季節予報ガイダンスの 作成手法と予測精度 · 予測精度(1か月予報ガイダンス) 1週目 2週目 3~4週目 1か月 予測確率 実 況 出 現 率 対象とする現象:平均気温が「高い」と「低い」
Sedation...Palliative Prognostic Score 臨床的な予後の予測 1-2週 8.5 3-4週 6.0 5-6週 4.5...
Transcript of Sedation...Palliative Prognostic Score 臨床的な予後の予測 1-2週 8.5 3-4週 6.0 5-6週 4.5...
Sedation末期患者に対する鎮静について
高松赤十字病院 研修医 高橋宥貴
鎮静(sedation)とは
•「騒ぎや興奮した気持ちなどをしずめ落ちつかせること。また、しずまること。」大辞林 第三版より
•「鎮静剤などを投与することによって精神を鎮静させること」栄養・生化学辞典より
• 1)騒ぎや高ぶった気分などを、しずめ落ち着かせること。また、しずまり落ち着くこと。「暴動を鎮静する」 2)薬物などによって神経の興奮をしずめること。「鎮静薬」デジタル大辞泉より
苦痛緩和のための鎮静とは
1.苦痛緩和を目的として患者の意識を低下させる薬物を投与すること
例:ミダゾラムを持続投与するまたは
2. 苦痛緩和のために投与した薬物によって生じた意識の低下を意図的に維持すること
例:モルヒネを投与した後意識が低下しても減量しない
「苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン」より
鎮静の分類
•持続的鎮静:中止する時期をあらかじめ定めずに、意識の低下を継続して維持する鎮静
•間欠的鎮静:一定期間意識の低下をもたらした後に薬物を中止・減量して、意識の低下しない時期を確保する鎮静
鎮静の分類
•深い鎮静:言語的・非言語的コミュニケーションができないような、深い意識の低下をもたらす鎮静
•浅い鎮静:言語的・非言語的コミュニケーションができる程度の、軽度の意識の低下をもたらす鎮静
鎮静と安楽死の違い
鎮静 安楽死
意図 苦痛緩和 患者の死亡
方法 苦痛が緩和されるだけの鎮静薬の投与 致死性薬物の投与
得られる結果 苦痛緩和 患者の死亡
メリット、デメリット
•メリット:苦痛緩和
•デメリット:意識の低下、コミュニケーションできなくなること、生命予後を短縮する可能性
患者・家族によっては意識の低下や生命予後短縮の可能性をデメリットと考えない場合も…
今回は持続的深い鎮静に焦点を当てていきます
鎮静の倫理学的基盤
意図
自律性
相応性(proportionality)
の3条件を満たす必要がある
意図
•鎮静は苦痛緩和を目的としていること
•鎮静を行う意図(苦痛緩和)からみて相応の薬物、投与量、投与方法が選択されている。
自律性
• A)患者に意思決定能力がある場合、必要十分な情報を知らされたうえでの明確な意思表示がある。
または
• B)患者に意思決定能力がない場合、患者の推定意思がある。
*推定意思…患者の価値観や以前の意思表示に照らして判断
かつ
• C)家族の同意がある。
相応性(proportionality)•患者の状態(苦痛の強さ、ほかに緩和される手段がないこと、予測される生命予後、予測される益benefits(苦痛緩和)および予測される害harms(意識・生命予後への影響)からみて、鎮静がすべての取りうる選択肢の中で、最も状況に相応な行為であると考えられる。
•具体的には次の3条件を満たすこと。
1. 耐え難い苦痛があると判断される。
2. 苦痛は、医療チームにより治療抵抗性であると判断される。
3. 原疾患の増悪のために、数日から2~3週間以内に死亡が生じると予測される。
持続的深い鎮静においては、3つの条件に加えて鎮静の安全を高める目的でさらにもう一つ要件がある。
それが「安全性」である。
安全性
1. 医療チームの合意がある。多職種が同席するカンファレンスを行うことが望ましい。
2. 意思決定能力、苦痛の治療抵抗性、および、予測される患者の予後について判断が困難な場合には、適切な専門家(精神科医、麻酔科医、疼痛専門医、腫瘍専門医、専門看護師など)にコンサルテーションを行うことが望ましい。
3. 鎮静を行った医学的根拠、意思決定過程、鎮静薬の投与量・投与方法などを診療記録に記載する。
家族の役割
•家族は患者とともにケアの重要な対象であり、鎮静に関する意思決定に際して、患者に対するのと同じように、家族への十分な配慮が必要である。
医学的適応の検討
耐え難い苦痛
①評価
患者自身が耐えられないと表現する
あるいは
患者が表現できない場合、家族や医療チームが推測する
耐え難い苦痛②鎮静の対象となりうる症状
せん妄
呼吸困難
過剰な気道分泌
疼痛
嘔気・嘔吐
倦怠感
痙攣・ミオクローヌス
不安
抑うつ
心理・実存的苦痛
これらが単独で持続的深い鎮静の対象症状になることは例外的
治療抵抗性
1. 定義
①すべての治療が無効である
あるいは
②患者の希望と全身状態から考えて、予測される生命予後までに有効で、かつ、合併症の危険性と侵襲を許容できる治療手段がないと考えられる
治療抵抗性
十分な評価・治療を行わずに治療抵抗性であるとしてはならない
苦痛の治療抵抗性が不明瞭な場合、期間を限定して苦痛緩和に有効な可能性のある治療を行うこと(time-limited trial)を検討する
鎮静を施行する前に検討すべき緩和ケア
鎮静を施行する前に検討すべき緩和ケア
全身状態・生命予後の評価
•評価尺度(Palliative Prognostic Score, Palliative Prognostic Indexなど)
•予後因子(Karnofsky Performance Scale、呼吸困難、食欲不振、経口摂取量、せん妄、浮腫など)
•臓器不全の有無(呼吸不全、肝不全、腎不全、心不全など)
患者の全身状態を表現するのに「終末期」、「死亡が切迫している」などの曖昧な表現は推奨されない。
通常、持続的深い鎮静の対象となる患者の生命予後は数日~2,3週間以下である。
Palliative Performance Scale起居 活動と症状 ADL 経口摂取 意識レベル
100
100%起居している
正常の活動・仕事が可能症状なし
自立
正常
清明
90
80何らか症状はあるが正常の
活動は可能
正常もしくは減少
70
ほとんど起居している
明らかな症状があり通常の仕事や業務が困難
60明らかな症状があり趣味や家事を行うことが困難
ときに介助清明もしくは
混乱50 ほとんど座位もしくは臥床
著明な症状がありどんな仕事もすることが困難
しばしば介助
40 ほとんど臥床著明な症状がありほとんどの行動が制限される
ほとんど介助
清明もしくは傾眠±混乱
30
常に臥床著明な症状がありいかなる活動も行うことができない
全介助20 数口以下
10 マウスケアのみ
Palliative Prognostic Index
Palliative Performance Scale
10-20 4.0
30-50 2.5
≧60 0
経口摂取
著明に減少 2.5
中程度減少 1.0
正常 0
浮腫 あり 1.0
安静時の呼吸困難 あり 3.5
せん妄 あり 4.0
Palliative Prognostic Index
•得点が6より大きい場合は3週間以内に死亡する確率は感度80%、特異度80%、陽性的中率71%、陰性的中率90%となる
Karnofsky Performance ScaleKPS 状態
100 正常。臨床症状なし。
90 軽い臨床症状はあるが正常の活動が可能。
80 かなりの臨床症状があるが、努力して正常の活動が可能。
70 自分自身の世話はできるが、正常の活動や労働をすることは不可能。
60 自分に必要なことはできるが、ときどき介助が必要。
50 病状を考慮した看護および定期的な医療行為が必要。
40 動けず、適切な医療及び看護が必要。
30 全く動けず、入院が必要だが死は差し迫っていない。
20 非常に重症。入院が必要で精力的な治療が必要。
10 死期が切迫している。
0 死亡。
Palliative Prognostic Score
臨床的な予後の予測
1-2週 8.5
3-4週 6.0
5-6週 4.5
7-10週 2.5
11-12週 2.0
>12週 0
Karnofsky Performance Scale10-20 2.5
≧30 0
食欲不振 あり 1.5
呼吸困難 あり 1.0
白血球数>11000 1.5
8501-11000 0.5
リンパ球%0-11.9% 2.5
12-19.9% 1.0
Palliative Prognostic Index
得点が…
0~5.5 → 30日生存確率 >70%
5.6~11 → 30日生存確率 30~70%
11~17.5 → 30日生存確率 <30%
患者・家族の希望を確認する
患者の意思決定能力
①自分の意思を伝えることができること
②関連する情報を理解していること
③鎮静によって生じる影響の意味を理解していること
④鎮静を選択した理由に合理性があること
患者に意思決定能力がない場合
•医療者は患者の家族とともに推定意思について検討する
•この際、
①家族に期待される役割は患者の意思を推測することであり、家族が全ての意思決定の責任を負うのではないこと
②鎮静の意思決定については医療チームが責任を共有すること
の2点を明確にする
意思決定に必要な説明内容
①全身状態
②苦痛
③鎮静の目的
④鎮静の方法
⑤鎮静が与える影響
⑥鎮静後の治療やケア
⑦鎮静が行われなかった場合に予測される状態
①全身状態
→身体状況についての一般説明、根本的な治療法がないこと、予測される状態と予後
②苦痛
→緩和困難な苦痛の存在、苦痛の原因、これまで行われた治療、鎮静以外の方法での苦痛緩和が得られないと判断した根拠
③鎮静の目的
→苦痛の緩和
④鎮静の方法
→意識を低下させる薬剤を投与すること、状況に応じて中止できること
⑤鎮静が与える影響
→予測される意識低下の程度、精神活動・コミュニケーション・経口摂取・生命予後に与える影響
⑥鎮静後の治療やケア
→苦痛緩和のための治療やケアは継続されること、患者・家族の希望が反映されること
⑦鎮静を行わなかった場合に予測される状態
→他の選択肢、苦痛の程度、予測される予後
意思表示の自発性・継続性
•心理的・社会的圧力により患者・家族の意思決定が影響されていないことを確認する
•反復して鎮静を希望する意思表示がある、あるいは、苦痛緩和を希望する一貫した意思表示があるなど、医師が一時的なものではないことを確認する
あらかじめ患者・家族の意思を確認する
•鎮静が必要となる状況では既に患者に意思決定能力がないことがしばしばあるので緩和困難な苦痛が生じたときに取りうる手段について前もって情報を提供しておくことが望ましい。
患者・家族の意思が異なるとき
•患者と家族の意思が異なる場合、患者の意思が最大限尊重され、患者の益benefitsが最大になる手段を検討する。
例→患者が持続的深い鎮静を希望しているが、家族の同意が得られない場合、浅い鎮静や間欠的鎮静により患者の苦痛が最小になることを検討する、など。
鎮静の開始
鎮静の方法の選択
•苦痛を緩和できる範囲で、意識水準や身体機能に与える影響が最も少ない方法を優先する。
→できるだけ浅い鎮静から開始する
人工的な水分・栄養分の補給について
•鎮静と輸液は別問題として考えるべきである。
•輸液等により体液過剰兆候が苦痛を増悪させる場合、患者・家族の意思を尊重したうえで減量・中止を検討する。この場合輸液を減量・中止したために衰弱が進行するわけではないことを保証する。
苦痛緩和が目的ではない治療について
•昇圧剤の投与、バイタルサインの観察、定期的な採血など、治療目的(苦痛緩和)と一致しない治療や検査の実施についてはあらかじめ患者・家族と相談しておく。DNARの同意を得る。
鎮静開始前に用いられてきた薬物の調整
•苦痛緩和のために鎮静前から投与されていた薬物は基本的に継続する。
•治療目的と一致しないと判断される薬物は中止を検討する。
•オピオイドは、苦痛の緩和を重視する観点から、過量投与の兆候(呼吸数減少、ミオクローヌスなど)がみられなければ継続する。
患者・家族の気がかりへの配慮
•鎮静を受ける前にしておきたいこと(大切な人に会っておく、話をすることなど)について患者と家族の気持ちを確認する。
鎮静の具体的方法
•第一選択はミダゾラム。
•ミダゾラムが有効でない場合はほかの薬剤(フルニトラゼパム、クロルプロマジン、レボメプロマジン、フェノバルビタール)を使用する。
ミダゾラム(ドルミカム)
第一選択薬
•投与開始量は0.2-1㎎/時間。
•持続皮下注or静注。
• 1.25-2.5mgの追加投与可能。
•維持量は5-120mg/日(通常は20-40mg/日)
ミダゾラム(ドルミカム)
利点
•水溶性で他剤と混注可能
•抗けいれん作用
•作用時間が短い
•拮抗薬(フルマゼニル)が存在する
•容量依存性の鎮静効果
欠点
•耐性
•離脱症状
•奇異性反応
•舌根沈下
•呼吸抑制
フルニトラゼパム(サイレース)
•第二選択薬
• 0.5-2㎎を0.5-1時間で緩徐に点滴静注
•半減期が7-24時間とやや長め
•持続皮下注では皮膚刺激が問題となることもある
フルニトラゼパム(サイレース)
利点
•経口摂取の手段もある
欠点
•舌根沈下
•呼吸抑制
クロルプロマジン(コントミン)
• 5-12.5mgを0.5-1時間で緩徐に点滴静注
•または5-12.5mgを筋肉内注射
クロルプロマジン(コントミン)
利点
•せん妄状態の緩和
欠点
•錐体外路症状
•抗コリン作用
•血圧低下
•心毒性
•疼痛(筋肉注射)
レボメプロマジン(レボトミン)
• 5-12.5mg/日を持続皮下注
•または5-12.5mgを筋肉内注射
•維持量は12.5-50mg/日
レボメプロマジン(レボトミン)
利点
•せん妄状態の緩和
欠点
•錐体外路症状
•抗コリン作用
•血圧低下
•皮膚刺激
•疼痛(筋肉注射)
フェノバルビタール(フェノバール)
• 4-30mg/時間を持続皮下注で開始し、適切な鎮静が得られた後に減量する。
•投与開始時に50-200mgの追加投与可能。
フェノバルビタール(フェノバール)
利点
•抗けいれん作用
欠点
•蓄積性
•肝毒性
•薬物相互作用
•他剤と混注不可
•皮膚刺激
一時的鎮静には推奨されない薬剤
•オピオイド(モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなど)
•セレネース(ハロペリドール)
オピオイド
•意識の低下をもたらす作用が弱い
•蓄積により神経過敏症を生じうる
•ただし疼痛、呼吸困難を緩和するためには有効
ハロペリドール(セレネース)
•意識の低下をもたらす作用が弱い
•ただしせん妄を緩和するためには有効
鎮静の開始後のケア
鎮静開始後の評価①苦痛の程度、意識レベル、有害事象、鎮静以外の方法での苦痛緩和の可能性、病態、家族の希望など
②苦痛が緩和され、かつ意識低下や有害事象が最小限になる投与量を調整
③鎮静が得られるまでは20分に1回程度、鎮静後は1日3回程度
鎮静開始後のケア
•看護ケア
•家族に対するケア
•医療スタッフに対するケア
実臨床での課題点
•本人の意思確認を行うタイミング
早すぎると患者に不必要な不安を与えるが遅すぎると確認ができない…
•耐え難い苦痛の判断の難しさ
推測に基づくことへの不安、いつもどの病院でもすべての専門家がいるとは限らない…
まとめ•鎮静には意図、自律性、相応性、安全性の4つの条件がある。
•特に多職種からなる医療チームで介入し、必ず記録を残すこと。
•鎮静にはミダゾラムが第1選択。
•鎮静後も薬剤の投与など治療は基本的に継続する。