

2+(4D3E1+D 2E 2-2D1E3)p1+2D3E 2-D 2E3 = 0 (A2.5a)

2 lD1 lE1p23+3 lD 2 lE1p2

2+(4 lD3 lE1+ lD 2 lE 2-2 lD1 lE3)p2+2 lD3 lE 2- lD 2 lE3 = 0 (A2.5b)

(A2.5a),(A2.5b)式より得られる p 1,p 2と (2.16a)~ (2.16c)式より得られる x,l,{を (2.14)式に

代入して,最終的な崩壊荷重の数式表現が得られるが,(A2.5a),(A2.5b)式より p 1,p 2を得ること

は非常に困難である.一方本文で述べたように,図 2.3より領域 IIIは 3辺のうち 2辺の変形拘束が

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- 33 -

0であるため,IIIWdの最小値は非常に小さいものと考えられる.そこで IIIWdがWinに占める割合の

一例を図A2.1に示す.縦軸に IIIWd/Win,横軸に td/tをとり,パラメータとして D=200,300,400,

500mm,i=30°,45°を採用した.なお,図A2.1は a/D=0.3,b/D=0.25,Bd/D=0.8,D/t=10

のときの結果である.図A2.1より,いずれにしても IIIWdは非常に小さく無視できる .以上のことを

考慮して本文では (2.14)式を用いることとした.

付 2. 2 l-D/t 関係

 図A2.2に l-D/t関係の計算例を示す.図A2.2より以下のことが確認できる.

・ 外ダイアフラムの降伏点の違いによる lの差異は小さい(例えば図A2.2(a)と (e)).

・ 鋼管幅厚比 D/tの違いによる lの差が顕著である.

・ 梁フランジ幅 Bfの違いによる lの差が顕著である(例えば図A2.2(a)と (b)).

・ Bf/D=0.5のときl=1.0~1.5の範囲に概ね収まっている.一方,Bf/D=0.75のときl=1.0~2.0

の範囲に概ね収まっている.

なお,ここでは示さないが,l*に対しても同様の傾向がある.

付 2. 3 x, x* の近似式の誘導

 本文 (2.16a)式の x,t,a,b,sを Dで無次元化して次式のように整理する.

12D

x+

2

1

D

t-

D

bd n

2

+ 3D

ad n

2

D

x+

2

1

D

t-

D

bd n

2

$D

xd n

4

=16

1

D

td n

2

t d

te o

2

vdy

vcyf p

2

D

td +D

2s+

l

1-

2D

td n

2

(A2.6)

(A2.6)式の右辺において (td+2s-t/2)/Dが 1/lに比べて十分小さく,左辺における t/Dの項を十分

小さいと見なして,(A2.6)式を次式のように近似する.

12D

x-

D

bd n

2

+ 3D

ad n

2

D

x-

D

bd n

2

$D

xd n

4

,16l2

1

D

td n

2

t d

te o

2

vdy

vcyf p

2

(A2.7)

(A2.7)式はx/Dの 6次方程式であり,これを解析的に解くことはできない.そこで,左辺の (x/D-b/D)2

× (x/D)4に注目し,この平方根が x/Dに関して 3次であることを考慮して (A2.7)式を 3次方程式に

近似することを考える.左辺の 12(x/D-b/D)2+3(a/D)2に対して 12(x/D-b/D)2 %3(a/D)2と見なし,

0.3

0.2

0.1

00.5 1.0 1.5 2.0 2.5

IIIWd/Win [%]

i = 3 c0

i = 4 c5

t

t d

D=500mmD=400mmD=300mm

D=200mm

図A2.1 IIIWdがWinに占める割合

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- 34 -

1.0

1.5

2.0

15 20 25 30 351.0

1.5

2.0

15 20 25 30 35

1.0

1.5

2.0

15 20 25 30 351.0

1.5

2.0

15 20 25 30 35

1.0

1.5

2.0

15 20 25 30 351.0

1.5

2.0

15 20 25 30 35

1.0

1.5

2.0

15 20 25 30 351.0

1.5

2.0

15 20 25 30 35

D/t

D/t

D/t

D/t

D/t

D/t

D/t

l

(a) vdy=235, vcy=295

D/td=20, Bf/D=0.5

a/D=0.75a/D=0.5

(b) vdy=235, vcy=295

D/td=20, Bf/D=0.75

(c) vdy=235, vcy=295

D/td=30, Bf/D=0.5

(d) vdy=235, vcy=295

D/td=30, Bf/D=0.75

(e) vdy=325, vcy=295

D/td=20, Bf/D=0.5

(f) vdy=325, vcy=295

D/td=20, Bf/D=0.75

(g) vdy=325, vcy=295

D/td=30, Bf/D=0.5

(h) vdy=325, vcy=295

D/td=30, Bf/D=0.75

図A2.2 l-D/t関係

l

l

l

l

l

l

l

D/t

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- 35 -

その結果を (A2.7)式に適用し,x/Dについて整理すると次式のような x/Dに関する 3次方程式が得

られる.

D

xd n

3

-D

b

D

xd n

2

-4l

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcy= 0 (A2.8)

(A2.8)式を x/Dについて解くと次式が得られる.

D

x= B1+ B 2^ h

3

1

+ B1- B 2^ h3

1

+3

1

D

b (A2.9)

ただし,上式において,

B1=2

B 0 -27

1

D

bd n

3

(A2.10a)

B 2= B12-

729

1

D

bd n

6

(A2.10b)

B 0=4l

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcy (A2.10c)

さらに,(A2.9)式右辺の第 1項 B1+ B 2^ h3

1

と第 2項 B1- B 2^ h3

1

を次式で近似する.

B1+ B 2^ h3

1

=2

B 0 -27

1

D

bd n

3

+2

B 0 1 -27B 0

4

D

bd n

3

* 4

2

1R

T

SSS

V

X

WWW

3

1

,2

B 0 -27

1

D

bd n

3

+2

B 0 1 -27B 0

2

D

bd n

3

* 4

R

T

SSS

V

X

WWW

3

1

= B 0-27

2

D

bd n

3

* 4

3

1

, B 0^ h3

1

1 -81B 0

2

D

bd n

3

* 4

, B 0^ h3

1

(A2.11a)

B1- B 2^ h3

1

, 0 (A2.11b)

(A2.11a),(A2.11b)式を (A2.9)式に代入して x/Dの近似式が得られる.すなわち,

D

x=

4l

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcyf p

3

1

+3

1

D

b (A2.12)

 x*の近似に関しても同様の方法により以下の近似式が得られる.

D

x *

=4l

3

t d

t

D

t

D

a

vdu

vcuf p

3

1

+3

1

D

b (A2.13)

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- 36 -

付 2. 4 接合部の現実的な寸法詳細

 本章では,現実的な寸法を有する接合部に以下の範囲を想定して解析した.

・ D/t:幅厚比種別 FAランクを想定し,解析範囲を D/t=15~ 35とする.

・ Bf/D:一般的な柱幅と梁幅の比は 0.5程度であり,大きくても 1以下となる.本論では,

0.4 # B f /D # 1.0を解析範囲とする.

・ hd/D:隅柱や側柱の場合には,外壁の取り付きなどの制約上 hdは制限される.この限界を

hd=50mmとすると,hd /D # 0.25の範囲の検討で十分である(D $ 200mm の場合).本論

では,hd/D=0.1,0.2をパラメータとする.

・ 梁フランジ幅 Bfと外ダイアフラム端部の幅 Bdは同一寸法とする(2.5節の解析では,Bf=Bd

についてのみ検討したが,実験結果との照合から Bd >Bfの場合にも,本耐力算定法は適用可

能であることがわかっている).

・ a/D:i,D,Bd,hd,aの間には以下の関係がある.

tani =2 (a - hd )

D - Bd+ 2hd (A2.14)

iは 45°以下であるのでtani # 1,すなわち,

D - Bd+ 2hd # 2 (a - hd ) (A2.15)

Bf=Bdの場合,(A2.15)式は次式で表される.

D

a$

2

11 -

D

B f+ 4 $

D

hde o (A2.16)

一般に Bf/D=0.5程度であることから,a/D=0.4程度が下限値になると判断できる.そこで

本論では,a/D=0.5, 0.75をパラメータとする.

・ 外ダイアフラム板厚 tdは鋼管板厚 tと同程度として,D/td=20, 30とする.

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-37-

第3章  角形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの耐力算定法(外周構面梁が取り付く外柱を対象として)

3. 1 はじめに

 2章では,図 3.1に示す直交梁が取付け可能な任意形状の外ダイアフラムに対する降伏耐力(短期

許容耐力に相当)および設計用の最大耐力の算定式を誘導し,合わせて設計時に適用しやすいように

簡便な近似式を提案した.ただし,2章で扱った柱梁接合部は,中柱を対象とした外ダイアフラムで

あり,側柱や隅柱(以下,まとめて外柱と称する)を対象とした外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接

合部に関しては未検討である.また現行の指針(文献 3.1),3.2))では,外柱に接合される外ダイア

フラムの設計に関しては記述されていない.そこで本章では,外柱を対象とした外ダイアフラム形式

角形鋼管柱梁接合部の降伏耐力と設計用最大耐力の算定式を構築することを目的とする.側柱の場合,

図 3.2(e)に示す外周構面梁が取り付く接合部と,内側構面梁が取り付く接合部が考えられるが,後者

の接合部は 2章で扱った中柱と同等の扱いが可能なので,本章では外周構面梁が取り付く接合部を対

象としている.実用上,梁フランジ側面に外壁が取り付けやすいこと,内部空間をできるだけ広く利

用することを考慮して,外柱に取り付く梁(外周構面梁)は偏心させて設置される(図 3.2(c),(d))

外ダイアフラム板厚

角形鋼管柱

hdi

D t

td

45c

D

t

外ダイアフラム

角形鋼管柱

t

外ダイアフラム

(a) 側柱 (b) 隅柱

柱 梁

隅柱側柱

中柱

i

ihd

hd

外ダイアフラム外ダイアフラム

角形鋼管柱

(c) 側柱(偏心梁付き) (d) 隅柱(偏心梁付き)

偏心 偏心

偏心

hd

hd板厚 td

D

45c 45c

板厚 td

外周構面梁

内側構面梁

(e) 各部名称

図 3.2 側柱あるいは隅柱に取り付く外ダイアフラムの形状

図 3.1 2章で対象とした外ダイアフラム

場合もあるが,本章では図 3.2(a),(b)のように梁

芯と柱芯が一致する基本形状を対象とする.

 側柱を対象とした既往の研究として,文献 3.3),

3.4)などが挙げられる.文献 3.3)では,従来の外

ダイアフラム形式にサイドスチフナを併用した柱

梁接合部に関して,接合部の引張実験および部分

骨組実験を行い,接合部の性状および骨組性状を

検討し,接合部の耐力式を提案している.文献 3.4)

では,コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁の接

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合部を対象に,文献 3.5)で提案している分割外ダイアフラムにサイドスチフナを併用した接合部の引

張実験を行い,接合部の荷重-変形関係モデルを構築している.しかし,これらの研究は,柱の外壁

側にサイドスチフナを溶接した特殊な形状を対象としているため,本章で対象とする形状とは異なる.

 本章では,まず 3.2節で図 3.2(a),(b)の外ダイアフラムを対象として,降伏耐力および最大耐力の

算定式を提示する.次に,3.3節で耐力に影響を及ぼす寸法因子を変化させた接合部の引張実験を行い,

接合部の弾塑性性状ならびに耐力算定式について検討する.

3. 2 耐力算定式の誘導

3. 2. 1 塑性解析モデル

 図 3.3(a)の X方向の場合,側柱の外ダイアフラムに作用する地震時応力は,角形鋼管柱を挟んで逆

対称に分布するものと考えられる(図 3.3(c)参照).したがって,図 3.3(a)の逆対称軸上での外ダイ

アフラムの X方向応力はゼロとなる.これは,図 3.3(a)の右側の荷重に対しては外ダイアフラムの右

側半分(図 3.3(a)のハッチをかけた領域)が抵抗することを意味している.一方,Y方向の場合,角

形鋼管柱の片側にのみ荷重が作用するため,外ダイアフラムの応力分布は逆対称にはならず,X方向

の中心軸上(図 3.3(a)の一点鎖線)における外ダイアフラムの Y方向応力はゼロではない.したがっ

て,Y方向の荷重に対しては外ダイアフラム全体で抵抗することになり(図 3.3(d)参照),X方向に

比べて Y方向の接合部耐力の方が高いといえる.以上より,側柱の外ダイアフラムの耐力は,X方向

について検討すればよいことになる.

 他方,隅柱の外ダイアフラムに作用する地震時応力は,図 3.3(b)の X方向,Y方向のいずれに対し

ても逆対称には分布しない.隅柱は鋼管の 45°方向(図 3.3(b)の点線)に対して対称なので,X方向

と Y方向の一方について検討すればよく,ここでは X方向を検討対象とする.隅柱の場合,角形鋼

逆対称軸

(b)隅柱に作用する地震時応力

(a)側柱に作用する地震時応力

逆対称軸

対称軸

(c)側柱の  方向の応力状態 (d)側柱の  方向の応力状態と 隅柱の応力状態(地震時)

a

hd

D

i

(e)塑性解析モデル

BfBdt

hd

板厚t d

無応力状態

無応力状態

X

Y

i

lhd > hd

hdlhd

図 3.3 柱梁接合部における地震時応力と塑性解析モデル

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管柱の片側だけに梁が接合されるため,外ダイアフラムの応力分布は逆対称にはならず,Y方向の中

心線上(図 3.3(b)の一点鎖線)における外ダイアフラムの X方向応力はゼロではない.したがって,

X方向の荷重に対して外ダイアフラム全体で抵抗することになる(図 3.3(d)参照).これは,隅柱の

外ダイアフラムが有する耐力は,側柱の外ダイアフラムの右側半分(図 3.3(a)のハッチを掛けた領域)

が X方向の荷重に対して有する接合部耐力と同等以上であることを意味している.以上より,外柱(側

柱・隅柱)の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を図 3.3(e)のようにモデル化する.

 直交梁が取り付く側の外ダイアフラムせい hdは,鋼管中心より 45°方向に引いた線と水平ハンチ

の交差部から鋼管の面までの距離として定義される.一方,外壁側の外ダイアフラムせい h'dは,図

3.3(e)より鋼管の面から外ダイアフラム平行部(外壁側の縁)までの距離として定義される寸法であ

る.外柱の場合,外壁との干渉を避けるために h'dを小さくすることが考えられる.すなわち,h'dは

hdとは無関係に決定される寸法である.h'd>hdの場合,図 3.3(e)の塑性解析モデルは中柱の場合(2

章参照)と全く同一の扱いとなる.一方 h'd<hdの場合は,中柱と同一の塑性解析モデルとしては扱え

ないので,h'dを hdと同じように取り扱うことにより,中柱と類似した塑性解析モデルを設定するこ

とにする.すなわち,図 3.4左図にグレーのハッチをかけて示す領域を無視することにより,h'dは hd

と同様に定義することができる.このようにして得た塑性解析モデルを図 3.4右図に示す.図 3.4右

図より,外壁側の水平ハンチ角度を uiと見なすことになる.

bc

無視する

ui

a

hd

D

i

BfBdt

hd

板厚t d

i

lhd

bc

a

hd

DBfBdt

hd

板厚t d

i

lhd

図 3.4 h'd<hdの場合の塑性解析モデル

3. 2. 2 崩壊機構

 外ダイアフラム形式柱梁接合部に仮定する崩壊機構を図 3.5に示す.図 3.5(a)の崩壊機構 1が

h'd>hdの場合,図 3.5(b)の崩壊機構 2が h'd<hdの場合を示している.崩壊機構 1と 2は,外壁側の

領域 IIと II'における応力仕事や応力成分に違いが生じる.なお,鋼管フランジの面外崩壊機構は,

崩壊機構 1,2によらず図 2.4と同一である.

3. 2. 3 応力仕事

 崩壊機構 1の各部の応力仕事は,既に 2.2.3項で導出している.ここでは,崩壊機構 2の領域 IIと

II'の応力仕事のみ示す.崩壊機構 2の領域 IIの応力仕事 IIWd,(2)は次式で表される.

IIWd, (2) =3

11+

4

tan2{e o $t dvdyd (3.1)

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崩壊機構 2の領域 II'の応力仕事 II'Wd,(2)は次式で表される.

II'Wd, (2) =3

11+

4

tan2 u{e o $t dvdyd (3.2)

崩壊機構 2の領域 IIIと III'の応力仕事は,付 2.1の検討結果より無視する.

3. 2. 4 崩壊荷重

 崩壊機構 1より得られる崩壊荷重 Pp,(1)は次式で与えられる.なお,Pp,(1)は (2.17)式と同一である.

P p, (1) =3

2x+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd* 4$t dvdy

+x

td+2s+

lx

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcy (3.3)

崩壊機構 2より得られる崩壊荷重 Pp,(2)は次式で与えられる.

P p, (2) =3

12 x+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd+

1+4tan2 ui

(1+tan ui) lhd* 4$t dvdy

+x

td+2s+

lx

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcy (3.4)

ただし,上式において,

12 (x+t/2-b) 2+3a 2

t dvdy (x+t/2-b)-

4x 2

t 2vcy {t d+2s+(D-t) /l}= 0 (3.5a)

2 (r+4l logel) x-(D-t)r = 0 (3.5b)

u{ = arctan (4 tan ui) (3.5c)

tan ui =a- lhd

c+ lhd (3.5d)

a

D

角形鋼管柱

外ダイアフラム

hd

i

x +2t

I

II'III'

I

II III

X

b

h'd

x +2t

c

{

ui

u{

4

3

21

21

21

4

3

a

D

角形鋼管柱

外ダイアフラム

hd

i

x +2t

I

IIIII

I

II III

X

b

h'd

x +2t

c

{

4

3

21

21

21

4

3

i

{

hd

図 3.5 外柱の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の崩壊機構

(a)崩壊機構 1(h'd>hd) (b)崩壊機構 2(h'd<hd)

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-41-

3. 2. 5 最大耐力

 崩壊機構 1より得られる最大耐力 Pm,(1)は次式で与えられる.なお,Pm,(1)は (2.18)式と同一である.

Pm, (1) =3

2x *+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd* 4$t dvdu

+x *

t d+2s+

lx *

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcu (3.6)

崩壊荷重 2より得られる最大耐力 Pm,(2)は次式で与えられる.

Pm, (2) =3

12 x *+

2

t-be o

2

+4

a 2

+1+4tan2i

(1+tani) hd+

1+4tan2 ui

(1+tan ui) lhd* 4$t dvdu

+x *

t d+2s+

lx *

D-t-

l2

+r4

(logel) 2+r* 4$t 2vcu (3.7)

ただし,上式において,

12 (x *+t/2-b) 2+3a 2

t dvdu(x *+t/2-b)-

4 (x *) 2

t 2vcu {t d+2s+(D-t) /l*}= 0 (3.8a)

2 (r+4l* logel*) x *-(D-t)r = 0 (3.8b)

3. 2. 6 降伏耐力

 本章でも 2.3.2項と同様の手法により降伏耐力算定式を与えることとし,次のように仮定する.

・ 図 3.6に示す境界線①③④における外ダイアフラムの X方向応力の総和で降伏耐力を評価し,

角形鋼管フランジの中心付近(D-2x-t)で応力は伝達されない.

(1) 崩壊機構 1

 崩壊機構 1は,図 2.5の中柱に対する崩壊機構と同一である.したがって,崩壊機構 1に基づく降

伏耐力算定式 Py,(1)は次式で与えられる.

X

I

II

III

応力の伝達を無視する

鋼管ウェブ

鋼管ウェブ

鋼管フランジ

D D - 2x - t

x +2

t

arctan (4 tani)

IvX

svX

Py, (1) Py, (2)

x +2

t

hd

svX

i

X

I

II'

III'

応力の伝達を無視する

鋼管ウェブ

鋼管ウェブ

鋼管フランジ

D D - 2x - t

x +2

t

IvX

x +2

t

hd

svX

i

I

IIIII I

II'

III'

1 2

5

4

3

21

5

4

3

u{ = arctan (4 tan ui)

1 2

5

4

3

21

5

4

3

lhdlhd

s lv X

ui

図 3.6 降伏耐力算定時に仮定する伝達応力

(a)崩壊機構 1の場合(h'd>hd) (b)崩壊機構 2の場合(h'd<hd)

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P y, (1) =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

4 (x+t/2)+

3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdy (3.9)

ただし,上式は h'd>hdの場合に適用される.

(2) 崩壊機構 2

 崩壊機構 1に基づく降伏耐力算定式と異なるのは,領域 IIと II'を介して鋼管ウェブに伝達される

X方向応力の総和である.この応力和 P'syは次式で表される.

lPsy =3 (1+4tan2i)

2 (1+tani) hd+

3 (1+4tan2 ui)

2 (1+tan ui) lhd* 4$t dvdy (3.10)

領域 Iを介して鋼管フランジに伝達される X方向応力の総和は,(2.22)式で表されるので,崩壊機構

2に対する降伏耐力 Py,(2)は (3.10),(2.22)式の和で与えられる.すなわち,

P y, (2) =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

4 (x+t/2)+

3 (1+4tan2i)

2 (1+tani) hd+

3 (1+4tan2 ui)

2 (1+tan ui) lhd> H$t dvdy

(3.11)

ただし,上式は h'd<hdの場合に適用される.

3. 2. 7 設計用最大耐力

 2.4節と同様に,3.2.6項で誘導した降伏耐力算定法を準用して,(3.9),(3.11)式の v dyを v duに置

き換えて設計用最大耐力 Pu,(1),Pu,(2)とする.すなわち,

Pu, (1) =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

4 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdu (h'd>hd)(3.12)

Pu, (2) =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

4 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2i)

2 (1+tani) hd+

3 (1+4tan2 ui)

2 (1+tan ui) lhd> H$t dvdu

(h'd<hd)(3.13)

3. 2. 8 耐力式の解析上の処理

 領域 II,II'における塑性解析より,{ = arctan (4 tani),u{ = arctan (4 tan ui)が成立する.したがっ

て,水平ハンチ角度が小さくなるほど境界線③④の方向も小さくなる.図 3.7に示すように水平ハン

チ角度が 14°のとき,境界線③④の方向は 45°である.これより水平ハンチ角度を小さくすると,

境界線③④は図 3.7の点線で示すような仮想の領域を仮定することになり,実際にはあり得ない崩壊

機構を仮定することになる.したがって,水平ハンチ角度が 14°以下の場合,境界線③④は 45°に

しかなり得ないことになる.以上より,i # 1 c4 , ui # 1 c4 の場合は,{ = 4 c5 (i = 1 c4 ), u{ = 4 c5 (ui = 1 c4 )と考える.

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3. 2. 9 降伏耐力および設計用最大耐力の近似算定式

(1) h'd>hd の場合

 2.5節で中柱を対象として誘導した x,x *の近似式 xap,xap* は外柱に対しての同様に適用できる.し

たがって,降伏耐力 Py,(1)の近似算定式 Py,(1)ap,設計用最大耐力 Pu,(1)の近似算定式 Pu,(1)apは次式で与

えられる.

P y, (1)ap =3 {1+a 2/4 (xap+t/2-b) 2}

4 (xap+t/2)+

3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdy (h'd>hd)(3.14)

Pu, (1)ap =3 {1+a 2/4 (xap

* +t/2-b) 2}

4 (xap* +t/2)

+3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdu (h'd>hd)(3.15)

(2) h'd<hd の場合

 領域 Iについては,3.2.9項の (1)と同様に中柱を対象として誘導した x,x *の近似式 xap,xap* が適

用できる.h'd<hdの場合,(3.11)式の領域 II'に関する項([ ]内の第 3項)は領域 IIに関する項([

]内の第 2項)よりも小さい.h'dの許容値は 35~ 40mm程度(通しダイアフラムの場合,出寸法を

35mm前後にすることが多い)であることから鋼管幅 D=400~ 500mm程度を想定した場合,h'd/D

は高々 0.1程度までを考えればよい.また,梁降伏先行型の接合部を実現するためには,hd/Dは少な

くとも 0.2~ 0.25程度必要となる.したがって,(3.11)式の領域 II'に関する項は領域 IIに関する項

の半分以下になることが多いと考えられる.(3.11)式の領域 Iに関する項([ ]内の第 1項)も耐力に

ある程度寄与するので,結果的に第 3項が (3.11)式に占める割合は 20%程度である.仮に第 3項を

何らかの方法で簡略化した結果として 30%程度の誤差が生じたとしても,それによって (3.11)式に

現れる誤差は,0.2× 0.3=0.06,すなわち数%程度にとどまることになる.以下では,(3.11)式の領

域 II'に関する項の簡略化について検討する.

 まず (3.11)式の []内の第 3項を u{を用いて表す.すなわち,

3 (1+4tan2 ui)

2 (1+tan ui) lhd"

3 (1+tan ui$tan u{)

2 (1+tan ui) 1+(tan2 u{) /4$ lhd (3.16)

上式の簡略化を考えた場合, u{ = 4 c5 として次式で表すことが考えられる.

i = 1 c4

i > 1 c4

降伏領域IIorII'

4 c5

i < 1 c4

i = 1 c4

i > 1 c44

3

4

4

角形鋼管柱 外ダイアフラム 仮想の領域に節点を仮定することになり,実際には境界線  の角度は  未満にはなり得ない.43 4 c5

i < 1 c4

図 3.7 領域 II,II'の境界線③④の角度の下限値

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3 (1+tan ui$tan u{)

2 (1+tan ui) 1+(tan2 u{) /4$ lhd

u{= 4 c5

=3

5$ lhd , 1.3 lhd (3.17)

塑性解析より求めた u{の精算値はarctan (4 tan ui)で表されるが,このときの耐力算定値((3.11)式)と

(3.11)式の []内の第 3項に (3.17)式を用いた耐力算定値P y, (2) u{= 4 c5を比較して,その差が小さければu{ = 4 c5 としても実用上問題はないと考えられる.そこで, uiを変化させたときのP y, (2) u{= 4 c5と (3.11)

式の比(P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2))の計算例を図 3.8に示す.凡例は図中に示す通りである.また,図 3.8(a)

には (3.17)式と (3.16)式左辺の比も併記している.図 3.8(a)より,(3.11)式の [ ]内第 3項の誤差が

最大 20%生じても,(3.11)式の誤差は 5%程度であることがわかる.また,図 3.8(b),(c)より実大レ

ベルの接合部では高々数%程度の誤差に留まることがわかる.図 3.8(d)は比較的小さい柱に対して

h'd/D=0.2のように大きめに設定した計算結果であるが,この場合も誤差は大きくても 7%程度であ

る.以上より,(3.17)式による耐力式の簡略化は妥当であると判断する.(3.11)式に (3.17)式を代入

して簡略式が次式で与えられる.

P y, (2)ap =3 {1+a 2 4 (xap+t/2-b) 2}

4 (xap+t/2)+

3 (1+4tan2i)

2 (1+tani) hd+1.3 lhd> H$t dvdy (3.18)

図 3.9に上式の [ ]内の第 1項を無視したもの( lPsy, lPsy u{= 4 c5)と iの関係を点線で示す.iが大き

いほど差が大きくなることがわかる.

1

1.1

0 15 30 45

P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2)

ui [deg]

1

1.1

0 15 30

P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2)

ui [deg]

1

1.1

0 15 30 45

P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2)

ui [deg]1

1.1

1.2

0 15 30 45

P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2)

ui [deg]

図 3.8 P y, (2) u{= 4 c5 P y, (2) - ui関係

(a)a/D=0.5,hd/D=0.1,h'd/D=0.1

D=500,t=22,b/D=0.25,td=22

(b)a/D=0.5,h'd/D=0.1,D=500

t=22,b/D=0.25,td=22

(c)a/D=0.75,h'd/D=0.1,D=500

t=22,b/D=0.25,td=22

(d)h'd/D=0.2,D=250

t=12,b/D=0.1,td=12

hd/D=0.1

hd/D=0.2

hd/D=0.3

hd/D=0.1

hd/D=0.2

hd/D=0.3

hd/D

0.2 0.3

a/D0.5 実線 点線0.75 ○ □

lPsy u{= 4 c5 lPsy

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 同様にして設計用最大耐力 Pu,(2)の近似算定式 Pu,(2)apは次式で与えられる.

Pu, (2)ap =3 {1+a 2 4 (xap

* +t/2-b) 2}

4 (xap* +t/2)

+3 (1+4tan2i)

2 (1+tani) hd+1.3 lhd> H$t dvdu (3.19)

3. 2. 10 隅肉溶接部の設計式

 中柱の場合と異なる点は,外壁側の鋼管ウェブと外ダイアフラムの溶接部に伝達される単位長さあ

たりの力 p'swu(図 3.10)が,溶接部の単位長さあたりの最大耐力 qswuより小さくなるという条件が加

わることである.しかしながら,鋼管ウェブと外ダイアフラムの溶接部において,外壁側と直交梁が

取り付く側で溶接脚長は通常区別しないと考えられること,かつ外壁側の溶接部へ伝達される応力は

直交梁が取り付く側に比べて小さいこと(例えば (3.19)式の第 2項と第 3項を比較すればよい)から,

上記の条件は自動的に満足する.したがって,外柱の場合の隅肉溶接部の設計式は,崩壊機構 1,2

によらず中柱の場合と同じ設計式が適用される.以上より,隅肉溶接脚長 sの必要値 sreqは次式で与

えられる.

sreq= g $ t d $ vwu

vdu (3.20a)

g = max1+4tan2i

2 2 (1+tani)

D

hd,

2 {a 2+4 (x *+t/2-b) 2}

a 2+16 (x *+t/2-b) 2

* 4 (3.20b)

1000

1500

2000

0 15 30 45 60 75 90

lPsy , lPsy u{= 4 c5 [kN]

i [deg]

図 3.9  lPsy , lPsy u{= 4 c5 -i関係

精算

簡略

X

1

Y

1

無視する

領域 I

領域 IIorII'

鋼管フランジ

鋼管ウェブ

鋼管ウェブ

1

無視する pswu

lp swu

p fwu

IvX* td

IxXY* td

領域 I

領域 II

D - 2x *- t

x *+2

t

x *+2

t

ll d

図 3.10 最大耐力時に隅肉溶接部に作用する単位長さあたりの力

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3. 3 外柱を想定した接合部引張実験

 本節では,外柱を想定した接合部の引張実験を行い,3.2節で提案した降伏耐力および最大耐力を

実験結果と比較し,接合部の弾塑性性状について検討する.

3. 3. 1 実験概要

(1) 試験体

 図 3.11に試験体形状,表 3.1に試験体一覧,表 3.2に鋼材の機械的性質を示す.試験体数は 7体であり,

基本試験体を No.1とする.すべての試験体の共通因子は,角形鋼管柱 (D=250mm,長さ 600mm,

BCR295),外ダイアフラム (td=12mm,SN400B)である(ただし,記号はすべて図 3.3(e),図 3.4を参照).

実験変数は,外ダイアフラムの出寸法 a,外ダイアフラムせい hd,外壁側の外ダイアフラムせい lh d,

外ダイアフラムの端部幅 Bd,鋼管板厚 t,対象とする柱(外柱・中柱)である.No.1~ 5試験体は図 3.5(a)

の崩壊機構 1に対応し,No.6試験体は図 3.5(b)の崩壊機構 2に対応するように lh d= 15mmとしている.

外ダイアフラムと角形鋼管柱の隅肉溶接脚長は,(3.20a),(3.20b)式を満たすように 10mmとしている.

図 3.3(e),3.4の無応力状態を再現するために図 3.11に示すスリットを設けている.角形鋼管柱とハッ

表 3.1 試験体一覧

No.

角形鋼管柱(BCR295)

外ダイアフラム (SN400B)継手鋼板

(SM490A)幅 板厚 板厚 出寸法 せい 水平ハンチ角度 幅 溶接脚長

対象とする柱

幅D t td a hd h'd i Bd s Bf

mm mm mm mm mm mm deg mm mm mm1

250

9

12

15025 25

31 150

10外柱

1502 10045 150

3

150

50 504

2525 22 200 200

5 166

915

31 150 1507 25 中柱

外ダイアフラム

スリット

角形鋼管柱□ -250× 250× 9

変形拘束用鋼板

600

P

PP

P

A A

A-A断面

No.1試験体

端部補強板継手鋼板

継手鋼板10

12

250

25

25

150

150

150

31c

No.4 200

22c

No.2

100

45c

No.3

50

45c

No.7

31c

t=16

No.5

22c

No.6

15

31c

図 3.11 試験体

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チをかけた外ダイアフラムが実験対象である.その他の部分は,実験対象部分が十分に塑性変形する

まで降伏しないように設計した.また,外ダイアフラム端部の補強板は,外ダイアフラム端部での降

伏が先行しないように設置したものである.

(2) 載荷方法と計測方法

 荷重が低下し始めるまで 2000kN万能試験機により単調引張載荷した.本実験でも中柱の場合(図

2.12)と同様に,図 3.12に示すように鋼管内部に高感度変位計(200n/mm)を設置し,外ダイアフラ

ムの位置における鋼管フランジの面外変形 uを計測した.また,外ダイアフラムの主要な位置での歪

を計測した(計測点については 3.3.2項の (3)で後述する).

表 3.2 鋼材の機械的性質

部位 鋼種板厚 降伏点 引張強さ 破断伸びmm N/mm2 N/mm2 %

外ダイアフラム

SN400B 11.7 272 432 31SN400B*1 12.0 278 414 32

角形鋼管BCR295 8.93 368 457 41BCR295*2 8.98 391 447 41BCR295 16.2 319 444 45

*1:No.6は追加実験として実施したため,材料特性は異なる.*2:試験片種別は,外ダイアフラム(JISZ22011A号),角形鋼管(JIS

Z22015号)

3. 3. 2 実験結果

(1) 荷重−変形関係

 図 3.13,3.14に荷重 P-鋼管面外変形 u関係を示す.図 3.13は P- u関係を u=1mmまでを拡

大したものを,図 3.14は荷重が低下し始めるまでの P- u関係を示している.各図の縦軸は荷重 P,

横軸は uである.各 P- u関係には,降伏耐力実験値 expPy,(1/3)を○印で,降伏耐力計算値 calPyを●

印で,最大耐力実験値 expPuを◇印で,設計用最大耐力計算値 calPuを◆印でプロットしている.ここで,

expPy,(1/3)は接合部の荷重-変形関係における接線剛性が初期剛性の 1/3となるときの荷重と定義して

いる.expPy,(1/3)時における uの試験体によるバラツキは小さく 0.34~ 0.48mmであり,鋼管板厚に対

して 3~ 4%程度である.この傾向は中柱を対象としたときと同様である(2.7.2項を参照).calPu時

における uは 1.2~ 4.5mmであり,梁端回転角に換算して 1/200~ 1/50rad程度に収まっている(こ

こでは,梁せいが鋼管幅の 1.5倍としている).

 図 3.13(a),3.14(a)より,a,hd,Bdの違いによる耐力の差は明瞭に表れるが,降伏耐力に達した後

の P- u関係の勾配には明瞭な差はない.これは,降伏耐力に達した後の剛性には鋼管フランジの面

外剛性が大きく寄与するためである.図 3.13(b),3.14(b)において,鋼管幅厚比の異なる試験体(No.4,5)

の降伏耐力後の勾配に大きな差が生じていることからも明らかである.図 3.13(c),3.14(c)では,外

壁側の外ダイアフラムせい lh dの違いを比較しているが,No.1試験体と No.6試験体の間に明瞭な差は

見られない.また,外柱と中柱の P- u関係は最大耐力に到るまでほぼ重なっている(図 3.14(d)参照)

P

角形鋼管柱

外ダイアフラム

A-A断面

A A

計測ジグ(山形鋼)

変位計

変位計

角形鋼管柱

P

P P

計測値 u

鋼管面外変形

図 3.12 変位計設置方法と鋼管面外変形の定義

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0

500

0 1

P[kN]

u[mm]

No.1

No.2(a小 )

No.3( 大 )hd

No.4( 大 )Bd

0

500

0 1

P[kN]

u[mm]

No.1

No.6( 小 )lh d

0

500

0 1

P[kN]

u[mm]

No.7(中柱 )

No.1(側柱 )

expP y, (1/3) calP y

0 1

P[kN]

u[mm]0

500No.5(D/t=16)

No.4(D/t=28)

0

500

1,000

0 10 20 30

P[kN]

40

u[mm]

No.1

No.2(a小 )

No.3(  大 )hd

No.4( 大 )Bd

0

500

1,000

0 10 20 30

P[kN]

u[mm]

No.6( 小 )

No.1

lh d

0

500

1,000

1,500

0 10 20 30 40

P[kN]

u[mm]

No.5(D/t=16)

No.4(D/t=28)

0

500

1,000

0 10 20 30

P[kN]

u[mm]

No.7(中柱 )

No.1(側柱 )

expPu calPu

図 3.13 荷重 P-鋼管面外変形 u関係(u=1mmまで)

(a)a,hd,Bdの影響 (b)t (D/t)の影響

(c) lh d の影響 (d)対象とする柱 (外柱・中柱 )の影響

図 3.14 荷重 P-鋼管面外変形 u関係

(a)a,hd,Bdの影響 (b)t (D/t)の影響

(c) lh d の影響 (d)対象とする柱 (外柱・中柱 )の影響

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ので,外柱の外ダイアフラム形式柱梁接合部は中柱の外ダイアフラム形式柱梁接合部と同等の力学性

能を有するといえる.これは,文献 3.6)の結果とも一致している(ただし文献 3.6)では,接合部の外

壁側をサイドスチフナ形式としている).

(2) 耐力の計算値と実験値の比較

 表 3.3に各耐力の実験値と計算値を示す.図 3.15に降伏耐力の計算値と実験値を比較して示す.図

の縦軸は,降伏耐力実験値 expPy,(1/3)に対する計算値 calPyの比を,横軸は試験体番号を表している.図

中の○印は calPyの算定に (3.9),(3.11)式を用いた結果であり,calPy /expPy,(1/3)は 0.99~ 1.24を示して

いる.これより (3.9),(3.11)式による降伏耐力算定は妥当であるといえる.また●印は calPyの算定に

おいて (3.14),(3.18)式を適用した近似値である.(3.14),(3.18)式により十分な精度で近似できるこ

とがわかる.

 図 3.16に設計用最大耐力計算値と最大耐力実験値を比較して示す.図の縦軸は,最大耐力実験値

expPuに対する計算値 calPuの比を,横軸は試験体番号を表している.図中の◇印は calPuの算定に (3.12),

(3.13)式を用いた結果であり,calPu /expPuは 0.46~ 0.71を示している.したがって,設計用最大耐力

は最大耐力実験値を 3割以上過小評価することになる.一因として,(3.12),(3.13)式の誘導において

角形鋼管フランジの中央付近の応力負担を無視したことが挙げられる(3.2.6を参照).図 3.14より設

計用最大耐力に対応する鋼管面外変形の大部分は 2mm前後であり,仮に梁せいを鋼管幅の 1.5倍と

した場合,設計用最大耐力時の梁端回転角はおよそ 1/100rad程度であり,それほど過大な変形では

ない.図 3.16の◆印は calPuの算定において (3.15),(3.19)式を適用した近似値である.◇印と◆印は

良く一致しており,近似の精度は高い.

表 3.3 各耐力の実験値と計算値

試験体

実験値 計算値

expPy,(1/3) expPy,(0.15%) expPu

expP y, (1/3)

expPu calPy calPy,ap calPp calPu calPu,ap calPm

kN kN

No.1 353 449 1060 3.00 358 356 524 514 509 783

No.2 333 391 861 2.59 346 330 425 487 456 624

No.3 404 491 1098 2.72 499 493 594 738 736 894

No.4 391 502 1195 3.06 395 434 564 572 633 840

No.5 654 757 1369 2.09 663 647 822 977 986 1237

No.6 358 438 1068 2.98 345 343 534 464 457 789

No.7 363 452 1106 3.05 358 356 524 514 509 783

1

2

0No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7

calP y/expP y, (1/3) calP y, ap/expP y, (1/3)

1

2

0No.1 No.2 No.3 No.4 No.5 No.6 No.7

calPu/expPu calPu, ap/expPu

図 3.15 降伏耐力計算値と実験値の比較 図 3.16 設計用最大耐力計算値と最大耐力実験値の比較

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(3) 外ダイアフラムの歪分布と降伏領域

 図 3.17に隅肉溶接部近傍における外ダイアフラムの荷重方向歪分布の例を示す.ここで,荷重方向

歪は 1軸塑性ゲージを図 3.17中の破線で示す位置(鋼管フランジ表面から 20mm)に数点貼付して計

測した.図中の○印は expPy,(1/3)時の歪分布を,◇印は全塑性耐力算定値 calPpに対応する荷重時の歪分

布を表している.calPpに到るまで鋼管フランジの中央付近の歪は小さく,鋼管角部に歪が集中してい

る.外柱(No.1~ 6)の場合,鋼管フランジ中心に対して非対称な歪分布を示している.また No.1,2,4,

5試験体では,直交梁が取り付く側(鋼管フランジ中心より下側)の歪が大きくなる傾向が確認できる.

No.6試験体の歪分布は,全く反対で直交梁の取り付かない側(図の上側)に歪が大きく生じている.

一方,No.3試験体は外柱試験体ではあるが,歪分布は概ね対称である.図 3.17に降伏耐力算定に用

いた降伏領域 2(x+t/2)をハッチをかけて示す.この領域内の歪が expPy,(1/3)(○印)のときに概ね降伏

歪(図中に一点鎖線で示す)に達しているので,降伏領域 2(x+t/2)の算定方法は妥当であるといえる.

歪ゲージ貼付位置

降伏歪 (0.13%)

歪 [%]

0 1 2

No.1

降伏耐力算定に用いた降伏領域

歪 [%]

0 1

No.2

歪 [%]

0 1 2

No.3

歪 [%]

0 1 2

No.4

歪 [%]

0 1 2

No.5

歪 [%]

0 1 2

No.6

3

歪 [%]

0 1

No.7

図 3.17 鋼管フランジと外ダイアフラムの隅肉溶接部近傍における荷重方向歪分布

○:expPy,(1/3)

◇:calPp

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-51-

(4) 外ダイアフラムの歪挙動

 図 3.18に No.1,6,7試験体の荷重 P-荷重方向歪 f関係を示す.図 3.18(b)~ (e)より,400kN

程度まで各試験体の歪挙動はほぼ一致している.歪ゲージ i4~ i6,o4~ o6は 300~ 400kNの範囲

で P-f関係の接線剛性が緩やかになるが,これは降伏耐力実験値とよく対応する結果となっている.

これ以降,外柱である No.1と No.6の鋼管角部近傍の歪挙動は,外側(o4~ o6)と内側(i4~ i6)

の間に差が生じる.外壁側の外ダイアフラムせい h'dが小さい No.6試験体は,特にその差が大きく,

最外縁に位置する o6(図 3.18(e)の◇印)の歪の進展が著しい.それに対して,h'dが No.6よりも大

きな No.1では,o6(図 3.18(e)の△印)の歪は緩和されていることがわかる.

(5) 終局状態

 No.1~ 3,5~ 7試験体は,外ダイアフラムと継手鋼板の溶接部始終端からダイアフラム側へ亀裂

が進展し終局を迎えた.No.4に関しては,図 3.19に示す位置で発生した亀裂が外ダイアフラムを貫

通して角形鋼管との隅肉溶接部に到り,前面隅肉溶接止端に沿って外ダイアフラムが破断し,最終的

には前面隅肉溶接部を貫通して終局を迎えた.No.4試験体が他の試験体と異なる終局状態を示した

0

500

1,000

0 1

P [kN]

f [%]0

500

1,000

0 5 10

P [kN]

f [%]0

500

1,000

0 5 10

P [kN]

f [%]

0

500

1,000

0 5 10

P [kN]

f [%]0

500

1,000

0 5 10

P [kN]

f [%]

20

2512

.550

50

c

i2

i4

i5i6

o2

o4

o5o612

.550

5025

50

図 3.18 荷重 P-荷重方向歪 f関係

(a)歪ゲージ c (b)歪ゲージ i2,o2 (c)歪ゲージ i4,o4

(d)歪ゲージ i5,o5 (e)歪ゲージ i6,o6

○:No.1の i □:No.6の i △:No.1の o ◇:No.6の o 太実線:No.7

角形鋼管柱

外ダイアフラム

亀裂発生位置

:亀裂進展経路

前面隅肉溶接部に亀裂が貫通

図 3.19 No.4試験体の破壊性状

理由としては,水平ハンチ角度が 22°(図 3.11参照)

と小さいために,外ダイアフラムと継手鋼板の溶接部

始終端における幾何学的変化が緩やかになることで歪

集中が軽減されたことと,降伏領域 2(x+t/2)が他の

試験体に比べて狭いため(図 3.17参照)に鋼管角部

から外ダイアフラム側面にかけて歪集中率の増大を招

いたこと,の 2つの要因が重なったことが考えられる.

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-52-

3. 4 まとめ

 本章では,外柱(側柱・隅柱)の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を対象として,任意の接

合部寸法(ただし,本章では偏心梁付きの柱梁接合部については対象外としている)に適用できる耐

力式を構築した.また,耐力算定式を検討するために外柱を想定した接合部引張実験を行った.本実

験から得られた知見を以下にまとめる.

[1] 偏心の無い梁が取り付く場合の外柱を対象とした外ダイアフラムの降伏耐力は,(3.9),(3.11)

式を用いて算定することができる.ただし,(3.9),(3.11)式は以下の範囲において適用される.

 (3.9)式:h'd>hdのとき

 (3.11)式:h'd<hdのとき

記号,h'd:外壁側の外ダイアフラムせい(図 3.3(e),図 3.4参照)

[2] (3.12),(3.13)式による設計用最大耐力の計算値は,最大耐力実験値より 3割以上低い値を示

すが,そのときの鋼管面外変形は梁端回転角(梁せいが鋼管幅の 1.5倍を想定)に換算すると

およそ 1/100程度に相当する.

[3] (3.14),(3.18)式による降伏耐力の近似算定値および (3.15),(3.19)式による設計用最大耐力の

近似算定値は,数値解析解 x,x *を用いて得られる降伏耐力および最大耐力の精算値に比べて

高々 10%程度の誤差である.

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第4章  梁が偏心して取り付く外ダイアフラムの耐力算定法

4. 1 はじめに

 3章では,外柱を想定して外周構面梁が取り付く側の外ダイアフラムの設計式を誘導した(図 4.1).

ただし,ここで対象とした外ダイアフラム接合部は,柱芯と梁芯が一致する場合に限定したものであ

る.しかしながら,建物の内部空間を可能な限り広く使用したり,外壁を取り付けやすくするなどの

理由で,外周構面梁は外側へ偏心させて設置される場合がある.したがって,梁が偏心して取り付く

外ダイアフラム(以下,偏心梁付き外ダイアフラム)をどのように設計すればよいかを提示することは,

実用上必要なことといえる.

 文献 4.1)~ 4.3)では,偏心梁付き外ダイアフラムの耐力は,偏心側の補強効果により無偏心の場合と同

等以上であることが示されている.ただし,文献 4.1),4.2)では梁を偏心させた側(以下,偏心側と称する.

また偏心側と反対側は反偏心側と称する)にサイドスチフナを溶接した形式を,文献 4.3)では厚板よ

り切り出した正方形のリングを柱に溶接した形式を対象としている.本章で対象とする偏心梁付き外

ダイアフラムの形状は,図 4.2に示すように既往の論文の形状とは異なるため,無偏心の場合に比べ

て耐力がどのような傾向を示すかは不明である.

 前章では,無偏心の外柱を対象とした耐力算定式を提案し,それが妥当であることを実験により明

らかにした.したがって,梁が偏心して柱に取り付くことによって接合部耐力がどのように変化する

かを把握できれば,偏心梁付き外ダイアフラムの耐力算定式の構築が可能であると考えられる.そこ

で本章では,偏心梁付き外ダイアフラムを対象とした有限要素法(FEM)解析を行い,外ダイアフラ

ムと角形鋼管柱の間での応力伝達機構に及ぼす偏心の影響を分析する.その分析結果をもとに,無偏

心の場合の耐力算定式(3章)を修正し,偏心の影響を考慮できるようにする.さらに,偏心が接合

部耐力に与える影響について,FEM解析結果と計算値が概ね一致することを確認する.

D

t

外ダイアフラム

角形鋼管柱

t

外ダイアフラム

(a) 側柱 (b) 隅柱

i i

hd

hdhd

hd

板厚 td 板厚 td

D梁

外ダイアフラム

角形鋼管柱

偏心

図 4.2 偏心梁付き外ダイアフラム接合部

図 4.1 外ダイアフラム接合部(無偏心の場合)

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- 54 -

4. 2 有限要素法解析

4. 2. 1 解析モデル

 偏心梁付き外ダイアフラム接合部の降伏耐力に与える偏心の影響を検討するために,鋼管幅厚比

および梁の偏心量を変化させた有限要素法解析を行った.図 4.3に解析モデルの例を示す.角形鋼

管□-300× t,外ダイアフラム板厚 td=15mm,出寸法 a=225mm,偏心側の外ダイアフラムせい

hdo=30mm,反偏心側の外ダイアフラムせい hdi=75mmの解析モデルに対して単純引張形式の載荷を

行った.解析モデルにはソリッド要素を用いており,モデルの対称性を考慮して 1/4モデルとした.

 角形鋼管柱の幅厚比は,D/t=20,40の 2種類,梁の偏心量 e (e/D)=0 (0.0),25 (0.083),50 (0.167),

75 (0.25) mmの 4種類である.また,比較のために図 4.3(d)に示すモデルを 1体作成した.本節で

は,接合部の降伏耐力を調べることが目的であるので,各要素の応力と歪の関係には,ヤング係数を

210000N/mm2,降伏点を 325N/mm2(外ダイアフラム),295N/mm2(角形鋼管柱)のみを与えて完

全弾塑性材を仮定した.解析モデルの一覧を表 4.1に示す.なお,載荷点に対応する梁フランジには,

他の部材に比べて非常に高い剛性・耐力を設定し,応力が適切に伝達されるように配慮した.節点の

図 4.3 解析モデルの例

(a) 平面図(D/t=20,e=50mm) (b) 立面図(D/t=20,e=50mm)

(c) 等角図(D/t=20,e=50mm)(d) 平面図(D/t=20,e=0mm)

(無偏心外柱モデル)

外ダイアフラム

角形鋼管柱

梁フランジ(剛体要素)

X

Y

2

P変位計測点

A

A

外ダイアフラム

角形鋼管柱

梁フランジ(剛体要素)

X

Z

2

P

外ダイアフラム

角形鋼管柱

梁フランジ(剛体要素)

2

P

X

Z

Y

外ダイアフラム

角形鋼管柱

梁フランジ(剛体要素)

X

Y

2

P変位計測点

A

A

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拘束条件に関しては,柱ウェブの端部において X,Y方向(図 4.3(a),(c)),Z方向の対称面におい

て Z方向(図 4.3(b))の移動を拘束した.

 解析には NX Nastran (version9.2J)を使用した.塑性域における構成方程式は,von Misesの降伏

条件,連合流れ則および等方硬化則に基づいている.なお,本解析プログラムにより,外ダイアフラ

ム形式柱梁接合部の挙動を精度よく追跡できることを予備解析で確認している(付 4.1参照).

4. 2. 2 解析結果

 荷重 Pと鋼管面外変形 uの関係を図 4.4に示す.鋼管面外変形 uは,梁芯と鋼管壁の内表面との交

点(例えば,図 4.3(a),(d)の●印)における X方向変位を表す.図中の○印および▽印は,P-u関

係における接線剛性が初期剛性の 1/3になったときの降伏耐力 FEMPy,(1/3)および 0.15%オフセット値

により求めた降伏耐力 FEMPy,(0.15%)である.ここで,0.15%は梁せいを鋼管幅の 1.5倍としたときに鋼

管面外変形 uによる残留回転角が 1/500radになるように設定した値である.図 4.4(a)には幅厚比 20

のモデルについて,図 4.4(b)には幅厚比 40のモデルについて示しているが,いずれも偏心量が大き

くなるにしたがって,降伏耐力が減少することがわかる.

表 4.1 解析モデル一覧

モデル D/t e (e/D)

E20-0

20

0 (0.0)

E20-25 25 (0.083)

E20-50 50 (0.167)

E20-75 75 (0.25)

N20-0 0 (0.0)

E40-0

40

0 (0.0)

E40-25 25 (0.083)

E40-50 50 (0.167)

E40-75 75 (0.25)

0

400

800

1,200

0 2 4

P [kN]

u [mm]FEM P y, (1/3)

FEM P y, (0.15%)

calP y

E20-0 E20-25E20-50 E20-75N20-0

0

400

800

0 2 4

u [mm]

P [kN]

E40-0 E40-25E40-50 E40-75

図 4.4 P-u関係(b) 幅厚比 40

(a) 幅厚比 20

600

800

1,000

0 0.1 0.2 0.3D

e

P y [kN]

300

500

700

0 0.1 0.2 0.3D

e

P y [kN]

(b) 幅厚比 40(a) 幅厚比 20

図 4.5 降伏耐力と偏心量の関係

calP y

FEM P y, (1/3)

FEM P y, (0.15%)

calP y

FEM P y, (1/3)

FEM P y, (0.15%)

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○:FEMPy,(1/3)時

▽:FEMPy,(0.15%)時

 図 4.5に降伏耐力と偏心量の関係を示す.横軸の偏心量 eは鋼管幅 Dで無次元化した偏心率 e/Dで

表記している.降伏耐力の解析値 FEMPy,(1/3)と FEMPy,(0.15%)は,幅厚比によらず偏心率 e/Dの増加に伴っ

て線形的に減少することが確認できる.

 図 4.6,4.7に外ダイアフラムの鋼管壁近傍(図 4.3(a),(d)に示す断面A)の荷重方向応力分布を

示す.○印が FEMPy,(1/3)時,▽印が FEMPy,(0.15%)時の応力分布である.いずれの解析モデルも FEMPy,(1/3)

時および FEMPy,(0.15%)時では,鋼管幅中央部の応力負担は無く,鋼管角部付近において応力伝達が確認

できる.また幅厚比が小さいほど鋼管角部の応力伝達領域は広くなる(例えば,図 4.6(a)と図 4.7(a)

の比較より).また,偏心側の鋼管角部から外ダイアフラムの外縁にかけての応力は,ほぼ降伏点(325N/

mm2)に達している.図 4.8に FEMPy,(1/3)時および FEMPy,(0.15%)時における外ダイアフラムの応力分布を

偏心量の違いにより比較したものを示す.図 4.8より以下のことがわかる.

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

図 4.6 外ダイアフラムの応力分布(幅厚比 20)

(a) E20-0 (b) E20-25

(c) E20-50 (d) E20-75

(e) N20-0

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-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

図 4.7 外ダイアフラムの応力分布(幅厚比 40)

(a) E20-0 (b) E20-25

(c) E20-50 (d) E20-75

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

図 4.8 外ダイアフラムの応力分布の比較

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

-200

-100

0

100

200

300

400

position

偏心側鋼管角部

反偏心側

鋼管角部

vd [N/mm2]

(a) 幅厚比 20,FEMPy,(1/3)時 (b) 幅厚比 20,FEMPy,(0.15%)時

(c) 幅厚比 40,FEMPy,(1/3)時 (d) 幅厚比 40,FEMPy,(0.15%)時

○:FEMPy,(1/3)時▽:FEMPy,(0.15%)時

○:E40-0▽:E40-25◇:E40-50□:E40-75

○:E20-0▽:E20-25◇:E20-50□:E20-75●:N20-0

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1) 偏心側の外ダイアフラムの応力分布は,偏心量によらず概ね同じ分布である.

2) 鋼管角部で応力が伝達される領域の大きさは,偏心量によらずほぼ一定である.

3) 反偏心側の外ダイアフラムの応力は,偏心量が増加するにしたがって小さくなる.

4. 3 偏心梁が取り付く外ダイアフラムの耐力

 4.1節で述べたように,既往の偏心梁が取り付く外ダイアフラムの研究 4.1~ 4.3)では,偏心のある接

合部の耐力は,偏心側の補強効果により無偏心の場合に比べて同等以上であるという知見が得られて

いる.しかしながら,前節で検討したように,本論で対象とする偏心梁付き外ダイアフラムでは,偏

心量が増加するにしたがって耐力が低下することが明らかとなった.したがって,偏心の影響を考慮

した耐力式の構築が必要である.本節では,前節の FEM解析より得られた知見をもとに,3章で誘

導した耐力式を偏心の影響が考慮できる修正式として提案する.

4. 3. 1 降伏耐力

(1) 偏心側における外ダイアフラムの応力伝達

 4.2.2項で得られた知見 1)より,偏心側における外ダイアフラムの応力伝達は,無偏心の場合の外

壁側における応力伝達で代表させることができると考える.すなわち,3.2.6項で得た (3.9)式あるい

は (3.11)式に含まれる外壁側の応力伝達分を取り出すと次式が得られる.ただし,下添字の (1)およ

び (2)は,図 3.5で示した崩壊機構 1および 2に対応している.

P yo, (1) =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)+

3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)> H$t dvdy (4.1)

P yo, (2) =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)+

3 (1+4tan2 uio)

2 (1+tan uio) hdo> H$t dvdy (4.2)

ここで,b:無偏心の場合の梁側面から鋼管角部までの距離((4.3)式),co:外壁側の外ダイアフラム

端部の角部から鋼管ウェブまでの距離(図 4.9(a)),hdo:外壁側の外ダイアフラムせい,io:外壁側の

水平ハンチ角度,uio:図 4.9(c)のように塑性解析モデルを修正した場合の水平ハンチ角度であり,(4.4)

式で表される.

b =2

D-B f (4.3)

a

io

ii

boco

hdo

hdi

逆対称軸 X

a

無視する

io

ii

boco

hdo

hdi

無応力状態

無応力状態

a

uio

ii

boco

hdo

hdi

鋼管ウェブ

鋼管フランジ

図 4.9 柱梁接合部における地震時応力と塑性解析モデル

(a) 地震時応力 (b) 外ダイアフラムを半分取り出したモデル

(c) 塑性解析モデル

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tan uio =a-hdo

co+hdo (4.4)

3章では,外壁側および外壁と反対側の水平ハンチ角度は同じものとして扱ったが,偏心梁付き外ダ

イアフラムの場合は,前節の解析でも設定したように水平ハンチを設けない場合も考えられるので,

偏心側と反偏心側の水平ハンチ角度を異なる記号で定義している(図 4.9).

(2) 反偏心側における外ダイアフラムの応力伝達

 4.2.2項で得られた知見 2)より,反偏心側において外ダイアフラムから鋼管フランジへ伝達される

応力の分布範囲は,偏心がある場合にも x+t/2(図 3.6参照)を適用できるものと考える.ここで,

無偏心の場合の外ダイアフラムが,外壁と反対側で伝達する応力和は次式で表される.

P yi e= 0 =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)+

3 (1+4tan2ii)

2 (1+tanii) hdi> H$t dvdy (4.5)

 知見 3)より偏心の影響を受けるのは反偏心側の応力伝達であること,図 4.5の解析結果より偏心梁

付き外ダイアフラムの耐力は偏心量の増加にしたがって線形的に減少することから,本節では,偏心

による低減係数を偏心率の 1次式として (4.5)式に乗じることを考える.1次式であるから,ある 2つ

の偏心率に対する低減率を仮定すればよい.ここでは,以下の 2つのケースを考える.

i) 偏心率 0(無偏心):この場合,偏心による低減はないので,低減率は 0%である.

ii) 偏心率 0.5:梁芯が鋼管ウェブ面に一致する場合であり,梁フランジからの応力はすべて偏心

側へ伝達されると考えられるので,偏心による低減率が 100%となる.ただし,このような偏

心率は現実の接合詳細としては考えられない.

 これらの仮定より偏心による低減係数 reは次式で与えられる.

re = 1-2$D

e (4.6)

したがって,偏心梁付き外ダイアフラムが,反偏心側で伝達する応力和は次式で表される.

re$P yi e= 0 = 1-2$D

ee o $

3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)+

3 (1+4tan2ii)

2 (1+tanii) hdi> H$t dvdy (4.7)

 偏心梁付き外ダイアフラムの降伏耐力 Py, (1),Py, (2)は,(4.1)式あるいは (4.2)式と (4.7)式の和によ

り次式で与えられる.

P y, (1) = P yo, (1)+re$P yi e= 0 (4.8)

P y, (2) = P yo, (2)+re$P yi e= 0 (4.9)

4. 3. 2 設計用最大耐力

 3.2.7項と同様に,前項で誘導した降伏耐力算定法を準用して,(4.8),(4.9)式に含まれる vdyを vdu

に置き換えて設計用最大耐力 Pu, (1),Pu, (2)とする.

Pu, (1) = Puo, (1)+re$Pui e= 0 (4.10)

Pu, (2) = Puo, (2)+re$Pui e= 0 (4.11)

ただし,上式において,

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Puo, (1) =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

2 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)> H$t dvdu (4.12)

Puo, (2) =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

2 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2 uio)

2 (1+tan uio) hdo> H$t dvdu (4.13)

Pui e= 0 =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

2 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2ii)

2 (1+tanii) hdi> H$t dvdu (4.14)

4. 3. 3 降伏耐力および設計用最大耐力の近似算定式

 3.2.9項と同様にして,偏心梁付き外ダイアフラムの降伏耐力および設計用最大耐力の近似算定式は

次式で与えられる.

(1) 降伏耐力

P y, (1)ap = P yo, (1)ap+re$P yi, ap e= 0 (4.15)

P y, (2)ap = P yo, (2)ap+re$P yi, ap e= 0 (4.16)

ただし,上式において,

P yo, (1)ap =3 {1+a 2/4 (xap+t/2-b) 2}

2 (xap+t/2)+

3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)> H$t dvdy (4.19)

P yo, (2)ap =3 {1+a 2/4 (xap+t/2-b) 2}

2 (xap+t/2)+1.3hdo> H$t dvdy (4.20)

P yi, ap e= 0 =3 {1+a 2/4 (xap+t/2-b) 2}

2 (xap+t/2)+

3 (1+4tan2ii)

2 (1+tanii) hdi> H$t dvdy (4.21)

D

xap=

4

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcyf p

31

+3

1

D

b (4.22)

(2) 設計用最大耐力

Pu, (1)ap = Puo, (1)ap+re$Pui, ap e= 0 (4.23)

Pu, (2)ap = Puo, (2)ap+re$Pui, ap e= 0 (4.24)

ただし,上式において,

Puo, (1)ap =3 {1+a 2/4 (xap

* +t/2-b) 2}

2 (xap* +t/2)

+3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)> H$t dvdu (4.25)

Puo, (2)ap =3 {1+a 2/4 (xap

* +t/2-b) 2}

2 (xap* +t/2)

+1.3hdo> H$t dvdu (4.26)

Pui, ap e= 0 =3 {1+a 2/4 (xap

* +t/2-b) 2}

2 (xap* +t/2)

+3 (1+4tan2ii)

2 (1+tanii) hdi> H$t dvdu (4.27)

D

xap*

=4

3

t d

t

D

t

D

a

vdu

vcuf p

31

+3

1

D

b (4.28)

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4. 3. 4 降伏耐力計算値と有限要素法解析結果の比較

 表 4.1のモデルに対して,4.3.1項で示した算定法に基づいて求めた降伏耐力を図 4.4の荷重-変形

関係に◆印でプロットする.降伏耐力計算値 calPyに対応する鋼管面外変形は 0.5mm前後であり,鋼

管幅に対して 0.2%程度である.図 4.5に降伏耐力計算値を◆印で示す.なお,降伏耐力計算値はす

べて (4.16)式による算定結果である.FEM解析結果に比べて偏心の影響が大きく生じており,幅厚

比40かつ偏心率0.25のときには,calPyは FEMPy,(1/3)に対して過小評価を与える結果となっているものの,

その他の calPyは FEMPy,(1/3)と FEMPy,(0.15%)の間にあり,偏心の影響を概ね捉えることができている.

 以上より,4.3.1節で提案した耐力算定法により偏心梁付き外ダイアフラムの耐力は概ね把握できる

と考えられる.

4. 4 まとめ

 梁が偏心して取り付く外ダイアフラムの耐力算定式を構築するために,偏心量が外ダイアフラムの

耐力に及ぼす影響および外ダイアフラムの応力分布を有限要素法解析により分析した.その結果に基

づいて,偏心の影響を考慮できる外ダイアフラムの耐力算定式を誘導した.本算定式は,反偏心側に

おける外ダイアフラムの応力伝達に対して偏心による低減係数を導入したものである.偏心が接合部

耐力に与える影響について,本算定式による耐力計算値と FEM解析結果はよく一致したので,偏心

による耐力低下傾向を概ね表現することができたといえる.

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付 4. 1 予備解析による有限要素法解析の精度検証

 本章で偏心接合部に関する有限要素法解析を行う前に,解析の精度を検証するために,3章で実験

した No.7試験体を例に予備解析を実施した.解析モデルは,図A4.1に示すとおりであり,対称性を

考慮して試験体の 4分の 1をモデル化している.各要素には 6節点あるいは 8節点のソリッド要素を

用いる.外ダイアフラムと角形鋼管の材料特性は,応力-歪関係の材料試験結果を真応力-対数歪関

係に変換したものを多直線近似して得る(図A4.2).解析ケースは 2種類とし,外ダイアフラムと角

形鋼管の溶接部を無視する場合を case1,モデル化する場合を case2とする.ここで,溶接部のモデ

ル化は,図A4.3(b)に示す斜線部と (c)に示す斜線部の面積が等しい条件のもとで溶接金属を矩形断

面に置換して得る方法をとる 4.4).溶接金属には外ダイアフラムと同一の材料特性を用いる.図A4.1

に示すように,各対称面における直交方向の移動を拘束し,ジグ側の端部には固定支持条件を与える.

塑性域における構成方程式は,von Misesの降伏条件,連合流れ則および等方硬化則に基づいている.

 解析結果を図 A4.4に示す.ここで,図の縦軸は引張荷重 P,横軸は鋼管面外変形 uである.uは

実験と同一条件となるように,図 A4.1の●印間の X方向相対変位で定義される量である.図 A4.4

より,case1では実験結果を下回っているが,case2では実験結果と精度よく一致しており,溶接部の

影響が比較的大きいことがわかる.図A4.4に 1/3接線剛性時耐力を○印でプロットする.溶接部を

無視しても高々 1割程度の過小評価に留まる.これより本章の解析では,溶接部の影響を無視するこ

ととした.

9 10 4.5 6.3

471210

10外ダイアフラム

角形鋼管

図A4.4 解析結果と実験結果の比較

A A

B

B

外ダイアフラム

ジグ

梁フランジ(剛体要素)

角形鋼管

溶接金属

スリット

4

P

(b) A-A4

P

X

Z

(c) B-B

(a) XY平面

図A4.1 有限要素法解析モデル

0

500

1,000

0 10 20 30

case2case1

experiment

P [kN]

u [mm]

0

200

400

600

0 0.5 1 1.5 2

P [kN]

u [mm]

X

Y

Y

Z

溶接金属

図A4.3 溶接金属の矩形断面置換 4.4)

(a) 有限要素モデル (b) 実際の断面 (c) 矩形置換

図A4.2 材料特性

0

200

400

600

0 0.05 0.1 0.15

v [N/mm2]

f

外ダイアフラムor 溶接金属

角形鋼管

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第5章  分割外ダイアフラムの提案と設計法

5. 1 はじめに

 2章では,図 5.1に示す直交梁の取付も考慮できる任意形状の外ダイアフラムに対する降伏耐力(短

期許容耐力に相当する弾性限耐力))および最大耐力の算定式を誘導し,さらにこれらの算定式を近

似して簡便な設計式を提案した.提案した設計式には溶接接合部の強度と寸法の影響も考慮している.

しかし,ここで対象としたのは,外ダイアフラムと梁フランジが溶接接合される場合を想定したもの

であり,実験も溶接接合の場合に限られる.外ダイアフラムを用いる場合,一般に鋼管からの出寸法

が通しダイアフラムに比べて大きくなるため,外ダイアフラムと梁の接合方法としては溶接接合だけ

でなく高力ボルト接合も可能となる.そこで本章では,外ダイアフラムと梁が高力ボルト接合される

場合を対象とする.

 外ダイアフラムと角形鋼管柱の従来の接合形式は,図 5.2に示す 2種類に大別される 5.1).図 5.2(a)は,

4枚の鋼板を角形鋼管柱に溶接する形式であり,鋼板同士は角形鋼管柱の 45°方向で突合せ溶接され

る.そのため,応力集中箇所となる角形鋼管角部近傍に溶接部が存在することになり,溶接部での早

期破断 5.2)が懸念される施工法でもある.一方,図 5.2(b)は,鋼板から 1枚板として切り出した外ダ

イアフラムを角形鋼管柱に溶接する形式であるため,図 5.2(a)に対して想定される早期破断の問題は

解消される.しかしながら,施工時には柱端部から外ダイアフラムを通して所定の位置に設置する手

間がかかったり,外ダイアフラムと柱の間の隙間が大きくなるなどの精度誤差上の特別な管理が必要

となる.

hd

D t

外ダイアフラム板厚td

角形鋼管柱

i

45c

1枚板

溶接

応力集中箇所

A

外ダイアフラム

A

ウェブプレート

角形鋼管柱

切断箇所(スリット)

A-A断面

B-B断面

B

B

角形鋼管柱X

Y

フランジ外添板

フランジ内添板

梁継手位置

X

Y

図 5.3 分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の詳細

図 5.2 従来の外ダイアフラム図 5.1 外ダイアフラム

(a) 溶接タイプ (b) 1枚板タイプ

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 本章では,図 5.3に示す接合形式を採用することで上記の問題点を解消しようとしている.本接合

形式では,梁ウェブ位置で切断された 2枚の鋼板が,角形鋼管柱および梁のウェブプレート(図 5.3

の B-B断面参照)と隅肉溶接される方法をとっている(以下,分割外ダイアフラム形式と称する).

分割外ダイアフラムと類似の形式として 4枚の鋼板からなる外ダイアフラムが提案されている 5.3),5.4)

が,この場合,部品点数が多いため切断などの加工数が増えること,柱と外ダイアフラムの組立ての

際に手間がかかることなどが指摘できる.それに比べて本接合形式は部品点数が半分になり,施工性

が向上すると考えられる.

 本章の目的は,外ダイアフラムの施工法として上記の分割外ダイアフラム形式を提案し,分割外ダ

イアフラムを適用した柱梁接合部の弾塑性挙動を実験的に確認するとともに,接合部の設計法を確立

することである.本章の構成は以下のとおりである.5.2節では分割外ダイアフラムの詳細を述べ,

5.3節では梁フランジと高力ボルト接合された外ダイアフラムの耐力算定について述べる.5.4節では,

地震時における接合部の引張側を模擬して単調引張載荷実験を行い,接合部の弾塑性挙動について検

討する.5.5節では分割外ダイアフラムの設計法を提案する.

5. 2 分割外ダイアフラムの概要

 本章では,分割外ダイアフラムと梁フランジの接合方法として,高力ボルト 2面摩擦接合を想定し

ている.分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部に曲げモーメントが作用するときの引張側接合

部では,鋼管壁に面外変形が生じるとともに外ダイアフラムのスリットに開きが生じる.接合部に作

用する引張荷重(X方向)を伝達させる以外にスリットの開きを抑える目的で,梁フランジの外側に

設置する添板(以下,フランジ外添板と称する.同様に梁フランジの内側に設置する方をフランジ内

添板と称する)には 1枚板を採用している(図 5.3の B-B断面).このようにスリットを開こうとす

る力(Y方向の応力)を,本章では直交力と称する.分割外ダイアフラムと梁のフランジ継手の設計

では,梁フランジ応力に対するすべり耐力,降伏耐力および最大耐力のみならず,直交力に対する検

討も必要となる.

 外ダイアフラム形式柱梁接合部では,一般に鋼管壁に面外変形が生じるため,ウェブプレートの曲

げ抵抗は期待できない.したがって,梁ウェブ継手で伝達される曲げモーメントは,ウェブプレート

と外ダイアフラムの間で伝達される必要がある.そこで図 5.3の B-B断面に示すように分割外ダイ

アフラムとウェブプレートを隅肉溶接する方法をとっている.この隅肉溶接部には,上記の直交力に

対する抵抗も期待できる.5.5節では,この直交力を概算する方法を提示し,直交力を考慮したフラ

ンジ添板および高力ボルト接合部の設計について検討する.

 外ダイアフラムの応力集中箇所における溶接部をなくすことと,柱の所定の位置に容易に外ダイア

フラムを溶接施工できる点では,文献 5.3)の外ダイアフラムと同じである.本章の分割外ダイアフラ

ムは,外ダイアフラムの分割数の他,上述したウェブプレートと外ダイアフラムの接合詳細に関して

文献 5.3)と異なる.文献 5.3)では,ウェブプレート高さを梁せいより高くし,外ダイアフラムとウェ

ブプレートを両面隅肉溶接している.またフランジ外添板にも内添板と同様に 2枚の板を用いている.

以上より,ウェブプレート-外ダイアフラム間の溶接量の削減,添板の部品点数の削減という点でも

本章の分割外ダイアフラムに利点があるものと考えられる.

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5. 3 梁フランジと高力ボルト接合された外ダイアフラムの耐力算定

 本節では,梁フランジと高力ボルト接合された 1枚板タイプの外ダイアフラムの耐力算定式を誘導

する.後述するように,ここで得られる塑性解析結果が,外ダイアフラムに生じる直交力の算定に用

いられる(5.5節).

 2章では,図 5.1に示す任意形状の外ダイアフラムの設計式を得ることを目的として,降伏耐力と

最大耐力の算定式を誘導した.梁フランジと高力ボルト接合された外ダイアフラムの耐力算定に関し

ても,2章と同様に考える.

5. 3. 1 降伏耐力

 降伏耐力算定式 Pyの誘導手順を簡単にまとめると以下のようになる.詳細は 2章を参照のこと.

手順 1:図 5.4に示す崩壊機構(外ダイアフラム:節点①~④により三角形領域 I,IIに分割し,各領

域が一様歪状態で降伏しているものと仮定,鋼管壁:面外崩壊機構 5.5)を仮定)に対する崩壊荷重を

求める.

手順 2:手順 1の塑性解析より得た領域 I,IIの応力を用いて,降伏耐力(領域 I,IIの境界線①③④

を介して X方向に伝達される応力の総和と定義する)を求める.

 以上の手順により,降伏耐力算定式 Pyは次式で与えられる.

P y =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

4 (x+t/2)+

3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdy (5.1)

ここで,t:鋼管板厚,td:外ダイアフラム板厚,hd:外ダイアフラムせい,i:水平ハンチ角度,a:

外ダイアフラムの出寸法,b:梁フランジ縁から鋼管角部までの距離,x:鋼管フランジの降伏領域を

表すパラメータ,vdy:外ダイアフラムの降伏応力である.xは次の近似式で表される(2章参照).

D

x=

4

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcyf p31

+3

1

D

b (5.2)

ここで,vcyは角形鋼管の降伏応力である.

降伏線 降伏場

角形鋼管柱

t d+

2slx

D-t-2x

d

x

d

x

lx

Y

X

u

v

a

b

D

領域 II

Bd

角形鋼管柱

外ダイアフラム

i

領域 I

2Bd

hd

g

d

d

ab

x +2t

P y

1

2

34

arctan (4 tani)

図 5.4 外ダイアフラムの崩壊機構と鋼管壁の面外崩壊機構

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5. 3. 2 最大耐力

 高力ボルト接合を用いた場合,接合部が最大耐力に達する以前にすべりが発生するか否かで,想定

される破壊機構は異なる.そこで,以下では最大耐力に達する以前のすべり発生の有無で崩壊機構を

分類し,最大耐力算定式を誘導する.

(1) すべりが発生しない場合

 鋼構造接合部設計指針 5.6)において,梁端接合部の設計条件として与えられている最大耐力 jMuに適

用するための外ダイアフラム最大耐力算定式を,2章では (5.1)式の降伏応力を引張強さで置換するこ

とで与えた.本章でも同様に考えて最大耐力 Pu0を次式で与える.

Pu0 =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

4 (x *+t/2)+

3 (1+4tan2i)

4 (1+tani) hd> H$t dvdu (5.3)

D

x *

=4

3

t d

t

D

t

D

a

vdu

vcuf p31

+3

1

D

b (5.4)

ここで,vdu:外ダイアフラムの引張強さ,vcu:角形鋼管の引張強さである.

(2) すべりが発生する場合

 すべり発生後の高力ボルト接合部は,X方向に対して支圧状態となる.支圧状態で生じる機構とし

ては,図 5.5に示す 3通りの破断機構およびボルトの破断が考えられる.破断機構 1は斜方降伏線と

引張降伏線からなる局所的ちぎれ破断機構,破断機構 2は引張降伏線とせん断降伏線からなる局所的

ちぎれ破断機構,破断機構 3ははし抜け破断機構である.これら 4通りの破断機構に対する最大耐力

を算定する.

 破断機構 1の場合,図 5.5(a)の斜方降伏線における応力仕事 5.7)と引張降伏線における応力仕事の

和を外力仕事と等置すると,最大耐力は次式で与えられる.

Pu1 =1+3tan2i

2 {ed+(n-1) p} tani+Bd-g- 1+3tan2i $d> H$t dvdu+Antvdu (5.5)

ここで,Antは引張降伏線の有効断面積であり,図 5.5に示すとおりである.

 破断機構 2に対する最大耐力は次式で表される 5.6).

Pu2 = (Ant+0.5Ans)vdu (5.6)

ここで,Ansはせん断降伏線の有効断面積であり,図 5.5に示すとおりである.

ボルト孔径:d

(a) 破断機構 1 (b) 破断機構 2 (c) 破断機構 3

n

Ans

Ant

斜方降伏線引張降伏線

p ed

g

Ant

Ans

iAnt =(g -d)t d

破断機構 1,2 :

有効断面積

破断機構 2 :

Ans =2 {(n -1)p +ed } t d

破断機構 3 :

Ans =4 {(n -1)p +ed } t d

X

図 5.5 外ダイアフラムの破断機構

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 破断機構 3に対する最大耐力は次式で表される 5.6).

Pu3 = 0.5Ansvdu (5.7)

 ボルトの破断による最大耐力は次式で表される 5.6).

Pu4 = nb$qbu (5.8)

ここで,nb:ボルト本数,qbu:ボルト 1本あたりのせん断耐力(2面摩擦).

接合部がすべった場合でも,Pu0の方が小さければ接合部の最大耐力は Pu0となる.したがって,最

大耐力は次式により与えられる.

Pu = min Pu0 , Pu1 , Pu2 , Pu3 , Pu4# - (5.9)

5. 4 接合部の引張実験

 分割外ダイアフラム形式柱梁接合部の弾塑性挙動と,従来の外ダイアフラムのそれとの違いを確認

するために,外ダイアフラムと引張側梁フランジの接合部を対象とする実験を実施した.

5. 4. 1 実験概要

 図 5.6に試験体,表 5.1に試験体一覧,表 2に鋼材の機械的性質を示す.試験体は計 4体である.D1(分

割外ダイアフラム形式)が基本試験体であり,外ダイアフラムのスリット幅を 5mmとしている(図

5.6(a)の B-B断面).分割外ダイアフラムはスリット位置でウェブプレートを介して隅肉溶接されて

いる.この隅肉溶接は,5.2節で述べたように,直交力に対する抵抗を期待して施したものである.また,

ウェブプレートと角形鋼管は溶接していない.D1の添板は外側に 1枚板を,内側にはウェブプレー

トが溶接されているため 2枚板を採用している.D2は D1と同形状であり,ウェブプレートを省略し

た試験体である(図 5.6(b)).S1は D1と同形状であり,外ダイアフラムを 1枚板タイプ(図 5.2(b))

表 5.2 鋼材の機械的性質

部位 鋼種板厚 降伏点 引張強さ 破断伸び

適用試験体mm N/mm2 N/mm2 %

外ダイアフラムSN400B 12.0 278 414 32 D1, D2

SN400B 11.7 272 432 31 S1, S2

角形鋼管BCR295 8.98 391 447 41 D1, D2

BCR295 8.93 368 457 41 S1, S2

表 5.1 試験体一覧

試験体

角形鋼管柱(BCR295)

外ダイアフラム (SN400B)添板

(SM490A) ウェブプレート

(PL-9, SM490A)

の有無

幅 板厚 板厚 出寸法 せい水平ハンチ角度

端部幅

形式継手鋼板との接合

板厚

D t td a hd i Bd tsp

mm mm mm mm mm deg mm mm

D1

250 9 12 150 25 31 150

分割 高力ボルト接合

9有

D2

無S11枚板

12

S2 溶接接合 -

※溶接脚長・・・角形鋼管柱と外ダイアフラムの隅肉溶接:10mm,ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接:8mm

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とし,2枚の添板(フランジ内添板をフランジ外添板と同じ形状とする)で高力ボルト接合した試験

体である(図 5.6(c)).外ダイアフラムと添板の摩擦面処理は赤錆発生とする.S2はS1と同形状であり,

梁フランジに相当する継手鋼板と外ダイアフラムを溶接接合した試験体である(S2は 3章の No.7試

験体である,図 5.6(d)参照).本実験では,分割外ダイアフラムと従来の外ダイアフラムの違いを検

討することが目的なので,表 5.1に示すように,接合形式以外の詳細(D,t,td,a,hd,i,Bd)は

すべて同一条件とした.なお,本試験体は中柱に地震時応力が作用する場合を想定しているため,外

ダイアフラムに作用する応力は角形鋼管柱を挟んで逆対称分布するものと考えられる(2章参照).そ

こで外ダイアフラム-変形拘束用鋼板間のスリットを設けることにより外ダイアフラムの無応力状態

を再現し,このスリット位置での鋼管の面外変形を抑えるために変形拘束用鋼板を設置している.

 載荷方法は 2000kN万能試験機による単調引張載荷とした.計測項目は,鋼管面外変形(図 5.7),

外添板の中心軸上の歪分布(5.4.2項の (2)で後述)およびボルト張力である.

150

25

スリット

変形拘束用鋼板

A A

A-A断面

継手鋼板

継手鋼板

45 75 30

600

9030

30

高力ボルトF14T M20 × 8

31c

□-250 # 250 # 9(BCR295)

角形鋼管柱

P P

P P

B

B

(SM490A)

外ダイアフラム(SN400B)PL-12

(SM490A)PL-9ウェブプレート

PL-9フランジ外添板

(SM490A)PL-9フランジ内添板

(a) D1

10

スリット5

スリット位置の断面拡大図(D1)

608

B-B断面

スリット幅5mm

(SM490A)

PL-9ウェブプレート

10

8

B-B断面

10

B-B断面

スリット幅5mm

10

B-B断面

10

(b) D2 (c) S1 (d) S2

図 5.6 試験体形状

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5. 4. 2 実験結果

(1) 荷重−変形関係

 図 5.8(a)に S1と S2の荷重 P-鋼管面外変形 u関係を,図 5.8(b)に D1,D2,S1の P- u関係を

比較して示す.ここで縦軸の荷重 Pおよび横軸の鋼管面外変形 uは図 5.7に示す計測値を表す.図中

の○印は降伏耐力実験値 expPy(P- u関係の接線剛性が初期剛性の 1/3となるときの耐力),◇印は

最大耐力実験値 expPu,●印は (5.1)式による降伏耐力計算値 calPy,◆印は (5.9)式による最大耐力計算

値 calPuである.

 図 5.8(a)より (5.1)式による降伏耐力計算値 calPyと実験値 expPyは良く一致している.最大耐力計

算値 calPuは 506kNであり,(5.9)式の Pu0で決まる.これは実験値 expPu(S1:954kN,S2:1106kN)

の 50%程度であり,計算値に対応する鋼管面外変形は 1.5mm程度(図 5.8(a))である.例えば,梁

P

角形鋼管柱

外ダイアフラム

A-A断面

A A

計測ジグ(山形鋼)

変位計

変位計

角形鋼管柱

P

P P

計測値 u

鋼管面外変形

0

250

500

750

0 1

P [kN]

u [mm]

calPy

S2S1

expPy

0

500

1,000

0 5 10 15 20 25

P [kN]

u [mm]

calPu

expPu

776kN

S2S1

0

250

500

750

0 1

P [kN]

u [mm]

calPy

D2D1

S1

expP y

0

500

1,000

0 5 10 15 20 25

P [kN]

u [mm]

calPu

expPu

776kN654kN

580kN

D2D1

S1

図 5.7 鋼管面外変形 uの計測方法と定義

(b) D1,D2および S1の比較

図 5.8 荷重 P-鋼管面外変形 u関係(実験変数の比較)

:外ダイアフラム-添板間初期すべり発生

(a) S1と S2の比較

せいが柱幅の 1.5倍程度を想定すると,calPuのときの梁

端回転角に換算して 0.008rad程度であり過大な変形では

ない.S1は,外ダイアフラムと添板の接合部において

776kNですべりが発生したが,それまでは S2とほぼ同一

の P- u関係を描いている.以上より,外ダイアフラム

と梁フランジを高力ボルト接合とする外ダイアフラム接

合部は,すべりが発生する程度までは溶接接合と同等の

力学性能を有すると考えてよい.

 次に分割外ダイアフラムと 1枚板タイプの外ダイアフ

ラムを比較検討する.図 5.8(b)より,D1と S1の expPyは

ほぼ同じ値である.外ダイアフラム-添板間ですべり(図

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5.8(b)の▼印)が発生した後も直ちに耐力が回復し,S1に近い P- u関係を示している.ただし,

本実験においては,最大耐力時での変形性能は S1の方が大きくなった.一方,D2は外ダイアフラム

-添板間ですべり(図 5.8(b)の▼印)が発生するまでは D1と同等の P- u関係を示しているが,す

べり発生後は D1に比べて耐力が低く変形が大きい傾向を示している.

 外ダイアフラム-添板間における初期すべり発生時(以下,主すべり時)の荷重をすべり耐力とす

ると,すべり耐力実験値は,D1で 654kN,D2で 580kN,S1で 776kNであり,計算値 871kN(設計

用ボルト張力を 242kN,すべり係数を 0.45とした)の 67~ 90%を示した.すべり耐力実験値が計算

値より低い理由としてボルト張力の低下が考えられる.そこで,図 5.9に荷重 P-ボルト張力 Nb関

係を D1について示す.ここで,ボルト張力 Nbは,ボルト軸部に貼付した歪ゲージの値から換算でき

るように,事前にボルト張力-軸歪関係を検定しておいた.同図より載荷開始時には,概ね標準ボル

ト張力を導入できているが,主すべり時(▼印)のボルト張力は 100~ 160kN程度に低下しているこ

とがわかる.外ダイアフラムの塑性化により板厚が減少し,その結果ボルト張力が低下したものと考

えられる.D2のすべり耐力が D1に比べてさらに低いが,この理由としては,D2のスリット部には

ウェブプレートを溶接していないため,スリットの開きが抑えられず,D1に比べて主すべりが早まっ

たことが考えられる.

 以上より,ウェブプレートと外ダイアフラムを溶接することにより,スリットの開きは抑えられ,

かつ 1枚板タイプの外ダイアフラムと同等の力学性能を有する分割外ダイアフラムが実現可能である

ことがわかった.

0

250

500

750

0 100 200 300

P [

kN

]

N [kN]b

b1

b4

b3b2

設計用ボルト張力 242kN

標準ボルト張力 266kN

b1

b2

b3

b4

図 5.9 荷重 P-ボルト張力 Nb関係(D1)

すべり係数 0.317

摩擦係数 0.565

:外ダイアフラム-添板間初期すべり発生

(2) フランジ外添板の直交方向応力

 図 5.10に,D1のフランジ外添板において 2軸ゲージで測定した直交方向の応力分布 vY((s1~

s5)を示す.○印が P=calPy,●印が P=calPuに対応する.図 5.10より,P=calPyでは第 2ボルト位

置で応力が最大になり,第 1ボルト位置付近で応力がゼロに近くなることがわかる.

 フランジ外添板の直交方向応力 vY! と荷重 Pの関係を D1について図 5.11に示す.ここで直交方

向応力 vY! は,応力分布 vYを図 5.10のグレーのハッチで仮定し,その総和により算定している.

D1の直交方向応力 vY! は,P=371kN((5.1)式による降伏耐力計算値)で 52kN(○印),P=506kN((5.9)

式による最大耐力計算値)で 84kN(●印)である.直交力の算定値 FY(算定方法については 5.5節

で述べる((5.11)式))が 138kNであることから,降伏耐力計算値((5.1)式)相当の荷重時において

フランジ外添板が負担する直交方向応力 vY! は直交力算定値 FYの 4割程度であることがわかる.残

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りの 6割は,ウェブプレートの溶接部,角形鋼管柱と外ダイアフラムの溶接部およびフランジ内添板

で負担しているものと考えられる.

(3) 終局状態

 図 5.12(a)に示すように D2は,支圧が進展して第 2ボルト孔のはしねけ破断が生じた.D1は,外

ダイアフラムが破断する前に載荷を終了したので終局状態を確認できなかったが,図 5.12(b)より最

終的には第 2ボルト孔のはしねけ破断の発生が予想される.

 載荷終了後のスリット幅に関しては,D2で載荷前の約 3倍の残留変形が確認されたが,D1のスリッ

ト幅は,載荷前後でほとんど変化がなかった(図 5.12).

s5s4 s3 s2 s1

計測値

応力の総和をとる範囲

計測点(2軸ゲージ)

外ダイアフラム端部

フランジ外添板

添板端部

第 2ボルト

第 1ボルト

:降伏耐力計算値((1)式):最大耐力計算値((8)式)

100

vY

[N/m

m2 ]

-100

0

250

500

750

0 100 200 300

:降伏耐力計算値((1)式):最大耐力計算値((8)式)

vY! [kN]

P [kN]

図 5.11 荷重 P-直交方向応力 vY! 関係(D1)図 5.10 フランジ外添板の応力分布と直交方向応力 vY! の換算方法(D1)

図 5.12 載荷後の外ダイアフラム

残留開き変形,0

第 1ボルト孔

第 2ボルト孔

はしぬけ破断

第 1ボルト孔

第 2ボルト孔

(a) D2 (b) D1

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5. 5 直交力を考慮した接合部設計

 本節では,分割外ダイアフラムと梁フランジを接合する添板および高力ボルトの設計について述べ

る.文献 5.6)より,高力ボルトを用いた梁継手では,通常,梁の降伏耐力より添板の降伏耐力が大き

くなるように設計される.この場合のフランジ添板は,図 5.13の X方向の荷重に対する耐力を検討

していることになる.しかし,5.2節で述べたように分割外ダイアフラムでは,図 5.13の X方向の荷

重の作用時にスリットに開きが生じるため,それを抑えるためには,フランジ外添板の抵抗が必要と

なる.したがって,分割外ダイアフラムに使用するフランジ外添板の設計では,X方向の荷重と Y方

向に生じる直交力の組合せ応力に対する検討を要する.

 前節で述べたように,分割外ダイアフラムは 1枚板タイプの外ダイアフラム(図 5.2(b))と同等の

力学性能を有する.そこで分割外ダイアフラムにも図 5.4と同じ崩壊機構を仮定して,直交力を考慮

した接合部設計を検討する(図 5.13).ここでは,添板に関する設計条件①と必要ボルト本数の設計

条件②を次のように設定する.

①: 分割外ダイアフラムが崩壊機構(図 5.13)を形成しても,添板は降伏しない.

②: 分割外ダイアフラムが崩壊機構(図 5.13)を形成しても,外ダイアフラムと添板の高力ボル

ト接合部はすべらない.

以下では,直交力の算定式と組合せ応力に対する添板の耐力式を誘導後,設計条件①,②を検討する.

5. 5. 1 直交力の算定式

 分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部において,図 5.13の崩壊機構が形成されるとき,領域

Iの Y方向応力 IvY,面内せん断応力 IxXYは,5.3節の塑性解析より次式で表される.

IvY =

3 1+4 (x+t/2-b) 2

a 2

) 3

vdy

(5.10a)

IxXY =2 (x+t/2-b)

-avdy3 1+

4 (x+t/2-b) 2

a 2

) 3 (5.10b)

Y

X

u

v

a

b

D

領域 II

Bd

角形鋼管柱

外ダイアフラム

i

領域 I

2Bd

hd

x+2t

g

d

d

ab p ed

P y

1

2

34

arctan (4 tani)

降伏線 降伏場

角形鋼管柱

t d+

2slx

D-t-2x

d

x

d

x

lx

図 5.13 分割外ダイアフラムの崩壊機構

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図 5.14に示すように,境界線①②および節点①からスリットまでの隅肉溶接部で切断した自由体を考

える.図 5.14には自由体に作用する力を表記している.図中に示している直交力 FYの算定式を誘導

する.

 FYは境界線①②を介して Y方向に伝達される力であり,(5.10a),(5.10b)式を用いて次式で表され

るものと考える.

FY = (IvY sina12+IxXY cosa12) t d l12

=2

3$

1+a 2/4 (x+t/2-b) 2

atdvdy (5.11)

ここで,a12:境界線①②の法線と X方向のなす角度,l12:境界線①②の長さである.

5. 5. 2 直交力に対する添板の耐力

 設計条件①の検討において,組合せ応力に対する添板の耐力を算定する必要がある.しかし,添板

の応力状態は X,Y方向ともに引張あるいは圧縮のいずれかであるため,組合せ応力による影響を降

伏条件に考慮する必要はない.以上より,添板の耐力は,直交力だけが作用するものとして算定する.

 図 5.14のFspoutとFsp

inはそれぞれフランジ外添板の抵抗,フランジ内添板の抵抗,cFwは節点①から

スリット位置までの隅肉溶接部におけるせん断抵抗,wpFwはウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉

溶接部における Y方向の抵抗である(図 5.14の A-A断面参照).図 5.14に示す力の成分のみで釣

合式を立てると,次式が得られる.

FY = Fspout+Fsp

in+cFw+wpFw (5.12)

 直交力に対する添板の耐力を以下の仮定に基づいて誘導する.

XY

a12

l12

cFw

Fspout

wpFw

Fspin

A

A

A-A断面

FY FYフランジ外添板

フランジ内添板

外ダイアフラム

ウェブプレート

隅肉溶接部

Fspout+Fsp

inwpFw

1

2

g

p

n列

(a) フランジ外添板

引張応力分布

e1

e2

wspout

e2

ed

vspy

Fspyout

Fspyout

(b) フランジ内添板

せん断降伏

wspin

wspin

Fspyin

Fspyin

図 5.15 直交力に対する添板の降伏耐力算定用崩壊機構

図 5.14 外ダイアフラム自由体に作用する力

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[1] 図 5.15(a)の引張応力分布を仮定して,最大応力の領域が降伏応力 v spyに達したときをフラン

ジ外添板の降伏引張耐力Fspyoutと見なす.

[2] フランジ内添板はボルト孔欠損を考慮した有孔断面でせん断降伏する((図 5.15(b)参照).

 フランジ外添板の直交方向の応力は,図 5.10の結果を参照して,第 1ボルト位置(vY=0)と第 n

ボルト位置(vY=vspy)の間を線形補間し,第 nボルト位置から外ダイアフラム端部間に vY=vspyを

仮定して定めた分布とした(図 5.15(a)).仮定 [1]より得られるフランジ外添板の降伏引張耐力Fspyout

は次式で表される.

Fspyout =

2

(n-1) p+ed) 3 t spvspy (5.13)

ここで,n:ボルト列数,p:ボルトピッチ,ed:外ダイアフラムのはしあき,tsp:添板の板厚,vspy:

添板の降伏応力である.

 仮定 [2]より得られるフランジ内添板の降伏せん断耐力Fspyinは次式で表される.

Fspyin = (wsp

in-d) t sp$3

vspy (5.14)

ここで,wspin:フランジ内添板の幅,d:ボルト孔径である.

 節点①からスリットまでの隅肉溶接部の降伏せん断耐力 cFwyは次式で表される.

cFwy = 2$2

D-x-

2

te o $

2

sc$

3

cvwy

= (D-2x-t) sc$6

cvwy (5.15)

ここで,scは角形鋼管柱と外ダイアフラムの隅肉溶接部の脚長,cvwyは角形鋼管柱と外ダイアフラム

の隅肉溶接部の溶接金属の降伏応力である.

 ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の降伏耐力 wpFwyは次式で表される.

wpFwy = (a-swp)$2

swp$

3

wpvwy

= (a-swp) swp$6

wpvwy (5.16)

ここで,swpはウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の脚長,wpvwyはウェブプレートと外ダ

イアフラムの隅肉溶接部の溶接金属の降伏応力である.ただし上式において,隅肉溶接部の有効長さ

は全長より脚長 swpを引いたものとしている.

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5. 5. 3 添板の必要板厚

 設計条件①より,添板の板厚は次式を満たすように決定される.

Fspyout+Fspy

in $ Fspout+Fsp

in

= FY -cFwy-wpFwy (5.17)

ただし,節点①からスリットまでの隅肉溶接部およびウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部

には降伏状態を仮定して,それぞれ cFwy,wpFwyを伝えているものとする.

 本節では,(5.17)式を満たす添板の最小板厚(以下,添板の必要板厚)について検討する.中低層

鋼構造建築物を想定して表 5.3に示すパラメータに対して解析する.図 5.16に添板の必要板厚 tspと

鋼管幅厚比 D/t関係の計算例を示す.ただし,図の縦軸 tspは外ダイアフラムの板厚 tdで無次元化し

ている.各図のパラメータおよび凡例は図中に示すとおりである.lspは添板設置長さを表し,次式で

定義される.

l sp = (n-1) p+ed+e1 (5.18)

ここで,e1は添板のはしあきである.

 図 5.16より,鋼管幅厚比 D/tが小さくなるほど添板の必要板厚 tsp/tdは大きくなるが,D/t=15の

ときでも tsp/tdは高々 0.3程度である.また,D/tが 20を超えると,ウェブプレートと外ダイアフラ

ムの隅肉溶接部が十分な耐力を有するために,添板は直交力の抵抗要素としては不要であることがわ

かる.

 梁フランジと添板の継手の設計において,梁フランジの正味断面における降伏耐力より添板の正味

断面における降伏耐力が大きくなるように設計すると考えると,添板の必要板厚は次式で与えられる.

tbf

t sp$

(1.8B f -4d)$vspy

(B f -2d)$vbfy (5.19)

ただし上式において,フランジ内添板の幅を梁フランジ幅の 8割と仮定している.d=24mm,

Bf=200~ 300mm,v bfy=v spyの範囲で計算するとt sp/tbf $ 0.58となる.外ダイアフラムを梁フラン

ジと同厚とした場合,t sp/t d $ 0.58となる.

 図 5.16の計算例より tsp/tdは高々 0.3程度であることから,梁フランジと添板の継手の設計により

決まる添板厚( t sp $ 0.58t d)は外ダイアフラムの直交力により決まる添板厚( t sp # 0.3t d)の 2倍

近く必要になることがわかる.したがって,分割外ダイアフラム接合部の添板の設計時に直交力 FY

((5.11)式)を考慮する必要はないといえる.

表 5.3 解析パラメータ角形鋼管柱 外ダイアフラム 梁フランジ 高力ボルト接合詳細

D =

300

400 [mm]

500

*

vcy=295 N/mm2

D/t=15~ 35

td/t=1.0, 1.5, 2.0

vdy=235 N/mm2

a/D=0.5, 0.75

hd/D=0.1, 0.2

Bd=Bf

Bf/D=0.5, 0.75鋼種:F14T M22

d=24 mm

p=60 mm

e1=ed=40 mm

g=120 mm

n=2, 3, 4 列

添板

wspin = 0.8# (B f /2)

vspy=235 N/mm2

注 1:溶接金属の降伏応力は母材(外ダイアフラム)と同じ値(235N/mm2)に設定している.注 2:溶接脚長は外ダイアフラム板厚の 0.7倍,すなわち,sc=swp=0.7tdとした.

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5. 5. 4 高力ボルト接合部の設計

 梁先行降伏型を意図して設計する場合,必要ボルト本数は次式により決定される.

nmnbN0 $ B f tbf vbfy (5.20)

ここで,n:すべり係数,m:摩擦面の数,nb:ボルト本数,N0:設計ボルト張力,tbf:梁フランジ厚,

v bfy:梁フランジの降伏応力である.ただし,上式では梁ウェブの全塑性耐力への寄与およびボルト

孔欠損を無視している.

 (5.20)式は梁フランジと添板の高力ボルト接合部に適用される.一方,外ダイアフラムと添板の高

力ボルト接合部に関しては,梁フランジ応力と直交力の組合せ応力を考慮した荷重に対してすべり耐

力を検討する必要がある.梁フランジが全塑性状態にあるときに外ダイアフラムが弾性に留まるよう

に設計されている場合,直交力は算定できないので,ここでは,梁フランジ応力に (5.1)式を,直交

力に (5.11)式を用いて,設計条件②より次式を満たすようにボルト列数を決定するものと考える.

nmnN0 $ 2

P ye o

2

+ FY -cFwy-wpFwy_ i 2 (5.21)

ここで,nはボルト列数である(図 5.15参照).

前節で明らかにしたように,直交力 FYの大部分は隅肉溶接部の抵抗 cFwy,wpFwyにより負担すること

ができる(図 5.16で tsp/td=0となる範囲).tsp/td=0となる範囲では FY < cFwy+wpFwyであり,(5.21)

式右辺はPy/2と見なせる.したがって,高力ボルト接合部の設計時に直交力は考慮しなくてよい.一方,

tsp/td>0の範囲では直交力を考慮する必要があるので,ここでは,Py/2と組合せ応力((5.21)式右辺)

を比較して,設計時にどの程度の組合せ応力を考慮すればよいか検討する.図 5.17に Py/2と組合せ

応力((5.21)式右辺)の比 rPy((5.22)式)-鋼管幅厚比 D/t関係を示す.

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

n=2 a/D=0.75

D=500 lsp=140

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

0

0.5

15 20 25 30 35t

D

t sp/t d

n=2 a/D=0.5

D=300 lsp=140

(a)

n=2 a/D=0.75

D=300 lsp=140

(b)

n=2 a/D=0.5

D=400 lsp=140

(c)

(f)

n=2 a/D=0.75

D=400 lsp=140

(d)

n=2 a/D=0.5

D=500 lsp=140

(e)

図 5.16 tsp/td-D/t関係

【凡例】 白抜き:Bf/D=0.5,黒塗り:Bf/D=0.75, ○ :td/t=1.0, ◇ :td/t=1.5, ▽ :td/t=2.0

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- 77 -

r Py=

2

P ye o

2

+ FY -cFwy-wpFwy_ i 2

2

P y

(5.22)

図 5.17の縦軸は rPyであり,横軸は鋼管幅厚比 D/tである.各図のパラメータおよび凡例は図中に示

すとおりである.

 図 5.17より D/t<20では rPy<1.0となる場合もあるが,Py/2と組合せ応力((5.21)式右辺)の差は

高々 3%程度である.したがって,高力ボルトの必要本数を決定する際に直交力は考慮しなくてよい

といえる.

0.95

1

1.05

15 20 25 30 35t

D

r Py

0.95

1

1.05

15 20 25 30 35t

D

r Py

0.95

1

1.05

15 20 25 30 35t

D

r Py

図 5.17 r Py -D/t関係

(a) hd/D=0.1, a/D=0.5

【凡例】 白抜き:Bf/D=0.5,黒塗り:Bf/D=0.75, ○ :td/t=1.0, ◇ :td/t=1.5, ▽ :td/t=2.0

(b) hd/D=0.1, a/D=0.75 (c) hd/D=0.2, a/D=0.75

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5. 6 まとめ

 本章では,従来の外ダイアフラムに比べて施工性の向上が期待できる形式として,2枚の鋼板をウェ

ブプレートを介して溶接接合した分割外ダイアフラムを提案し,分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱

梁接合部の引張側を取り出した単純模型実験および解析的検討により以下の知見を得た.

[1] 梁フランジと高力ボルト接合される外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の耐力算定式を

提示し,接合部引張実験結果により,耐力算定式の妥当性を確認した.

[2] 外ダイアフラムと梁フランジの接合方法の違い(高力ボルト接合,溶接接合)が弾塑性挙動

に与える影響を検討した結果,両者の力学性能はすべりが発生する程度まで同等であると見

なせることがわかった.

[3] 分割外ダイアフラムの降伏耐力は,1枚板タイプの外ダイアフラム(高力ボルト接合)と同等

の値を示す.したがって,1枚板タイプの外ダイアフラムに対して構築した耐力算定式は分割

外ダイアフラムにも適用できる.

[4] 分割外ダイアフラムは,主すべり発生後も 1枚板タイプの外ダイアフラム(高力ボルト接合)

と同等の力学性能を示した.

[5] 外ダイアフラムの塑性化によりボルト張力は大きく低下し,すべり発生時には初期ボルト張

力の半分程度となる場合もある.

[6] (5.11)式による分割外ダイアフラムの直交力算定結果に基づいて,添板および高力ボルト接合

部の設計に関する検討を行った.その結果,本接合部における添板および高力ボルト接合部

の設計時に直交力を考慮する必要はなく,従来通り梁フランジ応力に対する設計を行えばよ

いことを明らかにした.

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第6章  アルミ溶射添板による摩擦接合部のすべり係数

6. 1 はじめに

6. 1. 1 本章の目的

 前章では,従来の外ダイアフラムに比べて施工性の向上が期待できる形式として,2枚の鋼板をウェ

ブプレートを介して溶接接合した分割外ダイアフラムを提案した.分割外ダイアフラムは梁フランジ

と高力ボルトにより接合されるので,ボルト本数を少なくできれば,さらに分割外ダイアフラム形式

柱梁接合部の施工性が向上する.

 ボルト本数の少量化のためには,ボルトの強度を高めるかあるいはすべり係数を高めることが必要

である.本章では,高すべり係数化として摩擦面にアルミニウムを溶射する方法(以下,アルミ溶射)

に着目する.既往の実験より,アルミ溶射した摩擦面のすべり係数は従来摩擦面(ブラストまたは赤

錆)のすべり係数 0.45に比べて高いことがわかっている.例えば,文献 6.1)ではアルミ溶射ダンパー

が提案されており,静的・動的載荷実験により 0.8~ 1.0程度のすべり係数が得られている.文献 6.2)

では,厚さ 0.1~ 8mmのアルミ箔あるいはアルミ板を母材-添板間に挟んだ高力ボルト接合部のす

べり試験により 0.6~ 0.9程度のすべり係数が得られている.また文献 6.3)~ 6.5)では,摩擦面をア

ルミ溶射した高力ボルト接合部のすべり試験より 0.7~ 0.8程度のすべり係数を得ている.以上に挙

げた文献から,アルミ溶射は摩擦面の高すべり係数化に有効な技術であるという重要な知見は得られ

たものの,接合部設計においてすべり係数をどの程度に見込めばよいかという問いに答えるためには,

より系統立てたパラメータに対する検討が必要であると考えられる.

 そこで本章では,梁フランジ継手として一般的な添板による 2面摩擦接合を想定して,アルミ溶射

を施した添板(以下,アルミ溶射添板)と表面を黒皮除去程度のブラスト処理(以下,単にブラスト)

とした梁フランジ(以下,母材)からなる高力ボルト 2面摩擦接合部を基本としてすべり試験を行い,

実験パラメータの違いがすべり係数に及ぼす影響を定性的・定量的に把握することを目的とする.

 6.2節では,母材弾性時における接合部のすべり係数の取得を目的としたすべり試験(シリーズ I)と,

母材降伏時における接合部のすべり係数およびボルト孔前面における伝達摩擦力の取得を目的とした

すべり試験(シリーズ II)について述べ,さらにシリーズ Iの結果をふまえて,特に実施工現場にお

ける諸条件などを中心としたすべり試験(シリーズ III)を行い,各種パラメータがすべり係数に及ぼ

す影響を検討する.6.3節では,6.2節の結果をふまえて,次章で試験体設計に適用するためのすべり

係数について検討する.

6. 1. 2 アルミ溶射の概要 6.6) 〜 6.8)

 溶射は,線状または粉末の材料を様々な熱源で溶融状態とし,母材表面に衝突させて皮膜を形成す

る表面皮膜法の 1つである.アルミ溶射は皮膜材料にアルミニウムを用いるもので,金属の防錆・防

食技術(例えば,橋梁などの耐候性が求められる建設物など)として既に確立されている.溶融粒子

径は約 70~ 80nmといわれている.代表的な溶射法を表 6.1にまとめる.溶射法は,熱源(ガス式,

電気式)および溶射材料の形状(線状,粉末)で大別できる.

 本論では,比較的安価であり,かつ摩擦係数が最も高い特性(付 6.1「摩擦係数に関する基礎実験」

を参照)を示すアーク溶射を基本仕様として想定することとした.

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表 6.1 各溶射法の特徴

溶射法 熱源材料形状

コスト 溶射材料基材温度の上昇

気孔率 皮膜厚

ガスフレーム溶射酸素・

アセチレン線状 ベース

各種金属,非鉄金属.粉末・ロッド式によりセラミックスも溶射可.

100℃程度 5~ 10%金属 数mmまで

セラミックス 400nm以下

アーク溶射 電気 線状 やや高い 各種金属,非鉄金属 100℃程度 5~ 10% 金属 数mmまで

大気プラズマ溶射 電気 粉末 高い各種セラミックス,粉末金属,サーメット

200℃以下 5%程度 100~ 1000nm

高速フレーム溶射(HVOF)

酸素・プロピレン

粉末 高い各種金属,各種サーメット,

セラミックス400℃以下 1%以下 max400nm程度

溶射法 その他の特徴

ガスフレーム溶射・可搬性に富み,現地溶射が可能.・基材温度を上げることなく施工できる.・作動ガス温度は約 3000℃.

アーク溶射

ガスフレーム溶射に比べて,・溶射効率が良い.・局部的に溶着の度合いが大きく密着力が高い.・作動ガス温度は約 5000℃.

大気プラズマ溶射・アルゴン,窒素,水素ガスをプラズマ状態にし,得られる高温フレーム(10000℃以上)により高融点セラミックスを溶融させる.・基材と溶射皮膜の密着性が高い.

高速フレーム溶射(HVOF)

・得られた超音速のフレームにより高い密着力と低い気孔率皮膜を形成させる.・同一溶射材料では,高速度,高付着力,高硬度となる.・作動ガス温度は約 3500℃であるが,粒子速度は最速.

※一部,文献 6.8)を抜粋

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(b) ボルト 2列の試験体

775

380 390

315

230 75 75 50 60 50 230

2255

55

110

添板(PL12,16,22)

ボルト孔径 24mm

母材(試験側)母材(ジグ側)

25

890

475 410

120

100

100

200

390

75 75 75 50 60 50250 250

22

母材(試験側) 母材(ジグ側)

添板(PL16)

ボルト孔径 24mm

25

6. 2 高力ボルト 2 面摩擦接合部のすべり試験

 アルミ溶射層-鋼間のすべり係数に与える各種パラメータの影響を把握するために,高力ボルト 2

面摩擦接合部のすべり試験を実施した.実験は 3つのシリーズにより構成され,各シリーズは以下の

とおりである.

・シリーズ I:溶射施工条件,接合部の詳細を主パラメータとした実験

・シリーズ II:母材が降伏した後にすべりが発生する場合のすべり係数試験

・シリーズ III:実施工現場における諸条件や母材側摩擦面処理を主パラメータとした実験

6. 2. 1 実験計画(シリーズ I)

(1) 試験体形状

 図 6.1に代表的な試験体を示す.図 6.1(a)はボルト列数を 1列とした試験体,(b)はボルト列数を 2

列とした試験体,(c)はボルト列数を 3列とした試験体である.いずれもボルトの少ない方を試験部

分としている.試験体はすべて,母材が降伏する以前にすべりが発生するように設計している.

(2) 実験パラメータ

 試験体一覧を表 6.2に示す.試験体数は 40体であり,実験パラメータにより 15種類に分類され,

各試験体の個体数を 2~ 5体とした.採用した実験パラメータは以下のとおりである.

(a) ボルト 1列の試験体

図 6.1 試験体(シリーズ I)

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・ ボルト列数:1,2,3列

・ ボルトの種類:F14T M22,F10T M22の 2種類,いずれもトルシア形高力ボルト

・ 母材側摩擦面処理:黒皮除去程度のブラスト,めがね擦り赤錆

・ 添板の板厚:12,16,22mm

・ アルミ溶射の方法:アーク溶射,ガスフレーム溶射

・ アルミ溶射皮膜厚:100,200,300,400nm

なお,アルミ溶射する添板の下地処理もブラストであるが,仕様は母材の場合と異なって除錆度(JIS

Z0313)を基準とする評価としている.試験体名称は表 6.2の下図に示すルールに基づいて設定した.

表 6.2 試験体一覧(シリーズ I)

試験体名称ボルト本数(列×行)

ボルトの種類母材側摩擦面処理

添板厚mm

溶射法溶射皮膜厚

nm個体数

1F14-B-16A100

1

F14T M22ブラスト

16アーク

100 2

1F14-B-16A200 200 5

1F14-B-16A300 300 2

1F14-B-16A400 400 2

1F14-B-16G200 ガスフレーム 200 5

1F14-B-12A20012

アーク

200 3

1F14-B-12A300 300 2

1F14-B-22A200 22 200 3

1F14-R-16A200 赤錆

16

200 2

1F10-B-16A200

F10T M22

ブラスト

200 2

1F10-B-16A300 300 2

1F10-B-16A400 400 2

2F14-B-16A2002

F14T M22

200 3

2F14-B-16A300 300 2

3F14-B-16A200 3 200 3

 注 1:添板・母材の鋼種はすべて SM490A

 注 2:添板の下地処理は黒皮除去程度のブラスト処理(母材と同一)

(c) ボルト 3列の試験体

120

2811

511

5

230

965

550 410

465

75 75 75 50 60 50250 25075

添板(PL16)

ボルト孔径 24mm

母材(試験側) 母材(ジグ側)

25

1 F 1 4 - B - 1 6 A 3 0 0溶射皮膜厚(nm)

溶射方法,A:アーク,G:ガスフレーム添板厚(mm)

母材摩擦面処理方法,B:ブラスト,R:赤錆発生ボルトの種類,F14:F14T M22,F10:F10T M22

ボルト列数

図 6.1 試験体(シリーズ I)

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(3) 載荷計画

 2000kN万能試験機による単調引張載荷とした.載荷は,摩擦面に十分なすべり(2mm程度とする)

が発生するか,あるいはボルトが支圧状態に達するまで継続するものとした.

(4) 計測計画

(a) ボルト張力−軸歪関係

 実験中のボルト張力 Nbは,ボルトの軸歪 f bより換算する.ボルト検定試験の結果,次式によりボ

ルト張力 Nbを算定する.

F10T M22 首下長さ 90mm・・・Nb = 0.07053#fb (6.1a)

F14T M22 首下長さ 85mm・・・Nb = 0.07776#fb (6.1b)

F14T M22 首下長さ 95mm・・・Nb = 0.07331#fb (6.1c)

F14T M22 首下長さ 100mm・・・Nb = 0.07286#fb (6.1d)

F14T M22 首下長さ 105mm・・・Nb = 0.07280#fb (6.1e)

(b) 初期張力の導入

 初期張力 N0は,標準ボルト張力の± 5%に収まるように導入する.F14T M22の場合,313~

345kN,F10T M22の場合,215~ 237kNである.

(c) すべり試験時の計測

・ 荷重 F (kN):2000kN万能試験機の計測値を用いる.

・ すべり u (mm):図 6.1に示すように,母材の端部から 25mmの位置の●間の相対変位をすべ

りと定義する.

・ ボルト張力 Nb (kN):(6.1)式により算定する.

6. 2. 2 実験結果(シリーズ I)

(1) 試験片摩擦面の検査結果

 添板は溶射後の表面粗度および皮膜厚を,母材はブラスト,赤錆発生後の表面粗度を測定した.結

果を表 6.3にまとめる.溶射皮膜厚は,各目標値を精度良く達成できている.最大高さは,指定しなかっ

たものの 50nmRz(すべり係数 0.45を確保するために必要とされているブラスト面の条件)を十分に

上回っている.

表 6.3 摩擦面の検査結果

部材 算術平均粗さ 十点平均粗さ 最大高さ溶射皮膜厚(目標皮膜厚)

添板アーク

25.6 177 391 101(100)20.4~ 27.6 171~ 213 253~ 321 194~ 208(200)24.6~ 24.7 171~ 219 213~ 325 290~ 318(300)

29.4 122 298 391~ 428(400)ガスフレーム 12.4 103 116 209(200)

母材ブラスト 6.4~ 8.3 54.8~ 65.5 69.6~ 84.3 -

めがね擦り赤錆 5.5 47.2 65.7 -

単位:nm

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(2) 実験結果一覧

 表 6.4~ 6.6に実験結果一覧を示す.以下では,すべり発生の定義を,荷重 Fがピークに達したと

きとすべり uが 0.2mm6.9)に達したときとする.実験結果に用いる記号を以下のように定義する.

・ 0.2ns:0.2mm時すべり係数・・・0.2ns=0.2Fs/2N0,0.2Fs:0.2mm時耐力,N0:初期ボルト張力(載

荷開始時のボルト張力)

・ ns:すべり係数・・・ns=Fs/2N0,Fs:ピーク荷重

・ nf:摩擦係数・・・nf=Fs/2Ns,Ns:ピーク荷重時ボルト張力

・ Ns/N0:ピーク荷重時ボルト張力残存率

・ us:ピーク荷重時のすべり

・ ue:支圧開始時のすべり

(3) 荷重−変形関係

 図 6.2に荷重 F-すべり u関係の一例を示す.F-u関係は,u=0.3mm前後で Fがピークを示す

場合と,Fに明瞭なピークが表れずにボルトが支圧に移行して荷重が上昇する場合の 2種類に大別で

きる.後者の場合,表 6.4~ 6.6の usを (-)で示し,Fsにはボルト支圧開始時の Fを用いている.表 6.4

~ 6.6より F-u関係にピークが表れる場合と表れない場合で Fsに大きな差は認められない.

(4) 0.2mm 時すべり係数,すべり係数,摩擦係数の比較

 実験パラメータが 0.2mm時すべり係数 0.2ns,すべり係数 ns,摩擦係数 nfに及ぼす影響を検討する.

(a) 溶射皮膜厚の影響

 図 6.3に溶射皮膜厚と 0.2n s,n s,n fの関係を示す.溶射皮膜厚以外の共通パラメータおよび凡例は

図中に示すとおりである.また,実験パラメータの平均値を実線で結んで示す.溶射皮膜が厚いほど

0.2ns,ns,nfは大きくなることがわかる.

(b) 添板の厚さの影響

 図 6.4に添板厚と 0.2ns,ns,nfの関係を示す.添板が厚いほど 0.2ns,ns,nfは大きくなることがわかる.

(c) ボルト張力(ボルトの種類)の影響

 図 6.5にボルト張力と n s,n fの関係を示す.図 6.5(a)は初期ボルト張力 N0,図 6.5(b)はピーク荷

重時のボルト張力 Nsを横軸にとっている.図 6.5(a)より N0が小さい(すなわち,F10Tと F14Tで

は F10T)方がすべり係数はやや大きく,図 6.5(b)より Nsが大きいほど摩擦係数は小さくなることが

わかる.

0

100

200

300

400

500

600

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

F [kN]

u [mm]0

100

200

300

400

500

600

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

F [kN]

u [mm]

図 6.2 荷重 F-すべり u関係

(a) 1F14-B-16A200 (b) 1F14-B-16G200

※-1

※-2

※-3

※-4

※-5

※は試験体名称の代表

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表 6.4 実験結果一覧(ボルト 1列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs N0 Ns

N0

Nsus ue

(kN) (mm)

1F14-B-16A100-1 0.62 0.64 0.69 398 413 321 293 0.91 0.37 0.24

1F14-B-16A100-2 0.63 0.65 0.73 421 438 336 302 0.90 0.37 0.94

平均値 0.62 0.65 0.71 410 426 329 298 0.91 0.37

1F14-B-16A200-1 - 0.71 0.80 431 445 321 278 0.89 - -

1F14-B-16A200-2 0.78 0.82 0.94 502 522 320 278 0.87 0.35 0.97

1F14-B-16A200-3 0.73 0.76 0.87 481 503 331 290 0.87 0.38 1.13

1F14-B-16A200-4 0.74 0.77 0.89 498 518 335 291 0.87 0.35 0.87

1F14-B-16A200-5 0.77 0.80 0.92 507 530 331 289 0.87 0.35 0.38

平均値 0.76 0.77 0.88 484 504 328 285 0.88 0.36

1F14-B-16A300-1 0.84 0.87 1.02 544 562 324 277 0.85 0.31 0.37

1F14-B-16A300-2 0.78 0.81 0.94 526 545 338 289 0.85 0.34 0.95

平均値 0.81 0.84 0.98 535 554 331 283 0.85 0.33

1F14-B-16A400-1 0.91 0.96 1.12 576 607 317 257 0.81 0.33 0.79

1F14-B-16A400-2 0.93 0.99 1.15 620 661 333 269 0.81 0.34 0.98

平均値 0.91 0.98 1.14 598 634 325 263 0.81 0.34

1F14-B-16G200-1 0.74 0.79 0.89 470 506 319 286 0.90 - 1.00

1F14-B-16G200-2 0.70 0.76 0.88 449 489 323 293 0.91 - 0.63

1F14-B-16G200-3 0.69 0.77 0.86 440 489 319 285 0.89 1.08 1.17

1F14-B-16G200-4 0.77 0.81 0.92 497 528 324 287 0.89 - 0.51

1F14-B-16G200-5 0.70 0.75 0.84 470 508 337 302 0.90 - 0.60

平均値 0.72 0.78 0.88 465 504 324 291 0.90 1.08

1F14-B-12A200-1 0.64 0.69 0.81 423 454 331 280 0.85 0.51 1.06

1F14-B-12A200-2 0.67 0.70 0.83 437 456 325 277 0.85 0.36 0.75

1F14-B-12A200-3 0.65 0.68 0.80 435 459 335 288 0.86 0.43 0.93

平均値 0.65 0.69 0.81 432 456 330 282 0.85 0.44

1F14-B-12A300-1 0.74 0.77 0.92 489 509 329 276 0.84 0.33 0.93

1F14-B-12A300-2 0.72 0.77 0.95 448 483 313 255 0.81 - 0.43

平均値 0.73 0.77 0.94 469 496 321 266 0.83 0.33

1F14-B-22A200-1 0.89 0.90 1.01 576 579 322 286 0.89 0.24 1.09

1F14-B-22A200-2 0.83 0.84 0.96 532 538 320 282 0.88 0.25 0.96

1F14-B-22A200-3 0.98 0.99 1.12 619 623 315 278 0.88 0.24 0.93

平均値 0.90 0.91 1.03 576 580 319 282 0.88 0.24

1F14-R-16A200-1 0.66 0.68 0.77 449 462 342 300 0.88 0.35 0.60

1F14-R-16A200-2 0.71 0.75 0.84 436 460 309 274 0.89 - 0.39

平均値 0.68 0.71 0.81 443 461 326 287 0.88 0.35

1F10-B-16A200-1 0.83 0.83 0.98 355 357 214 183 0.85 0.25 0.68

1F10-B-16A200-2 0.81 0.82 0.98 361 366 222 188 0.84 0.28 0.93

平均値 0.82 0.83 0.98 358 362 218 186 0.85 0.26

1F10-B-16A300-1 0.93 0.93 1.11 399 399 214 179 0.84 0.20 1.21

1F10-B-16A300-2 0.93 0.93 1.12 414 415 223 186 0.83 0.22 1.22

平均値 0.93 0.93 1.11 407 407 219 183 0.84 0.21

1F10-B-16A400-1 0.92 0.93 1.16 411 415 224 177 0.79 0.26 0.91

1F10-B-16A400-2 1.00 1.01 1.25 438 439 218 175 0.80 0.21 1.08

平均値 0.96 0.97 1.21 425 427 221 176 0.80 0.23

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- 86 -

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

1.3

100 200 300 400

n f

溶射皮膜厚 [nm]

0.6

0.7

0.8

0.9

1

100 200 300 400

ns

溶射皮膜厚 [nm]

0.6

0.7

0.8

0.9

1

100 200 300 400

溶射皮膜厚 [nm]

0.2ns

表 6.6 実験結果一覧(ボルト 3列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs us ue 1N0 2N0 3N0 1Ns 2Ns 3Ns

1N0

1Ns

2N0

2Ns

3N0

3Ns

1N0+2N0+3N0

1Ns+2Ns+3Ns

(kN) (mm) (kN)

3F14-B-16A200-1 0.66 0.80 0.94 1290 1550 0.45 0.92 320 314 341 279 272 278 0.87 0.87 0.82 0.85

3F14-B-16A200-2 0.63 0.77 0.92 1240 1520 0.47 0.47 331 330 320 285 285 253 0.86 0.87 0.79 0.84

3F14-B-16A200-3 0.68 0.83 0.99 1290 1590 0.49 0.53 319 315 320 271 270 258 0.85 0.86 0.81 0.84

平均値 0.66 0.80 0.95 1270 1550 0.47 323 320 327 278 276 263 0.86 0.87 0.81 0.85

【表 6.5,6.6の記号説明】

1N0:第 1ボルトの初期張力,2N0:第 2ボルトの初期張力,3N0:第 3ボルトの初期張力,1Ns:ピーク(あるいは支圧)時の第1ボルト張力,2Ns:ピーク(あるいは支圧)時の第 2ボルト張力,3Ns:ピーク(あるいは支圧)時の第 3ボルト張力,ボルト位置番号は下図参照

第 1ボルト

第 2ボルト

第 1ボルト

第 2ボルト 第 3ボルト

表 6.5 実験結果一覧(ボルト 2列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs us ue 1N0 2N0 1Ns 2Ns

1N0

1Ns

2N0

2Ns

1N0+2N0

1Ns+2Ns

(kN) (mm) (kN)

2F14-B-16A200-1 0.69 0.82 0.96 940 1120 - 0.40 344 287 297 287 0.86 0.84 0.85

2F14-B-16A200-2 0.69 0.81 0.95 918 1070 0.43 0.52 341 322 294 269 0.86 0.84 0.85

2F14-B-16A200-3 0.68 0.81 0.95 918 1080 0.50 0.63 340 330 292 276 0.86 0.83 0.85

平均値 0.69 0.81 0.95 925 1090 0.47 342 313 294 277 0.86 0.84 0.85

2F14-B-16A300-1 0.72 0.84 1.05 950 1100 0.42 1.19 324 326 267 258 0.82 0.79 0.80

2F14-B-16A300-2 0.73 0.87 1.06 959 1130 0.44 1.29 331 322 274 257 0.83 0.80 0.81

平均値 0.73 0.85 1.06 955 1120 0.43 328 324 271 258 0.83 0.80 0.81

凡例○:F14T M22の個別データ ◇:F10T M22の個別データ●:F14T M22の平均値 ◆:F10T M22の平均値

共通パラメータ溶射法:アーク溶射 添板厚:16mm

母材側摩擦面処理:ブラスト ボルト列数:1列

図 6.3 溶射皮膜厚の影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

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0.6

0.7

0.8

0.9

1

150 200 250 300

n f

N s [kN]

0.6

0.7

0.8

0.9

1

200 250 300 350

ns

N0 [kN]

0.7

0.8

0.9

1

1.1

1.2

12 16 22

添板厚 [mm]

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

12 16 22

添板厚 [mm]

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

12 16 22

添板厚 [mm]

0.2ns

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

共通パラメータ溶射法:アーク溶射 溶射皮膜厚:200nm

母材側摩擦面処理:ブラスト ボルト列数:1列

図 6.4 添板厚の影響

凡例○:F14T M22の個別データ●:F14T M22の平均値

凡例○:F14T M22の個別データ◇:F10T M22の個別データ

(a) すべり係数

共通パラメータ溶射法:アーク溶射溶射皮膜厚:200nm

添板厚:16mm

母材側摩擦面処理:ブラストボルト列数:1列

(b) 摩擦係数

図 6.5 ボルト張力(ボルトの種類)の影響

(d) 溶射法の影響

 図 6.6に溶射法と 0.2n s,n s,n fの関係を示す.溶射法の違い(アーク溶射,ガスフレーム溶射)が

ns,nfに及ぼす影響は小さいが,0.2nsに関してはアーク溶射の方がやや大きい.

(e) 母材側摩擦面処理の影響

 図 6.7に母材側摩擦面処理と 0.2ns,ns,nfの関係を示す.母材側摩擦面を(めがね擦り+赤錆)仕

上げとした場合,ブラストに比べて小さな 0.2ns,ns,n fを与える.一因として,サンダーによるめが

ね擦りのために摩擦面の凹凸が不均一となってしまうことが考えられる.

(f) ボルト列数の影響

 図 6.8にボルト列数と 0.2n s,n s,n fの関係を示す.ボルト列数が増えると 0.2n sは減少するが,n s,

nfはほとんど変わらない.

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凡例○:F14T M22の個別データ●:F14T M22の平均値

凡例○:F14T M22の個別データ●:F14T M22の平均値

凡例○:F14T M22の個別データ●:F14T M22の平均値

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ブラスト 赤錆

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ブラスト 赤錆

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ブラスト 赤錆

0.2ns

共通パラメータ溶射法:アーク溶射 溶射皮膜厚:200nm

添板厚:16mm ボルト列数:1列

図 6.7 母材側摩擦面処理の影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1 2 3ボルト列数

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1 2 3ボルト列数

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1 2 3

ボルト列数

0.2ns

共通パラメータ溶射法:アーク溶射 溶射皮膜厚:200nm

添板厚:16mm 母材側摩擦面処理:ブラスト

図 6.8 ボルト列数の影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

0.6

0.7

0.8

0.9

1

アーク ガスフレーム

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

アーク ガスフレーム

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

アーク ガスフレーム

0.2ns

共通パラメータ溶射皮膜厚:200nm 添板厚:16mm

母材側摩擦面処理:ブラスト ボルト列数:1列

図 6.6 溶射法の影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

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(5) 各種パラメータの影響に関する定性的説明

 ボルト孔周辺の添板と母材間の接触圧分布は,図 6.9のようなすり鉢状になることが FEM解析結

果 6.10)や実験結果 6.11)から指摘されている.分布範囲はボルト軸径の 3倍程度である.アルミ溶射皮

膜には多くの気孔が存在し,ボルト締付の段階でこれらの気孔は押しつぶされ,ボルト孔周辺(図 6.9

の領域A)では,鋼に比べて硬さが 1/3程度のアルミは母材の凹凸の中に完全にめり込んでいると考

えられる(図 6.10参照).この領域ではボルト締付時にアルミは塑性変形して歪硬化していると推定

される.接触圧が小さい図 6.9の領域 Bでは真実接触部で凝着が生じているものと考えられる 6.12.6.13).

 上記のような状態で摩擦力が作用すると,図 6.11に示すようなせん断破壊が図 6.9,図 6.10に示す

領域A(めり込み部)の母材側アルミに生じ,領域 Bでは母材・アルミ凝着部のせん断破壊(図 6.12

参照)が生じていると考えられる.溶射皮膜の物性が不明であるために摩擦面の強さを算定するには

到らないが,添板の厚さが増えると図 6.9の点線で示すように接触圧の分布領域が拡大し 6.11),摩擦に

よる破壊面積が増大してすべり耐力が増大するという定性的解釈が可能である.図 6.13に示すすべり

試験後の添板表面の目視観察によれば,ボルト孔周辺におけるアルミ溶射面は溶射皮膜厚が大きいほ

ど広範囲にわたって削り取られていることがわかる.これが,溶射皮膜が厚いほどすべり係数・摩擦

係数が上昇した一因だと考えられる.

 図 6.14に荷重-すべり関係にボルト列数の違いが及ぼす影響を示す.ボルト列数が 1列の場合に比

べて 2列と 3列の場合の初期剛性が低い.その結果図 6.8に示すように複数列ボルトの 0.2n sが小さく

なっている.これは添板の軸方向変形が一因と思われるが,すべりの計測位置も影響しているものと

考えられる.

図 6.9 ボルト孔周辺の接触圧分布 図 6.10 溶射皮膜のせん断破壊

ボルト孔

接触圧分布

A BA:めり込み部B:凝着部

母材側

添板側

めり込み部 凝着部

せん断破壊面

アルミ溶射皮膜

図 6.11 軟らかい方の金属のせん断破壊 図 6.12 凝着部のせん断破壊

摩擦力硬い金属

軟らかい金属

せん断破壊面

摩擦力

硬い金属

軟らかい金属凝着部

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図 6.14 荷重-すべり関係(ボルト列数の比較)

0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5

u [mm]

F/2 N0!

1列

3列2列

図 6.13 溶射膜厚の違いによる摩擦面の様子

F10-B-16A200 F14-B-12A200 F14-B-12A300F10-B-16A400

F14-B-16A100 F14-B-16A300 F14-B-16A400F14-B-16A200

大小皮膜厚

大小皮膜厚

大小皮膜厚

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6. 2. 3 実験計画(シリーズ II)

(1) 試験体

 図 6.15に試験体の形状を示す.図 6.15(a)はボルト接合部試験体,図 6.15(b)は有孔試験体,図 6.15(c)

は無孔試験体である.試験体数はそれぞれ 2体である.シリーズ IIでは,アルミ溶射皮膜-鋼間のす

べり係数 0.7,母材の降伏点(公称値)325N/mm2(SM490A)を用いて,母材正味断面における降伏

耐力とすべり耐力の比が 0.73となるように設計した.

(2) 載荷計画

 2000kN万能試験機による単調引張載荷とした.パイ形変位計がストロークの限界(10mm)に達し

た後は,パイ形変位計を取り外して母材が破断に到るまで載荷を継続した.

(3) 計測計画

 初期張力の導入についてはシリーズ Iと同様である.

(a) ボルト接合部試験体

・ 荷重 F (kN),すべり u (mm)およびボルト張力 Nb (kN)はシリーズ Iと同じ.

・ 歪 f(%):図 6.15(a)に示すように,母材の第 1ボルト孔位置側面の応力方向伸びをパイ形変位

計により計測する.伸びを標点距離(100mm)で除したものを歪 fと定義する.

(b) 有孔試験体

・ 歪 f (%):図 6.15(b)に示すように,ボルト孔位置側面の応力方向の伸びをパイ形変位計によ

り計測する.伸びを標点距離(100mm)で除したものを歪 fと定義する.

(c) 無孔試験体(PL22, SM490A)

610

標点距離 100

50 50

パイ型変位計

歪ゲージ 5555

910

455 450

315

230 75 75 50 60 60 230

2255

55

110

添板(PL16)

母材(試験側)SM490A

母材(ジグ側)

75 50

(a) ボルト接合部試験体

※使用ボルト:F14T M22,溶射方法:アーク溶射,溶射膜厚:300 m 母材表面処理・添板下地処理:ブラスト処理

ボルト孔径 24mm

25加力方向の相対変位を u

標点距離 100

50 50

パイ型変位計

F F

n

5555

(b) 有孔試験体(PL22, SM490A)

305305

ボルト孔径 24mm 標点距離 100

50 50

パイ型変位計

図 6.15 試験体,変位計測および歪計測(シリーズ II)

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(c) 無孔試験体

・ 歪 1 f(%):図 6.15(c)に示すように,母材中央側面の応力方向の伸びをパイ形変位計により計

測する.伸びを標点距離(100mm)で除したものを歪 1と定義する.

・ 歪 2:図 6.15(c)に示すように,母材中央の両面における歪を計測し鋼材の応力-歪関係を得る.

6. 2. 4 実験結果(シリーズ II)

(1) 試験片摩擦面の検査結果

 添板は溶射後の表面粗度および皮膜厚を,母材はブラスト,赤錆発生後の表面粗度を測定した.結

果を表 6.7にまとめる.溶射皮膜厚は,各目標値を精度良く達成できている.最大高さは,指定しなかっ

たものの 50nmRz(すべり係数 0.45を確保するために必要とされているブラスト面の条件)を十分に

上回っている.

(2) 実験結果一覧

 表 6.8に鋼材の機械的性質,表 6.9に実験結果一覧を示す.表 6.9の記号の定義は,表 6.4,6.5で用

いたものと同一である.

(3) 荷重−変形関係

 図 6.16に F-u関係,図 6.17にボルト接合部試験体の F-f関係を示す.試験体 2の接合部は明瞭

なピークが表れるが,試験体 1の接合部は支圧状態に移行する時期が早かったため,明瞭なピークは

図 6.17 荷重 F-歪 f関係(ボルト接合部試験体)

0

200

400

600

800

1000

1200

0 1 2 3 4 5

F [kN]

u [mm]

試験体 1

試験体 2

0

200

400

600

800

1000

1200

0 2 4 6 8 10

F [kN]

f [%]

試験体 2

試験体 1

図 6.16 荷重 F-すべり u関係

表 6.9 実験結果一覧

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs us ue 1N0 2N0 1Ns 2Ns

1N0

1Ns

2N0

2Ns

1N0+2N0

1Ns+2Ns

kN mm kN

ボルト接合部試験体 1 0.72 0.74 1.04 924 943 0.32 0.39 321 317 209 245 0.65 0.77 0.71

ボルト接合部試験体 2 0.70 0.72 1.06 909 936 0.39 1.34 329 320 200 240 0.61 0.75 0.68

平均値 0.71 0.73 1.05 917 940 0.36 325 319 205 243 0.63 0.76 0.70

表 6.8 鋼材の機械的性質

部位 鋼種降伏点 引張強さ

降伏比破断伸び

N/mm2 %

母材 SM490A 400 514 0.78 36

表 6.7 摩擦面の検査結果

部材算術平均粗さ

十点平均粗さ

最大高さ溶射皮膜厚(目標皮膜厚)

添板 24.7 171 213 290~ 318(300)

母材 8.3 65.5 84.3 -

単位:nm

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0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

すべり先行型

母材先行降伏型

Ns/N 0

0.7

0.8

0.9

1

1.1

すべり先行型

母材先行降伏型

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

すべり先行型

母材先行降伏型

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

すべり先行型

母材先行降伏型

0.2ns

表れなかった.図 6.16と図 6.17の試験体 2の比較より,すべりにより耐力が低下する間は母材の塑

性変形はあまり進行しない.

(4) 0.2mm 時すべり係数,すべり係数,摩擦係数,ピーク荷重時ボルト張力残存率の比較

 図 6.18に 0.2mm時すべり係数 0.2ns,すべり係数 ns,摩擦係数 nf,ピーク荷重時ボルト張力残存率

1Ns/1N0,2Ns/2N0を,ボルト接合部の降伏機構の違いにより比較して示す.図 6.18より得られる知見

は以下のとおりである.

1) 図 6.18(a)より,母材降伏が先行する場合も 0.2nsは 0.7程度を示す.

2) 図 6.18(a),(c)より,ボルト接合部の降伏機構の違いが 0.2ns,nfに与える影響は小さい.

3) 図 6.18(b)より,母材降伏が先行する場合,nsは低下する.これは第 1ボルト周辺での母材降

伏による板厚の細りに起因してボルト張力の低下を招くからである.図 6.18(d)より,母材先

行降伏型の第 1ボルト張力残存率はすべり先行型に比べて著しく低い.第 2ボルト張力残存

率も母材先行降伏型の方が低いが,第 1ボルトほどではない.

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

凡例 (a)~ (c)○:個別データ●:平均値

共通パラメータ溶射法:アーク溶射 溶射皮膜厚:300nm

添板厚:16mm 母材側摩擦面処理:ブラストボルト列数:2列 使用ボルト:F14T M22

図 6.18 ボルト接合部の降伏機構の違いによる比較

(d) ピーク荷重時のボルト張力残存率

凡例 (d)△:第 1ボルトの個別データ◇:第 2ボルトの個別データ▲:第 1ボルトの平均値◆:第 2ボルトの平均値

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表 6.10 cfの算定結果

試験体 Fey

cf

ns=0.85 ns=0.7

ボルト接合部試験体 1 922 0.306 0.372

ボルト接合部試験体 2 909 0.275 0.334

【共通パラメータ】溶射方法:アーク溶射 溶射膜厚:300nm 添板厚:16mm母材表面処理:ブラスト 添板下地処理:ブラストボルト本数:2本 使用ボルト:F14T M22

0

200

400

600

800

1000

1200

0 1 2 3 4 5

F [kN]

f [%]

ボルト接合部試験体 1有孔試験体 1

0.4

無孔試験体 1

2c f $ns$1N0

Fey

Fny

図 6.19 F-f関係

(5) 第 1 ボルト前面から添板に伝達される摩擦力

 文献 6.9)によれば,高力ボルト摩擦接合部の第 1ボルト前面から添板に伝達される摩擦力は

2c f $ns$1N0で定義される.ここで,c fはすべり時に第 1ボルトが負担する摩擦力2ns$1N0に対する第

1ボルト前面で母材から添板に伝達される摩擦力の割合である.

 2c f $ns$1N0は,ボルト接合部の降伏耐力 Feyとボルト孔欠損を考慮した正味断面における降伏耐力

Fnyの差に相当する.すなわち,

Fey = Fny+2c f $ns$1N0 = An$vy+2c f $ns$1N0 (6.2)

ここで,Anはボルト孔欠損部における正味断面積,vyは母材の降伏点である.

 Fey(ここでは図 6.19に示す荷重-歪関係が概ね横ばいになると判断できる 0.4%時を降伏耐力と定

義する)と表 6.8に示した降伏点を考慮した Fnyより算出した c fを表 6.10に示す.ただし,(6.2)式

におけるすべり係数 nsには,すべり先行型試験体(2F14-B-16A300)のすべり係数 nsの平均値 0.85,

およびすべり試験シリーズ Iで得られたすべり係数 n sの下限値に概ね対応する値である 0.7の 2通り

について検討した.すべり係数 0.85を用いた場合の c fは 0.275~ 0.306,すべり係数 0.7を用いた場

合の c fは 0.334~ 0.372である.文献 6.9)で赤錆面やブラスト面に対して与えている 1/3と同程度で

あり,アルミ溶射面を対象とした場合も従来摩擦面と同程度の2c f $ns$1N0を期待できそうである.

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(6) 母材の塑性化によるすべり係数の低下を考慮した場合のすべり耐力

 文献 6.9)では,既往のすべり試験の結果に基づいて母材の塑性化によるすべり係数の低下の割合(す

べり係数低下率 m)とすべり耐力比 gの関係を次の回帰式で与えている.

m =

1.0 (g < 0.8)

1.2-0.25g (0.8 # g# 2.8)

0.5 (2.8 < g)

* (6.3)

ここで,すべり係数低下率 mとすべり耐力比 gは,次式で定義される.

g =An$vy

m$n$n0$N0, m =

n0

n (6.4a), (6.4b)

ただし上式において,n 0は接合部がすべり耐力に達する時点で,母材正味断面の応力が降伏応力の 8

割以下の場合に得られるすべり係数,nは母材先行降伏の影響で低下したときのすべり係数である.

 文献 6.9)では,すべり係数低下率 mを用いて接合部のすべり耐力 Py1を次式で与えている.

P y1 = (m$nr+n-nr) qbr (6.5)

ここで,nrは想定破断線上(本項の場合,母材正味断面に対応)の高力ボルト本数,qbrはボルト 1

本あたりのすべり耐力である.

 (6.5)式によるボルト接合部試験体のすべり耐力計算値を表 6.11に示す.ただし,n0として 0.73,0.85

の 2通りについて計算した.n 0=0.73はボルト 2列試験体(シリーズ I,300nm)の 0.2n sの平均値,

n0=0.85はボルト 2列試験体(シリーズ I,300nm)の nsの平均値に対応する値である.表 6.11より,

n0=0.73とした場合の Py1と本シリーズのすべり耐力実験値 0.2Fsの比は 0.95~ 0.99,n0=0.85とした

場合の Py1とすべり耐力実験値 Fsの比は 1.06~ 1.08である.

表 6.11 母材の塑性化によるすべり係数の低下を考慮したすべり耐力 Py1計算値と実験値の比較

試験体

n0=0.73 n0=0.85

m$n$n0$N0 An$vy g m Py10.2Fs

P y1 m$n$n0$N0 An$vy g m Py1 Fs

P y1

ボルト接合部試験体 1

931

755

1.23 0.89 880 0.95 1085

755

1.44 0.84 999 1.06

ボルト接合部試験体 2

948 1.26 0.89 896 0.99 1103 1.46 0.84 1013 1.08

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6. 2. 5 実験計画(シリーズ III)

 シリーズ IIIでは,シリーズ Iの結果もふまえて以下の項目に関する把握を目的とする.

・ すべり係数の把握(多列ボルト・多行ボルトの影響,母材側摩擦面処理の影響)

・ リラクゼーション特性の把握

・ 肌すき・板厚差の影響と対策

・ 摩擦接合面の水濡れ,傷,油汚れの影響

(1) 試験体の基本仕様

 試験体設計にあたっての基本仕様を以下のように定めた.

・ 超高力ボルト F14T M22を使用する.

・ 添板,母材の材質は,ともに SM490Aとする.

・ 溶射法はアーク溶射とする.

・ 添板の溶射皮膜厚は 300nm以上とする.

・ 添板の下地処理はブラストとする.ただし,仕様は母材の場合と異なって除錆度(JIS Z0313)

を基準とする評価としている.

・ 母材側摩擦面処理は黒皮除去程度のブラスト(ショットまたはグリッド;粗さ指定なし)と

する.

(2) 実験パラメータ

 試験体一覧を表 6.12,代表的な試験体形状を図 6.20に示す.試験体数は 29体であり,実験パラメー

タにより 14種類に分類される.実験パラメータは以下のとおりである.

表 6.12 試験体一覧

No. 試験体名称ボルト列×行

母材側摩擦面処理

母材厚[mm]

添板厚[mm]

試験体数

備考

1 1F14-B-16A300 1× 1 B 22 16 9標準×2,リラク×2,(浸水+リラク)×2,

傷有× 2,油汚れ× 1

2 1F14-BR-16A300 1× 1 B+R 22 16 2 母材赤錆発生は薬剤塗布による

3 1F14-G-16A300 1× 1 G 22 16 2

4 1F14-GR-16A300 1× 1 G+R 22 16 2

5 2F14-B-16A300 1× 2 B 22 16 2 ゲージは 70mm

6 3F14-B-22A300 3× 1 B 36 22 2

7 4F14-B-22A300 4× 1 B 36 22 2

8 3F14-B-22A300G0.5 3× 1 B 36, 35.5 22 2 肌すき 0.5mmフィラーなし

9 1F14-B-22A300G1.0 1× 1 B 36, 35 22 2 肌すき 1.0mmフィラーなし

10 3F14-B-22A300G1.0 3× 1 B 36, 35 22 2 肌すき 1.0mmフィラーなし

11 1F14-B-22A300G4.0F 1× 1 B 36, 32 22 2 板厚差 4.0mmフィラー(t=4mm)あり

・ 母材側摩擦面処理 B:ブラスト,G:自動グラインダー,R:赤錆(薬剤塗布による)・ No.1のリラクは 1ヶ月観測後試験,(浸水+リラク)は母材側摩擦面を濡らした後締付けて 1ヶ月間リ

ラク観測後試験を行う.・ 傷有の添板にはディスクサンダーにより添板下地が見える程度まで線状の傷をつける(下図参照).・ 油汚れは鳶の汚れた革手袋を入手して使用する. 線状傷

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805

250

110

母材 (PL22) 母材 (PL22)

添板 (PL16)

35

240315

7575

805

110

母材 (PL32) 母材 (PL36)

添板 (PL22)

フィラー (PL4)

250 315 240

35

75 75

915

290 335 290

200

母材 (PL22) 母材 (PL22)

添板 (PL16)

70

35

90 90

(a) 1F14-※-16A300(※は B,BR,G,GR)

(b) 1F14-B-22A300G4.0F

(c) 2F14-B-16A300

・ ボルト本数(列×行):1× 1,3× 1,4× 1(H形断面梁(490鋼)の幅が 200mmと 300mm

の場合でフランジ有効断面の降伏耐力がすべり耐力(すべり係数:0.7)以下である条件から,

フランジの最大板厚が表 6.13のように決まるが,これよりボルト列数は大半が 4列以下に収

まるものと考えられる),1× 2(通常,ボルト行数は偶数となるので,最小単位の 2行につ

いて検討する)

・ 母材側摩擦面処理:ブラスト(黒皮除去程度),ブラスト+赤錆(自然発錆を許容するため),

自動グラインダー,自動グラインダー+赤錆(梁の切断・孔あけ加工から摩擦面処理(自動

表 6.13 すべり耐力と梁フランジ板厚

ボルト本数(列×行)

すべり耐力フランジ板厚

幅 200mm 幅 300m

2× 2 1674 34 213× 2 2512 51 354× 2 3349 67 41

図 6.20 試験体

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グラインダー)に到るまでの過程を専用の機械により一貫して行われる傾向にあるため)

・ 肌すき:0.5mm,1.0mm(精度誤差への対応)

・ 板厚差:4.0mm(設計上不可避な板厚差に対してフィラーの使用を許容するため)

・ 摩擦面の特別な処置:浸水,傷,油汚れ(建設現場での天候,職人の扱いによる傷や油汚れ

などのアクシデントに対する検討)

(3) 載荷計画

 シリーズ Iと同様の方法で載荷する.

(4) 計測計画

(a) ボルト張力−軸歪関係

 実験中のボルト張力 Nbは,ボルトの軸歪 f bより換算する.ボルト検定試験の結果,次式によりボ

ルト張力 Nbを算定する.

首下長さ 95mm・・・Nb = 0.07297#fb (6.6a)

首下長さ 120mm・・・Nb = 0.07247#fb (6.6b)

(b) リラクゼーション

 No.1試験体のうち「リラク」と「浸水+リラク」は,以下の要領で 1ヶ月間のリラクゼーション

計測を行う.

885

240

160

母材 (PL36) 母材 (PL36)

添板 (PL22)

405 240

35

50 70 70 50

12

(d) 3F14-B-16A300※(※は無表記,G0.5,G1.0)

290

1085

200

母材 (PL36) 母材 (PL36)

添板 (PL22)

290505

35

50 70 70

12

70 50

(e) 4F14-B-16A300

図 6.20 試験体

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<リラクゼーションの計測ピッチ>

計測開始→締付け→ 5秒刻み× 60回(5分)→ 1分刻み× 25回(30分)→ 30分刻み× 1回(1時間)

→ 1時間刻み× 23(1日)→ 6時間刻み× 116回(30日)

()内の値は計測開始からの経過時間である.リラクゼーション試験は 2008年 9月 4日(木)~ 2008

年 10月 4日(土)の期間で実施した.

(c) すべり試験時の計測

・ 荷重 F(kN):2000kN万能試験機の計測値を用いる.

・ すべり u(mm):添板と母材のずれをすべりと定義する.ボルト(1× 1,1× 2)について

は,試験側ボルトの中心から内側に 35mmの位置で計測する(図 6.20(a)~ (c)の●印,高感

度変位計により計測).ボルト(3× 1,4× 1)については,試験側の最も内側のボルト中心

から内側に 35mmの位置,および試験側ボルト郡の中心位置において計測する(図 6.20(d),(e)

の●印,内側:高感度変位計により計測(以下,計測点①),中心位置:パイ形変位計により

計測(以下,計測点②)).

・ ボルト張力 Nb(kN):(6.6)式により算出する.

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6. 2. 6 実験結果(シリーズ III)

(1) 試験片摩擦面の検査結果

 添板は溶射後の表面粗度と皮膜厚を,母材はブラストあるいは赤錆発生後の表面粗度を,フィラー

はブラスト後の表面粗度(ブラスト側)および溶射後の表面粗度と皮膜厚(溶射側)を測定した.結

果を表 6.14にまとめる.また,図 6.21に添板の溶射皮膜厚の度数分布を各ボルト孔における平均値

および全データについて示す.ここで,溶射皮膜厚の計測は図 6.22に示すようにボルト孔近傍の 4箇

所で行っており,各ボルト孔における平均値はこの 4点の平均を表す.本実験では,溶射皮膜厚を

300nm以上に指定した.その結果,皮膜厚は 315nm以上を確保し,特に 340nm以上の範囲に広く分

布する傾向を示した(図 6.21,表 6.14).平均値は 375nm,変動係数は 0.071である.各ボルト孔に

おける平均値では,360~ 390nmの範囲に大部分が分布しており,平均値は 375nm,変動係数は 0.032

である.最大高さは,指定しなかったものの 50nmRz(すべり係数 0.45を確保するために必要とされ

ているブラスト面の条件)を十分に上回っている.

表 6.14 摩擦面の検査結果

部材 算術平均粗さ 十点平均粗さ 最大高さ 溶射皮膜厚

添板 24.6~ 26.3 178~ 198 208~ 281 315~ 426

母材ブラスト 7.9~ 8.5 57.2~ 61.4 68.8~ 74.7 -

ブラスト+赤錆 8.9~ 9.6 73.9~ 74.9 102~ 120 -

フィラーブラスト面 8.0~ 8.1 60.4~ 61.3 75.3~ 79.1 -

溶射面 24.6~ 26.3 178~ 198 208~ 281 363~ 380

単位:nm

0

5

10

皮膜厚 [nm]

300未満

310~

320

350~

360

360~

370

370~

380

380~

390

390~

400

400以上

340~

350

330~

340

320~

330

300~

310

個数

0

5

10

15

皮膜厚 [nm]

300未満

310~

320

350~

360

360~

370

370~

380

380~

390

390~

400

400以上

340~

350

330~

340

320~

330

300~

310

個数

皮膜厚計測位置

図 6.21 溶射皮膜厚計測値の度数分布

各ボルト孔における平均値 個別データ

図 6.22 溶射皮膜厚計測位置の例

平均値:375

変動係数:0.032

平均値:375

変動係数:0.071

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表 6.15 実験結果一覧(ボルト 1列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs N0 Ns

N0

Nsus

(kN) (mm)

1F14-B-16A300-1 0.86 0.92 1.03 544 580 317 255 0.81 0.34

1F14-B-16A300-2 0.88 0.93 1.11 573 603 326 271 0.83 0.32

平均値 0.87 0.93 1.07 559 592 322 263 0.82 0.31

1F14-B-16A300-3 0.95 0.97 1.18 552 565 291 239 0.82 0.29

1F14-B-16A300-4 0.96 0.99 1.21 591 609 309 252 0.82 0.31

平均値 0.96 0.98 1.20 572 587 300 246 0.82 0.30

1F14-B-16A300-5 0.93 0.96 1.06 587 601 315 288 0.92 0.26

1F14-B-16A300-6 0.96 0.98 1.16 598 613 313 263 0.84 0.26

平均値 0.95 0.97 1.11 593 607 314 276 0.88 0.26

1F14-B-16A300-7 0.89 0.94 1.13 559 588 314 261 0.83 0.33

1F14-B-16A300-8 0.86 0.90 1.09 552 583 322 267 0.83 0.37

平均値 0.88 0.92 1.11 556 586 318 264 0.83 0.35

1F14-B-16A300-9 0.88 0.90 1.09 558 570 316 261 0.83 0.26

1F14-BR-16A300-1 0.83 0.84 1.00 526 532 315 265 0.84 0.26

1F14-BR-16A300-2 0.92 0.95 1.16 576 593 312 256 0.82 0.31

平均値 0.88 0.90 1.08 551 563 314 261 0.83 0.29

1F14-G-16A300-1 0.78 0.82 1.00 504 525 322 262 0.81 0.38

1F14-G-16A300-2 0.82 0.84 1.01 528 541 324 268 0.83 0.35

平均値 0.80 0.83 1.01 516 533 323 265 0.82 0.37

1F14-GR-16A300-1 0.88 0.89 1.06 560 566 319 268 0.84 0.28

1F14-GR-16A300-2 0.79 0.80 0.94 504 505 317 269 0.85 0.20

平均値 0.84 0.85 1.00 532 536 318 269 0.85 0.24

2F14-B-16A300-1 0.80 0.91 1.11 1023 1159 319 263 0.82 0.42

2F14-B-16A300-2 0.79 0.90 1.10 1001 1142 317 260 0.82 0.46

平均値 0.80 0.91 1.11 1012 1151 318 262 0.82 0.44

1F14-B-22A300G1.0-1 0.74 0.79 0.90 471 500 317 278 0.88 0.82

1F14-B-22A300G1.0-2 0.70 0.70 0.84 439 440 315 261 0.83 0.25

平均値 0.72 0.75 0.87 455 470 316 270 0.86 0.54

1F14-B-22A300G4.0F-1 1.20 1.24 1.43 760 781 316 274 0.87 0.24

1F14-B-22A300G4.0F-2 1.24 1.34 1.54 778 850 317 277 0.87 0.60

平均値 1.22 1.29 1.49 769 816 317 276 0.87 0.42

※ 1F14-B-16A300-3,4はリラクゼーション測定後の試験体※ 1F14-B-16A300-5,6は母材を浸水後,リラクゼーション測定を行った試験体※ 1F14-B-16A300-7は傷有りの試験体で,加力方向と直角方向に線状傷をつけた試験体,1F14-B-16A300-8は加力方向に線状傷をつけた試験体※ 1F14-B-16A300-9は油汚れを施した試験体

(2) 実験結果一覧

 表 6.15~ 6.17に実験結果一覧を示す.すべり発生の定義および実験結果に用いる記号は実験シリー

ズ Iと同様である.ただし,リラクおよび(浸水+リラク)試験体の初期ボルト張力は,ボルト締付

直後から 1分経過した時点でのボルト張力と定義する.また,表 6.16,6.17の各試験体において上段・

下段の区別がある場合,上段が計測点①(図 6.20(d),(e))についての結果,下段が計測点②につい

ての結果を表している.

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- 102 -

表 6.16 実験結果一覧(ボルト 3列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs us 1N0 2N0 3N0 1Ns 2Ns 3Ns

1N0

1Ns

2N0

2Ns

3N0

3Ns

N0!Ns!

(kN) (mm) (kN)

3F14-B-22A300-10.87

0.95 1.161673

18390.35

325 316 322 276 267 248 0.85 0.85 0.77 0.820.94 1802 0.27

3F14-B-22A300-20.87

0.96 1.171642

18080.41

315 316 316 268 264 243 0.85 0.84 0.77 0.820.93 1749 0.34

平均値0.87

0.96 1.171658

18240.38

320 316 319 272 266 246 0.85 0.85 0.77 0.820.94 1776 0.31

3F14-B-22A300G0.5-10.79

0.88 1.081496

16570.41

312 317 313 268 270 228 0.86 0.85 0.73 0.810.84 1574 0.35

3F14-B-22A300G0.5-20.81

0.87 1.081523

16400.38

312 313 317 268 265 229 0.86 0.85 0.72 0.810.85 1597 0.33

平均値0.80

0.88 1.081510

16490.40

312 315 315 268 268 229 0.86 0.85 0.73 0.810.85 1586 0.34

3F14-B-22A300G1.0-10.71

0.81 1.001344

15310.41

316 318 317 274 271 221 0.87 0.85 0.70 0.810.76 1448 0.34

3F14-B-22A300G1.0-20.72

0.80 0.991372

15170.36

316 314 319 275 268 225 0.87 0.85 0.71 0.810.76 1450 0.30

平均値0.72

0.81 1.001358

15240.39

316 316 318 275 270 223 0.87 0.85 0.71 0.810.76 1449 0.32

【記号】

1N0:第 1ボルトの初期張力,2N0:第 2ボルトの初期張力,3N0:第 3ボルトの初期張力,1Ns:ピーク荷重時の第 1ボルト張力,

2Ns:ピーク荷重時の第 2ボルト張力,3Ns:ピーク荷重時の第 3ボルト張力,ボルト位置番号は下図参照

表 6.17 実験結果一覧(ボルト 4列の試験体)

試験体 0.2ns ns nf

0.2Fs Fs us 1N0 2N0 3N0 4N0 1Ns 2Ns 3Ns 4Ns

1N0

1Ns

2N0

2Ns

3N0

3Ns

4N0

4Ns

N0!Ns!

(kN) (mm) (kN)

4F14-B-22A300-10.77

0.89 1.111966

22670.45

315 320 318 322 234 275 267 243 0.74 0.86 0.84 0.75 0.800.85 2177 0.37

4F14-B-22A300-20.75

0.88 1.101928

22770.48

327 322 329 317 244 275 277 236 0.75 0.86 0.84 0.74 0.800.84 2182 0.38

平均値0.76

0.89 1.111947

22720.47

321 321 324 320 239 275 272 240 0.75 0.86 0.84 0.75 0.800.85 2180 0.38

【記号】

1N0:第 1ボルトの初期張力,2N0:第 2ボルトの初期張力,3N0:第 3ボルトの初期張力,4N0:第 4ボルトの初期張力,1Ns:ピーク荷重時の第 1ボルト張力,2Ns:ピーク荷重時の第 2ボルト張力,3Ns:ピーク荷重時の第 3ボルト張力,4Ns:ピーク荷重時の第 4ボルト張力,ボルト位置番号は下図参照

第 2ボルト 第 3ボルト

第 1ボルト

第 2ボルト 第 3ボルト

第 1ボルト 第 4ボルト

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- 103 -

0.8

0.9

1

1.1

1.2

ボルト列数1 3 4

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1ns

ボルト列数1 3 4

0.6

0.7

0.8

0.9

1 0.2ns

ボルト列数1 3 4

0.9

1

1.1

1.2

1.3

BR GRGB

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

BR GRGB

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1 0.2ns

BR GRGB

(3) 母材側摩擦面処理の影響

 図 6.23に母材側摩擦面処理と 0.2n s,n s,n fの関係を示す.各試験体の結果は○印で,平均値は●

印を実線で結んで示している.母材側摩擦面を(ブラスト+赤錆)仕上げとしても,ブラストと同

等の 0.2ns,ns,n fを与える.母材側摩擦面を自動グラインダー仕上げとした場合,ブラストに比べて

0.2ns,ns,nfは小さい.また(自動グラインダー+赤錆)仕上げとした場合も,ブラストに比べて 0.2ns,

ns,nfは小さく,自動グラインダー仕上げと同等の 0.2ns,ns,nfを与える.

 自動グラインダーによる黒皮除去面でのすべり係数はブラストには及ばないものの,0.8前後のす

べり係数を確保できることがわかった.

(4) 多列・多行ボルトの影響

 図 6.24にボルト列数と 0.2ns,ns,nfの関係を示す.ただし,ボルト 1列の試験体には 16mm厚の添板を,

ボルト 3,4列の試験体には 22mm厚の添板を用いているため,1列と 3,4列を直接比較することに

意味はない.3列と 4列の比較より,ボルト列数が増えると 0.2n s,n s,n fは減少するものの,300nm

以上の皮膜厚で施工することで 0.7以上のすべり係数は確保できている.

 図 6.25にボルト行数と 0.2ns,ns,nfの関係を示す.ボルト行数が増えると 0.2nsは減少するが,ns,

nfはほとんど変わらない.

図 6.24 ボルト列数の影響(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

計測点②における結果

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

図 6.23 母材側摩擦面処理の影響

B:ブラスト,BR:ブラスト+赤錆,G:自動グラインダー,GR:自動グラインダー+赤錆

凡例○:個別データ●:平均値

凡例○:個別データ●:平均値

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- 104 -

0.8

0.9

1

1.1

1.2

肌すき[mm]

0 0.5 1.0

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

肌すき[mm]

0 0.5 1.0

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

肌すき[mm]

0 0.5 1.0

0.2ns

0.8

0.9

1

1.1

1.2

ボルト行数1 2

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ボルト行数1 2

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ボルト行数1 2

0.2ns

(5) 肌すき・板厚差の影響

 図 6.26にボルト 3列の試験体について肌すきと 0.2n s,n s,n fの関係を示す.表 6.18に肌すきの実

測値を示す.肌すき 0.5mmの場合で目標値の 7割程度,肌すき 1.0mmの場合で目標値の 9割前後であっ

た.図 6.23より肌すきが大きいほど 0.2n s,n s,n fは下がることがわかる.また表 6.15のすべり耐力

0.2Fs,Fsについて見ると,肌すきなしの場合のすべり耐力を 100%とすると,肌すき 0.5mmの場合で

10%程度,肌すき 1.0mmの場合で 20%程度低下することがわかる.

 図 6.27に肌すき 1.0mmの試験体を対象として,ボルト列数と 0.2n s,n s,n fの関係を示す.ボルト

1列の結果がばらついているのは,肌すきの実測値に 0.2mm程度の差(表 6.18参照)が生じたため

であると思われる.肌すき 1.0mmの場合の 0.2n sはボルト列数の影響をあまり受けていないこと(図

6.27)がわかる.これは,肌すきがゼロの場合の 0.2nsはボルト列数が多いほど低いこと(図 6.14,6.24),

および肌すきの影響はボルト列数が少ないほど大きいことの 2点が影響しているものと考えられる.

 表 6.15より No.11(板厚差 4.0mm+フィラー(PL-4))の 0.2ns,nsは 1を超える結果となった.フィ

ラーの厚さが目標値である 4mmよりも 1mmほど大きくなったため(溶射皮膜も含む),結果として

1.0mm以上の肌すき(表 6.18)がジグ側(ボルト 2列の側)の母材に生じ,ジグ側のボルトを締め付

ける際の添板の曲げによる付加的な接触圧が試験側摩擦面に作用したものと推定される.なお,フィ

ラーを挟んだ側の摩擦面のすべりは,2体とも母材とフィラーの間で発生した(写真 6.1).

 以上より,肌すきを 1.0mm以下に抑えればすべり係数 0.7は確保できそうである.また,片面をブ

ラスト,片面をアルミ溶射としたフィラーを用いても高いすべり耐力を発揮できることがわかった.

図 6.26 肌すきの影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

計測点②における結果

図 6.25 ボルト行数の影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

凡例○:個別データ●:平均値

凡例○:個別データ●:平均値

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- 105 -

0.8

0.9

1

1.1

1.2

ボルト列数1 3

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ボルト列数1 3

ns

0.6

0.7

0.8

0.9

1

ボルト列数1 3

0.2ns

図 6.27 ボルト列数の影響(肌すき 1.0mm)

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

計測点②における結果

表 6.18 肌すきの実測値

試験体 板厚差

3F14-B-22A300-1 0.04

3F14-B-22A300-2 0.07

3F14-B-22A300G0.5-1 0.34

3F14-B-22A300G0.5-2 0.36

1F14-B-22A300G1.0-1 0.78

1F14-B-22A300G1.0-2 1.01

3F14-B-22A300G1.0-1 0.94

3F14-B-22A300G1.0-2 0.89

1F14-B-22A300G4.0F-1 1.32

1F14-B-22A300G4.0F-2 1.19

写真 6.1 フィラーを挟んだ摩擦面のずれ

フィラー 母材

添板

フィラー母材間ですべり発生

(6) 摩擦接合面の水濡れ,傷,油汚れの影響

 図 6.28に摩擦面が曝される環境を変数としたときの 0.2ns,ns,nfを示す.(浸水+リラク)試験体

は母材を写真 6.2のように水に浸けた直後に本締めを行い,その後 1ヶ月間のリラクゼーション測定

を行ってからすべり試験を実施した(リラクゼーション測定結果については後述する).傷有り試験

体の傷は,ディスクサンダーによりボルト孔周辺に下地が見える程度まで削ることで再現した(写真

6.3).油汚れは,事前に入手した職人の油まみれの革手袋で摩擦面に触れることにより再現した(写

真 6.4).図 6.28より,上記の因子が 0.2ns,ns,nfに与える影響はほとんどないことがわかる.

(7) リラクゼーション特性

 写真 6.5に示すように,リラクゼーション測定は実験室内で実施した.図 6.29にリラクゼーション

測定結果を示す.図の縦軸はボルト張力残存率(ボルト締付後 1分経過したときの張力で無次元化し

た値),横軸はボルト締付後の経過時間であり,図 6.29(a)が締付後 1時間,図 6.29(b)が締付後 1日,

図 6.29(c)が締付後 1ヶ月のデータを示している.凡例中,No.1,2はリラク試験体,No.3,4は(浸

水+リラク)試験体である.両者に有意差はない.1時間経過後で 1%未満の張力低下(図 6.29(a)),

1日経過後で 1.4~ 1.8%程度の張力低下を示している(図 6.29(b)).図 6.29(c)より,1週間も経過す

ればボルト張力残存率はほぼ一定値(残存率 98%前後)に収束するようである.文献 6.14)では,赤

錆面に対する F14T M22のリラクゼーション試験を 1年間行っており,30日程度で 3~ 4%程度,1

凡例○:個別データ●:平均値

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- 106 -

0.9

1

1.1

1.2

1.3

基本

リラク

n f

浸水+リラク

0.6

0.7

0.8

0.9

1

基本

リラク

ns

浸水+リラク

0.6

0.7

0.8

0.9

1

基本

0.2ns

傷有り

油汚れ

浸水+リラク

0.6

0.7

0.8

0.9

1

基本

0.2ns

リラク

浸水+リラク

0.9

1

1.1

1.2

1.3

基本

浸水+リラク

傷有り

油汚れ

n f

0.6

0.7

0.8

0.9

1

基本

傷有り

油汚れ

ns

浸水+リラク

0.9

1

1.1

1.2

1.3

基本

リラク

n f

浸水+リラク

図 6.28 摩擦接合面の水濡れ,傷,油汚れの影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

図 6.30 リラクゼーションの影響

(a) 0.2mm時すべり係数 (b) すべり係数 (c) 摩擦係数

写真 6.2 母材の浸水状況

写真 6.3 傷有り試験体

(a) 加力直交方向

(b) 加力方向

写真 6.4 油汚れ試験体

(a) 皮手袋と添板

(b) 添板の油汚れ

写真 6.5 リラクゼーション測定状況(実験室内)

凡例○:個別データ●:平均値

凡例○:個別データ●:平均値

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- 107 -

95

96

97

98

99

100

0 10 20 30 40 50 60

No.1No.2

No.3No.4

minute

ボルト張力残存率(%)

95

96

97

98

99

100

0 4 8 12 16 20 24

No.1No.2

No.3No.4

hour

ボルト張力残存率(%)

95

96

97

98

99

100

0 5 10 15 20 25 30

No.1No.2

No.3No.4

day

ボルト張力残存率(%)

図 6.29 リラクゼーション測定結果

(a) ボルト張力残存率-経過時間 (minute)関係(締付後,1時間分のデータ)

(b) ボルト張力残存率-経過時間 (hour)関係(締付後,1日分のデータ)

(c) ボルト張力残存率-経過時間 (day)関係(締付後,1ヶ月分のデータ)

年後で 5%程度のリラクゼーションが観察されている.これより,今回のアルミ溶射面におけるリラ

クゼーション試験からは,リラクゼーションに対するアルミ溶射の影響は認められなかったといえる.

 図 6.30にリラクゼーション測定後の 0.2ns,ns,nfを示す.(浸水+リラク)試験体も含めて,リラ

クゼーション後の試験体の方が 0.2ns,nsが大きくなっている.

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- 108 -

0

5

10

15

計測点1(多列ボルト)計測点2(多列ボルト)

0.2未満

0.55以上

0.2~

0.25

個数

0.25~

0.3

0.3~

0.35

0.35~

0.4

0.4~

0.45

0.45~

0.5

0.5~

0.55

us [mm]

6. 3 実験結果に基づくすべり係数の検討

 本節では,次章で述べる外ダイアフラム試験体の設計において,高力ボルト摩擦接合部に見込むべ

きすべり係数の値とそのための条件を与えるという位置づけのもとで,6.2節の実験結果に基づくす

べり係数の検討を行う.なお,設計用すべり係数を以下に示す工学的判断に基づいて 0.7とする.

・ 高力ボルト摩擦接合部の終局耐力は,被接合材の破断を除けばボルトの破断により決まる.ボ

ルト破断耐力時のすべり係数換算値は約 1.0である.したがって,すべり係数が 1.0に近いと

すべり発生後にボルト破断に到るまでの余力が小さくなる.すべり耐力に対する破断耐力の

安全率を 1.5倍程度とすると,すべり係数は約 0.7程度が上限となる.

 すべり係数の定義は,0.2mmすべり時とピーク荷重時の2種類が考えられる(6.2節)が,ここではピー

ク荷重時を用いる.ピーク荷重時のすべり係数を採用する理由は以下のとおりである.

1) 文献6.9)によれば,すべり量が接合部および構造物全体に与える影響を適切に評価する場合は,

0.2mmを超えるすべり量に対する荷重をすべり荷重に採用することができる.

2) 図6.31に示すようにピーク荷重時のすべりの大部分は0.4mm以下に分布し,ほとんどが0.5mm

以下である.したがって,ピーク荷重時のすべりが接合部および構造物全体に与える影響は

小さいと考えられる.

 図 6.32にすべり係数の実験結果を示す.図の横軸は実験パラメータであり,比較するパラメータご

とにグループ化し,その他の共通パラメータはグラフの下に示している.また,7章で行ったすべり

試験の結果も併記している.なお,シリーズ IIIでは,溶射皮膜厚が 315~ 426nmの範囲に分布して

いる(表 6.14)が,図 6.32には平均値である 375nm(図 6.21)と表記している.

 まず,基礎実験(付 6.1)よりアーク溶射が他の溶射法に比べて高めの摩擦係数を示したことと,

コスト的にはガスフレーム溶射と大差がない(表 6.1)ことを考慮して,アーク溶射を検討対象とした.

溶射皮膜厚に着目すると,300nmを確保しておけば 0.8程度のすべり係数が得られていることがわか

る(図 6.32).ただし,「母材降伏先行」あるいは「肌すき 1.0mm+ボルト 1列」の場合は 0.8に比べ

て低い.しかしながら,0.7のすべり係数を下回っているものはない.「母材降伏先行」の場合,ボル

ト 2列に対しての実験であるため,母材降伏によるすべり耐力の低下に最も強く影響する状況で検討

したことになる.また,「肌すき 1.0mm+ボルト 1列」の場合も,肌すきによるすべり耐力の低下に

最も強く影響する状況を想定したことになる.したがって,これ以上のボルト列数に対するすべり係

図 6.31 ピーク荷重時すべりの度数分布

ガスフレーム溶射1列ボルト+肌すき 1.0mm

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数は 0.7以上であることは明らかである.すべり係数を低下させる要因は主に母材が降伏することと,

肌すきが生じることにあるため,設計用すべり係数を設定するにあたって,これらの要因によるすべ

り係数の低下を見込んでおく必要がある.

 以上の考察に基づいて,次章で設計用すべり係数として 0.7を用いるためには,少なくとも以下の

項目を満たすことを条件として設定することとした.

1) 溶射法:アーク溶射

2) 溶射皮膜厚:300nm

3) 母材側摩擦面処理 *1:黒皮除去程度のブラスト(赤錆発生を許容)

4) 添板摩擦面の下地処理:ブラスト(仕様は除錆度(JIS Z0313)を基準とする評価とする)

なお,上記の条件は,7.3節で述べる試験体設計においてはすべて満たすが,7.2節で述べる試験体設

計は 6.2節のすべり試験を行う以前に計画したものであるため必ずしも満たしてはいない.

 最後に参考データとして,いくつかの条件を満足する母集団におけるすべり係数の最大値,最小値,

平均値および変動係数を表 6.19に示す.「300nm以上(母材降伏・肌すき除く)」の場合,最もバラ

ツキが小さく,概ね 0.8以上のすべり係数を示している.「ボルト 1列」と「ボルト 2列以上」の比較

より,平均的には同等のすべり係数(0.84)を示しているが,バラツキは「ボルト 2列以上」の方が

小さいことがわかる.

*1:母材側摩擦面処理については,6.2.6項の (3)で検討したとおり,赤錆発生による影響はほとんどないこと,

および自動グラインダーによる黒皮除去の場合はブラストに比べて多少のすべり係数低下はあるものの 0.8以上

のすべり係数を示したことから,本節では特に検討していない.

各グループに対応するその他のパラメータ (1)ボルト本数(列×行)(2)溶射法 (4)母材側摩擦面処理 (5)添板厚 mm(3)溶射皮膜厚 mm

(1)

(2)(3)(4)(5)

1× 1 2× 1 3× 1 1× 1 -× 1 1×- 2× 1 -× 1 1× 1

アーク アーク--ブラスト ブラスト-

16 12 16 16~22 - 16 16~22 16 22 16

200

nm

300以上 300以上200 375 300 375

3× 1

200 300

9 16-

0.6

0.7

0.8

0.9

1

1.1

肌すき mmボルト列数

0 1.0 0 0.51.0

その他

標準傷あり

油汚れ

浸水+

リラクゼーション

リラクゼーション

降伏機構

すべり先行

母材降伏先行

200

1列2列3列4列

ブラスト

ブラスト+

赤錆(薬剤)

自動グラインダー

自動グラインダー+

赤錆(薬剤)

ブラスト

めがね擦り+

自然赤錆

溶射法

アーク

ガスフレーム

添板厚

12 16 22

100

200

300

400

200

300

400

ボルト列数母材側摩擦面処理

F10T M22 F14T M22

ボルト行数

375

1列2列3列

375 20

0

300

200

300

mm

1行2行

1列

3列

皮膜厚nm

ns

ブラスト+

赤錆(薬剤)

ブラスト+

赤錆(薬剤)

めがね擦り+

自然赤錆

7章

F14

T M

20

F14

T M

20

F14

T M

16

図 6.32 すべり係数 ns

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6. 4 まとめ

 本章では,ボルト本数を減らすための手段として,高いすべり係数が期待できるアルミ溶射に着目

して,一連のすべり試験を実施し各種パラメータがすべり係数に及ぼす影響を定量的・定性的に明ら

かにした.以下に,すべり試験より得られた知見をまとめる.

[1] 添板をアルミ溶射することにより,従来の摩擦面(赤錆,ブラスト)に比べて高いすべり係

数が得られる.

[2] 高すべり係数化に効果的なパラメータは溶射皮膜厚である.本実験範囲(100~ 400nm)では,

溶射皮膜が厚いほどすべり係数は大きくなる.300nm以上の溶射皮膜厚を確保すれば,ほぼ 0.8

以上のすべり係数が得られる(ただし,母材の塑性化や肌すきの影響は除く).

[3] すべり係数を低下させる主な要因は,母材の塑性化と肌すきである.それぞれのパラメータ

に対して最悪の条件下(母材が塑性化する試験体でボルトを 2列,肌すき 1.0mmの試験体で

ボルトを 1列とした.溶射皮膜厚は 300nm以上)で行ったすべり試験から,0.7以上のすべ

り係数が得られた.したがって,これ以上のボルト列数に対しても 0.7以上のすべり係数が得

られることは明らかである.

[4] [2],[3]より,アルミ溶射添板では,300nm以上の溶射皮膜厚を確保すれば,実用上の様々

な劣化要因に対しても 0.7以上のすべり係数を確保できそうである.

[5] 1ヶ月間のリラクゼーション測定により,ボルト張力の低下が 2%程度に収まることを確認し

た.これは,従来摩擦面(赤錆)のリラクゼーション特性と変わらない結果であり,アルミ

溶射によるリラクゼーション特性への影響が現れなかったことを示している.また,1ヶ月経

過してもすべり係数が低下することはなかった.

[6] ボルト孔前面の摩擦力による応力伝達は,文献 6.9)の方法を用いればよいと考えられる.

[7] 母材側摩擦面処理の違いおよび摩擦接合面の水濡れ・傷・油汚れがすべり係数に及ぼす影響

は小さい.

 本実験の結果をふまえて,7章での高力ボルト接合部設計に使用する設計用すべり係数として 0.7

を確保するために以下の条件を設定することとした.

[1] 溶射法:アーク溶射

[2] 溶射皮膜厚:300nm

[3] 母材側摩擦面処理:黒皮除去程度のブラスト(赤錆発生を許容)

[4] 添板下地処理:ブラスト(仕様は除錆度(JIS Z0313)を基準とする評価とする)

表 6.19 いくつかの条件を満足する母集団におけるすべり係数の統計値

母集団の条件 最大値 最小値 平均値 変動係数

300nm以上(母材降伏・肌すき除く) 1.01 0.77 0.91 0.072

300nm以上 1.01 0.70 0.89 0.090

200nm 0.99 0.68 0.79 0.085

ボルト 1列 1.01 0.64 0.84 0.123

ボルト 2列以上 0.96 0.72 0.84 0.074

全て 1.01 0.64 0.84 0.112

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付 6. 1 摩擦係数に関する基礎実験

6. 1. 1 はじめに

 すべり試験(6.2節)における溶射の基本仕様を決定する目的で,アルミ溶射皮膜-鋼間の摩擦係

数に関する基礎実験を行う.実験は第 1ステップと第 2ステップからなり,第 1ステップでは溶射法

と摩擦面に加わる接触圧,第 2ステップでは溶射皮膜厚,母材表面処理,添板下地処理および溶融粒

子の大きさ(ガス圧の大きさ)が摩擦係数に与える影響を検討する.

6. 1. 2 実験計画

(1) 試験体

 図A6.1に試験体,図A6.2に載荷装置の写真を示す.試験体は 2面摩擦接合を想定したものであり,

凸形状の部材を母材,直方体の部材を添板と称する.母材には 490N級鋼材を使用し,表面をグリッ

ドブラスト処理する.添板にも 490N級鋼材を使用し,下地をグリッドブラスト処理した後,アルミ

ニウム(Al99.5%以上:普通純度アルミニウム)を溶射する.

(2) 載荷および計測

 二軸試験機により添板に一定荷重Wを負荷した状態で母材を一方向(図A6.1の下方)に押し出す

載荷方法とする.計測は,添板に与える荷重W,母材に与える荷重 Fおよびジャッキストローク u(母

材の下方への変位に対応)について行った.

6. 1. 3 実験パラメータ

(1) 第 1 ステップ

 溶射法と接触圧(添板と母材の接触面の単位面積あたりの荷重(W/400 (N/mm2))を以下のとおり

設定する.

○溶射法:ガスフレーム溶射,高速ガスフレーム溶射,アーク溶射およびプラズマ溶射

○接触圧:37.5,75,105,150,250,300,350N/mm2

その他のパラメータは以下のとおり設定した.

○母材表面・添板下地:最大高さ粗さを 75nmRzのグリッドブラスト処理とする.最大高さ粗さの実

測値は表A6.1に示すとおりである.目標値には若干達していない.

添板 添板添板

母材 母材

2

F

2

F

FW W接触面(20× 20)

30 40 30

5075

30 30 30

添板

母材

F

W

W

2

F 2

F

図A6.1 試験体 図A6.2 載荷装置

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○溶射皮膜厚:300nm以上とする.これは,母材と添板下地が接触しないように多少の余裕を見込ん

で設定した値である.皮膜厚の実測値は表A6.2に示すとおりである.目標値に比べてかなり余裕の

ある結果となっている.

 試験体数は,4(溶射法)× 7(接触圧)× 3(n数)=84体である.

(2) 第 2 ステップ

 溶射皮膜厚,母材表面処理,添板下地処理および溶融粒子の大きさ(ガス圧の大きさ)を以下のと

おり設定する.

○溶射皮膜厚:100,200,300,400nmの 4水準とする.皮膜厚の実測値は表A6.3に示すとおりである.

100nmはほぼ目標通りであり,200~ 400nmは若干目標値を上回る結果となっている.

○母材表面,添板下地:最大高さ粗さ 75nmRz,150nmRzおよび黒皮除去程度のブラスト処理の 3水

準とする.いずれもグリッドブラスト処理である.最大高さ粗さの実測値は表A6.4に示すとおりで

ある.75nmRzは目標通りであり,150nmRzは若干目標値を下回る結果となっている.黒皮除去程

度では,75nmRzを上回っており,ブラストの所要時間は 75nmRz指定の場合に比べて半分程度であっ

た.

○溶融粒子の大きさ(ガス圧の大きさ):溶射皮膜は溶融粒子をぶつけて層を形成するため,気孔が

多い特徴をもつ.溶融粒子の大きさを調整することで気孔の割合を変えることを意図して 2水準を設

定する.第 1ステップに比べて溶融粒子が大きいものを追加する.なお,溶融粒子の大きさの調整は,

溶融粒子を噴射するガス圧の大きさに依存し,ガス圧が小さいほど溶融粒子が大きくなる性質をもっ

ている.以下では,溶融粒子が大きい方を「大」,小さい方を「小」と表記する.

○接触圧:第 2ステップでは,75,250N/mm2の 2水準とする.

 n数をすべての条件で 2体とし,計 65体(内訳は表A6.5を参照)について実験を行った.

表A6.1 最大高さ粗さの実測値 (単位:nm)

最大 最小 平均 目標値

母材 75 55 64 75以上添板 65 53 61 75以上

表A6.2 溶射法ごとの施工条件および溶射皮膜の物理的特性

項目 母材・添板 ガスフレーム 高速ガスフレーム アーク プラズマ

Al成分 99.81% 99.11% 99.82% 99.11%

パス数 3 7 4 2

皮膜厚 (nm)(1パスあたり)

454(151)

402(57)

408(102)

368(184)

最大高さ粗さ 表A6.1参照 184 178 228 143

硬さ *1 (N/mm2) 194 42.5 45.1 46.0 40.2

引張強さ (N/mm2)(硬さ換算値) 582 142 151 154 134

引張強さ (N/mm2)(ミルシート値) 527

*1:厚さ 1mmのアルミ溶射皮膜に対するマイクロビッカース硬さ試験結果

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表A6.4 最大高さ粗さの実測値 (単位:nm)

条件 実測値

母材・添板75nmRz 77.5

150nmRz 136.1

黒皮除去程度 83.1

表A6.3 溶射皮膜厚の実測値 (単位:nm)

目標値 最大 最小 平均

100 112 99 108

200 228 222 226

300 343 331 336

400 455(1体のみ)

表A6.5 第 2ステップの試験体一覧および実験結果(摩擦係数)

No.接触圧

(N/mm2)

添板母材表面処理 n数

摩擦係数

溶射皮膜厚 溶融粒子の大きさ 下地処理 n=1 n=2

175

100nm

大75nmRz

75nmRz

2

0.54 0.52

250 0.40 0.41

275

黒皮除去程度0.57 0.60

250 0.41 0.41

375

75nmRz0.63 0.58

250 0.47 0.51

475

黒皮除去程度

0.72 0.65

250 0.54 0.51

575

黒皮除去程度0.65 0.68

250 0.51 0.50

675

150nmRz0.69 0.73

250 0.52 0.48

775

200nm

大75nmRz

75nmRz

0.76 0.74

250 0.50 0.51

875

黒皮除去程度0.73 0.78

250 0.49 0.48

975

75nmRz0.86 0.80

250 0.60 0.58

1075

黒皮除去程度

0.77 0.83

250 0.58 0.55

1175

黒皮除去程度0.82 0.78

250 0.57 0.56

1275

150nmRz0.87 0.74

250 0.56 0.52

1375

300nm

大75nmRz

75nmRz

0.84 0.81

250 0.49 0.49

1475

黒皮除去程度0.83 0.75

250 0.50 0.52

1575

75nmRz0.84 0.82

250 0.56 0.58

1675

黒皮除去程度0.87 0.78

250 0.56 0.60

17 75 400nm 75nmRz 1 0.96

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6. 1. 4 実験結果

(1) 第 1 ステップ

 図 A6.3に摩擦係数と接触圧の関係を示す.凡例は図中に示すとおりである.表 A6.6には摩擦係

数の数値データを示している.ここで,摩擦係数は荷重 Fの最大値を荷重Wと摩擦面の数 2で除し

て得られる値である.接触圧が 105N/mm2程度までは溶射法による違いはあまり認められないかが,

150N/mm2以上ではアーク溶射が最も高い摩擦係数を示している.また,接触圧が増加すると摩擦係

数は低下することがわかる.

(2) 第 2 ステップ

 表A6.5に摩擦係数の数値データを示す.第 1ステップと同じように,接触圧が増加すると摩擦係

数は低下することがわかるので,以下では接触圧が 75N/mm2の場合に限定して検討する.図 A6.4

に摩擦係数と溶射皮膜厚の関係を示す.凡例は図中に示すとおりであるが,例えば溶融粒子が「小」

かつ添板下地処理が黒皮除去程度のブラストかつ母材表面処理が 75nmの場合,「小-黒-75」と表

記している.図A6.4より得られる知見を以下に列挙する.

表A6.6 第 1ステップの実験結果一覧(摩擦係数)

溶射法 n数接触圧(N/mm2)

37.5 75 105 150 250 300 350

ガスフレーム1 1.01 0.90 0.82 0.71 0.52 0.51 0.44

2 1.08 0.98 0.92 0.73 0.54 0.48 0.42

3 1.08 0.86 0.81 0.71 0.54 0.52 0.43

高速ガスフレーム1 0.91 0.83 0.85 0.64 0.44 0.38 0.34

2 0.92 0.90 0.89 0.64 0.44 0.39 0.36

3 0.90 0.89 0.75 0.67 0.44 0.36 0.33

アーク1 1.08 0.91 0.79 0.80 0.62 0.55 0.51

2 1.11 0.91 0.77 0.75 0.65 0.56 0.53

3 1.07 0.84 0.89 0.78 0.63 0.56 0.51

プラズマ1 1.02 0.91 0.76 0.63 0.48 0.39 0.40

2 0.98 0.91 0.85 0.67 0.50 0.46 0.40

3 1.00 0.86 0.76 0.70 0.50 0.41 0.40

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

50 100 150 200 250 300 350

ガスフレーム高速ガスフレームアークプラズマガスフレーム平均高速ガスフレーム平均アーク平均プラズマ平均

接触圧

摩擦係数

[N/mm2]

図A6.3 摩擦係数と接触圧の関係(第 1ステップ)

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0.5

0.6

0.7

0.8

0.9

1

100 150 200 250 300 350 400 450

大-75-75大-黒-75小-75-75小-黒-75小-黒-150小-黒-黒

大-75-75平均大-黒-75平均小-75-75平均小-黒-75平均小-黒-150平均小-黒-黒平均

溶射皮膜厚

摩擦係数

[nm]

図A6.4 摩擦係数と溶射皮膜厚の関係(第 2ステップ)

1) 溶射皮膜が厚くなるほど,摩擦係数は増加する.

2) 母材表面が粗い方が,若干摩擦係数は大きい.

3) 添板下地は,75nmRz指定と黒皮除去程度のブラストで粗さの差が小さく(表A6.4),摩擦係

数にも有意差は生じていない.

4) 溶融粒子が小さい方が,摩擦係数は小さい.

6. 1. 5 まとめ

 摩擦係数に関する基礎実験を行い,摩擦係数に与える各種パラメータの影響を検討した.摩擦係数

の大きさに有意な差が現れるのは,溶射法,溶射皮膜厚,接触圧である.溶射法に関しては,概ねアー

ク>ガスフレーム>プラズマ>高速ガスフレームの順に摩擦係数が高い.溶射皮膜厚に関しては,皮

膜が厚いほど摩擦係数は増加するが,少なくとも 200nm程度は確保しないと高い摩擦係数は得られ

ないようである.また,接触圧が増加すると摩擦係数は明瞭に下がることがわかった.

 以上の結果をふまえて,6.2節のすべり試験における試験体基本仕様を以下のように定める.

1) 溶射法:アーク溶射(一部ガスフレーム溶射)

2) 溶射皮膜厚:200~ 300nm(一部 100,400nm)

3) 接触圧:高力ボルトの種類と添板厚により再現する.

4) 添板下地処理:特に粗さ指定は行わず黒皮除去程度とする.

5) 母材表面処理:特に粗さ指定は行わず黒皮除去程度とする.

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第7章  分割外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の部分架構実験

7. 1 はじめに

 2章では,図 2.1に示す直交梁の取付も可能な任意形状の外ダイアフラム形式に対する設計式を提

案するとともに,実験結果との比較より設計式が妥当であることを確認した.しかし,ここで行った

実験は,柱梁接合部の引張側を取り出した試験体による単純引張実験である(図 2.10参照).本章では,

曲げモーメントとせん断力が作用する場合に対する設計式の適用性を,部分架構試験体を用いて検討

する.なお,本章の外ダイアフラムには,5章で提案した分割外ダイアフラムを採用する.

 本章で行う載荷実験は 2シリーズからなる.本研究で提案する分割外ダイアフラムは,施工性の向

上を目的として外ダイアフラムを 2分割していることと,ボルト本数低減と外ダイアフラムの小サイ

ズ化を念頭に置いてアルミ溶射添板(6章)を使用していることに特徴がある.そこでシリーズ Iでは,

添板の摩擦面処理の違いおよび分割外ダイアフラムの分割方向の違いをパラメータとして,分割外ダ

イアフラムを有する部分架構の力学挙動を検討する.シリーズ IIでは,シリーズ Iで得た知見にもと

づいて試験体を設計し,外ダイアフラムと梁の接合法(高力ボルト接合,溶接接合),柱の部位(中柱,

外柱),柱の種類(中空,コンクリート充填)および梁偏心の有無をパラメータとした部分架構の力

学挙動を検討する.

7. 2 載荷実験シリーズ I(添板摩擦面処理と外ダイアフラム分割方向をパラメータとして)

7. 2. 1 試験体

 試験体一覧を表 7.1,試験体の形状を図 7.1~ 7.3,外ダイアフラム詳細を図 7.4に示す.試験体数

は 4体であり,いずれもト字形部分架構とした.No.1試験体(図 7.1の右側)を基本試験体とする.

No.2試験体(図 7.1の左側)は No.1に比べて外ダイアフラムせい hdを小さく設定したもので,外ダ

イアフラムが梁に先行して降伏するように設計している.No.2の柱に関しては No.1の載荷後のもの

表 7.1 試験体一覧

No. 角形鋼管柱 H形断面梁

外ダイアフラム (SN490B) 摩擦面処理

使用ボルト

td

hd

(hd/D)Bd a スリット

の位置フランジ添板

外ダイアフラムウェブ添板注 3

ウェブプレート注 3mm mm mm mm

1

□-250× 250× 12(BCR295)

BH-400× 200× 9× 12(SN400B)

12

55(0.22)

200

150

角形鋼管のフランジ側

アルミ溶射

(注 1,2)

赤錆F14T M16

2BH-400× 200× 9× 12

(SN490B)37.5

(0.15)

3BH-400× 200× 9× 12

(SN400B)55

(0.22)200 赤錆

4BH-400× 200× 9× 12

(SN400B)55

(0.22)150

角形鋼管のウェブ側

アルミ溶射

(注 1,2)

 注 1:アルミ溶射の条件・・・アーク溶射,溶射皮膜厚 200nm

 注 2:アルミ溶射面の下地処理・・・ブラスト(表面粗さ 75nmRz以上) 注 3:フランジ添板,ウェブプレート・・・PL-9(SM490A),ウェブ添板:PL-6(SM490A)

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- 118 -

4370550 19001900

5537.5

550

外ダイアフラム (PL-12, SN490B)

472

472

20002000185 18514

94.5

BH-400× 200× 9× 12, SN490B BH-400× 200× 9× 12, SN400B

□-250× 250× 12, BCR295

梁の孔欠損部

図 7.1 No.1試験体と No.2試験体

図 7.2 No.3試験体 図 7.3 No.4試験体

No.2 No.1

55

650 1850

650

外ダイアフラム (PL-12, SN490B)

472

472

2000 185

1494

.5

BH-400× 200× 9× 12, SN400B

□-250× 250× 12, BCR295

梁の孔欠損部

55

550 1900

550

外ダイアフラム (PL-12, SN490B)

472

472

2000 185

1494

.5

BH-400× 200× 9× 12, SN400B

□-250× 250× 12, BCR295

梁の孔欠損部

PL-12(SN490B)

シーム

50 50 50 5050 50

250 150150

5 5

120

4040

120

4040

37.5

55

No.1No.2

:両面赤錆発生

φ 18

10

すべり耐力算定位置

シーム

5050 50

250 200200

5120

4040

55

50

PL-12(SN490B):両面赤錆発生

φ 18

10

すべり耐力算定位置

シーム

5050 50

150150

4040

55

120

5

PL-12(SN490B)

:両面赤錆発生

250

φ 18

10

すべり耐力算定位置

図 7.4 外ダイアフラム詳細

(a) No.1と No.2 (b) No.3 (c) No.4

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- 119 -

を再使用した.図 7.3に示す No.4試験体は,外ダイアフラムのスリット位置を柱ウェブ側に配置した

形式であり,No.1の外ダイアフラムを柱中心に対して 90°回転させたものに対応する.以上の 3体

については,外ダイアフラムと梁フランジを接合する添板(以下,フランジ添板)の摩擦面に高いす

べり係数(0.7以上)を確保できるアルミ溶射を施し,高力ボルト本数の低減を図った(いずれも 4本).

図 7.2に示す No.3試験体はフランジ添板を黒皮除去程度のブラスト処理後に赤錆発生させているた

め,高力ボルト 6本を有する試験体である.ウェブと添板の摩擦面は赤錆発生とし,ウェブ継手は文

献 7.1)にしたがって設計した.使用ボルトはすべて F14T M16である.

 No.1,3,4の外ダイアフラム詳細は,次式を満足するように決定している.

jMy $ bMy (7.1)

ここで,jMyは外ダイアフラムの降伏曲げ耐力,bMyは梁の全断面の降伏モーメントである.jMyは次

式で算定される.

jMy = jP y$ (Dd-t d) (7.2)

ここで,jPyは外ダイアフラムの引張降伏耐力((2.32)式あるいは (5.1)式),Ddは上下の外ダイアフ

ラムの外法寸法,tdは外ダイアフラムの板厚である.(7.2)式では,外ダイアフラムの降伏曲げ耐力算

定において,ウェブプレートの曲げ耐力の寄与を無視している.高力ボルト摩擦接合部は,設計用す

べり係数(フランジ:0.7,ウェブ:0.45)を用いて,梁が bMyに達する以前にすべらない設計とした.

外ダイアフラムの最大耐力に関する検討は次式によった.

jMu $ a bM p (7.3)

ここで,jMuは外ダイアフラムの最大曲げ耐力,bMpは梁の全断面の全塑性モーメント,aは接合部係

数(本試験体の場合 1.25 7.1))である.jMuは次式で算定される.

jMu = jPu$ (Dd-t d) (7.4)

ここで,jPuは外ダイアフラムの引張最大耐力((5.9)式)である.

 表 7.2に公称値による各試験体の耐力算定値を示す.No.1,3,4の外ダイアフラムは,梁の降伏モー

メントに比べて 6~ 10%の余力を見込んだことになる.また,外ダイアフラムの最大曲げ耐力は梁の

全塑性モーメントに比べて 40%程度の余力を見込んだことになる.一方,No.2の外ダイアフラムは,

梁に対して降伏曲げ耐力で 35%,最大曲げ耐力で 28%低い耐力を有する.

表 7.2 公称値による各試験体の耐力算定値

Spec.jMy bMye bMy Mslip jMu bMp

bMy

jMy

bM p

jMu

kNm kNm kNm kNm kNm kNm

No.1 281 227 266 336 409 301 1.06 1.36

No.2 237 313 367 336 343 416 0.65 0.82

No.3 296 227 266 326 433 301 1.11 1.44

No.4 281 227 266 336 409 301 1.06 1.36

【記号】 bMye: ボルト孔欠損を考慮した梁の降伏モーメント

Mslip: すべり発生時の継手位置での曲げ耐力,アルミ溶射添板のすべり係数は 0.7と仮定

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- 120 -

7. 2. 2 載荷および計測概要

 図 7.5に載荷装置を示す.グレーのハッチで示すト字形試験体の梁端を 500kNロードセル付きのリ

ンク材によりピンローラー支持し,ピン支持した柱の頂部を油圧ジャッキにより正負交番繰返し載荷

する.層間変形角制御(図 7.6)により,図 7.5の右方向を正側として弾性載荷,± 0.01~± 0.04rad

の振幅を 0.01rad刻みで各 2サイクルずつ載荷した後,0.1rad程度まで押し切ることとした.

 図 7.6に主要な計測項目を示す.図中の梁せん断力 Qbは図 7.5の 500kNロードセルの荷重計測値

である.図 7.6の計測以外に,フランジ接合部のすべり,フランジボルトの張力および外ダイアフラ

ムの歪を測定した.

7. 2. 3 すべり試験

 すべり試験によりアルミ溶射面と赤錆面のすべり係数を調べた.試験体とすべり計測位置を図 7.7

に示す.試験体は 2体あり,添板のボルト 1本側をアルミ溶射,2本側を赤錆仕上げとした.摩擦面

処理条件は以下のとおりである.

梁構面外変形拘束ジグ

柱構面外変形拘束ジグ

500kN load cell

2000

2000

Q jack

ピン

ピン

ピン

R

ibj

Q jack

Qb

i jMbj

Ribj

Q jack

i j

Qb

:層間変形角:梁回転角(接合部局部変形含む):接合部局部回転角:ジャッキ荷重  :梁せん断力:梁端モーメントMbj

図 7.5 載荷装置 図 7.6 計測項目と定義

715

230 110 140 230

3705340

120

25

230 2305555 60 40

PL-9(SM490A)

P P

P P

すべり:母材と添板のずれ

PL-9(SN490B)

すべり:母材と添板のずれ赤錆面アルミ溶射面

40

図 7.7 すべり試験体

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- 121 -

・ ボルト 1本側・・・溶射法:アーク,溶射皮膜厚:200nm,添板下地処理:最大高さ粗さ

75nmRz以上のブラスト処理

・ ボルト 2本側・・・黒皮除去後,自然発錆

なお,母材の摩擦面処理条件は,添板のボルト 2本側と同じである.

 すべり係数の実験結果を表 7.3に示す.以下,すべり耐力の検討において,アルミ溶射面のすべり

係数に 0.88,赤錆面のすべり係数に 0.62を用いることとする.

7. 2. 4 実験結果および考察

 表 7.4に鋼材の機械的性質を示す.No.2に用いた梁フランジは外ダイアフラムと同一ロットより

切り出したため,機械的性質は外ダイアフラムと同一である.表 7.2の算定結果を素材試験結果を用

いて算定し直した結果を表 7.5に示す.外ダイアフラムの降伏点が公称値より 7%高いのに対して,

梁フランジと梁ウェブ(SN400B)の降伏点は公称値に対してそれぞれ 17%,22%高い.そのため,

No.1,4の外ダイアフラムの降伏曲げ耐力は,梁の降伏モーメントに比べて 3%しか余力がない結果

となった.

表 7.5 実勢値による各試験体の耐力算定値

Spec.jMy bMye bMy Mslip jMu bMp

bMy

jMy

bM p

jMu

kNm kNm kNm kNm kNm kNm

No.1 327 269 316 409 445 346 1.03 1.29

No.2 278 344 403 409 373 442 0.69 0.84

No.3 348 269 316 419 476 346 1.10 1.38

No.4 327 269 316 409 445 346 1.03 1.29

【記号】 Mslip: すべり試験結果を用いて算出,初期ボルト張力は設計用ボルト張力 155kNを仮定

表 7.4 鋼材の機械的性質

部位 鋼種板厚 降伏点 引張強さ 降伏比 破断伸びmm N/mm2 N/mm2 % %

外ダイアフラム梁フランジ SN490B 12.2 348 518 67 27

角形鋼管柱 BCR295 12.0 387 444 87 42

梁フランジ SN400B 12.2 274 415 66 30

梁ウェブSN400B 9.0 287 426 67 32

SN490B 9.0 370 537 69 24

   ※試験片の種類・・・外ダイアフラム,梁:JIS 1A号,角形鋼管柱:JIS 5号   ※降伏点の算定法・・・外ダイアフラム,梁:下降伏点,角形鋼管柱:0.2%オフセット耐力

表 7.3 すべり係数の実験結果

試験体アルミ溶射面 赤錆面

0.2ns ns 0.2ns ns

n-1 0.84 0.86 0.56 0.59

n-2 0.86 0.89 0.60 0.65

平均 0.85 0.88 0.58 0.62

【記号】0.2ns:0.2mm時すべり係数(すべりが 0.2mmに達したときの荷重を初期ボルト張力と摩擦面の数で除した無次元量)n s:ピーク荷重時すべり係数(ピーク荷重を初期ボルト張力と摩擦面の数で除した無次元量)

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- 122 -

(1) ト字形部分架構の全体挙動

 図 7.8に各試験体の荷重 Qjack-層間変形角 R関係を示す.

(a) No.1 試験体(図 7.8(a))

 0.02rad振幅の正側載荷 1サイクル目で外ダイアフラム-フランジ添板間にすべりが発生した.そ

れまでの履歴にはわずかにループが確認できるが,これは鋼管角部近傍の外ダイアフラムが塑性化し

たためである(外ダイアフラムに貼付した歪ゲージから 0.01rad振幅で塑性化を確認した).0.02rad

振幅の 2サイクル目以降はスリップ性状を含む履歴に移行し,概ねQjack=100~ 150kNで変形(すべり)

が進行したあと支圧状態になり前サイクルの最終到達点に向けて荷重が上昇する.アルミ溶射添板で

は,すべり音は発生しなかった.0.03rad,0.04rad振幅を経験してもピーク時の荷重は 0.02rad振幅

時と変わらなかった.押切載荷時に圧縮側の梁フランジと外ダイアフラムが接触することによって荷

重が上昇するが,梁構面外変形拘束ジグのストロークが限界に達したため,試験体の終局状況を確認

図 7.8 荷重-層間変形角関係

(b) No.2

-200

-100

100

200

300

-0.05 0.05 0.10 0.15

R [rad]

Q jack [kN]

(c) No.3

-200

-100

100

200

300

-0.05 0.05 0.10 0.15

R [rad]

Q jack [kN]

(d) No.4

-200

-100

100

200

300

-0.05 0.05 0.10 0.15

R [rad]

Q jack [kN]

(a) No.1

-200

-100

100

200

300

-0.05 0.05 0.10 0.15

R [rad]

Q jack [kN]

:初期すべり発生点

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- 123 -

-200

-100

100

200

300

-0.02 0.02

Rc [rad]

Q jack [kN]

-200

-100

100

200

300

-0.02 0.02

R p [rad]

Q jack [kN]

図 7.9 荷重-層間変形角関係(No.1)

(a) 柱 (b) 接合部パネル

写真 7.1 添板の座屈 写真 7.2 梁の塑性化

写真 7.3 外ダイアフラムの局部座屈

写真 7.4 梁フランジの局部座屈

することはできなかった.損傷状況としては,フランジ添板(内側と外側の両方)の中央部における

座屈(写真 7.1),梁継手部付近における塑性化領域の形成(写真 7.2)が挙げられる.なお,柱と接

合部パネルは最終まで弾性を維持していた(図 7.9).

(b) No.2 試験体(図 7.8(b))

 No.1と類似した履歴性状を呈している.0.02rad振幅の正側 1サイクル目で外ダイアフラム-フラ

ンジ添板間にすべりが発生することで履歴曲線の勾配が急減する時期もほぼ同じである.押切載荷時

には,圧縮側の外ダイアフラムと梁フランジの接触により荷重が上昇し,最終的には圧縮側の外ダイ

アフラムに局部座屈が発生した(写真 7.3)が,耐力劣化は認められなかった.梁・柱・接合部パネ

ルは最終まで弾性を維持していた.

(c) No.3 試験体(図 7.8(c))

 0.02rad振幅まで安定した履歴性状を呈している.0.03rad振幅の正側 1サイクル目で梁上フランジ

とフランジ添板間にすべりが発生した.赤錆面がすべる場合,大きなすべり音と耐力低下が伴うため,

アルミ溶射添板を用いた試験体のすべり後の挙動に比べて荷重の変動が激しくなる.No.3も終局状況

を確認することはできなかった.

(d) No.4 試験体(図 7.8(d))

 No.1と概ね対応する履歴性状となっているが,同一変形時における耐力を比較すると,No.4の方

が少し低いことがわかる.No.4は 0.01rad振幅の負側 1サイクル目ピーク直前(Qjack=-160kN程度)

でわずかに耐力低下が生じている(▼印)が,これは引張側の外ダイアフラム-フランジ添板間にお

けるすべりが原因である.このように No.1よりすべり耐力が低くなったことが,上記のような結果

を呈することになった一因であると考えられる.押切載荷時には,圧縮側の外ダイアフラムと梁フラ

ンジの接触により耐力が上昇しフランジ添板(内側)が座屈した.計測機器の不具合があったため図

7.8(d)には R=0.1rad以降のデータを示していないが,Qjack=250kN時に梁フランジの局部座屈が発

生して終局を迎えた(写真 7.4).これは,ピンローラー支持位置における構面外の移動を拘束してい

なかったことと,試験体の組立・設置時の精度が影響しているものと考えられる.

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- 124 -

(2) 接合部を含む梁の弾塑性挙動

 図 7.10に梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係を示す.ここで,Mbjは柱フェイス位置に作用する

曲げモーメント,i bjは接合部の局部変形を含んだ梁の回転角であり図 7.6に示す変形に対応する.図

7.10にbMye* (一点鎖線),jMy(破線)の算定結果を併記する.ここでbMye

* は,図 7.3に示す梁の孔欠

損部において降伏モーメント(孔欠損考慮)に達したときの柱フェイス位置でのモーメントである.

No.1のbMye* と jMyは同程度でるために,梁のみならず外ダイアフラムの塑性変形も進展した.そのた

め,No.1の履歴性状(図 7.10(a))と No.2の履歴性状(図 7.10(b))は類似する結果となった.No.1,

3はbMye* が履歴の接線勾配が緩やかになる付近を捉えている.また,No.2の jMyは履歴の接線勾配が

緩やかになる付近を捉えていることから,2,5章で提案した設計式は曲げモーメントとせん断力が作

用する場合にも適用できると判断できる.No.4は,外ダイアフラム-梁フランジ接合部のすべりが他

の試験体に比べて早かったため,0.03rad振幅まではbMye* に達していない.

-500

500

-0.04 0.04

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

-500

500

-0.04 0.04

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

-500

500

-0.04 0.04

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

-500

500

-0.04 0.04

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

bMye*

jMy

図 7.10 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係

(a) No.1 (b) No.2

(c) No.3 (d) No.4

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- 125 -

(3) 接合部のすべり挙動

 図 7.11(a)に梁端モーメントMbjとフランジ添板-外ダイアフラム間のすべりによる回転角 i sdの関

係,図 7.11(b)に梁端モーメントMbjと梁フランジ-添板間のすべりによる回転角 i sbの関係を示す.

いずれの試験体も同様な挙動が認められたので,ここでは No.1についてのみ示している.挙動は剛

塑性に近い性状であり,振幅の増加とともに支圧変形も含まれることになる.0.04rad振幅までの結

果から isdは概ね 0.01~ 0.015rad程度であり,isbは 0.03rad振幅で 0.01~ 0.015rad,0.04rad振幅で

0.015~ 0.02rad程度を示している.以上より接合部のすべり(支圧も含む)による回転角(isd+isb)

は 0.03rad振幅において 0.02rad程度,0.04rad振幅において 0.03rad程度を示すことがわかった.図 7.12

に No.1の梁端モーメントMbjと接合部局部回転角 i j(図 7.6)の関係を示す.これより 0.04rad振幅

において i jは 0.01rad程度である.したがって,すべりと局部変形により梁の変形の大部分を占めて

いることが明らかとなった.これは,梁を想定どおりに降伏させることができなかったことを意味し

ている.したがってより積極的に梁を降伏させるための設計法を見直す必要がある.

 ボルト張力の計測値および外ダイアフラムに作用する引張力(梁端モーメントを上下外ダイアフラ

ムの中心間距離で除して算出した偶力に相当)を用いて算出したすべり係数実験値を表 7.6に示す.

ここで,すべり係数実験値は,明瞭なピーク荷重が現れない場合はすべりが 0.5mm(6章よりピーク

荷重時のすべりが概ね 0.5mm以下に収まっていたことから定めた)に達したときについて算定した.

部分架構実験におけるアルミ溶射面のすべり係数はすべり試験結果に比べて 1~ 3割低下しているこ

とがわかる.これは,外ダイアフラムの塑性化によりボルト張力が大きく減少し,その結果すべり耐

力が低下したためである(すべり時のボルト張力の計測値が初期張力に比べて半減しているものも確

かめられた).なお,すべり試験では母材が弾性に保たれるのでボルト張力の減少率は高々 20%程度

であった.

表 7.6 すべり係数実験結果

試験体 部分架構実験によるすべり係数 expns

すべり試験によるすべり係数 ns

expns/ns

No.1 0.68 0.88 0.77No.2 0.77 0.88 0.88No.3 0.56 0.62 0.90No.4 0.61 0.88 0.69

-500

500

-0.04 0.04

Mbj [kN$m]

i j [rad]

-500

500

-0.04 0.04

Mbj [kN:m]

isb [rad]

-500

500

-0.04 0.04

Mbj [kN:m]

isd [rad]

図 7.11 梁端モーメントと接合部のすべり関係(No.1)

(a) 外ダイアフラム-添板間 (b) 梁フランジ-添板間 図 7.12 梁端モーメントMbj-接合部局部回転角 ij関係

(No.1)

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- 126 -

-400

400

0.1

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

(4) 梁端モーメント−梁回転角関係骨格曲線,弾性剛性,耐力

 図 7.13にMbj- ibj関係骨格曲線を示す.同図に弾性剛性計算値を破線(calKbj)と一点鎖線(calKb)

で示す.ここで,calKbは外ダイアフラムの存在領域に梁と同一断面を仮定して算出した弾性剛性(曲

げ変形,せん断変形を考慮),calKbjは文献 7.2)で提案されている接合部局部剛性と calKbとの直列結

合として算出した弾性剛性である.ただし,文献 7.2)では外ダイアフラムせい hd/Dの適用範囲を 0.0

~ 0.133としているため,本実験の場合は適用範囲外である.局部変形を無視した calKbでは実験結果

に対して 2~ 3割程度の過大評価を与えている.一方,適用範囲外ではあるものの,文献 7.2)の局部

剛性評価式を適用すれば概ね実験結果とよい対応を示すことがわかる.図 7.13(e)に各試験体の骨格

曲線を比較して示す.No.4はすべりの発生が早かったため少し性状が異なっているが,その影響を除

けば No.1と同等の力学性能を有すると考えられる.また,No.2,3は No.1の外ダイアフラムと耐力

が異なるものの,弾性剛性に明瞭な差は認められない.

 表 7.7に耐力の実験値と計算値を示す.表中の記号の定義は表下に示すとおりである.なお,降伏

耐力計算値 calMyは,次式により定義している.

calMy = min { jMy , bMye* , Mslip

* } (7.5)

No.2は設計通り外ダイアフラムの降伏により耐力が決まった.降伏耐力計算値 calMyと実験値 expMyも

よく対応している.No.1,3,4の calMyはすべて梁フランジボルト孔欠損を考慮した柱フェイスモー

メントbMye* で決まっているが,ボルト孔前面の摩擦伝達により梁の降伏耐力が上昇するため,実際に

は外ダイアフラムの塑性化も影響していると思われる.本試験体の設計では (7.1)式で表されるよう

-400

400

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-500

500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-400

400

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-400

400

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

図 7.13 梁端モーメント-梁回転角関係骨格曲線

(a) No.1 (b) No.2 (c) No.3

(d) No.4 (e) 骨格曲線の比較

▼:jMy ○:bMye*

●:bM pe* ▽:jMu

◆:Mslip* ◇:expMy 実  線:No.1

点  線:No.2一点鎖線:No.3破  線:No.4

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に,外ダイアフラムの降伏耐力と梁の降伏モーメント bMyを単純に比較して bMyの方が小さいことを

確認する方法をとったが,外ダイアフラムの梁に対する余力が表 7.5より 3~ 10%程度しかないため,

柱フェイスから梁ボルト孔欠損部までの距離によるモーメントの増大(リンク材-柱フェイス間距離

1875mmとリンク材-梁ボルト孔欠損部間距離(No.1,4:1615mm,No.3:1515mm)の比より 16

~ 24%の増大が見られる)がその余力を上回った結果,外ダイアフラムの塑性化が進展したと考えら

れる.以上より,次式で表される設計条件を用いて外ダイアフラムの設計を行う必要があるだろう.

jMy $ Lb-D/2-a-c1-e1-(n-1) p

Lb-D/2$b

tMye (7.6)

ここで,Lb:梁長さ(柱芯-リンク材間距離),D:柱幅,a:外ダイアフラムの出寸法,c1:梁フラ

ンジと外ダイアフラムの隙間(本実験では 10mm),e1:梁端のボルト孔のはしあき寸法,n:梁端の

ボルト列数,p:ボルトピッチである.

ただし,上式において,

btMye = bMye+nsmnrN0c (Db-tbf) (7.7)

ここで,n s:アルミ溶射面のすべり係数,m:摩擦面の数,nr:梁の孔欠損部(図 7.1~ 7.3)におけ

るボルト行数,N0:設計ボルト張力,c:梁の孔欠損部(図 7.1~ 7.3)のすべり耐力に対する,ボル

ト孔前面における伝達摩擦力の割合(1/3)7.1),Db:梁せい,tbf:梁フランジ厚である.

表 7.7 耐力の実験値と計算値

jMy bMye*

bM pe*

jMu Mslip*

expMy

expMy

calMy

kN$m

No.1 327 312 348 445 371 280 1.11

No.2 278 399 445 373 342 286 0.97

No.3 348 333 370 476 397 341 0.98

No.4 327 312 348 445 397 276 1.13

【記号】 expMy:降伏耐力実験値.Mbj-i bj骨格曲線における接線勾配が初期剛性の 3分の 1とな

るときの耐力

Mslip* :すべり耐力計算値.フランジボルト張力の測定値の平均値,すべり試験で得たすべ

り係数 0.88(アルミ溶射面)および 0.62(赤錆面)を用いて算定したすべり耐力の柱フェ

イス位置換算モーメント.ここで,すべり耐力を算定する断面として,柱フェイス位置か

ら最も近い外ダイアフラムのボルト孔位置を仮定した(図 7.4).

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- 128 -

7. 3 載荷実験シリーズ II

  (外ダイアフラムと梁の接合法,柱の部位・種類,梁偏心をパラメータとして)

 本節では,7.2節で得た知見に基づいて外ダイアフラムの設計を行った部分架構試験体を用いて以

下の項目について検討する.

1) ト字形部分架構による分割外ダイアフラム形式柱梁接合部の力学性能(剛性,耐力,変形能力)

2) 提案する外ダイアフラム接合部の設計法が妥当であるか

3) 実務的な観点から,偏心梁が外ダイアフラムに取り付く場合の力学性能の調査

4) 近年,高層建物などに広く用いられているコンクリート充填角形鋼管(以下,CFT)柱に分

割外ダイアフラム形式を採用した場合の接合部および架構の挙動

7. 3. 1 試験体

 試験体一覧を表 7.8に,試験体を図 7.14,7.15,外ダイアフラム詳細を図 7.16に示す.試験体数は

8体である.各試験体に用いる梁,柱,外ダイアフラムの鋼種はA-1~A-4および B-1~ B-3

試験体で共通であり,それぞれ溶接組立 H形断面材(BH-550× 200× 12× 19,SN490B),冷間ロー

ル成形角形鋼管(□-350× 350× 16,BCR295),平鋼(PL-19,SN490B)である.C-1試験体

に用いる梁,柱,外ダイアフラムの鋼種は,それぞれ外法一定 H形鋼(H-550× 200× 12× 22,

SN490B),冷間ロール成形角形鋼管(□-400× 400× 16,BCR295),平鋼(PL-22,SN490B)

である.A-1と C-1は梁降伏先行形となるように設計しており,梁と外ダイアフラムは高力ボルト

接合される.A-2はA-1の比較対象として製作したものであり,梁フランジと外ダイアフラムを

完全溶込溶接としている(図 7.14).A-3は外柱を想定した試験体であり,梁芯を柱芯より 75mm偏

心させている.A-4はA-3の比較対象として製作したものであり,無偏心タイプの接合詳細とし

ている.B-1はA-1と同一形状であり,柱にコンクリート(Fc30)が充填されている.B-2は,

高力ボルト接合部での梁の塑性化を避けるために柱フェイスから 710mm以上離れた梁フランジ幅を

188mmとした試験体である.B-3はA-3と同一形状であり,柱にコンクリート(Fc30)が充填さ

れている.図 7.17に示すように,外ダイアフラムと角形鋼管柱は異形隅肉溶接接合とした.また,外

ダイアフラムとウェブプレートの接合は,脚長 9mmの両面隅肉溶接とした(図 7.14).フランジ添板

表 7.8 試験体一覧

試験体 柱 梁外ダイアフラム

コンクリート充填の有無td

mmhd (hd/D)

mmBd (Bd/D)

mma (a/D)

mme (e/D)

mm

A-1

□-350× 350× 16

(BCR295)

BH-550× 200× 12× 19

(SN490B)19

112.5

(0.32)

200

(0.57)

300

(0.86)

0

中空A-2 0

A-3 75 (0.21)

A-4 0

B-1 0

充填B-2 0

B-3 75 (0.21)

C-1□-400× 400× 16

(BCR295)

H-550× 200× 12× 22

(SN490B)22

112.5

(0.28)

200

(0.5)

325

(0.81)0 中空

※フランジ添板(PL-16(A,Bシリーズ),PL-19(C-1),SM490A):すべてアルミ溶射添板を使用,溶射条件(アーク溶射,皮膜厚:300nm,下地処理:黒皮除去程度のブラスト)※ウェブ添板(PL-12,SM490A):すべてブラスト後,薬剤による赤錆発生※梁フランジ・ウェブ,外ダイアフラム,ウェブプレートの摩擦面はブラスト後,薬剤による赤錆発生※使用ボルトはすべて超高力ボルト F14T M20

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2500

3275

梁のボルト孔欠損部

すべり耐力算定位置梁継手中心位置

A

9

外ダイア-ウェブプレート溶接部詳細(  断面)A

5

12

3075

2740775

954

528

954

-400#400#16, BCR295

H-550#200#12#22, SN490B

BH-550#200#12#19, SN490B

-350#350#16, BCR295

281010700

3070

950

1700

548.

553

154

8.5

2895

梁のボルト孔欠損部

すべり耐力算定位置

ウェブプレート

73 c5

73 c5

A-2の梁継手詳細

400

200

138

B-2の梁

第 1ボルト(梁側)第 1ボルト(外ダイアフラム側)

梁継手中心位置

梁切欠き断面部

梁継手中心位置

9

A

外ダイア-ウェブプレート溶接部詳細(  断面)A

5

12

図 7.14 試験体の一例(A,Bシリーズ)

図 7.15 C-1試験体

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φ 22

シーム

700

125 200 375

30050

950

347.

512

5

300

4 c5

112.

5 375

97.5

5

4040

507070110

外ダイアフラム(PL-19, SN490B)

700

137.

517

2.5

5

8057

.557

.549

0

40

137.

542

2.5

125

690

50 300

375200125

507070110

75

両面黒皮除去程度のブラスト後,薬剤による赤錆

シーム

φ 22

シーム

700

585 115

115

4040

375

97.5

97.5

125

347.

521

2.5

690

40

507070110

300

375125 200

50

5

外ダイアフラム(PL-19, SN490B)

4 c5

4 c5

112.

5

300

112.

5

300

にはアルミ溶射添板を使用した(溶射条件は表 7.8の下に示すとおりである).外ダイアフラム,ウェ

ブ添板,梁フランジ・ウェブおよびウェブプレートの摩擦面はすべて黒皮除去程度のブラスト後,薬

剤により赤錆を発生させた.使用ボルトはすべて F14T M20である.

 A-1および C-1の外ダイアフラム詳細は,次式を満足するように決定している.

jMy $ Lb-D/2-a-c1-e1-(n-1) p

Lb-D/2$b

tMye (7.6)

btMye = bMye+nsmnrN0c (Db-tbf) (7.7)

ここで,Lb:梁長さ(柱芯-載荷点間距離),bMye:梁の第 1ボルト位置(図 7.14参照)における降

伏曲げモーメント(ボルト孔欠損考慮),N0:設計ボルト張力(242kN),Db:梁せい(550mm),tbf:

梁フランジ厚(19または 22mm),その他の記号は 7.2.4項の (4)を参照のこと.

 (7.7)式は梁の第 1ボルト孔欠損部の降伏モーメントと第 1ボルト前面における伝達摩擦力を考慮し

た梁の曲げ耐力を表している 7.1).(7.6)式右辺では,btMyeにかかる係数により,第 1ボルト位置の作

用モーメントbtMyeを柱フェイス位置の作用モーメントに換算している.(7.6)式の jMyの算定では,ウェ

ブプレート(図 7.14)の曲げ耐力の寄与を無視している.高力ボルト摩擦接合部は,設計用すべり係

図 7.16 外ダイアフラム詳細

(a) A-1, A-2 (ボルト孔無し )

B-1, 2 (CFT)

(b) A-3, B-3 (CFT)

(c) A-4

120

5 200

425

42570 70 50

425200150

32540050

150

150

372.

537

2.5

5

φ 22

外ダイアフラム(PL-22, SN490B)

シーム

4 c5

112.

5

(d) C-1

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数(フランジ:0.7,ウェブ:0.45)を用いて,梁が (7.7)式に達する以前にすべらない設計とした.

 外ダイアフラムの最大耐力に関しては,梁の全塑性モーメント(ボルト孔欠損考慮)に対して接合

部係数以上の余力を持つように設計した 7.1)((7.8)式).

jMu $ a$Lb-D/2-a-c1-e1-(n-1) p

Lb-D/2$bM pe (7.8)

ここで,bMpeは梁の第 1ボルト孔欠損部の全塑性モーメントである.また,接合部係数 aには 1.25

を用いた.

 表 7.9(a)に鋼材の機械的性質,表 7.9(b)にコンクリートの機械的性質を示す.表 7.10に表 7.9(a)

の結果を考慮して求めた各部位の曲げ耐力を示す.各耐力値の説明は表 7.10の下に示すとおりである.

表中の太枠で示す値が,各試験体に予想される耐力である.A-1,B-1,C-1は梁の第 1ボルト孔

欠損部(図 7.14)の塑性化,A-2は梁継手中心位置(図 7.14)の塑性化,A-3,A-4,B-3は外

ダイアフラムの塑性化,B-2は梁切欠き断面位置(図 7.14)での塑性化により耐力が決まることが

わかる.

図 7.17 異形隅肉溶接詳細

12 6

6 c0

異形隅肉溶接

角形鋼管 外ダイアフラム

4

2

1

3

表 7.9(a) 鋼材の機械的性質

部位 鋼種板厚 降伏点 引張強さ 破断伸び 降伏比

適用試験体mm2 N/mm2 N/mm2 % %

梁フランジ外ダイアフラム SN490B 18.9 346 516 28 67 A,Bシリーズ

梁フランジ SN490B 21.7 348 532 29 65 C-1

梁ウェブ SN490B 12.1 363 524 26 69 A,Bシリーズ梁ウェブ SN490B 11.7 404 543 27 74 C-1

角形鋼管柱 BCR295 16.1 389 466 42 83 A,Bシリーズ角形鋼管柱 BCR295 16.2 363 453 45 80 C-1

外ダイアフラム SN490B 22.0 360 520 30 69 C-1*1・・・角形鋼管:0.2%オフセット耐力,その他:下降伏点

表 7.9(b) コンクリートの材料試験結果(Fc30)

圧縮強度 割裂引張強度 ヤング係数 ポアソン比

N/mm2 N/mm2 N/mm2 -

41.4 2.90 36100 0.198

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- 132 -

7. 3. 2 載荷および計測概要

 図 7.18に載荷装置を示す.柱両端をピン支持し,油圧ジャッキにより梁にせん断力を与える.試験

体は図 7.18のように設置し,油圧ジャッキの引張側を正と定義する.正負交番繰返し漸増振幅載荷と

し,図 7.19に示す梁(接合部局部変形を含む)の回転角 ibjで制御する.載荷履歴(Aシリーズ,Bシリー

ズ)は,図 7.20(a)に示すように弾性範囲(bM pe* の半分程度)で正負 1回,ipで正負 1回,2ip,4ip,

6ipで正負各 2回載荷したのち,終局状態が確認できない場合は 6ipを繰り返す.ただし,6ipを 5回

繰り返しても耐力低下が見られない場合は正側へ押し切ることとした.一方,C-1の載荷履歴は,

4i p振幅までは他の試験体と同一とし,6i p振幅を終局に到るまで繰り返す計画とした.結果的には,

6i p振幅を 15回繰り返しても耐力低下が見られなかったので,16サイクル目で油圧ジャッキのスト

ロークの限界まで押し切ることとした.ここで,i pはA-1あるいは C-1の全塑性モーメントbM pe*

に対応する弾性相対回転角であり(図 7.20(b)),(7.9)式で求められる.ただしbM pe* は,梁の第 1ボル

ト位置においてボルト孔欠損を考慮した全塑性モーメント bMpeに達したときの柱フェイスモーメント

であり,表 7.9(a)の結果を考慮するとA-1:1002kNm,C-1:1115kNmとなる(表 7.10).

ip =3EIb

bM pe* $lb

+GAbw

bM pe* /lb

= 0.007755 (rad) (A-1) (7.9a)

ip =3EIb

bM pe* $lb

+GAbw

bM pe* /lb

= 0.008383 (rad) (C-1) (7.9b)

ここで,lb:柱フェイス-載荷点間距離,EIb:梁の曲げ剛性,G:梁のせん断弾性係数,Abw:梁ウェ

ブの断面積である.

表 7.10 梁と外ダイアフラムの曲げ耐力算定値

試験体

梁降伏耐力 *1 梁全塑性耐力 *1 外ダイアフラム降伏曲げ耐力

外ダイアフラム最大曲げ耐力

すべり耐力

bMye* *2

bMy* *3

btMye

* *4bM pe

* *5bM p

* *6jMy jMu Mslip

* *7

kNm kNm kNm kNm kNmA-1 887 - 1033 1002 -

10711470 1203

A-2 - 989 - - 1096 1526 -A-3

887-

1033

1002-

867 1219

1203A-4 639 896B-1 1002

1071 1470B-2 889 1002 1016B-3 - 1002 - 639 896C-1 993 - 1160 1115 - 1160 1625 1311

*1:梁の曲げ耐力算定値はすべて柱フェイス位置に換算したものである.記号に含まれる *は,各断面で算定した耐力を柱フェイス位置に換算していることを表している.

*2:梁の第 1ボルト位置(図 7.14)における降伏曲げモーメント(ボルト孔欠損考慮)の柱フェイス換算値*3:梁の全断面(A-2:梁継手中心位置,B-2:梁切欠き断面位置(いずれも図 7.14))の降伏曲げモーメントの柱フェイス換算値

*4:(7.6)式の右辺に対応する梁降伏曲げ耐力*5:梁の第 1ボルト位置(図 7.14)における全塑性曲げモーメント(ボルト孔欠損考慮)の柱フェイス換算値*6:梁の全断面(A-2:梁継手中心位置,B-2:梁切欠き断面位置(いずれも図 7.14))の全塑性曲げモーメントの柱フェイス換算値

*7:すべり耐力算定位置(図 7.14)における曲げ耐力を柱フェイス位置に換算したもの.表中の算定値は,7.3.3項で述べるすべり係数実験値(0.78(A,Bシリーズ),0.82(C-1))と設計ボルト張力(242kN)を用いて算出している.

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- 133 -

 Aシリーズと Bシリーズの各試験体は,形式が異なるため(ボルト接合/溶接接合,中柱/外柱,

偏心の有無,コンクリート充填の有無,梁の切欠きの有無), bM pe* あるいは外ダイアフラムの耐力も

異なる(表 7.10参照).そのため,試験体によって i pも異なるが本実験ではすべての試験体において

(7.9a)式の値を用いる.

 図 7.19に主要な計測項目を示す.図 7.19の計測以外に,各部位(柱,梁,接合部パネル)の変形,

フランジ接合部のすべり,フランジボルトの張力,外ダイアフラム・梁・ウェブプレート・ウェブ添

板および接合部パネルの歪を測定した.

3000

角形鋼管柱

ピン ピン

横補剛位置

横補剛位置

3070

溶接組立 H形断面梁

Qb

lb

EIb, GAbw

Qb

ibj

i j

Mbj

R

R

ibj

i j

Qb

:梁回転角(接合部局部変形含む):接合部局部回転角:層間変形角:梁端モーメント:梁せん断力

Mbj

6

4

2

-2

-4

-6

1

-1

ibj /ip

終局状態…

bM pe*

ip

梁端モーメント

梁の回転角ibj

Mbj

図 7.18 載荷装置 図 7.19 計測項目と定義

(b) bM pe* に対応する弾性相対回転角 ip(a) 載荷履歴

図 7.20 載荷計画

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- 134 -

7. 3. 3 すべり試験

 すべり試験によりアルミ溶射面のすべり係数を調べた.すべり試験は,ボルト 1列とボルト 3列に

ついて,部分架構試験体と同一溶射施工条件で各 2体実施した.試験体とすべり計測位置を図 7.21に

示す.すべり係数の実験結果を表 7.11に示す.表より 0.2mm時すべり係数 0.2n sとすべり係数 n sは

ボルト 3列の方が小さい.以下,すべり耐力の検討には nsを用いることとする.C-1試験体の場合,

ボルト 3列の試験を行っていないので,ボルト 1列の n sを用いることとするが,表 7.11より 3体の

うち 1体のすべり係数が極めて高い値を示しているので,以下では低い方の 2つの平均値(→の後の

数値)を用いる.

940

290 230 10 120 290

120

230

すべり:●間相対変位35

すべり:●間相対変位(パイ型変位計による)

780

250 150 10 120 250

120

35 すべり:●間相対変位

添板:PL-16, SM490A母材:PL-19, SN490B

添板:PL-16, SM490A母材:PL-22, SM490A

A, Bシリーズ

添板:PL-19, SM490A母材:PL-22, SN490B

C-1

A, Bシリーズ

図 7.21 すべり試験体

(a) ボルト 1列試験体

(b) ボルト 3列試験体

1列A,Bシリーズ C-1

0.2ns ns 0.2ns ns

n1-1 0.87 0.88 1.04 1.04

n1-2 0.82 0.82 0.82 0.82

n1-3 - - 0.83 0.83

平均 0.85 0.85 0.90 0.90→ 0.82*2

3列 0.2ns 0.2ns,pi*1 ns

n3-1 0.66 0.71 0.77

n3-2 0.71 0.71 0.79

平均 0.69 0.71 0.78

記号0.2n s:0.2mm時すべり係数(すべりが 0.2mmに達したときの荷重を初期ボルト張力と摩擦面の数で除した無次元量)ns:ピーク荷重時すべり係数(ピーク荷重を初期ボルト張力と摩擦面の数で除した無次元量)*1:添字に piは,パイ形変位計の変位が 0.2mmに達したときのすべり係数*2:n1-1が他に比べて高すぎるので,除外して求めた平均値

表 7.11 すべり係数の実験結果

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- 135 -

7. 3. 4 実験結果および考察

(1) 履歴性状と損傷状況

 図 7.22~ 7.24に,梁端モーメントMbjと梁回転角 ibjの関係を示す.図 7.22は 2ip振幅まで,図 7.23

は 4ip振幅まで,図 7.24は載荷終了までを示している.Mbjと ibjの定義は図 7.19に示すとおりである.

(a) A-1(図 7.22(a),7.23(a),7.24(a))

 i p振幅までは履歴性状に明瞭な非線形挙動は見られず,わずかにループを描く程度である.2i p振

幅では,900kNm付近から剛性の低下が激しくなるが,これは梁の第 1ボルト近傍における塑性化,

および角形鋼管角部近傍の外ダイアフラムの局所的な塑性化によるものである.また 2i p振幅時に外

ダイアフラム-添板間のすべりが 0.2mm以上生じたものの,履歴には影響せず安定した紡錘形の履

歴性状を示している.4i p振幅の正側 1サイクル目において,外ダイアフラム-添板間と梁フランジ

-添板間においてすべりが発生した後は,スリップ性状を含む履歴に移行した.6i p振幅では,ボル

ト孔周辺(特に外ダイアフラム側)の支圧変形が進行し,4i p振幅時に比べ最大変形時の荷重が少し

上昇する.6i p振幅は 5回繰り返したものの,耐力低下は見られず安定した履歴性状を示している.

その後,正側に 0.1rad程度まで押し切った.圧縮側の梁フランジと外ダイアフラムが接触することに

より荷重が上昇し始め,鋼管壁の面外変形は目視でも明瞭に認識できるほど進展するが,耐力が低下

するには到らなかった.載荷後の接合部の観察より,梁フランジ第 1ボルト孔欠損部での塑性変形に

よるくびれ(写真 7.5(a)),外ダイアフラム端部のスリットの開き(写真 7.5(b)),および外ダイアフ

ラム-ウェブプレート溶接部の端部の破断(写真 7.5(c))が確認された.

(b) A-2(図 7.22(b),7.23(b),7.24(b))

 2ip振幅までの挙動はA-1とほぼ同じである.A-2はフランジ接合部でのすべりが生じないため,

4i p振幅においても安定した紡錘形の履歴性状を示している.6i p振幅の負側 2サイクル目において,

外ダイアフラムと梁フランジの溶接部始終端部を起点とする亀裂が外ダイアフラム側へ進展し一部破

断したが,その後は最大変形まで荷重が上昇したので正側 3サイクル目の載荷を行った.前サイクル

の最大変形付近で負側と同様に外ダイアフラムに一部破断が生じた.それ以降の荷重はほぼ横ばいで,

上記の破断面が拡大していき最終的にはスリットまで貫通して(写真 7.6)耐力が大きく低下した.

(c) A-3(図 7.22(c),7.23(c),7.24(c))

 2i p振幅までは紡錘形の履歴性状を示す.ただし,偏心側の外ダイアフラムの塑性化が著しく,2i p

振幅の最大変形時の耐力は,A-1,A-2に比べて低い.4ip振幅でもA-1やA-2に比べて耐力が

低いため,すべりの影響は 2サイクル目の負側でわずかに現れる程度であり,ほぼ紡錘形の履歴性状

を示しているといえる.6i p振幅の正側 4サイクル目において,引張側フランジの偏心側鋼管角部と

溶接部の止端部から鋼管板厚方向へ亀裂が進展するのを確認した.その後,正側 5サイクル目におい

て 0.04rad付近で鋼管が破断し,0.046radで偏心側外ダイアフラムが破断した(写真 7.7(a)).それ以

降は耐力がほぼ横ばいとなったので載荷を終了した.載荷後の観察から,ウェブプレートの面外変形

(写真 7.7(b)),上フランジ側の外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部の端部に亀裂を確認した.

(d) A-4(図 7.22(d),7.23(d),7.24(d))

 A-1と同様に 2i p振幅までは安定した紡錘形の履歴性状を示し,4i p振幅ではスリップ性状を含む

履歴に移行する.6i p振幅においてもA-1と同様に耐力低下は見られず安定した履歴性状を示した.

その後の押切では,梁フランジと外ダイアフラムの接触後,荷重の上昇に伴って圧縮側の外ダイアフ

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ラム(外壁側)に局部座屈が発生した(写真 7.8(a))が,耐力の低下には到らなかった.載荷後の観

察より,上下の外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部の端部で亀裂(写真 7.8(b)),梁フランジの第

1ボルト孔欠損部での塑性変形によるくびれ(写真 7.8(c))を確認した.

(e) B-1(図 7.22(e),7.23(e),7.24(e))

 A-1に比べて耐力が高いため 2i p振幅の負側 1サイクル目において明瞭なすべりが生じた.その

ため 2ip振幅の 2サイクル目からはスリップ性状が顕著に現れる.4ip振幅以降はA-1と同様にスリッ

プ性状を含む履歴を示し,6i p振幅の載荷を 5回行った後も耐力低下は見られなかった.押切におい

ても最後まで耐力低下は見られなかった.載荷後の観察より,梁フランジ第 1ボルト孔欠損部の塑性

化によるくびれは全試験体の中で最も顕著に現れていた(写真 7.9(a)).また梁フランジに局部座屈の

発生(写真 7.9(b)),外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部の端部に亀裂の発生を確認した.なお,

圧縮側の鋼管壁に面外変形が生じることはなかった.

(f) B-2(図 7.22(f),7.23(f),7.24(f))

 B-1よりも梁フランジの幅を小さく設定したため,2i p振幅においてすべりは発生せず紡錘形の履

歴性状を示している.4ip振幅の 2サイクル目以降はスリップ性状を含む履歴に移行する.6ip振幅で

は,B-1と同様に耐力低下は見られず安定した履歴を示した.その後の押切では 0.06rad付近で梁に

横座屈が生じて終局を迎えた(写真 7.10).載荷後の観察より,外ダイアフラム-ウェブプレート溶

接部の端部に亀裂が認められた.

(g) B-3(図 7.22(g),7.23(g),7.24(g))

 A-3と同様に偏心側の外ダイアフラムの塑性化が目立ったが,耐力は A-4と同程度を示した.

4i p振幅以降もA-4と同等の履歴性状を示している.コンクリートの存在により無偏心タイプの外

ダイアフラムと同等の性状を発揮したといえる.6i p振幅の正側 4サイクル目において偏心側の鋼管

角部と溶接部の止端部に亀裂の発生を確認したが,5サイクル目を経ても亀裂の進展はなく,履歴性

状にも変化は見られない.押切において 0.1rad直前で亀裂が鋼管板厚方向に貫通し耐力低下が見られ

た(写真 7.11(a)).載荷後の観察より,A-3と同様にウェブプレートに面外変形が確認された(写真

7.11(b)).また,外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部の端部に亀裂が確認された.梁フランジ第 1

ボルト孔欠損部において塑性変形によるくびれが見られたが,特に反偏心側が顕著であった.

(h) C-1(図 7.22(h),7.23(h),7.24(h))

 ip振幅までは概ね弾性挙動を示している.2ip振幅では,1000kNm付近から剛性が低下しはじめる.

また,2ip振幅時にすべりの影響は現れず,安定した紡錘形の履歴性状を示している.4ip振幅の正側

1サイクル目において,外ダイアフラム-添板間と梁フランジ-添板間においてすべりが発生した後

は,スリップ性状を含む履歴に移行した.6i p振幅では,ボルト孔周辺(特に外ダイアフラム側)の

支圧変形が進行し,4i p振幅時に比べ最大変形時の荷重が少し上昇する.6i p振幅を 15回繰り返す間

に,ピーク時の耐力が多少低下しているが,これはボルト孔の支圧や周辺の塑性変形によるボルト孔

の拡大によるものと考えられる.16サイクル目で 0.1radのやや手前まで押したところで,外ダイア

フラム-添板接合部の第 3ボルト(柱から最も離れた位置のボルト)が破断した(図 7.24(h)の▼印,

写真 7.12).その後,除荷の最中に第 2ボルトも破断した(写真 7.12).

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-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.02 -0.01 0.01 0.02

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

図 7.22 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係(2ip振幅まで)

(a) A-1

(c) A-3

(b) A-2

(d) A-4

(e) B-1

(g) B-3

(f) B-2

(h) C-1

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-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

図 7.23 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係(4ip振幅まで)

(a) A-1

(c) A-3

(b) A-2

(d) A-4

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

-0.04 -0.02 0.02 0.04

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

(e) B-1

(g) B-3

(f) B-2

(h) C-1

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-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

図 7.24 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係

(a) A-1

(c) A-3

(b) A-2

(d) A-4

(e) B-1

(g) B-3

(f) B-2

(h) C-1-1,500

-1,000

-500

500

1,000

1,500

2,000

-0.05 0.05 0.1 0.15

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

外ダイア-梁溶接部始終端で破断

外ダイア-梁溶接部始終端で破断

外ダイアでスリットまで亀裂貫通

偏心側鋼管壁に亀裂貫通

偏心側外ダイアが破断

梁が横座屈

偏心側鋼管壁に亀裂貫通

外ダイアの第 3ボルトが破断

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(a) 梁第 1ボルト孔欠損部の塑性変形によるくびれ

写真 7.6 外ダイアフラム-梁フランジ溶接部の破断(A-2)

写真 7.5 A-1の損傷状況

(b) 外ダイアフラム端部のスリットの開き

(c) 外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部端部の破断

写真 7.7 A-3の損傷状況

(a) 偏心側の鋼管,外ダイアフラムの破断 (b) ウェブプレートの面外変形

写真 7.8 A-4の損傷状況

(a) 外壁側の外ダイアフラムの局部座屈

(b) 外ダイアフラム-ウェブプレート溶接部端部の亀裂

(c) 梁第 1ボルト孔欠損部の塑性変形によるくびれ

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写真 7.9 B-1の損傷状況

写真 7.10 梁の横座屈(B-2)

(a) 梁第 1ボルト孔欠損部の塑性変形によるくびれ

(b) 梁フランジの局部座屈 (c) 試験体全景

写真 7.11 B-3の損傷状況

(a) 偏心側の溶接部の亀裂,鋼管板厚方向への亀裂貫通

(b) ウェブプレートの面外変形

写真 7.12 高力ボルトの破断(C-1)

第 2ボルト 第 3ボルト

柱 梁

外ダイアフラム

添板

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-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

(2) 梁端モーメント - 梁回転角関係骨格曲線,弾性剛性,耐力

 図 7.25に梁端モーメントMbj-梁回転角 i bj関係骨格曲線を示す.各骨格曲線には,弾性剛性計算

値 Kcalを一点鎖線,試験体の降伏耐力実験値 expMyを○印,降伏耐力計算値を calMyを●印,外ダイア

フラムの降伏耐力計算値 jMyを▼印,外ダイアフラムの最大耐力計算値 jMuを▽印,全塑性耐力計算

値bM pe* またはbM p

*を◇印,すべり耐力計算値Mslip* を◆印で併記している.ここで,Kcalは柱フェイス

-梁継手間を梁と同一断面,柱フェイス位置における梁の接合条件を剛接と仮定し,曲げ変形とせん

断変形を考慮して求めた.expMyはMbj-ibj関係骨格曲線における接線勾配が初期剛性の 1/3となると

きの耐力,bM pe* ,bM p

*は梁の第 1ボルト位置または梁継手中心位置(図 7.14)における梁の全塑性モー

メント(ボルト孔欠損考慮)を柱フェイス位置に換算した曲げ耐力,Mslip* は外ダイアフラムの第 1ボ

ルト位置(図 7.14)におけるすべり耐力を柱フェイス位置に換算した曲げ耐力である.表 7.12に弾性

剛性と耐力の実験値と計算値を示す.また,calMyは各部位の降伏曲げ耐力の最小値で定義し,次式で

与えられる.

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

図 7.25 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係骨格曲線

(a) A-1

(g) B-3

(f) B-2(e) B-1(d) A-4

(c) A-3(b) A-2

 実線 :Mbj-ibj関係

一点鎖線:Kcal(局部変形無視)

 破線 :Kcal(局部変形考慮)

○:expMy,▼:jMy,▽:jMu

●:calMy,◇:bM pe* またはbM p

*,

◆:Mslip*

(h) C-1

-1,500

1,500

-0.03 0.03

Mbj [kN$m]

ibj [rad]

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calMy = min {bMy* , b

tMye* , bM pe

* , bM p* , jMy , Mslip

* } (7.10)

calMyは表 7.10のグレーのハッチで示す値に対応している.なお,図 7.25において,例えば jMyが

calMyに一致する場合は,▼印はプロットしないこととした.

(a) 弾性剛性

 梁の弾性剛性実験値 Kexpは弾性剛性計算値 Kcalとよく一致し,その差は 15%以内に収まっている.

このように鋼管壁の局部変形による剛性低下を無視したにもかかわらず Kcalと Kexpがよく一致した

理由として,柱フェイス-梁継手間に梁と同一断面を仮定することにより,ダイアフラムの拡幅によ

る剛性の増加および添板による剛性の増加を無視していることが挙げられる.参考のためにA-1~

A-4,C-1の局部変形に文献 7.2)の評価式を,B-1~ B-3の局部変形に文献 7.3)の評価式を適用

して算定した梁の弾性剛性を破線で併記する.Kcal/Kexp=1.15であるA-2,A-3についてはよく一

致しているが,それ以外の試験体に関しては計算値が実験値を下回っている.なお,局部変形の影響

については次節で述べる.

(b) 耐力

 表 7.12に降伏曲げ耐力の計算値と実験値の比 calMy/expMyを示す.なお,expMyには正側と負側の実

験値の平均値を採用した.calMy/expMyは B-3を除いて 0.84~ 1.04を示し,ほぼ想定どおりの降伏曲

げ耐力実験値が得られたといえる.ただし,CFT・偏心タイプの B-3に関しては 28%の過小評価を

与える結果となっている.B-3はコンクリートを充填することにより圧縮側の外ダイアフラムの耐

力が上がり,A-4と同等の降伏曲げ耐力を示している.

 梁の保有耐力に相当するbM pe* あるいはbM p

*のときの梁回転角は 0.01~ 0.015rad程度(ただしA-3

を除く)であり,残留回転角で考えると 0.005rad以下に収まる.接合部係数に相当する expMmax/bM pe*

は 1.25以上(ただしA-3を除く)を示しており,設計時に想定した耐力を上回ることが確認できる.

また,外ダイアフラムの接合ボルトの破断で決まる最大曲げ耐力を算定すると,1672kNm(ボルトの

引張強さには公称値を使用した)となり C-1の expMmaxとよく一致している.

表 7.12 弾性剛性・耐力の実験値と計算値

試験体

弾性剛性 耐力

実験値 計算値

Kexp

Kcal実験値 計算値

expMy

calMy

bM pe*

expMmax

Kexp Kcal expMy (+) expMy (-) expMmax calMy bM pe* or bM p

*

A-1 125000 129000 1.03 992 -942 1559 ↑ 1002 1002 1.04 1.56↑

A-2 112000 129000 1.15 975 -962 1427 989 1096 1.02 1.30

A-3 112000 129000 1.15 773 -745 1231 639 1002 0.84 1.23

A-4 121000 129000 1.07 905 -855 1598 ↑ 867 1002 0.99 1.59↑

B-1 131000 129000 0.98 1131 -1020 1869 ↑ 1002 1002 0.93 1.87↑

B-2 117000 114000 0.97 1014 -940 1333 889 1002 0.91 1.33

B-3 119000 129000 1.09 949 -955 1592 639 1002 0.67 1.59

C-1 119000 133000 1.12 1115 -1010 1660 1115 1115 1.00 1.49

【記号】Kexp:弾性載荷の± peakまでのデータから最小二乗近似により得た直線の傾きexpMmax:最大耐力実験値,ただし終局を確認できなかった試験体には↑を付記しているcalMy/expMyの算定には,expMy (+)と expMy (-)の平均値を採用している

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- 144 -

(c) 変数別比較

 図7.26にMbj-ibj関係骨格曲線を実験変数毎に比較して示す.また,図7.27に弾性剛性の変数別比較,

図 7.28に耐力の変数別比較を示す.図 7.27の○印は弾性剛性実験値 Kexp,●印は弾性剛性計算値 Kcal

である.図 7.28の○印は降伏耐力実験値 expMy,●印は降伏耐力計算値 calMy,□印は最大耐力実験値

expMmaxである.中空,CFTに限らず,偏心タイプの接合部は他に比べて弾性剛性と耐力が明瞭に下

がることがわかる.

(d) 中空と充填の違いについて

 図 7.27や 7.28より,弾性剛性と耐力はコンクリートを充填する方が高くなる.弾性剛性実験値に

差が現れるのは,コンクリートによる柱の剛性の増大と鋼管壁の局部変形の抑制であると考えられる.

耐力実験値に差が現れるのは,外ダイアフラムの局所的な塑性化による剛性低下が CFTに比べて中

空の方が大きく,その結果,接線勾配が初期剛性の 1/3に低下する時期が早まると考えられる.

(3) 梁の挙動に及ぼす鋼管壁の局部変形とすべりの影響

 前節までで検討した梁には,鋼管壁の局部変形とボルト接合部のすべりや支圧変形の影響が含まれ

る.本節では梁の挙動に及ぼす局部変形とすべりの影響について検討する.図 7.29に梁の変形,鋼管

壁の局部変形,ボルト接合部のすべりの比較図を示す.ここで,鋼管壁の局部変形は図 7.19に示す i j

であり,ボルト接合部のすべりは図 7.30に示す位置で計測した梁フランジ-添板間あるいは外ダイア

フラム-添板間のずれ量(計測値にはすべり以外に支圧変形やボルト孔近傍の塑性変形も含まれるが,

ここでは単にすべりと称している)を用いて柱フェイス位置での回転角に換算した値である.図 7.29

の横軸は,各変形の梁回転角 i bjに占める割合を%で表示したものであり,縦軸は各載荷振幅ピーク

実線:A-1破線:B-1

-1,500

1,500

-0.03 0.03

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

図 7.26 梁端モーメントMbj-梁回転角 ibj関係骨格曲線

(a) 接合方法(ボルト接合/溶接接合)の比較

(d) 中空と CFTの比較(中柱)

(c) CFT試験体の比較

(e) 中空と CFTの比較(偏心)

 実線 :A-1 破線 :A-3一点鎖線:A-4

-1,500

1,500

-0.03 0.03

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

実線:A-1破線:A-2

-1,500

1,500

-0.03 0.03

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

 実線 :B-1 破線 :B-2一点鎖線:B-3

-1,500

1,500

-0.03 0.03

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

(b) 柱の用途(中柱/偏心外柱/無偏心外柱)の比較

実線:A-3破線:B-3

-1,500

1,500

-0.03 0.03

ibj [rad]

Mbj [kN$m]

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- 145 -

中空 充填

2

1

0中柱 外柱(偏心)

2

1

0中柱 外柱

(無偏心)外柱

(偏心)

2

1

0 中空 充填

2

1

0ボルト接合

溶接接合

2

1

0

M[#

103kN$m

]

中柱 外柱(偏心)

1.5

1

0.5

0ボルト接合

溶接接合

1.5

1

0.5

0中空 充填

1.5

1

0.5

0中空 充填

1.5

1

0.5

0中柱 外柱

(無偏心)外柱

(偏心)

1.5

1

0.5

0

○:Kexp

●:Kcal

図 7.27 弾性剛性の変数別比較

図 7.28 耐力の変数別比較

(a) 中空 (b) 充填 (c) 中柱 (d) 偏心 (e) 中柱

(a) 中空 (b) 充填

○:expMy

●:calMy

□:expMmax

K[#

105kN

/rad

]

(c) 中柱 (d) 偏心 (e) 中柱

図 7.29 梁,局部変形,すべりの比較

(a) A-1

(d) B-1(c) A-3

(b) A-2

0 100

ip

2ip

4ip

6ip

変形分担率(%)

0.1rad

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

弾性

すべり

局部変形

0 100

ip

2ip

4ip

6ip

変形分担率(%)

+

-

+

-

+

-

+

-

+

-

+

-

+

-

弾性

局部変形

0 100

ip

2ip

4ip

6ip

変形分担率(%)

+-

+-+-

+-+-+-

+-+-

+-+

弾性

すべり

局部変形

0 100

ip

2ip

4ip

6ip

変形分担率(%)

0.1rad

+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+

弾性

すべり

局部変形

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- 146 -

-1,500

1,500

-0.02 0.02

Mbj [kN$m]

islip [rad]

-1,500

1,500

-0.02 0.02

Mbj [kN$m]

islip [rad]

-1,500

1,500

-0.02 0.02

Mbj [kN$m]

islip [rad]

時の結果(正側を+,負側を-で表記)を表している.なお,弾性時の変形は,各部位の弾性剛性

実験値より算出した.図 7.29より得られる知見を以下にまとめる.

1) 弾性載荷時の結果より,中空柱の場合,局部変形は 2~ 3割程度,CFT柱の場合,2割弱を

占めている.

2) A-2(溶接接合)の局部変形は,2ip振幅以降では 3~ 4割を占めている.

3) 高力ボルト接合タイプの試験体では,2i p振幅以降の塑性振幅時においてすべりの影響を受け

るが,その程度は試験体によって異なる.A-1(中空,中柱)の場合,2ip~ 4ip振幅で徐々

にすべりの割合が増え 6i p振幅時には 5割程度に達している.A-3(中空,偏心)の場合,

4ip振幅で徐々にすべりの割合が増え 6ip振幅時には 4割程度に達している.B-1(CFT,中

柱)の場合,2ip振幅からすべりの影響が顕著に現れ,4ip振幅以降は 6割程度に達している.

 梁には局部変形の影響による 2割程度の剛性低下が考えられる(知見 1)参照)が,前節で述べたよ

うに,外ダイアフラムの拡幅部やボルト接合部の添板により剛性の増大を見込めるため,設計上は梁

端(柱フェイス)を剛接として剛性を算定してよいと考えられる.ただし,(7.6),(7.8)式によって外

ダイアフラムの耐力を十分に確保しておく必要がある(7.2節では外ダイアフラムの耐力が不足した

ために,剛性計算値が実験値を 3~ 4割高く評価する結果となった).

 図 7.31に梁端モーメントMbjとすべりによる回転角 islipの関係を示す.ここで,islipは図 7.30で定

義される値である.図 7.31に一点鎖線および破線ですべり耐力計算値を併記する.ここで,一点鎖線

のMslip* は初期導入ボルト張力(試験体によって計測本数は異なる)の平均値とすべり係数実験値 0.78

(表 7.11参照)を用いて算定した値,破線の rMslip* は設計ボルト張力(242kN)と設計用すべり係数 0.7

を用いて算定した値である.図 7.31より,Mslip* は rMslip

* を 1割程度上回っている.これは,7.3.3項の

図 7.30 ボルト接合部のすべり測定位置とすべりによる回転角 islipの定義

uslipd uslip

b

l1

上下のずれの和:l 2

db

上下のずれの和:

islip =lb

lb-l1$

db

uslipd

+lb

lb-l2$

db

uslipb

計測位置

islip

uslipb

uslipd 計測位置

すべりによる回転角

lb

uslipd /db

uslipb /db

(a) A-1 (b) A-3 (c) B-1

図 7.31 梁端モーメントMbj-すべりによる回転角 islip関係

4ip

2ip

4ip

4ip

2ip

一点鎖線:Mslip*

 破線 : rMslip*

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- 147 -

すべり係数実験値(0.78)と設計用すべり係数(0.7)の差に対応する. rMslip* は i slipが急激に増える付

近と概ね対応しているので,設計用すべり係数である 0.7より低い荷重ではすべりは発生しなかった

といえる.したがって,すべり係数 0.7による設計が妥当であったと判断される.

 外ダイアフラム側のボルト接合部と梁側のボルト接合部では,作用モーメントの大きな外ダイアフ

ラム側で接合部のすべり耐力が決まる場合が多いと考えられる.したがって,外ダイアフラムの降伏

曲げ耐力に対するすべり耐力の比( rMslip* / jMy)によって,すべり i slipが急増する時期も様々である.

例えば,4i p振幅ですべりの影響が履歴に顕著に現れたA-1の場合(図 7.23(a)参照)は rMslip* / jMy

=1.05であり,4i p振幅でもすべりの影響がほとんど現れなかったA-3の場合(図 7.23(c)参照)はrMslip

* / jMy =1.88である.以上より, rMslip* / jMyが大きいほどすべりの影響が顕著に現れる振幅も大き

くなることがわかる.また B-1の場合, rMslip* / jMy =1.05でありすべりの影響が 2ip振幅で顕著に現

れた(図 7.22(e)参照).B-1のすべりの時期がA-1に比べて早まった原因として,同一振幅(2ip)

で載荷した場合に,A-1に比べて剛性が高いために i bj=2i pにおける荷重が大きくなったことが挙

げられる(2ip振幅の正側 1サイクル目のA-1およびB-1のピーク荷重は,それぞれ 1129kNm (0.99),

1166kNm (0.96)である.ここで,( )内はすべり耐力をピーク荷重で除した値を表す).

(4) 塑性変形能力

 梁の変形能力を塑性変形および履歴面積により評価する.塑性変形による累積塑性変形倍率を h,

履歴面積による累積塑性変形倍率を hEとする.h,hEを次式で求める.

h =ip

iibj(p)!

(7.11a)

hE =bM pe

* $ip

Wi! (7.11b)

ここで, iibj(p)! :図 7.32に示す各サイクルにおける梁回転角の塑性変形成分の累積値, Wi! :Mbj

- i bj関係における履歴面積(図 7.32)の累積値である.i pの値は,A,Bシリーズに (7.9a)式の値

(0.007755rad),C-1に (7.9b)式の値(0.008383rad)を用いる.なお,h,hEの算定では,溶接部の

亀裂や梁の横座屈の発生により荷重がピークを示した場合はその時点まで,それ以外は載荷終了まで

のデータを採用している.h,hEの算定結果を表 7.13に示す.外ダイアフラムと梁を溶接接合した

A-2は,6ip振幅の 2サイクル目で溶接部に亀裂が発生したため,他の試験体に比べて変形能力は劣

ibj

Mbj

i+1ibj(p)

i+2ibj(p)

iibj(p)

Wi

Wi+1

Wi+2

表 7.13 累積塑性変形倍率

試験体 h hE hE/h

A-1 128↑ 105 ↑ 0.83

A-2 49.2 48.0 0.98

A-3 106 88.0 0.83

A-4 131 ↑ 112 ↑ 0.85

B-1 134 ↑ 113 ↑ 0.84

B-2 107 88.2 0.83

B-3 131 108 0.82

C-1 296 207 0.70※↑:終局状態を確認していないため,変形能力は上記の値より大きいことを表す.

図 7.32 各サイクルの塑性塑性回転角 iibj(p)

と履歴面積Wiの定義

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- 148 -

るが,ボルト接合による試験体はいずれも hで 100以上,hEで 90~ 110程度を示した.また,ボル

トの破断で決まった C-1は h=296,hE=207であり,外ダイアフラムが十分な耐力を有している場

合には非常に高い変形能力を持っていることがわかる.以上の結果は,従来の通しダイアフラムの変

形能力 7.4)と比べても同等以上の高い性能といえる.本接合形式では,前節でも述べたようにすべり

の影響が履歴に現れるため hEは hの 7~ 8割程度である.一方,溶接接合の場合 hと hEはほぼ同じ

値である.

(5) ウェブプレートのモーメント負担率とウェブの伝達効率について

 図 7.33にウェブプレート周辺の図と歪ゲージ貼付位置を示す.外ダイアフラム形式柱梁接合部の曲

げ耐力を算定するときに,ウェブプレートの曲げ耐力への寄与を無視した(7.3.1項参照).ここでは,

ウェブプレートが負担する曲げモーメントを歪ゲージより算出し,上記の考え方が妥当であるかを確

認する.図 7.34にウェブプレートのモーメント負担率Mwp/Mbjと載荷振幅の関係を示す.ここで,モー

メント負担率とは,梁端モーメントに対するウェブプレート負担モーメントの比で定義されるもので

ある.凡例は図中に示すとおりである.試験体によりバラツキはあるものの,接合形式(高力ボルト

接合,溶接接合),コンクリート充填の有無および偏心の有無によらずMwp/Mbjは数%程度である.

したがって,ウェブプレートの曲げ耐力を無視して外ダイアフラム形式柱梁接合部の曲げ耐力を算定

してよいといえる.

 梁継手の設計では,従来の設計法 7.1)にしたがってウェブの伝達効率 z(梁ウェブに作用している

曲げモーメントに対するウェブ添板に作用している曲げモーメントの比)を 0.4とした.そこで分割

外ダイアフラムと梁の継手における伝達効率がどの程度であるかを検討する.ウェブ添板に貼付した

歪ゲージ(図 7.35)より得られたウェブ添板負担モーメントを用いて算出した伝達効率 zと載荷振幅

の関係を図 7.36に示す.ただし,伝達効率 zは次式で求めた.

z =

M j$ Ib

Ibw

M jw

(7.12)

ここで,Mj:梁継手中心位置(図 7.14)に作用する曲げモーメント,Mjw:ウェブ添板が負担する曲げモー

メント,Ib:梁の断面 2次モーメント,Ibw:ウェブの断面 2次モーメントである.(7.12)式の分母は,

図 7.33 ウェブプレートの歪ゲージ貼付位置

0

0.05

0.1

A-1(正側)A-1(負側)A-2(正側)A-2(負側)A-3(正側)A-3(負側)B-1(正側)B-1(負側)

Mwp/Mbj

ip 2ip 4ip 6ip弾性 載荷振幅

図 7.34 ウェブプレートのモーメント負担率Mwp/Mbjと載荷振幅の関係

50

68.5

7575

7575

75

外ダイアフラム

角形鋼管柱

ウェブプレート

wp1

wp2

wp3

wp4

wp5

wp6

68.5

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- 149 -

Mjが作用しているときに,平面保持を仮定して算出したウェブ負担モーメントを表している.

図 7.36より弾性~ 2i pでは z=0.4~ 0.5程度を示しており,設計用のウェブ伝達効率 0.4とほぼ対応

している.

 図 7.34の結果から,ウェブプレートを介した鋼管壁への曲げ伝達はほとんど期待できないことがわ

かった.したがって,ウェブ添板が負担する曲げモーメントはウェブプレート-外ダイアフラム間溶

接部を介して伝達させなければならない.ウェブプレート-外ダイアフラム間溶接部は,梁が最大耐

力(接合部係数×保有耐力 7.1))に達しても破断しないことが必要である.この場合のウェブ伝達効率

z'(梁ウェブに作用している曲げモーメントに対するウェブ添板に作用している曲げモーメントの比)

は次式で与えられる.

lz =

M j$bZ p

bZwp

M jw

(7.13)

ここで,bZp:梁の塑性断面係数,bZwp:梁ウェブの塑性断面係数である.(7.13)式の分母は,Mjが作

用しているときに,全塑性状態を仮定して算出したウェブ負担モーメントを表している.

図 7.36より 4ip以降では z'=0.5~ 0.6程度を示している.なお,試験体の設計時には z'=1.0を仮定

したので,ウェブプレート-外ダイアフラム間溶接部において重大な(耐力劣化を伴うような)損傷

は認められなかった.

(6) 外ダイアフラムの歪分布

 本節では,外ダイアフラムの歪挙動について検討する.図 7.37,7.38に外ダイアフラムの歪分布を

示す.図の横軸は歪ゲージの記号,縦軸は歪 (%)を表す.歪ゲージの貼付位置と記号は図 7.39に示

すとおりであり,正側載荷時に引張力を受ける外ダイアフラムに歪ゲージを貼付した.図 7.37にはA

シリーズ,図 7.38には Bシリーズの結果を示している.図 7.37,7.38の (a)~ (e)は各載荷振幅ピー

ク時の結果を表す.図 7.37,7.38より得られる知見を以下に列挙する.

1) 歪は鋼管角部付近に集中し,鋼管中央付近では 6ipに到るまで非常に小さい(図 7.37,図 7.38).

2) 中空の場合,引張時の歪と圧縮時の歪はほぼ対称に生じている(図 7.37).

3) A-3(中空,偏心)は,偏心側の歪(d7~ d9)が大きく生じており i p時でも 1%程度に達

している(図 7.37(b)).

図 7.36 ウェブの伝達効率と載荷振幅の関係(短期許容耐力設計:z,保有耐力設計:z')

0

0.5

1

ip 2ip 4ip 6ip弾性 載荷振幅

伝達効率

lz (B-1)

z (B-1)

lz (A-1)

z (A-1)

z=0.4〜 0.5

z'=0.5〜 0.6

図 7.35 ウェブ添板の歪ゲージ貼付位置

外ダイアフラム

ウェブプレート

ws1

ws2

ws3

ws4

ws5

ws6

ウェブ添板7575

7575

75

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- 150 -

-0.5

0

0.5

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-4

-2

0

2

4

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-2

-1

0

1

2

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-6

-4

-2

0

2

4

6

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-8

-4

0

4

8

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-0.5

0

0.5

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-4

-2

0

2

4

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-2

-1

0

1

2

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-6

-4

-2

0

2

4

6

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

-8

-4

0

4

8

position

d1 d3d2 d4 d5 d6 d7 d8d9

鋼管角部

鋼管中央

鋼管角部(偏心側)

歪(%

)

図 7.37 外ダイアフラムの歪分布(Aシリーズ)

図 5.38 外ダイアフラムの歪分布(Bシリーズ)

黒塗り:正側載荷

白塗り:負側載荷

○:A-1

◇:A-2

□:A-3

▽:A-4

黒塗り:正側載荷

白塗り:負側載荷

○:B-1

◇:B-2

□:B-3

(a) 弾性 (b) ip (c) 2ip

(d) 4ip (e) 6ip

(a) 弾性 (b) ip (c) 2ip

(d) 4ip (e) 6ip

図 5.39 外ダイアフラムの歪ゲージ貼付位置と記号

30

1005050

30

5050 505050 5020

30

50 10050 100 5020

d1d2 d9d8d7d6d5d4d3d1d2 d5d3 d1d2 d9d8d7d5d3

偏心側反偏心側 外側内側

(a) 中柱 (b) 偏心・外柱 (c) 無偏心・外柱

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- 151 -

4) A-4(無偏心,外柱)は,外側(図 7.39参照)の歪が内側(図 7.39参照)に比べて大きいも

のの,A-3ほどの歪は生じていない(例えば図 7.37(d).なお,図 7.37(e)ではA-3の歪ゲー

ジ d8,d9が切れたためデータはプロットしていない).

5) CFTの場合も,引張側の歪挙動は中空とほぼ同じである(図 7.38).

6) CFTの圧縮側の歪については,鋼管面外変形がコンクリートによって拘束されるため,鋼管

角部付近の歪集中は緩和され,鋼管中央付近にも角部と同程度の圧縮歪が生じている(図 7.38).

7) B-3(CFT,偏心)は,偏心側の歪(d7~ d9)が 2ipで 1%程度の圧縮歪を生じるが,以降

の振幅では歪の増加が見られない.これはA-3(中空,偏心)とは異なる性状であり,同じ

振幅を経たときの累積歪は B-3の方が小さいことを表している.これが,A-3と B-3の

変形能力に差(表 7.12参照)が生じた要因であると考えられる.

(7) 接合部パネルの歪挙動

 図 7.40に接合部パネルのせん断力 Qpと最大せん断歪 c pの関係を示す.c pは,接合部パネルの中

央に貼付した 3軸歪ゲージより算出した.図 7.40(a)より,A-1は多少の塑性化(6ipのピーク時で 0.4%

程度)が確認できる.一方,コンクリートがパネルせん断力の一部を負担する B-1では 6i pまで弾

性を維持していることがわかる(図 7.40(b)).偏心タイプ(A-3,B-3)の場合,偏心側パネルの

歪の方が大きい(図 7.40(c),(d)).これは,偏心側パネルに作用するせん断力の方が反偏心側に比べ

て大きいことを示している.既往の研究 7.5)では,梁が偏心して取り付く通しダイアフラム形式柱梁

接合部に対して,偏心側パネルに作用するせん断力が大きくなることを有限要素法解析により明らか

にしているが,本実験より外ダイアフラム形式柱梁接合部についても同様の現象が確認できた.なお,

A-4(無偏心,外柱)の結果を参照すると,外ダイアフラムの形状が柱芯に対して非対称であること

は接合部パネルの歪挙動にあまり影響しないことがわかる(図 7.40(e)).

図 7.40 パネルせん断力 Qp-最大せん断歪 cp関係

(a) A-1 (c) A-3

(e) A-4

(b) B-1

(d) B-3

-2,000

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

0 0.5 1 1.5

Q p [kN]

cp [%]

偏心側

反偏心側

-2,000

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

0 0.5 1 1.5

Q p [kN]

cp [%]

偏心側

反偏心側

-2,000

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

0 0.5 1 1.5

Q p [kN]

cp [%]内側

外側

-2,000

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

0 0.5 1 1.5

Q p [kN]

cp [%]

6ip

-2,000

-1,000

0

1,000

2,000

3,000

0 0.5 1 1.5

Q p [kN]

cp [%]

6ip

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7. 4 まとめ

 本章では,曲げモーメントとせん断力が作用する場合に対する外ダイアフラムの設計式(5章まで

の内容)の適用性を,部分架構試験体を用いて検討した.本章では 5章で提案した分割外ダイアフラ

ムの採用を前提とし,目的に応じた 2シリーズの載荷実験を実施した.

 シリーズ Iでは,外ダイアフラムと梁フランジの接合に用いる添板の摩擦面処理の違い(アルミ溶射,

赤錆)および分割外ダイアフラムの分割方向の違いに着目して,力学挙動の違いを検討した.シリー

ズ Iより得られた知見を以下に記す.

[1] 分割外ダイアフラムのスリットの方向が異なる試験体(No.1,4)の比較より,両者は同等の

力学性能を有することを確認した.

[2] 外ダイアフラムの先行降伏を意図して設計した No.2の載荷実験より,2,5章で提案した設計

式による外ダイアフラムの耐力算定が妥当であることを確認した.

[3] No.2以外の試験体は,設計時に想定した梁先行降伏を実現できなかった.これは,外ダイア

フラムの降伏曲げ耐力と梁の全断面の降伏モーメントを単純に比較検討したためである.す

なわち,梁が最初に降伏する断面は,梁のボルト孔欠損部であり,その時点での柱フェイス

位置における換算モーメントが,外ダイアフラムの降伏曲げ耐力と比較すべき梁の降伏曲げ

耐力である.

[4] [3]の考察により,梁先行降伏型の接合部を設計するための条件式 (7.6)を提案した.

[5] 本試験体では,高力ボルト接合部のすべりが履歴性状に大きく影響を及ぼす結果となった.一

因として,外ダイアフラムの塑性化によりボルト張力が大きく減少し,その結果すべり耐力

が低下したことが挙げられる.

[6] 接合部の局部変形に起因して,梁の弾性剛性実験値は剛接を仮定した弾性剛性計算値に比べ

て 25~ 30%低下した.既往の局部剛性評価式 7.2)を利用すれば,梁の弾性剛性実験値と計算

値は概ね一致することが確かめられた.

 シリーズ IIでは,知見 [3],[4]をふまえて設計し直した試験体(A-1,C-1)を基本として,外

ダイアフラムと梁の接合法(高力ボルト接合,溶接接合),柱の部位(中柱,外柱),柱の種類(中空,

コンクリート充填)および梁偏心の有無に着目した.実験変数による力学挙動の違いは以下のように

まとめられる.

[7] 弾性剛性について:中柱と外柱の違いはほとんどなかったが,梁が偏心すると剛性は下がる.

柱にコンクリートを充填することにより剛性は上がる.これは,圧縮側の鋼管壁の局部変形

がほとんど生じないことによる.

[8] 耐力について:高力ボルト接合と溶接接合の違いにより降伏曲げ耐力に差は生じない.外ダ

イアフラムの降伏で決まる試験体(A-3とA-4)の比較より,梁が偏心すると降伏曲げ耐

力は明瞭に下がることを確認した.柱にコンクリートを充填することにより接合部の降伏曲

げ耐力は増大する.最大曲げ耐力に関しては,A-3と B-3(偏心)が他の試験体に比べて

低いことが確認された.これは,偏心側の外ダイアフラムに累積される歪の量が他の形式に

比べて大きく,破断に到る時期が早まったことが原因である.

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[9] 塑性変形能力について:高力ボルトにより外ダイアフラムと梁を接合する場合,最も変形能

力が小さい偏心タイプの試験体で 100程度の累積塑性変形倍率が得られた.高力ボルト接合

のため品質のバラツキが小さいので,100以上の累積塑性変形倍率が安定して得られるものと

考えられる.したがって,高力ボルト接合による外ダイアフラム形式柱梁接合部は,通しダ

イアフラム形式の梁端接合部 7.4)より高い変形能力を安定して有するといえる.

 本接合部の設計法に関する検討項目として曲げ耐力,弾性剛性,すべりに焦点を当て,以下の知見

が得られた.

[10] 耐力に関して

1) 降伏曲げ耐力:梁のボルト孔欠損部(第 1ボルト,図 7.14)および外ダイアフラムのいず

れで耐力が決まる場合も,耐力計算値と実験値は概ね一致した.ただし,B-3(CFT,偏心)

については,実験値をかなり過小評価する結果となった.これは,圧縮側におけるコンクリー

トの効果を考慮していないことが一因であると考えられる.現状でコンクリートの効果を

考慮するには到らないが,本実験の範囲では,B-3(CFT,偏心)の外ダイアフラムの耐

力はA-4(中空,無偏心外柱)の外ダイアフラムの耐力と同程度である.

2) すべり耐力:母材(外ダイアフラムあるいは梁)が塑性化することによってすべり耐力は

低下するが,設計用すべり係数 0.7より小さい耐力レベルでは,ボルト接合部のすべりに

よる回転角が急増することはなかった.なお,すべり耐力は,外ダイアフラムの第 1ボル

ト位置(図 7.14)におけるすべり耐力を柱フェイス位置に換算して得られる曲げ耐力とし

て算定した.

3) 保有耐力(梁の全塑性曲げ耐力):梁の保有耐力時の梁回転角(局部変形を含む)は 0.01

~ 0.015rad程度であり,残留回転角では 0.005rad以下に収まった(ただし,A-3(中空,

偏心)を除く).

4) 最大曲げ耐力:接合部係数は設計値である 1.25以上を確保できた.

以上より,本章で提案した耐力算定法は妥当であるといえる.

[11] 弾性剛性に関して:梁端(柱フェイス位置)の接合条件を剛接,柱フェイス-梁継手間に梁

と同一断面を仮定して得られる弾性剛性計算値は,実験値とよく一致した.これは,外ダイ

アフラムの拡幅部やボルト接合部の添板による剛性の増大が見込めるため,鋼管壁の局部変

形による剛性低下を無視してもよいことを表している.ただし,(7.6),(7.8)式によって外ダ

イアフラムの曲げ耐力を十分に確保しておく必要がある.

[12] すべりの問題:本実験の範囲では,外ダイアフラムの降伏曲げ耐力よりすべり耐力が大きくな

るように設計すれば,2ip程度の振幅まではすべりが履歴挙動に与える影響は小さい.設計上,

4i p振幅まで紡錘形の履歴挙動を確保する必要がある場合は,ボルト本数を増やすなどの対策

が必要となると考えられる.

その他,以下の知見が得られた.

[13] ウェブプレートを介して鋼管壁へ伝達される曲げモーメントは非常に小さいので,設計時に

は無視してよい.

[14] 外ダイアフラムと梁の高力ボルト継手の設計において,0.4のウェブ伝達効率を適用できる.

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第8章  外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の設計法

8. 1 はじめに

 前章までの研究により,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を設計するために必要な知見は概

ね得られた.本章では,それらの知見をもとに,8.2節では外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部

の設計時に検討すべき項目をまとめ.8.3節ではいくつかの設計例題を通して設計の流れを概観する.

さらに 8.4節では,45°方向の地震荷重時に対する検討を行う.

8. 2 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計項目

 本節は,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を設計する際に必要となる検討項目をまとめたも

のである.

8. 2. 1 外ダイアフラムの耐力

 梁フランジと外ダイアフラムの接合形式(溶接接合,高力ボルト接合)で分類して,外ダイアフラ

ムの設計式を示す.ただし,実用性を考慮して,外ダイアフラムの水平ハンチ角度が 45°の場合を対

象とする.

(1) 溶接接合の場合

(a)降伏曲げ耐力

 外ダイアフラムの降伏曲げ耐力 jMyを (8.1)式で算定する.

jMy = (Dd-t d)$ jP y (8.1)

記号(図 8.1参照)

jPy :外ダイアフラムの降伏引張(圧縮)耐力であり,(8.2),(8.3)式による.

・中柱の場合

jP y =3 {1+a 2 4 (x+t/2-b) 2}

4 (x+t/2)+2hd> H$t dvdy (8.2)

・外柱(偏心接合も含む)の場合

hdo $1+tan uio

a tan uio-coのとき,

jP y =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)$ (1+re)+

3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)+rehdi> H$t dvdy (8.3a)

hdo <1+tan uio

a tan uio-coのとき,

jP y =3 {1+a 2/4 (x+t/2-b) 2}

2 (x+t/2)$ (1+re)+1.3hdo+rehdi> H$t dvdy (8.3b)

x :外ダイアフラムの降伏領域,鋼管壁の面外降伏領域を表すパラメータであり,(8.4)式によ

り算定する.

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x =4

3

t d

t

D

t

D

a

vdy

vcyf p

31

$D+3

b (8.4)

Dd :外ダイアフラムの外法寸法

td :外ダイアフラムの板厚

a :外ダイアフラムの出寸法

hd :中柱のときの外ダイアフラムせいであり,(8.5)式により算定する.

hd =4

2a-D+Bd (8.5)

hdi :外柱のときの外壁と反対側の外ダイアフラムせいであり,(8.6)式により算定する.

hdi =2

a-ci (8.6)

hdo :外柱のときの外壁側の外ダイアフラムせい

Bd :外ダイアフラムの端部幅

ci :外壁と反対側の外ダイアフラム端部の角部から角形鋼管柱側面までの距離

co :外壁側の外ダイアフラム端部の角部から角形鋼管柱側面までの距離

uio :修正後の塑性解析モデルにおける外壁側(偏心側)の水平ハンチ角度(図 4.9(c)参照)であり,次の関係を満たす.

tan uio =a-hdo

co+hdo (8.7)

re :梁の偏心による低減係数であり,次式で与えられる.

re = 1-2$D

e (8.8)

図 8.1 外ダイアフラムの形状(溶接接合の場合)

(a)中柱 (b)外柱(外周構面の梁が取り付く部位)

t

D a

b

td

Dd

hd

B fBd

hd

jP y ( jPu)

jMy ( jMu)

4 c5

t

D a

td

Dd

B fBd jP y ( jPu)

jMy ( jMu)

4 c5

io

hdo

hdi

co

ci

e

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e :梁の偏心量

D :角形鋼管柱の幅

t :角形鋼管柱の板厚

b :梁フランジ側面から鋼管角部までの距離であり,(8.9)式により算定する.

b =2

D-B f (8.9)

Bf :梁フランジ幅

vdy :外ダイアフラムの降伏応力

vcy :角形鋼管柱の降伏応力

(b)最大曲げ耐力

 外ダイアフラムの最大曲げ耐力 jMuを (8.10)式で算定する.

jMu = (Dd-t d)$ jPu (8.10)

記号(図 8.1参照)

jPu :外ダイアフラムの最大引張(圧縮)耐力であり,(8.11),(8.12)式による.

・中柱の場合

jPu =3 {1+a 2 4 (x *+t/2-b) 2}

4 (x *+t/2)+2hd> H$t dvdu (8.11)

・外柱(偏心接合も含む)の場合

hdo $1+tan uio

a tan uio-coの場合,

jPu =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

2 (x *+t/2)$ (1+re)+

3 (1+4tan2io)

2 (a tanio-co)+rehdi> H$t dvdu (8.12a)

hdo <1+tan uio

a tan uio-coの場合,

jPu =3 {1+a 2/4 (x *+t/2-b) 2}

2 (x *+t/2)$ (1+re)+1.3hdo+rehdi> H$t dvdu (8.12b)

x* :外ダイアフラムの降伏領域,鋼管壁の面外降伏領域を表すパラメータであり,(8.13)式によ

り算定する.

x * =4

3

t d

t

D

t

D

a

vdu

vcuf p

31

$D+3

b (8.13)

vdu:外ダイアフラムの引張強さ

vcu:角形鋼管柱の引張強さ

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(2) 高力ボルト接合の場合

(a)降伏曲げ耐力

 外ダイアフラムの降伏曲げ耐力 jMyは (8.1)式で算定する.

(b)最大曲げ耐力

 外ダイアフラムの最大曲げ耐力 jMuを (8.14)式で算定する.

jMu = (Dd-t d)$ jPu (8.14)

記号(図 8.2参照)

jPu :外ダイアフラムの最大引張(圧縮)耐力であり,(8.15)式による.

jPu = min { jPu0 , jPu1 , jPu2 , jPu3 , jPu4} (8.15)

jPu0:(8.11)式あるいは (8.12)式による最大引張(圧縮)耐力算定式.

jPu1 :引張降伏線と斜方降伏線からなる破断機構に基づく最大耐力で,(8.16a)式で算定する(図

8.2(b)).

jPu2 :引張降伏線とせん断降伏線からなる破断機構に基づく最大耐力で,(8.16b)式で算定する(図

8.2(c)).

jPu3 :引張降伏線とせん断降伏線からなる破断機構に基づく最大耐力で,(8.16c)式で算定する(図

8.2(d)).

jPu4 :ボルトの破断に基づく最大耐力で,(8.16d)式で算定する.

jPu1 = (Ants+Ant)vdu (8.16a)

jPu2 = (Ant+0.5Ans)vdu (8.16b)

jPu3 = 0.5Ansvdu (8.16c)

jPu4 = nb$qbu (8.16d)

t

D a

b

td

Dd

hd

B fBd

hd

jP y ( jPu)

jMy ( jMu)

4 c5

p

g

e f1

ed

Ans

n

Ans

Ant

ボルト孔径:d

斜方降伏線引張降伏線

p ed

g

Ant

Ants

図 8.2 外ダイアフラムの形状(高力ボルト接合の場合)

(a)中柱

(b)破断機構 1

(c)破断機構 2 (d)破断機構 3

中柱 外柱

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Ants:引張降伏線とせん断降伏線における有効断面積で,(8.17a)式あるいは (8.17b)式で算定する

(図 8.2(b)).

Ant :引張降伏線における有効断面積で,(8.17c)式で算定する(図 8.2(c)).

Ans :せん断降伏線における有効断面積で,(8.17d)式で算定する(図 8.2(d)).

nb :ボルト本数

qbu :ボルト 1本あたりのせん断耐力

Ants = {ed+(n-1) p+2

Bd-g-2d}$t d  (中柱の場合) (8.17a)

Ants = {ed+(n-1) p}$2

1+

1+3tan2io

taniof p+

2

Bd-g$

2

1+

1+3tan2io

1f p>

    - 1+2

1+3tan2iof p $d H$t d   (外柱の場合) (8.17b)

Ant = (g-d) t d (8.17c)

Ans = ms{(n-1) p+ed} t d (8.17d)

ms :図 8.2(c)の場合は 2,図 8.2(d)の場合は 4

ed :外ダイアフラムのはしあき

n :ボルト列数

p :ボルトピッチ

g :ボルトゲージ

d :ボルト孔径

8. 2. 2 設計荷重

 短期許容耐力設計条件および保有耐力設計条件を検討するための設計荷重の算定方法を示す.ただ

し,以下の設計荷重の算定では,梁のモーメント分布に地震荷重のみを想定する(図 8.3).鉛直荷重

によるモーメントが柱フェイスモーメントに及ぼす影響が大きい場合は,図 8.3の破線で示すように

設計荷重の割り増しを考慮する必要がある.

(1) 短期許容耐力設計

 梁降伏が先行する設計を想定し,(8.18)式を短期許容耐力設計条件とする.

jMy $ bMy* (8.18)

記号(図 8.3参照)

bMy*:梁のヒンジ想定断面(図 8.3)において降伏曲げ耐力に達したときの柱フェイス位置換算モー

メントであり,これを設計荷重とする.算定は (8.19a)式または (8.19b)式による.

溶接接合の場合    bMy* =

Lb/2-D/2-a

Lb/2-D/2$bMy (8.19a)

高力ボルト接合の場合 bMy* =

Lb/2-D/2-a-c1-e f1-(n-1) p

Lb/2-D/2$b

uMy (8.19b)

bMy:梁の全断面の降伏曲げモーメント

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buMy:高力ボルト接合の場合の梁の降伏曲げモーメントであり,(8.20)式により算定する.

buMy = min {bMy , b

tMye} (8.20)

btMye:梁の第 1ボルト位置における降伏曲げモーメント(ボルト孔欠損考慮)とボルト孔前面の摩

擦力により伝達される応力を考慮した降伏曲げモーメント 8.1)であり,(8.21)式により算定する.

btMye = bMye+nsmnrN0c (Db-tbf) (8.21)

Lb :梁スパン

c1 :外ダイアフラムと梁の隙間

ef1 :梁フランジのはしあき

ns :すべり係数

m :摩擦面の数

nr :ボルト行数

N0 :設計用ボルト張力

c :第 1ボルトのすべり耐力に対する,ボルト孔前面の摩擦力により伝達される応力の割合

Db :梁せい

tbf :梁フランジ厚

 また,梁が降伏する以前に,高力ボルト接合部がすべらないように設計する場合には,次の条件式

を適用する.

Mslip* $ bMy

* (8.22)

記号

Mslip* :図 8.3に示す外ダイアフラムの第 1ボルト位置において,すべりが発生するときの柱フェイ

ス位置換算モーメントであり,次式により算定する.

Mslip* =

Lb/2-D/2-a+(n-1) p+ed

Lb/2-D/2$Mslip (8.23)

Mslip:図 8.3に示す外ダイアフラムの第 1ボルト位置におけるすべり耐力であり,次式で算定する.

Mslip = nsmnrnN0(Dd-t d) (8.24)

図 8.3 梁のヒンジ想定位置と柱フェイス換算モーメントの定義

梁のヒンジ想定位置(溶接接合)梁の第 1ボルト位置(高力ボルト接合)

a

Lb/2

D

M *

Qb

Lb/2-D/2-a-c1-e f1-(n-1) p

鉛直荷重によるモーメントを考慮した場合

地震荷重によるモーメント分布

外ダイアフラムの第 1ボルト位置(高力ボルト接合)

Lb/2-D/2-a+(n-1) p+ed

Lb/2-D/2

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-161-

(2) 保有耐力設計

 梁が最大耐力に達しても外ダイアフラムあるいは高力ボルトが破壊に到らないことを想定して,

(8.25)式を保有耐力設計条件とする.

溶接接合の場合     jMu $ a bM p* (8.25a)

高力ボルト接合の場合  jMu $ a bM pe* (8.25b)

記号

bM p*:梁の溶接接合断面において全塑性曲げ耐力に達したときの柱フェイス位置換算モーメント

であり,これを設計荷重とする.算定は (8.26a)式による.

bM pe*

:梁の第 1ボルト位置においてボルト孔欠損を考慮した全塑性曲げ耐力に達したときの柱フェ

イス位置換算モーメントであり,これを設計荷重とする.算定は (8.26b)式による.

溶接接合の場合    bM p* =

Lb/2-D/2-a

Lb/2-D/2$bM p (8.26a)

高力ボルト接合の場合 bM pe* =

Lb/2-D/2-a-c1-e f1-(n-1) p

Lb/2-D/2$bM pe (8.26b)

bMpe:梁のボルト孔欠損を考慮した全塑性曲げモーメント

a :柱梁接合部の接合部係数(鋼構造接合部設計指針 8.1)に従う(表 8.1参照))

表 8.1 接合部係数 8.1)

鋼種接合部の最大耐力を決める破壊形式

母材の破断 高力ボルトの破断

SS400 1.40 1.45

SM490 1.35 1.40

SN400 1.30 1.35

SN490 1.25 1.30

8. 2. 3 梁−外ダイアフラム継手の設計

 梁-外ダイアフラム継手設計の原則は,文献 8.1)に従うこととする.ここでは,継手のせん断耐力

の検討に用いる梁せん断力 Qj,Qjuの算定式((8.27a),(8.27b)式)を示しておく.

降伏耐力用 Q j =Lb/2-D/2-a-c1/2

bMy+QL (8.27a)

最大耐力用 Q ju =Lb/2-D/2-a-c1/2

a bM p+QL (8.27b)

記号

QL :鉛直荷重

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-162-

8. 2. 4 溶接継目の設計

 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部では,角形鋼管柱と外ダイアフラム,ウェブプレートと外

ダイアフラムおよびウェブプレートと角形鋼管柱の間で溶接接合される.これらの溶接継目の設計法

について以下に述べる.

(1) 角形鋼管柱−外ダイアフラム間の溶接継目

 外ダイアフラムが最大耐力に達しても,溶接部が破断しないための必要溶接脚長 sを (8.28a)式ま

たは (8.28b)式により算定する.(8.28b)式の考え方については,付 8.1を参照のこと.

両面隅肉溶接の場合 s = g$t d (8.28a)

異形隅肉溶接の場合 s = 0.81g$t d (8.28b)

記号(図 8.4参照)

g :(8.29)式により算定される値である.

g = max 2.5D

hd,

2 {a 2+4 (x *+t/2-b) 2}

a 2+16 (x *+t/2-b) 2

* 4 (8.29)

図 8.4 外ダイアフラム-角形鋼管柱間の溶接継目詳細

両面隅肉溶接 異形隅肉溶接

s

s

0.81s

6 c0

鋼管壁 外ダイアフラム

(2) ウェブプレート−外ダイアフラム間の溶接継目

 ウェブプレートと外ダイアフラムの溶接継目に必要な脚長 dswpは,(8.30)式により算定する.

dswp = max {dswp1 , dswp2} (8.30)

記号

dswp1:柱フェイス位置の曲げモーメントが bMy*に達しても,ウェブプレートと外ダイアフラムの

溶接継目がせん断降伏しないために必要な脚長であり,(8.31a)式により算定する.

dswp2:柱フェイス位置の曲げモーメントがa bM pe*に達しても,ウェブプレートと外ダイアフラムの

溶接継目が破断しないために必要な脚長であり,(8.31b)式により算定する.

dswp1 =2dvwpy

advwpy- (advwpy)2-2 6 dvwpy$dSwp1 (8.31a)

dswp2 =2dvwpu

advwpu- (advwpu)2-2 6 dvwpu$dSwp2 (8.31b)

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dSwp1:柱フェイス位置の曲げモーメントが bMy*のときのウェブプレートと外ダイアフラムの溶接

継目の設計応力であり,(8.32a)式により算定する.

dSwp2:柱フェイス位置の曲げモーメントがa bM pe*のときのウェブプレートと外ダイアフラムの溶接

継目の設計応力であり,(8.32b)式により算定する.

dSwp1 = 1- 1-0.4$I0

Iwf p $

Lb-D/2

Lb-D/2-a-5* 4$

db

bMy*

(8.32a)

dSwp2 = 1-bZ p

bZ fp$

Lb-D/2

Lb-D/2-a-5* 4$

db

a bM pe*

(8.32b)

dvwpy:溶接金属の降伏応力

dvwpu:溶接金属の引張強さ

Iw :梁ウェブの断面 2次モーメント

I0 :梁の断面 2次モーメント

bZfp :梁フランジの塑性断面係数

bZp :梁の塑性断面係数

db :梁フランジ中心間距離(Db-tbf)

なお,(8.31),(8.32)式の考え方については付 8.2を参照のこと.

(3) ウェブプレート−角形鋼管柱間の溶接継目

 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部では,鋼管壁に面外変形が生じるため,ウェブプレートか

ら鋼管壁への曲げ応力の伝達は期待できない.したがって,ウェブプレート-角形鋼管柱間の溶接継

目の設計では,梁せん断力のみ考慮すればよい.文献 8.1)にも述べられているとおり,梁ウェブの降

伏耐力と同等の耐力を溶接継目が保有するために必要な寸法として,被接合材(ウェブプレート)の

板厚 twpの 0.7倍とする方法が慣用的であるため,ここでは (8.33)式により溶接脚長 cswpを与えること

する.

cswp = 0.7twp (8.33)

8. 2. 5 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計フローチャート

 以上に述べた外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計法をフローチャートとして図 8.5に示

す.

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図 8.5 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計フローチャート

設計開始

柱・梁の断面選定,梁スパンの決定梁フランジと外ダイアフラムの接合方法の選定

溶接接合 高力ボルト接合

外ダイアフラム出寸法 aを決定

短期設計用曲げ耐力  を算定bMy*

外ダイアフラム接合部の諸寸法を決定し,降伏曲げ耐力  を算定※原則は

jMy

i = 4 c5

jMy $ bMy*

YES

NO

aを変更する場合

a以外を変更する場合

保有耐力設計用曲げ耐力   ,   を算定a bM p*

外ダイアフラム接合部の最大曲げ耐力  を算定jMu

NO(溶接接合の場合)

aを変更する場合

a以外を変更する場合

設計完了

梁継手の設計(鋼構造接合部設計指針)※梁ウェブ継手の設計用せん断力を算定する際に外ダイアフラム出寸法 aを設定する必要あり

短期設計用曲げ耐力        を算定min {bMy* , b

tMye* }

YES

YES

外ダイア-柱間の必要溶接脚長  を算定外ダイア-ウェブプレート間の必要溶接脚長  を算定

sreq

dswp

設計用最大せん断力  を算定柱-ウェブプレート間の必要溶接脚長  を算定cswp

Q ju

NO

aを変更する場合

aを変更する場合

NO(高力ボルト接合の場合)

a以外を変更する場合

a以外を変更

する場合

(8.19a)式

(8.19b)式

(8.1)式

(8.26)式および文献 8.1)

(8.10)式 ,(8.14)式

(8.28)式 ,(8.30)式

(8.27b)式 ,(8.33)式

a bM pe*

jMu $ a bM p* , jMu $ a bM pe

*

*1:梁の降伏以前にすべらない  設計をする場合に適用

Mslip* $ bMy

*

jMy $ bMy*

を満たすボルト配置が可能である

*1

YES

NO

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8. 3 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計例

 本節では,8.2.5項に示した設計フローチャートに基づいて,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合

部の設計例を示す.以下では,柱の種類および外ダイアフラムと梁の接合形式により,3つのケース

を取り上げる.

8. 3. 1 【例題 1】外ダイアフラムと梁フランジを溶接接合,ウェブプレートと梁ウェブを高力ボルト

   接合とする場合(中柱を対象として)

 梁は H-600× 200× 11× 17(SN490B),柱は□-400× 400× 19(BCR295),外ダイアフラム

は板厚 22mm(SN490B)で,梁のスパン(柱内法距離)は lb=10mである.また,固定荷重+積載

荷重による梁のせん断力は QL=250kNとする.材料強度は,梁の降伏強さ Fby=325N/mm2,梁の引

張強さ Fbu=490N/mm2,柱の降伏強さ Fcy=295N/mm2,柱の引張強さ Fcu=400N/mm2,外ダイアフ

ラムの降伏強さ Fdy=325N/mm2,外ダイアフラムの引張強さ Fdu=490N/mm2とする.設計に必要と

なる梁の断面諸量は以下のとおりである.

 ・梁(全断面)の降伏モーメント:bMy= 819kNm

 ・梁(全断面)の塑性断面係数:bZp= 2900× 103mm3

 ・梁フランジの塑性断面係数:bZfp= 1982× 103mm3

 ・梁(全断面)の全塑性モーメント:bMp= 943kNm

 ・梁の断面 2次モーメント:I0= 75600× 104mm4

 ・梁ウェブの断面 2次モーメント:Iw= 16621× 104mm4

1)短期設計用曲げ耐力bMy*の算定

 外ダイアフラム出寸法 aを 240mmとすると,(8.19a)式より,

bMy* =

5000-240

5000#819 = 860kNm

2)外ダイアフラム接合部の降伏曲げ耐力 jMyの検討

 水平ハンチ角度 i=45°,外ダイアフラム端部幅 Bd=200mmとすると,(8.1)式より,

jMy = 883kNm > bMy* = 860kNm"OK

3)保有耐力設計用曲げ耐力a bM p*の算定

 外ダイアフラムと梁フランジを溶接接合としているので,母材の破断で決まる接合部係数 aは 1.25

である(表 8.1参照).(8.26a)式より,

a bM p* = 1.25#

5000-240

5000#943 = 1238kNm

4)外ダイアフラム接合部の最大曲げ耐力 jMuの検討

 (8.10)式より,

jMu = 1281kNm > a bM p* = 1238kNm"OK

5)外ダイアフラム-柱間の必要溶接脚長 sの算定

 外ダイアフラムの板厚が 22mmであることから異形隅肉溶接を採用する.この場合 (8.28b)式より,

s = 0.81#0.75#22 = 13.3" s = 14mm

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6)外ダイアフラム-ウェブプレート間の必要溶接脚長 dswpの算定

 溶接金属の材料強度を母材(外ダイアフラム,ウェブプレート)と同一とすると,(8.30)式より,

dswp = max {3.1, 8.0} = 8.0" dswp = 8mm

7)柱-ウェブプレート間の必要溶接脚長 cswpの算定

 (8.33)式より,

cswp = 0.7#11 = 7.7" cswp = 8mm

8)ウェブ高力ボルト摩擦接合部の検討

 文献 8.1)に基づいて設計する.ウェブのはしあきを 50mm,ピッチを 80mm,ウェブ添板の板厚を

9mm(SN490B),はしあきを 35mm,2面摩擦接合とすると,設計条件を満足する.詳細は省略.

 図 8.6に設計した接合部詳細を示す.

図 8.6 例題 1の接合部詳細

70

70

200

240

400

240

240400240

異形隅肉溶接(脚長=14mm)

□-400× 400× 19(BCR295)

H-600× 200× 11× 17(SN490B)

80

240

12-F14TM22

8

8

400 240

PL-22(SN490B)

8080

8080

A 断面A

55 55

8. 3. 2 【例題 2】外ダイアフラムと梁フランジ,およびウェブプレートと梁ウェブを高力ボルト接合

   とする場合(中柱を対象として)

 梁は H-600× 200× 12× 25(SN490B),柱は□-450× 450× 19(BCP325)で,外ダイアフ

ラムは梁フランジと同厚 25mm(SN490B)とする.梁のスパンおよび固定荷重+積載荷重による梁

のせん断力は例題 1と同一条件とする.材料強度は,梁の降伏強さ Fby=325N/mm2,梁の引張強さ

Fbu=490N/mm2,柱の降伏強さ Fcy=325N/mm2,柱の引張強さ Fcu=490N/mm2,外ダイアフラムの

降伏強さ Fdy=325N/mm2,外ダイアフラムの引張強さ Fdu=490N/mm2とする.設計に必要となる梁

の断面諸量は以下のとおりである.

 ・梁(全断面)の断面係数:bZy= 3350× 103mm3

 ・梁(全断面)の降伏モーメント:bMy= 1089kNm

 ・ボルト孔欠損(2行,F14TM22を想定)を考慮した梁の降伏モーメント:bMye= 865kNm

 ・ボルト孔前面の伝達力を考慮した梁の降伏モーメント((8.21)式):btMye = 1009kNm

  (だたし,第 1ボルト前面における摩擦力の伝達率を c=1/3とし,摩擦面にはアルミ溶射を想定

  してすべり係数 0.7を適用した)

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 ・梁(全断面)の塑性断面係数:bZp= 3820× 103mm3

 ・梁(全断面)の全塑性モーメント:bMp= 1229kNm

 ・梁(孔欠損考慮)の全塑性モーメント:bMpe= 1005kNm

 ・梁の断面 2次モーメント:I0= 100000× 104mm4

 ・梁ウェブの断面 2次モーメント:Iw= 16638× 104mm4

1)梁継手の設計

 文献 8.1)に基づいて設計する.詳細は省略し,設計結果を図 8.7に示す.

2)短期設計用曲げ耐力bMy*の算定

 外ダイアフラム出寸法 aを 300mmとすると,(8.19b)式より,

bMy* =

5000-300-10-50-70#2

5000#1009 = 1121kNm

3)外ダイアフラム接合部の降伏曲げ耐力 jMyの検討

 水平ハンチ角度 i=45°,外ダイアフラム端部幅 Bd=250mmとすると,(8.1)式より,

jMy = 1180kNm > bMy* = 1121kNm"OK

4)保有耐力設計用曲げ耐力a bM pe*の算定

 5)で述べるように外ダイアフラムの破断で決まるので,接合部係数 aは 1.25である(表 8.1参照).

(8.26b)式より,

a bM pe* = 1.25#

5000-300-10-50-70#2

5000#1005 = 1396kNm

5)外ダイアフラム接合部の最大曲げ耐力 jMuの検討

 (8.14)式より,

jMu = 1778kNm > a bM p* = 1396kNm"OK

なお,外ダイアフラムの最大耐力は (8.16a)式で決定される.

6)外ダイアフラム-柱間の必要溶接脚長 sの算定

 外ダイアフラムの板厚が 25mmであることから異形隅肉溶接を採用する.この場合 (8.28b)式より,

s = 0.81#0.79#25 = 15.9" s = 16mm

7)外ダイアフラム-ウェブプレート間の必要溶接脚長 dswpの算定

 溶接金属の材料強度を母材(外ダイアフラム,ウェブプレート)と同一とすると,(8.30)式より,

dswp = max {3.1, 7.4} = 7.4" dswp = 8mm

8)柱-ウェブプレート間の必要溶接脚長 cswpの算定

 (8.33)式より,

cswp = 0.7#12 = 8.4" cswp = 9mm

 図 8.7に設計した接合部詳細を示す.

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8. 3. 3 【例題 3】外ダイアフラムと梁フランジ,およびウェブプレートと梁ウェブを高力ボルト接合

   とする場合(外周構面梁が取り付く側の外柱を対象として)

 例題 2と同一条件で,外周構面梁が取り付く側の外柱を対象として外ダイアフラムの形状を決める.

1)梁継手の設計

 例題 2と同じ.

2)短期設計用曲げ耐力bMy*の算定

 外ダイアフラム出寸法 aを 350mmとすると,(8.19b)式より,

bMy* =

5000-350-10-50-70#2

5000#1009 = 1134kNm

3)外ダイアフラム接合部の降伏曲げ耐力 jMyの検討

 外壁側の外ダイアフラムせい hdo=35mm,反外壁側の水平ハンチ角度 ii=45°,外壁側の水平ハン

チ角度 io=45°,外ダイアフラム端部幅 Bd=320mmとすると,(8.1)式より,

jMy = 1158kNm > bMy* = 1134kNm"OK

4)保有耐力設計用曲げ耐力a bM pe*の算定

 5)で述べるように外ダイアフラムの破断で決まるので,接合部係数 aは 1.25である(表 8.1参照).

(8.26b)式より,

a bM pe* = 1.25#

5000-350-10-50-70#2

5000#1005 = 1411kNm

5)外ダイアフラム接合部の最大曲げ耐力 jMuの検討

 (8.14)式より,

jMu = 1746kNm > a bM p* = 1411kNm"OK

なお,外ダイアフラムの最大耐力は (8.16a)式で決定される.

図 8.7 例題 2の接合部詳細

12-F14TM22

100

10030

045

030

0

30045030025

0

異形隅肉溶接(脚長=16mm)

□-450× 450× 19(BCP325)

H-600× 200× 12× 25(SN490B)

8PL-25(SN490B)

8080

8080

80

9

300450300

PL-12× 270× 470(SN490B)

PL-22× 200× 470(SN490B)

12-F14TM22

4012040

PL-12(SN490B)

45 85 85 45

40 70705050707040

A 断面

A

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6)外ダイアフラム-柱間の必要溶接脚長 sの算定

 例題 2と同じ.

7)外ダイアフラム-ウェブプレート間の必要溶接脚長 dswpの算定

 溶接金属の材料強度を母材(外ダイアフラム,ウェブプレート)と同一とすると,(8.30)式より,

dswp = max {2.8, 6.6} = 6.6" dswp = 7mm

8)柱-ウェブプレート間の必要溶接脚長 cswpの算定

 例題 2と同じ.

 図 8.8に設計した接合部詳細を示す.

図 8.8 例題 3の接合部詳細

□-450× 450× 19(BCP325)

PL-25(SN490B)

8080

8080

80

9350450350

異形隅肉溶接(脚長=16mm)

320

450

350

35

142.

5

142.5

PL-12(SN490B)

7

PL-12× 270× 470(SN490B)

PL-22× 200× 470(SN490B)

40 70705050707040

45 85 85 45

350450350

H-600× 200× 12× 25(SN490B)

12-F14TM22

12-F14TM22

A 断面

A

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-170-

8. 4 45°方向の地震荷重に対する検討

 前節までに示した設計手順および設計例題は,1方向の地震荷重を想定したものである.現実に起

こる地震は任意方向に揺れるため,接合部に作用する地震荷重についても任意方向で検討する必要性

が考えられる.本節では,45°方向の地震荷重を対象として,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合

部の耐力について検討し,接合部設計においては 1方向の地震荷重のみを考慮すれば十分であること

を示す.

 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部に 45°方向の地震荷重が作用したときの応力状態を図 8.9

に示す.図 8.10に,梁フランジ応力(引張あるいは圧縮)によって形成する接合部の崩壊機構を示す.

図 8.10左図より,隣接する 2つの鋼管壁の一方が引張荷重を受け,もう一方が圧縮荷重を受ける場合,

鋼管角部は直角を保った状態で仮想変位 dに伴って回転する(回転角:d/(x+t/2))と考えられる.

これは,1方向の地震荷重時には鋼管角部に降伏線が形成されるのに対して,45°方向の地震荷重時

では鋼管角部の降伏線が消失することを表している(図 8.10右図).したがって,45°方向に地震荷

重が作用する場合の方が鋼管の応力仕事が減少するので,接合部耐力も低下する.8.2節で述べたよ

うに,本論では梁先行降伏型の接合部設計を基本思想としている.地震荷重の方向は梁の耐力に影響

しないこと,および外ダイアフラムの耐力低下に影響することを考慮すると,1方向の地震荷重に対

する設計では外ダイアフラムの必要寸法を過小に設計する恐れがある.外ダイアフラムの応力は 1方

向の地震荷重時を想定した場合に最大となるので,外ダイアフラムと角形鋼管の溶接部に関しては 1

方向について設計すれば 45°方向に対して安全側の設計となる.以下では,45°方向の地震荷重時に

おける外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の耐力算定例を示し,1方向の場合に対する低下傾向

を調べる.

 図 8.11および図 8.12にいくつかのパラメータについて耐力算定結果の例を示す.図の縦軸は 45°

方向地震荷重時の耐力P4 c5(降伏耐力,崩壊荷重,設計用最大耐力)を 1方向地震荷重時の耐力P c0(降

伏耐力,崩壊荷重,設計用最大耐力)で無次元化したもの,横軸は鋼管幅厚比 D/tを表す.各図の実

線は降伏耐力,点線は崩壊荷重,破線は設計用最大耐力である.いずれの算定結果も 1方向地震荷重

時の耐力と 45°方向地震荷重時の耐力はほとんど一致している.これは,図 8.10右図に示すように,

消失する降伏線の長さはわずかであり,接合部全体に占める応力仕事の割合は非常に小さいことを意

味している.相対的に鋼管の応力仕事が大きい場合(D/tが小さい場合など)でも高々数%程度の低

下にとどまっている.したがって,外ダイアフラムの設計においても,1方向の地震荷重に対する検

討で特に問題はないといえる.

X

Y

地震荷重

4 c5

図 8.9 45°方向地震荷重時における接合部の応力状態

Page 178: Title 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設 … · 柱と梁の接合方法の一つとして図1.1 に示す外ダイアフラムがある.これは,柱外周に鋼板を溶接

-171-

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

0.5

1.0

1.5

15 20 25 30 35t

D

P4 c5 /P c0

xx

降伏線 降伏場

角形鋼管フランジ

d

lx

t d+

2s

D - t - 2s

lx

直角を保つ(ヒンジなし)

d

dd

d

A

A 図

降伏線が消失する

xD

-t

-2s

x

x D - t - 2s x

図 8.10 45°方向の地震荷重に対する鋼管壁の面外崩壊機構

図 8.11 数値計算例(vdy=235N/mm2,vdu=400N/mm2,vcy=295N/mm2,vcu=400N/mm2の場合)

(a)D/td=20の場合

(b)D/td=30の場合

a/D=0.5hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.2

a/D=0.5hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.2

a/D=0.5hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.2

(a)D/td=20の場合

(b)D/td=30の場合

a/D=0.5hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.1

a/D=0.75hd/D=0.2

図 8.12 数値計算例(vdy=325N/mm2,vdu=490N/mm2,vcy=295N/mm2,vcu=400N/mm2の場合)

実線:降伏耐力,点線:崩壊荷重,破線:設計用最大耐力

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8. 5 まとめ

 本章では,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計項目をまとめ,中柱を想定して外ダイア

フラムと梁が溶接接合および高力ボルト接合される場合について,また外柱を想定して外ダイアフラ

ムと梁が高力ボルト接合される場合について設計手順を例示した.設計のフローチャートは図 8.5に

示すとおりである.また,45°方向の地震荷重に対する検討結果より,外ダイアフラム形式角形鋼管

柱梁接合部の設計では,1方向の地震荷重を想定すれば十分であることを確認した.

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付 8. 1 異形隅肉溶接の脚長の考え方と耐力

8. 1. 1 異形隅肉溶接の定義

 隅肉溶接の脚長は,被溶接材の板厚に比例して増大する.例えば,せん断力を伝達する両面隅肉溶

接の T継手が全強継手となるための条件は s=0.7t(s:溶接脚長,t:被溶接材の板厚)で与えられる8.2)ので,t=22mmでは s=15.4mmとなり,溶接余盛の占める領域が過大になってしまう.このよう

な場合の一つの方法として異形隅肉溶接がある(図A8.1).異形隅肉溶接は,60°の部分開先をとっ

た被溶接材を用いて溶接金属の断面が正三角形となるように施工する方法である.図A8.1に示すよ

うに,隅肉溶接の有効のど厚(0.7s1)と異形隅肉溶接の有効のど厚(0.87s2)が等しくなるように異

形隅肉溶接脚長 s2が定義される.

8. 1. 2 前面隅肉溶接の耐力

 前節で述べた異形隅肉溶接の定義より,側面隅肉溶接としての耐力は隅肉溶接と同じ耐力を有する

ことがわかる.一方で,前面隅肉溶接としての耐力については,隅肉溶接と異形隅肉溶接の対応は不

明である.そこで,以下では両者の前面隅肉溶接の耐力を検討する.

 文献 8.2)より,隅肉溶接に関する単位長さあたりの前面隅肉溶接の耐力 fwqu1は次式で与えられる.

fwqu1 =15

2s1vu = 0.516s1vu (A8.1)

文献 8.2)と同じ手法で,異形隅肉溶接に関する単位長さあたりの前面隅肉溶接の耐力 fwqu2を誘導する.

図A8.2に示す崩壊機構を仮定すると,fwqu2は次式で表される.

fwqu2 =3 +tanb

4+tan2b$s2vu (A8.2)

上式の最小値は b=66.6°に対して成立するが,図A8.2よりそのような機構は形成されないことがわ

かる.したがって,異形隅肉溶接では,b=60°のとき,すなわち被溶接材と溶接金属の境界で降伏

線を形成することになる.b=60°を (A8.2)式に代入すると次式が得られる.

fwqu2 = 0.764s2vu (A8.3)

 (A8.1)式を異形隅肉溶接脚長 s2で表記すると次式となる.

fwqu1 = 0.516s1vu = 0.516#0.81

s2vu = 0.637s2vu < fwqu2 = 0.764s2vu (A8.4)

これは,従来の異形隅肉溶接の定義にしたがって脚長を設計しておけば,想定以上の耐力を有する結

果となり,安全側の設計をしていることになる.

図A8.1 隅肉溶接と異形隅肉溶接の脚長・のど厚の対応 図A8.2 異形隅肉溶接の崩壊機構

s1

0.7s

1

s2 = 0.81s1

0.87s 2

=0.7

s 1

6 c0 6 c0

被溶接材

溶接金属

降伏線

fwqu2

s2

b

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付 8. 2 ウェブプレート−外ダイアフラム間の溶接継目の設計法

8. 2. 1 はじめに

 外ダイアフラム接合部では,鋼管壁に面外変形が生じるため,ウェブプレートの曲げ抵抗は期待で

きない.したがって,梁ウェブ継手で伝達される曲げモーメントは,ウェブプレートと外ダイアフラ

ムの間で伝達される必要がある.この応力伝達に必要となる隅肉溶接脚長を決定する手順を示す.こ

こでも,本文 8.2.2項と同様に,設計荷重の算定には地震荷重のみを想定する.

8. 2. 2 設計手順

(1) 設計条件

1) 柱フェイス位置の曲げモーメントがbMy*に達しても,ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉

溶接部(以下,単に隅肉溶接部と表記)がせん断降伏しない(図A8.3).

2) 柱フェイス位置の曲げモーメントがa bM p*に達しても,隅肉溶接部が破断しない(図A8.4).

(2) 設計条件 1) に基づいた設計

 梁継手中心位置におけるフランジ添板の負担モーメントを fsM1,ウェブ添板の負担モーメントを

wsM1とすると,ウェブプレートと外ダイアフラムの間のせん断力 dSwp1は次式で表される.

dSwp1 =db

bMy*- fsM1

(A8.5)

ここで,dbは梁フランジ中心間距離である.

 梁継手中心位置における曲げモーメントM1は次式で表される.

M1 =Lb-D/2

Lb-D/2-a-5$bMy

* (A8.6)

ここで,Lb:柱心から梁反曲点位置までの距離,D:鋼管幅,a:外ダイアフラム出寸法である.

 ウェブ継手効率を 0.4として,fsM1,wsM1を次式で与える.

fsM1 = 1-0.4$I0

Iwf p $M1 (A8.7a)

wsM1 = 0.4$I0

Iw$M1 (A8.7b)

ここで,I0:梁の断面 2次モーメント,Iw:梁ウェブの断面 2次モーメントである.

 (A8.5)~ (A8.7)式より,dSwp1は次式で与えられる.

dSwp1 = 1- 1-0.4$I0

Iwf p $

Lb-D/2

Lb-D/2-a-5* 4$

db

bMy*

(A8.8)

 溶接脚長を dswp1とすると,隅肉溶接部の降伏耐力 dPwpyは次式で表される.

dPwpy =6

2(a-dswp1) dswp1$dvwpy (A8.9)

ここで,dvwpyは溶接金属の降伏応力である.

 設計条件 1)より,次式を満たす必要がある.

dSwp1 # dPwpy (A8.10)

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上式を dswp1について解くと次式が得られる.

dswp1 =2dvwpy

advwpy- (advwpy)2-2 6 dvwpy$dSwp1 (A8.11)

(3) 設計条件 2) に基づいた設計

 梁継手中心位置におけるフランジ添板の負担モーメント fsM2とウェブ添板の負担モーメント wsM2

の比率を,梁フランジの全塑性曲げ耐力 bMfpと梁ウェブの全塑性曲げ耐力 bMwpの比率に等しいもの

と考える.梁継手中心位置における曲げモーメントをM2とすると,

M2 =Lb-D/2

Lb-D/2-a-5$a bM p

* (A8.12)

fsM2 =bM p

bM fp$M2 (A8.13a)

wsM2 =bM p

bMwp$M2 (A8.13b)

bM fp = bZ fp$vby (A8.14a)

bMwp = bZwp$vby (A8.14b)

ここで,a:接合部係数,bMp:梁の全断面の全塑性モーメント,bZfp:梁フランジの塑性断面係数,

bZwp:梁ウェブの塑性断面係数,vby:梁の降伏応力である.

 ウェブプレートと外ダイアフラムの間のせん断力 dSwp2は次式で表される.

dSwp2 =db

a bM p*- fsM2

(A8.15)

 (A8.12)~ (A8.15)式より,dSwp2は次式で表される.

dSwp2 = 1-bZ p

bZ fp$

Lb-D/2

Lb-D/2-a-5* 4$

db

a bM p*

(A8.16)

ここで,bZpは梁の塑性断面係数である.

 溶接脚長を dswp2とすると,隅肉溶接部の最大耐力 dPwpuは次式で表される.

dPwpu =6

2(a-dswp2) dswp2$dvwpu (A8.17)

ここで,dvwpuは溶接金属の引張強さである.

 設計条件 2)より,次式を満たす必要がある.

dSwp2 # dPwpu (A8.18)

上式を dswp2について解くと次式が得られる.

dswp2 =2dvwpu

advwpu- (advwpu)2-2 6 dvwpu$dSwp2 (A8.19)

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図A8.3 設計条件 1)に対応する隅肉溶接部の設計応力

図A8.4 設計条件 2)に対応する隅肉溶接部の設計応力

M1bMy*

db

bMy*

db

fsM1

db

bMy*

db

fsM1

wsM1

dSwp1

dSwp1

ウェブプレート外ダイアフラム

wsM1 = 0.4$I0

Iw$M1

fsM1 = (1-0.4$I0

Iw)$M1

鉛直荷重によるモーメントを考慮した場合

地震荷重によるモーメント分布

ウェブプレート外ダイアフラム

M2a bM p*

dSwp2

wsM2

fsM2 =bM p

bM fp$M2

wsM2 =bM p

bMwp$M2

db

a bM p*

db

fsM2

dSwp2

db

fsM2

db

a bM p*

鉛直荷重によるモーメントを考慮した場合

地震荷重によるモーメント分布

(4) 溶接脚長の設計式

 ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部に必要な溶接脚長は,設計条件 1),2)を満たさなけ

ればならないので,溶接脚長 dswpの設計式は次式で与えられる.

dswp = max {dswp1 , dswp2} (A8.20)

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第9章  結 論

9. 1 本論文の結論

 本論文では,外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部を対象として,接合部耐力の算定方法な

らびに梁先行降伏を想定した外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計法の構築を目的として研

究を行った.第 2章から第 8章で得られた結論を以下にまとめる.

 第 2章では,中柱の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を対象として,任意の接合部寸法に適

用できる耐力算定式を理論的・実験的に検討した.第 2章で得られた結論は以下のとおりである.

[1] (2.27)式による降伏耐力の計算値は,実験値に対して最大で 3割程度の過大評価を与えるもの

もあるが,全体的に両者は精度良く一致した.

[2] (2.29)式による設計用最大耐力の計算値は,概ね実験値より低い値を示す.また,設計用最大

耐力の計算値に対応する変形は,梁端回転角に換算すると概ね 1/100radであり,過大な変形

ではない.

[3] 外ダイアフラムと角形鋼管柱の隅肉溶接脚長の実測値が (2.35)式による必要値に満たない試

験体は,隅肉溶接部の破断で終局に到った.したがって,(2.35)式による隅肉溶接部の設計は

妥当である.

[4] (2.27),(2.29)式の算定は数値解析を要するので,簡単かつ精度良く耐力を算定するための近

似式((2.32),(2.33)式)を誘導した.また,(2.32),(2.33)式にそれぞれ l=1.0,l *=1.0を

適用することによって得られる耐力近似値は,(2.27),(2.29)式による耐力算定値と精度良く

一致することを示した.

以上より,接合部の設計において,以下の設計式を用いることを提案する.

[5] 短期許容耐力(降伏耐力)に対する検討:(2.32)式を適用する.ただし,(2.32)式の xapには (2.30)

式および l=1.0を適用する.

[6] 最大耐力に対する検討:(2.33)式を適用する.ただし,(2.33)式の xap* には (2.31)式および

l*=1.0を適用する.

[7] 隅肉溶接部の必要脚長に対する検討:(2.35)式を適用する.ただし,(2.35)式の x *には (2.31)

式および l*=1.0を適用する.

 第 3章および第 4章では,外柱(側柱・隅柱)の外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部を対象と

して,耐力算定式を理論的・実験的に検討した.第 3章では梁芯と柱芯が一致する接合部(無偏心接

合部),第 4章では梁が偏心して柱に取り付く接合部(偏心接合部)を対象とした.第 3章および第 4

章で得られた結論は以下のとおりである.

[8] 無偏心接合部を対象とした外ダイアフラムの降伏耐力は,(3.9),(3.11)式を用いて算定できる.

ただし,(3.9),(3.11)式は以下の範囲において適用される.

 (3.9)式:h'd >hdのとき

 (3.11)式:h'd <hdのとき

記号,h'd:外壁側の外ダイアフラムせい(図 3.3(e),図 3.4参照)

[9] (3.12),(3.13)式による設計用最大耐力の計算値は,最大耐力実験値より 3割以上低い値を示

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すが,そのときの鋼管面外変形は梁端回転角(梁せいが鋼管幅の 1.5倍を想定)に換算すると

1/200~ 1/50rad程度に相当し,過大な変形ではない.

[10] (3.14),(3.18)式による降伏耐力の近似値および (3.15),(3.19)式による設計用最大耐力の近似

値は,数値解析解 x,x *を用いて得られる降伏耐力および最大耐力の精算値に比べて高々 10%

程度の誤差である.

[11] 本論文で対象とする外ダイアフラムの場合,偏心量が増加すると耐力が低下することを有限

要素法解析により明らかにした.

[12] 無偏心接合部の耐力算定式に偏心による低減係数((4.6)式)を導入することにより偏心接合

部の耐力算定式を誘導した.本算定式による耐力計算値と有限要素法解析結果はよく一致し

たので,偏心による耐力低下傾向を概ね表現することができたといえる.

 第 5章では,従来の外ダイアフラムに比べて施工性の向上が図れる分割外ダイアフラムを提案し,

柱梁接合部の引張側を取り出した単純模型実験および解析的検討により以下の結論を得た.

[13] 梁フランジと高力ボルト接合される外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の耐力算定式を

提示し,接合部引張実験結果により耐力算定式が妥当であることを確認した.

[14] 外ダイアフラムと梁フランジの接合方法の違い(高力ボルト接合,溶接接合)が弾塑性挙動

に与える影響を検討した結果,両者の力学性能はすべりが発生する程度まで同等であると見

なせることがわかった.

[15] 分割外ダイアフラムの降伏耐力は,1枚板タイプの外ダイアフラム(高力ボルト接合)と同等

の値を示す.したがって,1枚板タイプの外ダイアフラムに対して構築した耐力算定式は分割

外ダイアフラムにも適用できる.

[16] 分割外ダイアフラムは,主すべり発生後も 1枚板タイプの外ダイアフラム(高力ボルト接合)

と同等の力学性能を示す.

[17] (5.11)式による分割外ダイアフラムの直交力算定結果に基づいて,添板および高力ボルト接合

部の設計に関する検討を行った結果,本接合部における添板および高力ボルト接合部の設計

時に直交力を考慮する必要はなく,従来通り梁フランジ応力に対する設計を行えばよいこと

を明らかにした.

 第 6章では,高いすべり係数が期待できるアルミ溶射に着目して,一連のすべり試験を実施した.

すべり試験より得られた結論は以下のとおりである.

[18] 添板をアルミ溶射することにより,従来の摩擦面(赤錆,ブラスト)に比べて高いすべり係

数が得られる.

[19] 高すべり係数化に効果的なパラメータは溶射皮膜厚である.本実験範囲(100~ 400nm)で

は,溶射皮膜が厚いほどすべり係数は大きくなる.300nm以上の溶射皮膜厚を確保することで,

ほぼ 0.8以上のすべり係数が得られた(ただし,母材の塑性化や肌すきの影響は除く).

[20] すべり係数を低下させる主な要因は,母材の塑性化と肌すきである.それぞれのパラメータ

に対して最悪の条件下(母材が塑性化する試験体でボルトを 2列,肌すき 1.0mmの試験体で

ボルトを 1列とした.溶射皮膜厚は 300nm以上)で行ったすべり試験から,0.7以上のすべ

り係数が得られた.したがって,これ以上のボルト列数に対しても 0.7以上のすべり係数が得

られることは明らかである.

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[21] [19],[20]より,アルミ溶射添板では,300nm以上の溶射皮膜厚を確保すれば,実用上の様々

な劣化要因に対しても 0.7以上のすべり係数が発現されそうである.

[22] 1ヶ月間のリラクゼーション測定により,ボルト張力の低下が 2%程度に収まることを確認し

た.これは,従来摩擦面(赤錆)のリラクゼーション特性と変わらない結果であり,アルミ

溶射によるリラクゼーション特性への影響が現れなかったことを示している.また,1ヶ月経

過してもすべり係数が低下することはなかった.

[23] ボルト孔前面の摩擦力による応力伝達は,文献 6.9)の方法を用いればよいと考えられる.

[24] 母材側摩擦面処理の違いおよび摩擦接合面の水濡れ・傷・油汚れがすべり係数に及ぼす影響

は小さい.

 第 7章では,分割外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の部分架構試験体を用いて接合部の

力学挙動を検討した.第 7章で得られた結論は以下のとおりである.

シリーズ I(添板摩擦面処理および分割外ダイアフラムの分割方向をパラメータとして)

[25] 分割外ダイアフラムのスリットの方向が異なっても力学性能は同等である.

[26] 第 2章および第 5章で提案した設計式による外ダイアフラムの耐力算定は妥当である.

[27] 本試験体では,高力ボルト接合部のすべりが履歴性状に大きく影響を及ぼす結果となった.一

因として,外ダイアフラムの塑性化によりボルト張力が大きく減少し,その結果すべり耐力

が低下したことが挙げられる.

[28] 接合部の局部変形に起因して,梁の弾性剛性実験値は剛接を仮定した弾性剛性計算値に比べ

て 25~ 30%低下した.既往の局部剛性評価式 7.2)を利用すれば,梁の弾性剛性実験値と計算

値は概ね一致することが確かめられた.

シリーズ II(外ダイアフラムと梁の接合法,柱の部位・種類および梁偏心の有無をパラメータとして)

[29] 曲げ耐力に関して

1) 降伏曲げ耐力:梁のボルト孔欠損部(第 1ボルト,図 7.14)および外ダイアフラムのいずれ

で耐力が決まる場合も,耐力計算値と実験値は概ね一致した.ただし,B-3(CFT,偏心)

については,実験値をかなり過小評価する結果となった.これは,圧縮側におけるコンクリー

トの効果を考慮していないことが一因であると考えられる.現状でコンクリートの効果を考

慮するには到らないが,本実験の範囲では,B-3(CFT,偏心)の外ダイアフラムの耐力

はA-4(中空,無偏心外柱)の外ダイアフラムの耐力と同程度である.

2) すべり耐力:母材(外ダイアフラムあるいは梁)が塑性化することによってすべり耐力は低

下するが,設計用すべり係数である 0.7より小さい耐力レベルでは,ボルト接合部のすべり

による回転角が急増することはなかった.なお,すべり耐力は,外ダイアフラムの第 1ボル

ト位置(図 7.14)におけるすべり耐力を柱フェイス位置に換算して得られる曲げ耐力として

算定した.

3) 保有耐力(梁の全塑性曲げ耐力):梁の保有耐力時の梁回転角(局部変形を含む)は 0.01~

0.015rad程度であり,残留回転角では 0.005rad以下に収まった.

4) 最大曲げ耐力:接合部係数は設計値である 1.25以上を確保できた.

以上より,第 7章で提案した耐力算定法は妥当であるといえる.

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[30] 弾性剛性に関して:梁端(柱フェイス位置)の接合条件を剛接,柱フェイス-梁継手間に梁

と同一断面を仮定して得られる弾性剛性計算値は,実験値とよく一致した.これは,外ダイ

アフラムの拡幅部やボルト接合部の添板による剛性の増大が見込めるため,鋼管壁の局部変

形による剛性低下を無視してもよいことを表している.ただし,(7.6),(7.8)式によって外ダ

イアフラムの曲げ耐力を十分に確保しておく必要がある.

[31] すべりの問題:本実験の範囲では,外ダイアフラムの降伏曲げ耐力よりすべり耐力が大きくな

る程度に設計すれば,2ip程度の振幅まではすべりが履歴挙動に与える影響は小さい.設計上,

4i p振幅まで紡錘形の履歴挙動を確保する必要がある場合は,ボルト本数を増やす対策が必要

である.

[32] ウェブプレートが負担する曲げモーメントは非常に小さいので,設計時には無視できる.

[33] 外ダイアフラムと梁の高力ボルト継手の設計において,0.4のウェブ伝達効率を適用できる.

[34] 塑性変形能力について:高力ボルトにより外ダイアフラムと梁を接合する場合,最も変形能

力が小さい偏心タイプの試験体でも 100程度の累積塑性変形倍率が得られた.高力ボルト接

合のため品質のバラツキが小さいので,100以上の累積塑性変形倍率が安定して得られるもの

と考えられる.したがって,高力ボルト接合による外ダイアフラム形式柱梁接合部は,通し

ダイアフラム形式の梁端接合部 9.1)より高い変形能力を安定して有するといえる.

 第 8章では,外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計項目をまとめ,いくつかの設計例題を

通して設計手順を例示した.得られた結論は以下のとおりである.

[35] 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部は,図 8.5のフローチャートに従って設計できる.

9. 2 今後の課題

 本研究で提案した設計式の考え方は,円形鋼管柱に接合される外ダイアフラムに対しても応用でき

るものと考えられる.円形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの設計式は,「鋼管構造設計施工指針・

同解説 9.2)」に記載されている.これは,上場らによる一連の実験結果 9.3),9.4)から得られた回帰式であり,

その適用性は十字形架構実験によって鉛直荷重時および水平荷重時についても検討されている 9.5),9.6).

ただし,第 1章で述べた (1.1)式と同様に実験範囲での適用に限定されている.また試験体の大部分

がリングスチフナー(リング状のダイアフラムを鋼管の外周に溶接する形式)を対象としたものであ

る.任意形状の外ダイアフラムを対象とした場合に,本研究の耐力算定法は有効であると考えられる.

この問題については,今後の研究課題としたい.

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付 録

A. 1 記号一覧

Abw : 梁のせん断断面積

An : ボルト孔欠損部における正味断面積

Ans : せん断降伏線における有効断面積

Ant : 引張降伏線における有効断面積

Ants : 引張降伏線とせん断降伏線における有効断面積

mA : 領域mの面積

a : 外ダイアフラムの出寸法

Bd : 外ダイアフラムの端部幅

Bf : 梁フランジ幅

B0, B1, B2 : xの近似展開で使用した記号(付 2.3)

b : 梁フランジ縁から鋼管角部までの距離

Ci,C'i : 領域 IIIの応力仕事に含まれる係数(i=1~ 3)

c : 外ダイアフラム端部の角部から鋼管ウェブまでの距離(中柱の場合)

ci : 外壁と反対側の外ダイアフラム端部の角部から鋼管ウェブまでの距離

co : 外壁側の外ダイアフラム端部の角部から鋼管ウェブまでの距離

c1 : 梁フランジと外ダイアフラムの隙間

D : 角形鋼管柱の幅

Db : 梁せい

Dd : 上下の外ダイアフラムの外法寸法

Di,D'i : 領域 IIIの応力仕事に含まれる係数(i=1~ 3)

d : ボルト孔径

db : 梁フランジ中心間距離

E : ヤング係数

Ei,E'i : 領域 IIIの応力仕事に含まれる係数(i=1~ 3)

e : 梁の偏心量

ed : 外ダイアフラムのはしあき寸法

ef1 : 梁フランジのはしあき寸法

e1 : 添板のはしあき寸法

梁端のボルト孔のはしあき寸法

F :すべり試験における荷重

Fbu : 梁の引張強さ(第 8章設計例)

Fby : 梁の降伏強さ(第 8章設計例)

Fcu : 柱の引張強さ(第 8章設計例)

Fcy : 柱の降伏強さ(第 8章設計例)

Page 189: Title 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設 … · 柱と梁の接合方法の一つとして図1.1 に示す外ダイアフラムがある.これは,柱外周に鋼板を溶接

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Fdu : ダイアフラムの引張強さ(第 8章設計例)

Fdy : ダイアフラムの降伏強さ(第 8章設計例)

Fey : ボルト接合部の降伏耐力

Fny : ボルト孔欠損を考慮した正味断面における降伏耐力

Fs : すべり試験におけるピーク荷重

Fspin : フランジ内添板の抵抗

Fspyin : フランジ内添板の降伏引張耐力

Fspout : フランジ外添板の抵抗

Fspyout : フランジ外添板の降伏引張耐力

FY : 直交力の算定値

cFw : 節点①からスリット位置までの隅肉溶接部におけるせん断抵抗

cFwy : 節点①からスリット位置までの隅肉溶接部の降伏せん断耐力

wpFw : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部における Y方向の抵抗

wpFwy : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の降伏耐力

0.2Fs : 0.2mm時耐力

G : せん断弾性係数

g : ボルトゲージ

hd : 外ダイアフラムせい

hdi : 外壁と反対側の外ダイアフラムせい(外柱の場合)

h'd,hdo : 外壁側の外ダイアフラムせい

Ib,I0 : 梁の断面 2次モーメント

Ibw,Iw : ウェブの断面 2次モーメント

Kcal,calKb : 外ダイアフラムの存在領域を梁と同一断面,および梁端接合条件を剛接と仮定して

算定した弾性剛性計算値(曲げ変形,せん断変形を考慮)

Kexp : 弾性剛性実験値.弾性載荷の± peakまでのデータから最小二乗近似により得た直

線の傾き

calKbj : 文献 7.2)の局部剛性評価式を考慮して算定した弾性剛性計算値

Lb : 梁長さ(柱芯-リンク材間距離,柱芯-載荷点間距離)

梁スパン

lb : 柱フェイス-載荷点間距離

ld : 境界線③④の長さ

lsp : 添板設置長さ

l12 : 境界線①②の長さ

Mbj : 梁端モーメント

Mj : 梁継手中心位置に作用する曲げモーメント

Mjw : ウェブ添板が負担する曲げモーメント

Mslip : すべり発生時における外ダイアフラムの第 1ボルト位置での曲げ耐力

Mslip* : Mslipを柱フェイス位置に換算した曲げ耐力

rMslip* : 設計ボルト張力と設計用すべり係数を用いて算定したすべり耐力

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Mwp : ウェブプレートの負担モーメント

bMp : 梁の全塑性モーメント

bM p* : 梁の全断面の全塑性モーメントの柱フェイス換算値

bMpe : ボルト孔欠損を考慮した梁の全塑性モーメント

bM pe* : 梁の第 1ボルト位置における全塑性モーメント(孔欠損考慮)到達時の柱フェイス

位置換算モーメント

bMy : 梁の全断面の降伏モーメント

bMy* : 梁の全断面の降伏モーメントの柱フェイス換算値

buMy : 高力ボルト接合の場合の梁の降伏モーメント

bMye : ボルト孔欠損を考慮した梁の降伏モーメント

bMye* : 梁の第 1ボルト位置における降伏モーメント(孔欠損考慮)到達時の柱フェイス位

置換算モーメント

btMye

: 梁の第 1ボルト前面で伝達される摩擦力による耐力増を考慮した梁第 1ボルト位置

における降伏曲げ耐力

btMye

* : btMyeの柱フェイス換算値

calMy : 降伏曲げ耐力計算値

expMmax : 最大耐力実験値

expMy : 降伏曲げ耐力実験値(Mbj-ibj関係骨格曲線における 1/3接線剛性時耐力)

jMy : 外ダイアフラムの降伏曲げ耐力

jMu : 梁端接合部の最大曲げ耐力

外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計用最大曲げ耐力

M1 : 梁継手中心位置における曲げモーメント(短期許容耐力設計時)

M2 : 梁継手中心位置における曲げモーメント(保有耐力設計時)

fsM1 : 梁継手中心位置におけるフランジ添板の負担モーメント(短期許容耐力設計時)

fsM2 : 梁継手中心位置におけるフランジ添板の負担モーメント(保有耐力設計時)

wsM1 : 梁継手中心位置におけるウェブ添板の負担モーメント(短期許容耐力設計時)

wsM2 : 梁継手中心位置におけるウェブ添板の負担モーメント(保有耐力設計時)

m : 摩擦面の数

ms : せん断破断面の数

Nb : ボルト張力

Ns : ピーク荷重時ボルト張力

N0 : 設計ボルト張力

初期ボルト張力(載荷開始時のボルト張力)

iNs : 第 iボルトのピーク荷重時ボルト張力(i=1~ 4)

iN0 : 第 iボルトの初期張力(i=1~ 4)

n : ボルト列数

梁端のボルト列数

nb : ボルト本数

nr : 想定破断線上の高力ボルト本数

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梁の孔欠損部におけるボルト行数

P : 外力

実験における荷重

FEM解析における荷重

Pfy : 降伏領域 2(x+t/2)で負担する X方向応力の総和

Pm : 外ダイアフラム形式柱梁接合部の最大耐力

Pm,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する最大耐力(i=1,2)

Pp : 外ダイアフラム形式柱梁接合部の崩壊荷重

Pp,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する崩壊荷重(i=1,2)

Psy : 外ダイアフラムから角形鋼管ウェブへ伝達される X方向応力の総和

Pu,Pu0 : 外ダイアフラム形式柱梁接合部の設計用最大耐力

Pu,ap : Puの近似式

Pu,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する設計用最大耐力(i=1,2)

無偏心外柱の崩壊機構 iに対応する偏心を考慮した設計用最大耐力(i=1,2)

Pu,(i)ap : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する設計用最大耐力近似式(i=1,2)

Pui e= 0 : 無偏心の場合の外ダイアフラムが,設計用最大耐力時に外壁と反対側で伝達する応

力和

Puo,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iにおいて,設計用最大耐力時に外壁側で伝達される応力の

総和(i=1,2)

Pu1,jPu1 : 斜方降伏線と引張降伏線からなる局所的ちぎれ破断機構により決まる外ダイアフラ

ムの破断耐力

Pu2,jPu2 : 引張降伏線とせん断降伏線からなる局所的ちぎれ破断機構により決まる外ダイアフ

ラムの破断耐力

Pu3,jPu3 : はしぬけ破断機構によりきまる外ダイアフラムの破断耐力

Pu4,jPu4 : ボルトの破断により決まる外ダイアフラムの破断耐力

Py : 外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の短期許容耐力,降伏耐力

Py,ap : Pyの近似式

Py,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する降伏耐力(i=1,2)

無偏心外柱の崩壊機構 iに対応する偏心を考慮した降伏耐力(i=1,2)

Py,(i)ap : 無偏心外柱の崩壊機構 iに対する降伏耐力近似式(i=1,2)

P yi e= 0 : 無偏心の場合の外ダイアフラムが,降伏耐力時に外壁と反対側で伝達する応力和

Pyo,(i) : 無偏心外柱の崩壊機構 iにおいて,降伏耐力時に外壁側で伝達される応力の総和

(i=1,2)

Py1 : すべり係数の低下を考慮した場合のすべり耐力計算値

calPm : 最大耐力計算値

calPp : 崩壊荷重計算値

calPu : 設計用最大耐力計算値

calPu,ap : 設計用最大耐力近似値

calPy : 降伏耐力計算値

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calPy,ap : 降伏耐力近似値

dPwpu : ウェブプレート-外ダイアフラム間の隅肉溶接部の最大耐力

dPwpy : ウェブプレート-外ダイアフラム間の隅肉溶接部の降伏耐力

expPu : 最大耐力実験値

expPy : 荷重 P-変形 u関係の接線剛性が初期剛性の 1/3となるときの荷重(5章)

expPy,(0.15%) : 0.15%オフセット耐力

expPy,(1/3) : 荷重 P-変形 u関係の接線剛性が初期剛性の 1/3となるときの荷重(2章,3章)

FEMPy,(0.15%) : FEM解析結果における 0.15%オフセット耐力

FEMPy,(1/3) : FEM解析結果における 1/3接線剛性時耐力

jPu,jPu0 : 外ダイアフラムの引張最大耐力

jPy : 文献 1.5),2.6)の降伏耐力式

外ダイアフラムの引張降伏耐力

p : Pyまたは Puの vdytdDによる無次元化耐力

ボルトピッチ

pfwu : 設計用最大耐力時に前面隅肉溶接部に作用する単位長さあたりの力

pswu : 設計用最大耐力時に側面隅肉溶接部に作用する単位長さあたりの力

Qb : 梁せん断力

Qj : 梁-外ダイアフラム継手のせん断耐力検討用の梁せん断力(降伏耐力用)

Qjack : ジャッキ荷重

Qju : 梁-外ダイアフラム継手のせん断耐力検討用の梁せん断力(最大耐力用)

QL : 梁-外ダイアフラム継手設計時に考慮する鉛直荷重

Qp : 接合部パネルのせん断力

qbr : ボルト 1本あたりのすべり耐力

qbu : ボルト 1本あたりのせん断耐力(2面摩擦)

qswu : 隅肉溶接部の単位長さあたりの最大耐力

fwqu1 : 隅肉溶接に関する単位長さあたりの前面隅肉溶接の耐力

fwqu2 : 異形隅肉溶接に関する単位長さあたりの前面隅肉溶接の耐力

R : 層間変形角

Rc : 柱の変形による層間変形角成分

Rp : 接合部パネルの変形による層間変形角成分

re : 偏心による低減係数

rPy : 降伏耐力と組合せ応力の比

dSwp1 : ウェブプレートと外ダイアフラムの間の作用せん断力(短期許容耐力設計時)

dSwp2 : ウェブプレートと外ダイアフラムの間の作用せん断力(保有耐力設計時)

s,sc : 角形鋼管柱と外ダイアフラムの隅肉溶接部の脚長

sexp : 溶接脚長の実測値

sreq : 溶接脚長の必要値

swp,dswp : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の脚長

cswp : ウェブプレートと角形鋼管柱の隅肉溶接部の脚長

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dswp1 : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の必要脚長(短期許容耐力設計時)

dswp2 : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の必要脚長(保有耐力設計時)

s1 : 両面隅肉溶接の脚長

s2 : 異形隅肉溶接の脚長

t,tcf : 角形鋼管の板厚

tbf,tf : 梁フランジの板厚

td : 外ダイアフラムの板厚

tsp : 添板の板厚

母材先行降伏の影響で低下したときのすべり係数

twp : ウェブプレートの板厚

u : 鋼管局部変形

すべり

ue : 支圧開始時のすべり

すべり試験片のボルト孔近傍あるいは無孔試験体の中央部の伸び歪

uj : 節点 jにおける X方向の変位

us : ピーク荷重時のすべり

mu : 三角形要素mにおける X方向の変位関数

vj : 節点 jにおける Y方向の変位

mv : 三角形要素mにおける Y方向の変位関数

W : 二軸試験機により添板に与える一定荷重

Wc : 鋼管フランジの応力仕事

Wex : 外力仕事

Win : 外ダイアフラム形式柱梁接合部の応力仕事

Wi! : Mbj-ibj関係における履歴面積の累積値

mWin : 領域mの応力仕事

IWd : 領域 Iの応力仕事

IIWd : 領域 IIの応力仕事

IIIWd : 領域 IIIの応力仕事

IIWd,(2) : 無偏心外柱の崩壊機構 2に対する領域 IIの応力仕事

II'Wd,(2) : 無偏心外柱の崩壊機構 2に対する領域 II'の応力仕事

wspin : フランジ内添板の幅

Xj : 節点 jにおける X座標

x : 鋼管フランジの降伏領域を表すパラメータ

x* : 最大耐力時の鋼管フランジ降伏領域を表すパラメータ

x' : 文献 1.5),2.6)の鋼管フランジ降伏領域を表すパラメータ

xap : xの近似式

xap* : x*の近似式

Y : 外ダイアフラムの降伏比

Yj : 節点 jにおける Y座標

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bZfp : 梁フランジの塑性断面係数

bZp : 梁の塑性断面係数

bZwp : 梁ウェブの塑性断面係数

bZy : 梁の断面係数

a : 梁端の接合部係数

a12 : 境界線①②の法線と X方向のなす角度

mai : 一般化座標(i=1~ 6)

c,cf : すべり時に第 1ボルトが負担する摩擦力に対する第 1ボルト前面で母材から添板に

伝達される摩擦力の割合

cp : 接合部パネルの最大せん断歪

mcXY : 面内せん断歪

d : 荷重(X方向)への仮想変位

f : 外ダイアフラムの歪ゲージ計測値

fb : ボルトの軸歪

mfX : X方向の歪

mfY : Y方向の歪

U : 降伏関数

z : ウェブの伝達効率

z' : ウェブの伝達効率(梁全塑性時)

{ : 境界線③④と Y方向のなす角度

u{ : 無偏心外柱の崩壊機構 2に対する境界線③④と Y方向のなす角度

h : 塑性変形による累積塑性変形倍率

hE : 履歴面積による累積塑性変形倍率

l : 鋼管フランジの降伏領域を表す係数

l* : 最大耐力時の鋼管フランジ降伏領域を表す係数

l' : 文献 1.5),2.6)の鋼管フランジ降伏領域を表す係数

m : 非負の比例係数(塑性流れの法線則)

すべり係数低下率

n : すべり係数

nf : 摩擦係数

ns : ピーク荷重時のすべり係数

n0 : 接合部がすべり耐力に達する時点で,母材正味断面の応力が降伏応力の 8割以下の

場合に得られるすべり係数

expns : 外ダイアフラムの部分架構実験におけるすべり係数実験値

0.2ns : 0.2mm時すべり係数

0.2ns,pi : パイ形変位計が 0.2mmに達したときのすべり係数

i : 水平ハンチ角度

ui : 無偏心外柱の崩壊機構 2に対する外壁側の水平ハンチ角度

ibj : 梁回転角(接合部局部変形を含む)

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ii : 外壁と反対側の水平ハンチ角度

ij : 接合部局部回転角

uio : 塑性解析モデルを修正後の外壁側の水平ハンチ角度

ip : 梁全塑性時に対応する梁の弾性相対回転角

isb : 梁フランジ-添板間のすべりによる回転角

isd : フランジ添板-外ダイアフラム間のすべりによる回転角

islip : すべりによる回転角

iibj(p)! : Mbj-ibj関係の各サイクルにおける梁回転角の塑性変形成分の累積値

vbfy : 梁フランジの降伏応力

vcu : 角形鋼管の引張強さ,

vcy : 角形鋼管の降伏応力

vd : FEM解析結果における外ダイアフラムの荷重方向応力

vdu : 外ダイアフラムの引張強さ

vdy : 外ダイアフラムの降伏応力

vspy : 添板の降伏応力

vwu : 溶接金属の引張強さ

vy : 母材の降伏点

RvY : フランジ外添板の直交方向応力

cvwy : 角形鋼管柱と外ダイアフラムの隅肉溶接部の溶接金属の降伏応力

dvwpu : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の溶接金属の引張強さ

dvwpy : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の溶接金属の降伏応力

mvX : X方向の応力

mvY : Y方向の応力

svX : 外ダイアフラムから角形鋼管ウェブへ伝達される X方向応力

svX* : 設計用最大耐力時の svX

wpvwy : ウェブプレートと外ダイアフラムの隅肉溶接部の溶接金属の降伏応力

IvX* : 設計用最大耐力時における領域 Iの X方向応力

mxXY : 面内せん断応力

IxXY* : 設計用最大耐力時における領域 Iの面内せん断応力

p1,p2 : 節点⑤の仮想変位を表す比例係数

g : 外ダイアフラム板厚に対して必要とする溶接脚長の程度

すべり耐力比

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A. 2 参考文献

第 1 章

1.1) 日本建築学会近畿支部鉄骨構造部会:1995年兵庫県南部地震鉄骨造建物被害調査報告書,1995.5.

1.2) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

1.3) 日本建築学会:鋼管構造設計施工指針・同解説,1990.

1.4) 田渕基嗣,金谷 弘,上場輝康:角形鋼管・H形はり接合部の局部耐力推定式 -角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 2-,日本建築学会構造系論文報告集,第 352号,pp.79-89,1985.6.

1.5) 田中 剛,田渕基嗣,金 成龍,山本義徳:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の降伏耐力の評価,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 12巻第 48号,pp.31-38,2005.12.

1.6) 田渕基嗣,金谷 弘,上場輝康:角形鋼管・H形はり接合部の局部破壊 -角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 1-,日本建築学会構造系論文報告集,第 349号,pp.71-79,1985.3.

1.7) 日本建築センター:冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル(改訂版),2003.9.

1.8) 宍戸雄一,青木博文,寺門三郎:金属系新素材・新材料の利用技術の開発(建設省総合プロジェクト・新素材)その 21 60キロ級高性能鋼を用いた高力ボルト摩擦接合部のすべり耐力に関する実験,日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C構造 II,pp.1061-1062,1991.9.

1.9) 脇山広三,井上一朗,小林正樹,金 振鎬,宇野暢芳,志村保美:高力ボルト摩擦接合部の高すべり係数化に関する基礎実験,日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C構造 II,pp.1419-1420,1993.9.

1.10) 宇野暢芳,井上一朗,志村保美,脇山広三:硬さが異なる鋼材間の摩擦係数に関する基礎的研究,日本建築学会構造系論文集,第 494号,pp.123-128,1997.4.

1.11) 宇野暢芳,井上一朗,竹内一郎,東清三郎,北 卓也:高摩擦係数高力ボルト接合部の耐力に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,第 502号,pp.127-133,1997.12.

1.12) 寺田隆一,小堀 徹,原田公明:明治生命さいたま新都心ビルの設計と施工(その2.すべり係数0.6

以上を確保できる高性能鋼高力ボルトの性能確認実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C-1構造 III,pp.561-562,2000.3.

1.13) 小野聡子,中平和人,辻岡静雄,井上一朗:アルミ溶射ダンパーの静的および動的履歴特性に関する実験的研究,構造工学論文集,Vol.41B,pp.1-8,1995.3.

1.14) 吉岡智和,緒方崇浩,佐藤孝典,山本憲治,御子柴正,大久保昌治,山田丈富,寺井雅和:組立制震構造の開発(その 15.異なる厚さのアルミ板を挟んだ高力ボルト摩擦接合部のすべり試験),日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.987-988,2007.8.

1.15) 脇山広三,金 振鎬,多田元英,桑原 進,宇野暢芳:高力ボルトのねじ形状に関する解析的研究 ねじ底応力集中の緩和,日本建築学会構造系論文報告集,第 452号,pp.121-127,1993.10.

1.16) 平井敬二,脇山広三,宇野暢芳:高力ボルトの遅れ破壊に関する実験的研究(その 1.限界拡散性水素濃度法の提案),日本建築学会構造系論文集,第 490号,pp.215-222,1996.12.

1.17) 宇野暢芳,久保田学,永田匡宏,樽井敏三,蟹澤秀雄,山崎真吾,東清三郎,宮川敏夫:超高力ボルト SHTB,新日鐵技報,第 387号,pp.85-93,2007.10.

1.18) 日本建築学会 構造委員会 鋼構造運営委員会:高力ボルト接合における高強度化技術の最前線,2008年度日本建築学会大会(中国)構造部門(鋼構造)パネルディスカッション資料,pp.1-14,2008.9.

1.19) 仲 威雄,加藤 勉,湯浅 丹,田中淳夫,佐々木哲也:水平荷重を受ける鋼構造柱・はりおよびその接合部の挙動について(報告・その 2),日本建築学会論文報告集,第 102号,pp.37-43,1964.9.

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1.20) 伴 潔,今井克彦:三角板により補強された角形鋼管柱・H形鋼梁接合部の実験的研究(接合部を単純化したモデルによる実験),日本建築学会論文報告集,第 262号,pp.73-80,1977.12.

1.21) 今井克彦:三角板により補強された角形鋼管柱・H形鋼梁接合部の実験的研究(その 3.単純化した接合部の耐力及び変形について),日本建築学会近畿支部研究報告集,pp.249-252,1979.6.

1.22) 田渕基嗣,金谷 弘:水平荷重時における角形鋼管柱・H形はり接合部の耐力評価 -角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 3-,日本建築学会構造系論文報告集,第 358号,pp.52-62,1985.12.

1.23) 田渕基嗣,金谷 弘:製法の異なる角形鋼管柱・H形はり接合部の耐力に関する研究,日本建築学会構造系論文報告集,第 361号,pp.104-112,1986.3.

1.24) 田渕基嗣,金谷 弘:角形鋼管柱・H形はり接合部パネルの耐力と変形能力に関する研究,日本建築学会構造系論文報告集,第 367号,pp.69-79,1986.9.

1.25) 森田耕次,江波戸和正,渡辺 仁,山本 昇,安田博和,里見孝之:箱形断面柱- H形断面はり接合部のダイアフラム補強に関する研究 -接合部降伏耐力の評価-,日本建築学会構造系論文報告集,第 388号,pp.100-111,1988.6.

1.26) 吉里二郎,中村雄治,松尾 彰,上牧久二:4枚板外ダイアフラムを用いた CFT柱部分架構の挙動について,日本鋼構造協会鋼構造年次論文報告集,第 4巻,pp.57-64,1996.11.

1.27) 中村雄治,松尾 彰,上牧久二:リング形外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の弾塑性性状に関する実験的研究,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 5巻第 20号,pp.45-52,1998.12.

1.28) 越智健之,甲山泰章,光成和昭,松尾隆一:外ダイアフラム形式の角形鋼管柱-梁接合部の実験(その 1.実験計画),(その 2.単純せん断実験),(その 3.ト形架構実験),(その 4.考察),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1構造 III,pp.845-852,2001.9.

1.29) 中野建蔵,越智健之,黒羽啓明,牧野雄二,植松栄二郎,北野隆司:鋳鋼製外ダイアフラムを用いた柱梁の実験的研究(その 1.せん断形単純モデルの実験),(その 2.局部変形の考察),(その 3.十字形架構の実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.509-514,1999.9.

1.30) 千手佑三,越智健之,牧野雄二,黒羽啓明,中野建蔵,北野隆司:鋳鋼製外ダイアフラムを用いた柱梁の実験的研究(その 4.せん断形単純モデルの追加実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C-1構造 III,pp.629-630,2000.9.

1.31) 杉本浩一,高橋泰彦,藤田佳広,西村勝尚,新居 努:外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱- H形梁接合部の実験的研究,日本鋼構造協会鋼構造年次論文報告集,第 9巻,pp.451-456,2001.11.

1.32) 松井千秋,河野昭彦,李 熾曙:中空およびコンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁の新接合形式に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,第 486号,pp.133-142,1996.8.

1.33) 福元敏之,荻原行正,藤村 博,久保田 淳:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -サイドスチフナ形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第611号,pp.149-156,2007.1.

1.34) 呉 堅,池端功太郎,黒羽啓明,牧野雄二,越智健之,田中正光:外ダイアフラムを用いた柱梁接合部の実験的研究(その 1.実験概要・結果),(その 2.実験結果の検討),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.517-520,1999.9.

1.35) 山成 實,小川厚治,黒羽啓明,海原広幸:外ダイアフラム接合部の有限要素解析による剛性評価式(半剛接鋼骨組柱梁仕口の復元力特性に関する研究),構造工学論文集,Vol.38B,pp.475-484,1992.3.

1.36) 海原広幸,山成 實,小川厚治,黒羽啓明,渡辺純仁:角形鋼管柱梁接合部の局部変形挙動に関する実験(単純化試験体の圧縮および引張実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C構造 II,pp.1617-1618,1990.10.

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1.37) 海原広幸,山成 實,小川厚治,黒羽啓明:半剛接合された角形鋼管柱・H形鋼梁骨組の実験的研究(その 1.実験),(その 2.考察),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C構造II,pp.1555-1558,1993.9.

1.38) 山成 實,金谷 弘:鋼管柱・はり仕口の局部変形を考慮したラーメン骨組の解析について -鋼管柱ラーメンの復元力特性に関する研究 I-,日本建築学会論文報告集,第 334号,pp.29-36,1983.12.

1.39) 上場輝康,江見卓郎,田渕基嗣,Charlie Taclendo:外ダイアフラム補剛形式角形鋼管柱-梁接合部の局部変形挙動に関する研究,日本鋼構造協会鋼構造年次論文報告集,第 6巻,pp.197-204,1998.11.

1.40) 江見卓郎,上場輝康,田渕基嗣:外ダイアフラム形式鋼管柱-梁接合部の局部変形挙動に関する研究,日本鋼構造協会鋼構造年次論文報告集,第 7巻,pp.435-442,1999.11.

1.41) 江見卓郎,上場輝康:外ダイアフラム補剛形式角形鋼管柱-梁接合部の局部変形挙動に関する研究(その 1.数値解析結果),(その 2.局部変形挙動のモデル化),C-1構造 III,pp.623-626,2000.9.

1.42) 日本建築学会:鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説 -許容応力度設計と保有水平耐力-,2001.1

1.43) 松井千秋:コンクリート充填角形鋼管構造接合部スチフナの設計式について,日本建築学会中国・九州支部研究報告,第 5号,pp.317-320,1981.3.

1.44) 河野昭彦,松井千秋,村井 望:コンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁のダイヤフラム補強型接合部の局部変形に対する荷重-変形関係モデル,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 5巻第17号,pp.93-104,1998.3.

1.45) 河野昭彦,松井千秋,村井 望:コンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁からなるダイヤフラム補強型接合ラーメン架構の荷重-変形関係モデル,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 5巻第17号,pp.115-127,1998.3.

1.46) 福元敏之:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -外ダイアフラム形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第 586号,pp.227-234,2004.12.

第 2 章

2.1) 日本建築学会:鋼管構造設計施工指針・同解説,1990.

2.2) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

2.3) 田渕基嗣,金谷 弘,上場輝康:角形鋼管・H形はり接合部の局部破壊 -角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 1-,日本建築学会構造系論文報告集,第 349号,pp.71-79,1985.3.

2.4) 田渕基嗣,金谷 弘,上場輝康:角形鋼管・H形はり接合部の局部耐力推定式 -角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 2-,日本建築学会構造系論文報告集,第 352号,pp.79-89,1985.6.

2.5) 森田耕次,江波戸和正,渡辺 仁,山本 昇,安田博和,里見孝之:箱形断面柱- H形断面はり接合部のダイアフラム補強に関する研究 -接合部降伏耐力の評価-,日本建築学会構造系論文報告集,第 388号,pp.100-111,1988.6.

2.6) 田中 剛,田渕基嗣,金 成龍,山本義徳:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の降伏耐力の評価,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 12巻第 48号,pp.31-38,2005.12.

2.7) O.C.ツィエンキーヴィッツ,Y.K.チューン共著,吉識雅夫監訳:マトリックス有限要素法,3章,pp.30-33,1970.3.

2.8) E.H.Mansfield:Studies in collapse analysis of rigid-plastic plates with a square yield

diagram, Proc. of the Royal Society London, 241, Series A, pp.311-338, 1957.8.

2.9) 安井信行,吹田啓一郎,井上一朗:斜方隅肉溶接継目の破壊機構と最大耐力,日本建築学会構造系論文集,第 579号,pp.111-118,2004.5.

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2.10) 松尾隆一,越智健之,甲山泰章,光成和昭:外ダイアフラム形式の角形鋼管柱-梁接合部の実験(その 2.単純せん断実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1,構造 III,pp.847-848,2001.9.

2.11) 浅井英克,橋本康則,江戸宏彰,時野谷浩良,鈴井康正:角形鋼管柱に隅肉溶接された外ダイアフラムの引張弾塑性性状,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),C-1,構造 III,pp.603-604,2004.8.

第 3 章

3.1) 日本建築学会:鋼管構造設計施工指針・同解説,1990.

3.2) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

3.3) 松井千秋,河野昭彦,李 熾曙:中空およびコンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁の新接合形式に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,第 486号,pp.133-142,1996.8.

3.4) 福元敏之,荻原行正,藤村 博,久保田 淳:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -サイドスチフナ形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第611号,pp.149-156,2007.1.

3.5) 福元敏之,瀧 正哉,藤村 博,荻原行正:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -分割外ダイアフラム形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第 594号,pp.159-166,2005.8.

3.6) 久保田 淳,瀧 正哉,藤村 博,荻原行正,福元敏之:分割外ダイアフラム形式を用いたコンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部の実験的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),C-1構造 III,pp.1105-1106,2004.8.

第 4 章

4.1) 松井千秋,河野昭彦,李 熾曙:中空およびコンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁の新接合形式に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集,第 486号,pp.133-142,1996.8.

4.2) 福元敏之,荻原行正,藤村 博,久保田 淳:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -サイドスチフナ形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第611号,pp.149-156,2007.1.

4.3) 中村雄治,松尾 彰,上牧久二:リング形外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の弾塑性性状に関する実験的研究,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 5巻第 20号,pp.45-52,1998.12.

4.4) 山成 實,小川厚治,黒羽啓明,海原広幸:外ダイアフラム接合部の有限要素解析による剛性評価式(半剛接鋼骨組柱梁仕口の復元力特性に関する研究),構造工学論文集,Vol.38B,pp.475-484,1992.3.

第 5 章

5.1) 日本建築センター:冷間成形角形鋼管設計・施工マニュアル(改訂版),2003.9.

5.2) 田渕基嗣,金谷 弘,上場輝康:角形鋼管柱・H形はり接合部の局部破壊-角形鋼管柱溶接接合部の実験的研究 1-,日本建築学会構造系論文報告集,第 349号,pp.71-79,1985.3.

5.3) 越智健之,甲山泰章,光成和昭,松尾隆一:外ダイアフラム形式の角形鋼管柱-梁接合部の実験(その 1.実験計画),(その 2.単純せん断実験),(その 3.ト形架構実験),(その 4.考察),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1構造 III,pp.845-852,2001.9.

5.4) 福元敏之,瀧 正哉,藤村 博,荻原行正:コンクリート充填角形鋼管柱・鉄骨梁接合部局部の弾塑性性状に関する研究 -分割外ダイアフラム形式接合部-,日本建築学会構造系論文集,第 594号,pp.159-166,2005.8.

Page 200: Title 外ダイアフラムを用いた角形鋼管柱梁接合部の耐力と設 … · 柱と梁の接合方法の一つとして図1.1 に示す外ダイアフラムがある.これは,柱外周に鋼板を溶接

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5.5) E.H.Mansfield:Studies in collapse analysis of rigid-plastic plates with a square yield

diagram, Proc. of the Royal Society London, 241, Series A, pp.311-338, 1957.8.

5.6) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

第 6 章

6.1) 小野聡子,中平和人,辻岡静雄,井上一朗:アルミ溶射ダンパーの静的および動的履歴特性に関する実験的研究,構造工学論文集,Vol.41B,pp.1-8,1995.3.

6.2) 吉岡智和,緒方崇浩,佐藤孝典,山本憲治,御子柴正,大久保昌治,山田丈富,寺井雅和:組立制震構造の開発(その 15.異なる厚さのアルミ板を挟んだ高力ボルト摩擦接合部のすべり試験),日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.987-988,2007.8.

6.3) 宍戸雄一,青木博文,寺門三郎:金属系新素材・新材料の利用技術の開発(建設省総合プロジェクト・新素材)(その 21.60キロ級高性能鋼を用いた高力ボルト摩擦接合部のすべり耐力に関する実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C構造 II,pp.1061-1062,1991.9.

6.4) 寺田隆一,小堀 徹,原田公明:明治生命さいたま新都心ビルの設計と施工(その2.すべり係数0.6

以上を確保できる高性能鋼高力ボルトの性能確認実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C-1構造 III,pp.561-562,2000.3.

6.5) 稲葉泰一,市原卓三:摩擦接合継手のすべり係数値と塗覆装材料の特性,防せい管理,Vol.28,No.11,pp.336-342,1984.11.

6.6) 日本溶射工業会:溶射 表面改質,2000.9.

6.7) 日本溶射工業会:防食溶射ガイドブック 6.8) 吉川工業株式会社 表面処理事業所:表面処理 6.9) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

6.10) 小林正樹,脇山広三,井上一朗,横尾浩史,宇野暢芳,志村保美:高力ボルト摩擦接合部の引張耐力に関する基礎的研究(その 1 摩擦面の接触圧分布に関する考察),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C構造 II,pp.1423-1424,1993.9.

6.11) 宇野暢芳,志村保美,竹内一郎:高力ボルト摩擦接合部の接触圧分布の測定,日本建築学会大会学術講演梗概集(東北),C-1構造 III,pp.567-568,2000.9.

6.12) 田中久一郎:摩擦のおはなし,日本規格協会,1985.

6.13) 宇野暢芳,井上一朗,志村保美,脇山広三:硬さが異なる鋼材間の摩擦係数に関する基礎的研究,日本建築学会構造系論文集,第 494号,pp.123-128,1997.4.

6.14) 日本建築学会 構造委員会 鋼構造運営委員会:高力ボルト接合における高強度化技術の最前線,2008年度日本建築学会大会(中国)構造部門(鋼構造)パネルディスカッション資料,pp.1-14,2008.9.

第 7 章

7.1) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

7.2) 山成 實,小川厚治,黒羽啓明,海原広幸:外ダイアフラム接合部の有限要素解析による剛性評価式(半剛接鋼骨組柱梁仕口の復元力特性に関する研究),構造工学論文集,Vol.38B,pp.475-484,1992.3.

7.3) 河野昭彦,松井千秋,村井 望:コンクリート充填角形鋼管柱と H形鋼梁のダイヤフラム補強型接合部の局部変形に対する荷重-変形関係モデル,日本鋼構造協会鋼構造論文集,第 5巻第17号,pp.93-104,1998.3.

7.4) 日本建築学会近畿支部鉄骨構造部会:通しダイアフラム形式で角形鋼管柱に接合される H形鋼梁の塑性変形能力に関する実大実験,1997.7.

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7.5) 田中智三,田渕基嗣,田中 剛,難波 尚:梁偏心接合形式の角形鋼管柱・梁接合部パネルに関する研究(その 1 有限要素解析による予備検討),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.551-552,1999.9.

第 8 章

8.1) 日本建築学会:鋼構造接合部設計指針,2006.3.

8.2) 井上一朗,吹田啓一郎:建築鋼構造 その理論と設計,鹿島出版会,2007.12.

第9章

9.1) 日本建築学会近畿支部鉄骨構造部会:通しダイアフラム形式で角形鋼管柱に接合される H形鋼梁の塑性変形能力に関する実大実験,1997.7.

9.2) 日本建築学会:鋼管構造設計施工指針・同解説,1990

9.3) 上場輝康,金谷 弘,藤原勝義,田渕基嗣:鋼管柱・H形はり接合部の単純模型実験 -鋼管柱溶接接合部の研究 I-,日本建築学会論文報告集,第 322号,pp.44-51,1982.12.

9.4) 上場輝康,金谷 弘,藤原勝義,田渕基嗣:鋼管柱・H形はり接合部の耐力推定式 -鋼管柱溶接接合部の研究 II-,日本建築学会論文報告集,第 325号,pp.67-73,1983.3.

9.5) 上場輝康,金谷 弘,田渕基嗣:鋼管柱・H形はり接合部の局部耐力 -鉛直荷重実験および水平荷重実験-,日本建築学会構造系論文報告集,第 360号,pp.147-156,1986.2.

9.6) 上場輝康,金谷 弘,田渕基嗣,脇田孝彦:鋼管柱・H形はり接合部の局部耐力 -高張力遠心鋳鋼管について-,日本建築学会構造系論文報告集,第 370号,pp.81-91,1986.12.

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A. 3 発表論文

1. 本論文に関係する発表論文

【日本建築学会構造系論文集】

1) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の耐力に関する理論的・実験的研究,日本建築学会構造系論文集,第 606号,pp.225-232,2006.8.

2) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の設計式,日本建築学会構造系論文集,第 618号,pp.221-228,2007.8.

3) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外柱を対象とした外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の耐力算定,日本建築学会構造系論文集,Vol.73,第 626号,pp.653-660,2008.4.

【日本鋼構造協会鋼構造論文集】

4) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する実験的研究,日本鋼構造協会鋼構造論文集,Vol.15,No.59,pp.87-98,2008.9.

【日本建築学会大会学術講演梗概集】

5) 金 成龍,松尾真太朗,田中 剛:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 1 塑性論に基づく崩壊荷重の誘導),日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),C-1構造 III,pp.783-784,2005.9.

6) 松尾真太朗,聲高裕治,田中 剛:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 2 接合部の局部引張実験(実験計画,実験結果)),日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),C-1構造 III,pp.785-786,2005.9.

7) 田中 剛,松尾真太朗,聲高裕治:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 3 接合部の局部引張実験(実験結果および考察)と FEM解析),日本建築学会大会学術講演梗概集(近畿),C-1構造 III,pp.787-788,2005.9.

8) 田中 剛,松尾真太朗,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 4 上界定理による崩壊荷重の誘導),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1構造 III,pp.533-534,2006.9.

9) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 5 下界定理による降伏耐力評価),日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1構造 III,pp.535-536,2006.9.

10) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 6 側柱形式を想定した接合部引張実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.799-800,2007.8.

11) 高田遼太,東清三郎,松尾真太朗,井上一朗:添板にアルミ溶射を施した高力ボルト接合部のすべり試験,日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.647-648,2008.9.

12) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 7 分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱 H形断面梁接合部の部分架構実験),日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.1015-1016,2008.9.

【日本建築学会近畿支部研究報告集】

13) 田中 剛,松尾真太朗,金 成龍:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 1 塑性論に基づく崩壊荷重の誘導),日本建築学会近畿支部研究報告集,第 45号・構造系,pp.333-336,2005.6.

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14) 松尾真太朗,聲高裕治,田中 剛:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 2 接合部の局部引張実験),日本建築学会近畿支部研究報告集,第 45号・構造系,pp.337-340,2005.6.

15) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の降伏耐力評価に関する研究,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 46号・構造系,pp.185-188,2006.6.

16) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:外ダイアフラム形式角形鋼管柱梁接合部の弾塑性挙動に関する研究(その 3 耐力算定式および側柱形式を想定した接合部引張実験),日本建築学会近畿支部研究報告集,第 47号・構造系,pp.125-128,2007.6.

17) 高田遼太,東清三郎,松尾真太朗,井上一朗:添板にアルミ溶射を施した高力ボルト接合部のすべり試験,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 48号・構造系,C-1構造 III,pp.409-412,2008.6.

18) 松尾真太朗,田中 剛,井上一朗:分割外ダイアフラム形式角形鋼管柱 H形断面梁接合部の部分架構実験,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 48号・構造系,pp.397-400,2008.6.

【その他】

17) Matsuo, S. , Tanaka, T. and Inoue, K. : Strength of RHS-Column to Beam Connections

with Exterior Diaphragm, The 7th Japan-Taiwan-Korea Joint Seminar on Earthquake

Engineering for Building Structures (SEEBUS 2005), pp.263-271, 2005.10.

2. その他の発表論文

【会議論文】

1) 松尾真太朗,聲高裕治,井上一朗:座屈拘束型ダンパーを下フランジ側に設置した梁の弾塑性挙動,日本鋼構造協会鋼構造年次論文報告集,第 12巻,pp.231-238,2004.11.

【日本建築学会大会学術講演梗概集】

2) 松尾真太朗,井上一朗,聲高裕治:座屈拘束型ダンパーを下フランジ側に設置した H形断面梁の弾塑性挙動,日本建築学会大会学術講演梗概集(北海道),C-1構造 III,pp.695-696,2004.8.

3) 坂井悠佑,松尾真太朗,井上一朗:シアパネルをエネルギー吸収要素とする間柱型制震ダンパーの力学性能に関する実験的研究,日本建築学会大会学術講演梗概集(関東),C-1構造 III,pp.761-762,2006.9.

4) 木村 慧,松尾真太朗,田中 剛,吹田啓一郎,井根達比古,井上一朗:円形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの引張耐力,日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.797-798,2007.8.

5) 羽生昇平,坂井悠佑,松尾真太朗,辻 聖晃:既存鋼構造建物の床スラブのと間柱型制振ダンパーの接合部のせん断加力実験(その 1 実験概要),日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.941-942,2007.8.

6) 坂井悠佑,羽生昇平,松尾真太朗,辻 聖晃:既存鋼構造建物の床スラブのと間柱型制振ダンパーの接合部のせん断加力実験(その 2 実験結果と考察),日本建築学会大会学術講演梗概集(九州),C-1構造 III,pp.943-944,2007.8.

7) 坂井悠佑,松尾真太朗,井上一朗:間柱型制振ダンパーを用いた既存鋼構造建物の耐震補強実験,日本建築学会大会学術講演梗概集(中国),C-1構造 III,pp.689-690,2008.9.

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【日本建築学会近畿支部研究報告集】

8) 松尾真太朗,井上一朗,聲高裕治:座屈拘束型ダンパーを下フランジ側に設置した H形断面梁の弾塑性挙動,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 44号・構造系,pp.393-396,2004.6.

9) 坂井悠佑,松尾真太朗,井上一朗:シアパネルをエネルギー吸収要素とする間柱型制震ダンパーの力学性能に関する実験的研究,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 46号・構造系,pp.253-256,2006.6.

10) 木村 慧,松尾真太朗,田中 剛,吹田啓一郎,井根達比古:円形鋼管柱に接合される外ダイアフラムの引張耐力,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 47号・構造系,pp.129-132,2007.6.

11) 坂井悠佑,松尾真太朗,羽生昇平,辻 聖晃:既存鋼構造建物の床スラブのと間柱型制振ダンパーの接合部のせん断加力実験,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 47号・構造系,pp.173-176,2007.6.

12) 坂井悠佑,松尾真太朗,井上一朗:間柱型制振ダンパーを用いた既存鋼構造建物の耐震補強実験,日本建築学会近畿支部研究報告集,第 48号・構造系,C-1構造 III,pp.365-368,2008.6.

【その他】

13) Matsuo, S. and Sakai, Y. : Mechanical Behavior of Bolted Stud-type Damper with Steel Shear

Panels, The 8th Taiwan-Korea-Japan Joint Seminar on Earthquake Engineering for Building

Structures (SEEBUS 2006), pp.59-68, 2006.12.

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A. 4 謝辞

 2003年 京都大学工学部建築学科 空間構造開発工学分野への配属から今日に至るまで,京都大学教授

井上一朗 先生には終始変わらぬ懇切丁寧な御指導,御鞭撻を賜りましたことを厚く御礼申し上げます.

本論文のテーマは,筆者が修士課程 1年生のときに井上一朗 先生より与えていただいたものであり,5

年の間に多くの方々の支えのもとに研究を進め,博士学位論文としてまとめることができました.

 京都大学教授 井上一朗 先生には,研究テーマの選定から研究遂行に到るまで数々の御指導や御助

言をいただきました.筆者が間違った方向に研究を進めないように,ときに厳しくときに暖かく見守っ

てくださりました.論文執筆に関しては,ご多忙ななか筆者の未熟な文章を細部にわたるまで目を通

していただき,かつ適確な御助言をいくつもいただきました.常に読む側の立場にたって文章を書く

ことの大切さを学びました.また,本研究テーマ以外にも,他の学生の研究指導などを通じて多くの

研究に関わる機会を与えてくださりました.これらの経験は,この 5年間で得た大きな財産であり,

今後の研究活動等にも十分役立てられるよう精進して参ります.

 京都大学教授 中島正愛 先生,ならびに同 教授 林康裕 先生には,本論文の審査に際してそれぞれ

のお立場から適確な御指導や御助言を賜りました.中島正愛 先生には,筆者が学部 4年生のときに卒

業論文のテーマの一部として取り組んだ鋼構造建物の環境負荷問題において,共同研究者の立場から

御指導いただいて以来,筆者を見かける度に暖かい御言葉を掛けてくださりました.林康裕 先生には,

日頃から学内でお会いする度に,研究の進捗状況などを尋ねていただき,かつ励ましの御言葉をいた

だきました.ここに謹んで感謝の意を表します.

 神戸大学准教授 田中剛 先生には,筆者が外ダイアフラムの研究に取り組み始めたときから今日に

至るまで,研究遂行から論文執筆にわたって適切な御指導や御助言を賜りました.特に,第 2章で述

べた塑性理論に基づく耐力算定式の構築や試験体製作において,全くの無知であった筆者が研究遂行

できたのは,外ダイアフラムに関する豊富な知識を持っておられる田中剛 先生の御指導ならびに御助

言によるところが大きく,ここに厚く感謝の意を表します.

 神戸大学教授 田渕基嗣 先生には,研究を進める過程で有益な御助言を賜りました.特に試験体の計

画に際しては,多くのご相談をさせていただきました.また,本研究に取り組むにあたって,田渕基

嗣 先生による既往の論文を幾度となく参考にさせていただきました.ここに厚く感謝の意を表します.

 京都大学准教授 吹田啓一郎 先生には,2006年 4月より空間構造開発工学分野の准教授に着任されて

以来,研究や実験に関する筆者の数々の悩みに親身になって御助言くださりました.また,研究室ゼ

ミにおいても適確な御指摘を賜りました.論文執筆に関しても,ご多忙ななか時間を割いてくださり,

少しでもよくなるように様々な角度から御指導くださりました.ここに謹んで感謝の意を表します.

 大阪工業大学講師 聲高裕治 先生には,筆者が研究室に配属された当初から研究のみならず,研究

室での生活など多方面にわたって御指導や御助言を賜りました.当初は京都大学助手だったこともあ

り,筆者を含めた多くの学生の研究に携わっており,大変お世話になりました.また,研究に対する

真摯な態度にいつも励まされていました.聲高裕治 先生が大阪工業大学に異動されてからも,研究室

のことでわからないことがあれば,いつも親切に対応してくださりました.また,2008年に実施され

た鋼構造柱梁接合部の実験では,筆者も参加させていただきました.ここに深く感謝の意を表します.

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 第 6章の一部は,新日本製鐵株式会社との共同研究として実施したものであり,東清三郎 氏には,

すべり試験の計画から実施にいたるまで多くの御助言を賜りました.また,第 6章の付録として掲載

した実験データは東清三郎 氏よりいただいたものです.第 6章の実験結果の整理に際しては,日鐵住

金建材株式会社 宇野暢芳 氏より貴重なご意見を賜りました.ここに厚く感謝の意を表します.また,

高田遼太 君(株式会社神戸製鋼所)と村田昌浩 君(京都大学大学院)には,それぞれ修士論文,卒

業論文の研究テーマとして取り組んでいただきました.諸兄らの多大なる御尽力に厚く御礼を申し上

げるとともに,今後の御活躍を記念いたします.

 第 6章と第 7章の一部は,株式会社竹中工務店との共同研究として実施したものであり,佐分利和

宏 氏,平川恭章 氏,河野隆史 氏,小島一高 氏には,実験計画から実施にいたるまで多くの御助言を

いただきました.特に実務的な観点から様々な御指摘をいただいたことは,筆者にとって非常に貴重

な経験・勉強をさせていただいたと感じております.ここに厚く感謝の意を表します.

 アルミ溶射添板の製作にあたっては,吉川工業株式会社 熊井隆 氏,清水義晴 氏,小南雅稔 氏より

多くの御助言を賜りました.また,溶射に関する様々な技術資料を提供いただきました.ここに厚く

感謝の意を表します.

 2008年 4月より京都大学助教に着任された佐藤篤司 先生をはじめ,6年間にわたる研究生活をとも

にしてきた多くの卒業生および在学生には,日頃から懸命に研究に取り組む姿勢に励まされるととも

に,筆者の実験に御協力くださったことに厚く感謝いたします.また,実験では技術職員 益田五男

氏に多大なる御協力を賜りました.筆者のこれまでに行った数々の実験が成功に結びついたのは,益

田五男 氏によるところが大きく,ここに厚く感謝の意を表します.松山圭子さんと松山智子さんには,

日頃から研究の推進や事務手続などで暖かくサポートしていただきました.諸兄の御協力のもと,こ

の 6年間の研究生活を有意義に送ることができたものと感じています.

 本研究の遂行にあたり御支援いただきました関係者各位に改めて感謝の意を表しますとともに,本

研究で研究成果を引用させていただいた参考文献の著者の方々に深く敬意を表します.

 最後に,筆者を生み育て,これまでの長い学生生活を支えてくれた父 松尾真次,母 教子に感謝い

たします.

2009年 3月