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Three-dimensional noise and spatial mapping system with aerial blimp robot バルーン型無人飛行船を用いた環境地図作成 5116E007-9 齊藤 良二 指導教員 及川 靖広 教授 SAITOU Ryouzi Prof. OIKAWA Yasuhiro 概要:騒音問題を解決する手がかりとして,騒音マップとして騒音を可視化することは重要である.近年,様々な種 類の無人航空機が開発され注目を集めている.中でも,複数の回転翼を持つマルチコプタは,利便性が高い・低コス トであるという利点があり,様々な分野で積極的に活用がなされている.マルチコプタを騒音計測へ適用することが 可能となれば,高い高度の騒音や,広範囲における騒音を手軽に取得することが可能である.本研究では,バルーン 型無人飛行船を用いた環境地図作成システムを作成した.また,3 つの実験を行い,システムの有効性を示した. キーワード:無人航空機(UAV),マルチコプタ,バルーン,周囲環境地図作成と自己位置推定,環境モニタリング Keywords: unmanned aerial vehicle (UAV), multirotor, balloon, simultaneous localization and mapping (SLAM), environmental monitoring 1. まえがき 騒音問題を解決する手がかりとして,騒音マップとし て騒音を可視化することは重要である.近年,様々な種 類の無人航空機が開発されて注目を集めている.無人航 空機の中でも,複数の回転翼を持つマルチコプタは,有 人航空機と比較し,利便性が高い・低コストであるという 利点があり,幅広い分野で活用がなされている.マルチ コプタを騒音計測へ適用することが可能となれば,高い 高度の騒音や,広範囲における騒音を手軽に取得するこ とが可能である.しかし,マルチコプタは飛行時に大き なプロペラ騒音が発生し,取得した音情報にプロペラ騒 音が混在してしまう.また,周囲環境情報を取得する必 要や,計測した音情報と位置情報を同期させる必要があ る.しかし,マルチコプタを用いての騒音計測は,GPS が使えない箇所などの周囲環境情報が未知な状況では測 定が困難であるという問題がある.そこで本研究では, バルーン型無人飛行船を用いた環境地図作成を行う.機 体の浮力分のヘリウムガスを充填したバルーンにプロペ ラを搭載し,従来のマルチコプタと比較し移動時のプロ ペラ騒音を低減し,かつ,前後・左右・上下への全ての 方向に移動が可能である.また,機体にステレオカメラ を搭載し,Simultaneous and localization and mapping (SLAM) の技術を利用することで,周囲環境状況の取得 と自己位置推定が可能である. 2. システム概要 -1, 2 にシステムの外観と模式図をそれぞれ示す.シ ステムは機体重量分の浮力を得るため,直径 1.4 m のバ ルーンにヘリウムガスを充填した.移動のためのプロペ ラをバルーン赤道に 2 つ,バルーン上部から 1/4 の箇 –1 システム外観 –2 システム模式図 所に 4 つの計 6 つ,システム制御のための制御基板をバ ルーン最下部,SLAM のためのステレオカメラをバルー ンの下部から 1/4 の箇所にそれぞれ搭載した.

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Page 1: Three-dimensional noise and spatial mapping system with ... · 図{3 一般的な無人航空機と本システムのプロペラ騒音の比較 図{4 バルーンがある場合のインパルス応答のグラフ

Three-dimensional noise and spatial mapping system

with aerial blimp robot

バルーン型無人飛行船を用いた環境地図作成

5116E007-9 齊藤 良二 指導教員 及川 靖広 教授SAITOU Ryouzi Prof. OIKAWA Yasuhiro

概要:騒音問題を解決する手がかりとして,騒音マップとして騒音を可視化することは重要である.近年,様々な種

類の無人航空機が開発され注目を集めている.中でも,複数の回転翼を持つマルチコプタは,利便性が高い・低コス

トであるという利点があり,様々な分野で積極的に活用がなされている.マルチコプタを騒音計測へ適用することが

可能となれば,高い高度の騒音や,広範囲における騒音を手軽に取得することが可能である.本研究では,バルーン

型無人飛行船を用いた環境地図作成システムを作成した.また,3つの実験を行い,システムの有効性を示した.

キーワード:無人航空機(UAV),マルチコプタ,バルーン,周囲環境地図作成と自己位置推定,環境モニタリング

Keywords: unmanned aerial vehicle (UAV), multirotor, balloon, simultaneous localization and mapping

(SLAM), environmental monitoring

1. ま え が き

騒音問題を解決する手がかりとして,騒音マップとし

て騒音を可視化することは重要である.近年,様々な種

類の無人航空機が開発されて注目を集めている.無人航

空機の中でも,複数の回転翼を持つマルチコプタは,有

人航空機と比較し,利便性が高い・低コストであるという

利点があり,幅広い分野で活用がなされている.マルチ

コプタを騒音計測へ適用することが可能となれば,高い

高度の騒音や,広範囲における騒音を手軽に取得するこ

とが可能である.しかし,マルチコプタは飛行時に大き

なプロペラ騒音が発生し,取得した音情報にプロペラ騒

音が混在してしまう.また,周囲環境情報を取得する必

要や,計測した音情報と位置情報を同期させる必要があ

る.しかし,マルチコプタを用いての騒音計測は,GPS

が使えない箇所などの周囲環境情報が未知な状況では測

定が困難であるという問題がある.そこで本研究では,

バルーン型無人飛行船を用いた環境地図作成を行う.機

体の浮力分のヘリウムガスを充填したバルーンにプロペ

ラを搭載し,従来のマルチコプタと比較し移動時のプロ

ペラ騒音を低減し,かつ,前後・左右・上下への全ての

方向に移動が可能である.また,機体にステレオカメラ

を搭載し,Simultaneous and localization and mapping

(SLAM)の技術を利用することで,周囲環境状況の取得

と自己位置推定が可能である.

2. システム概要

図-1, 2にシステムの外観と模式図をそれぞれ示す.シ

ステムは機体重量分の浮力を得るため,直径 1.4 mのバ

ルーンにヘリウムガスを充填した.移動のためのプロペ

ラをバルーン赤道に 2 つ,バルーン上部から 1/4 の箇

図–1 システム外観

図–2 システム模式図

所に 4つの計 6つ,システム制御のための制御基板をバ

ルーン最下部,SLAMのためのステレオカメラをバルー

ンの下部から 1/4の箇所にそれぞれ搭載した.

Page 2: Three-dimensional noise and spatial mapping system with ... · 図{3 一般的な無人航空機と本システムのプロペラ騒音の比較 図{4 バルーンがある場合のインパルス応答のグラフ

180°

135°

90°

45°

45°

90°

135°

40 dB

50 dB

60 dB

70 dB

80 dB

SPL(Multirotor)A-weighted SPL(Multirotor)SPL(Proposed system)A-weighted SPL(Proposed system)

図–3 一般的な無人航空機と本システムのプロペラ騒音の比較

図–4 バルーンがある場合のインパルス応答のグラフ

図–5 三次元空間と騒音マップの作成

3. 評 価 実 験

3. 1 プロペラ騒音の評価

本システムは,一般的な無人航空機と比較しプロペラ

騒音を低減している.図-3は一般的な無人航空機と本シ

ステムのプロペラ回転騒音の比較である.どちらの機体

もホバリングさせた状態で,騒音計を機体に対して垂直

方向に 45度ずつ騒音計を回転させ計測を行なった.0度

が機体の真下,180度が機体の真上である.騒音レベル

を比較すると,本システムのプロペラ回転騒音は一般的

な無人航空機と比較して,平均で約 20 dBの低減が確認

された.

図–6 騒音計と本システムでの音圧レベルの計測の比較

3. 2 バルーンの音響特性

ヘリウムガス充填バルーンが計測に与える影響を評価

した.バルーンの中心から 3.0 m離れたところにスピー

カーを設置し,TSP信号を出力した.また,マイクロホ

ンをバルーンの表面から 0.05 m離した箇所に設置し,5

度ずつ回転させながらインパルス応答を計測した.図-4

はバルーンがある場合のインパルス応答である.バルー

ンがある際には,0~40度まではスピーカからの直接音

が最初に観測されているが,45 度以上になるとバルー

ンの透過音が最初に観測され,その後にスピーカからの

直接音が観測している.これは,バルーン内のヘリウム

ガス中の音速は空気中に比べ約 3倍の速さとなるからで

ある.

3. 3 三次元空間と騒音マップの作成

本システムを用いて三次元空間と騒音マップの作成を

行なった.図-5は本システムを 6 m × 6 m × 6 mの音

場内を自由移動させた際の,三次元空間と騒音マップを

作成した結果である.左図は実際のシステムの軌跡,中

図・右図は Unityで作成したシステムの軌跡上における

音圧レベルのマッピングである.音圧レベルは色のつい

た円で示されている.図-6は騒音計と本システムを用い

ての音圧レベルの計測の比較である.これは,システム

が飛行している位置における騒音計で計測した音圧であ

る.結果より,騒音計との計測は 2 dBほどの音圧差が

あるが,それを考慮しても騒音計測に十分適用できる範

囲であると考える.

4. む す び

バルーン型無人飛行船を用いた環境地図作成システム

を製作した.また,本システムと一般的な無人航空機の

プロペラ騒音を比較し,約 20 dBの低減を確認した.本

システムのバルーンの音響特性を比較し,ヘリウムガス

を充填したバルーンのインパルス応答と計測し,45度以

上の角度で入射した音は先に到達することが判明した.

また,本システムを用いて三次元空間と騒音の作成し,

本システムの有効性を示した.