The patient centered medical home ポートフォリオ

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多職種・多施設・多領域で 統合したケアを行う 《情報集約によるケアマップの 作成》 児童 相談所 保健師 精神科医 家庭医 保育園 足立区 ファミリー サポート センター 青木拓也 日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所 The Patient-Centered Medical Home(PC-MH)は包括的なプライマリケアを提供するための概念であり、特に心理社会的な要因を含めた複数の健康問題を抱える個人・家族に 対しケアを行う上で重要な枠組みと考えられる。今回当院が家族のPC-MHとして機能することで、情報集約と多職種による介入を行った事例を経験したため報告する。 考察 当院では来院の度に各受診動機に対する診療を行う他、 PC-MHとして多職種連携の中心と なり、家族に対して継続的かつ包括的なケアを行った。その結果、娘の予防接種管理、家族 の医療機関へのアクセサビリティー等の改善に繋がった。 今後は特に成長・発達過程にある長女にフォーカスを当て、ネグレクトに対する心理的サポー トの面などでも多職種で統合したケアを行っていく必要がある。 NEXT STEP PC-MHとしての機能をさらに充実させるため、例えば”Safety and Quality”の側面では 院内の質改善に患者や家族の意向を反映させるようなシステム・アプローチが必要と 考える。 参考文献 1)AAFP,AAP,ACP,AOA. Joint Principles of the Patient-Centered Medical Home March 2007 【事例】22歳母(統合失調症)、4歳長女 20125月転居を契機に、最も地理的アクセス が良い当院を受診。以後母親は鉄欠乏性貧血 や整形疾患等、また娘は予防接種や急性上気 道炎等で不定期に来院するようになった。 初診時に親子とも保清ができていなかった点等 から、心理社会的な要因を含め複数の健康問 題を抱える家族と考えた。 当院がこの家族のPC-MHとして機能する必要性 があると判断した。 【家族構成】 同居家族:父(40)・母・長女の3人暮らし 非同居家族:父母各々の両親 【経済的基盤】 父の給与(解体関係の仕事)、生活保護 【これまでの経過】 母は他院精神科に通院。 長女の出生直後から母によるネグレクトがみら れたため、児童相談所等が介入していた。 母は精神疾患の影響で生活能力が低下してお り、調理や保清などが困難な状態。そのため娘 は父方の祖父母宅を週3回程度訪問し入浴をし ている。尚娘の保育園の送迎はヘルパーが行 い、医療機関の受診にもヘルパー同伴を要する。 【主要な問題点】 #1 長女の予防接種が未完 #2 ネグレクトに対する長女の心理的サポート #3 母子ともに保清ができていない EBMや質改善の手法を用 い、質が高く安全なケアを 提供する 急性期・慢性期・予防・ 終末期と全てのステー ジにおいてケアに取り 組む 《娘の予防接種管理》 医師がリーダーシップを 取り多職種チームで 取り組む 患者のアクセサビリティーを 向上させるための工夫を行う 当院 にはヘルパーの同伴なし でも来院可能に なった 継続的かつ包括的なケアにつ いて十分に訓練を受けた医師 が診療を行う 《ケアの継続性や患者中心の 医療、家族志向性ケアの適用》 The Patient - Centered Medical Home PC-MHはもともと米国小児科学会が提唱した概念であるが、その後適応範囲が 拡大し2007年には米国小児科学会・米国家庭医療学会・米国内科学会・米国整 形外科学会が合同で声明を発表している。以下がPC-MHの原則である。 22 統合失調症 4 40

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多職種・多施設・多領域で統合したケアを行う

《情報集約によるケアマップの作成》

児童

相談所

保健師

精神科医

家庭医

保育園

足立区ファミリーサポートセンター

青木拓也

日本医療福祉生活協同組合連合会 家庭医療学開発センター、東京ほくと医療生活協同組合 北足立生協診療所

The Patient-Centered Medical Home(PC-MH)は包括的なプライマリケアを提供するための概念であり、特に心理社会的な要因を含めた複数の健康問題を抱える個人・家族に対しケアを行う上で重要な枠組みと考えられる。今回当院が家族のPC-MHとして機能することで、情報集約と多職種による介入を行った事例を経験したため報告する。

考察当院では来院の度に各受診動機に対する診療を行う他、PC-MHとして多職種連携の中心と

なり、家族に対して継続的かつ包括的なケアを行った。その結果、娘の予防接種管理、家族の医療機関へのアクセサビリティー等の改善に繋がった。

今後は特に成長・発達過程にある長女にフォーカスを当て、ネグレクトに対する心理的サポートの面などでも多職種で統合したケアを行っていく必要がある。

NEXT STEP

PC-MHとしての機能をさらに充実させるため、例えば”Safety and Quality”の側面では院内の質改善に患者や家族の意向を反映させるようなシステム・アプローチが必要と考える。参考文献1)AAFP,AAP,ACP,AOA. Joint Principles of the Patient-Centered Medical Home March 2007

【事例】22歳母(統合失調症)、4歳長女2012年5月転居を契機に、最も地理的アクセス

が良い当院を受診。以後母親は鉄欠乏性貧血や整形疾患等、また娘は予防接種や急性上気道炎等で不定期に来院するようになった。

初診時に親子とも保清ができていなかった点等から、心理社会的な要因を含め複数の健康問題を抱える家族と考えた。

▼当院がこの家族のPC-MHとして機能する必要性があると判断した。【家族構成】同居家族:父(40歳)・母・長女の3人暮らし非同居家族:父母各々の両親【経済的基盤】父の給与(解体関係の仕事)、生活保護【これまでの経過】母は他院精神科に通院。

長女の出生直後から母によるネグレクトがみられたため、児童相談所等が介入していた。

母は精神疾患の影響で生活能力が低下しており、調理や保清などが困難な状態。そのため娘は父方の祖父母宅を週3回程度訪問し入浴をし

ている。尚娘の保育園の送迎はヘルパーが行い、医療機関の受診にもヘルパー同伴を要する。【主要な問題点】#1 長女の予防接種が未完#2 ネグレクトに対する長女の心理的サポート#3 母子ともに保清ができていない

EBMや質改善の手法を用

い、質が高く安全なケアを提供する

急性期・慢性期・予防・終末期と全てのステージにおいてケアに取り

組む《娘の予防接種管理》

医師がリーダーシップを取り多職種チームで

取り組む患者のアクセサビリティーを向上させるための工夫を行う

《当院にはヘルパーの同伴なしでも来院可能になった》

継続的かつ包括的なケアについて十分に訓練を受けた医師

が診療を行う

《ケアの継続性や患者中心の医療、家族志向性ケアの適用》

【The Patient-Centered Medical Home】PC-MHはもともと米国小児科学会が提唱した概念であるが、その後適応範囲が拡大し2007年には米国小児科学会・米国家庭医療学会・米国内科学会・米国整形外科学会が合同で声明を発表している。以下がPC-MHの原則である。

22歳統合失調症

4歳

40歳