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2o/ybzw? 文と写真/ 志風恭子 Texto y foto kyoko Shikaze 7 フラメンコ 故郷 フラメンコの故郷 フラメンコはスペインのアート。で も、スペインのどこにでもある、とい うわけではありません。もしフラメン コを目的としたスペイン旅行をするの なら、行くべきところはアンダルシア。 フラメンコの生まれ故郷です。スペイ ン南部に位置し、スペインで最も人口 が多い地方(面積はカスティージャ・ イ・レオンに次いで2位)で、地中海や 大西洋に面した温暖な海辺の町もあれ ば、スキーのW杯が開催されたシエラ・ ネバダなど雪が降る山岳地帯もあり、 と多彩な顔を持っています。その中で もフラメンコのメッカといえるのは、 カディス、ヘレス、セビージャという、 グアダルキビル川流域のバハ・アンダ ルシア、低アンダルシアと呼ばれる地 域にある三つの町でしょう。 黄金地帯  カディス、ヘレス、セビージャ フラメンコの基本であり、代表的な 曲種でもある、ソレア、アレグリア、 シギリージャ、ブレリア、タンゴなど はすべてこの地域で生まれ、発展して きました。新大陸との貿易港だったカ ディス、シェリー酒と農業のヘレス、 内陸にありながら新大陸の富が集まり アンダルシアの中心として栄えてきた セビージャ。もともと内輪の宴、楽し みだったものが、それを仕事とする専 門家たちが生まれることで目覚ましい 発展を遂げ、今私たちが知っているフ ラメンコとなりました。様々な文化が 混ざり合うところ、そしてアルテにお 金を払う人がいる人口の多い町がフラ メンコ誕生の地となったのは必然だっ たのでしょう。今でもこの三つの町出 身のアルティスタは多く、フラメンコ 好きなら一度は訪れたい街です。明る い陽光に満ちたカディスの街の風に吹 かれてアレグリアスを思い、古い酒倉 から香りが漂ってくるヘレスの街角で 聴こえるてくるブレリアに耳を傾け、 フラメンコの都セビージャで歴史的な アルティスタたちの足跡をたどる…。 想像するだけでワクワクしませんかセビージャなら偶数年の秋に開催され るビエナル、ヘレスなら毎年 2 月末か ら行われるヘレスのフェスティバルと いったイベント時はもちろん、劇場公 演がない時でもペーニャやタブラオな どでフラメンコと接することができま す。なお、セビージャ県内のレブリー ハ、ウトレーラ、モロン・デ・ラ・フロ ンテーラのように、小さな町にもフラ メンコの伝統は息づいています。都会 とは現代化のスピードも違ったせいで 古い形のフラメンコが残ったのでしょ う。こういった小さな町にはタブラオ があるわけではないので、フラメンコ を観る目的で行くならフェスティバル に合わせていくのがオススメです。も ちろんそれぞれの町の雰囲気を味わう だけでも価値はあると思います。 ファンダンゴの都  ウエルバ、コルドバ、マラガ、グラナダ 17世紀のハカラにルーツを持つと いう、18世紀にアンダルシアで生まれ たファンダンゴは各地に根付いてフラ メンコをより豊かなものへとしてきま した。ファンダンゴ由来の曲はアンダ ルシア西部ウエルバのファンダンゴだ けではありません。ファンダンゴ・デ・ ウエルバにも町々で異なったスタイル がありますが、マラガでマラゲーニャ、 マラガ県ロンダではロンデーニャとな り、グラナダではグラナイーナ、コル ドバならファンダンゴ・デ・ルセーナ、 そして東部ではタランタやミネーラ、 カルタヘネーラなどカンテ・デ・レバン テの曲たちを生み出しました。 グラナダはサクロモンテの洞窟でヒ ターノたちが早くからフラメンコを生 業として、モスカやカチューチャなど 独特のレパートリーを持っています。 セビージャやヘレスとはまた違った、 洞窟フラメンコの独特の雰囲気は一度 味わっておいて損はありません。毎年 6月から7月にかけて行われる国際音 楽舞踊祭はスペインで初めての国際フ ェスティバルですが、ここでもフラメ ンコ公演がいくつかありますし、コル ドバでは 7 月のギター祭や3年に1度 のコンクール、マラガでは奇数年に行 われるマラガのビエナルなどを楽しむ ことができます。 カディスの光と風はアレグリアスのアイレそのもの。 遠くに見える黄色いドームはカテドラル。 海岸ぞいに半島をぐるっと 一回りするのもいい。 24

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2o/ybzw何? 文と写真/志風恭子Texto y foto kyoko Shikaze

7フラメンコの故郷フラメンコの故郷 フラメンコはスペインのアート。でも、スペインのどこにでもある、というわけではありません。もしフラメンコを目的としたスペイン旅行をするのなら、行くべきところはアンダルシア。フラメンコの生まれ故郷です。スペイン南部に位置し、スペインで最も人口が多い地方(面積はカスティージャ・イ・レオンに次いで2位)で、地中海や大西洋に面した温暖な海辺の町もあれば、スキーのW杯が開催されたシエラ・ネバダなど雪が降る山岳地帯もあり、と多彩な顔を持っています。その中でもフラメンコのメッカといえるのは、カディス、ヘレス、セビージャという、グアダルキビル川流域のバハ・アンダルシア、低アンダルシアと呼ばれる地域にある三つの町でしょう。

黄金地帯  カディス、ヘレス、セビージャ

 フラメンコの基本であり、代表的な曲種でもある、ソレア、アレグリア、シギリージャ、ブレリア、タンゴなど

はすべてこの地域で生まれ、発展してきました。新大陸との貿易港だったカディス、シェリー酒と農業のヘレス、内陸にありながら新大陸の富が集まりアンダルシアの中心として栄えてきたセビージャ。もともと内輪の宴、楽しみだったものが、それを仕事とする専門家たちが生まれることで目覚ましい発展を遂げ、今私たちが知っているフラメンコとなりました。様々な文化が混ざり合うところ、そしてアルテにお金を払う人がいる人口の多い町がフラメンコ誕生の地となったのは必然だったのでしょう。今でもこの三つの町出身のアルティスタは多く、フラメンコ好きなら一度は訪れたい街です。明るい陽光に満ちたカディスの街の風に吹かれてアレグリアスを思い、古い酒倉から香りが漂ってくるヘレスの街角で聴こえるてくるブレリアに耳を傾け、フラメンコの都セビージャで歴史的なアルティスタたちの足跡をたどる…。想像するだけでワクワクしませんか? セビージャなら偶数年の秋に開催されるビエナル、ヘレスなら毎年2月末から行われるヘレスのフェスティバルといったイベント時はもちろん、劇場公

演がない時でもペーニャやタブラオなどでフラメンコと接することができます。なお、セビージャ県内のレブリーハ、ウトレーラ、モロン・デ・ラ・フロンテーラのように、小さな町にもフラメンコの伝統は息づいています。都会とは現代化のスピードも違ったせいで古い形のフラメンコが残ったのでしょう。こういった小さな町にはタブラオがあるわけではないので、フラメンコを観る目的で行くならフェスティバルに合わせていくのがオススメです。もちろんそれぞれの町の雰囲気を味わうだけでも価値はあると思います。

ファンダンゴの都  ウエルバ、コルドバ、マラガ、グラナダ

 17世紀のハカラにルーツを持つという、18世紀にアンダルシアで生まれたファンダンゴは各地に根付いてフラメンコをより豊かなものへとしてきました。ファンダンゴ由来の曲はアンダルシア西部ウエルバのファンダンゴだけではありません。ファンダンゴ・デ・ウエルバにも町々で異なったスタイルがありますが、マラガでマラゲーニャ、マラガ県ロンダではロンデーニャとなり、グラナダではグラナイーナ、コルドバならファンダンゴ・デ・ルセーナ、そして東部ではタランタやミネーラ、カルタヘネーラなどカンテ・デ・レバンテの曲たちを生み出しました。 グラナダはサクロモンテの洞窟でヒターノたちが早くからフラメンコを生業として、モスカやカチューチャなど独特のレパートリーを持っています。セビージャやヘレスとはまた違った、洞窟フラメンコの独特の雰囲気は一度味わっておいて損はありません。毎年6月から7月にかけて行われる国際音楽舞踊祭はスペインで初めての国際フェスティバルですが、ここでもフラメンコ公演がいくつかありますし、コルドバでは7月のギター祭や3年に1度のコンクール、マラガでは奇数年に行われるマラガのビエナルなどを楽しむことができます。

カディスの光と風はアレグリアスのアイレそのもの。遠くに見える黄色いドームはカテドラル。海岸ぞいに半島をぐるっと一回りするのもいい。

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鉱山地帯 ハエンとアルメリア。そしてムルシア

 日本からの観光客もあまり訪れないハエンとアルメリアは鉱山があるという共通項があり、アルメリアの東隣のムルシア地方とともに、カンテ・デ・レバンテを支えています。ムルシア州ラ・ウニオンは毎年8月に行われるカンテ・デ・ラス・ミーナス祭はそのコンクールで有名です。かつて鉱山で栄えた町の郊外の、廃坑での公演もあり、タラント等の歌の世界を感じるいい機会かも

しれません。 ムルシアはアンダルシアではありませんが、これらフラメンコとの関係から、“アンダルシアの9つ目の県”と言う言い方がされることがあります。

アンダルシアの 9つ目の県は? ただそう言われるのはムルシアだけではありません。ウエルバの北に位置するエストレマドゥーラ州も、ハレオ・エストレメーニョやタンゴで有名で、 こちらも“9つ目の県”と呼ばれることがあります。また、マドリードはフラメンコの歴史のごく初期からフラメンコの舞台として親しまれ、多くのアルティスタたちをも生み出してきました。今も多くのタブラオが軒を並べ、劇場公演も多く行われています。フラメンコはアンダルシア生まれですが、マドリード育ちという面もあるのです。また多くの観光客を集めるバルセロナも同様に、たくさんのタブラオやフェスティバルがフラメンコを支えてきました。

92年のしかぜ。セビージャでファルーコと。セビージャを代表する踊り手の一人だったファルーコは実はマドリード生まれです。

志風恭子/1987年よりスペイン在住。セビージャ大学フラメンコ学博士課程前期終了。パセオ通信員、通訳コーディネーターとして活躍。パコ・デ・ルシアをはじめ、多くのフラメンコ公演に携わる。洞窟でのフラメンコ・ショーはアルハンブラ宮殿と共に

グラナダ観光の定番。昔はおばあちゃんたちが踊るモスカとかもやっていましたが最近は普通のフラメンコが多いかも。

サンティアゴ街と共に多くのアルティスタを生んだヘレスのプラスエラ地区には鉄火肌カンタオーラ、パケーラの銅像が。

 そして今、フラメンコは国境を越えて親しまれています。フランスやドイツ、オランダ、イギリスなどヨーロッパはもちろんアメリカ、メキシコ、そして日本、中国など世界中にフラメンコを愛する人たちがいて、様々な公演が行われています。どこにいてもフラメンコを楽しむことはできますが、できることなら一度はスペインに行ってそのルーツを、アイレ、空気感を感じてみるのをお勧めします。

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