Title 沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 16(2): 45-60 Issue...
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Title 情報化時代における簿記教育の課題
Author(s) 大城, 建夫
Citation 沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 16(2): 45-60
Issue Date 1992-03-31
URL http://hdl.handle.net/20.500.12001/6842
Rights 沖縄大学経済学会
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情報化時代における簿記教育の課題
大城建夫
目次
はじめに
1.情報化の進展と会計実務の変化
Ⅱ、情報化と簿記教育の現状
、大学簿記、実務簿記、検定簿記の役割
Ⅳ、情報化と簿記教育のあり方
むすび
はじめに
情報化社会におけるコンピュータの発達には著しいものがあり、企業におけ
るコンピュータのハードウェア及びソフトウェアの装備率の伸びも増加傾向が
続いている。(1)現代では、このようなコンピュータをその目的に応じて広く利
用していくことが盛んである。
簿記会計教育の分野においても、コンピュータといわれるものが、どのよう
な影響を及ぼしているのか、またコンピュータ会計教育といわれるものが、ど
の程度行なわれているのか、今後、コンピュータと簿記会計教育との関連性は、
どのように検討すべきかについて、考察してみる。
L情報化の進展と会計実務の変化
現代のコンピュータを利用した情報処理や通信技術の発展には、目をみはる
ものがある。
-45-
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しかもコンピュータは、高性能化、低廉化により大企業、中小企業のすべて
にわたって利用されるようになっている。
すなわち、情報化の進展により大企業、中小企業でもコンピュータを採用し
た会計実務が行なわれるようになっている。
このようなコンピュータの利用により会計実務にも変化が生じてきており、
会計システムは、帳簿会計システム、伝票会計システム、バッチEDP会計シ
ステムからペーパーレス会計システム(2)へと発展してきている。つまり、ほと
んどの企業がコンピュータ会計に移行してきていることを指摘しなければなら
ない。コンピュータ会計とは、企業活動の会計事実をコンピュータシステムに
より処理することである。そのようなコンピュータ会計の特徴は、従来、手作
業会計の転記、集計、整理、作表などの最も人手を必要とする業務が省略化さ
れ、会計処理に関する判断業務が中心になることである。
さらに、コンピュータによる経営戦略、部門管理、企業間ネットワーク、海
外とのネットワーク、工場の自動化などにより経営実務に大きな影響を及ぼし
ている。具体的には、企業の経営戦略の中に情報戦略を組み込むために戦略的
情報システム(3)の構築をおこななったり、販売、技術、生産を統合したCIM4)
の構築のため、意思決定のための支援システムが多くなってきている。また、
会計情報を経営者、管理者の意思決定に迅速に利用するため月次決算(5)が行な
われるようになっている。さらに、製造業などでは、工場の自動化により、製
造間接費が年々増加しつつあり、製造原価要素の構成に変化を生じていること
から、原価管理に重要な影響が生じている。(6)
このようにコンピュータによる情報化の影響は、広く経営の各部門にわたり、
会計実務にも変化を生じさせているのである。
Ⅱ.情報化と簿記教育の現状
大学の簿記教育方法は、現在多様化していると思われる。
しかしながら、コンピュータによる情報化の影響を教育上どのように考慮し
-46-
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てきているのかについては、必ずしも明確とは言えない。そのため、実務上の
情報化の進展はこれからも著しくなると考えられることから、会計実務と簿記
教育との乖離はますます広がる恐れがある。
佐藤宗弥教授によるコンピュータ会計教育の実態調査では、我が国の多くの
大学がコンピュータ教育を行なっているが、特にコンピュータ会計教育につい
てはまだ十分に行なわれていないことが指摘されている。この原因については、
よいソフトの欠如をあげている。(7)
ところで、大学の簿記教育の情報化に対する取り組みの弱さは、どこに原因
があるのだろうか。
私見としては、その原因については簿記教育で使用するテキストと簿記検定
の影響があげられる。最近における簿記のテキストは、簿記検定(特に、曰商
簿記)を考慮した内容となっているものがかなりある。このことは、最近の曰
商簿記検定の受験生が30万人を突破してしており、簿記テキストの出版の際
には簿記検定について考慮せざるを得ないのではないかと思われる。つまり、
簿記テキストは、当然ながら簿記検定を反映しているものが多い。(8)
しかしながら、曰商簿記検定ではコンピュータの利用に伴う種々の会計実務
の変化を検定試験の内容として適正に取り入れているかというと、必ずしも十
分ではない。これは、簿記検定試験が、画一的、類型的に出題しているためで
あろう。
Ⅲ、大学簿記、実務簿記、検定簿記の役割
Ⅱで述べたように、我が国の簿記教育では、簿記検定の影響がかなり大きい
ことがわかったのであるが、大学で学ぶ簿記(以下、大学簿記、と呼ぶ。)及
び会計実務で行なわれている簿記(以下、実務簿記、(9)と呼ぶ。)と検定簿記
との関連性は、いかにあるべきか検討してみる。
私見としては、大学簿記、実務簿記、検定簿記の関連性を明確にすべきであ
ると考える。すなわち、大学で行なう簿記教育においては、実務簿記、検定簿
-47-
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記の影響、内容について考慮されるべきであると考える。
確かに、大学で簿記教育を行なう際に、会計実務の変化などを迅速に取りい
れられるかどうか、検定試験に合格させるためにカリキュラムの編成上、時間
の確保ができるかどうかなど、いろいろな問題点はある。
我が国の大学の簿記会計教育に簿記検定を積極的に取りいれるべきであるが、
無批判的に教えるべきではない。また、理論簿記、実務簿記などとさまざまに
分類したりしているが、余り賛同できない。
というのは、検定簿記の教育指導も会計理論的に講義していくことが可能で
あり、実務簿記も企業においてコンピュータの影響を受けた重要な部分は簿記
教育の中に取りいれることもできるからである。むしろ、積極的に簿記検定の
改善のために大学側からも批判、提言を行なうべきである。('0)
結局、検定簿記は、現在、税理士、公認会計士などの資格取得の基礎的、準
備的性格をもっているが、そのほかにも大学簿記と実務簿記とを仲介する役割
も果たすべきあると考える。
Ⅳ、情報化と簿記教育のあり方
Ⅲでは、検定簿記が大学簿記と実務簿記の橋渡し的役割をもつような簿記教
育を行なうべきであることを提示したのである。
さらに、情報化の進展を考慮にいれると簿記教育について今後どのような検
討を行なえばよいのであろうか。
1.簿記手続きの一巡の流れについての説明であるが手作業会計とコンピュー
タ会計を比較すると、次のように図表化できる。
-48-
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図Ⅳ-1手作業会計による簿記手続きの一巡の流れ
厄一匹璽匹算
L---‐-----‐-手作業--------------‐--
図Ⅳ-2コンピュータ会計による簿記手続きの一巡の流れ
l I
Lコンピューータ処理一一一,
コンピュータ会計は、バッチEDP会計とペーパーレス会計に区分される。
最近では、中小企業でもペーパーレス会計(正確には、電子伝票会計または伝
票レス会計と呼ぶ方がよい。)が採用されている。手作業会計との違いは、手
作業過程が著しく減少することにある。い')
ところで、簿記手続きの過程、すなわち簿記システムは、形式面(帳簿記入、
転記、集計、表示など)と実質面(会計取引の認識と測定、複式簿記による仕
訳など)に分けることができる。すなわち、コンピュータによる情報化は、簿
記システムの形式面に多くの影響を及ぼしていることがわかる。そのため、手
作業会計とコンピュータ会計の違いについて明確に説明する必要がある。
-49-
->
=j-1Fうぽ
損益計算書
貸借対照表
各種会計資料
試算表
仕訳リスト表
総勘定元帳
損益計算書
貸借対照表
各種会計資料
データベース直接入力取引
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2.日商簿記検定試験2級の商業簿記第2間の最近の出題をみてみると次のよ
うになっている。
第72回、第74回,第76回は特殊仕訳帳を中心とした問題であり、第73回、第
75回は、伝票を中心とした問題である。つまり、特殊仕訳帳と伝票に関する問
題を交互に、類型的に出題していることがわかる。
特に、2級の商簿の第2間において、帳簿組織の分野の「特殊仕訳帳」('21の
記入、転記などが出題されていることに疑問を感ずるものである。
というのは、コンピュータを利用している経理業務においては、「特殊仕訳
帳」を利用することはほとんどないからである。
むしろ、コンピュータの利用により、アウトプットとしての会計資料、すな
わち会計情報は、迅速に、かつ多種多様に産出される。そのため、コンピュー
タを利用している会計実務を考慮にいれると、大学における従来の伝統的な簿
記教育の方法、内容などについて工夫が必要であると思われる。
すなわち、会計実務でコンピュータを利用する際には、インプットとアウト
プットについて特に重視しなければならない。
つまり、インプットの段階では、各種の取引の入力が行なわれるが、取引を
分解し、複式簿記により仕訳する能力がきわめて重要になる。また、アウトプ
ットの段階では、コンピュータの内部の処理過程を経て、各種の会計資料を取
り出すことが可能である。
この場合、アウトプットされた各種の会計資料をどのような目的で、いかに
利用していくかということが重要である。
例えば、経営者、管理者のための利用なのか、株主などのための利用なのか
で報告される会計情報の内容も異なることになる。前者では、物量による会計
情報が中心となり、後者では、金額による会計情報が中心になる。
この場合、アウトプットされた各種の会計資料は、そのまま報告するのでは
なくて、目的に応じてさらに加工、分析する必要がある。つまり、各種の会計
資料に対する分析力が重要になる。('31
このため、私見としては、曰商簿記検定2級の商業簿記の分野において、特
殊仕訳帳の代わりに仕訳の出題を増やすか、基礎的な財務諸表の分析を出題す
-50-
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るべきことを提言したい。ちなみに、全商簿記検定、全経簿記検定各1級の会
計の分野では、従来から財務諸表の分析が出題されている。
3.簿記検定の影響を受けている簿記の分野として、商品売買についての会計
処理があげられる。曰商簿記検定の簿記検定試験級別出題区分表によると、商
品売買の会計処理法は、4級では、分記法、3級では、三分法となっている。
しかも、我が国のほとんどの簿記テキストが、初心者に対する商品売買の導
入について、分記法から始まり、三分法を中心とした説明内容となっている。
ところで、商品勘定の分割法としての三分法は、決算で商品の棚卸計算を行
なって売上原価を算定する方法であり、棚卸計算法と結びつく。('41つまり、棚
卸計算法は、売上原価を日々記録し、管理する継続記録法に対する一種の簡便
法なのである。
最近のコンピュータによる経理処理においては、取引を曰々、記録、集計し、
管理を行ない、いろいろな目的のための会計情報として利用することが可能と
なっている。
このような情報化による会計実務の現状に対しては、棚卸計算法としての三
分法は、会計実態と乖離した会計処理法となっているのではないかと考えられ
る。
すなわち、コンピュータによる経理処理では、日々の売上高に対する売上原
価の把握が可能である。そのため、売上原価の把握を決算で行なう三分法の考
えは、情報化の会計実態には、そぐわない会計処理法であることを指摘しなけ
ればならない。
むしろ、売買取引を継続的に曰々記録し、売上原価を計上する売上原価計上
法u粉、情報化の影響を受けた会計実務に合致した会計処理法であると考える。
したがって、商品売買の簿記導入としては、分記法から始まり、売上原価計
上法への説明に移行していくべきではないかと考える。その後、三分法を特殊
な、例外的会計処理法として説明していくべきである。
当然、簿記検定でも三分法ではなく、売上原価計上法を中心とした出題に改
めるべきである。
-51-
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4.精算表の作成は、簿記検定の代表的出題分野の一つである。
8桁精算表は、残高試算表、整理記入、損益計算書、貸借対照表の各欄から
なる一覧表である。その精算表の作成は、手書きによる簿記教育上は、重要性
の高いものであった。('6)
しかしながら、精算表は、会計実務上、コンピュータ会計を採用する場合ほ
とんど出力して利用されることはない。これは、コンピュータ会計では、損益
計算書、貸借対照表をただちに取り出せることから精算表を利用する意味がな
くなってきているからである。
したがって、精算表の作成そのものよりも、損益計算書、貸借対照表などの
内容の理解、作成に重点を移すべきである。
そのため、簿記検定でも精算表の作成から損益計算書、貸借対照表などの作
成を中心とした出題に改めるべきではないかと考える。
5.コンピュータの影響を受けている会計実務を理解させるためには、実際に
会計実務で採用されているコンピュータ会計のソフトを利用することである。
その会計ソフトの利用によりコンピュータを採用している企業の会計システ
ムがかなり具体的に理解できることになる。
その場合、コンピュータを利用する企業として、中小企業、または、大企業
とするのかについては、初心者に対するコンピュータ会計教育では、当然中小
企業をモデルにすべきである。
このように中小企業をモデルにした基礎的なコンピュータ会計の教育内容を
私案として示すと、次のようになる。('7)
(1)最初の講義でコンピュータ会計の簿記手続きの一巡の流れ、財務諸表の
意義、役割などを十分に説明する必要がある。
(2)伝票入力による仕訳力の強化を行なう。(18)
(3)仕訳リスト表により、入力のチェックを行なう。この場合、学生達が仕
訳リスト表を相互に交換してチェックを行なう方がよい。仕訳のチェック
をとおして入力の段階での仕訳ミスは、簿記システム全体に影響を及ぼす
ことを理解させる。
-52-
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(4)合計残高試算表を出力させ、科目、金額、合計額など簡単に再チェック
を行なう。上記の(3)の段階できちんとチェックしているのであれば、
省略してもよいと思われる。
(5)損益計算書、貸借対照表などを出力させる。
(6)出力させた損益計算書、貸借対照表などを対象として基本的な財務諸表
の分析(流動性、安全性など)を行なう。出力の段階における会計資料の
分析、加工などをとおして簿記システムの内部管理的役割期待の重要性を
理解させる。('9)
以上から、情報化と我が国の簿記教育のあり方についてまとめてみると、
次の図のようになる。
大学
手作業会計コンピュータ
会計
会計実務
すなわち、会計実務において、手作業会計の経理業務では、明らかに業務能
率は退歩型になり、これに対してコンピュータ会計の経理業務では、業務能率
は進歩型になる。そのため、大学においても従来の手作業会計を中心にした簿
記教育(伝統型)からコンピュータ会計を中心にした簿記教育(革新型)に移
行すべきである。もちろん会計実務をすべて採用することは不可能であり、ま
た不必要である。重要なのは、会計実務がどのように変化しているのかについ
て知ることであり、また会計実務の変化をどの程度採用することが可能なのか
について会計教育で工夫することである。
-53-
革新型 伝統型
進歩型 退歩型
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むすび
我が国の簿記教育においては、コンピュータの進展による会計実務の変化を
十分に考慮してこなかった。そのため、コンピュータの影響を受けている会計
実務と大学の簿記教育の内容は乖離してきていることを指摘しなければならな
い。
また、簿記検定は、現在のところ、税理士、公認会計士などの資格試験の基
礎的役割をもっているが、このほかにも、実務簿記と大学簿記を仲介する役割
も果たすべきであると考える。
そのため、情報化時代における我が国の簿記教育の具体的な改善策を次のよ
うに提言するものである。
1.簿記手続きの一巡の説明においては、手作業会計とコンピュータ会計の
違いを明確にすること。
2.初心者に対する商品売買の会計処理法の説明においては、従来の分記法
から三分法の教育を改め、分記法から売上原価計上法への教育を行ない、
その後、三分法の教育を行なうこと。
3.帳簿組織の記入、締め切り、転記などの教育は、思い切って廃止するか、
かなり省略すること。
4.コンピュータ会計教育では、インプットの面とアウトプットの面を重視
して、仕訳力と分析力と共に総合的な判断力を養う教育を行なうこと。
5.インプットの面では、問題演習による仕訳力を強化すると同時に会計学
的思考を導入しながら、会計学と社会との関連、すなわち、財務諸表の社
会的役割、その意義、内容などと結びつけて教育指導を行なうこと。
6.アウトプットの面では、産出される各種の会計資料を企業の意思決定の
ためにどのように利用し、判断するのかという観点から、産出された財務
諸表に対する基本的な分析も教育指導すること。
7.会計実務を理解させるために、会計実務のモデルとしてのコンピュータ
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会計ソフトを利用すること。
以上のように、本稿は、情報化時代における簿記教育の一つの試みとして論
じてきたのであるが、あくまで私個人の見解を提起したのにすぎない。我が国
では、会計教育を学問の対象として研究する者は少数であるが、会計実務の変
化、学生及び社会の大学に対する要望の多様性などを考えると、会計学の分野
でも会計教育論が体系化されるべきである。(20)
最後に、拙稿に対して、簿記・会計学などの研究、・教育などに携わる多くの
関係者の御批判を切に、希望するものである。
[注]
(1)日本情報処理開発協会編『情報化白書1990』コンピュータ・エージ社,1990年,
344-345頁。
(2)野崎正幸氏によると、ペーパーレス会計の特徴を次のようにあげている。
①タイムリーな情報の入手,②ペーパーレス化の促進,③転記ミスの排除,④
エラー処理の迅速化⑤伝票の整理保管作業の削減,⑥データ一元化の促進,⑦
仕訳入力の省力化である。
詳しくは、次の著書を参照のこと。
野崎正幸箸『ペーパーレス会計』中央経済社,1988年,6-7頁。
(3)情報サービス産業協会の「情報システム化の現状と将来動向調査」によると、
国内上場企業の経営戦略と情報化戦略の関係は、次のようになっている。つまり、
3年前と比較して現在は、「経営戦略と情報化戦略は一体化しつつある」、「経
営戦略を受けて情報戦略がえられる」という企業が多くなっていることを指摘し
ている。このことから、これからの企業経営において情報化戦略がかなり重要に
なっていることがわかる。
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情報サービス産業協会編『情報サービス産業白書1991』コンピュータ
・エージ社,1991年,58頁。
(4)櫻井教授によれば、CIM(computerintegratedmanufacturing)
の統合概念について、次の3つをあげておられる。すなわち、①技術と
生産の統合,②販売、技術、生産の統合、③CIM概念を拡張して、技
術・生産だけでなく、企業の経営管理をも含む包括的統合である。
詳しくは、次の著書を参照のこと。
櫻井通晴著『企業環境の変化と管理会計」同文舘,1991年,9-12頁。
(5)コンピュータの発展による情報化の進展は、企業の月次決算による経
営管理機能に重要な影響を及ぼしてきている。すなわち、コンピュータ
の利用による月次決算が迅速性と正確性をさらに高めていくのであれば、
経営者、管理者の意思決定のための役割期待(情報ニーズ)を十分に満
たしていくことを指摘しなければならない。
このような月次決算の重要性について、可児島教授は、月次損益計算
と経営管理思考との結びつきについて論じられている。
詳しくは、次の著書を参照のこと。
可児島俊雄箸『管理会計としての月次損益計算研究』実教出版,1982
年,13-20頁。
(6)工場自動化(FactoryAutomation)により直接工は減少している。こ
のような直接工の減少に伴う管理会計上の問題として櫻井教授は、次の
三つをあげておられる。①固定費の増大に伴う直接原価計算の重要性の
低下、②製造間接費の増大に伴うマン・レート(man-rate)の重要性の
低下、③直接労務費の減少に伴う標準原価計算への役割期待の低下であ
る。
詳しくは、次の著書を参照のこと。
櫻井通晴稿「FAにおけるマネジメント・コントロール」(岡本・宮
本・櫻井編著『ハイテク会計』)同友館,1988年,26-29頁。
(7)佐藤宗弥稿「コンピュータ会計教育の現状」会計人コース,第24巻第
14号,中央経済社,1989年12月,4-8頁。
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私見としては、大学のコンピュータ会計教育は、実務で採用されてい
る会計ソフトを利用するのがよいと考える。
というのは、実務上の会計ソフトの利用により、会計実務を反映した
会計教育が可能となり、さらに、学生にとってもコンピュータ操作がし
やすい会計ソフトであれば、より簿記・会計教育の効果も高まると考え
るからである。
もちろん、簿記そのものの原理、内容などに対する十分な教育配慮も
行なわなければならない。
(8)日商簿記検定試験級別出題区分表によれば、商業簿記の出題範囲は、
「簿記の基本原理」、「諸取引の処理」、「決算」の三区分になってい
る。
しかも、我が国の簿記テキストの大多数が出題区分表の範囲、内容と
ほぼ一致して編集されている。
すなわち、簿記検定と簿記テキストは、伝統的な手作業会計を前提に
している点で相互に共通性をもっていることを指摘しなければならない。
(9)実務簿記は、コンピュータの影響を受けている簿記なので、コンピュ
ータ簿記と呼んでもよい。
簿記実務研究部会報告(横山和夫部会長)「学習簿記とコンピュータ
簿記の乖離について」日本簿記学会第7回全国大会(早稲田大学)1991
年11月,26頁。
(10)武田教授によれば、「わが国の簿記のテキストにおける簿記一巡に関
する説明は、全体的に、伝統的な方法によっている。しかし、これから
は、簿記を会計行為または会計過程の一部として説明したり、収支計算
書の作成、伝票制の早期導入、新しい決算手続の導入など、初学者の理
解を容易にするとともに、時代に適合する簿記の説明を行うことが望ま
しいと思われる。ただし、これには、伝統的な簿記に固執する簿記の検
定試験が障害になる。このため、簿記の検定試験のあり方を問題にしな
ければならない。」と述べて、簿記検定の影響力の大きさを指摘し、簿
記検定のあり方について検討すべきであると論述されている。
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武田安弘稿「簿記の一巡に関する諸問題」愛知学院大学論叢商学研究,
第32巻第2号,1987年9月50-51頁。
(11)野崎箸,前掲書,17~31頁。
大矢知浩司箸『監査論概説」白桃書房,1M年,265-268頁。
(12)特殊仕訳帳を中心にして全体的かつ体系的に説明されている代表的簿
記書として、故沼田嘉穂教授の『簿記教科書』(同文舘)があげられる。
しかし最近の簿記書では、コンピュータ会計の影響で、特殊仕訳帳の
取り扱いは、簿記書の中で独立した1つの章として説明されているのが
多くなっている。特殊仕訳帳を1つの章の中で説明されている代表的簿
記書は、次のとおりである。
中村忠箸「現代簿記』白桃書房,1990年,137-183頁。
阪本安一編『基本簿記演習』改訂版,同文舘,1992年,227-255頁。
久野光朗編箸「簿記論講義』同文舘,1986年,241-270頁。
安平昭二箸『簿記詳論』改訂版,同文舘,1983年,209-250頁。
森川八洲男著『精説簿記論[Ⅱ]』白桃書房,1987年,3-78頁。
(13)我が国で現在発行されている簿記書では、財務諸表の分析についてほ
とんど説明されていない。その理由は、従来、財務諸表の分析に関する
説明は、簿記書とは別の経営分析などの科目で行なわれてきたからであ
る。しかし、会計学の著書の中でも財務諸表の分析を説明しているもの
もある。例えば、次の著書を参照のこと。
中村忠箸『現代会計学」白桃書房,1990年,283-307頁。
新井清光著『現代会計学』第三版,中央経済社,1991年,239-251頁。
永野則雄箸『会計記事がわかる財務諸表論』白桃書房,1992年,55-68
頁。
ところで、アメリカでは、以前から会計学の入門書の中で、財務諸表
の分析について説明されてきている。例えば、次の著書を参照のこと。
HarryFinneyandHerbertE・Miller,Pmoci肱sがAccm4"fi)、g-
hcl7Dd84cjmy-,6cd,(NewJersey:Prentice-Hall,Inc.,1968),pp、295
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(14)武田教授は、三分法を広義にとらえ、棚卸計算法と継続記録法との関
連で整理されている。前者では、繰越商品、売上、仕入、後者では、商
品、売上、売上原価にそれぞれ分割される。詳しくは、次の著書を参照
のこと。
武田隆二箸『簿記I」改訂版,税務経理協会,1990年,141-146頁。
本稿では、三分法を狭義にとらえ、棚卸計算法と関連するものとして
展開する。
(15)安平教授は、狭義の三分法の決算整理上の欠点(繰越商品勘定との振
替関係の理解の難しさなど)も指摘しながら、売上高・売上原価表示法
(すなわち、継続記録法による売上原価計上法のこと)を首尾一貫した
商品売買の処理法として位置づけて説明すべきであることを論述されて
いる。詳しくは、次の著書を参照のこと。
安平昭二箸「簿記その教育と学習』中央経済社,1992年,80-84頁。
(16)安平教授は、精算表の「正規の簿記手続き外の仮の表」という現状の
位置づけに反対して、むしろ、簿記教育上積極的な意味づけが必要なこ
とを強調しておられる。
安平箸,前掲書『簿記その教育と学習」,35-37頁。
(17)IBMパーソナルシステム/55による汎用会計システム(協和会計
情報開発)を参考にした会計ソフト利用の教育方法である。もちろん、
他のメーカーを利用する会計ソフトでもよい。
(18)ペーパーレス会計を意識するのであれば、証懇書類(領収証、請求書
など)を想定して直接入力するのもよい。
(19)三澤教授は、パソコン簿記教育では、可能なかぎり、財務分析教育も
同時に行なう必要があることを論述されている。
三澤一稿「パソコン簿記と大学における簿記教育」成躍大学経済学部
論集,第19巻第2号,1989年3月,161-163頁。
(20)我が国の会計教育に関する著書として代表的なものは、次のとおりで
ある。
山田勇治箸『会計教育論』創成社,1979年。
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染谷恭次郎編署『会計学の国際的展開』中央経済社,1989年,48-96頁。
他方、アメリカにおいても大学における会計教育の改善への関心が高
まっており、AAA(アメリカ会計学会)は、1989年に「会計教育
改善委員会」(AccountingEducationChangeComission)を設置し、活
動内容が我が国にも紹介されている。詳しくは、次の論文を参照のこと。
平松一夫稿「アメリカにおける会計教育改善への動き」JlCPAジ
ヤーナル,428号,1991年3月,30~35頁。
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