TDR/TDT 測定ガイド - keysight.com · - 1 - 【1】 初めに...

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TDR/TDT 測定ガイド Agilent Infiniium DCA 86100B 広帯域オシロスコープ Agilent 54754A TDR/TDT プラグインモジュール 1】 初めに ―――――――――――――――― 1 使用機器 使用するデモボードについて 2】 測定上の注意 ――――――――――――― 2 静電気対策 ケーブル等の除電について 3】 測定を始める前に ――――――――――― 3 フロントパネル各部の機能 垂直軸校正の手順 4】 シングルエンドTDR測定 (1) TDR 測定の原理 ―――――――― 6 (2)代表的な波形例 ――――――――― 8 (3)シングルエンドTDR 測定手順 ――― 11 5】 データの保存・読み込み ――――――――― 23

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TDR/TDT 測定ガイド

Agilent Infiniium DCA 86100B 広帯域オシロスコープ

Agilent 54754A TDR/TDT プラグインモジュール

【1】 初めに ―――――――――――――――― 1

• 使用機器

• 使用するデモボードについて

【2】 測定上の注意 ――――――――――――― 2

• 静電気対策

• ケーブル等の除電について

【3】 測定を始める前に ――――――――――― 3

• フロントパネル各部の機能

• 垂直軸校正の手順

【4】 シングルエンドTDR測定

(1) TDR 測定の原理 ―――――――― 6

(2) 代表的な波形例 ――――――――― 8

(3) シングルエンドTDR 測定手順 ――― 11

【5】 データの保存・読み込み ――――――――― 23

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【1】 初めに

この測定ガイドでは、Agilent 54754A TDR/TDT プラグインモジュールに付属のデモボードの測定を例に、

TDR/TDT 測定の手順を説明いたします。

<使用機器>

広帯域オシロスコープ Agilent 86100B

TDR/TDT プラグインモジュール Agilent 54754A

高品質の SMA ケーブル 1 本 (型番Agilent 8120-4948 など)

高品質の SMA(f) 50Ω終端 1 個 (型番Agilent 1250-2151 など)

高品質の SMA(f) ショート 1 個 (型番Agilent 1250-2152 など)

高品質の SMA(m) ショート 1 個 (型番Agilent 1250-2153 など)

54754A 付属のデモボード 1 個 (型番Agilent 54754-66503)

<使用するデモボードについて>

付属のデモボードは、シングルエンドおよび差動ラインの 2 種類の伝送路が設けられています。シングルエンドの

伝送路には細い部分(インピーダンス高)と太い部分(インピーダンス低)があり、伝送路上のインピーダンス変化を

観測できるようになっています。

図1 付属デモボード(型番 Agilent 54754-66503)

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【2】 測定上の注意

静電気対策を行ってください

Agilent 54754A の信号入力コネクタは、超広帯域の特性を得るために、サンプリング動作をおこなうサン

プラ素子に内部で直接接続される構造をとっています。そのため、静電気に非常に敏感であり、場合によっ

ては静電気が測定器に損傷を及ぼす可能性があります。

測定器の損傷を防ぐために下記の項目を必ず実施してください。

• 測定器の電源はアースの取れたものを使用する。

• 測定時はアースに接続したリスト・ストラップと静電気対策マットを使用する。

• 入力部にケーブル等を接続する際は、接続する直前に中心導体と外皮をショートして除電する。

• DUT 自体の除電を行う。

<ケーブル等の除電について>

モジュールの入力部には、静電気キャップがついています。ケーブル等を入力部に接続する直前に、このキャップ

の突起部分に、ケーブルなどの芯線と外皮を同時に接触させ放電する方法をお勧めします。

図2 ケーブルの除電

静電気キャップ突起部分で放電します。

静電気キャップ

ケーブル

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【3】 測定を始める前に

<フロントパネルの機能>

1 電源キー 5 Auto Scale キー

2 default setup キー 6 チャンネル表示キー

3 TDR/TDT モード キー 7 マーカーキー

4 横軸調整ノブ

図3 フロントパネル各部の機能

l 実際に測定を行う前に、ウォームアップ及びモジュールの垂直軸校正を行います。

(1) 前面パネルの電源キー( 1 )を押し、電源を投入します。

(2) 60 分間のウォームアップをおこないます。

正確な測定を行うためには、電源投入直後に生じる測定器内部の温度の変化が安定するまで待つ必要があります。

(3) Default setup キー( 2 )を押し、測定器をリセットします。

Default setup キーは、一つの測定を終え、別の測定を始める際などに用います。前のセットアップのまま測定を行いたい

場合には押す必要はありません。

(4) TDR/TDT モードキー( 3 )を押します。

(5) モジュールの垂直軸校正を行います。

正確な測定を行うためには、ウォームアップ毎に必ず垂直軸の校正を行う必要があります。

1

6

3

4

7

2 5

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◇ 垂直軸校正の手順

TDR モジュールは静電気に非常に敏感な構造となっています。モジュールの損傷を防ぐため、

測定の際には静電気防止マット、リストストラップを使用してください。また、接続前にDUT や

ケーブルの除電を必ず行ってください。

(以下は 86100B の左側のスロットに54754A TDR/TDT モジュールが入っている場合を想定して説明し

ます。)

1. ディスプレイ上のメニューバーから、Calibrate → All Calibrations…を選択します。

2. All Calibrations メニューの Modules タブを選択し、Calibrate Left Module…を押すと校正が開始さ

れます。

図4 All Calibrations メニュー

3. Module Calibration ダイアログボックスに“Disconnect everything from the left module”と表示され

ます。モジュールに接続されている終端抵抗やケーブル等があれば、全て取り外し、Continue しま

す。

図5 Module Calibration ダイアログボックス①

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4. 次に、再び Module Calibration ダイアログボックスが表示され、“Connect 50ohm load

Channel1”というメッセージが出ます。50Ω終端をチャンネル 1 につなぎ、Continue します。

最も正確に測定を行うためには、校正に用いる50Ω終端の実際の抵抗値を別途デジタルマルチメータ等で測定し、

ダイアログボックスに入力します。

注意!!

この時、モジュールの損傷を防ぐために、ケーブルを接続する直前に、ケーブルの芯線と外

皮を必ずショートさせ、芯線と外皮との間にたまっている電荷を放出してください(p.2 【2】

測定上の注意 参照)。

図6 Module Calibration ダイアログボックス②

5. 次にチャンネル 2 について、手順4 と同様に校正を行います。

6. 再び“Disconnect everything from the left module”と表示されますので、接続されている50Ω終

端を取り外し、Continue します。

7. 画面下部に“Calibration Completed”と表示されれば、校正終了です。

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【4】 シングルエンドTDR測定

このセクションでは、シングルエンドTDR測定の原理及び測定手順を、54754Aモジュール付属のデモボード(型番

54754-66503)の測定を例にとって説明します。

(1) TDR 測定の原理

TDR は下図のようにステップジェネレータとサンプラ回路より構成されています。まず、ステップジェネレータから立

ち上がり時間数十 psec の高速のエッジを持つステップパルス(Ei)が被測定デバイスに加えられます。被測定デバ

イスを含む伝送線路上にインピーダンスの不連続点があると、そこでステップパルスの一部は反射します。その後

反射波(Er)はサンプラ回路方向に進んでいきますので、入射波観測から一定時間(T)後に反射波が観測されること

になります(図8)。観測された反射波の波形から入射波との電圧比や時間 T を読み取ることにより、距離とともにイ

ンピーダンスがどう変化しているか知ることが出来ます。

図7 タイム・ドメイン・リフレクトメータ(TDR)の機能ブロック図

図8 オシロスコープの表示例

(Vi、Vrはそれぞれ入射波、反射波の電圧振幅)

サンプラ

回路

ステップ・

ジェネレータ

Ei

Er

高速オシロスコープ 被測定デバイス

ZL

Vi

T

Vr

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負荷のインピーダンスZLは、ソースインピーダンスをZ0として、

011

ZZ L ρρ

−+

=

と表されます。ここでρ は反射係数で、

i

r

VV

ですので、ソースインピーダンス Z0 がわかっていれば、入射波の電圧振幅と反射波の電圧振幅から負荷のインピ

ーダンスZLを知ることが出来ます。

また、インピーダンス不連続点までの距離D と時間 T の間には、下のような関係があります。

vDT 2= ,

r

cvv

ε= ( cv ; 光速、 rε ; 伝送路の比誘電率)

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(2) 代表的な波形例

ここでは、オシロスコープに表示された波形がどのように解釈できるのか、簡単な場合を例にとって説明しま

す。

• 抵抗性負荷の反射解析

① Vr = 0 の場合

ρ= 0 より、ZL = Z0 (インピーダンスが一致)

② Vr = -Vi の場合

ρ= -1 より、ZL= 0 (終端短絡)

③ Vr = Vi の場合

ρ= 1 より、ZL= ∞ (終端開放)

④ Vr = Vi / 3 の場合

ρ= 1/3 より、ZL= 2Z0

Vi

Vr = 0

Vi

Vr = -Vi

Vi

Vr=Vi

Vi

Vr = Vi /3

ZL ZL

ZL

ZL

ZL 2ZL

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⑤ Vr = -Vi / 3 の場合

ρ= -1/3 より、ZL= Z0 / 2

• リアクタンスを含む負荷の反射解析

リアクタンスを含む負荷からの応答を図9に示します。

負荷に RL の直列が含まれている場合は、インダクタは電流の急激な変化を受け入れないため、ステップジェネレ

ータから発生したステップパルスが負荷に到達した瞬間、インピーダンスが無限大であるように見えます。したがっ

て、終端開放の場合と考えて、この瞬間に反射波の振幅は入射波の振幅と等しくなります。一定時間が経過すると、

負荷を流れる電流が指数関数的に増加していき、Lのインピーダンスが0に向かって低下します。負荷のインピーダ

ンスは最終的にR のみで決まる値となります。

RC 並列回路の場合は、キャパシタが電圧の急激な変化を受け入れないため、ステップパルスが負荷に到達した瞬

間は終端短絡のように見えます。この時、反射波の振幅は入射波の振幅の反転となります。その後、キャパシタに

かかる電圧が増加して、インピーダンスが上昇していき、キャパシタは実質的に開放となります。

Vi

Vr = -Vi /3

ZL ZL/2

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図9 リアクタンスを含む負荷からの反射解析

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(3) シングルエンドTDR 測定手順

TDR モジュールは静電気に非常に敏感な構造となっています。モジュールの損傷を防ぐため、

測定の際には静電気防止マット、リストストラップを使用してください。また、接続前にDUT や

ケーブルの除電を必ず行ってください。

正確に測定を行うためには、ウォームアップ毎に必ず垂直軸校正を行ってください。

0. 本ガイドp.3 の【3】 測定を始める前に に従い、測定器のウォームアップ及び垂直軸校正を行います。

校正終了直後(何も接続していない状態)のディスプレイは下図のようになっています。

図10 入力部開放時の波形

0-1 TDR の原理のところで見たように、このような終端開放の場合は反射波の振幅が入射波の振幅に等し

くなっています。

0-2 反射波の立ち上がり時間を調べてみます。

① 反射波の立ち上がりエッジ部分が表示されるように、フロントパネルの横軸調整ノブ( 4 )を回す

か、または画面下の Time/Delay タブ(図11参照)から、横軸を調整します。

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図11 Time/Delay タブによる横軸の調整

② 画面左の Rise Time キーを押します。画面下に計測値が表示されます。

立ち上がり時間は約40psec であることがわかります。

図12 反射波の立ち上がり時間

1. SMA ケーブルをモジュールのチャンネル1に接続します。

注意!!

この時、モジュールの損傷を防ぐために、ケーブルを接続する直前に、ケーブルの芯線と外皮を必ずショ

ートさせ、芯線と外皮との間にたまっている電荷を放出してください(p.2 【2】 測定上の注意 参照)。

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1-1 ケーブルを接続すると、パルスが反射する位置がケーブル長分だけずれるため、反射波のエッジ

が画面の外に移動します。

1-2 反射波の波形を見るために前面パネルのAuto Scale キー( 5 )を押します。

図13 Auto Scale 実施後の画面

1-3 0-2 と同様にして、反射波の立ち上がり時間を調べてみます。

立ち上がり時間は約55psec で、ケーブルによりパルスが劣化し、立ち上がり時間が遅くなっている

ことがわかります。

立ち上がり時間の測定値は SMA ケーブルの個々の特性に依存しますので、55psec 以外の値が測定されることが

あります。

図14 ケーブル接続時の反射波の立ち上がり時間

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2. ケーブルの先端にデモボードを接続します。ここではシングルエンドラインに接続します(図15参照)。

注意!!

この時、モジュールの損傷を防ぐために、デモボードを接続する直前に、デモボードのコネクタの芯線と外皮

を必ずショートさせ、芯線と外皮との間にたまっている電荷を放出してください(p.2 【2】 測定上の注意 参

照)。

図15 デモボードの接続

3. フロントパネルの Auto Scale キーを押します。 シングルエンドラインに含まれる2か所の不連続点(図16

矢印の位置)が観測できます。

図16 デモボードの測定

Agilent 54754A

3.5mm

SMA ケーブル

デモボード

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4. DUT を測定するための、スケールとデータ取得数を設定します。

4-1 横軸調整ノブまたは画面下のTime/Delayキー、及びScale/Offsetキーを使い、測定したい部分(こ

こではデモボードの不連続点の部分)が画面いっぱいになるようにします。

図17 不連続部分の拡大(丸で囲んだ部分のキーを用います)

4-2 取得するデータ数を設定します。

ディスプレイ上部のツールバーから、Setup > Acquisition… を選択します。Manual にチェックを入

れ、取得したいデータ数に設定します。(データ数は 2nの値になります。)

データ数を多く設定すると、後述のノーマライズ機能を用いる際、速い立ち上がり時間に設定することが出来ま

す。測定に要する時間は取得データ数に依存します。

図18 取得データ数の設定

細い部分

太い部分 ケーブルコネクタ部

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5. 測定のスケールと取得データ数が設定できたら、ここで一旦デモボードをはずします。

6. ノーマライズを行います。

ノーマライズはシステム誤差を除去し、ステップパルスの立ち上がり時間を変えた時のDUTからの応答を

検討するための機能です。測定系の末端で、ショートと50Ωによる校正を行い、その位置に基準面を設定す

ることが出来ます。

ここでは、基準面は測定系の末端であるケーブルの先端に設定します。

ノーマライズ機能について

ノーマライズ機能を用いることによって、システム誤差の除去、ステップパルスの立ち上がり時間の変更

を行うことが出来ます。

• システム誤差の除去

TDR 測定では、測定器から発生したステップパルスは、ケーブル、プローブ等を経て DUT に加え

られます。測定器やケーブル、プローブは完全なものではありませんので、そこでパルスが劣化し

てしまいます。このパルスの劣化により発生する誤差を取り除くことが出来ます。

• 立ち上がり時間を変えた時の DUT からの応答の検討

DUT からの応答はステップパルスの立ち上がり時間の影響を大きく受けます。そのため、デバイ

スからの実際の応答を知るには、デバイスが実際に動作する信号に相当する立ち上がり時間に対

する応答を知る必要があります。また、高い分解能での測定を行いたい場合には、より立ち上がり

時間の速いパルスを用いる必要があります。通常、測定器内部のステップジェネレータから発生す

るパルスの立ち上がり時間は固定されています。ノーマライズ機能を用いることで、立ち上がり時

間を変えた時の応答を検討することが出来ます。

○ ノーマライズの原理

ノーマライズでは、時間領域での測定結果を、一旦周波数領域に変換し、そこでディジタルフィル

タによる処理を行います。その結果を再度時間領域に戻すことによって、ノーマライズした応答を得

ます。

処理に用いるディジタルフィルタは、基準面で行ったショート、50Ω校正のデータより生成されて

います。そのため、基準面までのシステムの周波数特性の理想的な応答からのずれを補正する形

になっています。

このフィルタの周波数成分を補正して、ローパスフィルタにすることでパルスの立ち上がり時間

が遅いときの応答を知ることが出来ます。逆にフィルタの高域を強調することで、パルスの立ち上

がり時間が速い場合の高分解能な応答を検討することが出来ます。

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6-0 ノーマライズを行う前に、基準面にしたい部分及び測定したい部分が画面内に収まっていること、

また、取得したいデータ数に設定されていることを確認してください。(基準面が画面表示内に入っ

ていないと、ノーマライズを行うことが出来ません。また、ノーマライズ後に横軸や取得データ数を

変更すると、ノーマライズ後の波形が画面から消えてしまいます。)

また、ノーマライズ機能による立ち上がり時間変更(手順は後述 6-7)の際に、立ち上がり時間を

10psec に設定するには、取得データ数を最大値に設定しておく必要があります。

6-1 画面左の Normalize キーを押し、メニュー画面を表示します。

図19 ノーマライズメニュー

6-2 Normalize Response 1…を押すと、ノーマライズの手順がスタートします。

(あらかじめ垂直軸校正を行っていない場合、または垂直軸校正を行った後に大きな温度変化があ

った場合などは、ノーマライズ校正の前に自動的に垂直軸校正の手順が入ります。その際は本ガ

イドp.4 の【3】 測定を始める前に を参照してください。)

6-3 Single-Ended TDR Normalization ダイアログボックスが表示されたら、基準面の位置(ここではケ

ーブルの先端)にショートをつなぎ、Continue します。

図20 ノーマライズ手順①

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6-4 下図のダイアログボックスが出たら、ショートをはずして50Ωをつなぎ、Continue します。

図21 ノーマライズ手順②

6-5 画面下に“Normalization completed. Response1 turned on.”というメッセージが表示されれば、ノ

ーマライズ校正手順は終了です。

ケーブル先端の 50Ωをはずすと、画面は下図のようになっています。黄線がノーマライズしていな

い元の波形、青線がノーマライズした波形です。

図22 ノーマライズ校正直後の画面

6-6 ケーブル先端に再びデモボードをつなぎます。

注意!!

この時、モジュールの損傷を防ぐために、ケーブルを接続する直前に、デモボードのコネクタの芯

線と外皮を必ずショートさせ、芯線と外皮との間にたまっている電荷を放出してください(p.2 【2】

測定上の注意 参照)。

画面には、ノーマライズした波形(図23 青線)とノーマライズしていない元の波形(図23 黄線)の

二つの波形が表示されます。

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図23 デモボードの測定 ― ノーマライズ

6-7 ノーマライズの機能を用いて、パルスの立ち上がり時間を変えた時の応答を表示します。

① 画面左の TDR/TDT Mode メニューからResponse…を選択します。

② Response メニューの下部にあるRise Time を変更します。

Rise Time を 10psec に設定するには、ノーマライズを行う前に設定した取得データ数が最大値である必要が

あります。

図24 ノーマライズ機能 ― 立ち上がり時間の変更(丸で囲んだ部分を変更します。)

ノーマライズした波形

もとの波形

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図25 デモボードの測定 ― 立ち上がり時間の変更例

(立ち上がり時間を100psec に変更した場合の応答)

③ ノーマライズでパルスの立ち上がり時間を速く設定する場合は、ノイズの影響が大きくなりま

す。そこで、必要に応じて波形の Averaging 数を大きくします。

ノーマライズでは、デジタルフィルタの高域を強調することによってパルスの立ち上がり時間を速くしていま

す。このときシステムノイズも同時に増幅されます。波形を平均化することによって、ノイズフロアのレベルを

下げることが出来ます。

ディスプレイ上部のツールバーから、Setup > Acquisition…を選択します。Averaging 欄の

Number of Averages を必要に応じて大きくします。Averaging 数を変更した場合には、正確なノ

ーマライズ結果を得るために、ここで再度ノーマライズ校正の手順を行います。

図26 Averaging 数の変更

6-8 ノーマライズした波形のみを表示させるには、フロントパネルのチャンネル表示キー( 6 )をオフ

(非点灯)にします。

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6-9 マーカーで不連続部分の値を読み取ります。

① フロントパネルのマーカーキー( 7 )を押し、マーカーを表示させます。マーカーと交差したポイ

ントの測定値が、右下のボックスに表示されます。

ラインのインピーダンス50Ωに対して、ラインの細い部分が約75Ω、太い部分が約30Ωであることがわかります。

図27 不連続部分のΩ値の読み取り

② マーカーの単位を変えるには測定値表示ボックス内の Setup & Info キーを押し、TDR/TDT

Marker Units を選択します。

縦軸は Volts、Ohms、%Reflect (入射波200mV に対する比) の三種類の表示が可能です。

横軸はSeconds(時間)のほかにMeters(距離)で表示することが出来ます。Meters表示の際は、

伝送路の比誘電率を入力する必要があります。

vDT 2= ,

r

cvv

ε= (

cv ; 光速、rε ; 伝送路の比誘電率)

図28 マーカー単位ダイアログボックス

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6-10 マーカーを不連続部分の立ち上がりの左右に配置すると、マーカーにはさまれた部分の過剰 LC

の測定値が右下のボックスに表示されます。

デモボードのトレースの細い部分は約5nH の過剰リアクタンスがあることがわかります。

図29 過剰 LC の測定

シングルエンドTDR 測定の手順は以上です。

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【5】 データの保存・読み込み

この測定器では 4 種類の保存方法(下記a.~d.)があります。

a. File > Save > Screen Image… を選択

画面イメージを下記のフォーマットで保存できます。

*.bmp , *,pcx , *.eps , *.ps , *.gif , *.tif , *.jpg

保存の際に、画面の背景を黒から白に反転させることも可能です。その場合は、ダイアログボック

ス下部の Invert Waveform Background Color をチェックします。

図30 画面イメージの保存 ― 背景の反転

b. File > Save > Instrument Setup…

測定器の各種設定を保存することが出来ます。

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c. File > Save > Waveform…

各チャネルの波形およびノーマライズ波形(Response 波形)を下記のフォーマットで保存できます。

① Waveform files (Internal) *.wfm

測定器独自のフォーマットで、測定器でしか開くことが出来ません。

② Waveform files (Verbose) *.txt

測定データ(Y 値)の他に、測定器の設定等の情報を含むヘッダが付くフォーマットです(図31)。

③ Waveform files (Y Values) *.txt

測定データのみ(ヘッダ無し)のテキストファイルです(図31)。

Waveform files (Y Values)で保存した場合、縦軸や横軸の単位、オフセット等の情報が失われま

すので注意してください。

ヘッダ部分

(② Waveform files (Verbose)で

保存した場合、ヘッダが付きます)

データ部分

(③ Waveform files (Y Values)では、

このデータ部分のみ保存されます)

図31 2種類の txt ファイル(Verbose とY Values)の違い

d. File > Save > TDR/TDT Normalization…

ノーマライズの設定を保存することが出来ます。

ノーマライズ校正の結果は接続の仕方によって変わります。そのため、保存したノーマライズの設定は

ケーブルやテストフィクスチャ等、基準面までの測定のセットアップに全く変更がないという場合(DUT の

みの取り替え等の場合)にのみ使うことが出来ます。測定のセットアップが変わった際には、再度ノーマ

ライズを行う必要があります。

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<波形の保存>

File > Save >Waveform…で、各チャネルの波形およびノーマライズ波形(Response波形)を保存する

ことが出来ます。(前頁c. 参照)

保存の際には ①ファイルフォーマット、②ファイル名、③保存したい波形(チャネル1、レスポンス1、等)

を選択します。

<波形の読み込み>

• 保存した波形(*.wfm,*.txt)を画面に表示させるには、File > Open… を選択します。

このとき、表示先のメモリ番号(Memory1~4)を選択する必要があります。画面に同時に表示できる保存波

形は最大4つまでです。

図32 保存波形の読み込み・表示

表示先のメモリ番号を指定する必要があります。

• 保存波形を表示した場合、その波形のスケールは、File > Waveform Memory…で変更することが出来ま

す。

Waveform Memory Setup ダイアログで変更したスケールは、各メモリ上の波形に関してのみ適用されま

す。つまり、現在の測定値や、他のメモリ上の波形のスケールは同時には変更されませんので注意してく

ださい。

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図33 保存波形のスケールの変更

• Waveform Memory Setup から、保存波形を直接開くことも出来ます。

ダイアログボックス下部の Load From File…を選択し、表示させたいファイルを選びます。

• Waveform Memory Setup から、現在画面に表示されている波形を直接表示メモリ(Memory1~4)にロー

ドすることも出来ます。

ダイアログボックス下部の Load from Waveform…を選択し、メモリに入れたい波形を選択します。

ただし、直接ロードした場合、測定データはファイルに保存されていません。そのため、表示メモリを上書き

するとデータが失われてしまいますので注意してください。