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CRTとBRTの使い分け シスプラチンを併用した化学放射線療法(CRT)とセ ツキシマブを併用した放射線療法(bioradiotherapy; BRT)を直接比較した前向き試験は少ない。後ろ向き の検討では,BRT後の予後はCRT後よりも不良とする 報告が多い。しかし,実臨床では高齢者や全身状態不良 例にBRTが選択される傾向があり,後ろ向き研究の結 果に影響している可能性がある。したがって,前向き試 験によりBRTのCRTに対する非劣性を検証することが 今後の課題である。たとえば,局所進行頭頸部扁平上皮 癌(LA-SCCHN)70例を対象に治療コンプライアンスと 有害事象を主要評価項目としてCRTとBRTを比較した ランダム化第Ⅱ相試験 1) の結果をみると,治療中断期間 が10日を超えた患者はBRT群のほうが有意に多く(13% vs. 0%;p=0.05),有害事象についても血液毒性・腎 機能障害・消化器毒性はCRT群に多いが,皮膚症状や粘 膜炎はBRT群が多い。また,栄養チューブの必要性など 局所進行例に対しての治療戦略 ―― 1 シスプラチン適応のグレーゾーンについての 考察・導入化学療法の今後 Concurrent Chemoradiotherapy to Locally Advanced Head and Neck Cancer Patients of GRAY ZONEIndication of Cisplatin / The Future of Induction Chemotherapy がん研有明病院総合腫瘍科副医長 仲野 兼司 Summary 所進行頭頸部扁平上皮癌(LA-SCCHN)の治療戦略は,手術,導入化学療法,放射線療法単独またはシス プラチンを併用した化学放射線療法(CRT)あるいはセツキシマブを併用した放射線療法(BRT)を基本 とし,全身状態,年齢,合併症,喉頭温存希望などの患者側要因,そして原発部位,リンパ節転移の数と範 囲,周辺組織への浸潤,進行速度などの疾患側要因を考慮しながら治療を選択する。しかし,治療戦略はまだ十分に整 理されていない状況にあり,NCCNガイドラインでも優先すべき治療について明確な基準を示していない。日本臨床腫 瘍学会から2015年に出された『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』ではLA-SCCHN例に対する薬物療法に関して,CRT の推奨度をA,BRTおよび導入化学療法の推奨度をBとしている。本講演ではこの現状を踏まえて,最新のエビデンス を紹介しながら,CRTとBRTの使い分けと境界例における問題,導入化学療法の今後について考察する。 (69) 13 頭頸部癌 FRONTIER Vol.4No.22016 [ 特集 ]Head & Neck Summit 2016 SAMPLE Copyright(c) Medical Review Co.,Ltd.

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CRTとBRTの使い分け

 シスプラチンを併用した化学放射線療法(CRT)とセツキシマブを併用した放射線療法(bioradiotherapy;BRT)を直接比較した前向き試験は少ない。後ろ向きの検討では, BRT後の予後はCRT後よりも不良とする報告が多い。しかし,実臨床では高齢者や全身状態不良例にBRTが選択される傾向があり,後ろ向き研究の結果に影響している可能性がある。したがって,前向き試

験によりBRTのCRTに対する非劣性を検証することが今後の課題である。たとえば,局所進行頭頸部扁平上皮癌(LA-SCCHN) 70例を対象に治療コンプライアンスと有害事象を主要評価項目としてCRTとBRTを比較したランダム化第Ⅱ相試験 1 )の結果をみると,治療中断期間が10日を超えた患者はBRT群のほうが有意に多く(13% vs. 0 %;p=0.05),有害事象についても血液毒性・腎機能障害・消化器毒性はCRT群に多いが,皮膚症状や粘膜炎はBRT群が多い。また,栄養チューブの必要性など

局所進行例に対しての治療戦略 ―― 1

シスプラチン適応のグレーゾーンについての考察・導入化学療法の今後Concurrent Chemoradiotherapy to Locally Advanced Head and Neck Cancer Patients of “GRAY ZONE” Indication of Cisplatin / The Future of Induction Chemotherapy

がん研有明病院総合腫瘍科副医長

仲野 兼司

Summary

局 所進行頭頸部扁平上皮癌(LA-SCCHN)の治療戦略は,手術,導入化学療法,放射線療法単独またはシスプラチンを併用した化学放射線療法(CRT)あるいはセツキシマブを併用した放射線療法(BRT)を基本とし,全身状態,年齢,合併症,喉頭温存希望などの患者側要因,そして原発部位,リンパ節転移の数と範

囲,周辺組織への浸潤,進行速度などの疾患側要因を考慮しながら治療を選択する。しかし,治療戦略はまだ十分に整理されていない状況にあり,NCCNガイドラインでも優先すべき治療について明確な基準を示していない。日本臨床腫瘍学会から2015年に出された『頭頸部がん薬物療法ガイダンス』ではLA-SCCHN例に対する薬物療法に関して,CRTの推奨度をA,BRTおよび導入化学療法の推奨度をBとしている。本講演ではこの現状を踏まえて,最新のエビデンスを紹介しながら,CRTとBRTの使い分けと境界例における問題,導入化学療法の今後について考察する。

(69)13頭頸部癌 FRONTIER Vol.4�No.2�2016

[ 特集 ]Head & Neck Summit 2016

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