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Rough path analysis 入門 —— 基礎的部分の詳解 高信 敏 (金沢大学大学院自然科学研究科)

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Rough path analysis入門

——基礎的部分の詳解

高信 敏(金沢大学大学院自然科学研究科)

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[更新履歴]

1.0版 2004年 10月 6日1.1版 2004年 10月 21日

• 9節に,渡辺 [28]の結果 (with証明)を書き足す.•命題 8.2の証明を加える (ただし,肝心な部分は,重川 [23]の命題 2.14に依っている).

1.15版 2004年 10月 31日•定理 9.2(ii)の条件 (9.18)が成立しない例を呈示する (cf. 196ページの例 9.2).

•小節 9.3を新たに書き足す.この小節では,ブラウン運動だけの汎関数として見たとき連続とならない SDEの解の例を与える.

• 9節の終わりの附記において,杉田 [26]の結果 (without証明)を書く.

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はじめに今からもう 11年前にもなるが,1993年 7月に,コーネル大学で Summer research

instituteが催され,その中で T. Lyonsは

The interpretation and solution of ordinary differential equations driven

by rough signals

というタイトルの講演をした (これは論文 [18]として出版されている).これが rough

path analysisの始まりと云っていいと思う.彼の主張は標語的に云うと次のようなものである:

「確率微分方程式 (略して SDE)の解は,ラフに云うと Brown運動とその 2次の汎関数,即ち,1次と 2次のWiener chaosによって完全に決定される.」

当時,日本からも何人かの人達がこの research instituteに参加され,その中の1人である,池田先生は,日本に戻ってから,この少しショッキングな話について,熱っぽく周りの人に喋っていたのを覚えている.あの頃は,筆者は stochastic Taylor展開の計算をしていた.参加者の1人であった

渡辺信三先生は,小生の計算に関連がありそうということで,会場で配布されたアブストラクトのコピーを送ってくれたのである.渡辺先生自身も,杉田氏の stochastic

areaの skeletonの話 (cf. [26]) とか,池田-渡辺の本 [11]の SDE の近似定理 (6 章のTheorem 7.2)とかに関連がありそうだという思いがあったから,Lyonsの話に関心をもったのだと推察している.渡辺先生から直接コピーを送ってもらい,また,池田先生の熱い語りを耳にすれば,

やってみようという気になるのは自然の成行きである.で,くだん

件のアブストラクトを読んでみたのだが,これがよく分からない.上記の主張の証明を followできないのである.そうこうするうちに,筆者の興味は,別の方に向いてしまうわけで,結局のところは,何も出来ずに頓挫してしまったのである.この Lyonsのアブストラクトの内容は,その後,整理されて論文 [19]として出版

された.また,渡辺先生の方は,この辺のところを先生自ら整理した上で 1997年の6/30∼7/4の九大の集中講義で話をされた ([27]).Lyonsは,その後はQianと組んで何本かの論文を出した後,それらの結実として本 [20]を 2002年に出版している.このように,今は,rough path analysisの整備の段階は,とうに済み,次の段階に

入っていると思う.即ち,それを基に or 使って色々なことをやってみましょうという時期なのだ.だから,2004年 8月 18日~21日に,確率論者のための rough path

analysisについてのサマースクールを開いたのは適時なことだと思う.筆者は,先に述べたように,Lyonsのアブストラクトを解読できなかったという苦い

過去があり,もし次の機会があれば今度こそはという気持ちを強くもっていたので,今

i

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回の講師を引き受けた.漠然とは,本 [20]について話せばいいのかなぁーと思っていたが,実際には,どれについて話すのかまでは考えていなかった.ちょうどそのようなときに,会田氏は 6月,阪大の確率論セミナーで「Rough path analysisとはなんだろうか」というタイトルの講演をされ,それのために作ったノート [1]を送ってくれたのである.このノート (12ページ程度のものです)を読んで,彼の schemeに従って話をするのがサマースクールに合致していると判断し,ノートに書いてある1つ1つを計算し,証明を付け,分からないところは [20]を当たるという風にしてサマースクールの予稿をまとめたのである.予稿を書くに当っての基本方針は次の通りとした:

• 手抜きをせずに (すべてに)証明を付ける,

• 証明は同程度の深さで書く.(だから大きなギャップはないはず.)

その予稿では,初めて rough path analysisを学ぶ人,or 前に勉強したけど細かいところは飛ばしたという人に役立つことを念頭において,[20]の証明の不備 or不十分なところを出来る限り補った.(なお,手抜きをしない

せ い

所為で,同じような証明が何回も現われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければならず読み辛かったかもしれない.)予稿の構成は

• Young積分

• p ≥ 2のときの積分∫t

s f (xu)dxu

• Rough path

• Almost rough path

• Rough path xに沿っての積分∫

f (xu)dx(u)

• 常微分方程式の初期値問題の6つの節から成っていた.見ての通り,解析的,それも基礎部分に的を絞っており,確率論的部分については会田氏の予稿 [2]に譲って割愛した (というか,そこまで書く程の余裕も力もなかった....).ここまでのところは,予稿の “はじめに”に書いたことである.サマースクール終了後,確率論的部分が抜けているのは片手落ちだと痛感し,[2]の前

半部分を取り込むことを企てた.上と同じように,彼の予稿に書いてあることを実際に計算し,証明を付け,不明なところは,今度は,Friz-Victoirの論文 [9],また Bruneau

の Lecture note [4]を当たるという風にして,新たに

• Geometric rough path

• Dyadic polygonal approximation

• 確率微分方程式 vs.常微分方程式

ii

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の3つの節を加え,出来上がったのが今回のノートである.これで,一応,rough path

analysisの解析の基礎的部分,そして,確率の基礎的部分が取り揃ったわけである.“はじめに”の冒頭で述べた Lyonsの主張は,最後の節 (9節)にある定理 9.1の形で

述べられる.この定理は,ラフに云うと,「SDEの解は,ブラウン運動とそれの 2次の汎関数をペアにしたものの関数と見るとき,連続である」と主張する.これは我々が今まで SDEの解について抱いていた常識「SDEの解は一般にブラウン運動の連続関数でない」と

た い ぶ

大分異なるもののように感じられる.が,これは,連続であるためにはブラウン運動だけでは足りなくてそれの 2次の汎関数をペアにしたものを考えて,それの関数と見るならば連続になるよと云っているので,何ら

お か

可笑しくない.このペアにして考えることに気が付いた Lyonsは偉いと思う注1.目標の定理 9.1は,9節に入ってすぐのところにあるが,その節に行くまでの 1~8節

は非常に長いものになっている.くだん

件の定理に辿り着くには,山あり谷ありかもしれないが頑張って読んでみて下さい.最後に,サマースクールで連続講演をする機会を与えて下さったこと,そして,思う

存分にこのようなノートを書くことが出来たこと,に対して,重川氏,谷口氏,会田氏,並びにその他の関係者に大いに感謝します.

2004年 10月 高信 敏

注1正直云って,最初,彼のアブストラクトを読んだときは,まゆつばもの

眉唾物だと思いました.その節は,そんなこと思って Lyonsさんすみませんでした.

iii

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[約束] Rd は d 項実列ベクトルの元から成るベクトル空間とし,そのノルムは√成分の 2乗の和,即ち,x = (x i )i=1,...,d のとき

|x| =√√√√ d∑

i=1(x i )2

とする.Rn ⊗Rd は代数的には n 次元実ベクトル空間 Rn と d 次元実ベクトル空間 Rd

のテンソル積であるが,これを (n, d)実行列の元から成るベクトル空間M(n, d)と同一

視する.即ち,ei = t (0, . . . ,i1, . . . ,0) ∈Rn , f j = t (0, . . . ,

j1, . . . ,0) ∈Rd とし,v ∈Rn ⊗Rd を

v = ∑1≤i≤n,1≤ j≤d

v i j ei ⊗ f j

と表わしたとき

Rn ⊗Rd ∋ v ←→ (v i j )i=1,...,n, j=1,...,d ∈ M(n, d)

と対応させるのである.Rn ⊗Rd のノルムは,Rd と同様に

|v| =√√√√ ∑

1≤i≤n,1≤ j≤d

(v i j )2

とする.ϕ ∈C∞

b (Rd →R)とは,ϕは Rd から Rへの C∞ 関数で,ϕ自身,及びすべての階数の微分 ∂αϕ (α= (α1, . . . ,αd ))が有界であることとする. f ∈C∞

b (Rd → Rn ⊗Rd )とは f

の各成分がC∞b (Rd →R)の元であるとする.

iv

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目次1 Young積分 1

2 p ≥ 2p ≥ 2p ≥ 2のときの積分∫t

s f (xu)dxu∫t

s f (xu)dxu∫t

s f (xu)dxu 14

3 Rough path 29

4 Geometric rough path 36

4.1 定理 4.1と定理 4.2 — Geometric rough pathの空間が可分であることと真に小さいこと . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 36

4.2 定理 4.3 — Geometric rough pathであるための判定条件 . . . . . . . . . . 42

4.2.1 定理の提起 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 42

4.2.2 “(a) ⇒ (b)”の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 43

4.2.3 “(b) ⇒ (a)”の証明のための準備 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 45

4.2.4 d ≥ 2の場合の “(b) ⇒ (a)”の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 63

4.2.5 d = 1の場合の “(b) ⇒ (a)”の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 68

4.3 定理 4.4 — Geometric rough pathでない例 . . . . . . . . . . . . . . . . . . 71

4.3.1 定理の提起 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 71

4.3.2 定理の証明のための準備 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 72

4.3.3 定理の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 83

4.4 定理 4.2の別証 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 85

5 Almost rough path 89

6 Rough path xxxに沿っての積分∫

f (xu)dx(u)∫

f (xu)dx(u)∫

f (xu)dx(u) 100

7 常微分方程式の初期値問題 113

7.1 ODEの初期値問題の定式化 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 113

7.2 解の存在性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 116

7.3 解の一意性 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 132

7.4 連続性定理 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 136

7.5 Driving pathが smooth rough pathの場合 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 142

8 Dyadic polygonal approximation 146

9 確率微分方程式 vs.常微分方程式 176

9.1 確率微分方程式の解は連続関数であること . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 176

9.2 Canonical rough pathを近似する smooth rough pathの列 . . . . . . . . . 177

9.3 定理 9.1の補完 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 199

v

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附録 204

A.1 命題 8.1の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 204

A.2 命題 8.2の証明 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 214

A.3 (8.22)の確認 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 215

参考文献 221

おわりに 224

索引 225

vi

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1. Young積分このノートの到る所で現われる control functionの定義から始める.

定義 1.1. = (s, t ) ∈ [0,1]2 ; 0 ≤ s ≤ t ≤ 1とする.連続関数 ω : → [0,∞)が次をみたすとき control functionという:

ω(s, u)+ω(u, t ) ≤ω(s, t ), 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1. (1.1)

以下では,これを ωの優加法性とよぶことにする.定義より,ω(s, s) = 0 (∀s ∈ [0,1])に注意.

今,x = (xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] → Rd ), y = (yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] → Rr )は次の条件をみたすとする:

∃ω: control function, ∃p, q ∈ [1,∞) with1

p+ 1

q= θ> 1

s.t.|xt −xs | ≤ω(s, t )1/p ,

|yt − ys | ≤ω(s, t )1/q ,(∀(s, t ) ∈).

(1.2)

f ∈ Lip(Rr → Rn ⊗Rd ), i.e., f : Rr → Rn ⊗Rd は Lipschitz連続 (Lipschitz定数を Lとする)とし,I ∈C (→Rn)を

Is,t := f (ys)(xt −xs), (s, t ) ∈, (1.3)

そして [0,1]の分割Dに対して

Is,t (D) := ∑s≤ti−1,ti≤t

Iti−1,ti , (s, t ) ∈ with s < t (1.4)

とする.ただし D は D に分点 s と t を加えた [0,1]の分割で,D = 0 = t0 < t1 < ·· · <tN = 1としている.なお,上の Is,t (D)の定義は s < t のときのものであり,s = t のときは

Is,t (D) := 0

とする.

Claim 1.1. (i) [0,1]の分割D, D′ s.t. D′はDの細分 に対して

|Is,t (D)− Is,t (D′)| ≤ L2θζ(θ)(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v))θ−1

ω(0,1), (s, t ) ∈.

ここでm(D)は分割Dの最大幅.(ii) [0,1]の分割Dに対して

|Is,t (D)− Is,t | ≤ L2θζ(θ)ω(0,1)θ, (s, t ) ∈.

1

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注意 1.1. Lは f の Lipschitz定数,ζ(θ)は Riemannの ζ関数, i.e., ζ(θ) =∑∞n=1

1nθ .

Claim 1.1の証明のため,次の補題を用意する:

補題 1.1. ωを control function, D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t を [s, t ] (0 ≤ s < t ≤ 1)の分割とする.N ≥ 2のとき

∃ti (1 ≤ i ≤ N −1) s.t. ω(ti−1, ti+1) ≤ 2ω(s, t )

N −1.

証明 これは次の不等式から明らかであろう:

(N −1) min1≤i≤N−1

ω(ti−1, ti+1) ≤N−1∑i=1

ω(ti−1, ti+1)

= ∑1≤ j≤N

2

ω(t2 j−2, t2 j )+ ∑1≤ j≤N−1

2

ω(t2 j−1, t2 j+1)

≤ω(t0, t2⌊N

2 ⌋)+ω

(t1, t2⌊N−1

2 ⌋+1

)注2[...⃝ωの優加法性より

]≤ 2ω(s, t ).

Claim 1.1の証明 s < t としてよい (s = t のときは,Is,t (D) = Is,t = 0であるので).0 ≤ s < t ≤ 1を任意に fixする.[s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して

I(D) :=N∑

i=1Iti−1,ti

=N∑

i=1f (yti−1 )(xti −xti−1 ) (1.5)

とする.

1 (i)について.D = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t を [s, t ]の分割とし,I (α) := [τα−1,τα]

(1 ≤α≤ N)とおく.D′を [s, t ]の分割で Dの細分とする.

A = 1 ≤α≤ N ; #Int I (α) ∩ D′ ≥ 1 (Int I (α)は I (α)の内部)

= 1 ≤α1 < ·· · <αK ≤ N (K := #A)

とする注3.補題 1.1より,各 α ∈ Aに対して

∃ distinctな σ(α)1 ,σ(α)

2 , . . . ,σ(α)M(α) (M (α) := #Int I (α) ∩ D′)

s.t. σ(α)m は I (α)の分割 (I (α)∩D′)\σ(α)

1 , . . . ,σ(α)m−1に対して,補

題 1.1において見い出される分点 ti (m = 1, . . . ,M (α)).注2実数 a に対して ⌊a⌋は a を越えない最大の整数を表わす.注3集合 E に対して #E は E の元の個数を表わす.

2

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[s, t ]の分割 (D′)k,m (k = 1, . . . ,K , m = 0,1, . . . ,M (αk ))を次のように定義する:(D′)

k,m := D′ \σ

(α1)1 , . . . ,σ(α1)

M(α1) , . . . ,σ(αk−1)1 , . . . ,σ(αk−1)

M(αk−1) ,σ(αk )1 , . . . ,σ(αk )

m.

定義より (D′)

1,0 = D′,(D′)

k,0 =(D′)

k−1,M(αk−1) (2 ≤ k ≤ K ),(D′)

K ,M(αK ) = D

に注意.この注意から

|I(D)− I(D′)| =∣∣∣I((D′)1,0

)− I((D′)K ,M(αK )

)∣∣∣=

∣∣∣ K∑k=1

M(αk )∑m=1

(I((D′)k,m−1

)− I((D′)k,m

))∣∣∣≤

K∑k=1

M(αk )∑m=1

∣∣∣I((D′)k,m−1)− I

((D′)k,m

)∣∣∣. (1.6)

さて (D′)k,m = (D′)k,m−1 \σ, σを σの直前の分点,σを直後の分点とする (σ=σ(αk )m

であるが簡単のために σとかく).このとき (1.5)より∣∣∣I((D′)k,m−1)− I

((D′)k,m

)∣∣∣=

∣∣∣Iσ,σ+ Iσ,σ− Iσ,σ

∣∣∣=

∣∣∣ f (yσ)(xσ−xσ)+ f (yσ)(xσ−xσ)− f (yσ)(xσ−xσ)∣∣∣

=∣∣∣( f (yσ)− f (yσ))(xσ−xσ)

∣∣∣≤ L|yσ− yσ||xσ−xσ|≤ Lω(σ,σ)1/qω(σ,σ)1/p

[...⃝ (1.2)

]≤ Lω(σ,σ)1/p+1/q

[...⃝ωの優加法性より

]≤ L

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

)θ[

...⃝ 補題 1.1より ω(σ,σ) ≤ 2ω(ταk−1,ταk )

#((I (αk ) ∩ D′) \ σ(αk )

1 , . . . ,σ(αk )m−1

)−2

].

これを (1.6)に代入すると

|I(D)− I(D′)|

≤K∑

k=1

M(αk )∑m=1

L

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

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= L2θK∑

k=1ω(ταk−1,ταk )θ−1ω(ταk−1,ταk )

M(αk )∑n=1

1

≤ L2θζ(θ)(

max1≤α≤N

ω(τα−1,τα))θ−1 N∑

α=1ω(τα−1,τα)

≤ L2θζ(θ)(

max1≤α≤N

ω(τα−1,τα))θ−1

ω(s, t )[

...⃝ωの優加法性]

.

今,D, D′は [0,1]の分割で,D′はDの細分であるとする.

D = (D ∪ s, t

)∩ [s, t ], D′ = (D′∪ s, t

)∩ [s, t ]

とすると,Dは [s, t ]の分割,D′はその細分であるので

|Is,t (D)− Is,t (D′)| = |I(D)− I(D′)|≤ L2θζ(θ)

(max

1≤α≤Nω(τα−1,τα)

)θ−1ω(s, t )[

ここで D = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t ]

≤ L2θζ(θ)(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v))θ−1

ω(0,1).

2 (ii)について.(i)と同様である.Dを [s, t ]の分割とする.#D ≥ 3としてよい.補題1.1より

∃ distinctな σ1, . . . ,σM (M = #D −2)

s.t. σm は [s, t ]の分割 D \σ1, . . . ,σm−1に対して,補題 1.1において見い出される分点 ti (m = 1, . . . ,M).

[s, t ]の分割 Dm (m = 0,1, . . . ,M)を

Dm := D \ σ1, . . . ,σm

により定義すると

D0 = D, DM = s = t0 < t1 = t .

よって

|I(D)− Is,t | = |I(D0)− I(DM )|

=∣∣∣ M∑

m=1

(I(Dm−1)− I(Dm)

)∣∣∣≤

M∑m=1

|I(Dm−1)− I(Dm)|

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=M∑

m=1

∣∣∣Iσm ,σm + Iσm ,σm − Iσm ,σm

∣∣∣≤

M∑m=1

Lω(σm ,σm

)θ≤

M∑m=1

L( 2ω(s, t )

M −m +1

)θ= L2θω(s, t )θ

M∑n=1

1

≤ L2θζ(θ)ω(s, t )θ.

後は (i)と同じ議論を繰り返すことにより (ii)の主張が従う.

定理 1.1. x = (xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd ), y = (yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rr )は (1.2)をみたすとする. f ∈ Lip(Rr →Rn ⊗Rd )に対して,(1.3), (1.4)により Is,t と Is,t (D)を定義する.このとき,各 (s, t ) ∈に対し,Is,t (D)はm(D) → 0のとき Rn の元に収束する.この極限を Is,t と表わすならば I ∈C (→Rn)で

Is,u + Iu,t = Is,t , 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1 (1.7)

が成り立つ.そして

|Is,t − Is,t | ≤ L2θζ(θ)ω(s, t )θ, (s, t ) ∈. (1.8)

証明 Claim 1.1(i)より,[0,1]の分割D, D′に対して

|Is,t (D)− Is,t (D′)| = |Is,t (D)− Is,t (D′′)+ Is,t (D′′)− Is,t (D′)|[ここでD′′はDとD′の共通細分

]≤ |Is,t (D)− Is,t (D′′)|+ |Is,t (D′)− Is,t (D′′)|≤ L2θ+1ζ(θ)

(max

|u−v|≤m(D)∨m(D′)ω(u, v)

)θ−1ω(0,1)

が成り立つ.これはm(D) → 0のとき,Is,t (D)が収束することを implyする.Claim 1.1(ii)

より,Is,t = limm(D)→0 Is,t (D)は明らかに (1.8)をみたす.次に (1.7)については,0 ≤ s < u < t ≤ 1とすると

Is,t = limN→∞

( N∑i=1

Is+ i−1N (u−s),s+ i

N (u−s) +N∑

j=1I

u+ j−1N (t−u),u+ j

N (t−u)

)

= limN→∞

N∑i=1

Is+ i−1N (u−s),s+ i

N (u−s) + limN→∞

N∑j=1

Iu+ j−1

N (t−u),u+ jN (t−u)

5

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= Is,u + Iu,t .

あとは I ∈C (→Rn)が残っている.(s′, t ′) → (s, s)のときは,(1.8)より

|Is′,t ′ − Is,s | = |Is′,t ′ |≤ |Is′,t ′ |+L2θζ(θ)ω(s′, t ′)θ

→ 0.

s < t ならば,(s′, t ′)が十分に (s, t )の近くにあるときは

s′ ≤ s ≤ t ′ ≤ t

or

s′ ≤ s ≤ t ≤ t ′

or

s ≤ s′ ≤ t ′ ≤ t

or

s ≤ s′ ≤ t ≤ t ′

のいずれかの場合にあるので,(1.7),及び (1.8)より

|Is′,t ′ − Is,t | =

|Is′,s − It ′,t |or

|Is′,s + It ,t ′ |or

|Is,s′ + It ′,t |or

|Is,s′ − It ,t ′ |

|Is′,s |+ |It ′,t |+L2θζ(θ)(ω(s′, s)θ+ω(t ′, t )θ

)or

|Is′,s |+ |It ,t ′ |+L2θζ(θ)(ω(s′, s)θ+ω(t , t ′)θ

)or

|Is,s′ |+ |It ′,t |+L2θζ(θ)(ω(s, s′)θ+ω(t ′, t )θ

)or

|Is,s′ |+ |It ,t ′ |+L2θζ(θ)(ω(s, s′)θ+ω(t , t ′)θ

)→ 0 as (s′, t ′) → (s, t ).

6

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定義 1.2. 関数 ψ : → V (V は Banach空間 with norm | · |)の q-variation norm (ただし 0 < q <∞)を

∥ψ∥q := sup(N−1∑

i=0|ψ(ti , ti+1)|q

)1/q; 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1

(∈ [0,∞])

と定義する注4.∥ψ∥q <∞のとき,各 (s, t ) ∈に対して,[s, t ]での q-variation norm

を ∥ψ∥q,[s,t ]とする.即ち,s < t のときは

∥ψ∥q,[s,t ] := sup(N−1∑

i=0|ψ(ti , ti+1)|q

)1/q; s = t0 < t1 < ·· · < tN = t

,

s = t のときは

∥ψ∥q,[s,s] := 0

とする.

注意 1.2. ∥ψ∥qq,[·,∗] : → [0,∞)は優加法性をもつ.即ち,

∥ψ∥qq,[s,u] +∥ψ∥q

q,[u,t ] ≤ ∥ψ∥qq,[s,t ], 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1.

定義 1.3. x = (xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd )に対して,x1 ∈C (→Rd )を

x1(s, t ) := xt −xs , (s, t ) ∈ (1.9)

により定義する.もし p ∈ [1,∞)に対して ∥x1∥p <∞のとき,x = (xt )0≤t≤1は p次有界変動であるという.

Claim 1.2. x = (xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd ), p ∈ [1,∞)に対して

x = (xt )0≤t≤1は p次有界変動

⇐⇒iff

∃ω: control function s.t. |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈.

証明

1 “⇐= ”について.[s, t ] (0 ≤ s < t ≤ 1)の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して,ωの優加法性より

N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p ≤N−1∑i=0

ω(ti , ti+1) ≤ω(s, t )

注4このノートを通じて,∥ ∥q は q-variation normを表わす.Lq -normではないことに注意!

7

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となるので

∥x1∥p,[s,t ] ≤ω(s, t )1/p <∞.

2 “=⇒ ”について.天下り的に

ω(s, t ) := ∥x1∥pp,[s,t ], (s, t ) ∈

を考える.注意 1.2より ωは優加法性をもつ.定義より,∀(s, t ) ∈に対して

|x1(s, t )| ≤ ∥x1∥p,[s,t ] =ω(s, t )1/p

をみたすから,ωの連続性を示せばよい.まず

limt ′t

ω(s, t ′) =ω(s, t ) (0 ≤ s < t ≤ 1), (1.10)

lims′s

ω(s′, t ) =ω(s, t ) (0 ≤ s < t ≤ 1), (1.11)

limt ′t

ω(s, t ′) =ω(s, t ) (0 ≤ s ≤ t < 1), (1.12)

lims′s

ω(s′, t ) =ω(s, t ) (0 < s ≤ t ≤ 1) (1.13)

を示す.(1.10)と (1.11)について.[s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t と,t0 < s′ < t1,

tN−1 < t ′ < tN に対して

N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p =N−2∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p +|x1(tN−1, t ′)|p +|x1(tN−1, t )|p −|x1(tN−1, t ′)|p

≤ω(s, t ′)+|x1(tN−1, t )|p −|x1(tN−1, t ′)|p→

t ′tω(s, t−),

N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p = |x1(s′, t1)|p +N−1∑i=1

|x1(ti , ti+1)|p +|x1(s, t1)|p −|x1(s′, t1)|p

≤ω(s′, t )+|x1(s, t1)|p −|x1(s′, t1)|p→

s′sω(s+, t ).

あとは supD を取れば

ω(s, t ) ≤ω(s, t−) ≤ω(s, t ),

ω(s, t ) ≤ω(s+, t ) ≤ω(s, t ),

8

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即ち ω(s, t−) =ω(s+, t ) =ω(s, t ).

次に 0 ≤ s < 1, 0 < t ≤ 1に対して,優加法性より

ω(s, s′)+ω(s′,1) ≤ω(s,1) (s < s′ < 1),

ω(0, t ′)+ω(t ′, t ) ≤ω(0, t ) (0 < t ′ < t ).

ここで s′ s, t ′ t とすると,(1.11)と (1.10)より

ω(s, s+) ≤ 0, ω(t−, t ) ≤ 0,

よって ω(s, s+) =ω(t−, t ) = 0が分かる.(1.12)について.0 ≤ s < t < t ′ < 1とする.D′ = s = t0 < t1 < ·· · < tN ′ = t ′を [s, t ′]の

分割とする.1 ≤ N ≤ N ′を tN−1 ≤ t < tN となるようにとると

N ′−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p

=N−2∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p +|x1(tN−1, t )|p +|x1(t , tN )|p +N ′−1∑i=N

|x1(ti , ti+1)|p

+|x1(tN−1, t )+ x1(t , tN )|p −|x1(tN−1, t )|p −|x1(t , tN )|p

≤ω(s, t )+ω(t , t ′)+max

|a +b|p −|a|p −|b|p ;|a| ≤ max

s≤r≤t|x1(r, t )|,

|b| ≤ maxt≤u≤t ′

|x1(t , u)|

.

supD′ を取れば

ω(s, t ′) ≤ω(s, t )+ω(t , t ′)+max

|a +b|p −|a|p −|b|p ;|a| ≤ max

s≤r≤t|x1(r, t )|,

|b| ≤ maxt≤u≤t ′

|x1(t , u)|

.

最後に t ′ t として

ω(s, t ) ≤ω(s, t+) ≤ω(s, t )+ω(t , t+) =ω(s, t ).

よって ω(s, t+) =ω(s, t ).

(1.13)について.0 < s′ < s < t ≤ 1とする.D′ = s′ = t0 < t1 < ·· · < tN ′ = t を [s′, t ]の分割とし,1 ≤ N ≤ N ′を tN−1 < s ≤ tN なるものとする.このとき

N ′−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p

=N−2∑i=0

|x1(ti , ti+1)|p +|x1(tN−1, s)|p +|x1(s, tN )|p +N ′−1∑i=N

|x1(ti , ti+1)|p

9

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+|x1(tN−1, s)+ x1(s, tN )|p −|x1(tN−1, s)|p −|x1(s, tN )|p

≤ω(s′, s)+ω(s, t )+max

|a +b|p −|a|p −|b|p ;|a| ≤ max

s′≤r≤s|x1(r, s)|,

|b| ≤ maxs≤u≤t

|x1(s, u)|

となるから,supD′ 取って

ω(s′, t ) ≤ω(s′, s)+ω(s, t )+max

|a +b|p −|a|p −|b|p ;|a| ≤ max

s′≤r≤s|x1(r, s)|,

|b| ≤ maxs≤u≤t

|x1(s, u)|

.

ここで s′ sとすると

ω(s, t ) ≤ω(s−, t ) ≤ω(s−, s)+ω(s, t ) =ω(s, t ).

よって ω(s−, t ) =ω(s, t ).

さて,ωの連続性を示す.(s′, t ′) → (s, s)のときは,∀δ,η> 0に対して,(s′, t ′)が十分に (s, s)の近くにあるならば

s −δ< s′ ≤ t ′ < s +η

をみたすので

ω(s′, t ′) ≤ω((s −δ)∨0,(s +η)∧1

).

よって

lim(s′,t ′)→(s,s)

ω(s′, t ′) ≤ω((s −δ)∨0,(s +η)∧1

) →δ,η0

0 =ω(s, s).

(s′, t ′) → (s, t ) (s < t )のときは,0 < ∀δ,η< t−s2 に対して,(s′, t ′)が十分に (s, t )の近くに

あるならば

s −δ< s′ < s +δ< t −η< t ′ < t +η

をみたすので

ω(s +δ, t −η) ≤ω(s′, t ′) ≤ω((s −δ)∨0,(t +η)∧1

).

よって

ω(s +δ, t −η) ≤ lim(s′,t ′)→(s,t )

ω(s′, t ′)

≤ lim(s′,t ′)→(s,t )

ω(s′, t ′) ≤ω((s −δ)∨0,(t +η)∧1

).

最後に δ,η 0とすると,最左辺, 最右辺→ ω(s, t )となるから lim(s′,t ′)→(s,t )ω(s′, t ′) =ω(s, t ).

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Claim 1.2より,x = (xt )0≤t≤1 ∈ C ([0,1] → Rd )と y = (yt )0≤t≤1 ∈ C ([0,1] → Rr )について,「適当な control function ω に対して (1.2) が成り立つ」ことと「∥x1∥p < ∞,

∥y1∥q <∞」は同値である.実際,∥x1∥p <∞, ∥y1∥q <∞のときは

ω(s, t ) := ∥x1∥pp,[s,t ] +∥y1∥q

q,[s,t ], (s, t ) ∈

がくだん

件の control functionとなるからである.(1.2)において,p = q = 1のときは,x = (xt )0≤t≤1, y = (yt )0≤t≤1が共に有界変動関数

であるから,定理 1.1の Is,t は Riemann-Stieltjes積分∫t

s f (yu)dxuである.定理 1.1は,連続な p 次有界変動関数 (xt )0≤t≤1 と q 次有界変動関数 (yt )0≤t≤1 (ただし 1 ≤ p, q <∞with 1

p + 1q > 1)に対する,Riemann-Stieltjes積分の一般化に関する定理である.その

(一般化された)積分を Young積分とよび,Is,t を∫t

s f (yu)dxu と表わす.(1.8)等より∥∫∗

· f (yu)dxu∥p <∞である.とくに,(yt ) = (xt )で,1 ≤ p < 2のときは,1

p + 1p = 2

p > 1となるので,積分∫t

s f (xu)dxu

は Young積分として考えることができる.しかし p ≥ 2のときは, 1p + 1

p = 2p ≤ 1とな

り,Young積分の枠を越えてしまう.次節では,この場合 (i.e., p ≥ 2の場合)の “積分∫ts f (xu)dxu”について考える.

[附記]

1⃝ [s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t と Dの各小区間 [ti−1, ti ]の代表点 σi の組σ= σ1, . . . ,σN に対し,RS(D,σ)を Riemann-Stieltjes和とする:

RS(D,σ) =N∑

i=1f (yσi )(xti −xti−1 ).

このとき,(1.2)の下では

|I(D)−RS(D,σ)| =∣∣∣ N∑

i=1

(f (yti−1 )− f (yσi )

)(xti −xti−1 )

∣∣∣≤ L

N∑i=1

|yti−1 − yσi ||xti −xti−1 |

≤ LN∑

i=1ω(ti−1,σi )1/qω(ti−1, ti )1/p

≤ L(

max1≤i≤N

ω(ti−1, ti ))θ−1

ω(s, t )

≤ L(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v))θ−1

ω(s, t )

となるから

limm(D)→0

RS(D,σ) = limm(D)→0

I(D) =∫t

sf (yu)dxu .

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よって,σの選び方に依らずに RS(D,σ)は収束するのである.2⃝ Young積分は,L.C. Youngの 1936年の論文 [29]に始まる (Youngの不等式の Young

とは別人です.こちらの方は W.H. Young).彼は,次の基本不等式を基にして 1⃝のRiemann-Stieltjes和がm(D) → 0のとき収束することを示したのである.

基本不等式 a = (a i )ni=1, b = (bi )n

i=1 ∈Rn , 0 < p, q <∞ with 1p + 1

q > 1に対して∣∣∣ ∑1≤i≤ j≤n

a i b j∣∣∣≤ (

1+ζ( 1

p + 1q

))Sp,q(a, b).

ここで

Sp,q(a, b) = max

( m∑µ=1

| ∑kµ−1<i≤kµ

a i |p)1/p( m∑

µ=1| ∑kµ−1< j≤kµ

b j |q)1/q

;

0 = k0 < k1 < ·· · < km−1 < km = n, 1 ≤ m ≤ n

.

この基本不等式の証明は,ここでは与えないが,そのアイデアは,補題 1.1と同種の次の補題を用いることにある:

補題 r, s ∈ (0,∞)に対して

1 ≤ ∃k ≤ n s.t. |ak bk | ≤( 1

n

n∑i=1

|a i |r)1/r( 1

n

n∑j=1

|b j |s)1/s

.

...⃝ これは,補題 1.1の証明のように次の不等式から明らかである: 相加相乗の不等式より( 1

n

n∑i=1

|a i |r)1/r ( 1

n

n∑j=1

|b j |s)1/s ≥

( n∏i=1

|a i |r) 1

nr( n∏

j=1|b j |s

) 1ns

=(( n∏

i=1|a i |

)( n∏j=1

|b j |))1/n

=( n∏

k=1|ak bk |

)1/n ≥ min1≤k≤n

|ak bk |.

Youngの与えた 1⃝の証明も,定理 1.1 (or Claim 1.1)の証明もほぼ同程度の深さのものであるが,control functionを表に出して行なうという Lyonsのやり方の方が若干(or

だ い ぶ

大分)明快になっていると思う.Youngの論文から 60余年も経てば人は少しは賢くなっているのである.3⃝ このノートでの Young積分の基となる p次,q次の有界変動関数は連続としているが,Youngの原論文 [29]では必ずしも連続ではない関数を扱っている.Dudley-Norvaiša

の Lecture note [6]では,この Youngの積分を含むもっとたくさん

沢山の Stieltjesタイプの積分を導入し,そしてそれらの間の関係を論じている (ようだ.ただし,筆者はこれを読

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んでいないのでこれ以上のことは何も云えない).[6]の最後の章 (7章)では,Lyonsのrough pathに対する積分についてほんの少し触れている.Young (の)積分一般に興味を持たれた方は,この Lecture noteを見てみるのもよいかもしれない.

Young積分ではなく,必ずしも連続とは限らない一般の p 次有界変動関数それ自身に関しては,Bruneauの Lecture note [4]がある.[4]ではこの関数の性質が色々と調べられている.なお,4節において,geometric rough pathでない例を呈示するとき,彼の Lecture noteが大いに役立った.

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2. p ≥ 2p ≥ 2p ≥ 2のときの積分∫t

s f (xu)dxu

∫ts f (xu)dxu

∫ts f (xu)dxu

1節では,関数 f は Lipschitz連続としたが,今節では簡単のため f ∈C∞b (Rd →Rn⊗Rd )

とする注5.x = (xt )0≤t≤1 ∈ C ([0,1] → Rd ) が区分的に C 1 級ならば,Riemann-Stieltjes 積分∫t

s f (xu)dxu は定義できる.汎関数 x = (xt )0≤t≤1 7→ ∫ts f (xu)dxu がどのような位相

で連続であるかを調べる.以下,今節では,x = (xt )0≤t≤1, y = (yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] → Rd )は区分的に C 1級とし,

fixする.

定義 2.1. x2 ∈C (→Rd ⊗Rd )を次のように定義する:

x2(s, t ) :=∫t

s(xu −xs)⊗dxu

=(∫t

s(x i

u −x is )dx j

u

)i , j=1,...,d

. (2.1)

Claim 2.1. 次が成り立つ: 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1に対してx1(s, t ) = x1(s, u)+ x1(u, t ),

x2(s, t ) = x2(s, u)+ x2(u, t )+x1(s, u)⊗ x1(u, t ).(2.2)

ここで x1は (1.9)で定義したもの.

証明 1つ目の等式は定義より明らか.2つ目の等式は,(2.1)より

x2(s, t )− x2(s, u)− x2(u, t )

=∫t

s(xτ−xs)⊗dxτ−

∫u

s(xτ−xs)⊗dxτ−

∫t

u(xτ−xu)⊗dxτ

=∫t

u(xτ−xu +xu −xs)⊗dxτ−

∫t

u(xτ−xu)⊗dxτ

= (xu −xs)⊗ (xt −xu)

= x1(s, u)⊗ x1(u, t ).

注意 2.1. 等式 (2.2)を Chenの恒等式という.

注51階以上の微分が有界であるというのは善しとしても,0階,即ち, f それ自身が有界であるのは強過ぎると思う.というのは,一次関数が除かれるからである.しかし,今節に限らず,このノートを通じて,f はC∞

b に属するとしている.何故かというと,そう仮定することにより,計算 or評価が楽になるからである.この便宜的な制限をはずして,このノートの計算を一から遣り直す御仁が現われてくれるといいんだけど....

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Claim 2.2. ∀q ∈ [1,∞)に対して,∥x1∥q <∞, ∥x2∥q/2 <∞.そして

∋ (s, t ) 7→ ∥x1∥qq,[s,t ] ∈ [0,∞),

∋ (s, t ) 7→ ∥x2∥q/2q/2,[s,t ] ∈ [0,∞),

∋ (s, t ) 7→ ∥x1 − y1∥qq,[s,t ] ∈ [0,∞),

∋ (s, t ) 7→ ∥x2 − y2∥q/2q/2,[s,t ] ∈ [0,∞)

は control function.

証明 [0,1]の分割D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対して

N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)|q =N−1∑i=0

∣∣∣∫ti+1

ti

xu du∣∣∣q

≤N−1∑i=0

(∫ti+1

ti

|xu |du)q

≤N−1∑i=0

(ti+1 − ti )q(ess.sup |xu |)q

=N−1∑i=0

(ti+1 − ti )(ti+1 − ti )q−1(ess.sup |xu |)q

≤ (ess.sup |xu |)q ,

N−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)|q/2 =N−1∑i=0

∣∣∣∫ti+1

ti

(xu −xti )⊗ xu du∣∣∣q/2

=N−1∑i=0

∣∣∣∫ti+1

ti

∫u

ti

xv ⊗ xu dvdu∣∣∣q/2

≤N−1∑i=0

(∫ti+1

ti

∫u

ti

dvdu)q/2

(ess.sup |xv |)q

=N−1∑i=0

( (ti+1 − ti )2

2

)q/2(ess.sup |xv |)q

= 2−q/2N−1∑i=0

(ti+1 − ti )q(ess.sup |xv |)q

≤ 2−q/2(ess.sup |xv |)q

であるから

∥x1∥q ≤ ess.sup |xu | <∞,

∥x2∥q/2 ≤ 2−1(ess.sup |xv |)2 <∞.

後半の主張は次の命題から従う.

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命題 2.1. x1, y1 ∈C (→Rd ), x2, y2 ∈C (→Rd ⊗Rd )は次の (a), (b)をみたすとする:

(a) (x1, x2), (y1, y2)はそれぞれ Chenの恒等式 (2.2)をみたす,(b) q ∈ [1,∞)に対して

∥x1∥q <∞, ∥y1∥q <∞,

∥x2∥q/2 <∞, ∥y2∥q/2 <∞.

このとき

∋ (s, t ) 7→ ∥x1 − y1∥qq,[s,t ] ∈ [0,∞),

∋ (s, t ) 7→ ∥x2 − y2∥q/2q/2,[s,t ] ∈ [0,∞)

は control function.なお,この命題における x1, x2等は (1.9), (2.1)により定義されるものとは限らない,単に上の (a), (b)をみたす一般的なものである.

証明 まず

∥x1 − y1∥q ≤ ∥x1∥q +∥y1∥q <∞,

∥x2 − y2∥q/2 ≤ 2(2/q−1)∨0(∥x2∥q/2 +∥y2∥q/2)<∞

であるから,くだん

件の関数は定義できる.簡単のため

ψ1(s, t ) := ∥x1 − y1∥qq,[s,t ],

ψ2(s, t ) := ∥x2 − y2∥q/2q/2,[s,t ]

とおく.注意 1.2より,ψi (i = 1,2)は優加法的である.Claim 1.2の “=⇒ ”部分の証明を見直すと,ψ1の連続性が分かり,よってψ1は control functionである.あとは,ψ2の連続性を示すことが残っている.まず

limt ′t

ψ2(s, t ′) =ψ2(s, t ) (0 ≤ s < t ≤ 1), (2.3)

lims′s

ψ2(s′, t ) =ψ2(s, t ) (0 ≤ s < t ≤ 1), (2.4)

limt ′t

ψ2(s, t ′) =ψ2(s, t ) (0 ≤ s ≤ t < 1), (2.5)

lims′s

ψ2(s′, t ) =ψ2(s, t ) (0 < s ≤ t ≤ 1) (2.6)

を示す.(2.3)と (2.4)について.[s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t と,t0 < s′ < t1,

tN−1 < t ′ < tN に対してN−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

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=N−2∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2 +|x2(tN−1, t ′)− y2(tN−1, t ′)|q/2

+|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )|q/2 −|x2(tN−1, t ′)− y2(tN−1, t ′)|q/2

≤ψ2(s, t ′)+|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )|q/2 −|x2(tN−1, t ′)− y2(tN−1, t ′)|q/2

→t ′t

ψ2(s, t−),

N−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

= |x2(s′, t1)− y2(s′, t1)|q/2 +N−1∑i=1

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

+|x2(s, t1)− y2(s, t1)|q/2 −|x2(s′, t1)− y2(s′, t1)|q/2

≤ψ2(s′, t )+|x2(s, t1)− y2(s, t1)|q/2 −|x2(s′, t1)− y2(s′, t1)|q/2

→s′s

ψ2(s+, t ).

あとは supD を取れば

ψ2(s, t ) ≤ψ2(s, t−) ≤ψ2(s, t ),

ψ2(s, t ) ≤ψ2(s+, t ) ≤ψ2(s, t ),

即ち ψ2(s, t−) =ψ2(s+, t ) =ψ2(s, t ).

次に 0 ≤ s < 1, 0 < t ≤ 1に対して,優加法性より

ψ2(s, s′)+ψ2(s′,1) ≤ψ2(s,1) (s < s′ < 1),

ψ2(0, t ′)+ψ2(t ′, t ) ≤ψ2(0, t ) (0 < t ′ < t ).

ここで s′ s, t ′ t とすると,(2.4)と (2.3)より

ψ2(s, s+) ≤ 0, ψ2(t−, t ) ≤ 0,

即ちψ2(s, s+) =ψ2(t−, t ) = 0.

(2.5)について.0 ≤ s < t < t ′ < 1とする.D′ = s = t0 < t1 < ·· · < tN ′ = t ′を [s, t ′]の分割とする.1 ≤ N ≤ N ′を tN−1 ≤ t < tN となるように選ぶと

N ′−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

=N−2∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2 +|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )|q/2

+|x2(t , tN )− y2(t , tN )|q/2 +N ′−1∑i=N

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

17

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+|x2(tN−1, tN )− y2(tN−1, tN )|q/2 −|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )|q/2

−|x2(t , tN )− y2(t , tN )|q/2

≤ψ2(s, t )+ψ2(t , t ′)

+|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )+ x2(t , tN )− y2(t , tN )

+ x1(tN−1, t )⊗x1(t , tN )− y1(tN−1, t )⊗ y1(t , tN )|q/2

−|x2(tN−1, t )− y2(tN−1, t )|q/2 −|x2(t , tN )− y2(t , tN )|q/2[...⃝ Chenの恒等式より

]≤ψ2(s, t )+ψ2(t , t ′)

+max|a2 +b2 +a1 ⊗b1 −a′

1 ⊗b′1|q/2 −|a2|q/2 −|b2|q/2;

|a2| ≤ maxs≤r≤t

|x2(r, t )− y2(r, t )|,|b2| ≤ max

t≤u≤t ′|x2(t , u)− y2(t , u)|,

|a1| ≤ maxs≤r≤t

|x1(r, t )|, |a′1| ≤ max

s≤r≤t|y1(r, t )|,

|b1| ≤ maxt≤u≤t ′

|x1(t , u)|, |b′1| ≤ max

t≤u≤t ′|y1(t , u)|

.

supD′ を取り,その後で t ′ t とすると

ψ2(s, t+) ≤ψ2(s, t )+ψ2(t , t+) =ψ2(s, t ).

よって ψ2(s, t+) =ψ2(s, t ).

(2.6)について.0 < s′ < s < t ≤ 1とする.D′ = s′ = t0 < t1 < ·· · < tN ′ = t を [s′, t ]の分割とする.1 ≤ N ≤ N ′を tN−1 < s ≤ tN となるものとするとき

N ′−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

=N−2∑i=0

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2 +|x2(tN−1, s)− y2(tN−1, s)|q/2

+|x2(s, tN )− y2(s, tN )|q/2 +N ′−1∑i=N

|x2(ti , ti+1)− y2(ti , ti+1)|q/2

+|x2(tN−1, tN )− y2(tN−1, tN )|q/2 −|x2(tN−1, s)− y2(tN−1, s)|q/2

−|x2(s, tN )− y2(s, tN )|q/2

≤ψ2(s′, s)+ψ2(s, t )

+|x2(tN−1, s)− y2(tN−1, s)+ x2(s, tN )− y2(s, tN )

+ x1(tN−1, s)⊗x1(s, tN )− y1(tN−1, s)⊗ y1(s, tN )|q/2

−|x2(tN−1, s)− y2(tN−1, s)|q/2 −|x2(s, tN )− y2(s, tN )|q/2

18

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[...⃝ Chenの恒等式より

]≤ψ2(s′, s)+ψ2(s, t )

+max|a2 +b2 +a1 ⊗b1 −a′

1 ⊗b′1|q/2 −|a2|q/2 −|b2|q/2;

|a2| ≤ maxs′≤r≤s

|x2(r, s)− y2(r, s)|,|b2| ≤ max

s≤u≤t|x2(s, u)− y2(s, u)|,

|a1| ≤ maxs′≤r≤s

|x1(r, s)|, |a′1| ≤ max

s′≤r≤s|y1(r, s)|,

|b1| ≤ maxs≤u≤t

|x1(s, u)|, |b′1| ≤ max

s≤u≤t|y1(s, u)|

.

supD′ を取り,その後で s′ sとすると

ψ2(s−, t ) ≤ψ2(s−, s)+ψ2(s, t ) =ψ2(s, t ).

よってψ2(s−, t ) =ψ2(s, t ).

さて,ψ2の連続性を示すのであるが,これは Claim 1.2の “=⇒”部分の証明と全く同様の議論をすればよい.

定理 2.1. x1, x2 はそれぞれ (1.9), (2.1) により定義されるものとする.もし,あるp ∈ [2,3)とある control function ωに対して,∀(s, t ) ∈について |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p(2.7)

をみたすならば ∣∣∣∫t

sf (xu)dxu

∣∣∣≤C1(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈

が成り立つ.ここでC1(

f ,ω(0,1), p)は

C1(

f ,ω(0,1), p)

:= ∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p + 3

2∥∇2 f ∥∞23/pζ

( 3

p

)ω(0,1)2/p (2.8)

により定義される定数である.

注意 2.2. Claim 2.2より,∀q ∈ [1,∞)に対して (2.7)となる control functionは存在する.実際

ω(s, t ) := ∥x1∥qq,[s,t ] +∥x2∥q/2

q/2,[s,t ]

とすればよい.

19

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定理 1.1においては

Is,t = f (xs)x1(s, t )

なるものを用いたが,定理 2.1の証明のためには,その代わりに

Js,t := f (xs)x1(s, t )+∇ f (xs)x2(s, t ) (2.9)

を採る.ただし,a =∑di=1 a i ei , b =∑d

i=1 bi ei , c =∑di=1 c i ei , ei = t (0, . . . ,

i1, . . . ,0)に対して

[∇ f (x)(a ⊗b)]i := ∑

1≤ j ,k≤d

∂ f ij

∂xk(x)ak b j ,

[∇2 f (x)(a ⊗b ⊗ c)]i

:= ∑1≤ j ,k,l≤d

∂2 f ij

∂x l∂xk(x)a l bk c j

と約束する ([·]i は i 成分を表わす).Is,t は Is,t =

∫ts f (xu)dxu の第一近似,Js,t は次の意味で,第二近似といえる:

Is,t =∫t

s

[f (xs)+

∫1

0∇ f (xs +θx1(s, u))dθ

x1(s, u)

]dxu

=∫t

s

[f (xs)+∇ f (xs)x1(s, u)

]dxu

+∫t

s

∫1

0∇ f (xs +θx1(s, u))dθ−∇ f (xs)

x1(s, u)dxu

= Js,t +∫t

s

∫1

0

(∫θ

0∇2 f (xs + r x1(s, u))dr

)dθ

x1(s, u)⊗x1(s, u)dxu

=: Js,t +Rs,t .

さらに次の評価は容易に分かる:

|Is,t − Js,t | = |Rs,t |

≤ 1

2∥∇2 f ∥∞

∫t

s|x1(s, u)|2|xu |du. (2.10)

[0,1]の分割D に対して,(1.4)の Is,t (D)のように

Js,t (D) := ∑s≤ti−1,ti≤t

Jti−1,ti , (s, t ) ∈ with s < t (2.11)

と定義する.ただし DはDにさらに s, t を分点として付け加えた分割で,D = 0 = t0 <t1 < ·· · < tN = 1としている.s = t のときは

Js,t (D) := 0

20

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とするのは云うまでもない.(2.10)より

|Is,t − Js,t (D)| =∣∣∣ ∑

s≤ti−1,ti≤t

(Iti−1,ti − Jti−1,ti

)∣∣∣≤ ∑

s≤ti−1,ti≤t

1

2∥∇2 f ∥∞

∫ti

ti−1

|x1(ti−1, u)|2|xu |du

≤ 1

2∥∇2 f ∥∞

∑s≤ti−1,ti≤t

∫ti

ti−1

ω(ti−1, u)2/p |xu |du[

...⃝ (2.7)より]

≤ 1

2∥∇2 f ∥∞

(max

s≤ti−1,ti≤tω(ti−1, ti )2/p

)∫t

s|xu |du

≤ 1

2∥∇2 f ∥∞

(max

|u−v|≤m(D)ω(u, v)

)2/p∫t

s|xu |du

→ 0 as m(D) → 0

であるので ∫t

sf (xu)dxu = lim

m(D)→0Js,t (D). (2.12)

Js,t に対して,Claim 1.1と同様のことが成り立つ:

Claim 2.3. (i) [0,1]の分割D, D′ s.t. D′はDの細分 に対して

|Js,t (D)− Js,t (D′)| ≤C2( f , p)(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v)) 3

p −1ω(0,1), (s, t ) ∈.

ここでm(D)は分割Dの最大幅.(ii) [0,1]の分割Dに対して

|Js,t (D)− Js,t | ≤C2( f , p)ω(s, t )3p , (s, t ) ∈.

(i), (ii)においてC2( f , p)は

C2( f , p) := 3

2∥∇2 f ∥∞23/pζ

( 3

p

)(2.13)

によって定義される定数である.

証明 0 ≤ s < t ≤ 1を任意に fixする.まず,(1.5)のように,[s, t ]の分割 Dに対し J(D)を定義する.

1 (i)について.D = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t を [s, t ]の分割とし,I (α) := [τα−1,τα]

(1 ≤α≤ N)とおく.D′を [s, t ]の分割で Dの細分とする.

A = 1 ≤α≤ N ; #Int I (α) ∩ D′ ≥ 1

21

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= 1 ≤α1 < ·· · <αK ≤ N (K := #A)

とする.補題 1.1より,各 α ∈ Aに対して

∃ distinctな σ(α)1 ,σ(α)

2 , . . . ,σ(α)M(α) (M (α) := #Int I (α) ∩ D′)

s.t. σ(α)m は I (α)の分割 (I (α)∩D′)\σ(α)

1 , . . . ,σ(α)m−1に対して,補

題 1.1において見い出される分点 ti (m = 1, . . . ,M (α)).

[s, t ]の分割 (D′)k,m (k = 1, . . . ,K , m = 0,1, . . . ,M (αk ))を次のように定義する:(D′)

k,m := D′ \σ

(α1)1 , . . . ,σ(α1)

M(α1) , . . . ,σ(αk−1)1 , . . . ,σ(αk−1)

M(αk−1) ,σ(αk )1 , . . . ,σ(αk )

m.

定義より (D′)

1,0 = D′,(D′)

k,0 =(D′)

k−1,M(αk−1) (2 ≤ k ≤ K ),(D′)

K ,M(αK ) = D

であるので

|J(D)− J(D′)| =∣∣∣J

((D′)1,0

)− J((D′)K ,M(αK )

)∣∣∣=

∣∣∣ K∑k=1

M(αk )∑m=1

(J((D′)k,m−1

)− J((D′)k,m

))∣∣∣≤

K∑k=1

M(αk )∑m=1

∣∣∣J((D′)k,m−1

)− J((D′)k,m

)∣∣∣. (2.14)

さて (D′)k,m = (D′)k,m−1 \ σ, σを σの直前の分点,σを直後の分点とすると∣∣∣J((D′)k,m−1

)− J((D′)k,m

)∣∣∣=

∣∣∣ f (xσ)x1(σ,σ)+ f (xσ)x1(σ,σ)+∇ f (xσ)x2(σ,σ)+∇ f (xσ)x2(σ,σ)

− f (xσ)x1(σ,σ)−∇ f (xσ)x2(σ,σ)∣∣∣

=∣∣∣( f (xσ)− f (xσ)

)x1(σ,σ)

−∇ f (xσ)x1(σ,σ)⊗x1(σ,σ)+ (∇ f (xσ)−∇ f (xσ))x2(σ,σ)

∣∣∣[...⃝ Chenの恒等式より

]=

∣∣∣∣∫1

0

[∇ f

(xσ+θx1(σ,σ)

)−∇ f (xσ)]

dθx1(σ,σ)⊗ x1(σ,σ)

+∫1

0∇2 f

(xσ+θx1(σ,σ)

)dθx1(σ,σ)⊗ x2(σ,σ)

∣∣∣∣22

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=∣∣∣∣∫1

0

(∫θ

0∇2 f

(xσ+ r x1(σ,σ)

)dr

)dθx1(σ,σ)⊗ x1(σ,σ)⊗x1(σ,σ)

+∫1

0∇2 f

(xσ+θx1(σ,σ)

)dθx1(σ,σ)⊗ x2(σ,σ)

∣∣∣∣≤ ∥∇2 f ∥∞

[1

2|x1(σ,σ)|2|x1(σ,σ)|+ |x1(σ,σ)||x2(σ,σ)|

]≤ ∥∇2 f ∥∞

[1

2ω(σ,σ)2/pω(σ,σ)1/p +ω(σ,σ)1/pω(σ,σ)2/p

] [...⃝ (2.7)

]≤ 3

2∥∇2 f ∥∞ω(σ,σ)3/p

[...⃝ωの優加法性

]≤ 3

2∥∇2 f ∥∞

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

)3/p

.

これを (2.14)に戻すと

|J(D)− J(D′)|

≤K∑

k=1

M(αk )∑m=1

3

2∥∇2 f ∥∞

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

)3/p

= 3

2∥∇2 f ∥∞23/p

K∑k=1

ω(ταk−1,ταk )3/p−1ω(ταk−1,ταk )M(αk )∑n=1

1

n3/p

≤ 3

2∥∇2 f ∥∞23/pζ(3/p)

(max

1≤α≤Nω(τα−1,τα)

)3/p−1 N∑α=1

ω(τα−1,τα)

≤C2( f , p)(

max1≤α≤N

ω(τα−1,τα))3/p−1

ω(s, t )[

...⃝ωの優加法性]

.

このことから (i)の主張は直ぐに従う.

2 (ii)について.Dを [s, t ]の分割とする.ただし #D ≥ 3.補題 1.1より

∃ distinctな σ1, . . . ,σM (M = #D −2)

s.t. σm は [s, t ]の分割 D \σ1, . . . ,σm−1に対して,補題 1.1において見い出される分点 ti (m = 1, . . . ,M).

Dm := D \ σ1, . . . ,σm (m = 0,1, . . . ,M)とおくと D0 = D, DM = s = t0 < t1 = t であるので

|J(D)− Js,t | = |J(D0)− J(DM )|

=∣∣∣ M∑

m=1

(J(Dm−1)− J(Dm)

)∣∣∣≤

M∑m=1

|J(Dm−1)− J(Dm)|

23

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=M∑

m=1

∣∣∣ f (xσm )x1(σm ,σm)+ f (xσm )x1(σm ,σm)+∇ f (xσm )x2(σm ,σm)

+∇ f (xσm )x2(σm ,σm)− f (xσm )x1(σm ,σm)−∇ f (xσm )x2(σm ,σm)∣∣∣

≤M∑

m=1

3

2∥∇2 f ∥∞ω

(σm ,σm

)3/p

≤M∑

m=1

3

2∥∇2 f ∥∞

( 2ω(s, t )

M −m +1

)3/p

= 3

2∥∇2 f ∥∞23/pω(s, t )3/p

M∑n=1

1

n3/p

≤C2( f , p)ω(s, t )3/p .

(ii)の主張はこのことから直ぐに従う.

定理 2.1の証明 (2.12)と Claim 2.3(ii)より∣∣∣∫t

sf (xu)dxu − Js,t

∣∣∣≤C2( f , p)ω(s, t )3/p .

(2.9)より

|Js,t | = | f (xs)x1(s, t )+∇ f (xs)x2(s, t )|≤ | f (xs)||x1(s, t )|+ |∇ f (xs)||x2(s, t )|≤ ∥ f ∥∞ω(s, t )1/p +∥∇ f ∥∞ω(s, t )2/p

[...⃝ (2.7)より

].

この2つの評価を合せれば定理 2.1の評価が直ぐに従う.

定理 2.2. x = (xt )0≤t≤1, y = (yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] → Rd )は区分的に C 1 級で x0 = y0 とする.ある p ∈ [2,3)とある control function ωに対して

|x1(s, t )|∨ |y1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |y2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x1(s, t )− y1(s, t )| ≤ εω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )− y2(s, t )| ≤ εω(s, t )2/p

(2.15)

をみたすならば∣∣∣∫t

sf (xu)dxu −

∫t

sf (yu)d yu

∣∣∣≤ εC3(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈

が成り立つ.ここで C3(

f ,ω(0,1), p)は f の3階微分までの sup-norm, ω(0,1), p に依

存する定数 (cf. (2.18)).

24

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証明 x = (xt ), y = (yt )に対する Js,t , J(D)をそれぞれ Js,t (x), J(x,D), Js,t (y), J(y,D)と表わす.D0, . . . ,DM を Claim 5(ii)の証明中にある [s, t ]の分割とすると∣∣∣J(x,D)− J(y,D)− (

Js,t (x)− Js,t (y))∣∣∣

=∣∣∣J(x,D0)− J(y,D0)− (

J(x,DM )− J(y,DM ))∣∣∣

≤M∑

m=1

∣∣∣J(x,Dm−1)− J(y,Dm−1)− (J(x,Dm)− J(y,Dm)

)∣∣∣.各m = 1, . . . ,M に対して∣∣∣J(x,Dm−1)− J(y,Dm−1)− (

J(x,Dm)− J(y,Dm))∣∣∣

=∣∣∣∣∫1

0

(∫θ

0∇2 f

(xσm + r x1(σm ,σm)

)dr

)dθx1(σm ,σm)⊗x1(σm ,σm)⊗x1(σm ,σm)

+∫1

0∇2 f

(xσm +θx1(σm ,σm)

)dθx1(σm ,σm)⊗x2(σm ,σm)

−∫1

0

(∫θ

0∇2 f

(yσm + r y1(σm ,σm)

)dr

)dθ y1(σm ,σm)⊗ y1(σm ,σm)⊗ y1(σm ,σm)

−∫1

0∇2 f

(yσm +θy1(σm ,σm)

)dθ y1(σm ,σm)⊗ y2(σm ,σm)

∣∣∣∣=

∣∣∣∣∫1

0

(∫θ

0∇2 f

(xσm + r x1(σm ,σm)

)−∇2 f(yσm + r y1(σm ,σm)

)dr

)dθ

x1(σm ,σm)⊗x1(σm ,σm)⊗ x1(σm ,σm)

+∫1

0

(∫θ

0∇2 f

(yσm + r y1(σm ,σm)

)dr

)dθ[(

x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm))⊗ x1(σm ,σm)⊗x1(σm ,σm)

+ y1(σm ,σm)⊗ (x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)

)⊗ x1(σm ,σm)

+ y1(σm ,σm)⊗ y1(σm ,σm)⊗ (x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)

)]+

∫1

0

(∇2 f

(xσm +θx1(σm ,σm)

)−∇2 f(yσm +θy1(σm ,σm)

))dθ

x1(σm ,σm)⊗x2(σm ,σm)

+∫1

0∇2 f

(yσm +θy1(σm ,σm)

)dθ[(

x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm))⊗ x2(σm ,σm)

+ y1(σm ,σm)⊗ (x2(σm ,σm)− y2(σm ,σm)

)]∣∣∣∣≤ 1

6∥∇3 f ∥∞|x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)|2|x1(σm ,σm)|

25

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+ 1

2∥∇2 f ∥∞

[|x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)|+ |y1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)|+ |y1(σm ,σm)|2|x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)|]

+ 1

2∥∇3 f ∥∞|x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)||x1(σm ,σm)||x2(σm ,σm)|

+∥∇2 f ∥∞[|x1(σm ,σm)− y1(σm ,σm)||x2(σm ,σm)|+ |y1(σm ,σm)||x2(σm ,σm)− y2(σm ,σm)|]

≤ 1

6∥∇3 f ∥∞εω(σm ,σm)3/pω(σm ,σm)1/p

+ 3

2∥∇2 f ∥∞εω(σm ,σm)2/pω(σm ,σm)1/p

+ 1

2∥∇3 f ∥∞εω(σm ,σm)2/pω(σm ,σm)2/p

+2∥∇2 f ∥∞εω(σm ,σm)1/pω(σm ,σm)2/p[...⃝ (2.15)

]≤ ε

(2

3∥∇3 f ∥∞ω(σm ,σm)4/p + 7

2∥∇2 f ∥∞ω(σm ,σm)3/p

)≤ ε

(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)ω(σm ,σm)3/p

≤ ε(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)( 2ω(s, t )

M −m +1

)3/p

であるので,この評価を上式に代入すると∣∣∣J(x,D)− J(y,D)− (Js,t (x)− Js,t (y)

)∣∣∣≤

M∑m=1

ε(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)( 2ω(s, t )

M −m +1

)3/p

= ε23/p( M∑

n=1

1

n3/p

)(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)ω(s, t )3/p

≤ ε23/pζ(3/p

)(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)ω(s, t )3/p

=: εC4(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p . (2.16)

また

|Js,t (x)− Js,t (y)|=

∣∣∣ f (xs)x1(s, t )+∇ f (xs)x2(s, t )− f (ys)y1(s, t )−∇ f (ys)y2(s, t )∣∣∣

=∣∣∣( f (xs)− f (ys)

)x1(s, t )+ f (ys)

(x1(s, t )− y1(s, t )

)26

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+ (∇ f (xs)−∇ f (ys))x2(s, t )+∇ f (ys)

(x2(s, t )− y2(s, t )

)∣∣∣=

∣∣∣∫1

0∇ f (θxs + (1−θ)ys)dθ

(x1(0, s)− y1(0, s)

)⊗ x1(s, t )

+ f (ys)(x1(s, t )− y1(s, t )

)+

∫1

0∇2 f (θxs + (1−θ)ys)dθ

(x1(0, s)− y1(0, s)

)⊗ x2(s, t )

+∇ f (ys)(x2(s, t )− y2(s, t )

)∣∣∣[...⃝ x0 = y0より xs − ys = x1(0, s)− y1(0, s)

]≤ ∥∇ f ∥∞|x1(0, s)− y1(0, s)||x1(s, t )|+∥ f ∥∞|x1(s, t )− y1(s, t )|+∥∇2 f ∥∞|x1(0, s)− y1(0, s)||x2(s, t )|+∥∇ f ∥∞|x2(s, t )− y2(s, t )|

≤ ∥∇ f ∥∞εω(0, s)1/pω(s, t )1/p +∥ f ∥∞εω(s, t )1/p

+∥∇2 f ∥∞εω(0, s)1/pω(s, t )2/p +∥∇ f ∥∞εω(s, t )2/p

≤ ε∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p +∥ f ∥∞+ (∥∇2 f ∥∞ω(0,1)1/p +∥∇ f ∥∞

)ω(0,1)1/p

ω(s, t )1/p

=: εC5(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p . (2.17)

よって

|J(x,D)− J(y,D)| ≤∣∣∣J(x,D)− J(y,D)− (

Js,t (x)− Js,t (y))∣∣∣+|Js,t (x)− Js,t (y)|

≤ ε

C4(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p

≤ ε

C4

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)2/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p

= εC3(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p .

ここで

C3(

f ,ω(0,1), p)

:= ∥ f ∥∞+2∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p +∥∇2 f ∥∞ω(0,1)2/p

+(2

3∥∇3 f ∥∞ω(0,1)1/p + 7

2∥∇2 f ∥∞

)23/pζ

(3/p

)ω(0,1)2/p (2.18)

である.最後にm(D) → 0とすることにより定理 2.2の評価式が得られる.

系 2.1. x = (xt )0≤t≤1, y = (yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] → Rd )は区分的に C 1 級で x0 = y0 とする.ある p ∈ [2,3)に対して

∥x1∥p ∨∥y1∥p ∨∥x2∥p/2 ∨∥y2∥p/2 ≤ R <∞,

∥x1 − y1∥p ∨∥x2 − y2∥p/2 ≤ ε

ならば,∀ f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して∣∣∣∫t

sf (xu)dxu −

∫t

sf (yu)d yu

∣∣∣≤ εC6(R, p, f

), (s, t ) ∈.

27

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ここでC6(R, p, f

)は R, p, f の3階微分までの sup-normに依存する定数.

証明 Claim 2.2より

ω(s, t ) := ∥x1∥pp,[s,t ] +∥y1∥p

p,[s,t ] +∥x2∥p/2p/2,[s,t ] +∥y2∥p/2

p/2,[s,t ]

+ (ε−1∥x1 − y1∥p,[s,t ]

)p + (ε−1∥x2 − y2∥p/2,[s,t ]

)p/2.

は control functionで

|x1(s, t )|∨ |y1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |y2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x1(s, t )− y1(s, t )| ≤ εω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )− y2(s, t )| ≤ εω(s, t )2/p ,

ω(0,1) ≤ 2Rp +2Rp/2 +2

が成り立つ.よって定理 2.2を適用して∣∣∣∫t

sf (xu)dxu −

∫t

sf (yu)d yu

∣∣∣≤ εC3(

f ,2Rp +2Rp/2 +2, p)(

2Rp +2Rp/2 +2)1/p

=: εC6(R, p, f ).

1節の最後で提起した問題の1つの解答を与える.2 ≤ p < 3とする.x = (xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd )は p次有界変動関数,i.e., ∥x1∥p <∞とする.(1.9)を忘

れて,単に (2.2)をみたす ∥x2∥p/2 <∞なる x2 ∈C ([0,1] →Rd ⊗Rd )が存在するとする.このとき,f ∈C∞

b (Rd →Rn⊗Rd )に対して (2.9)により Js,t を定義すると,Claim 2.3よりJs,t (D)はm(D) → 0のとき Rnの元に収束する.この極限 Is,t を我々は積分

∫ts f (xu)dxu

と考えるのである.この Is,t について定理 1.1の証明を繰り返すと,I ∈C (→Rn),そして

Is,u + Iu,t = Is,t , 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1,

∥I∥p <∞であることが分かる.

[附記] 命題 2.1は,Lyons-Qianの本 [20]の 49ページにある Lemma 3.3.1で見ることができる.が,その証明は不完全 (不十分)であると思う.この Lemmaの証明では,命題 2.1の証明中のψ2について,(2.3)と (2.4)は調べているが,(2.5)と (2.6)の方は同様だと云って済ましている.しかし,少し計算してみると直ぐに同様には行かないことが分かる.命題 2.1の証明にあるように,まず,ψ2(s, s+) =ψ2(t−, t ) = 0を示し,その後は Lyons-Qianの云うように同様の計算をすればうまく行くのである.[20]は論文ではなくて本なのであるから,読者が躓き易い所では,何らかの手立てをしておくのが著者としての良心だと思んだけど,どうなんでしょうか?

28

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3. Rough path

いよいよ本題に入る.2節でやったことを念頭に置いて,次の定義から始める:

定義 3.1. T 2(Rd ) =R⊕Rd ⊕Rd ⊗Rd とする.T 2(Rd )は普通の和,スカラー倍,そして次の積

(a0, a1, a2)⊗ (b0, b1, b2) = (a0b0, a0b1 +a1b0, a2b0 +a0b2 +a1 ⊗b1)

で非可換代数 (Rd 上の truncated tensor algebra)になる.T 2(Rd )には直積位相を導入しておく.

定義 3.2. 2 ≤ p < 3とする.

Ωp(Rd ) :=

x = (x0, x1, x2) ∈C (→ T 2(Rd )) ;

(o) x0 = 1,

(i) xは Chenの恒等式をみたす,即ち,任意の 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1

に対して

x1(s, t ) = x1(s, u)+ x1(u, t ),

x2(s, t ) = x2(s, u)+ x2(u, t )+ x1(s, u)⊗ x1(u, t ),

(ii) ∥x1∥p <∞, ∥x2∥p/2 <∞

とおく.Ωp(Rd )の元を roughness pの rough pathという.x1を x の first level path,

x2を second level pathという.x = (1, x1, x2), y = (1, y1, y2) ∈Ωp(Rd )に対して

dp(x, y) := ∥x1 − y1∥p +∥x2 − y2∥p/2

と定義すると,明らかに dp はΩp(Rd )の距離となる.

注意 3.1. (i) x = (1, x1, x2) ∈C (→ T 2(Rd ))であるとは

x1 ∈C (→Rd ), x2 ∈C (→Rd ⊗Rd )

ということである.(ii) Chenの恒等式は次と同値である:

x(s, t ) = x(s, u)⊗x(u, t ), 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1.

(iii) Chenの恒等式より x1(s, s) = 0, x2(s, s) = 0 (∀s ∈ [0,1])である.

29

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定義 3.3. x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )が次をみたすとき smoothであるという:

∃x : [0,1] →Rd は区分的にC 1級

s.t.

x1(s, t ) = xt −xs ,

x2(s, t ) =∫t

s(xu −xs)⊗dxu

(∀(s, t ) ∈).

SmoothなΩp(Rd )の元全体を SΩp(Rd )と表わす.

注意 3.2. x ∈ SΩp(Rd )に対して

x1(s, t ) =∫

s≤u≤tdxu =

(∫s≤u≤t

dx iu

)i=1,...,d

,

x2(s, t ) =Ï

s≤v≤u≤tdxv ⊗dxu =

(Ïs≤v≤u≤t

dx iv dx j

u

)i , j=1,...,d

となる.一般の x ∈Ωp(Rd )については,当然このようなことは成り立たないが,あたかもこういう形をしていると思うと,下で現われる rough path x の汎関数が一体どんなものであるのかを理解するのに役立つ (と思う).

定義 3.4. x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )が次をみたすとき geometricであるという:

∃(x(n))∞n=1 ⊂ SΩp(Rd ) s.t. dp(x(n), x) → 0 as n →∞.

GeometricなΩp(Rd )の元全体をGΩp(Rd )と表わす.

Claim 3.1.(Ωp(Rd ), dp

)は完備距離空間である.

証明(x(n))∞

n=1 ⊂Ωp(Rd )を Cauchy列,即ち,

limn,m→∞dp

(x(n), x(m))= 0

とする.このとき

∃(nk )∞k=1:部分列 s.t. dp(x(nk+1), x(nk ))< 1

2k(∀k ∈N).

∀k ∈N, ∀(s, t ) ∈に対して∣∣∣∥x(nk+1)1 ∥p,[s,t ] −∥x(nk )

1 ∥p,[s,t ]

∣∣∣, |x(nk+1)1 (s, t )− x(nk )

1 (s, t )|

≤ ∥x(nk+1)1 −x(nk )

1 ∥p,[s,t ] ≤ ∥x(nk+1)1 −x(nk )

1 ∥p < 1

2k,∣∣∣∥x(nk+1)

2 ∥p/2,[s,t ] −∥x(nk )2 ∥p/2,[s,t ]

∣∣∣, |x(nk+1)2 (s, t )− x(nk )

2 (s, t )|

30

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≤ ∥x(nk+1)2 −x(nk )

2 ∥p/2,[s,t ] ≤ ∥x(nk+1)2 −x(nk )

2 ∥p/2 < 1

2k

であるから,∥x(nk )1 ∥p,[·,∗], x(nk )

1 (·,∗), ∥x(nk )2 ∥p/2,[·,∗], x(nk )

2 (·,∗)は k →∞のとき上で一様収束する.各 k ∈Nに対して,x(nk )

1 (·,∗) ∈C (→Rd ), x(nk )2 (·,∗) ∈C (→Rd ⊗Rd ),ま

た命題 2.1より ∥x(nk )1 ∥p,[·,∗], ∥x(nk )

2 ∥p/2,[·,∗] ∈C (→ [0,∞))であるので

ω(·,∗) := limk→∞

(∥x(nk )

1 ∥pp,[·,∗] +∥x(nk )

2 ∥p/2p/2,[·,∗]

)は control function,

x1(·,∗) := limk→∞

x(nk )1 (·,∗) ∈C (→Rd ),

x2(·,∗) := limk→∞

x(nk )2 (·,∗) ∈C (→Rd ⊗Rd )

が分かる.x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )である.実際,各 k ∈Nに対して

• |x(nk )

1 (s, t )| ≤ ∥x(nk )1 ∥p,[s,t ],

|x(nk )2 (s, t )| ≤ ∥x(nk )

2 ∥p/2,[s,t ]

• (1, x(nk )1 , x(nk )

2 )(s, t ) = (1, x(nk )1 , x(nk )

2 )(s, u)⊗ (1, x(nk )1 , x(nk )

2 )(u, t )

が成り立つから,k →∞として

• |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p

• (1, x1, x2)(s, t ) = (1, x1, x2)(s, u)⊗ (1, x1, x2)(u, t )

となるからである.あとは dp(x(n), x) → 0 (n →∞)についてである.[0,1]の分割 D = 0 = t0 < t1 < ·· · <

tN = 1に対して

(N−1∑i=0

|x(nl )α (ti , ti+1)− x(nk )

α (ti , ti+1)|p/α)α/p

≤l−1∑j=k

(N−1∑i=0

|x(n j+1)α (ti , ti+1)− x

(n j )α (ti , ti+1)|p/α

)α/p

≤l−1∑j=k

∥x(n j+1)α − x

(n j )α ∥p/α

<l−1∑j=k

1

2 j< 1

2k−1(α= 1 or 2)

31

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であるから,l ∞として(N−1∑

i=0|xα(ti , ti+1)− x(nk )

α (ti , ti+1)|p/α)α/p ≤ 1

2k−1.

supD を取れば

∥xα−x(nk )α ∥p/α ≤ 1

2k−1.

よって

dp(x, x(n)) ≤ dp(x, x(nk ))+dp(x(nk ), x(n))

→n,k→∞

0.

Claim 3.2.(x(n))∞

n=1 ⊂Ωp(Rd ), x ∈Ωp(Rd )は dp(x(n), x

)→ 0 (n →∞)とする.このとき

∃(nk )∞k=1:部分列, ∃ω: control function

s.t.

|xα(s, t )|, |x(nk )

α (s, t )| ≤ω(s, t )α/p ,

|x(nk )α (s, t )− xα(s, t )| ≤ 1

2kω(s, t )α/p

(α= 1,2, k ∈N).

証明 まず

∃(nk )∞k=1:部分列 s.t. dp(x(nk ), x) < 1

22k(∀k ∈N).

天下り的に

ω(s, t ) := ∥x1∥pp,[s,t ] +∥x2∥p/2

p/2,[s,t ]

+∞∑

k=1

(2k∥x(nk )

1 −x1∥p,[s,t ])p + (

2k∥x(nk )2 − x2∥p/2,[s,t ]

)p/2

,

ω(s, t ) := 2p−1ω(s, t )

とする.ω,よって ωは control functionである.ωの定義より

|xα(s, t )| ≤ ∥xα∥p/α,[s,t ]

≤ ω(s, t )α/p ≤ω(s, t )α/p ,

|x(nk )α (s, t )− xα(s, t )| ≤ ∥x(nk )

α −xα∥p/α,[s,t ]

≤ 1

2kω(s, t )α/p ≤ 1

2kω(s, t )α/p ,

|x(nk )α (s, t )| ≤ ∥x(nk )

α ∥p/α,[s,t ]

32

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≤ ∥xα∥p/α,[s,t ] +∥x(nk )α −xα∥p/α,[s,t ]

2p/α−1(∥xα∥p/αp/α,[s,t ] +∥x(nk )

α −xα∥p/αp/α,[s,t ]

)α/p

≤ (2p/α−1ω(s, t )

)α/p

≤ω(s, t )α/p .

系 3.1. x ∈Ωp(Rd )に対して

x ∈GΩp(Rd ) ⇐⇒iff

∃(x(n))∞n=1 ⊂ SΩp(Rd ),

∃ω: control function

s.t.|xα(s, t )|, |x(n)

α (s, t )| ≤ω(s, t )α/p ,

|x(n)α (s, t )− xα(s, t )| ≤ 1

2nω(s, t )α/p .

2節での成果を,rough pathについての定理としてまとめておく.

定理 3.1. x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )とする. f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して,(2.9)により

Js,t を定義する.ただし,xs = x1(0, s)+a (a ∈Rd )とする.このとき Js,t (D)はm(D) → 0

のとき Rn の元 Is,t に収束する.Is,t は上の関数として連続,即ち,I ∈C (→Rn)で

Is,u + Iu,t = Is,t (0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1)

をみたし,∥I∥p <∞である.とくに,適当な control function ωに対して |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p

が成り立つときは

|Is,t − Js,t | ≤C2(

f , p)ω(s, t )3/p ,

|Is,t | ≤C1(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p

と評価される.ここで C1(

f ,ω(0,1), p), C2

(f , p

)はそれぞれ (2.8), (2.13)で定義される

定数.

定義 3.5. 定理 3.1における Is,t をいつものように∫t

s f (xu)dxu と表わすことにする.

定理 3.2. x = (1, x1, x2), y = (1, y1, y2) ∈Ωp(Rd )は,ある control function ωに対して

|x1(s, t )|∨ |y1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |y2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x1(s, t )− y1(s, t )| ≤ εω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )− y2(s, t )| ≤ εω(s, t )2/p

33

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をみたすとする.このとき ∀ f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して

∣∣∣∫t

sf (xu)dxu −

∫t

sf (yu)d yu − (Js,t (x)− Js,t (y))

∣∣∣≤ εC4(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p ,∣∣∣∫t

sf (xu)dxu −

∫t

sf (yu)d yu

∣∣∣≤ εC3(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p

が成り立つ.ここで C3(

f ,ω(0,1), p), C4

(f ,ω(0,1), p

)はそれぞれ (2.18), (2.16)により定

義される定数である.なお xu = x1(0, u)+a, yu = y1(0, u)+a (a ∈Rd )である.

系 3.2 (伊藤の公式注6). x = (1, x1, x2) ∈ GΩp(Rd )ならば,次の等式が成り立つ: ∀ϕ ∈C∞

b (Rd →Rn)に対して

ϕ(xt ) =ϕ(xs)+∫t

s∇ϕ(xu)dxu , 0 ≤ s ≤ t ≤ 1.

ここで xs = x1(0, s)+a (a ∈Rd ).

証明 x = (1, x1, x2) ∈GΩp(Rd )とする.系 3.1より

∃(x(n))∞n=1 ⊂ SΩp(Rd ), ∃ω: control function

s.t.

|x1(s, t )|∨ |x(n)1 (s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |x(n)2 (s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x(n)1 (s, t )− x1(s, t ))| ≤ 1

2nω(s, t )1/p ,

|x(n)2 (s, t )− x2(s, t )| ≤ 1

2nω(s, t )2/p .

定理 3.2より∣∣∣∫t

s∇ϕ(xu)dxu −

∫t

s∇ϕ(x(n)

u )dx(n)u

∣∣∣≤ 1

2nC3(∇ϕ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p .

また

|ϕ(xt )−ϕ(x(n)t )| =

∣∣∣∫1

0∇ϕ(θxt + (1−θ)x(n)

t )dθ(xt −x(n)t )

∣∣∣≤ ∥∇ϕ∥∞ 1

2nω(0, t )1/p .

よって n →∞とすると∫t

s∇ϕ(xu)dxu = lim

n→∞

∫t

s∇ϕ(x(n)

u )dx(n)u ,

注6伊藤の公式というよりも,合成関数の微分法則 (連鎖公式)と云った方が適切かもしれない.

34

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ϕ(xt )−ϕ(xs) = limn→∞

(ϕ(x(n)

t )−ϕ(x(n)s )

).

ところで (x(n)t )0≤t≤1は区分的にC 1級であるから

ϕ(x(n)t )−ϕ(x(n)

s ) =∫t

s∇ϕ(x(n)

u )dx(n)u , ∀n ∈N.

故に,上の収束と合せれば系 3.2の主張は明らかである.

[附記] Claim 3.1は,Lyons-Qianの本 [20]の 51ページにある Lemma 3.3.3で見ることができる.が,その証明中で定義されている関数 ωは control functionではないと思う.何故かというと,この ωは確かに連続関数ではあるが,肝心の優加法性をもっていないからである.Lyons-Qianはこの ωについて勘違いしていると思われる.

35

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4. Geometric rough path注7

今節では,もう少し詳しく geometric rough pathについて見ていく.(ていねいに証明を付けた

せ い

所為で,気がついたら 50ページ強の長さになってしまった.) 云うまでもなく 2 ≤ p < 3とする.

4.1. 定理 4.1と定理 4.2 — Geometric rough pathの空間が可分であることと真に小さいこと

次の定義から始める.

定義 4.1. W d = w ∈C ([0,1] →Rd ) ; w(0) = 0とする.W d のノルムは sup-norm ∥ ∥∞,

即ち,∥w∥∞ = max0≤t≤1

|w(t )|. W d の部分空間Hd を

Hd =

h ∈ W d ; h は絶対連続でその微分 h は L2関数

とする.Hd のノルム | |H ,内積 ⟨ , ⟩H を

|h|H =(∫1

0|h(s)|2ds

)1/2,

⟨h, k⟩H =∫1

0⟨h(s), k(s)⟩Rd ds

とする.(Hd ,⟨ , ⟩H )は実ヒルベルト空間となる.Hd を Cameron-Martin部分空間という.

h ∈ Hd に対して,今までのように h = (1, h1, h2) ∈Ωp(Rd )をh1(s, t ) = h(t )−h(s) =

∫t

sh(u)du,

h2(s, t ) =∫t

s

(h(u)−h(s)

)⊗dh(u) =∫t

sh1(s, u)⊗ h(u)du

(4.1)

とする.明らかに

SΩp(Rd ) ⊂ h ; h ∈ Hd

であるが,実は次が成り立つ:

注74節をスキップして 5節に行って構わない.この節は,他の節とは独立していると云ってよく,今節のことを知らなくても 5~7節の話は読むことができる.しかし,8節では,4節で定義される Höldernormとかが度々現われるから,この節のことを知っていた方が都合がよいだろう.だから,このノートの読み方として,1~3節,5~7節,その後 4節に戻り,そして 8, 9節という風に読まれることをお勧めする.

36

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Claim 4.1.

h ; h ∈ Hddp =GΩp(Rd ).

この claimの証明の前 (orため)に,定義と補題を用意する:

定義 4.2. 連続関数ψ : → V (V はBanach空間 with norm | |V )の θ次Hölder normを

∥ψ∥H ,θ := sup0≤s<t≤1

|ψ(s, t )|V|t − s|θ (∈ [0,∞])

と定義する.ただし 0 < θ≤ 1. ∥ψ∥H ,θ <∞のとき,ψは θ次 Hölder norm有限であるという.

1 ≤ q <∞に対して,1/q次のHölder norm ∥ ∥H ,1/q の方が q-variation norm ∥ ∥q (cf.

定義 1.2)より強いノルムである,即ち,∥ψ∥q ≤ ∥ψ∥H ,1/q .

定義 4.3. h, k ∈ Hd に対して,Ch,k ∈C (→Rd ⊗Rd )を

Ch,k (s, t ) =∫t

s(h(u)−h(s))⊗dk(u) ∈Rd ⊗Rd (4.2)

と定義する.Ch,h = h2 に注意.

補題 4.1. h, k ∈ Hd とする.

(i) Ch,h(s, t )−Ck,k (s, t )

=−Ch−k,h−k (s, t )+Ch−k,h(s, t )−C∗h−k,h(s, t )+h1(s, t )⊗

(h1(s, t )−k1(s, t )

)=Ch−k,h−k (s, t )+Ch−k,k (s, t )−C∗

h−k,k (s, t )+k1(s, t )⊗(h1(s, t )−k1(s, t )

).

(ii)任意の分割 s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して

Ch,k (s, t ) =N∑

i=1Ch,k (ti−1, ti )+ ∑

1≤i< j≤Nh1(ti−1, ti )⊗k1(t j−1, t j ).

従って

|Ch,k (s, t )| ≤N∑

i=1|Ch,k (ti−1, ti )|+

N∑i=1

|h1(ti−1, ti )| ·N∑

j=1|k1(t j−1, t j )|.

証明 h, k ∈ Hd とする.(i) (4.2)より,i , j = 1, . . . , d に対して

C i jh,h(s, t )−C i j

k,k (s, t )− (−C i jh−k,h−k (s, t )+C i j

h−k,h(s, t )−C j ih−k,h(s, t )

)=

∫t

s

(hi (u)−hi (s)

)h j (u)du −

∫t

s

(k i (u)−k i (s)

)k j (u)du

37

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+∫t

s

(hi (u)−hi (s)− (k i (u)−k i (s))

)(h j (u)− k j (u)

)du

−∫t

s

(hi (u)−hi (s)− (k i (u)−k i (s))

)h j (u)du

+∫t

s

(h j (u)−h j (s)− (k j (u)−k j (s))

)hi (u)du

=∫t

s

(hi (u)−hi (s)

)(h j (u)− k j (u)

)du

+∫t

s

(h j (u)−h j (s)− (k j (u)−k j (s))

)hi (u)du

=[(

hi (u)−hi (s))(

h j (u)−k j (u))]t

s

−∫t

s

(h j (u)−k j (u)

)hi (u)du +

∫t

s

(h j (u)−k j (u)

)hi (u)du

− (h j (s)−k j (s)

)(hi (t )−hi (s)

) [...⃝部分積分

]= (

hi (t )−hi (s))(

h j (t )−k j (t ))− (

hi (t )−hi (s))(

h j (s)−k j (s))

= (hi (t )−hi (s)

)(h j (t )−h j (s)−k j (t )+k j (s)

)= h

i1(s, t )

(h

j1(s, t )−k

j1(s, t )

).

よって

Ch,h(s, t )−Ck,k (s, t )

=−Ch−k,h−k (s, t )+Ch−k,h(s, t )−C∗h−k,h(s, t )+h1(s, t )⊗ (

h1(s, t )−k1(s, t )).

今の計算において hと kを入れ換えると

Ch,h(s, t )−Ck,k (s, t )

=−(Ck,k (s, t )−Ch,h(s, t )

)=−

(−Ck−h,k−h(s, t )+Ck−h,k (s, t )−C∗

k−h,k (s, t )+ k1(s, t )⊗ (k1(s, t )−h1(s, t )

))=Ck−h,k−h(s, t )−Ck−h,k (s, t )+C∗

k−h,k (s, t )+k1(s, t )⊗ (h1(s, t )−k1(s, t )

)=Ch−k,h−k (s, t )+Ch−k,k (s, t )−C∗

h−k,k (s, t )+k1(s, t )⊗ (h1(s, t )−k1(s, t )

)[...⃝C(−h),k (s, t ) =Ch,(−k)(s, t ) =−Ch,k (s, t )

].

(ii) まず,0 ≤ s < u < t ≤ 1に対して

Ch,k (s, u)+Ch,k (u, t )+h1(s, u)⊗k1(u, t )

=∫u

s

(h(v)−h(s)

)⊗ k(v)dv +∫t

u

(h(v)−h(u)

)⊗ k(v)dv

+ (h(u)−h(s)

)⊗ (k(t )−k(u)

)38

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=∫t

sh(v)⊗ k(v)dv −h(s)⊗ (

k(u)−k(s))−h(u)⊗ (

k(t )−k(u))

+ (h(u)−h(s)

)⊗ (k(t )−k(u)

)=

∫t

sh(v)⊗ k(v)dv −h(s)⊗ (

k(t )−k(s))=Ch,k (s, t ).

次に s = t0 < t1 < ·· · < tN = t のときは,上のことから

N∑i=1

Ch,k (ti−1, ti )+ ∑1≤i< j≤N

h1(ti−1, ti )⊗k1(t j−1, t j )

=N∑

i=1Ch,k (ti−1, ti )+ ∑

1< j≤N

( ∑1≤i< j

h1(ti−1, ti ))⊗k1(t j−1, t j )

=N∑

i=1Ch,k (ti−1, ti )+ ∑

1< j≤Nh1(t0, t j−1)⊗k1(t j−1, t j )

=N∑

i=1Ch,k (ti−1, ti )+ ∑

1< j≤N

(Ch,k (t0, t j )−Ch,k (t0, t j−1)−Ch,k (t j−1, t j )

)=

N∑i=1

(Ch,k (ti−1, ti )+Ch,k (t0, ti )−Ch,k (t0, ti−1)−Ch,k (ti−1, ti )

)=Ch,k (t0, tN ) =Ch,k (s, t ).

補題 4.2. 2 ≤ q <∞とする.h, k ∈ Hd に対して

∥h1∥H ,1/q ≤ |h|H , (4.3)

∥Ch,k∥H ,2/q ≤ ∥h1∥H ,1/q

( q

q +2

)1/2|k|H . (4.4)

従って

dp(h, k

)≤ |h −k|H[

1+|h −k|H +3(|h|H ∧|k|H

)]. (4.5)

証明 (4.3)について.0 ≤ s < t ≤ 1に対して

|h1(s, t )| =∣∣∣∫t

sh(u)du

∣∣∣≤

∫t

s|h(u)|du

≤(∫t

sdu

)1/2(∫t

s|h(u)|2du

)1/2 [...⃝ Schwarzの不等式

]= (t − s)1/2

(∫t

s|h(u)|2du

)1/2

39

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であるから

∥h1∥H ,1/q = sup0≤s<t≤1

|h1(s, t )||t − s|1/q

≤ sup0≤s<t≤1

(t − s)12− 1

q

(∫t

s|h(u)|2du

)1/2

=(∫1

0|h(u)|2du

)1/2 = |h|H .

次に (4.4)について.0 ≤ s < t ≤ 1に対して

|Ch,k (s, t )| =∣∣∣∫t

s

(h(u)−h(s)

)⊗ k(u)du∣∣∣

≤∫t

s|h1(s, u)||k(u)|du

≤∫t

s∥h1∥H ,1/q(u − s)1/q |k(u)|du

≤ ∥h1∥H ,1/q

(∫t

s(u − s)2/q du

)1/2(∫t

s|k(u)|2du

)1/2

[...⃝ Schwarzの不等式

]= ∥h1∥H ,1/q

((t − s)

2q +1

2q +1

)1/2(∫t

s|k(u)|2du

)1/2

= ∥h1∥H ,1/q

( q

q +2

)1/2(t − s)

1q + 1

2

(∫t

s|k(u)|2du

)1/2

であるから

∥Ch,k∥H ,2/q = sup0≤s<t≤1

|Ch,k (s, t )||t − s|2/q

≤ ∥h1∥H ,1/q

( q

q +2

)1/2sup

0≤s<t≤1(t − s)

12− 1

q

(∫t

s|k(u)|2du

)1/2

= ∥h1∥H ,1/q

( q

q +2

)1/2|k|H .

最後に (4.5)を確かめる.(4.3)より

∥h1 −k1∥p = ∥(h −k)1∥p ≤ ∥(h −k)1∥H ,1/p ≤ |h −k|H .

次に補題 4.1(i)より

|h2(s, t )−k2(s, t )| = |Ch,h(s, t )−Ck,k (s, t )|≤ |Ch−k,h−k (s, t )|+2|Ch−k,k (s, t )|+ |k1(s, t )||h1(s, t )−k1(s, t )|

であるから,(4.3)と (4.4)より

∥h2 −k2∥H ,2/p ≤ ∥Ch−k,h−k∥H ,2/p +2∥Ch−k,k∥H ,2/p +∥k1∥H ,1/p∥h1 −k1∥H ,1/p

40

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≤ |h −k|2H +2|h −k|H |k|H +|k|H |h −k|H= |h −k|H

(|h −k|H +3|k|H).

よって

dp(h, k) = ∥h1 −k1∥p +∥h2 −k2∥p/2

≤ |h −k|H[1+|h −k|H +3|k|H

].

hと kの役割を入れ換えることにより (4.5)が従う.

Claim 4.1の証明 各 h ∈ Hd に対して h ∈GΩp(Rd )を示せばよい.h ∈ Hd を fixする.t < 0 or t > 1のときは h(t ) ≡ 0とおくことにより,hを R上の

Rd -値関数に拡張する.すると h ∈ L1(R)∩L2(R)で supp hは compactであるから,(例えば) hのmollifierを採ることにより

∃(h(n))∞n=1 ⊂C∞0 (R→Rd ) s.t. h(n) → h in L1 and L2 as n →∞.

h(n)(t ) =∫t

0h(n)(s)ds, t ∈R

とし,これから定まる rough pathを h(n)とする,即ち,

h(n)1 (s, t ) = h(n)(t )−h(n)(s),

h(n)2 (s, t ) =

∫t

s(h(n)(u)−h(n)(s))⊗dh(n)(u).

このとき h(n) ∈ SΩp(Rd )で,(4.5)より

dp(h, h

(n))≤√∫1

0|h(s)− h(n)(s)|2ds

×[

1+√∫1

0|h(s)− h(n)(s)|2ds +3

(√∫1

0|h(s)|2ds ∧

√∫1

0|h(n)(s)|2ds

)]→ 0 as n →∞.

これは h ∈GΩp(Rd )を云っている.

定理 4.1. (GΩp(Rd ), dp)は可分である.(よって (GΩp(Rd ), dp)は Polish空間となる.)

証明 これは,Cameron-Martin部分空間 (Hd , | |H )の可分性注8と (4.5)より明らかである.注8これはMalliavin解析の基本的事実として知られていることではあるが,もし気になるのであれば

172ページの Claim 8.1(ii)の証明の 1を参照せよ.

41

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定理 4.2. GΩp(Rd )は Ωp(Rd )より真に小さい空間である.

証明 これの証明は,思ったよりも手間が掛かる.次のような手順で示す:

1. まず,GΩp(Rd )と Ωp(Rd )の間に中間的な空間 WGΩp(Rd )を導入する (cf. 定義 4.4).

2. 次に,WGΩp(Rd ) における GΩp(Rd ) の元の characterization,換言すれば,WGΩp(Rd )の元がGΩp(Rd )に属するための criterionを与える (cf.定理 4.3).

3. 最後に,この criterionをみたさないWGΩp(Rd )の元の例を挙げる (cf.定理 4.4).

以上のことから定理 4.2の主張は従うのである注9.

小節 4.2で定理 4.3,小節 4.3で定理 4.4をそれぞれ提起し,その後で証明をする.

4.2. 定理 4.3 — Geometric rough pathであるための判定条件4.2.1. 定理の提起

次の定義から始める.

定義 4.4. Rough path x = (1, x1, x2) ∈ Ωp(Rd ) が次をみたすとき,x を w-geometric

rough pathという (ことにする)注10:

x i j2 (s, t )+ x j i

2 (s, t ) = x i1(s, t )x j

1(s, t ). (4.6)

w-geometric rough path全体をWGΩp(Rd )とかく.

Smooth rough pathは明らかに w-geometricである.Geometric rough pathの空間GΩp(Rd )は定義より smooth rough pathの空間の閉包,またWGΩp(Rd )はΩp(Rd )の閉集合である注11ので

GΩp(Rd ) ⊂ WGΩp(Rd ). (4.7)

Friz-Victoir [9]より,WGΩp(Rd )の元がGΩp(Rd )に属するための判定条件を与えることができる:

定理 4.3. x ∈ WGΩp(Rd )に対して,次の (a)と (b)は同値である:

(a) x ∈GΩp(Rd ),

(b) limδ0

sup

N−1∑i=0

(∥x1∥p

p,[ti ,ti+1] +∥x2∥p/2p/2,[ti ,ti+1]

);

0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1with max

0≤i≤N−1(ti+1 − ti ) ≤ δ

= 0.

この定理を [9]に従って証明する.“(a) ⇒ (b)”,そして “(b) ⇒ (a)”の順で示す.注985ページの小節 4.4において,この定理の別証について触れる.注10これは,このノートだけでの呼称であり,一般的でない.(4.7)より見当がつくと思うが,“w-"はweakとかwide senseの意味を表わしている.注11これは容易に分かる.

42

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4.2.2. “(a)⇒⇒⇒(b)”の証明

1 まず h ∈ Hd , 2 ≤ q <∞に対して

∥h1∥q,[s,t ] ≤ (t − s)1/2(∫t

s|hu |2du

)1/2,

∥h2∥q/2,[s,t ] ≤ 1

2(t − s)

∫t

s|hu |2du

である.何となれば

|h1(s, t )| = |∫t

shu du| ≤

∫t

s|hu |du ≤ (t − s)1/2

(∫t

s|hu |2du

)1/2,

|h2(s, t )| =∣∣∣∫t

sh1(s, u)⊗ hu du

∣∣∣≤∫t

s

(∫u

s|hv |dv

)|hu |du

=∫t

s

d

du

(1

2

(∫u

s|hv |dv

)2)du

= 1

2

(∫t

s|hv |dv

)2

≤ 1

2(t − s)

∫t

s|hv |2dv

より,[s, t ]の分割 s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して

N−1∑i=0

|h1(ti , ti+1)|q ≤N−1∑i=0

(ti+1 − ti )q/2(∫ti+1

ti

|hu |2du)q/2

=N−1∑i=0

(ti+1 − ti )(ti+1 − ti )q2 −1

(∫ti+1

ti

|hu |2du)q/2

≤ (t − s)q/2(∫t

s|hu |2du

)q/2,

N−1∑i=0

|h2(ti , ti+1)|q/2 ≤N−1∑i=0

(1

2

)q/2(ti+1 − ti )q/2(∫ti+1

ti

|hu |2du)q/2

≤ (1

2

)q/2(t − s)q/2(∫t

s|hu |2du

)q/2

となるからである.

2 1より,0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1 with max0≤i≤N−1

(ti+1 − ti ) ≤ δに対して

N−1∑i=0

(∥h1∥q

q,[ti ,ti+1] +∥h2∥q/2q/2,[ti ,ti+1]

)≤

N−1∑i=0

(ti+1 − ti )q/2

(∫ti+1

ti

|hu |2du)q/2 + (1

2

)q/2(ti+1 − ti )q/2(∫ti+1

ti

|hu |2du)q/2

43

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≤(1+ (1

2

)q/2)δ

q2 −1

(sup

λ(A)≤δ

∫A|hu |2du

)q/2 [ここで λは1次元ルベーグ測度

]となるので

limδ0

sup

N−1∑i=0

(∥h1∥q

q,[ti ,ti+1] +∥h2∥q/2q/2,[ti ,ti+1]

);

0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1

with max0≤i≤N−1

(ti+1 − ti ) ≤ δ

= 0, ∀h ∈ Hd .

3 さて x ∈GΩp(Rd )とする.定義より

∃(h(n))∞n=1 ⊂ Hd s.t. limn→∞∥xα−h

(n)α ∥p/α = 0, α= 1,2. (4.8)

0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対してN−1∑i=0

∥xα∥p/αp/α,[ti ,ti+1]

=N−1∑i=0

(∥xα−h

(n)α +h

(n)α ∥p/α,[ti ,ti+1]

)p/α

≤N−1∑i=0

(∥xα−h

(n)α ∥p/α,[ti ,ti+1] +∥h

(n)α ∥p/α,[ti ,ti+1]

)p/α

≤(N−1∑

i=0∥xα−h

(n)α ∥p/α

p/α,[ti ,ti+1]

)α/p +(N−1∑

i=0∥h

(n)α ∥p/α

p/α,[ti ,ti+1]

)α/pp/α

[...⃝ Minkowskiの不等式

]≤

∥xα−h

(n)α ∥p/α+

(N−1∑i=0

∥h(n)α ∥p/α

p/α,[ti ,ti+1]

)α/pp/α

[...⃝∥xα−h

(n)α ∥p/α

p/α,[·,∗]の優加法性]

≤ 2pα−1

∥xα−h

(n)α ∥p/α

p/α+N−1∑i=0

∥h(n)α ∥p/α

p/α,[ti ,ti+1]

[

...⃝ a, b ≥ 0に対して (a +b)p/α ≤ 2pα−1(ap/α+bp/α)]

と評価できるから

sup

N−1∑i=0

(∥x1∥p

p,[ti ,ti+1] +∥x2∥p/2p/2,[ti ,ti+1]

);

0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1

with max0≤i≤N−1

(ti+1 − ti ) ≤ δ

≤ 2p−1[∥x1 −h

(n)1 ∥p

p +∥x2 −h(n)2 ∥p/2

p/2

+ supN−1∑

i=0

(∥h(n)1 ∥p

p,[ti ,ti+1] +∥h(n)2 ∥p/2

p/2,[ti ,ti+1]

);

0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1with max

0≤i≤N−1(ti+1 − ti ) ≤ δ

].

44

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ここで 2より

第3項→ 0 as δ 0 for ∀n ∈N,

(4.8)より

第1項+第2項→ 0 as n →∞

であるから,“(a) ⇒ (b)”が分かる.

4.2.3. “(b)⇒⇒⇒(a)”の証明のための準備

“(b) ⇒ (a)”の証明は大変である.それなりの準備が要る.まず,表記を簡単にするため次を定義する:

定義 4.5. Control function ωと [s, t ]の分割 D[s,t ] = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t (0 ≤ s <t ≤ 1)に対して

V (ω,D[s,t ]) :=N−1∑i=0

ω(ti , ti+1)

と定義する.ωの優加法性より

V (ω,D[s,t ]) ≤ω(s, t )

に注意.

この定義より,条件 (b)は

limδ0

supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V(∥x1∥p

p,[·,∗] +∥x2∥p/2p/2,[·,∗],D

)= 0

と少しだけ簡単に表わすことができる.

Claim 4.2. ωは control function, D, D′は [0,1]の分割で D′は D の細分とする.このとき

V (ω,D′) ≤ V (ω,D).

証明 D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1, I = 0 ≤ i ≤ N −1; (ti , ti+1)∩D′ = ;とすると

V (ω,D′) =∑i∈I

V (ω, [ti , ti+1]∩D′)+ ∑i∈0,1,...,N−1\I

V (ω, ti , ti+1).

45

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ωの優加法性より

V (ω, [ti , ti+1]∩D′) ≤ω(ti , ti+1), i ∈ I

であるので

上式≤∑i∈I

ω(ti , ti+1)+ ∑i∈0,1,...,N−1\I

ω(ti , ti+1)

=N−1∑i=0

ω(ti , ti+1) = V (ω,D).

定義 4.6. Control function ω, 1 ≤ q <∞, [0,1]の分割D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対して,新たな control function ωq,D を次のように定義する: 0 ≤ s < t ≤ 1に対して

0 ≤ ∃i ≤ ∃ j ≤ N −1 s.t.ti ≤ s < ti+1,

t j < t ≤ t j+1

となるが,i = j のときは

ωq,D(s, t ) := ( t − s

ti+1 − ti

)qω(ti , ti+1),

i < j のときは,ti ≤ s < ti+1 ≤ t j < t ≤ t j+1に注意して

ωq,D(s, t ) :=ωq,D(s, ti+1)+ω(ti+1, t j )+ωq,D(t j , t ).

云うまでもないが

ωq,D(s, s) := 0

とする.

この ωq,D が control functionであることを確かめるのはた や す

容易い.

補題 4.3. Control function ωは次をみたすとする:

limδ0

supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V (ω,D) = 0.

このとき,1 ≤ q <∞と [0,1]の 2n 等分割Dn (i.e., Dn = k2n ; k = 0,1, . . . ,2n)に対して

limδ0

limn→∞ sup

D: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V (ωq,Dn ,D) = 0.

46

Page 55: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

証明 まず,簡単のため

g (δ) := supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V (ω,D),

gn(δ) := supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V (ωq,Dn ,D),

ωn :=ωq,Dn

とおく.D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1を [0,1]の分割とする.2つの caseに分けて考える.

Case 1 m(D) < 12n のとき.

このときは( k

2n , k+12n

)∩D = ; (k = 0,1, . . . ,2n −1)であるので

V (ωn ,D)

=N−1∑i=0

ωn(ti , ti+1)

=2n−2∑k=0

V

(ωn ,

[ k

2n,

k +1

2n

]∩D)+ωn

(max

([ k

2n,

k +1

2n

]∩D),min

([k +1

2n,

k +2

2n

]∩D))

+V(ωn ,

[2n −1

2n,

2n

2n

]∩D).

ここで

[ k

2n,

k +1

2n

]∩D = τ(k)

0 < τ(k)1 < ·· · < τ(k)

M(k)

(k = 0,1, . . . ,2n −1)

とすると

V(ωn ,

[ k

2n,

k +1

2n

]∩D)

=M−1∑i=0

ωn(τi ,τi+1)[簡単のためM = M (k), τi = τ(k)

i (i = 0,1, . . . ,M)]

=M−1∑i=0

(τi+1 −τi1

2n

)qω

( k

2n,

k +1

2n

) [...⃝ωn =ωq,Dn の定義より

],

ωn

(max

([ k

2n,

k +1

2n

]∩D),min

([k +1

2n,

k +2

2n

]∩D))

=ωn(τM ,τ′0)[簡単のため τM = τ(k)

M(k) , τ′0 = τ(k+1)

0

]=

( k+12n −τM

12n

)qω

( k

2n,

k +1

2n

)+ (τ′0 − k+12n

12n

)qω

(k +1

2n,

k +2

2n

)

47

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[...⃝ k

2n≤ τM ≤ k +1

2n≤ τ′0 ≤

k +2

2nと ωn =ωq,Dn の定義より

]であるから

V (ωn ,D)

=2n−1∑k=0

ω( k

2n,

k +1

2n

)M(k)−1∑i=0

(τ(k)i+1 −τ(k)

i1

2n

)q

+2n−2∑k=0

( k+12n −τ(k)

M(k)

12n

)qω

( k

2n,

k +1

2n

)+ (τ(k+1)0 − k+1

2n

12n

)qω

(k +1

2n,

k +2

2n

)

=ω( 0

2n,

1

2n

)M(0)∑i=0

(τ(0)i+1 −τ(0)

i1

2n

)q

+2n−2∑k=1

ω( k

2n,

k +1

2n

) M(k)∑i=−1

(τ(k)i+1 −τ(k)

i1

2n

)q

+ω(2n −1

2n,

2n

2n

)M(2n−1)−1∑i=−1

(τ(2n−1)i+1 −τ(2n−1)

i1

2n

)q

[ここで τ(k)

M(k)+1:= k +1

2n(0 ≤ k ≤ 2n −2), τ(k)

−1 := k

2n(1 ≤ k ≤ 2n −1)

]≤ω

( 0

2n,

1

2n

)(m(D)1

2n

)q−1 τ(0)M(0)+1

−τ(0)0

12n

+2n−2∑k=1

ω( k

2n,

k +1

2n

)(m(D)1

2n

)q−1 τ(k)M(k)+1

−τ(k)−1

12n

+ω(2n −1

2n,

2n

2n

)(m(D)1

2n

)q−1 τ(2n−1)M(2n−1) −τ(2n−1)

−1

12n

=(m(D)

12n

)q−1 2n−1∑k=0

ω( k

2n,

k +1

2n

)≤ V (ω,Dn)

≤ g( 1

2n

).

Case 2 m(D) ≥ 12n のとき.

I = 0 ≤ i ≤ 2n ; D ∩ [ i

2n , i+12n

) = ;とおく.0,2n ∈ I であるから #I ≥ 2. 各 i ∈ I に対

して

si := minD ∩ [ i

2n,

i +1

2n

)

48

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とする.s0 = 0, s2n = 1である.

I = 0 = i1 < ·· · < i#I = 2n,

D′ := 0 = si1 < ·· · < si#I = 1

とすると,D′は [0,1]の分割で,DはD′の細分.Claim 4.2より

V (ωn ,D) ≤ V (ωn ,D′) (4.9)

であるので V (ωn ,D′)の評価をすればよい.各 k ∈ 1, . . . ,#I −1に対して

D ∩ [ ik +1

2n,

ik+1

2n

)=;

に注意すれば

sik+1 − sik = sik+1 −maxD ∩ [ ik

2n,

ik +1

2n

)+maxD ∩ [ ik

2n,

ik +1

2n

)− sik

≤ m(D)+ 1

2n

≤ 2m(D)[

...⃝ m(D) ≥ 1

2nであるから

]なので

m(D′) = max1≤k≤#I−1

(sik+1 − sik

)≤ 2m(D).

また ik2n ≤ sik < ik+1

2n ≤ ik+12n ≤ sik+1 < ik+1+1

2n (k = 1, . . . ,#I −2), i#I−12n ≤ si#I−1 < i#I−1+1

2n ≤ i#I2n =

1 = si#I より

ik+1

2n− ik +1

2n< sik+1 − sik ≤ 2m(D) (k = 1, . . . ,#I −1), (4.10)

k = 1, . . . ,#I −2のときは

ωn(sik , sik+1

)=ωn(sik ,

ik +1

2n

)+ω( ik +1

2n,

ik+1

2n

)+ωn( ik+1

2n, sik+1

)=

( ik+12n − sik

12n

)qω

( ik

2n,

ik +1

2n

)+ω

( ik +1

2n,

ik+1

2n

)+ ( sik+1 − ik+12n

12n

)qω

( ik+1

2n,

ik+1 +1

2n

)≤ω

( ik

2n,

ik +1

2n

)+ω( ik +1

2n,

ik+1

2n

)+ω( ik+1

2n,

ik+1 +1

2n

),

49

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k = #I −1のときは

ωn(si#I−1 , si#I

)= ( si#I−1 − i#I−12n

12n

)qω

( i#I−1

2n,

i#I−1 +1

2n

)+ω

( i#I−1 +1

2n,

i#I

2n

)≤ω

( i#I−1

2n,

i#I−1 +1

2n

)+ω( i#I−1 +1

2n,

i#I

2n

).

よって

V (ωn ,D′) =#I−1∑k=1

ωn(sik , sik+1 )

≤#I−2∑k=1

( ik

2n,

ik +1

2n

)+ω( ik +1

2n,

ik+1

2n

)+ω( ik+1

2n,

ik+1 +1

2n

))+ω

( i#I−1

2n,

i#I−1 +1

2n

)+ω( i#I−1 +1

2n,

i#I

2n

)=

#I−1∑k=1

( ik

2n,

ik +1

2n

)+ω( ik +1

2n,

ik+1

2n

))+ #I−1∑k=2

ω( ik

2n,

ik +1

2n

)≤ 2V

(ω,

i1

2n,

i1 +1

2n,

i2

2n,

i2 +1

2n, . . . ,

i#I−1

2n,

i#I−1 +1

2n,

i#I

2n

)≤ 2g

(2m(D)

)

...⃝ (4.10)より

m( i1

2n,

i1 +1

2n,

i2

2n,

i2 +1

2n, . . . ,

i#I−1

2n,

i#I−1 +1

2n,

i#I

2n

)= max

1≤k≤#I−1

( ik +1

2n− ik

2n

)∨ ( ik+1

2n− ik +1

2n

)≤ 1

2n∨2m(D) = 2m(D)

.

さて,補題の主張を示す.δ> 0と n ∈Nに対して

gn(δ) = supm(D)≤δ

V (ωn ,D)

=(

supm(D)≤δ,

m(D)< 12n

V (ωn ,D))∨

(sup

m(D)≤δ,m(D)≥ 1

2n

V (ωn ,D))

≤ g( 1

2n

)∨ supm(D)≤δ

2g(2m(D)

)≤ g

( 1

2n

)∨2g (2δ).

50

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仮定より limη0

g (η) = 0であるから

limn→∞gn(δ) ≤ lim

n→∞

(g( 1

2n

)∨2g (2δ))= 2g (2δ) →

δ00.

定義 4.7. d ∈Nを2以上とし,

Rd+ d(d−1)2 =

(x i

x j k

); x i , x j k ∈R (1 ≤ i ≤ d, 1 ≤ j < k ≤ d)

とする.

(x i

x j k

)を xと表わし

x1 := (x i )

1≤i≤d ∈Rd ,

x2 := (x j k)

1≤ j<k≤d ∈Rd(d−1)

2

とする.Rd+ d(d−1)2 に群演算を次のように定義する:(

x i

x j k

)·(

y i

y j k

):=

(x i + y i

x j k + y j k + 12

(x j y k −xk y j

)).

“ ·”は確かに群演算であることが直ぐに確認できる.その際,(

0

0

)は単位元,

(−x i

−x j k

)は(

x i

x j k

)の逆元が分かる.Rd+ d(d−1)

2 の微分構造を通常のユークリッドのそれとするなら

ば,(Rd+ d(d−1)

2 , ·)はリー群となる.これのリー環,即ち,左不変なベクトル場全体のつくるリー環を gとすると

g= span

Vi , [V j ,Vk ] ; 1 ≤ i ≤ d, 1 ≤ j < k ≤ d

となる.ただし

Vα := ∂

∂xα+ 1

2

( ∑k<α

xk ∂

∂xkα− ∑

k>αxk ∂

∂xαk

)注12, α= 1, . . . , d. (4.11)

Rd+ d(d−1)2 を d-生成元,ステップ 2の自由ベキ零リー群という.

定義 4.8. x ∈ Rd+ d(d−1)2 , h ∈ Hd に対して,次の ODEの初期値問題の一意解を c(·, x; h)

と表わす: d

dtc(t ) =

d∑α=1

(c(t )

)hα(t ),

c(0) = x.

(4.12)

注12定義 1.2とか 4.2では,V は Banach空間を表わし,定義 4.5では control function ωの分割 D に対する変分 (variation)を V (ω,D)とした.そして今度はベクトル場を表わすのに V を用いる.混乱しないように注意して欲しい.

51

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これは,次の積分方程式と同じである:

c(t ) = x +d∑

α=1

∫t

0Vα

(c(s)

)hα(s)ds. (4.13)

が,実は,(4.11)よりこの方程式は解くことができ,c(·, x; h)は次のようになる: x =(

x i

x j k

)とすると

c(t , x; h) = x i +hi (t )

x j k + 1

2

∫t

0

((x j +h j (s))hk (s)− (xk +hk (s))h j (s)

)ds

. (4.14)

とくに,x = 0のときは

c(t ,0; h) = hi (t )

1

2

∫t

0

(h j (s)hk (s)−hk (s)h j (s)

)ds

. (4.15)

次の命題の証明については,[3], [14]を参照注13.

命題 4.1. (i) ∀x, y ∈Rd+ d(d−1)2 に対して

h ∈ Hd ; c(1, x; h) = y = ;.

(ii) ∀x ∈Rd+ d(d−1)2 , ∀δ> 0に対して

c(1, x; h) ; |h|H < δは xの近傍.

(iii) (i)より

ρ(x, y) := inf|h|H ; c(1, x; h) = y

, x, y ∈Rd+ d(d−1)

2 (4.16)

が定義できる.ρは Rd+ d(d−1)2 上の距離関数となる注14.(ii)より,ρにより誘導される

Rd+ d(d−1)2 の位相は,リー群

(Rd+ d(d−1)

2 , ·)の位相,即ち,Rd+ d(d−1)2 のユークリッドの位相

と一致する.さらに

c(1, x; h) = y , ρ(x, y) = |h|Hなる h ∈ Hd はいつでも ∫s

0|h(u)|2du = sρ(x, y)2, 0 ≤ s ≤ 1

注13(i), (ii)については Bismut [3], (iii)∼(v)については Kusuoka-Stroock [14]である.Bismutの証明は,このノートで採っている証明の程度 (質)からすると不十分であり,だから出来れば附録あたりでちゃんとした証明を書いた方がよいのだろうが,(今のところ)サボってしていません.注14ρを control距離という.

52

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をみたす (よって |h(s)| = ρ(x, y) a.e. s).(iv) ρは左不変な距離である.即ち,∀x, y , z ∈Rd+ d(d−1)

2 に対して

ρ(z · x, z · y) = ρ(x, y).

(v) a ∈R\ 0に対して,Rd+ d(d−1)2 上の変換 Sa を

Sa

(x i

x j k

):=

(ax i

a2x j k

)

により定義すると

ρ(Sa x,Sa y) = |a|ρ(x, y), x, y ∈Rd+ d(d−1)2 .

定義 4.9.

Ω(Rd ) :=

x = (x0, x1, x2) ∈C(→ T 2(Rd )

);

(o) x0 = 1,

(i)x1(s, t ) = x1(s, u)+x1(u, t ),

x2(s, t ) = x2(s, u)+x2(u, t )+ x1(s, u)⊗ x1(u, t )(0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1)

,

WGΩ(Rd ) :=

x ∈Ω(Rd ) ; x2(s, t )+ x∗2 (s, t ) = x1(s, t )⊗x1(s, t ) (0 ≤ s ≤ t ≤ 1)

,

Ω(Rd ) :=

x =(

x1

x2

)∈C

(→Rd+ d(d−1)2

); x(s, u) · x(u, t ) = x(s, t ) (0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1)

とおく注15.X : Ω(Rd ) → Ω(Rd )を

X (x) :=(

x i1

x j k2 − 1

2 x j1xk

1

), (4.17)

Y : Ω(Rd ) → WGΩ(Rd )を

Y (x)i1 := x i ,

Y (x) j k2 :=

x j k + 1

2x j xk , 1 ≤ j < k ≤ d,

1

2

(x j )2, j = k,

−xk j + 1

2xk x j , 1 ≤ k < j ≤ d

(4.18)

により定義する.X , Y が定義できることを確かめるのはた や す

容易い.注15Ω(Rd )の定義では d ≥ 2とする.[20]では,Ω(Rd )の元をmultiplicative functional (of degree 2)とよんでいる.このノートでは,この functional全体を Ω(Rd )と表わすことにした.temporaryな定義である.

53

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注意 4.1. (i) Ωp(Rd ) = x ∈Ω(Rd ) ; ∥x1∥p <∞, ∥x2∥p/2 <∞

,

WGΩp(Rd ) =x ∈ WGΩ(Rd ) ; ∥x1∥p <∞, ∥x2∥p/2 <∞

.

(ii) d = 1のときは

WGΩ(R1) =(

1, x(t )−x(s),1

2(x(t )−x(s))2) ; x ∈C ([0,1] →R)

,

WGΩp(R1) =(

1, x(t )−x(s),1

2(x(t )−x(s))2) ; x ∈C ([0,1] →R) with ∥x1∥p <∞

.

定義 4.10. 2 ≤ p < 3に対して

Ωp(Rd ) :=

x ∈ Ω(Rd ) ; ∥ρ(x(0, ·), x(0,∗)

)∥p <∞, i.e.,

supN−1∑

i=0ρ(x(0, ti ), x(0, ti+1)

)p ; 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1<∞

とおく.

Claim 4.3. d ≥ 2とする.

(i) ∃C1 ∈ (0,∞)

s.t.

∀x, y ∈Ω(Rd )に対して

ρ(X (x)(s, t ), X (y)(s, t )

)≤C1

[|x1(s, t )− y1(s, t )|∨ (|x2(s, t )− y2(s, t )|+ 1

2|x1(s, t )+ y1(s, t )||x1(s, t )− y1(s, t )|)1/2

], (s, t ) ∈.

(ii) ∃C2 ∈ (0,∞)

s.t.

∀x, y ∈ Ω(Rd )に対して

|Y (x)1(s, t )−Y (y)1(s, t )| ≤C2ρ(x(s, t ), y(s, t )

),

|Y (x)2(s, t )−Y (y)2(s, t )|≤C2ρ

(x(s, t ), y(s, t )

[2ρ

(x(s, t ), y(s, t )

)+ C2

2

[ρ(0, x(s, t )

)+ρ(0, y(s, t )

)]], (s, t ) ∈.

証明 まず,命題 4.1より,次のことに注意:C1 :=

(sup|x|≤1

ρ(0, x))×

√2p

5−1<∞,

C2 := sup|x| ; ρ(0, x) ≤ 1

<∞.

(4.19)

54

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(i) x, y ∈Ω(Rd )とする.簡単のため

a(s, t ) := |x1(s, t )− y1(s, t )|∨ (|x2(s, t )− y2(s, t )|+ 1

2|x1(s, t )+ y1(s, t )||x1(s, t )− y1(s, t )|)1/2, (s, t ) ∈

(4.20)

とおく.次のことに注意:

a(s, t ) ⇔ x(s, t ) = y(s, t ).

x = X (x), y = X (y)とすると,(4.17)より

x(s, t )−1 · y(s, t )

=(−x i (s, t )

−x j k (s, t )

)·(

y i (s, t )

y j k (s, t )

)

=(

−x i (s, t )+ y i (s, t )

−x j k (s, t )+ y j k (s, t )+ 12

(−x j (s, t )y k (s, t )+xk (s, t )y j (s, t )))

=

−x i

1(s, t )+ y i1(s, t )

− x j k2 (s, t )+ y j k

2 (s, t )+ 12

(x j

1(s, t )xk1 (s, t )− y j

1(s, t )y k1 (s, t )

)+ 1

2

(−x j1(s, t )y k

1 (s, t )+ xk1 (s, t )y j

1(s, t ))

=

( −x i1(s, t )+ y i

1(s, t )

−x j k2 (s, t )+ y j k

2 (s, t )+ 12

(x j

1(s, t )+ y j1(s, t )

)(xk

1 (s, t )− y k1 (s, t )

))

であるから( d∑i=1

((x(s, t )−1 · y(s, t ))i )2

)1/2 = |x1(s, t )− y1(s, t )| ≤ a(s, t ),

( ∑1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )) j k)2

)1/2

=( ∑

1≤ j<k≤d

(−x j k

2 (s, t )+ y j k2 (s, t )+ 1

2

(x j

1(s, t )+ y j1(s, t )

)(xk

1 (s, t )− y k1 (s, t )

))2)1/2

≤( ∑

1≤ j<k≤d

(x j k

2 (s, t )− y j k2 (s, t )

)2)1/2

+ 1

2

( ∑1≤ j<k≤d

(x j

1(s, t )+ y j1(s, t )

)2(xk1 (s, t )− y k

1 (s, t ))2

)1/2

[...⃝ Minkowskiの不等式

]≤ |x2(s, t )− y2(s, t )|+ 1

2|x1(s, t )+ y1(s, t )||x1(s, t )− y1(s, t )|

55

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≤ a(s, t )2.

今,a(s, t ) > 0とすると,上の評価より

∣∣∣S(√2p5−1

a(s,t ))−1 x(s, t )−1 · y(s, t )

∣∣∣2 =

∣∣∣∣∣∣∣t((

x(s, t )−1 · y(s, t ))i√

2p5−1

a(s, t ),

(x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k

2p5−1

a(s, t )2

)∣∣∣∣∣∣∣2

= 12p5−1

a(s, t )2

d∑i=1

((x(s, t )−1 · y(s, t ))i )2

+ 1( 2p5−1

)2a(s, t )4

∑1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )) j k)2

=p

5−1

2+

(p5−1

)2

4= 2

p5−2+6−2

p5

4= 1.

(4.19)より,これは

ρ

(0,S(√

2p5−1

a(s,t ))−1 x(s, t )−1 · y(s, t )

)≤

√p5−1

2C1

を implyするが,命題 4.1(v)と (iv)より

左辺=(√ 2p

5−1a(s, t )

)−1ρ(x(s, t ), y(s, t )

)であるので

ρ(x(s, t ), y(s, t )

)≤C1a(s, t )

という評価式が得られる.この不等式は明らかに a(s, t ) = 0のときも成り立つので (i)

が分かる.(ii) x, y ∈ Ω(Rd )とする.b(s, t ) = ρ

(x(s, t ), y(s, t )

)= ρ(0, x(s, t )−1 · y(s, t )

)> 0のときは

1 = 1

b(s, t )ρ(0, x(s, t )−1 · y(s, t )

)= ρ

(0,Sb(s,t )−1 x(s, t )−1 · y(s, t )

)であるから,(4.19)より

|Sb(s,t )−1 x(s, t )−1 · y(s, t )| ≤C2.

よって

d∑i=1

((x(s, t )−1 · y(s, t ))i )2 ≤C 2

2ρ(x(s, t ), y(s, t )

)2,

56

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∑1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )) j k)2 ≤C 2

2ρ(x(s, t ), y(s, t )

)4.

この不等式は ρ(x(s, t ), y(s, t )

)= 0のときも明らかに成り立つ.とくに,x = 0とすると

d∑i=1

(y(s, t )i )2 ≤C 2

2ρ(0, y(s, t )

)2,∑1≤ j<k≤d

(y(s, t ) j k)2 ≤C 2

2ρ(0, y(s, t )

)4.

簡単のため x = Y (x), y = Y (y)とする.(4.18)より

x(s, t )−1 · y(s, t )

=(

−x i (s, t )+ y i (s, t )

−x j k (s, t )+ y j k (s, t )+ 12

(−x j (s, t )y k (s, t )+xk (s, t )y j (s, t )))

=

−x i

1(s, t )+ y i1(s, t )

− x j k2 (s, t )+ y j k

2 (s, t )+ 12

(x j

1(s, t )xk1 (s, t )− y j

1(s, t )y k1 (s, t )

)+ 1

2

(−x j1(s, t )y k

1 (s, t )+ xk1 (s, t )y j

1(s, t ))

=

( −x i1(s, t )+ y i

1(s, t )

−x j k2 (s, t )+ y j k

2 (s, t )+ 12

(x j

1(s, t )+ y j1(s, t )

)(xk

1 (s, t )− y k1 (s, t )

))

であるから

|x1(s, t )− y1(s, t )| =( d∑

i=1

((x(s, t )−1 · y(s, t ))i )2

)1/2 ≤C2ρ(x(s, t ), y(s, t )

),

|x2(s, t )− y2(s, t )| =( d∑

j ,k=1

(x j k

2 (s, t )− y j k2 (s, t )

)2)1/2

=( ∑

1≤ j<k≤d

(x j k

2 (s, t )− y j k2 (s, t )

)2 +d∑

j=1

(x j j

2 (s, t )− y j j2 (s, t )

)2

+ ∑1≤ j<k≤d

(xk j

2 (s, t )− y k j2 (s, t )

)2)1/2

=( ∑

1≤ j<k≤d

(x j k

2 (s, t )− y j k2 (s, t )

)2 +d∑

j=1

(1

2

(x j

1(s, t )2 − y j1(s, t )2))2

+ ∑1≤ j<k≤d

(x j

1(s, t )xk1 (s, t )− x j k

2 (s, t )− y j1(s, t )y k

1 (s, t )+ y j k2 (s, t )

)2)1/2

= ∑

1≤ j<k≤d

[(x j k

2 (s, t )− y j k2 (s, t )

)2

+(x j

1(s, t )xk1 (s, t )− y j

1(s, t )y k1 (s, t )− (

x j k2 (s, t )− y j k

2 (s, t )))2]

57

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+d∑

j=1

1

4

(x j

1(s, t )2 − y j1(s, t )2

)21/2

= ∑

1≤ j<k≤d

[((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k

− 1

2

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)(xk (s, t )− y k (s, t )

))2

+((

x(s, t )−1 · y(s, t )) j k − 1

2

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)(xk (s, t )− y k (s, t )

)+ (

x j (s, t )− y j (s, t ))xk (s, t )+ y j (s, t )

(xk (s, t )− y k (s, t )

))2]+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2(x j (s, t )− y j (s, t ))2

1/2

= ∑

1≤ j<k≤d

[((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k

− 1

2

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)(xk (s, t )− y k (s, t )

))2

+((

x(s, t )−1 · y(s, t )) j k

+ 1

2

(x j (s, t )− y j (s, t )

)(xk (s, t )+ y k (s, t )

))2]+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2(x j (s, t )− y j (s, t ))2

1/2

=

2∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

+ ∑1≤ j<k≤d

(x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k[(

x j (s, t )− y j (s, t ))(

xk (s, t )+ y k (s, t ))

− (x j (s, t )+ y j (s, t )

)(xk (s, t )− y k (s, t )

)]+ 1

4

∑1≤ j<k≤d

[(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2(xk (s, t )− y k (s, t ))2

+ (x j (s, t )− y j (s, t )

)2(xk (s, t )+ y k (s, t ))2

]+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2(x j (s, t )− y j (s, t ))2

1/2

=

2∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

+ ∑1≤ j<k≤d

(x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k[(

x j (s, t )− y j (s, t ))(

xk (s, t )+ y k (s, t ))

− (x j (s, t )+ y j (s, t )

)(xk (s, t )− y k (s, t )

)]+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2d∑

k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)21/2

58

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2∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

+( ∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

)1/2

×[( ∑

1≤ j<k≤d

(x j (s, t )− y j (s, t )

)2(xk (s, t )+ y k (s, t ))2

)1/2

+( ∑

1≤ j<k≤d

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2(xk (s, t )− y k (s, t ))2

)1/2]

+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2d∑

k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)21/2

2∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

+2( ∑

1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2)1/2

×( d∑

j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2)1/2( d∑

k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)2)1/2

+ 1

4

d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2d∑

k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)21/2

≤ 2

( ∑1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

)1/2

+ 1

2

( d∑j=1

(x j (s, t )+ y j (s, t )

)2)1/2( d∑

k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)2)1/2

≤ 2

( ∑1≤ j<k≤d

((x(s, t )−1 · y(s, t )

) j k)2

)1/2

+ 1

2

(( d∑j=1

x j (s, t )2)1/2 +

( d∑j=1

y j (s, t )2)1/2

)( d∑k=1

(xk (s, t )− y k (s, t )

)2)1/2

≤ 2C2ρ(x(s, t ), y(s, t )

)2

+ 1

2C2

[ρ(0, x(s, t )

)+ρ(0, y(s, t )

)]C2ρ

(x(s, t ), y(s, t )

)=C2ρ

(x(s, t ), y(s, t )

)[2ρ

(x(s, t ), y(s, t )

)+ C2

2

[ρ(0, x(s, t )

)+ρ(0, y(s, t )

)]].

系 4.1. d ≥ 2とする.(i) x ∈Ωp(Rd )ならば X (x) ∈ Ωp(Rd ).

(ii) x ∈ Ωp(Rd )ならば Y (x) ∈ WGΩp(Rd ).

59

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証明 (i) x ∈Ωp(Rd )とする.

ω(s, t ) := ∥x1∥pp,[s,t ] +∥x2∥p/2

p/2,[s,t ], (s, t ) ∈ (4.21)

とおく.ωは control functionで |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p(4.22)

が成り立つ注16.Claim 4.3(i)において,y = (1,0,0)とすると

ρ(X (x)(0, s), X (x)(0, t )

)= ρ(X (x)(s, t ), X (1,0,0)(s, t )

)≤C1

[|x1(s, t )|∨ (|x2(s, t )|+ 1

2|x1(s, t )|2)1/2

]≤C1

(3

2

)1/2ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈

が成り立つ.よって,任意の 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対してN−1∑i=0

ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)p ≤(C1

(3

2

)1/2)p N−1∑

i=0ω(ti , ti+1)

≤(C1

(3

2

)1/2)pω(0,1)

となるので X (x) ∈ Ωp(Rd ).

(ii) x ∈ Ωp(Rd )とする.

ω(s, t ) :=

sup

N−1∑i=0

ρ(x(0, ti ), x(0, ti+1)

)p ; s = t0 < t1 < ·· · < tN = t

, if s < t ,

0, if s = t

とおくと,ωは control functionである (cf.命題 2.1).この定義より

ρ(0, x(s, t )

)= ρ(x(0, s), x(0, t )

)≤ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈.

Claim 4.3(ii)において,y = 0とすると

|Y (x)1(s, t )| ≤C2ρ(x(s, t ),0

)≤C2ω(s, t )1/p ,

|Y (x)2(s, t )| ≤C2(2+ C2

2

)ρ(x(s, t ),0

)2 ≤C2(2+ C2

2

)ω(s, t )2/p ,

よって,直ぐに

∥Y (x)1∥p <∞, ∥Y (x)2∥p/2 <∞が分かり,Y (x) ∈ WGΩp(Rd ).注16この ωを x ∈ Ωp(Rd )に付随する control functionという.これは (4.22) をみたす最小の controlfunctionである (ただし定数倍を除いて).

60

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Claim 4.4. d ≥ 2, h ∈ Hd とする.(s, t ) ∈に対して(i) X (h)(s, t ) = c(s,0; h)−1 · c(t ,0; h),

(ii) ρ(X (h)(0, s), X (h)(0, t )

)≤ (t − s)1/2(∫t

s|h(u)|2du

)1/2.

証明 (i) (4.15)より

c(t ,0; h) =(

hi (t )12

∫t0 h j (s)hk (s)ds − 1

2

[hk (s)h j (s)

]t0 + 1

2

∫t0 h j (s)hk (s)ds

) [...⃝部分積分

]

=(

hi1(0, t )

hj k2 (0, t )− 1

2 hj1(0, t )h

k1 (0, t )

)

= X (h)(0, t )[

...⃝ (4.17)]

であるから

c(s,0; h)−1 · c(t ,0; h) = X (h)(0, s)−1 · X (h)(0, t )

= X (h)(0, s)−1 · X (h)(0, s) · X (h)(s, t )

= X (h)(s, t ).

(ii) 0 ≤ s < t ≤ 1とする.(i)と (4.13)より,0 ≤ ∀r ≤ 1に対して

X (h)(0, s + (t − s)r

)= X (h)(0, s)+

d∑α=1

∫s+(t−s)r

sVα

(X (h)(0, u)

)hα(u)du

= X (h)(0, s)+d∑

α=1

∫r

0Vα

(X (h)(0, s + (t − s)v)

)(hα(s + (t − s)v)

)·dv[...⃝変数変換 v = u − s

t − s

]となるから

X (h)(0, s + (t − s)r

)= c(r, X (h)(0, s); h(s + (t − s)·)).

ρの定義 (cf. (4.16))より,これは次を implyする:

ρ(X (h)(0, s), X (h)(0, t )

)= ρ(X (h)(0, s), c

(1, X (h)(0, s); h(s + (t − s)·)))

≤ |h(s + (t − s)·)|H=

(∫1

0|h(s + (t − s)v)|2(t − s)2dv

)1/2

= (t − s)1/2(∫t

s|h(u)|2du

)1/2.

61

Page 70: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

補題 4.4. d ≥ 2とする.x ∈Ω(Rd )と [0,1]の分割 D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対して

∃hD ∈ Hd s.t.

各 i = 0,1, . . . ,N −1に対して

X (hD)(0, ti ) = X (x)(0, ti ),

|hD(t )| = ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

) 1

ti+1 − tia.e. on [ti , ti+1].

証明 命題 4.1(iii)により

∀i = 0,1, . . . ,N −1, ∃hi ∈ Hd s.t.

c(1, X (x)(0, ti ); hi

)= X (x)(0, ti+1),

ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)= |hi |H .

このとき

|hi (s)|H = ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)a.e. s

である.今,天下り的に hD ∈ Hd ,そして c ∈C ([0,1] →Rd+ d(d−1)

2 )を次のように定義する:

hD(t ) :=∫t

0

N−1∑i=0

1[ti ,ti+1)(s)(hi

( s − ti

ti+1 − ti

))·ds

=N−1∑i=0

∫(ti+1∧t )∨ti

ti

(hi

( s − ti

ti+1 − ti

))·ds

=N−1∑i=0

hi

( (ti+1 ∧ t )∨ ti − ti

ti+1 − ti

),

c(t ) := c( t − ti

ti+1 − ti, X (x)(0, ti ); hi

), ti ≤ t ≤ ti+1, i = 0,1, . . . ,N −1.

このとき c(t ) = c(t ,0; hD)である.何となれば,t ∈ [ti0 , ti0+1] (i0 = 0,1, . . . ,N −1)のとき

d∑α=1

∫t

0Vα

(c(s)

)hα

D(s)ds

=d∑

α=1

∫t

0Vα

(c(s)

)N−1∑i=0

1[ti ,ti+1)(s)(hα

i

( s − ti

ti+1 − ti

))·ds

=d∑

α=1

N−1∑i=0

∫(ti+1∧t )∨ti

ti

(c( s − ti

ti+1 − ti, X (x)(0, ti ); hi

))hα

i

( s − ti

ti+1 − ti

) ds

ti+1 − ti

=N−1∑i=0

d∑α=1

∫ (ti+1∧t )∨ti −titi+1−ti

0Vα

(c(σ, X (x)(0, ti ); hi

))hα

i (σ)dσ[...⃝変数変換 σ= s − ti

ti+1 − ti

]62

Page 71: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

=N−1∑i=0

(c( (ti+1 ∧ t )∨ ti − ti

ti+1 − ti, X (x)(0, ti ); hi

)− X (x)(0, ti )

)

=i0−1∑i=0

(c(1, X (x)(0, ti ); hi

)− X (x)(0, ti ))+ c

( t − ti0

ti0+1 − ti0

, X (x)(0, ti0 ); hi0

)− X (x)(0, ti0 )

=i0−1∑i=0

(X (x)(0, ti+1)− X (x)(0, ti )

)− X (x)(0, ti0 )+ c(t )

= c(t )

となるからである.よって,Claim 4.4より

X (hD)(0, ti ) = c(ti ,0; hD)

= c(ti )

= c(0, X (x)(0, ti ); hi

)= X (x)(0, ti ),

また,hD の定義より,[ti , ti+1]上では

|hD(t )| =∣∣∣hi

( t − ti

ti+1 − ti

) 1

ti+1 − ti

∣∣∣= ρ

(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

) 1

ti+1 − tia.e.

4.2.4. d ≥ 2d ≥ 2d ≥ 2の場合の “(b)⇒⇒⇒(a)”の証明

x ∈ WGΩp(Rd )は条件 (b), i.e.,

limδ0

g (δ) = limδ0

supD: [0,1] の分割with m(D) ≤ δ

V (ω,D) = 0

をみたすとする.ここで,ωは x に付随する control function,即ち,(4.21)により定義される control functionである.

1 Claim 4.3(i)より

ρ(X (x)(0, s), X (x)(0, t )

)≤C ′1ω(s, t )1/p , (s, t ) ∈.

ここでC ′1 =C1

(32

)1/2.

2 [0,1]の分割 Dに対して,定義 4.6より,control function ωp,D を定義する.hD を補題 4.4で存在が保証された Cameron-Martin部分空間の元とすると,Claim 4.4より

ρ(X (hD)(0, s), X (hD)(0, t )

)≤ (t − s)1/2(∫t

s|hD(u)|2du

)1/2, (s, t ) ∈.

63

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今,D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1とする.補題 4.4より

|hD(u)| = ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

) 1

ti+1 − tia.e. on [ti , ti+1]

であるから,ti ≤ s < t ≤ ti+1 (i = 0,1, . . . ,N −1)に対して

ρ(X (hD)(0, s), X (hD)(0, t )

)≤

((t − s)

∫t

sρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)2 du

(ti+1 − ti )2

)1/2

= ( t − s

ti+1 − ti

)ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)≤ ( t − s

ti+1 − ti

)C ′

1ω(ti , ti+1)1/p[

...⃝ 1より]

=C ′1

(( t − s

ti+1 − ti

)pω(ti , ti+1)

)1/p

=C ′1ωp,D(s, t )1/p

[...⃝ωp,D の定義より

].

ti ≤ s ≤ ti+1 ≤ t j ≤ t ≤ t j+1 (0 ≤ i < j ≤ N −1)のときは

ρ(X (hD)(0, s), X (hD)(0, t )

)≤ ρ

(X (hD)(0, s), X (hD)(0, ti+1)

)+ρ(X (hD)(0, ti+1), X (hD)(0, t j )

)+ρ

(X (hD)(0, t j ), X (hD)(0, t )

) [...⃝三角不等式

]≤C ′

1ωp,D(s, ti+1)1/p +C ′1ω(ti+1, t j )1/p +C ′

1ωp,D(t j , t )1/p

≤C ′131− 1

p

(ωp,D(s, ti+1)+ω(ti+1, t j )+ωp,D(t j , t )

)1/p

[...⃝ a, b, c ≥ 0に対して a +b + c ≤ 3p−1(ap +bp + cp)1/p

]=C ′

131− 1p ωp,D(s, t )1/p

[...⃝ωp,D の定義より

].

以上をまとめると

ρ(X (hD)(0, s), X (hD)(0, t )

)≤C ′131− 1

p ωp,D(s, t )1/p , (s, t ) ∈.

3補題 4.4より,X (hD)(0, ti ) = X (x)(0, ti ) (i = 0,1, . . . ,N −1)であることに注意すると,ti ≤ t ≤ ti+1 (i = 0,1, . . . ,N −1)に対して

ρ(X (x)(0, t ), X (hD)(0, t )

)≤ ρ

(X (x)(0, t ), X (x)(0, ti )

)+ρ(X (hD)(0, ti ), X (hD)(0, t )

) [...⃝三角不等式

]≤C ′

1ω(ti , t )1/p +C ′1ωp,D(ti , t )1/p

[...⃝ 1と 2より

]64

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≤ 2C ′1ω(ti , ti+1)1/p .

よって

max0≤t≤1

ρ(X (x)(0, t ), X (hD)(0, t )

)≤ 2C ′1

(max

(u,v)∈;|u−v|≤m(D)

ω(u, v))1/p

.

4さて,Dn を [0,1]の 2n 等分割とする.補題 4.3より

limδ0

limn→∞gn(δ) = 0.

ここで

gn(δ) := supD: [0,1] の分割with m(D) ≤ δ

V (ωp,Dn ,D).

3より

max0≤t≤1

ρ(X (x)(0, t ), X (hDn )(0, t )

)≤ 2C ′1

(max

(u,v)∈;|u−v|≤ 1

2n

ω(u, v))1/p → 0 as n →∞

であるから

X (hDn )(0, ·) ⇒ X (x)(0, ·) in ρ as n →∞,

これは

X (hDn )(·,∗) ⇒ X (x)(·,∗) in ρ as n →∞

を implyする.[0,1]の分割 D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1と δ> 0に対して

N−1∑i=1

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p = ∑0≤i≤N−1;ti+1−ti>δ

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p

+ ∑0≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p

=:第1項+第2項.

1と 2より

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p

65

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≤(ρ(X (x)(ti , ti+1),0

)+ρ(0, X (hDn )(ti , ti+1)

))p [...⃝三角不等式

]=

(ρ(X (x)(0, ti ), X (x)(0, ti+1)

)+ρ(X (hDn )(0, ti ), X (hDn )(0, ti+1)

))p

[...⃝ y ∈Ω(Rd )に対して X (y)(ti , ti+1) = X (y)(0, ti )−1 · X (y)(0, ti+1).そして命題 4.1(iv)

]≤

(C ′

1ω(ti , ti+1)1/p +C ′131− 1

p ωp,Dn (ti , ti+1)1/p)p

≤ (C ′

1

)p(2p−1ω(ti , ti+1)+6p−1ωp,Dn (ti , ti+1)

)であるから

第2項≤ (C ′

1

)p2p−1∑

0≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

ω(ti , ti+1)+ (C ′

1

)p6p−1∑

0≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

ωp,Dn (ti , ti+1)

≤ (C ′

1

)p2p−1g (δ)+ (C ′

1

)p6p−1gn(δ).

第1項については ∑0≤i≤N−1;ti+1−ti>δ

1 ≤ ∑0≤i≤N−1;ti+1−ti>δ

ti+1 − ti

δ≤ 1

δ

に注意して

第1項≤ 1

δ

(max

(u,v)∈ρ(X (x)(u, v), X (hDn )(u, v)

))p.

この2つの評価より

sup

N−1∑i=1

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p ; 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1

≤ 1

δ

(max

(u,v)∈ρ(X (x)(u, v), X (hDn )(u, v)

))p + (C ′

1

)p2p−1g (δ)+ (C ′

1

)p6p−1gn(δ).

最後に n →∞,その後で δ 0とすることにより∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥p→ 0 as n →∞

が分かる.

5まず Claim 4.3(ii)より

|x1(s, t )− (hDn )1(s, t )| ≤C2ρ(X (x)(s, t ), X (hDn )(s, t )

),

|x2(s, t )− (hDn )2(s, t )|≤ 2C2ρ

(X (x)(s, t ), X (hDn )(s, t )

)2

66

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+ C 22

2ρ(X (x)(s, t ), X (hDn )(s, t )

[ρ(X (x)(0, s), X (x)(0, t )

)+ρ(X (hDn )(0, s), X (hDn )(0, t )

)]≤ 2C2ρ

(X (x)(s, t ), X (hDn )(s, t )

)2

+ C 22C ′

1

2ρ(X (x)(s, t ), X (hDn )(s, t )

)[ω(s, t )1/p +31− 1

p ωp,Dn (s, t )1/p]

[...⃝ 1と 2より

]となるので,任意の [0,1]の分割 D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1に対して

(N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)− (hDn )1(ti , ti+1)|p)1/p

≤C2

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p)1/p

≤C2

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥p

,

(N−1∑i=0

|x2(ti , ti+1)− (hDn )2(ti , ti+1)|p/2)2/p

≤N−1∑

i=0

(2C2ρ

(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)2

+ C 22C ′

1

2ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

[ω(ti , ti+1)1/p +31− 1

p ωp,Dn (ti , ti+1)1/p])p/2

2/p

≤ 2C2

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p)2/p

+ C 22C ′

1

2

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p/2ω(ti , ti+1)1/2

)2/p

+ C 22C ′

1

231− 1

p

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p/2ωp,Dn (ti , ti+1)1/2

)2/p

≤ 2C2

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥2

p

+ C 22C ′

1

2

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p)1/p(N−1∑

i=0ω(ti , ti+1)

)1/p

+ C 22C ′

1

231− 1

p

(N−1∑i=0

ρ(X (x)(ti , ti+1), X (hDn )(ti , ti+1)

)p)1/p(N−1∑

i=0ωp,Dn (ti , ti+1)

)1/p

≤ 2C2

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥2

p

67

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+ C 22C ′

1

2

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥pω(0,1)1/p

+ C 22C ′

1

231− 1

p

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥pωp,Dn (0,1)1/p

≤ 2C2

∥∥∥ρ(X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗)

)∥∥∥2

p

+ C 22C ′

1

2

(1+31− 1

p)∥∥∥ρ(

X (x)(·,∗), X (hDn )(·,∗))∥∥∥

pω(0,1)1/p .

よって 4より

dp(x, hDn

)= ∥x1 − (hDn )1∥p +∥x2 − (hDn )2∥p/2 → 0 as n →∞.

これは x ∈GΩp(Rd )を云っている.

4.2.5. d = 1d = 1d = 1の場合の “(b)⇒⇒⇒(a)”の証明

次の関数空間を用意する:

定義 4.11. q ≥ 1, 0 < θ≤ 1に対して,

Cq(V ) = x : [0,1] → V ; x は連続, ∥x1∥q <∞かつ x(0) = 0

, (4.23)

CH ,θ(V ) = x : [0,1] → V ; ∥x1∥H ,θ <∞かつ x(0) = 0

(4.24)

と定義する.(Cq(V ),∥ ∥q), (CH ,θ(V ),∥ ∥H ,θ)はそれぞれ Banach空間になる.

注意 4.1(ii)より

WGΩp(R1) =(

1, x(t )−x(s),1

2(x(t )−x(s))2) ; x ∈Cp(R)

であるから,d = 1の場合の “(b) ⇒ (a)”は,次の claimを証明することで解決する:

Claim 4.5. 1 < q <∞とする.x ∈Cq(R)は次をみたすとする:

limδ0

supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V(∥x1∥q

q,[·,∗],D) = 0.

各 n ∈Nに対して,x(n)を x の2進折れ線近似,即ち,x(n)を

x(n)(t ) := (1− 2n t

)x(⌊2n t⌋

2n

)+ 2n t x(⌊2n t⌋+1

2n

), 0 ≤ t ≤ 1 (4.25)

により定義すると,(x(n)

)∞n=1 は区分的にC 1 級の関数列で

limn→∞∥x1 − x(n)1∥q = 0.

68

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証明 簡単のため ω(s, t ) = ∥x1∥qq,[s,t ] とおく.Dn を [0,1]の 2n 等分割とする.

g (δ) := supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V(ω,D),

gn(δ) := supD: [0,1]の分割with m(D) ≤ δ

V(ωq,Dn ,D)

とおくと,補題 4.3より

limδ0

limn→∞gn(δ) = 0

である.

1 |x(n)1(s, t )| ≤ 31− 1q ωq,Dn (s, t )1/q , (s, t ) ∈.

...⃝ 0 ≤ s < t ≤ 1としてよい.

0 ≤ ∃k ≤ ∃l ≤ 1 s.t.

k

2n≤ s < k +1

2n,

l

2n< t ≤ l +1

2n.

2つの caseに分ける:

Case 1 k < l のとき.

(4.25)より

x(n)1(s, t ) = x(n)(t )−x(n)(s)

= (2n t − l

)x( l +1

2n

)+ (l +1−2n t

)x( l

2n

)− (

2n s −k)x(k +1

2n

)− (k +1−2n s

)x( k

2n

)= (

k +1−2n s)(

x(k +1

2n

)−x( k

2n

))+x( l

2n

)−x(k +1

2n

)+ (

2n t − l)(

x( l +1

2n

)−x( l

2n

))= (

k +1−2n s)x1

( k

2n,

k +1

2n

)+ x1(k +1

2n,

l

2n

)+ (2n t − l

)x1

( l

2n,

l +1

2n

)であるから

|x(n)1(s, t )| ≤ (k +1−2n s

)|x1( k

2n,

k +1

2n

)|+ |x1(k +1

2n,

l

2n

)|+ (2n t − l

)|x1( l

2n,

l +1

2n

)|≤

k+12n − s

12n

ω( k

2n,

k +1

2n

)1/q +ω(k +1

2n,

l

2n

)1/q + t − l2n

12n

ω( l

2n,

l +1

2n

)1/q

69

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=ωq,Dn

(s,

k +1

2n

)1/q +ω(k +1

2n,

l

2n

)1/q +ωq,Dn

( l

2n, t

)1/q

≤ 31− 1q

(ωq,Dn

(s,

k +1

2n

)+ω(k +1

2n,

l

2n

)+ωq,Dn

( l

2n, t

))1/q

= 31− 1q ωq,Dn

(s, t )1/q .

Case 2 k = l のとき.

このときは

x(n)1(s, t ) = (2n t −k

)x(k +1

2n

)+ (k +1−2n t

)x( k

2n

)− (

2n s −k)x(k +1

2n

)− (k +1−2n s

)x( k

2n

)= (

2n t −2n s)(

x(k +1

2n

)−x( k

2n

))= t − s

12n

x1( k

2n,

k +1

2n

)となるから

|x(n)1(s, t )| = t − s1

2n

|x1( k

2n,

k +1

2n

)|≤ t − s

12n

ω( k

2n,

k +1

2n

)1/q

=ωq,Dn (s, t )1/q .

2 明らかに

|x1(s, t )−x(n)1(s, t )| ≤ 2∥x −x(n)∥∞, (s, t ) ∈.

そして limn→∞∥x −x(n)∥∞ = 0.

3 [0,1]の分割 D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1と δ> 0に対して

N−1∑i=0

|x1(ti , ti+1)− x(n)1(ti , ti+1)|q

= ∑1≤i≤N−1;ti+1−ti>δ

|x1(ti , ti+1)− x(n)1(ti , ti+1)|q + ∑1≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

|x1(ti , ti+1)− x(n)1(ti , ti+1)|q

≤( ∑

1≤i≤N−1;ti+1−ti>δ

1)2q∥x −x(n)∥q

+( ∑

1≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

|x1(ti , ti+1)|q)1/q +

( ∑1≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

|x(n)1(ti , ti+1)|q)1/q

q

70

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[...⃝ 2,そしてMinkowskiの不等式

]≤ 2q

δ∥x −x(n)∥q

+( ∑

1≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

ω(ti , ti+1))1/q +31− 1

q

( ∑1≤i≤N−1;ti+1−ti≤δ

ωq,Dn (ti , ti+1))1/q

q [...⃝ 1より

]

≤ 2q

δ∥x −x(n)∥q

∞+(g (δ)1/q +31− 1

q gn(δ)1/q)q

.

よって

limn→∞∥x1 −x(n)1∥q ≤ lim

n→∞

(δ−1/q 2∥x −x(n)∥∞+ g (δ)1/q +31− 1

q gn(δ)1/q)

≤ g (δ)1/q → 0 as δ 0.

4.3. 定理 4.4 — Geometric rough pathでない例4.3.1. 定理の提起

やっと定理 4.3の証明が完了した.次はこの定理の条件 (b)をみたさないw-geometric

rough pathを呈示することである.まず,次の命題から始める.

命題 4.2. 2 ≤ p < 3とする.φ ∈Cp/2(Rd ⊗Rd ), x ∈Ωp(Rd )に対して

xφ(s, t ) = (1, x1(s, t ), x2(s, t )+φ(t )−φ(s)) (4.26)

とした xφ は roughness p の rough path である.さらに,φ が歪対称 (i.e., φi j (t ) =−φ j i (t ))で,x ∈ WGΩp(Rd )ならば,xφ ∈ WGΩp(Rd ). とくに (1,0,0) ∈ WGΩp(Rd )であるから (

1,0,φ(t )−φ(s)) ∈ WGΩp(Rd ).

この命題の証明は容易である (ので省略する).命題 4.2より,∀ϕ ∈Cp/2(R)に対して

xϕ := (1,0,ϕ1(e1 ⊗ e2 − e2 ⊗ e1)

) ∈ WGΩp(Rd ),

そして

∥(xϕ)1∥pp,[s,t ] +∥(xϕ)2∥

p/2p/2,[s,t ] = (

p2)p/2∥ϕ1∥p/2

p/2,[s,t ]

である.よって,我々の問題は次の定理を証明することにより解決する:

71

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定理 4.4. 1 ≤ ∀q <∞に対して∃ f ∈Cq(R) s.t. lim

k→∞V

(∥ f ∥qq,[·,∗],Dk

)> 0.

ここでDk は [0,1]の 2k 等分割である.なお,簡単のためϕ ∈Cq(R)に対して ∥ϕ1∥q,[s,t ],

∥ϕ1∥q を ∥ϕ∥q,[s,t ], ∥ϕ∥q とかくことにする.

注意 4.2. (i) Claim 4.2より,∀ϕ ∈Cq(R)に対して V(∥ϕ∥q

q,[·,∗],Dk)は kについて単調減

少,よって limk→∞

V(∥ϕ∥q

q,[·,∗],Dk)は存在する.

(ii) q = 1のときは,∀ϕ ∈C1(R)に対して

∥ϕ∥1,[s,t ] = ∥ϕ∥1,[s,u] +∥ϕ∥1,[u,t ], 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1

であるから

V(∥ϕ∥1,[·,∗],D

)= ∥ϕ∥1, ∀D: [0,1]の分割.

このことから q = 1のときの定理の主張は明らかである.

4.3.2. 定理の証明のための準備

この定理を Bruneau ([4]の Appendix III注17)に従って証明する.以下,1 < q <∞とする.

Claim 4.6. c > 0とする.ψ ∈C (R→R)は次をみたすとする:

(a) ψは偶関数,i.e., ψ(−t ) =ψ(t ),

(b) ψは周期 c の関数,i.e., ψ(t + c) =ψ(t ).

もし ∥ψ∥q,[0,c] <∞ならば次が成り立つ:

(i) −∞< ∀α< ∀β<∞に対して ∥ψ∥q,[α,β] <∞.

(ii) ∀n, m ∈Z, n < m に対して

∥ψ∥qq,[nc,mc] = (m −n)∥ψ∥q

q,[0,c].

(iii) 0 ≤σ< τ≤ c に対して

∥ψ∥qq,[σ,τ] = (m −n)∥ψ∥q

q,[c−τ,c−σ].

とくに τ= c2 のときは

∥ψ∥qq,[σ, c

2 ]= ∥ψ∥q

q,[ c2 ,c−σ]

= 1

2∥ψ∥q

q,[σ,c−τ].

注17[4]はフランス語で書かれているので,正確には Annexe III.

72

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証明 (i)まず,次のことに注意: γ ∈R, −∞< u < v <∞に対して

∥g∥qq,[u+γ,v+γ]

= supN−1∑

i=0|g (ti+1)− g (ti )|q ; u +γ= t0 < t1 < ·· · < tN = v +γ

= sup

N−1∑i=0

|g (ti+1 −γ+γ)− g (ti −γ+γ)|q ; u +γ= t0 < t1 < ·· · < tN = v +γ

= supN−1∑

i=0|g (ti+1 +γ)− g (ti +γ)|q ; u = t0 < t1 < ·· · < tN = v

= ∥g (·+γ)∥q

q,[u,v]. (4.27)

仮定 (b)より ψ(·+γ) =ψ(·)であるから,この注意より

∥ψ∥qq,[u+c,v+c] = ∥ψ∥q

q,[u,v]. (4.28)

n, m ∈Z with n < mに対して

∥ψ∥qq,[nc,mc] ≤ (m −n)∥ψ∥q

q,[0,c]

を示す.(4.28)より

∥ψ∥qq,[nc,mc] = ∥ψ∥q

q,[0,(m−n)c]

であることに注意.簡単のため l = m −n (∈N)とする.0 = t0 < t1 < ·· · < tN = lcを[0, lc]の分割する.k = 1, . . . , l −1に対して

0 ≤ ∃ik ≤ N −1 s.t. tik ≤ kc < tik+1.

0 ≤ i1 ≤ i2 ≤ ·· · ≤ il−1 ≤ N −1, 2kc − tik ≥ kc > 2kc − tik+1 である.仮定 (a)と (b)より

ψ( j c − t ) =ψ(t − j c) =ψ(t ) ( j ∈Z, t ∈R) (4.29)

に注意すると

N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

=l∑

j=1

∑i j−1<i≤i j

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q[ここで i0 :=−1, il := N

]

=l∑

j=1

∑i j−1<i<i j

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q +|ψ(ti j+1)−ψ(ti j )|q

73

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=l−1∑j=1

∑i j−1<i<i j

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

+1ti j +ti j +1≤2 j c |ψ(2 j c − ti j+1)−ψ(ti j )|q

+1ti j +ti j +1>2 j c |ψ(ti j+1)−ψ(2 j c − ti j )|q

+ ∑il−1<i≤N

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

= ∑0≤i<i1

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q +1ti1+ti1+1≤2c |ψ(2c − ti1+1)−ψ(ti1 )|q

+l−1∑j=2

(1ti j−1+ti j−1+1>2( j−1)c |ψ(ti j−1+1)−ψ(2( j −1)c − ti j−1 )|q

+ ∑i j−1<i<i j

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

+1ti j +ti j +1≤2 j c |ψ(2 j c − ti j+1)−ψ(ti j )|q)

+1til−1+til−1+1>2(l−1)c |ψ(til−1+1)−ψ(2(l −1)c − til−1 )|q + ∑

il−1<i≤N|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

≤ ∥ψ∥qq,[0,c] +

l−1∑j=2

∥ψ∥qq,[( j−1)c, j c] +∥ψ∥q

q,[(l−1)c,lc]

= ∥ψ∥qq,[0,c] +

l−1∑j=2

∥ψ∥qq,[0,c] +∥ψ∥q

q,[0,c]

= l∥ψ∥qq,[0,c].

よって

∥ψ∥qq,[0,lc] ≤ l∥ψ∥q

q,[0,c].

(ii) (i)より

(s, t ) ; −∞< s ≤ t <∞ ∋ (s, t ) 7→ ∥ψ∥qq,[s,t ] ∈ [0,∞)

は優加法的であるから

∥ψ∥qq,[nc,mc] ≥

m−1∑k=n

∥ψ∥qq,[kc,(k+1)c]

=m−1∑k=n

∥ψ∥qq,[0,c] = (m −n)∥ψ∥q

q,[0,c].

これと (i)を合わせれば (ii)の主張が従う.(iii)まず (4.29)より 0 ≤σ< τ≤ c に対して

∥ψ∥qq,[σ,τ] = sup

N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q ; σ= t0 < t1 < ·· · < tN = τ

74

Page 83: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

= supN−1∑

i=0|ψ(c − ti+1)−ψ(c − ti )|q ; σ= t0 < t1 < ·· · tN = τ

= sup

N−1∑j=0

|ψ(c − tN− j−1)−ψ(c − tN− j )|q ; σ= t0 < t1 < ·· · < tN = τ

= supN−1∑

j=0|ψ(t j+1)−ψ(t j )|q ; c −τ= t0 < t1 < ·· · < tN = c −σ

= ∥ψ∥q

q,[c−τ,c−σ].

τ= c2 のときは,優加法性より

∥ψ∥qq,[σ, c

2 ]+∥ψ∥q

q,[ c2 ,c−σ]

≤ ∥ψ∥qq,[σ,c−σ]

であるから,(iii)の主張のためには

∥ψ∥qq,[σ, c

2 ]+∥ψ∥q

q,[ c2 ,c−σ]

≥ ∥ψ∥qq,[σ,c−σ]

を確かめればよい.今,σ= t0 < t1 < ·· · < tN = c −σを [σ, c −σ]の分割とする.0 ≤ i0 ≤ N −1を ti0 ≤ c

2 <ti0+1 なるものとすると

N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

=i0−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q +|ψ(ti0+1)−ψ(ti0 )|q +N−1∑

i=i0+1|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

=i0−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q +1ti0+ti0+1≤c |ψ(c − ti0+1)−ψ(ti0 )|q

+1ti0+ti0+1>c |ψ(ti0+1)−ψ(c − ti0 )|q +N−1∑

i=i0+1|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

[...⃝ (4.29)より

].

ここで c − ti0+1 < c2 ≤ c − ti0 に注意すれば

最右辺の第1項+第2項≤ ∥ψ∥qq,[σ, c

2 ],

最右辺の第3項+第4項≤ ∥ψ∥qq,[ c

2 ,c−σ]

となるから

∥ψ∥qq,[σ,c−σ] ≤ ∥ψ∥q

q,[σ, c2 ]+∥ψ∥q

q,[ c2 ,c−σ]

.

75

Page 84: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

Claim 4.7. c > 0とする.ψは Claim 4.6にある関数とする.ϕ ∈C ([0, c] →R)は次をみたすとする:

(a) ϕ(c − t ) =−ϕ(t ), 0 ≤ t ≤ c.

(b) ∥ϕ∥q,[0,c] <∞.

このとき次が成り立つ:

(i) ∥ψ+ϕ∥qq,[σ,c−σ] ≥ ∥ψ∥q

q,[σ,c−σ] (0 ≤σ< c2 ).

(ii) [0, c] の分割 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = c が c2 に関して対称,即ち,ti + tN−i = c

(0 ≤ i ≤ N)をみたすならば

N−1∑i=0

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1] ≥

N−1∑i=0

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1].

証明 c2 ≤ u < v ≤ c とする.u = t0 < t1 < ·· · < tN = vを [u, v]の任意の分割とする.こ

のとき c −v = c − tN < c − tN−1 < ·· · < c − t1 < c − t0 = c −uは [c −v, c −u]の分割である.不等式 (a +b

2

)q ≤ aq +bq

2, a, b ≥ 0

より

2N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )|q

=N−1∑i=0

2

∣∣∣∣ψ(ti+1)−ψ(ti )+ϕ(ti+1)−ϕ(ti )

2+ ψ(ti+1)−ψ(ti )− (

ϕ(ti+1)−ϕ(ti ))

2

∣∣∣∣q

≤N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )+ϕ(ti+1)−ϕ(ti )|q

+N−1∑i=0

|ψ(ti+1)−ψ(ti )− (ϕ(ti+1)−ϕ(ti )

)|q=

N−1∑i=0

|ψ(ti+1)+ϕ(ti+1)−ψ(ti )−ϕ(ti )|q

+N−1∑i=0

|ψ(c − ti+1)+ϕ(c − ti+1)−ψ(c − ti )−ϕ(c − ti )|q[

...⃝ (4.29)と仮定 (a)]

=N−1∑i=0

|ψ(ti+1)+ϕ(ti+1)− (ψ(ti )+ϕ(ti )

)|q+

N−1∑j=0

|ψ(c − tN− j−1)+ϕ(c − tN− j−1)− (ψ(c − tN− j )+ϕ(c − tN− j )

)|q≤ ∥ψ+ϕ∥q

q,[u,v] +∥ψ+ϕ∥qq,[c−v,c−u].

76

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よって,分割について supをとれば

2∥ψ∥qq,[u,v] ≤ ∥ψ+ϕ∥q

q,[u,v] +∥ψ+ϕ∥qq,[c−v,c−u]. (4.30)

(i) (4.30)において u = c2 , v = c −σ (ただし 0 ≤σ< c

2 )とすると

2∥ψ∥qq,[ c

2 ,c−σ]≤ ∥ψ+ϕ∥q

q,[ c2 ,c−σ]

+∥ψ+ϕ∥qq,[σ, c

2 ]

≤ ∥ψ+ϕ∥qq,[σ,c−σ].

[...⃝∥ψ+ϕ∥q

q,[·,∗] の優加法性]

.

ここで Claim 4.6より左辺= ∥ψ∥qq,[σ,c−σ] であるので (i)の主張が分かる.

(ii) [0, c]の分割 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = cは c2 に関して対称とする.2つの caseに分

ける:

Case 1 N が偶数のとき.

このときは

0 = t0 < t1 < ·· · < t N2 −1 < t N

2= c

2< t N

2 +1 < ·· · < tN = c,

ti = c − tN−i (0 ≤ i ≤ N)

であるから

N−1∑i=0

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1] =

∑0≤i<N

2

∥ψ∥qq,[c−tN−i ,c−tN−i−1] +

∑N2 ≤i<N

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

= ∑N2 ≤ j<N

∥ψ∥qq,[c−t j+1,c−t j ] +

∑N2 ≤i<N

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

= ∑N2 ≤ j<N

∥ψ∥qq,[t j ,t j+1] +

∑N2 ≤i<N

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

[...⃝ Claim 4.6(iii)より

]= ∑

N2 ≤i<N

2∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

≤ ∑N2 ≤i<N

(∥ψ+ϕ∥q

q,[ti ,ti+1] +∥ψ+ϕ∥qq,[c−ti+1,c−ti ]

) [...⃝ (4.30)より

]= ∑

0≤i<N2

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1] +

∑N2 ≤i<N

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1]

=N−1∑i=0

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1].

Case 2 N が奇数のとき.

このときは

0 = t0 < t1 < ·· · < t N−12

< c

2< c − t N−1

2= t N+1

2< ·· · < tN = c,

77

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ti = c − tN−i (0 ≤ i ≤ N)

であるからN−1∑i=0

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

= ∑0≤i≤N−3

2

∥ψ∥qq,[c−tN−i ,c−tN−i−1] +∥ψ∥q

q,[t N−12

,c−t N−12

] +∑

N+12 ≤i≤N−1

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

= ∑N+1

2 ≤ j≤N−1

∥ψ∥qq,[c−t j+1,c−t j ] +∥ψ∥q

q,[t N−12

,c−t N−12

] +∑

N+12 ≤i≤N−1

∥ψ∥qq,[ti ,ti+1]

= ∑N+1

2 ≤i≤N−1

2∥ψ∥qq,[ti ,ti+1] +∥ψ∥q

q,[t N−12

,c−t N−12

]

[...⃝ Claim 4.6(iii)

]≤ ∑

N+12 ≤i≤N−1

(∥ψ+ϕ∥q

q,[ti ,ti+1] +∥ψ+ϕ∥qq,[c−ti+1,c−ti ]

)+∥ψ+ϕ∥q

q,[t N−12

,c−t N−12

][...⃝ (4.30)と (i)

]= ∑

0≤i≤N−32

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1] +∥ψ+ϕ∥q

q,[t N−12

,t N+12

] +∑

N+12 ≤i≤N−1

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1]

=N−1∑i=0

∥ψ+ϕ∥qq,[ti ,ti+1].

実数列 an∞n=0は∞∑

n=0|an | <∞なるものとし, f , fm ∈C (R→R) (m = 0,1,2, . . .)を

f (t ) =∞∑

n=0an cos2nπt , (4.31)

fm(t ) =∞∑

n=man cos2nπt (4.32)

とおく.∥ f ∥q,[0,1] <∞を仮定する.このとき Claim 4.6より,−∞< ∀u < ∀v <∞に対して ∥ f ∥q,[u,v] <∞,一般に ∥ fm∥q,[u,v] <∞である.Claim 4.8. (i) ∀m ≥ 0に対して

∥ fm∥qq,[0,1] = 2m∥ fm∥q

q,[0, 12m ]

= 2m∥∞∑

n=0an+m cos2nπt∥q

q,[0,1].

(ii) ∥ fm∥qq,[0,1]はmに関して単調減少.

証明 (i) m ≥ 1としてよい.(4.32)より fm は偶関数で周期 12m−1 をもつ.Claim 4.6より

∥ fm∥qq,[0,1] = ∥ fm∥q

q,[0,2m−1 12m−1 ]

78

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= 2m−1∥ fm∥q

q,[0, 12m−1 ]

= 2m 1

2∥ fm∥q

q,[0, 12m−1 ]

= 2m∥ fm∥q

q,[0, 12m ]

.

ここで,次のことに注意: a > 0, 0 ≤ u < v <∞に対して

∥g (a ·)∥qq,[u,v] = sup

N−1∑i=0

|g (ati+1)− g (ati )|q ; u = t0 < ·· · < tN = v

= supN−1∑

i=0|g (ti+1)− g (ti )|q ; au = t0 < ·· · < tN = av

= ∥g∥q

q,[au,av]. (4.33)

fm(t ) =∞∑

n=0an+m cos2nπ2m t であるので,上の注意より

∥ fm∥q

q,[0, 12m ]

= ∥∞∑

n=0an+m cos2nπ2m t∥q

q,[0, 12m ]

= ∥∞∑

n=0an+m cos2nπt∥q

q,[0,1].

よって (i)の主張が分かる.(ii) m ≥ 0を fixする.まず (i)と (4.33)より

∥ fm+1∥qq,[0,1] = 2m∥ fm+1∥q

q,[0, 12m ]

= 2m∥∞∑

n=m+1an cos2nπt∥q

q,[0, 12m ]

= 2m∥∞∑

n=1an+m cos2nπ2m t∥q

q,[0, 12m ]

= 2m∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[0,1].

ここで ψ(t ) =∞∑

n=1an+m cos2nπt , ϕ(t ) = am cosπt とすると,ψ は偶関数で周期 1,

ϕ(1− t ) =−ϕ(t )となるから,Claim 4.7より

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[0,1] = ∥ψ∥qq,[0,1]

≤ ∥ψ+ϕ∥qq,[0,1]

= ∥∞∑

n=0an+m cos2nπt∥q

q,[0,1].

79

Page 88: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

よって

∥ fm+1∥qq,[0,1] = 2m∥

∞∑n=1

an+m cos2nπt∥qq,[0,1]

≤ 2m∥∞∑

n=0an+m cos2nπt∥q

q,[0,1] = ∥ fm∥qq,[0,1].

Claim 4.9. 各 k ∈Nに対して,V(∥ fm∥q

q,[·,∗],Dk)はmに関して単調減少.

証明 k ∈Nを fixする.m ≥ 0とする.3つの caseに分ける.

Case 1 m > k のとき.

fm は偶関数で周期 12m−1 をもつ.m −1 ≥ k より 1

2k = 2m−1−k

2m−1 が周期でもあるので,Claim 4.6より

V(∥ fm∥q

q,[·,∗],Dk)= 2k−1∑

j=0∥ fm∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

=2k−1∑j=0

∥ fm∥q

q,[0, 12k ]

= 2k∥ fm∥q

q,[0, 12k ]

= ∥ fm∥q

q,[0,2k 12k ]

= ∥ fm∥qq,[0,1].

Case 2 m = k のとき.

fk は偶関数で周期 12k−1 をもつので,(4.28)と Claim 4.6(iii)より,j = 0,1, . . . ,2k−1−1

に対して

∥ fk∥q

q,[ 2 j

2k , 2 j+1

2k ]+∥ fk∥q

q,[ 2 j+1

2k , 2 j+2

2k ]= ∥ fk∥q

q,[0, 12k ]

+∥ fk∥q

q,[ 12k , 2

2k ]

= ∥ fk∥q

q,[0, 12k−1 ]

.

よって

V(∥ fk∥q

q,[·,∗],Dk)= 2k−1∑

j=0∥ fk∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

=2k−1−1∑

j=0

(∥ fk∥q

q,[ 2 j

2k , 2 j+1

2k ]+∥ fk∥q

q,[ 2 j+1

2k , 2 j+2

2k ]

)

=2k−1−1∑

j=0∥ fk∥q

q,[0, 12k−1 ]

80

Page 89: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

= 2k−1∥ fk∥q

q,[0, 12k−1 ]

= ∥ fk∥q

q,[0,2k−1 12k−1 ]

= ∥ fk∥qq,[0,1].

Case 3 0 ≤ m < k のとき.

まず

V(∥ fm∥q

q,[·,∗],Dk)

=2k−1∑j=0

∥ fm∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

=2k−1∑j=0

∥∞∑

n=0an+m cos2nπ2m t∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

=2k−1∑j=0

∥∞∑

n=0an+m cos2nπt∥q

q,[ j

2k−m , j+1

2k−m ]

[...⃝ (4.33)より

]

=2m−1−1∑

j=0

(2k−m−1∑l=0

∥am cosπt +∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,2 j+[ l2k−m , l+1

2k−m ]

+2k−m−1∑

l=0

∥am cosπt +∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,2 j+1+[ l2k−m , l+1

2k−m ]

) ...⃝

0,1, . . . ,2k −1 = s2k−m + r ; 0 ≤ s < 2m ,0 ≤ r < 2k−m

=

2 j 2k−m + r, (2 j +1)2k−m + r ;0 ≤ j < 2m−1,

0 ≤ r < 2k−m

=2m−1−1∑

j=0

(2k−m−1∑l=0

∥am cosπ(t +2 j )+∞∑

n=1an+m cos2nπ(t +2 j )∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

+2k−m−1∑

l=0

∥am cosπ(t +2 j +1)+∞∑

n=1an+m cos2nπ(t +2 j +1)∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

)[

...⃝ (4.27)より]

=2m−1−1∑

j=0

(2k−m−1∑l=0

∥am cosπt +∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

+2k−m−1∑

l=0

∥(−am)cosπt +∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

).

ここで( ∞∑

n=1an+m cos2nπt , (±am)cosπt

)の組は Claim 4.7の条件をみたす (c = 1とし

81

Page 90: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

て)から

2k−m−1∑l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt + (±am)cosπt∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

≥2k−m−1∑

l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ].

この不等式を上式に戻すと

V(∥ fm∥q

q,[·,∗],Dk)

≥2m−1−1∑

j=02

2k−m−1∑l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

=2m−1−1∑

j=0

(2k−m−1∑l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπ(t +2 j )∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

+2k−m−1∑

l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπ(t +2 j +1)∥q

q,[ l2k−m , l+1

2k−m ]

)

=2m−1−1∑

j=0

(2k−m−1∑l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,2 j+[ l2k−m , l+1

2k−m ]

+2k−m−1∑

l=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,2 j+1+[ l2k−m , l+1

2k−m ]

) [...⃝ (4.27)より

]=

2k−1∑j=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπt∥q

q,[ j

2k−m , j+1

2k−m ]

=2k−1∑j=0

∥∞∑

n=1an+m cos2nπ2m t∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

[...⃝ (4.33)より

]

=2k−1∑j=0

∥∞∑

n=m+1an cos2nπt∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]

=2k−1∑j=0

∥ fm+1∥q

q,[ j

2k , j+1

2k ]= V

(∥ fm+1∥qq,[·,∗],Dk

).

さて,Case 1 ∼ 3,そして Claim 4.8より

V(∥ f0∥q

q,[·,∗],Dk)≥ V

(∥ f1∥qq,[·,∗],Dk

)≥ V

(∥ f2∥qq,[·,∗],Dk

)≥ ·· ·≥ V

(∥ fk∥qq,[·,∗],Dk

)= ∥ fk∥qq,[0,1]

82

Page 91: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

≥ ∥ fk+1∥qq,[0,1] = V

(∥ fk+1∥qq,[·,∗],Dk

)≥ ∥ fk+2∥q

q,[0,1] = V(∥ fk+2∥q

q,[·,∗],Dk)

≥ ·· ·≥ ∥ fm∥q

q,[0,1] = V(∥ fm∥q

q,[·,∗],Dk)

≥ ∥ fm+1∥qq,[0,1] = V

(∥ fm+1∥qq,[·,∗],Dk

)≥ ·· ·

が分かる.これは claimの主張することである.

今の claimより次のことが分かる: ∀k ∈Nに対して

V(∥ f ∥q

q,[·,∗],Dk)≥ lim

m→∞∥ fm∥qq,[0,1].

よって,k →∞とすれば

limk→∞

V(∥ f ∥q

q,[·,∗],Dk)≥ lim

m→∞∥ fm∥qq,[0,1]. (4.34)

4.3.3. 定理の証明

(4.31), (4.32)において an = 2− nq と採る.即ち

f (t ) =∞∑

n=02− n

q cos2nπt , (4.35)

fm(t ) =∞∑

n=m2− n

q cos2nπt (4.36)

とする注18.

1 | f (t )− f (s)| ≤( π

1− (12

)1− 1q

+ 2

1− (12

) 1q

)|t −s| 1

q , ∀t , s with |t −s| ≤ 1. よって ∥ f ∥q,[0,1] <∞.

...⃝ t , s ∈Rに対して

| f (t )− f (s)| =∣∣∣ ∞∑

n=02− n

q(cos2nπt −cos2nπs

)∣∣∣≤

∞∑n=0

2− nq |cos2nπt −cos2nπs|

注18一般に,∞∑

n=0b−nα cos bn x (b ∈N∩ [2,∞), α> 0)の形の関数をWeierstrass関数という.Fourier級数

論において,最適例 or反例のためによく用いられる.

83

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=∞∑

n=02− n

q

∣∣∣(−2)sin2nπ(t + s)

2sin

2nπ(t − s)

2

∣∣∣[...⃝ cosα−cosβ= (−2)sin

α+β

2sin

α−β

2

]≤

∞∑n=0

2− nq 2|sin2n−1π(t − s)|.

0 < |t − s| ≤ 1とする.n0 ∈ 0,1,2, . . .を

2−(n0+1) < |t − s| ≤ 2−n0

となるように選ぶと∞∑

n=02− n

q 2|sin2n−1π(t − s)| =n0∑

n=02− n

q 2|sin2n−1π(t − s)|+∞∑

n=n0+12− n

q 2|sin2n−1π(t − s)|

≤n0∑

n=02− n

q 2 ·2n−1π|t − s|+∞∑

n=n0+12− n

q 2[...⃝ |sinα| ≤ |α| (α ∈R)

]=

n0∑n=0

(21− 1

q)nπ|t − s|+

∞∑n=n0+1

2− nq 2

=(21− 1

q)n0+1 −1

21− 1q −1

π|t − s|+2 ·2− n0+1q

1

1−2− 1q

≤ 21− 1q

21− 1q −1

π(2n0

)1− 1q |t − s|+ 2

1−2− 1q

(2−(n0+1)) 1

q

≤( π

1− (12

)1− 1q

+ 2

1− (12

) 1q

)|t − s| 1

q .

2 Claim 4.8(i)より

∥ fm∥qq,[0,1] = 2m∥

∞∑n=0

2− n+mq cos2nπt∥q

q,[0,1]

= 2m∥2−mq

∞∑n=0

2− nq cos2nπt∥q

q,[0,1]

= 2m2−m∥∞∑

n=02− n

q cos2nπt∥qq,[0,1]

= ∥ f ∥qq,[0,1],

∀m ≥ 0.

よって (4.34)より

limk→∞

V(∥ f ∥q

q,[·,∗],Dk)≥ ∥ f ∥q

q,[0,1] > 0.

84

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(実は,Claim 4.2より

V(∥ f ∥q

q,[·,∗],Dk+1)≤ V

(∥ f ∥qq,[·,∗],Dk

)≤ V(∥ f ∥q

q,[·,∗],D0)= ∥ f ∥q

q,[0,1] (∀k)

であるから

V(∥ f ∥q

q,[·,∗],Dk)= ∥ f ∥q

q,[0,1] (∀k)

である!)

4.4. 定理 4.2の別証Friz-Victoir [9]による定理 4.2の別証がある.命題 4.2より,写像 F : Cp/2(R) → WGΩp(Rd )を

F (ϕ) := xϕ = (1,0,ϕ1(e1 ⊗ e2 − e2 ⊗ e1)

)により定義すると

dp(F (ϕ),F (ψ)

)=p2∥ϕ1 −ψ1∥p/2, ϕ,ψ ∈Cp/2(R)

が直ぐに分かるから (F

(Cp/2(R)

), dp

)≈

(Cp/2(R),∥ ∥p/2

).

もし,q ≥ 1に対して (Cq(R),∥ ∥q)が可分でないならば,(F

(Cp/2(R)

), dp

)も非可分,よっ

て(WGΩp(Rd ), dp

)は非可分でなければならなくなる.このことと定理 4.1を合わせれ

ば,定理 4.2は直ぐに従う.Friz-Victoirは [21]より (Cq(R),∥ ∥q)は可分でないから,この論法は正当であるとしている.しかし [21]には,(Cq(R),∥ ∥q)の非可分性は一言も述べられていないし,またその論

文に書かれていることを使ってこれを示すのも難しい (そうである).彼らは [21]の内容について勘違いをしているか,あるいは単に引用文献を取り違えたかのいずれかだと思う.ともかく,この別証には,(Cq(R),∥ ∥q)の非可分性を確かめる必要がある.が,そう

することは,思ったよりも簡単ではなさそうなので,このノートでは,Friz-Victoirのもう一つのやり方を採用した.

注意 4.3. 蛇足ながら,(CH ,θ(R),∥ ∥H ,θ)の非可分性は,次の例から直ぐに分かる.各a ∈ [0,1]に対して

xa(t ) := |t −a|θ−aθ

とすると,明らかに xa ∈CH ,θ(R), ∥(xa)1∥H ,θ ≤ 1であるから

∥(xa −xb)1∥H ,θ = ∥(xa)1 − (xb)1∥H ,θ

85

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≤ ∥(xa)1∥H ,θ+∥(xb)1∥H ,θ ≤ 2.

一方,a = bのとき

|(xa −xb)(b)− (xa −xb)(a)||a −b|θ = |xa(b)−xb(b)−xa(a)+xb(a)|

|a −b|θ

= ||b −a|θ−aθ+bθ+aθ+|a −b|θ−bθ||a −b|θ = 2

なので ∥(xa −xb)1∥H ,θ ≥ 2. よって

∥(xa −xb)1∥H ,θ = 2, ∀a = b.

これは(xa ; a ∈ [0,1],∥ ∥H ,θ

)が可分でないことを implyし,従って

(CH ,θ(R),∥ ∥H ,θ

)の

非可分性が分かる.なお,Ciesielski ([5])は,0 < θ< 1のとき

(CH ,θ(R),∥ ∥H ,θ

)が数列空間

l∞ = ξ= (ξn)∞n=1 ∈R∞ ; sup

n≥1|ξn | <∞

と isomorphicであることを示している.この帰結として,上の非可分性は l∞の非可分性注19より従うわけであるが,

くだん

件の非可分性のためだけに,この isomorphic性を持ち出すのはちょっとやり過ぎだと思う.このような簡単な例が,(Cq(R),∥ ∥q)にも見つかればよいのだが,今のところまだ (筆

者には)ない.

注意 4.4. 実は,q = 1の場合,即ち,(C1(R),∥ ∥1)の非可分性については,会田氏により次のような例が見つかっている.各 t ∈ [0,1]に対して,

([0,1]2,B([0,1]2)

)上の連続な確率測度 µt を次のように定義

する:

µt (E) :=∫1

01E (s, t )λ(ds), E ∈B([0,1]2).

ここで λは 1次元 Lebesgue測度.[0,1]2, [0,1]は標準可測空間注20だから,Borel同型を与える全単射 ϕ : [0,1]2 → [0,1],即ち,[0,1]2から [0,1]への全単射で両 Borel可測な

注19これはよく知られていることなので,もう証明はしない.注20可測空間 (X ,F )が,次の3つの可測空間 (a), (b), (c)のいずれか1つと Borel同型であるとき標準可測空間という:

(a)(1, . . . , n,B(1, . . . , n)

), (n ∈N),

(b)(N,B(N)

),

(c)(0,1N,B(0,1N)

).

典型的な標準可測空間の例としては,X が Polish空間,F =B(X )のときの (X ,F )である.これの証明については,例えば Parthasarathy [22]を参照.

86

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写像ϕが存在する.この写像による µt の像測度をmt とすると,mt は([0,1],B([0,1])

)上の連続な確率測度で互いに特異である.何となれば

mt(ϕ([0,1]× t )

)= 1,

ϕ([0,1]× t )∩ϕ([0,1]× s) =; (t = s)(4.37)

であるから.今, ft (x) := mt ([0, x]) (x ∈ [0,1])とおく. ft ∈C1(R) (∀t ∈ [0,1])である.ここで

∥ ft − fs∥1 = ∥mt −ms∥var

:= sup

N∑i=1

|mt (Ei )−ms(Ei )| ; E1, . . . ,EN ∈B([0,1])

with E1 +·· ·+EN = [0,1]

に注意する注21.よって t = s のとき (4.37)より

∥ ft − fs∥1 = ∥mt −ms∥var

≥∣∣∣mt

(ϕ([0,1]× t )

)−ms(ϕ([0,1]× t )

)∣∣∣+

∣∣∣mt(ϕ([0,1]× s)

)−ms(ϕ([0,1]× s)

)∣∣∣= 2

であるから,( ft ; 0 ≤ t ≤ 1,∥ ∥1

)の非可分性が従い,よって (C1(R),∥ ∥1)が可分でない

ことが分かる.

[附記]

1⃝ この節では,Friz-Victoir [9]による定理 4.3の geometric rough pathの characteri-

zationを手を抜かずに証明した.彼らの論文における証明よりは,ずっとギャップが少ないようにしたつもりである.彼らは,geometric rough pathでない例については,(4.35)の f (t )を考えればよいと云い,[6]を引用している.確かにその Lecture noteにはこ (れと同じタイプ)の関数が載っているが,肝心の証明がない.だから引用文献としては不適切だと思う.筆者は,代わりに [4]を挙げることにして,それを基にしてf (t )が1つの反例になっていることを証明した.注21これは次の事実から従う: (X ,B)を可測空間,A を X の f -集合体 ( f -field)でB =σ(A )とするとき,(X ,B)上の加法的集合関数Φに対して

∥Φ∥var := sup N∑

i=1|Φ(Ei )| ; E1, . . . ,EN ∈B with E1 +·· ·+EN = X

= sup

N∑i=1

|Φ(Ai )| ; A1, . . . , AN ∈A with A1 +·· ·+ AN = X

.

87

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ともかく,こんな風にした結果,4節のはじめに書いたように,この節だけで 50ページ強の長さになってしまった.2⃝ 定理 4.3の1つの帰結として,次のことが分かる: 「(1,0,0)でない x = (1, x1, x2) ∈

GΩ2(Rd )の second level path x2 は決して何かの関数の差として書けない.」何となれば,もしそうならば

∃φ ∈C (→Rd ⊗Rd ) s.t. x2(s, t ) =φ(t )−φ(s).

定理 4.3の (b)より

limδ0

sup

N−1∑i=0

∥φ1∥1,[ti ,ti+1] ; 0 = t0 < ·· · < tN = 1 with max0≤i≤N−1

(ti+1 − ti ) ≤ δ

= 0.

ここで φ1 =(φαβ

1

)α,β=1,...,d とすると

∥φ1∥1,[ti ,ti+1] ≥ ∥φαβ

1 ∥1,[ti ,ti+1].

また,注意 4.2より

N−1∑i=0

∥φαβ

1 ∥1,[ti ,ti+1] = ∥φαβ

1 ∥1

であるので

φαβ

1 = 0, α,β= 1, . . . , d.

これは x2 = 0を implyする.そして x = (1, x1, x2)は (4.6)をみたすことから(xα

1 (s, t ))2 = 2xαα

2 (s, t ) = 0.

よって x = (1,0,0)が分かるのである.3⃝ 小節 4.4は,今のところ未完である.会田氏による q = 1の場合のテクニックがそのまま一般の q (> 1)の場合に使えるかどうか分からない.まず [4]を真面目に勉強し,q

次有界変動関数についての知識を増やした上で,これに取り掛った方がよいのかもしれない.

(Cq(R),∥ ∥q

)の非可分性がすでに既知であり,その証明 (についての情報)を

御存じの方がおられたら,是非教えて下さい.

88

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5. Almost rough path

この節では 2 ≤ p < 3とする.(実は,この節は,次節のための preliminary sectionである.)

定義 5.1. ξ= (1,ξ1,ξ2) ∈C (→ T 2(Rd ))が次をみたすとき roughness pの almost rough

pathという.

∃ω: control function, ∃θ ∈ (1,∞), ∃C ∈ (0,∞)

s.t. • |ξ1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|ξ2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,∀(s, t ) ∈, (5.1)

|ξ1(s, u)+ξ1(u, t )−ξ1(s, t )| ≤Cω(s, t )θ,

|ξ2(s, u)+ξ2(u, t )+ξ1(s, u)⊗ξ1(u, t )−ξ2(s, t )| ≤Cω(s, t )θ,∀(s, u), (u, t ) ∈.

(5.2)

Roughness pの almost rough path全体を AΩp(Rd )と表わす.

注意 5.1. (i) 明らかにΩp(Rd ) ⊂ AΩp(Rd ).

(ii) ∀ξ= (1,ξ1,ξ2) ∈ AΩp(Rd )に対して,ξ1(s, s) = 0, ξ2(s, s) = 0 (∀s ∈ [0,1]).

Almost rough pathと名づけた (よぶ)わ け

理由は,次の定理にある:

定理 5.1. ∀ξ= (1,ξ1,ξ2) ∈ AΩp(Rd )に対して

∃1z = (1, z1, z2) ∈Ωp(Rd )

s.t.

適当な control function ωと θ ∈ (1,∞)に対して

|z1(s, t )−ξ1(s, t )| ≤ ω(s, t )θ,

|z2(s, t )−ξ2(s, t )| ≤ ω(s, t )θ.

この zを almost rough path ξに associateした rough pathという.

以下で,この定理を

• z1の存在性,

• z2の存在性,

• z = (1, z1, z2)の一意性

の順で示す.

89

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いつものように,0 ≤ s < t ≤ 1と [0,1]の分割Dに対し,D = D∪ s, t , D∩ [s, t ] = s =t0 < t1 < ·· · < tN = t とし

z1(s, t ;D) :=N−1∑i=0

ξ1(ti , ti+1) (5.3)

とおく.s = t のときは,z1(s, s;D) := 0とするのは云うまでもない.

Claim 5.1. (i) 任意の [0,1]の分割 D, D′ s.t. D′は Dの細分と任意の 0 ≤ s < t ≤ 1に対して

|z1(s, t ;D)− z1(s, t ;D′)| ≤C 2θζ(θ)(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v))θ−1

ω(0,1).

(ii) 任意の [0,1]の分割Dと任意の 0 ≤ s < t ≤ 1に対して

|z1(s, t ;D)−ξ1(s, t )| ≤C 2θζ(θ)ω(s, t )θ.

証明 0 ≤ s < t ≤ 1を fixする.[s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して

z1(D) :=N−1∑i=0

ξ1(ti , ti+1) (5.4)

とおく.

1 D = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t を [s, t ]の分割,D′をその細分とする.Claim 1.1(ii)

の証明のように,[s, t ]の分割 (D′)k,m (k = 1, . . . ,K , m = 0, . . . ,M (αk ))を定義すると

|z1(D)− z1(D′)| =∣∣∣z1

((D′)K ,M(αK )

)− z1((D′)1,0

)∣∣∣=

∣∣∣ K∑k=1

M(αk )∑m=1

(z1

((D′)k,m−1

)− z1((D′)k,m

))∣∣∣≤

K∑k=1

M(αk )∑m=1

∣∣∣z1((D′)k,m−1

)− z1((D′)k,m

)∣∣∣.ここで (D′)k,m = (D′)k,m−1 \ σ, σを σの直前の分点,σを直後の分点とすると∣∣∣z1

((D′)k,m−1

)− z1((D′)k,m

)∣∣∣= ∣∣∣ξ1(σ,σ)+ξ1(σ,σ)−ξ1(σ,σ)∣∣∣ [

...⃝ (5.4)]

≤Cω(σ,σ)θ[

...⃝ (5.2)]

≤C

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

)θ [...⃝ 分点 σの取り方より

]となるので,この評価を上式に使うと

|z1(D)− z1(D′)| ≤K∑

k=1

M(αk )∑m=1

C

(2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) +1−m

90

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=C 2θK∑

k=1ω(ταk−1,ταk )θ−1ω(ταk−1,ταk )

M(αk )∑n=1

1

≤C 2θζ(θ)(

max1≤α≤N

ω(τα−1,τα))θ−1

ω(s, t ).

2 Dを [s, t ]の分割とする (ただし #D ≥ 3).Claim 1.1(ii)の証明のように [s, t ]の分割Dm (m = 0, . . . ,M)を定義すると

|z1(D)−ξ1(s, t )| = |z1(D0)− z1(DM )|

=∣∣∣ M∑

m=1

(z1(Dm−1)− z1(Dm)

)∣∣∣≤

M∑m=1

∣∣∣z1(Dm−1)− z1(Dm)∣∣∣.

ここで Dm = Dm−1 \ σmであるから,1と同様に∣∣∣z1(Dm−1)− z1(Dm)∣∣∣≤Cω(σm ,σm)θ

≤C( 2ω(s, t )

M +1−m

)θと評価されるので,これを上式に使うと

|z1(D)−ξ1(s, t )| ≤C 2θζ(θ)ω(s, t )θ.

さて,Dを [0,1]の分割とする.D := D ∪ s, t とすると,2より

|z1(s, t ;D)−ξ1(s, t )| = |z1(D ∩ [s, t ])−ξ1(s, t )|≤C 2θζ(θ)ω(s, t )θ.

これは Claim 5.1(ii)の評価式である.D′をDの細分とするならば,D′∩ [s, t ]は D ∩ [s, t ]の細分であるので,1より

|z1(s, t ;D)− z1(s, t ;D′)| = |z1(D ∩ [s, t ])− z1(D′∩ [s, t ])|≤C 2θζ(θ)

(max

1≤α≤Nω(τα−1,τα)

)θ−1ω(s, t )[

ここで D ∩ [s, t ] = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t ]

≤C 2θζ(θ)(

max|u−v|≤m(D)

ω(u, v))θ−1

ω(0,1).

これは Claim 5.1(i)の評価式である.

91

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z1z1z1の存在性の証明 Claim 5.1(i)より,各 (s, t ) ∈に対して∃ limm(D)→0

z1(s, t ;D) =: z1(s, t ).

Claim 5.1(ii)より

|z1(s, t )−ξ1(s, t )| ≤C 2θζ(θ)ω(s, t )θ. (5.5)

あと,示すことは z1 ∈C (→Rd )と

z1(s, u)+ z1(u, t ) = z1(s, t ), 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1 (5.6)

の2つである.後者の方は,0 ≤ s < u < t ≤ 1のとき

z1(s, t ) = limN→∞

(N−1∑i=0

ξ1(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+

N−1∑i=0

ξ1(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

))= lim

N→∞

N−1∑i=0

ξ1(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+ lim

N→∞

N−1∑i=0

ξ1(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

)= z1(s, u)+ z1(u, t )

より明らかである.前者については,まず (s′, t ′) → (s, s)のときは

|z1(s′, t ′)− z1(s, s)| = |z1(s′, t ′)|≤ |ξ1(s′, t ′)|+C 2θζ(θ)ω(s′, t ′)θ

[...⃝ (5.5)

]→|ξ1(s, s)|+C 2θζ(θ)ω(s, s)θ = 0.

s < t のときは,(s′, t ′)が十分に (s, t )の近くにあるならば

s′ ≤ s ≤ t ′ ≤ t

or

s′ ≤ s ≤ t ≤ t ′

or

s ≤ s′ ≤ t ′ ≤ t

92

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or

s ≤ s′ ≤ t ≤ t ′

のいずれかの場合にあるので

|z1(s′, t ′)− z1(s, t )| =

|z1(s′, s)− z1(t ′, t )|or

|z1(s′, s)+ z1(t , t ′)|or

|z1(s, s′)+ z1(t ′, t )|or

|z1(s, s′)− z1(t , t ′)|

|ξ1(s′, s)|+ |ξ1(t ′, t )|+C 2θζ(θ)(ω(s′, s)θ+ω(t ′, t )θ

)or

|ξ1(s′, s)|+ |ξ1(t , t ′)|+C 2θζ(θ)(ω(s′, s)θ+ω(t , t ′)θ

)or

|ξ1(s, s′)|+ |ξ1(t ′, t )|+C 2θζ(θ)(ω(s, s′)θ+ω(t ′, t )θ

)or

|ξ1(s, s′)|+ |ξ1(t , t ′)|+C 2θζ(θ)(ω(s, s′)θ+ω(t , t ′)θ

)→ 0 as (s′, t ′) → (s, t ).

次に z2 の存在性を示す.そのために,0 ≤ s < t ≤ 1 と [0,1] の分割 D に対して,D = D ∪ s, t , D ∩ [s, t ] = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t とし

z2(s, t ;D) :=N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

z1(t0, ti )⊗ z1(ti , ti+1) (5.7)

とおく.云うまでもなく s = t のときは

z2(s, s;D) := 0

とする.

Claim 5.2. (i) D, D′を [0,1]の分割で,D′はDの細分のとき,∀(s, t ) ∈に対して

|z2(s, t ;D)− z2(s, t ;D′)| ≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)(max

|u−v|≤m(D)ω(u, v)

)θ−1ω(0,1).

(i) Dを [0,1]の分割としたとき,∀(s, t ) ∈に対して

|z2(s, t ;D)−ξ2(s, t )| ≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)ω(s, t )θ.

93

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ここで (i), (ii)における定数C7(C ,θ,ω(0,1), p

)は次で与えられるものである:

C7(C ,θ,ω(0,1), p

)=C 2θζ(θ)

1+2θζ(θ)(2ω(0,1)1/p +C 2θζ(θ)ω(0,1)θ

). (5.8)

証明 0 ≤ s < t ≤ 1を fix. [s, t ]の分割 D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して

z2(D) :=N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

z1(t0, ti )⊗ z1(ti , ti+1) (5.9)

とおく.

1 D = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t を [s, t ]の分割,D′をその細分とする.Claim 1.1(i)

の証明のように,[s, t ]の分割 (D′)k,m (k = 1, . . . ,K , m = 0, . . . ,M (αk ))を定義すると

|z2(D)− z2(D′)| =∣∣∣ K∑

k=1

M(αk )∑m=1

(z2

((D′)k,m−1

)− z2((D′)k,m

))∣∣∣≤

K∑k=1

M(αk )∑m=1

∣∣∣z2((D′)k,m−1

)− z2((D′)k,m

)∣∣∣.ここで (D′)k,m = (D′)k,m−1 \ σ, σを σの直前の分点,σを σの直後の分点とすると∣∣∣z2

((D′)k,m−1

)− z2((D′)k,m

)∣∣∣=

∣∣∣ξ2(σ,σ)+ξ2(σ,σ)−ξ2(σ,σ)

+ z1(s,σ)⊗ z1(σ,σ)+ z1(s,σ)⊗ z1(σ,σ)− z1(s,σ)⊗ z1(σ,σ)∣∣∣

=∣∣∣ξ2(σ,σ)+ξ2(σ,σ)+ξ1(σ,σ)⊗ξ1(σ,σ)−ξ2(σ,σ)

+ z1(σ,σ)⊗ z1(σ,σ)−ξ1(σ,σ)⊗ξ1(σ,σ)∣∣∣

≤∣∣∣ξ2(σ,σ)+ξ2(σ,σ)+ξ1(σ,σ)⊗ξ1(σ,σ)−ξ2(σ,σ)

∣∣∣+|z1(σ,σ)−ξ1(σ,σ)||z1(σ,σ)|+ |ξ1(σ,σ)||z1(σ,σ)−ξ1(σ,σ)|

≤Cω(σ,σ)θ

+C 2θζ(θ)ω(σ,σ)θ(C 2θζ(θ)ω(σ,σ)θ+ω(σ,σ)1/p)

+ω(σ,σ)1/pC 2θζ(θ)ω(σ,σ)θ[...⃝ (5.2), (5.5), (5.1)より

]≤C

1+2θζ(θ)

(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p)

ω(σ,σ)θ

≤C

1+2θζ(θ)(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p)(

2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) −m +1

94

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となるので,この評価を上式に使うと

|z2(D)− z2(D′)|

≤K∑

k=1

M(αk )∑m=1

C

1+2θζ(θ)(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p)(

2ω(ταk−1,ταk )

M (αk ) −m +1

=C

1+2θζ(θ)(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p)

2θK∑

k=1ω(ταk−1,ταk )θ

M(αk )∑n=1

1

≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)(max

1≤α≤Nω(τα−1,τα)

)θ−1ω(s, t ).

2 Dを [s, t ]の分割とする (ただし #D ≥ 3).Claim 1.1(ii)の証明のように,[s, t ]の分割Dm (m = 0, . . . ,M)を定義すると

|z2(D)−ξ2(s, t )| = |z2(D0)− z2(DM )|

=∣∣∣ M∑

m=1

(z2(Dm−1)− z2(Dm)

)∣∣∣≤

M∑m=1

|z2(Dm−1)− z2(Dm)|

=M∑

m=1|z2(Dm−1)− z2(Dm−1 \ σm)|

=M∑

m=1

∣∣∣ξ2(σm ,σm)+ξ2(σm ,σm)+ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)

−ξ2(σm ,σm)+ z1(σm ,σm)⊗ z1(σm ,σm)−ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)∣∣∣

≤M∑

m=1C

1+2θζ(θ)

(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p)

ω(σm ,σm)θ

≤C

1+2θζ(θ)(C 2θζ(θ)ω(0,1)θ+2ω(0,1)1/p) M∑

m=1

( 2ω(s, t )

M −m +1

)θ≤C7

(C ,θ,ω(0,1), p

)ω(s, t )θ.

さて,Dを [0,1]の分割とする.D = D ∪ s, t とすると,2より

|z2(s, t ;D)−ξ2(s, t )| = |z2(D ∩ [s, t ])−ξ2(s, t )|≤C7

(C ,θ,ω(0,1), p

)ω(s, t )θ.

これは Claim 5.2(ii)の評価式である.次にD′をDの細分とするならば,D′∩ [s, t ]は D ∩ [s, t ]の細分であるので,1より

|z2(s, t ;D)− z2(s, t ;D′)| = |z2(D ∩ [s, t ])− z2(D′∩ [s, t ])|

95

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≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)(max

1≤α≤Nω(τα−1,τα)

)θ−1ω(s, t )[

ここで D ∩ [s, t ] = s = τ0 < τ1 < ·· · < τN = t ]

≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)(max

|u−v|≤m(D)ω(u, v)

)θ−1ω(0,1).

これは Claim 5.2(i)の評価式である.

z2z2z2の存在性の証明 Claim 5.2(i)より,各 (s, t ) ∈に対して∃ limm(D)→0

z2(s, t ;D) =: z2(s, t ).

Claim 5.2(ii)より

|z2(s, t )−ξ2(s, t )| ≤C7(C ,θ,ω(0,1), p

)ω(s, t )θ. (5.10)

あと示すことは,z2 ∈C (→Rd ⊗Rd )と

z2(s, t ) = z2(s, u)+ z2(u, t )+ z1(s, u)⊗ z1(u, t ), 0 ≤ s ≤ u ≤ t ≤ 1 (5.11)

の2つである.Chenの恒等式については,0 ≤ s < u < t ≤ 1のとき

z2(s, t ) = limN→∞

N−1∑i=0

ξ2(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+

N−1∑i=0

ξ2(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

)+

N−1∑i=1

z1(s, s + i

N(u − s)

)⊗ z1(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+

N−1∑i=0

z1(s, u + i

N(t −u)

)⊗ z1(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

)= lim

N→∞

N−1∑i=0

ξ2(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+

N−1∑i=1

z1(s, s + i

N(u − s)

)⊗ z1(s + i

N(u − s), s + i +1

N(u − s)

)+

N−1∑i=0

ξ2(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

)+

N−1∑i=1

z1(s, u + i

N(t −u)

)⊗ z1(u + i

N(t −u), u + i +1

N(t −u)

)+ z1(s, u)⊗ z1(u, t )

96

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= z2(s, u)+ z2(u, t )+ z1(s, u)⊗ z1(u, t )

より明らかである.連続性については,(s′, t ′) → (s, s)のときは

|z2(s′, t ′)− z2(s, s)| = |z2(s′, t ′)|[

...⃝ z2(s, s) = 0]

≤ |ξ2(s′, t ′)|+C7(C ,θ,ω(0,1), p)ω(s′, t ′)θ[

...⃝ (5.10)より]

→|ξ2(s, s)|+C7(C ,θ,ω(0,1), p)ω(s, s)θ

= 0.

s < t のときは,(s′, t ′)が十分に (s, t )の近くにあるならば

s′ ≤ s ≤ t ′ ≤ t

or

s′ ≤ s ≤ t ≤ t ′

or

s ≤ s′ ≤ t ′ ≤ t

or

s ≤ s′ ≤ t ≤ t ′

のいずれかの場合にあるので,(5.11)より

|z2(s′, t ′)− z2(s, t )| =

|z2(s′, s)+ z1(s′, s)⊗ z1(s, t ′)− z2(t ′, t )− z1(s, t ′)⊗ z1(t ′, t )|or

|z2(s′, s)+ z2(t , t ′)+ z1(s′, s)⊗ z1(s, t )+ z1(s′, t )⊗ z1(t , t ′)|or

|z2(s′, s)+ z2(t ′, t )+ z1(s, s′)⊗ z1(s′, t ′)+ z1(s, t ′)⊗ z1(t ′, t )|or

|z2(s, s′)+ z1(s, s′)⊗ z1(s′, t )− z2(t , t ′)− z1(s′, t )⊗ z1(t , t ′)|

|z2(s′, s)|+ |z2(t ′, t )|+ |z1(s′, s)||z1(s, t ′)|+ |z1(s, t ′)||z1(t ′, t )|or

|z2(s′, s)|+ |z2(t , t ′)|+ |z1(s′, s)||z1(s, t )|+ |z1(s′, t )||z1(t , t ′)|or

|z2(s, s′)|+ |z2(t ′, t )|+ |z1(s, s′)||z1(s′, t ′)|+ |z1(s, t ′)||z1(t ′, t )|or

|z2(s, s′)|+ |z2(t , t ′)|+ |z1(s, s′)||z1(s′, t )|+ |z1(s′, t )||z1(t , t ′)|

97

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→ 0 as (s′, t ′) → (s, t ).

z = (1, z1, z2)z = (1, z1, z2)z = (1, z1, z2)の一意性の証明 今,w = (1, w1, w2) ∈Ωp(Rd )は,適当な control function

ωと θ ∈ (1,∞)に対して |w1(s, t )−ξ1(s, t )| ≤ ω(s, t )θ,

|w2(s, t )−ξ2(s, t )| ≤ ω(s, t )θ.(∀(s, t ) ∈) (5.12)

をみたすとする.0 ≤ s < t ≤ 1を任意に fixし,DN を [s, t ]の N 等分割,i.e., DN = s = t0 < t1 < ·· · <

tN = t , ti = s + iN (t − s) (i = 0,1, . . . ,N)とする.このとき

|w1(s, t )− z1(DN )| =∣∣∣N−1∑

i=0

(w1(ti , ti+1)−ξ1(ti , ti+1)

)∣∣∣≤

N−1∑i=0

|w1(ti , ti+1)−ξ1(ti , ti+1)|

≤N−1∑i=0

ω(ti , ti+1)θ[

...⃝ (5.12)]

≤(

max0≤i≤N−1

ω(ti , ti+1))θ−1

ω(s, t )

≤(

max|u−v|≤ t−s

N

ω(u, v))θ−1

ω(s, t )

→ 0 as N →∞.

また z1(DN ) → z1(s, t ) as N →∞であるので w1 = z1.

次に

|w2(s, t )− z2(DN )| =∣∣∣N−1∑

i=0w2(ti , ti+1)+

N−1∑i=1

w1(t0, ti )⊗w1(ti , ti+1)

−N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)−N−1∑i=1

z1(t0, ti )⊗ z1(ti , ti+1)∣∣∣

=∣∣∣N−1∑

i=0

(w2(ti , ti+1)−ξ2(ti , ti+1)

)+

N−1∑i=1

(w1(t0, ti )⊗w1(ti , ti+1)− z1(t0, ti )⊗ z1(ti , ti+1)

)∣∣∣=

∣∣∣N−1∑i=0

(w2(ti , ti+1)−ξ2(ti , ti+1)

)∣∣∣ [...⃝ w1 = z1であるから

]≤

N−1∑i=0

|w2(ti , ti+1)−ξ2(ti , ti+1)|

98

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≤N−1∑i=0

ω(ti , ti+1)θ[

...⃝ (5.12)]

≤(

max|u−v|≤ t−s

N

ω(u, v))θ−1

ω(s, t )

→ 0 as N →∞

と z2(DN ) → z2(s, t ) (N →∞)より w2 = z2が分かる.

99

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6. Rough path xxxに沿っての積分∫

f (xu)dx(u)∫

f (xu)dx(u)∫

f (xu)dx(u)

前節に引き続き,2 ≤ p < 3とする.この節では,rough path x に沿って関数 f を積分することを定義し,その結果新たな rough pathが対応することを見る.(実は,その rough pathの first level pathが 3

節での積分∫∗· f (xu)dxu なのである.)

定義 6.1. x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )と f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して

ξ1(s, t ) := Js,t = f (xs)x1(s, t )+∇ f (xs)x2(s, t ), (6.1)

ξ2(s, t ) := f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, t )) (6.2)

と定義する.ここで

xs := x1(0, s)+a (a ∈Rd ).

また v = (v i j )i , j=1,...,d ∈Rd ⊗Rd に対して

f (x)⊗ f (x)(v) :=( ∑

1≤k,l≤df ik (x) f j

l (x)vkl)

i , j=1,...,n∈Rn ⊗Rn

とする.

Claim 6.1. ξ= (1,ξ1,ξ2) ∈ AΩp(Rn).

証明 適当な control function ωに対して |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p(6.3)

と仮定してよい.

1 まず (6.1)と (6.2)より

|ξ1(s, t )| ≤ ∥ f ∥∞|x1(s, t )|+∥∇ f ∥∞|x2(s, t )|≤ ∥ f ∥∞ω(s, t )1/p +∥∇ f ∥∞ω(s, t )2/p

[...⃝ (6.3)

]≤ (∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)

ω(s, t )1/p ,

|ξ2(s, t )| ≤ | f (xs)|2|x2(s, t )|[

...⃝ | f (x)⊗ f (x)(v)| ≤ | f (x)|2|v|]

≤ ∥ f ∥2∞ω(s, t )2/p

[...⃝ (6.3)

].

これは (5.1)を云っている.

100

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2 0 ≤ s < u < t ≤ 1を任意に fixする.(6.1)より

|ξ1(s, u)+ξ1(u, t )−ξ1(s, t )|= | f (xs)x1(s, u)+∇ f (xs)x2(s, u)+ f (xu)x1(u, t )+∇ f (xu)x2(u, t )

− f (xs)x1(s, t )−∇ f (xs)x2(s, t )|=

∣∣∣( f (xu)− f (xs))x1(u, t )−∇ f (xs)x1(s, u)⊗ x1(u, t )+ (∇ f (xu)−∇ f (xs)

)x2(u, t )

∣∣∣[...⃝ x1, x2が Chenの恒等式をみたすから

]=

∣∣∣∫1

0

(∇ f (xs +θx1(s, u))−∇ f (xs))dθx1(s, u)⊗ x1(u, t )

+∫1

0∇2 f (xs +θx1(s, u))dθx1(s, u)⊗x2(u, t )

∣∣∣=

∣∣∣∫1

0

∫θ

0∇2 f (xs + r x1(s, u))drdθx1(s, u)⊗x1(s, u)⊗ x1(u, t )

+∫1

0∇2 f (xs +θx1(s, u))dθx1(s, u)⊗x2(u, t )

∣∣∣≤ 1

2∥∇2 f ∥∞|x1(s, u)|2|x1(u, t )|+∥∇2 f ∥∞|x1(s, u)||x2(u, t )|

≤ 1

2∥∇2 f ∥∞ω(s, u)2/pω(u, t )1/p +∥∇2 f ∥∞ω(s, u)1/pω(u, t )1/p

[...⃝ (6.3)

]≤ 3

2∥∇2 f ∥∞ω(s, t )3/p .

これは (5.2)の1つ目の不等式である.次に (6.1)と (6.2)より

|ξ2(s, u)+ξ2(u, t )+ξ1(s, u)⊗ξ1(u, t )−ξ2(s, t )|=

∣∣∣ f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, u))+ f (xu)⊗ f (xu)(x2(u, t ))− f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, t ))

+ (f (xs)x1(s, u)+∇ f (xs)x2(s, u)

)⊗ (f (xu)x1(u, t )+∇ f (xu)x2(u, t )

)∣∣∣=

∣∣∣( f (xu)⊗ f (xu)− f (xs)⊗ f (xs))(x2(u, t ))− f (xs)x1(s, u)⊗ f (xs)x1(u, t )

+ f (xs)x1(s, u)⊗ f (xu)x1(u, t )+ f (xs)x1(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )

+∇ f (xs)x2(s, u)⊗ f (xu)x1(u, t )+∇ f (xs)x2(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )∣∣∣

=∣∣∣( f (xu)⊗ f (xu)− f (xs)⊗ f (xs)

)(x2(u, t ))

+ f (xs)x1(s, u)⊗ (f (xu)− f (xs)

)x1(u, t )+ f (xs)x1(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )

+∇ f (xs)x2(s, u)⊗ f (xu)x1(u, t )+∇ f (xs)x2(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )∣∣∣

=∣∣∣∫1

0∇ f (xs +θx1(s, u))x1(s, u)⊗ f (xs +θx1(s, u))dθ (x2(u, t ))

101

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+∫1

0f (xs +θx1(s, u))⊗∇ f (xs +θx1(s, u))x1(s, u)dθ (x2(u, t ))

+ f (xs)x1(s, u)⊗∫1

0∇ f (xs +θx1(s, u))dθx1(s, u)⊗ x1(u, t )

+ f (xs)x1(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )

+∇ f (xs)x2(s, u)⊗ f (xu)x1(u, t )

+∇ f (xs)x2(s, u)⊗∇ f (xu)x2(u, t )∣∣∣

≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|x1(s, u)||x2(u, t )|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(s, u)|2|x1(u, t )|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(s, u)||x2(u, t )|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x2(s, u)||x1(u, t )|+∥∇ f ∥2

∞|x2(s, u)||x2(u, t )|≤ ∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞

(2ω(s, u)1/pω(u, t )2/p +ω(s, u)2/pω(u, t )1/p

+ω(s, u)1/pω(u, t )2/p +ω(s, u)2/pω(u, t )1/p)

+∥∇ f ∥2∞ω(s, u)2/pω(u, t )2/p

≤ 5∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞ω(s, t )3/p +∥∇ f ∥2∞ω(s, t )4/p

≤ (5∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥∇ f ∥2

∞ω(0,1)1/p)ω(s, t )3/p .

これは (5.2)の2つ目の不等式である.以上のことより ξ= (1,ξ1,ξ2)は roughness pの almost rough pathである.

定義 6.2. Almost rough path ξ= (1,ξ1,ξ2)に associateした rough path z,即ち,定理5.1より,適当な control function ωと θ ∈ (1,∞)に対して |z1(s, t )−ξ1(s, t )| ≤ ω(s, t )θ,

|z2(s, t )−ξ2(s, t )| ≤ ω(s, t )θ

をみたす唯一の rough path z = (1, z1, z2)を∫f (xu)dx(u)

と表わし,rough path xに沿っての f の積分という.これは,C∞

b (Rd →Rn ⊗Rd )からΩp(Rn)への写像,即ち

C∞b (Rd →Rn ⊗Rd ) ∋ f 7→

∫f (xu)d x(u) ∈Ωp(Rn),

102

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また,Ωp(Rd )からΩp(Rn)への写像,即ち

Ωp(Rd ) ∋ x 7→∫

f (xu)dx(u) ∈Ωp(Rn)

である.

注意 6.1.(∫

f (xu)dx(u))

1,(∫

f (xu)dx(u))

2をそれぞれ∫

f (xu)dx(u)の first level path,

second level pathとする.(i)

(∫f (xu)dx(u)

)1(s, t ) = ∫t

s f (xu)dxu (右辺については定義 3.5を参照).これは定義より明らかである.(ii) x = (1, x1, x2) ∈ SΩp(Rd )ならば

(∫f (xu)dx(u)

)2(s, t ) =

Ïs≤v≤u≤t

f (xv )dxv ⊗ f (xu)dxu

=( ∑

1≤k,l≤d

Ïs≤v≤u≤t

f ik (xv ) f j

l (xu)xkv x l

u dvdu

)i , j=1,...,d

.

何となれば,xs = x1(0, s)+a (a ∈Rd )とすると

(xs)0≤s≤1は区分的にC 1級,

x1(s, t ) = xt −xs , x2(s, t ) =∫t

s(xu −xs)⊗dxu

である.D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t を [s, t ]の分割とするとき∣∣∣N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)∣∣∣= ∣∣∣N−1∑

i=0f (xti )⊗ f (xti )(x2(ti , ti+1))

∣∣∣≤

N−1∑i=0

| f (xti )|2|x2(ti , ti+1))|

≤ ∥ f ∥2∞

N−1∑i=0

(ti+1 − ti )2

2

(ess.sup |xv |

)2

≤ ∥ f ∥2∞

1

2m(D)(t − s)

(ess.sup |xv |

)2

→ 0 as m(D) → 0,

N−1∑i=1

∫ti

sf (xu)dxu ⊗

∫ti+1

ti

f (xu)dxu →∫t

s

∫u

sf (xv )dxv ⊗ f (xu)dxu

s≤v≤u≤tf (xv )dxv ⊗ f (xu)dxu as m(D) → 0

であるので (∫f (xu)d x(u)

)2(s, t )

103

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= limm(D)→0

(N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

∫ti

sf (xu)dxu ⊗

∫ti+1

ti

f (xu)dxu

)=

Ïs≤v≤u≤t

f (xv )dxv ⊗ f (xu)dxu .

Claim 5.1と 5.2を,積分∫

f (xu)dx(u)についての定理としてまとめておく.

定理 6.1. x = (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd )は,適当な control function ωに対して |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p

をみたすとする.このとき,∀ f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して∣∣∣(∫ f (xu)dx(u)

)1(s, t )− Js,t (x)

∣∣∣≤C2(

f , p)ω(s, t )3/p ,∣∣∣(∫ f (xu)d x(u)

)2(s, t )− f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, t ))

∣∣∣≤C8(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p .

ここで

C2(

f , p)= 3

223/pζ(3/p)∥∇2 f ∥∞,

C8(

f ,ω(0,1), p)

:= 23/pζ(3/p)

[5∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥∇ f ∥2

∞ω(0,1)1/p

+ 3

223/pζ(3/p)∥∇2 f ∥∞

×3

223/pζ(3/p)∥∇2 f ∥∞ω(0,1)3/p

+2(∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)

ω(0,1)1/p]

.

従って ∣∣∣(∫ f (xu)d x(u))

1(s, t )∣∣∣≤C1

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p ,∣∣∣(∫ f (xu)d x(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤C9(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )2/p .

ただし

C9(

f ,ω(0,1), p)

:=C8(

f ,ω(0,1), p)ω(0,1)1/p +∥ f ∥2

∞. (6.4)

積分∫

f (xu)dx(u)に関する連続性定理は次の通り:

104

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定理 6.2. x, y ∈Ωp(Rd )は次をみたすとする: 適当な control function ωに対して

|x1(s, t )|∨ |y1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |y2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x1(s, t )− y1(s, t )| ≤ εω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )− y2(s, t )| ≤ εω(s, t )2/p .

このとき,x0 = y0ならば,∀ f ∈C∞b (Rd →Rn ⊗Rd )に対して∣∣∣(∫ f (xu)dx(u)

)1(s, t )− (∫

f (yu)d y(u))

1(s, t )∣∣∣≤ εC3

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p ,∣∣∣(∫ f (xu)d x(u)

)2(s, t )− (∫

f (yu)d y(u))

2(s, t )∣∣∣≤ εC11

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )2/p .

ここでC3(

f ,ω(0,1), p), C11

(f ,ω(0,1), p

)はそれぞれ (2.18), (6.9)によって定義される定

数である.

証明 xs = x1(0, s)+a, ys = y1(0, s)+a (a ∈Rd )とする.Almost rough path ξ= (1,ξ1,ξ2),

η= (1,η1,η2)を

ξ1(s, t ) = f (xs)x1(s, t )+∇ f (xs)x2(s, t ),

η1(s, t ) = f (ys)y1(s, t )+∇ f (ys)y2(s, t ),

ξ2(s, t ) = f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, t ))

η2(s, t ) = f (ys)⊗ f (ys)(y2(s, t ))

とおく.0 ≤ s < t ≤ 1を任意にとり fixする.

1 First level pathについての評価式は,すでに,定理 3.2 (正確には定理 2.2)で得られている: ∣∣∣(∫ f (xu)dx(u)

)1(s, t )− (∫

f (yu)d y(u))

1(s, t )− (ξ1(s, t )−η1(s, t )

)∣∣∣≤ εC4

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )3/p , (6.5)

|ξ1(s, t )−η1(s, t )|≤ εC5

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p . (6.6)

この2つを合せることにより∣∣∣(∫ f (xu)dx(u))

1(s, t )− (∫f (yu)d y(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ ε

(C4

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )3/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p

)105

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≤ ε(C4

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)2/p +C5

(f ,ω(0,1), p

))ω(s, t )1/p

= εC3(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )1/p .

2 Second level pathについての評価.簡単のため

Is,t (x) =∫t

sf (xu)dxu , Is,t (y) =

∫t

sf (yu)d yu

とおく.[s, t ]の分割 Dに対して,almost rough path ξ, ηについて (5.9)により定義される z2(D)をそれぞれ z2(ξ;D), z2(η;D)と表わす.即ち,D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t

のとき

z2(ξ;D) =N−1∑i=0

ξ2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

Is,ti (x)⊗ Iti ,ti+1 (x),

z2(η;D) =N−1∑i=0

η2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

Is,ti (y)⊗ Iti ,ti+1 (y).

今,[s, t ]の分割 D (ただし #D ≥ 3)に対し,Claim 1.1(ii)の証明のように,[s, t ]の分割列 D0,D1, . . . ,DM を取る.このとき∣∣∣z2(ξ;D)− z2(η;D)− (

ξ2(s, t )−η2(s, t ))∣∣∣

=∣∣∣z2(ξ;D0)− z2(η;D0)− (

z2(ξ;DM )− z2(η;DM ))∣∣∣

=∣∣∣∣ M∑

m=1

(z2(ξ;Dm−1)− z2(η;Dm−1)− (

z2(ξ;Dm)− z2(η;Dm)))∣∣∣∣

≤M∑

m=1

∣∣∣z2(ξ;Dm−1)− z2(η;Dm−1)− (z2(ξ;Dm)− z2(η;Dm)

)∣∣∣=

M∑m=1

∣∣∣ξ2(σm ,σm)+ξ2(σm ,σm)−ξ2(σm ,σm)+ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)

+ Iσm ,σm (x)⊗ Iσm ,σm (x)−ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)

−(η2(σm ,σm)+η2(σm ,σm)−η2(σm ,σm)+η1(σm ,σm)⊗η1(σm ,σm)

+ Iσm ,σm (y)⊗ Iσm ,σm (y)−η1(σm ,σm)⊗η1(σm ,σm))∣∣∣

≤M∑

m=1

∣∣∣ξ2(σm ,σm)+ξ2(σm ,σm)−ξ2(σm ,σm)+ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)

−(η2(σm ,σm)+η2(σm ,σm)−η2(σm ,σm)+η1(σm ,σm)⊗η1(σm ,σm)

)∣∣∣+

M∑m=1

∣∣∣Iσm ,σm (x)⊗ Iσm ,σm (x)−ξ1(σm ,σm)⊗ξ1(σm ,σm)

− Iσm ,σm (y)⊗ Iσm ,σm (y)+η1(σm ,σm)⊗η1(σm ,σm)∣∣∣.

106

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ここで 0 ≤ u ≤ v ≤ w ≤ 1に対して

ξ2(u, v)+ξ2(v, w)−ξ2(u, w)+ξ1(u, v)⊗ξ1(v, w)

=∫1

0∇ f (xu +θx1(u, v))x1(u, v)⊗ f (xu +θx1(u, v))dθ (x2(v, w))

+∫1

0f (xu +θx1(u, v))⊗∇ f (xu +θx1(u, v))x1(u, v)dθ (x2(v, w))

+ f (xu)x1(u, v)⊗∫1

0∇ f (xu +θx1(u, v))dθx1(u, v)⊗ x1(v, w)

+ f (xu)x1(u, v)⊗∇ f (xv )x2(v, w)

+∇ f (xu)x2(u, v)⊗ f (xv )x1(v, w)

+∇ f (xu)x2(u, v)⊗∇ f (xv )x2(v, w)

であるので∣∣∣ξ2(u, v)+ξ2(v, w)−ξ2(u, w)+ξ1(u, v)⊗ξ1(v, w)

− (η2(u, v)+η2(v, w)−η2(u, w)+η1(u, v)⊗η1(v, w)

)∣∣∣=

∣∣∣∫1

0∇ f (xu +θx1(u, v))x1(u, v)⊗ f (xu +θx1(u, v))dθ (x2(v, w))

−∫1

0∇ f (yu +θy1(u, v))y1(u, v)⊗ f (yu +θy1(u, v))dθ (y2(v, w))

+∫1

0f (xu +θx1(u, v))⊗∇ f (xu +θx1(u, v))x1(u, v)dθ (x2(v, w))

−∫1

0f (yu +θy1(u, v))⊗∇ f (yu +θy1(u, v))y1(u, v)dθ (y2(v, w))

+ f (xu)x1(u, v)⊗∫1

0∇ f (xu +θx1(u, v))dθx1(u, v)⊗x1(v, w)

− f (yu)y1(u, v)⊗∫1

0∇ f (yu +θy1(u, v))dθ y1(u, v)⊗ y1(v, w)

+ f (xu)x1(u, v)⊗∇ f (xv )x2(v, w)

− f (yu)y1(u, v)⊗∇ f (yv )y2(v, w)

+∇ f (xu)x2(u, v)⊗ f (xv )x1(v, w)

−∇ f (yu)y2(u, v)⊗ f (yv )y1(v, w)

+∇ f (xu)x2(u, v)⊗∇ f (xv )x2(v, w)

−∇ f (yu)y2(u, v)⊗∇ f (yv )y2(v, w)∣∣∣

≤ ∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞(|x1(0, u)− y1(0, u)|+ |x1(u, v)− y1(u, v)|)

×|x1(u, v)||x2(u, v)|

107

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+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|x1(u, v)− y1(u, v)||x2(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|y1(u, v)|(|x1(0, u)− y1(0, u)|+ |x1(u, v)− y1(u, v)|)|x2(v, w)|+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|y1(u, v)||x2(v, w)− y2(v, w)|+ ∥∇ f ∥2

∞(|x1(0, u)− y1(0, u)|+ |x1(u, v)− y1(u, v)|)

×|x1(u, v)||x2(v, w)|+ ∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞

(|x1(0, u)− y1(0, u)|+ |x1(u, v)− y1(u, v)|)×|x1(u, v)||x2(v, w)|

+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(u, v)− y1(u, v)||x2(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|y1(u, v)||x2(v, w)− y2(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|x1(0, u)− y1(0, u)||x1(u, v)|2|x1(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(u, v)− y1(u, v)||x1(u, v)||x1(v, w)|+ ∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞|y1(u, v)|(|x1(0, u)− y1(0, u)|+ |x1(u, v)− y1(u, v)|)

×|x1(u, v)||x1(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|y1(u, v)||x1(u, v)− y1(u, v)||x1(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|y1(u, v)|2|x1(v, w)− y1(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|x1(0, u)− y1(0, u)||x1(u, v)||x2(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(u, v)− y1(u, v)||x2(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞|y1(u, v)||x1(0, v)− y1(0, v)||x2(v, w)|+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞|y1(u, v)||x2(v, w)− y2(v, w)|+∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞|x1(0, u)− y1(0, u)||x2(u, v)||x1(v, w)|+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|x2(u, v)− y2(u, v)||x1(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|y2(u, v)||x1(0, u)− y1(0, u)||x1(v, w)|+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|y2(u, v)||x1(v, w)− y1(v, w)|+∥∇2 f ∥∞∥∇ f ∥∞|x1(0, u)− y1(0, u)||x2(u, v)||x2(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|x2(u, v)− y2(u, v)||x2(v, w)|+∥∇ f ∥∞∥∇2 f ∥∞|y2(u, v)||x1(0, v)− y1(0, v)||x2(v, w)|+∥∇ f ∥2

∞|y2(u, v)||x2(v, w)− y2(v, w)|≤ ε

[∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞2ω(0,1)1/p +∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2

∞2ω(0,1)1/p

+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2∞2ω(0,1)1/p +∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞2ω(0,1)1/p

+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥∇ f ∥2∞ω(0,1)1/p

+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞2ω(0,1)1/p +∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥∇ f ∥2

∞ω(0,1)1/p +∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞

108

Page 117: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

+∥ f ∥∞∥∇2 f ∥∞ω(0,1)1/p +∥ f ∥∞∥∇ f ∥∞+∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞ω(0,1)1/p

+∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2∞ω(0,1)1/p +∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞

+∥∇2 f ∥∞∥∇ f ∥∞ω(0,1)2/p +∥∇ f ∥2∞ω(0,1)1/p +∥∇ f ∥∞∥∇2 f ∥∞ω(0,1)2/p

+∥∇ f ∥2∞ω(0,1)1/p

]ω(u, w)3/p

= ε[

11∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2∞9ω(0,1)1/p +∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞8ω(0,1)1/p

+∥∇2 f ∥∞∥∇ f ∥∞2ω(0,1)2/p]ω(u, w)3/p .

また ∣∣∣Iu,v (x)⊗ Iv,w (x)− ξ1(u, v)⊗ξ1(v, w)− Iu,v (y)⊗ Iv,w (y)+η1(u, v)⊗η1(v, w)∣∣∣

=∣∣∣(Iu,v (x)−ξ1(u, v)

)⊗ Iv,w (x)+ξ1(u, v)⊗ (Iv,w (x)−ξ1(v, w)

)− (

Iu,v (y)−η1(u, v))⊗ Iv,w (y)−η1(u, v)⊗ (

Iv,w (y)−η1(v, w))∣∣∣

=∣∣∣(Iu,v (x)− Iu,v (y)− (ξ1(u, v)−η1(u, v))

)⊗ Iv,w (x)

+ (Iu,v (y)−η1(u, v)

)⊗ (Iv,w (x)− Iv,w (y)

)+ (

ξ1(u, v)−η1(u, v))⊗ (

Iv,w (x)−ξ1(v, w))

+η1(u, v)⊗ (Iv,w (x)− Iv,w (y)− (ξ1(v, w)−η1(v, w))

)∣∣∣≤ |Iu,v (x)− Iu,v (y)− (ξ1(u, v)−η1(u, v))||Iv,w (x)|+ |Iu,v (y)−η1(u, v)||Iv,w (x)− Iv,w (y)|+ |ξ1(u, v)−η1(u, v)||Iv,w (x)−ξ1(v, w)|+ |η1(u, v)||Iv,w (x)− Iv,w (y)− (ξ1(v, w)−η1(v, w))|

≤ ε[C4

(f ,ω(0,1), p

)ω(u, v)3/pC1

(f ,ω(0,1), p

)ω(v, w)1/p

+C2(

f , p)ω(u, v)3/pC3

(f ,ω(0,1), p

)ω(v, w)1/p

+C5(

f ,ω(0,1), p)ω(u, v)1/pC2

(f , p

)ω(v, w)3/p

+ (∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)ω(u, v)1/pC4

(f ,ω(0,1), p

)ω(v, w)3/p

]≤ ε

[C4

(f ,ω(0,1), p

)C1

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p

+C2(

f , p)C3

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)C2

(f , p

)ω(0,1)1/p

+ (∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)ω(0,1)1/pC4

(f ,ω(0,1), p

)]ω(u, w)3/p .

よって∣∣∣z2(ξ;D)− z2(η;D)− (ξ2(s, t )−η2(s, t )

)∣∣∣≤ ε

[11∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2

∞9ω(0,1)1/p +∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞8ω(0,1)1/p

109

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+∥∇2 f ∥∞∥∇ f ∥∞2ω(0,1)2/p

+C4(

f ,ω(0,1), p)C1

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p

+C2(

f , p)C3

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)C2

(f , p

)ω(0,1)1/p

+ (∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)ω(0,1)1/pC4

(f ,ω(0,1), p

)] M∑m=1

ω(σm ,σm)3/p

≤ ε[

11∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+∥∇ f ∥2∞9ω(0,1)1/p +∥∇2 f ∥∞∥ f ∥∞8ω(0,1)1/p

+∥∇2 f ∥∞∥∇ f ∥∞2ω(0,1)2/p

+C4(

f ,ω(0,1), p)C1

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p

+C2(

f , p)C3

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p +C5

(f ,ω(0,1), p

)C2

(f , p

)ω(0,1)1/p

+ (∥ f ∥∞+∥∇ f ∥∞ω(0,1)1/p)ω(0,1)1/pC4

(f ,ω(0,1), p

)]23/pζ(3/p)ω(s, t )3/p[

...⃝ω(σm ,σm) ≤ 2ω(s, t )

M −m +1であるから

]=: εC10

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )3/p . (6.7)

m(D) → 0とすることにより∣∣∣(∫ f (xu)dx(u))

2(s, t )− (∫f (yu)d y(u)

)2(s, t )− (

ξ2(s, t )−η2(s, t ))∣∣∣

≤ εC10(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p . (6.8)

最後に

|ξ2(s, t )−η2(s, t )|=

∣∣∣ f (xs)⊗ f (xs)(x2(s, t ))− f (ys)⊗ f (ys)(y2(s, t ))∣∣∣

=∣∣∣∫1

0∇ f (θxs + (1−θ)ys)

(x1(0, s)− y1(0, s)

)⊗ f (θxs + (1−θ)ys)dθ (x2(s, t ))

+∫1

0f (θxs + (1−θ)ys)⊗∇ f (θxs + (1−θ)ys)

(x1(0, s)− y1(0, s)

)dθ (x2(s, t ))

+ f (ys)⊗ f (ys)(x2(s, t )− y2(s, t )

)∣∣∣≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|x1(0, s)− y1(0, s)||x2(s, t )|+∥ f ∥2

∞|x2(s, t )− y2(s, t )|≤ ε

(2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞ω(0,1)1/p +∥ f ∥2

∞)ω(s, t )2/p

であるので,上の評価式と合わせれば∣∣∣(∫ f (xu)d x(u))

2(s, t )− (∫f (yu)d y(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤ ε

(C10

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p +2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞ω(0,1)1/p +∥ f ∥2

∞)ω(s, t )2/p

110

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=: εC11(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )2/p (6.9)

が分かる.

系 6.1. 写像Ωp(Rd ) ∋ x 7→∫f (xu)dx(u) ∈Ωp(Rn)は連続である.この連続性は x0につ

いて一様である.

証明 (x(m))∞m=1 ⊂Ωp(Rd ), x ∈Ωp(Rd )は

limm→∞dp(x(m), x) = 0

とする.任意の部分列 mk ∞k=1に対して,Claim 3.2より,kの部分列 kl ∞l=1と control

function ωが存在して

|x(mkl)

1 (s, t )|∨ |x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x(mkl)

2 (s, t )|∨ |x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p ,

|x(mkl)

1 (s, t )− x1(s, t )| ≤ 1

2lω(s, t )1/p ,

|x(mkl)

2 (s, t )− x2(s, t )| ≤ 1

2lω(s, t )2/p

となる.このとき定理 6.2より,∀a ∈Rd に対して∣∣∣(∫ f(x

(mkl)

1 (0, u)+a)dx(mkl

)(u))

1(s, t )− (∫f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ 1

2lC3

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )1/p ,∣∣∣(∫ f

(x

(mkl)

1 (0, u)+a)dx(mkl

)(u))

2(s, t )− (∫f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤ 1

2lC11

(f ,ω(0,1), p

)ω(s, t )2/p

であるので

supa∈Rd

dp

(∫f(x

(mkl)

1 (0, u)+a)dx(mkl

)(u),∫

f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)= sup

a∈Rd

(∥∥∥(∫f(x

(mkl)

1 (0, u)+a)dx(mkl

)(u))

1 −(∫

f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)1

∥∥∥p

+∥∥∥(∫

f(x

(mkl)

1 (0, u)+a)dx(mkl

)(u))

2 −(∫

f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)2

∥∥∥p/2

)≤ 1

2l

(C3

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)1/p +C11

(f ,ω(0,1), p

)ω(0,1)2/p

)→ 0 as l →∞.

111

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これは

limm→∞ sup

a∈Rddp

(∫f(x(m)

1 (0, u)+a)dx(m)(u),

∫f(x1(0, u)+a

)dx(u)

)= 0

を implyする.

系 6.2. 写像 Rd ∋ a 7→∫f(x1(0, u)+a

)dx(u) ∈Ωp(Rn)は連続である.

証明 定理 6.2の証明と全く同様の手順を踏んで次のことが分かる: x ∈Ωp(Rd )が適当な control function ωに対して

|x1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p

なるものとするとき∣∣∣(∫ f (x1(0, u)+a)dx(u))

1(s, t )− (∫f (x1(0, u)+b)dx(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ |a −b|const1ω(s, t )1/p ,∣∣∣(∫ f (x1(0, u)+a)dx(u)

)2(s, t )− (∫

f (x1(0, u)+b)dx(u))

2(s, t )∣∣∣

≤ |a −b|const2ω(s, t )2/p .

ここで const1 は p, ω(0,1), f の1~3階微分の sup-normに依る定数,const2 は p,

ω(0,1), f の3階微分までの sup-normに依る定数である.この評価式より系 6.2の主張は明らかであろう.

112

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7. 常微分方程式の初期値問題(xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd )が区分的にC 1級のとき,∀ f ∈C∞

b (Rν →Rν⊗Rd )注22, ∀η ∈Rν

に対し,常微分方程式 (略して ODE)の初期値問題yt = f (yt )xt ,

y0 = η,(7.1)

換言すれば,積分方程式

yt = η+∫t

0f (ys)dxs

は,一意的な解 (yt )0≤t≤1をもつ.さらに,この解は Picardの逐次近似法により具体的に (とは云っても逐次解の極限としてであるが...) (xt )0≤t≤1と ηの汎関数として与えることができる.

6節で,我々は rough path x に対し,“積分∫

f (xu)dx(u) ”を定義した.ということは,上のような積分方程式,即ち,driving pathが rough path xで,未知の pathをrough path y とする

y =∫

f (yu)dx(u), y0 = η

なる積分方程式が考えられよう.今節では,この問題について次のように順を追って見ていく:

まず,小節 7.1で,rough pathに対する ODEの初期値問題の定式化を与える.小節7.2では,解の存在性,そして小節 7.3では,解の一意性を示す.小節 7.4では,この一意解が,初期値 ηと rough path x の汎関数として連続であることを示す.最後の小節 7.5では,driving pathが smoothのとき小節 7.3で得られる一意解は,従来のODE

の初期値問題 (7.1)の一意解そのものであることを確かめておく.

7.1. ODEの初期値問題の定式化以下,7節を通じて 2 ≤ p < 3とし fixする.

定義 7.1. z ∈Rd+ν, A ∈Rd+ν⊗Rd+ν,即ち,(d+ν)項列ベクトル z = (z i )i=1,...,d+ν, (d+ν)

次行列 A = (akl )k,l=1,...,d+νに対して

πRd (z) := (z i )i=1,...,d ∈Rd ,

πRν(z) := (zd+i )i=1,...,ν ∈Rν,

πRd⊗Rd (A) := (akl )k,l=1,...,d ∈Rd ⊗Rd ,

注22今までの流儀だと Rの次元を表わすのに n を使ったが,今節では,νを採る.何故かというと,nは点列・rough path列等の添数に用いるからである.

113

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πRd⊗Rν(A) := (ak d+l )k=1,...,d ,l=1,...,ν ∈Rd ⊗Rν,

πRν⊗Rd (A) := (ad+k l )k=1,...,ν,l=1,...,d ∈Rν⊗Rd ,

πRν⊗Rν(A) := (ad+k d+l )k,l=1,...,ν ∈Rν⊗Rν

と定義する.換言すれば

z =:

(πRd (z)

πRν(z)

),

A =:

(πRd⊗Rd (A) πRd⊗Rν(A)

πRν⊗Rd (A) πRν⊗Rν(A)

).

定義 7.2. z = (1, z1, z2) ∈Ωp(Rd+ν)に対して,z1 ∈ Rd+ν (i.e., z1 は (d +ν)項列ベクトル), z2 ∈Rd+ν⊗Rd+ν (i.e., z2は (d +ν)次行列)であるので

x1 =πRd (z1), x2 =πRd⊗Rd (z2),

y1 =πRν(z1), y2 =πRν⊗Rν(z2)

とおけば,x := (1, x1, x2) ∈Ωp(Rd ), y = (1, y1, y2) ∈Ωp(Rν)となる (これについては,下の注意 7.1を見よ).これをそれぞれ πRd (z), πRν(z)と表わすことにする.

注意 7.1. 定義より,x, y はそれぞれC (→ T 2(Rd )), C (→ T 2(Rν))の元で,Chenの恒等式をみたすのは明らかである.z ∈Ωp(Rd+ν)であるので,適当な control function

ωに対して

|z1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|z2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p(∀(s, t ) ∈)

が成り立つ.ここで

|z1(s, t )| =√

|x1(s, t )|2 +|y1(s, t )|2 ≥ |x1(s, t )|∨ |y1(s, t )||z2(s, t )| ≥

√|x2(s, t )|2 +|y2(s, t )|2 ≥ |x2(s, t )|∨ |y2(s, t )|

に注意すれば

|x1(s, t )|∨ |y1(s, t )| ≤ω(s, t )1/p ,

|x2(s, t )|∨ |y2(s, t )| ≤ω(s, t )2/p .

よって,確かに x ∈Ωp(Rd ), y ∈Ωp(Rν)である.

114

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定義 7.3. f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd )に対して, f ∈C∞

b (Rd+ν →Rd+ν⊗Rd+ν)を次のように定義:

f((x

y

)):=

(1d O

f (y) O

). (7.2)

ここで 1d は d 次の単位行列である.

注意 7.2.(x

y

) ∈Rd+ν, ζ ∈Rd+ν, A ∈Rd+ν⊗Rd+νに対して

f((x

y

))ζ=

(πRd (ζ)

f (y)πRd (ζ)

),

∇ f((x

y

))A =

(0

∇ f (y)πRν⊗Rd (A)

),

f((x

y

))⊗ f((x

y

))(A) =

(πRd⊗Rd (A) 1⊗ f (y)

(πRd⊗Rd (A)

)f (y)⊗1

(πRd⊗Rd (A)

)f (y)⊗ f (y)

(πRd⊗Rd (A)

) ).

定義 7.4. x ∈Ωp(Rd ), f ∈C∞b (Rν → Rν⊗Rd ), η ∈ Rνとする.y ∈Ωp(Rν)が次をみたす

ときODEの初期値問題 d y = f (y)dx,

y0 = η(7.3)

の解であるという: ある z ∈Ωp(Rd+ν)が存在して

πRν(z) = y , (7.4)

πRd (z) = x, (7.5)

z =∫

f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u). (7.6)

ここで f は (7.2)で定義されるC∞b (Rd+ν →Rd+ν⊗Rd+ν)の元である.

注意 7.3. ∀z ∈Ωp(Rd+ν)に対して,積分∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)は ξに依っていない.

何となれば,[s, t ]の分割D = s = t0 < t1 < ·· · < tN = t に対して,注意 7.2より(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, t )

= limm(D)→0

N−1∑i=0

f(z1(0, ti )+ (ξ

η

))z1(ti , ti+1)+∇ f

(z1(0, ti )+ (ξ

η

))z2(ti , ti+1)

= lim

m(D)→0

N−1∑i=0

(πRd (z1(ti , ti+1))

f(πRν(z1(0, ti ))+η

)πRd (z1(ti , ti+1))

)

+(

0

∇ f(πRν(z1(0, ti ))+η

)πRν⊗Rd (z2(ti , ti+1))

)

115

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= limm(D)→0

N−1∑i=0

f(z1(0, ti )+ (0

η

))z1(ti , ti+1)+∇ f

(z1(0, ti )+ (0

η

))z2(ti , ti+1)

=

(∫f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)1(s, t ),(∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)2(s, t )

= limm(D)→0

N−1∑i=0

f(z1(0, ti )+ (ξ

η

))⊗ f(z1(0, ti )+ (ξ

η

))(z2(ti , ti+1)

)+

N−1∑i=1

(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, ti )⊗

(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(ti , ti+1)

= limm(D)→0

N−1∑i=0

f(z1(0, ti )+ (0

η

))⊗ f(z1(0, ti )+ (0

η

))(z2(ti , ti+1)

)+

N−1∑i=1

(∫f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)1(s, ti )⊗

(∫f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)1(ti , ti+1)

=

(∫f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)2(s, t )

となるからである.このことから,定義 7.4において (7.6)の初期条件は(0η

)とした.し

かし,以下の小節では(ξη

)とする.

7.2. 解の存在性定義 7.5. ε,δ ∈R \ 0に対して,作用素 Γε,δ : Ωp(Rd+ν) →Ωp(Rd+ν)を次のように定義する: z = (1, z1, z2), z1 = (z i

1)i=1,...,d+ν, z2 = (zkl2 )k,l=1,...,d+νとするとき

(Γε,δz

)i1 :=

εz i1 1 ≤ i ≤ d,

δz i1 d +1 ≤ i ≤ d +ν,

(Γε,δz

)kl2 :=

ε2zkl

2 1 ≤ k, l ≤ d,

εδzkl2 1 ≤ k ≤ d, d +1 ≤ l ≤ d +ν or d +1 ≤ k ≤ d +ν, 1 ≤ l ≤ d,

δ2zkl2 d +1 ≤ k, l ≤ d +ν.

換言すれば

(Γε,δz

)1 :=

(ε1d O

O δ1ν

)z1,

(Γε,δz

)2 :=

(ε1d O

O δ1ν

)z2

(ε1d O

O δ1ν

)

(ここで 1d , 1νはそれぞれ d 次,ν次の単位行列である).

116

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一般に ζ= (1,ζ1,ζ2) ∈C (→ T 2(Rd+ν))に対して,Γε,δζを上のように定義する.明らかに Γε,δζ ∈C (→ T 2(Rd+ν))である.

この定義より,次のことは明らかである:

補題 7.1. (i) Γε,δはΩp(Rd+ν)上の連続な作用素.(ii) Γ1,δ−1 Γε,δ = Γε,1.

証明 (ii)は明らか.(i)について.D = 0 = t0 < t1 · · · < tN = 1を [0,1]の分割とするとき

N−1∑i=0

∣∣∣(Γε,δz)

1(ti , ti+1)− (Γε,δw

)1(ti , ti+1)

∣∣∣p

=N−1∑i=0

( d∑k=1

ε2(zk1 (ti , ti+1)−wk

1 (ti , ti+1))2 +

d+ν∑k=d+1

δ2(zk1 (ti , ti+1)−wk

1 (ti , ti+1))2

)p/2

≤ (|ε|∨ |δ|)pN−1∑i=0

∣∣∣z1(ti , ti+1)−w1(ti , ti+1)∣∣∣p

,

N−1∑i=0

∣∣∣(Γε,δz)

2(ti , ti+1)− (Γε,δw

)2(ti , ti+1)

∣∣∣p/2

=N−1∑i=0

( d∑k,l=1

ε4(zkl2 (ti , ti+1)−wkl

2 (ti , ti+1))2

+d∑

k=1

d+ν∑l=d+1

ε2δ2(zkl2 (ti , ti+1)−wkl

2 (ti , ti+1))2

+d+ν∑

k=d+1

d∑l=1

ε2δ2(zkl2 (ti , ti+1)−wkl

2 (ti , ti+1))2

+d+ν∑

k,l=d+1δ4(zkl

2 (ti , ti+1)−wkl2 (ti , ti+1)

)2)p/4

≤ (|ε|∨ |ε|1/2|δ|1/2 ∨|δ|)pN−1∑i=0

∣∣∣z2(ti , ti+1)−w2(ti , ti+1)∣∣∣p/2

= (|ε|∨ |δ|)pN−1∑i=0

∣∣∣z2(ti , ti+1)−w2(ti , ti+1)∣∣∣p/2

であるから

dp(Γε,δz,Γε,δw

)= ∥∥∥(Γε,δz

)1 −

(Γε,δw

)1

∥∥∥p+

∥∥∥(Γε,δz

)2 −

(Γε,δw

)2

∥∥∥p/2

≤ |ε|∨ |δ|∥z1 −w1∥p + (|ε|∨ |δ|)2∥z2 −w2∥p/2

≤ (|ε|∨ |δ|)(1∨|ε|∨ |δ|)dp(z, w).

117

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以下, f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd )を fixする.

補題 7.2. z ∈Ωp(Rd+ν), ε = 0に対して

Γε,ε

(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)=

∫f((Γε,1z)1(0, u)+ (ξ

η

))d(Γε,1z)(u).

証明 z ∈ Ωp(Rd+ν), x = πRd (z), y = πRν(z),(ξη

) ∈ Rd+ν (ξ ∈ Rd , η ∈ Rν), ε = 0 とする.Almost rough path Z (ε) = (1,Z (ε)1,Z (ε)2)を次のように定義する:

Z (ε)1(s, t ) := f((Γε,1z

)1(0, s)+ (ξ

η

))(Γε,1z

)1(s, t )

+∇ f((Γε,1z

)1(0, s)+ (ξ

η

))(Γε,1z

)2(s, t ),

Z (ε)2(s, t ) := f((Γε,1z

)1(0, s)+ (ξ

η

))⊗ f((Γε,1z

)1(0, s)+ (ξ

η

))((Γε,1z

)2(s, t )

).

定義 7.5より

(Γε,1z

)1(s, t ) =

(εx1(s, t )

y1(s, t )

),

(Γε,1z

)2(s, t ) =

(ε2x2(s, t ) επRd⊗Rν(z2(s, t ))

επRν⊗Rd (z2(s, t )) y2(s, t )

)

であるので,これと注意 7.2より

Z (ε)1(s, t ) =(

εx1(s, t )

ε f(y1(s, t )+η

)x1(s, t )

)+

(0

ε∇ f(y1(s, t )+η

)πRν⊗Rd (z2(s, t ))

),

= ε

(x1(s, t )

f(y1(s, t )+η

)x1(s, t )+∇ f

(y1(s, t )+η

)πRν⊗Rd (z2(s, t ))

)= εZ (1)1(s, t )

Z (ε)2(s, t ) = ε2

(x2(s, t ) 1⊗ f (y1(s, t )+η)

(x2(s, t )

)f (y1(s, t )+η)⊗1

(x2(s, t )

)f (y1(s, t )+η)⊗ f (y1(s, t )+η)

(x2(s, t )

))= ε2Z (1)2(s, t ).

よって Z (ε) = Γε,εZ (1)である.ところで定理 6.1より,適当な control function ωに対して∣∣∣(∫ f

(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, t )−Z (1)1(s, t )

∣∣∣≤C2(

f , p)ω(s, t )3/p ,∣∣∣(∫ f

(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)2(s, t )−Z (1)2(s, t )

∣∣∣≤C8(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p

118

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であるから,両辺を ε倍 or ε2倍すると∣∣∣(Γε,ε

(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

))1(s, t )−Z (ε)1(s, t )

∣∣∣≤ εC2(

f , p)ω(s, t )3/p ,∣∣∣(Γε,ε

(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

))2(s, t )−Z (ε)2(s, t )

∣∣∣≤ ε2C8(

f ,ω(0,1), p)ω(s, t )3/p .

定理 5.1より,これは補題 7.2の主張を implyする.

補題 7.3. z ∈Ωp(Rd+ν), x ∈πRd (z)は,適当な control function ωと定数C ≥ 0に対して

|x1(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p , |z1(s, t )| ≤ (Cω(s, t )

)1/p ,

|x2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p , |z2(s, t )| ≤ (Cω(s, t )

)2/p

をみたすとする.δ ∈ (0,1]に対し

K (δ,C , p) :=((1

2

)2/p +δ2C 2/p)p/2 ∨

((12

)4/p +δ2C 4/p)p/4

(7.7)

とおくならば ∣∣∣(Γ1,δz)

1(s, t )∣∣∣≤ (

K (δ,C , p)ω(s, t ))1/p

,∣∣∣(Γ1,δz)

2(s, t )∣∣∣≤ (

K (δ,C , p)ω(s, t ))2/p

が成り立つ.とくに,δ> 0を十分小さく取って K (δ,C , p) ≤ 1とするならば∣∣∣(Γ1,δz)

1(s, t )∣∣∣≤ω(s, t )1/p ,∣∣∣(Γ1,δz

)2(s, t )

∣∣∣≤ω(s, t )2/p

である.

証明 これは次のことから明らかであろう:∣∣∣(Γ1,δz)

1(s, t )∣∣∣=√

|x1(s, t )|2 +δ2|πRν(z1(s, t ))|2

≤√|x1(s, t )|2 +δ2|z1(s, t )|2

≤√(1

2ω(s, t ))2/p +δ2

(Cω(s, t )

)2/p

=(((1

2

)2/p +δ2C 2/p)p/2

ω(s, t )

)1/p

,

∣∣∣(Γ1,δz)

2(s, t )∣∣∣= (

|x2(s, t )|2 +δ2|πRd⊗Rν(z2(s, t ))|2

+δ2|πRν⊗Rd (z2(s, t ))|2 +δ4|πRν⊗Rν(z2(s, t ))|2)1/2

119

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≤√|x2(s, t )|2 +δ2|z2(s, t )|2

≤√(1

2ω(s, t ))4/p +δ2

(Cω(s, t )

)4/p

=(((1

2

)4/p +δ2C 4/p)p/4

ω(s, t )

)2/p

.

さて,x ∈Ωp(Rd ),(ξη

) ∈Rd+νを fixする.ただし x は適当な control function ωに対して |x1(s, t )| ≤ (1

2ω(s, t ))1/p ,

|x2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p(7.8)

をみたすものとする.(z(n))∞n=0 ⊂Ωp(Rd+ν)を次の漸化式により定義する:z(0)

1 :=(

x1

0

), z(0)

2 :=(

x2 O

O O

),

z(n) :=∫

f(z(n−1)

u

)dz(n−1)(u), n ≥ 1.

(7.9)

ただし

z(n)u = z(n)

1 (0, u)+ (ξη

).

そして(K

(n) = (1,K(n)1 ,K

(n)2 )

)∞n=0 ⊂ AΩp(Rd+ν)を次のように定義する: n = 0のときは

K(0)

:= z(0), n ≥ 1のときはK(n)1 (s, t ) := f

(z(n−1)

s

)z(n−1)

1 (s, t )+∇ f(z(n−1)

s

)z(n−1)

2 (s, t ),

K(n)2 (s, t ) := f

(z(n−1)

s

)⊗ f(z(n−1)

s

)(z(n−1)

2 (s, t )).

(7.10)

補題 7.4. (i) ∀n ≥ 0に対して

πRd (z(n)) =πRd (K(n)

) = x,

i.e.,

πRd

(z(n)

1 (s, t ))=πRd

(K

(n)1 (s, t )

)= x1(s, t ),

πRd⊗Rd

(z(n)

2 (s, t ))=πRd⊗Rd

(K

(n)2 (s, t )

)= x2(s, t ).

(ii) ∀n ≥ 1に対して

K(n)2 (s, t ) = f

(z(n−1)

s

)⊗ f(z(n−1)

s

)(x2(s, t ) O

O O

).

(iii) ∀(xy

) ∈Rd+ν, ∀n ≥ 1に対して

f((x

y

))(z(n)

1 (s, t )− z(n−1)1 (s, t )

)= 0.

120

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証明 K(n)の定義と注意 7.2より,n ≥ 1のとき

K(n)1 (s, t )

=(

πRd

(z(n−1)

1 (s, t ))

f(πRν(z(n−1)

s ))πRd

(z(n−1)

1 (s, t )))+(

0

∇ f(πRν(z(n−1)

s ))πRν⊗Rd

(z(n−1)

2 (s, t )))

=(

πRd

(z(n−1)

1 (s, t ))

f(πRν(z(n−1)

s ))πRd

(z(n−1)

1 (s, t ))+∇ f

(πRν(z(n−1)

s ))πRν⊗Rd

(z(n−1)

2 (s, t ))) , (7.11)

K(n)2 (s, t )

=

πRd⊗Rd

(z(n)

2 (s, t )) 1⊗ f

(πRν(z(n−1)

s ))(

πRd⊗Rd (z(n−1)2 (s, t ))

)f(πRν(z(n−1)

s ))⊗1(

πRd⊗Rd (z(n−1)2 (s, t ))

) f(πRν(z(n−1)

s ))⊗ f

(πRν(z(n−1)

s ))(

πRd⊗Rd (z(n−1)2 (s, t ))

)

(7.12)

であるから

πRd

(K

(n)1 (s, t )

)=πRd

(z(n−1)

1 (s, t )),

πRd⊗Rd

(K

(n)2 (s, t )

)=πRd⊗Rd

(z(n−1)

2 (s, t )).

(i)を nに関する帰納法で示す.n = 0のときは定義より明らかである.n = k (≥ 0)のとき,(i)が成り立つと仮定する.即ち

πRd

(z(k)

1 (s, t ))=πRd

(K

(k)1 (s, t )

)= x1(s, t ),

πRd⊗Rd

(z(k)

2 (s, t ))=πRd⊗Rd

(K

(k)2 (s, t )

)= x2(s, t ).

このとき,この仮定と上で見た等式より

πRd

(K

(k+1)1 (s, t )

)=πRd

(z(k)

1 (s, t ))= x1(s, t ), (7.13)

πRd⊗Rd

(K

(k+1)2 (s, t )

)=πRd⊗Rd

(z(k)

2 (s, t ))= x2(s, t ). (7.14)

積分の定義より,ti = s + iN (t − s) (i = 0,1, . . . ,N)とするならば

z(k+1)1 (s, t ) = lim

N→∞

N−1∑i=0

K(k+1)1 (ti , ti+1), (7.15)

z(k+1)2 (s, t ) = lim

N→∞

N−1∑i=0

K(k+1)2 (ti , ti+1)+

N−1∑i=1

z(k+1)1 (s, ti )⊗ z(k+1)

1 (ti , ti+1)

(7.16)

であるので

πRd

(z(k+1)

1 (s, t ))= lim

N→∞

N−1∑i=0

πRd

(K

(k+1)1 (ti , ti+1)

)121

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= limN→∞

N−1∑i=0

x1(ti , ti+1)[

...⃝ (7.13)]

= x1(s, t ), (7.17)

そして

πRd⊗Rd

(z(k+1)

2 (s, t ))

= limN→∞

N−1∑i=0

πRd⊗Rd

(K

(k+1)2 (ti , ti+1)

)+N−1∑i=1

πRd⊗Rd

(z(k+1)

1 (s, ti )⊗ z(k+1)1 (ti , ti+1)

)= lim

N→∞

N−1∑i=0

πRd⊗Rd

(K

(k+1)2 (ti , ti+1)

)+N−1∑i=1

πRd

(z(k+1)

1 (s, ti ))⊗πRd

(z(k+1)

1 (ti , ti+1))

[...⃝ ζ,ζ′ ∈Rd+νに対して πRd⊗Rd

(ζ⊗ζ′

)=πRd

(ζ)⊗πRd

(ζ′

)]= lim

N→∞

N−1∑i=0

x2(ti , ti+1)+N−1∑i=1

x1(s, ti )⊗ x1(ti , ti+1) [

...⃝ (7.14)と (7.13)]

= x2(s, t )[

...⃝ Chenの恒等式]

.

よって n = k +1のときも成り立つ.(ii)については,(i)と (7.12),そして注意 7.2より

K(n)2 (s, t )

=(

x2(s, t ) 1⊗ f(πRν(z(n−1)

s ))(

x2(s, t ))

f(πRν(z(n−1)

s ))⊗1

(x2(s, t )

)f(πRν(z(n−1)

s ))⊗ f

(πRν(z(n−1)

s ))(

x2(s, t )) )

= f (z(n−1)s )⊗ f (z(n−1)

s )

(x2(s, t ) O

O O

).

(iii)については,注意 7.2と (i)より

f((x

y

))(z(n)

1 (s, t )− z(n−1)1 (s, t )

)= (πRd

(z(n)

1 (s, t ))−πRd

(z(n−1)

1 (s, t ))

f (y)(πRd

(z(n)

1 (s, t ))−πRd

(z(n−1)

1 (s, t ))))

=(

x1(s, t )− x1(s, t )

f (y)(x1(s, t )− x1(s, t )

))= 0.

定理 6.1より,∀z = (1, z1, z2) ∈Ωp(Rd+ν), ∀ω: control function with ω(0,1) ≤ 1

s.t.

|z1(s, t )| ≤ ω(s, t )1/p ,

|z2(s, t )| ≤ ω(s, t )2/p ,

122

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そして ∀(xy

) ∈Rd+νに対して∣∣∣(∫ f

(z1(0, u)+ (x

y

))dz(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ (C12

(f , p

)ω(s, t )

)1/p ,∣∣∣(∫ f(z1(0, u)+ (x

y

))dz(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤ (C12

(f , p

)ω(s, t )

)2/p(7.18)

である.ただし

C12(

f , p)=C1

(f ,1, p

)p ∨C9(

f ,1, p)p/2. (7.19)

この定数C12(

f , p)を基にして,0 < δ≤ 1を

K(δ,C12( f , p), p

)≤ 1 (7.20)

となるように選ぶ (K (δ,C , p)については (7.7)を見よ),そして

ε := 1

δ≥ 1 (7.21)

とする.

補題 7.5. (7.8)における control function ωは

εpω(0,1) ≤ 1 (7.22)

をみたすとする.ただし εは (7.21)で定義されるもの.このとき,∀n ≥ 0に対して∣∣∣(Γε,1z(n))

1(s, t )∣∣∣≤ (

εpω(s, t ))1/p ,∣∣∣(Γε,1z(n))

2(s, t )∣∣∣≤ (

εpω(s, t ))2/p .

(7.23)

証明 nについての帰納法で示す.まず n = 0のときは

(Γε,1z(0))

1(s, t ) =(εx1(s, t )

0

),

(Γε,1z(0))

2(s, t ) =(ε2x2(s, t ) O

O O

)

であるから,(7.8)より ∣∣∣(Γε,1z(0))1(s, t )

∣∣∣= ε|x1(s, t )|≤ ε

(12ω(s, t )

)1/p

= (εp

2 ω(s, t ))1/p

123

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≤ (εpω(s, t )

)1/p ,∣∣∣(Γε,1z(0))2(s, t )

∣∣∣= ε2|x2(s, t )|≤ ε2(1

2ω(s, t ))2/p

= (εp

2 ω(s, t ))2/p

≤ (εpω(s, t )

)2/p .

次に,n = k (≥ 0)のとき,(7.23)が成り立つと仮定する.(7.22)に注意すれば,(7.18)

より ∣∣∣(∫ f((Γε,1z(k))1(0, u)+ (ξ

η

))d(Γε,1z(k))(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ (C12

(f , p

)εpω(s, t )

)1/p ,∣∣∣(∫ f((Γε,1z(k))1(0, u)+ (ξ

η

))d(Γε,1z(k))(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤ (C12

(f , p

)εpω(s, t )

)2/p

であるので,これと (7.8)より,補題 7.3は次の評価を implyする:∣∣∣∣(Γ1,δ

∫f((Γε,1z(k))1(0, u)+ (ξ

η

))d

(Γε,1z(k))(u)

)1(s, t )

∣∣∣∣≤ (K

(δ,C12( f , p), p

)εpω(s, t )

)1/p

≤ (εpω(s, t )

)1/p ,∣∣∣∣(Γ1,δ

∫f((Γε,1z(k))1(0, u)+ (ξ

η

))d

(Γε,1z(k))(u)

)2(s, t )

∣∣∣∣≤ (K

(δ,C12( f , p), p

)εpω(s, t )

)2/p

≤ (εpω(s, t )

)2/p .

ここで δの選び方より K(δ,C12( f , p), p

)≤ 1であることを使った.ところで,補題 7.1,及び 7.2より

Γε,1z(k+1) = Γε,1

∫f(z(k)

1 (0, u)+ (ξη

))dz(k)(u)

= Γ1,δ Γε,ε

∫f(z(k)

1 (0, u)+ (ξη

))dz(k)(u)

= Γ1,δ

∫f((Γε,1z(k))

1(0, u)+ (ξη

))d

(Γε,1z(k))(u)

である.よって上の評価式より (7.23)が n = k +1のとき成り立つことが分かる.

系 7.1. (7.8)における control function ωは (7.22)をみたすとする.このとき,∀n ≥ 0

に対して |z(n)1 (s, t )| ≤ (

εpω(s, t ))1/p ,

|z(n)2 (s, t )| ≤ (

εpω(s, t ))2/p .

(7.24)

124

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証明 これは次のことから明らかである:∣∣∣(Γε,1z(n))1(s, t )

∣∣∣≥ |z(n)1 (s, t )|,∣∣∣(Γε,1z(n))

2(s, t )∣∣∣≥ |z(n)

2 (s, t )|.

補題 7.6. (7.8)における control function ωは (7.22)をみたすとする.このとき,∀n ≥ 1

に対して |z(n)1 (s, t )− z(n−1)

1 (s, t )| ≤ 2hn−1(εpω(s, t ))1/p ,

|z(n)2 (s, t )− z(n−1)

2 (s, t )| ≤ 2hn−1(εpω(s, t ))2/p .

(7.25)

ここで

h := (εpω(0,1)

)1/p[

2∥∇ f ∥∞+ (∥∇2 f ∥∞+C4(

f ,1, p))(

εpω(0,1))1/p]

∨ [2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+C10

(f ,1, p

)].

(7.26)

証明 (7.24)より

|z(1)1 (s, t )− z(0)

1 (s, t )| ≤ |z(1)1 (s, t )|+ |z(0)

1 (s, t )| ≤ 2(εpω(s, t )

)1/p ,

|z(1)2 (s, t )− z(0)

2 (s, t )| ≤ |z(1)2 (s, t )|+ |z(0)

2 (s, t )| ≤ 2(εpω(s, t )

)2/p .

これは,(7.25)が n = 1のとき成り立つことを云っている.次に (7.10)より,∀n ≥ 1に対して

|K (n+1)1 (s, t )−K

(n)1 (s, t )|

=∣∣∣ f (z(n)

s )z(n)1 (s, t )+∇ f (z(n)

s )z(n)2 (s, t )

− f (z(n−1)s )z(n−1)

1 (s, t )−∇ f (z(n−1)s )z(n−1)

2 (s, t )∣∣∣

=∣∣∣( f (z(n)

s )− f (z(n−1)s )

)z(n)

1 (s, t )+ f (z(n−1)s )

(z(n)

1 (s, t )− z(n−1)1 (s, t )

)+ (∇ f (z(n)

s )−∇ f (z(n−1)s )

)z(n)

2 (s, t )+∇ f (z(n−1)s )

(z(n)

2 (s, t )− z(n−1)2 (s, t )

)∣∣∣=

∣∣∣( f (z(n)s )− f (z(n−1)

s ))z(n)

1 (s, t )+ (∇ f (z(n)s )−∇ f (z(n−1)

s ))z(n)

2 (s, t )

+∇ f (z(n−1)s )

(z(n)

2 (s, t )− z(n−1)2 (s, t )

)∣∣∣[...⃝補題 7.4(iii)より

]≤ ∥∇ f ∥∞|z(n)

1 (0, s)− z(n−1)1 (0, s)||z(n)

1 (s, t )|+∥∇2 f ∥∞|z(n)

1 (0, s)− z(n−1)1 (0, s)||z(n)

2 (s, t )|+∥∇ f ∥∞|z(n)

2 (s, t )− z(n−1)2 (s, t )|,

|K (n+1)2 (s, t )−K

(n)2 (s, t )|

125

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=∣∣∣∣ f (z(n)

s )⊗ f (z(n)s )

(x2(s, t ) O

O O

)− f (z(n−1)

s )⊗ f (z(n−1)s )

(x2(s, t ) O

O O

)∣∣∣∣[...⃝補題 7.4(ii)より

]=

∣∣∣∣( f (z(n)s )− f (z(n−1)

s ))⊗ f (z(n)

s )

(x2(s, t ) O

O O

)

+ f (z(n−1)s )⊗ (

f (z(n)s )− f (z(n−1)

s ))(x2(s, t ) O

O O

)∣∣∣∣≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|z(n)

1 (0, s)− z(n−1)1 (0, s)||x2(s, t )|

を注意しておく.今,n = k (≥ 1)のとき (7.25)が成り立つと仮定する.上の注意と,帰納法の仮定,

(7.24),及び (7.8)より

|K (n+1)1 (s, t )−K

(n)1 (s, t )|

≤ ∥∇ f ∥∞2hk−1(εpω(0, s))1/p(

εpω(s, t ))1/p

+∥∇2 f ∥∞2hk−1(εpω(0, s))1/p(

εpω(s, t ))2/p

+∥∇ f ∥∞2hk−1(εpω(s, t ))2/p

≤ 2hk−1(εpω(0,1))1/p

2∥∇ f ∥∞+∥∇2 f ∥∞

(εpω(0,1)

)1/p(εpω(s, t )

)1/p ,

|K (n+1)2 (s, t )−K

(n)2 (s, t )|

≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞2hk−1(εpω(0, s))1/p(1

2ω(s, t ))2/p

≤ 2hk−1(εpω(0,1))1/p2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞

(εpω(s, t )

)2/p

となる.定理 6.2において,z(k), z(k−1)は control functionを εpω,定数 εを 2hk−1として定理の条件をみたしているから,(6.5)と (6.8)より∣∣∣z(k+1)

1 (s, t )− z(k)1 (s, t )− (K

(k+1)1 (s, t )−K

(k)1 (s, t ))

∣∣∣≤ 2hk−1C4(

f ,1, p)(εpω(s, t )

)3/p ,∣∣∣z(k+1)2 (s, t )− z(k)

2 (s, t )− (K(k+1)2 (s, t )−K

(k)2 (s, t ))

∣∣∣≤ 2hk−1C10(

f ,1, p)(εpω(s, t )

)3/p

である.ここで εpω(0,1) ≤ 1に注意して欲しい.よって,それぞれ2つの評価を合せると∣∣∣z(k+1)

1 (s, t )− z(k)1 (s, t )

∣∣∣≤ 2hk−1

C4

(f ,1, p

)(εpω(s, t )

)2/p

+ (εpω(0,1)

)1/p[2∥∇ f ∥∞+∥∇2 f ∥∞

(εpω(0,1)

)1/p](εpω(s, t )

)1/p

126

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≤ 2hk−1(εpω(0,1))1/p

2∥∇ f ∥∞+ (∥∇2 f ∥∞+C4

(f ,1, p

))(εpω(0,1)

)1/p(εpω(s, t )

)1/p

≤ 2hk(εpω(s, t )

)1/p ,∣∣∣z(k+1)2 (s, t )− z(k)

2 (s, t )∣∣∣

≤ 2hk−1

C10(

f ,1, p)(εpω(s, t )

)1/p + (εpω(0,1)

)1/p2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞(εpω(s, t )

)2/p

≤ 2hk−1(εpω(0,1))1/p

2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+C10

(f ,1, p

)(εpω(s, t )

)2/p

≤ 2hk(εpω(s, t )

)2/p .

これは n = k +1のときも (7.25)が成り立つことを云っている.

Claim 7.1. (7.8)における control function ωは (7.22)と h < 1 (ただし hは (7.26)で定義される定数), i.e.,

h := (εpω(0,1)

)1/p[

2∥∇ f ∥∞+ (∥∇2 f ∥∞+C4(

f ,1, p))(

εpω(0,1))1/p]

∨ [2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+C10

(f ,1, p

)]< 1(7.27)

をみたすとする.このとき,(z(n))∞n=0は Ωp(Rd+ν)の収束列で,その極限 z は (7.5)と初期値を

(ξη

)とした (7.6)をみたす,即ち,

πRd (z) = x,

z =∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u).

(7.28)

証明 補題 7.6より

dp(z(n), z(n−1)) = ∥z(n)1 − z(n−1)

1 ∥p +∥z(n)2 − z(n−1)

2 ∥p/2

≤ 2hn−1(εpω(0,1))1/p +2hn−1(εpω(0,1)

)2/p

≤ 4hn−1

となる.これは,(7.27)より (z(n))∞n=0が Ωp(Rd+ν)の Cauchy列であることを implyする.よって Claim 3.1より,z(n) はある z = (1, z1, z2) ∈Ωp(Rd+ν)に収束する.実は,Claim 3.1の証明を見れば分かるが

z1(s, t ) = limn→∞z(n)

1 (s, t ),

z2(s, t ) = limn→∞z(n)

2 (s, t )

である.従って,補題 7.4(i)より

πRd (z) = x,

127

Page 136: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

また (7.24)と (7.25)より

|z1(s, t )| ≤ (εpω(s, t )

)1/p ,

|z2(s, t )| ≤ (εpω(s, t )

)2/p ,

|z1(s, t )− z(n)1 (s, t )| ≤

∞∑k=n+1

|z(k)1 (s, t )− z(k−1)

1 (s, t )|

≤∞∑

k=n+12hk−1(εpω(s, t )

)1/p ,

= 2hn

1−h

(εpω(s, t )

)1/p ,

|z2(s, t )− z(n)2 (s, t )| ≤ 2hn

1−h

(εpω(s, t )

)2/p

が分かる.これは,定理 6.2より∣∣∣(∫ f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, t )− z(n+1)

1 (s, t )∣∣∣

=∣∣∣(∫ f

(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, t )−

(∫f(z(n)

1 (0, u)+ (ξη

))dz(n)(u)

)1(s, t )

∣∣∣≤ 2hn

1−hC3

(f ,1, p

)(εpω(s, t )

)1/p ,

∣∣∣(∫ f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)2(s, t )− z(n+1)

2 (s, t )∣∣∣

=∣∣∣(∫ f

(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)2(s, t )−

(∫f(z(n)

1 (0, u)+ (ξη

))dz(n)(u)

)2(s, t )

∣∣∣≤ 2hn

1−hC11

(f ,1, p

)(εpω(s, t )

)2/p

を implyし,最後に n →∞として∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u) = z

を得る.

Rough pathの定義域は= (s, t ) ∈ [0,1]2 ; 0 ≤ s ≤ t ≤ 1であった.しかし,これは簡単のためにそうしたに過ぎず,を一般のσ,τ = (s, t ) ∈ [σ,τ]2 ; σ≤ s ≤ t ≤ τに替えても,今までの議論は全く問題なく運ぶ.即ち,rough pathの空間を

Ωσ,τp (Rd ) :=

x = (x0, x1, x2) ∈C (σ,τ → T 2(Rd )) ;

(o) x0 = 1,

(i) xは Chenの恒等式をみたす,

(ii) ∥x1∥p,[σ,τ] <∞, ∥x2∥p/2,[σ,τ] <∞

128

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とし,積分∫

f (xu)dx(u) ∈Ωσ,τp (Rd )を

(∫f (xu)dx(u)

)1(s, t ) = lim

m(D)→0z1(s, t ;D),(∫

f (xu)dx(u))

2(s, t ) = limm(D)→0

z2(s, t ;D)

により定義するのである.なお,z1(s, t ;D), z2(s, t ;D)は (6.1), (6.2)で定義された ξ1, ξ2

を基に (5.3), (5.7)により定義されるものである.Claim 7.1を,Ωσ,τ

p の rough pathについての結果として述べ直しておく:

Claim 7.1′′′. x ∈Ωσ,τp (Rd )は,適当な control function ωに対し |x1(s, t )| ≤ (1

2ω(s, t ))1/p ,

|x2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p(∀(s, t ) ∈σ,τ)

なるものとする (ここで,ωは [σ,τ]から [0,∞)への優加法的な連続関数である).もし ωが

εpω(σ,τ) ≤ 1, (7.29)(εpω(σ,τ)

)1/p[

2∥∇ f ∥∞+ (∥∇2 f ∥∞+C4(

f ,1, p))(

εpω(σ,τ))1/p]

∨ [2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+C10

(f ,1, p

)]< 1(7.30)

をみたすならば

∃z ∈Ωσ,τp (Rd+ν) s.t.

πRd (z) = x,

z =∫

f(z1(σ, u)+ (ξ

η

))dz(u).

さて,ようやく,解の存在性について取っ掛ることができる.しかし,その前にもう1つだけ定義をする:

定義 7.6. −∞ < σ < τ < λ < ∞ とする.x ∈ Ωσ,τp (Rd ) ,y ∈ Ωτ,λ

p (Rd ) に対して,x·y ∈Ωσ,λ

p (Rd )を次のように定義する: (s, t ) ∈σ,λに対して

(x·y)(s, t ) := x(s ∧τ, t ∧τ)⊗ y(s ∨τ, t ∨τ)

=

x(s, t ) s ≤ t ≤ τ,

x(s,τ)⊗ y(τ, t ) s ≤ τ≤ t ,

y(s, t ) τ≤ s ≤ t .

129

Page 138: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

上式で定義される x·y がσ,λから T 2(Rd )への連続写像で,Chenの恒等式,そして∥(x·y)1∥p,[σ,λ] <∞, ∥(x·y)2∥p/2,[σ,λ] <∞をみたすことは容易に確かめることができる(cf.補題 7.7).一般に,−∞< σ0 < σ1 < ·· · < σN <∞, x(i ) ∈Ω

σi ,σi+1p (Rd ) (i = 0,1, . . . ,N −1)に対し

て,上のようにして x(0)· · · ··x(N −1) ∈Ωσ0,σNp (Rd )を定義する.

解の存在性を示す.x ∈Ωp(Rd )は適当な control function ωに対し,(7.8)をみたすとする. f ∈C∞

b (Rν → Rν⊗Rd ),(ξη

) ∈ Rd+ν は fixされているものである.[0,1]の分割D = 0 = t0 < t1 < ·· · < tN = 1を次をみたすように取る:

σ= ti ,τ= ti+1 (i = 0,1, . . . ,N −1)に対して (7.29), (7.30)が成り立つ.

(7.31)

(ωは連続で,対角線 (s, s);0 ≤ s ≤ 1上でゼロであるから,m(D)を十分に小さくすればいつでも上が成り立つ!).今,Claim 7.1′′′より,各 i = 0,1, . . . ,N −1に対して

∃z(i ) ∈Ωti ,ti+1p (Rd+ν)

s.t. πRd

(z(i )

)= x|ti ,ti+1, (7.32)

z(i ) =∫

f(z(i )1(ti , u)+ z(i −1)1(ti−1, ti )+·· ·+ z(0)1(t0, t1)+ (ξ

η

))dz(i )(u). (7.33)

定義 7.6より z ∈Ω0,1p (Rd+ν) =Ωp(Rd+ν)を

z := z(0)·z(1)· · · ··z(N −1)

とおくと,これが求める解である.実際,ti ≤ s ≤ t ≤ ti+1 (i = 0,1, . . . ,N −1)のときは,z(s, t ) = z(i )(s, t )であるので,

(7.32)より

x1(s, t ) =πRd

(z(i )1(s, t )

)=πRd

(z1(s, t )

),

x2(s, t ) =πRd⊗Rd

(z(i )2(s, t )

)=πRd⊗Rd

(z2(s, t )

).

一般の (s, t )については,ti0 ≤ s ≤ ti0+1 ≤ t j0 ≤ t ≤ t j0+1とすると

x1(s, t ) = x1(s, ti0+1)+j0−1∑

k=i0+1x1(tk , tk+1)+ x1(t j0 , t )

=πRd

(z1(s, ti0+1)+

j0−1∑k=i0+1

z1(tk , tk+1)+ z1(t j0 , t ))

=πRd

(z1(s, t )

),

130

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x2(s, t ) = x2(s, ti0+1)+j0−1∑

k=i0+1x2(tk , tk+1)+ x2(t j0 , t )

+j0−1∑

k=i0+1x1(s, tk )⊗ x1(tk , tk+1)+ x1(s, t j0 )⊗ x1(t j0 , t )

=πRd⊗Rd

(z2(s, ti0+1)+

j0−1∑k=i0+1

z2(tk , tk+1)+ z2(t j0 , t )

+j0−1∑

k=i0+1z1(s, tk )⊗ z1(tk , tk+1)+ z1(s, t j0 )⊗ z1(t j0 , t )

)=πRd⊗Rd

(z2(s, t )

).

よって πRd

(z)= x.

次に z ∈Ωp(Rd+ν)であるから,積分∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)が定義される.ti ≤ s <

t ≤ ti+1 (i = 0,1, . . . ,N −1)に対し,DN を [s, t ]の N 等分割,即ち,DN = s = τ0 < τ1 <·· · < τN = t , τ j = s + j

N (t − s)とすると,積分の定義より(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)1(s, t )

= limN→∞

N−1∑j=0

(f(z1(0,τ j )+ (ξ

η

))z1(τ j ,τ j+1)+∇ f

(z1(0,τ j )+ (ξ

η

))z2(τ j ,τ j+1)

)

= limN→∞

N−1∑j=0

(f(z(i )1(ti ,τ j )+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))z(i )1(τ j ,τ j+1)

+∇ f(z(i )1(ti ,τ j )+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))z(i )2(τ j ,τ j+1)

)=

(∫f(z(i )1(ti , u)+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))dz(i )(u)

)1(s, t )

= z(i )1(s, t )[

...⃝ (7.33)より]

= z1(s, t ),(∫f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u)

)2(s, t )

= limN→∞

(N−1∑j=0

f(z1(0,τ j )+ (ξ

η

))⊗ f(z1(0,τ j )+ (ξ

η

))(z2(τ j ,τ j+1)

)+

N−1∑j=1

z1(s,τ j )⊗ z1(τ j ,τ j+1)

)

= limN→∞

(N−1∑j=0

f(z(i )1(ti ,τ j )+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))131

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⊗ f(z(i )1(ti ,τ j )+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))(z(i )2(τ j ,τ j+1)

)+

N−1∑j=1

z(i )1(s,τ j )⊗ z(i )1(τ j ,τ j+1)

)=

(∫f(z(i )1(ti , u)+ z1(0, ti )+ (ξ

η

))dz(i )(u)

)2(s, t )

= z(i )2(s, t )[

...⃝ (7.33)より]

= z2(s, t ).

Chenの恒等式より,一般の (s, t )に対しても上記の等式が成り立つことが直ぐに分かるので

z =∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u).

以上のことを,定理として次のようにまとめておく:

定理 7.1. x ∈Ωp(Rd )は適当な control function ωに対し,(7.8),即ち, |x1(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p ,

|x2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p

をみたすとする.このとき ∀ f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd ), ∀

(ξη

) ∈ Rd+νに対して (7.28)の解は存在する.

7.3. 解の一意性まず,Claim 7.1と同じような条件の下で解の一意性が成り立つことを示す.

Claim 7.2. x ∈Ωp(Rd ), f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd ),

(ξη

) ∈Rd+νに対し,z ∈Ωp(Rd+ν)は (7.28)

の解とする,即ち,

πRd (z) = x, (7.34)

z =∫

f(z1(0, u)+ (ξ

η

))dz(u) (7.35)

をみたすとする.もし,適当な control function ωに対して|z1(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p ,

|z2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p ,(7.36)

そして (7.22)と (7.27)が成り立つならば,zは Claim 7.1における zと一致する,即ち,

z = limn→∞z(n).

132

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証明 まず,(7.34) と (7.36) より,x は (7.8) をみたす.(z(n))∞n=0 ⊂ Ωp(Rd+ν), 及び(K

(n))∞n=0 ⊂ AΩp(Rd+ν)をそれぞれ (7.9), (7.10)により定義する.系 7.1と (7.36)より|z(n)

1 (s, t )|∨ |z1(s, t )| ≤ (εpω(s, t )

)1/p ,

|z(n)2 (s, t )|∨ |z2(s, t )| ≤ (

εpω(s, t ))2/p (7.37)

である.そして補題 7.6のような評価が成り立つ:|z(n)1 (s, t )− z1(s, t )| ≤ 2hn

(εpω(s, t )

)1/p ,

|z(n)2 (s, t )∨ z2(s, t )| ≤ 2hn

(εpω(s, t )

)2/p .(7.38)

実際,n = 0のときは (7.37)より明らかである.次に n = k (≥ 0)のとき (7.38)が成り立つと仮定する.z を基にして定義 6.1より K = (1, K1, K2) ∈ AΩp(Rd+ν)を次のように定義する: K1(s, t ) := f

(z1(0, s)+ (ξ

η

))z1(s, t )+∇ f

(z1(0, s)+ (ξ

η

))z2(s, t ),

K2(s, t ) := f(z1(0, s)+ (ξ

η

))⊗ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))(z2(s, t )

).

(7.39)

定理 6.2より,n = kのときの (7.37)と (7.38)は,次を implyする:∣∣∣z(k+1)1 (s, t )− z1(s, t )− (

K(k+1)1 (s, t )− K1(s, t )

)∣∣∣≤ 2hkC4(

f ,1, p)(εpω(s, t )

)3/p ,∣∣∣z(k+1)2 (s, t )− z2(s, t )− (

K(k+1)2 (s, t )− K2(s, t )

)∣∣∣≤ 2hkC10(

f ,1, p)(εpω(s, t )

)3/p .

一方,(7.10)と (7.39)より

|K (k+1)1 (s, t )− K1(s, t )|

=∣∣∣ f

(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))z(k)

1 (s, t )+∇ f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))z(k)

2 (s, t )

− f(z1(0, s)+ (ξ

η

))z1(s, t )−∇ f

(z1(0, s)+ (ξ

η

))z2(s, t )

∣∣∣=

∣∣∣∣( f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))− f(z1(0, s)+ (ξ

η

)))z(k)

1 (s, t )

+ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))(z(k)

1 (s, t )− z1(s, t ))

+(∇ f

(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))−∇ f(z1(0, s)+ (ξ

η

)))z(k)

2 (s, t )

+∇ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))(z(k)

2 (s, t )− z2(s, t ))∣∣∣∣

≤ ∥∇ f ∥∞|z(k)1 (0, s)− z1(0, s)||z(k)

1 (s, t )|+∥∇2 f ∥∞|z(k)

1 (0, s)− z1(0, s)||z(k)2 (s, t )|

+∥∇ f ∥∞|z(k)2 (s, t )− z2(s, t )|

133

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...⃝ 注意 7.2,補題 7.4(i),そして (7.34)より

f((x

y

))(z(k)

1 (s, t )− z1(s, t ))

=(

πRd

(z(k)

1 (s, t ))−πRd

(z1(s, t )

)f (y)

(πRd

(z(k)

1 (s, t ))−πRd

(z1(s, t )

)))

=(

x1(s, t )− x1(s, t )

f (y)(x1(s, t )− x1(s, t )

))

= 0

≤ ∥∇ f ∥∞2hk(

εpω(0, s))1/p(

εpω(s, t ))1/p

+∥∇2 f ∥∞2hk(εpω(0, s)

)1/p(εpω(s, t )

)2/p

+∥∇ f ∥∞2hk(εpω(s, t )

)2/p

≤ 2hk(εpω(0,1)

)1/p(2∥∇ f ∥∞+∥∇2 f ∥∞

(εpω(0,1)

)1/p)(εpω(s, t )

)1/p ,

|K (k+1)2 (s, t )− K2(s, t )|

=∣∣∣ f

(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))⊗ f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))(z(k)

2 (s, t ))

− f(z1(0, s)+ (ξ

η

))⊗ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))(z2(s, t )

)∣∣∣=

∣∣∣∣∣ f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))⊗ f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))(x2(s, t ) O

O O

)

− f(z1(0, s)+ (ξ

η

))⊗ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))(x2(s, t ) O

O O

)∣∣∣∣∣[...⃝注意 7.2,補題 7.4(i),そして (7.34)より

]=

∣∣∣∣∣( f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))− f(z1(0, s)+ (ξ

η

)))⊗ f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))(x2(s, t ) O

O O

)

+ f(z1(0, s)+ (ξ

η

))⊗ (f(z(k)

1 (0, s)+ (ξη

))− f(z1(0, s)+ (ξ

η

)))(x2(s, t ) O

O O

)∣∣∣∣∣≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞|z(k)

1 (0, s)− z1(0, s)||x2(s, t )|≤ 2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞2hk(

εpω(0, s))1/p(1

2ω(s, t ))2/p

≤ 2hk(εpω(0,1)

)1/p2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞(εpω(s, t )

)2/p .

よって,それぞれ2つの評価を合せると∣∣∣z(k+1)1 (s, t )− z1(s, t )

∣∣∣

134

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≤ 2hk(εpω(0,1)

)1/p[

2∥∇ f ∥∞+∥∇2 f ∥∞(εpω(0,1)

)1/p

+C4(

f ,1, p)(εpω(0,1)

)2/p](εpω(s, t )

)1/p

≤ 2hk+1(εpω(s, t ))1/p ,∣∣∣z(k+1)

2 (s, t )− z2(s, t )∣∣∣

≤ 2hk(εpω(0,1)

)1/p[

2∥∇ f ∥∞∥ f ∥∞+C10(

f ,1, p)](

εpω(s, t ))2/p

≤ 2hk+1(εpω(s, t ))2/p

これは,n = k +1のときも (7.38)が成り立つことを云っている.さて,Claim 7.1より

limn→∞z(n)

α = zα (α= 1,2)

であるので,これと (7.38)より z = zであることが分かる.

解の一意性を示す.x ∈ Ωp(Rd ), f ∈ C∞b (Rν → Rν ⊗Rd ),

(ξη

) ∈ Rd+ν とする.z ∈Ωp(Rd+ν)は (7.34)と (7.35)をみたすとする.命題 2.1より,適当な control function ω

|z1(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p ,

|z2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p

となるものが存在する.(7.31)をみたすような [0,1]の分割Dを取る.各 i = 0,1, . . . ,N−1

に対し,z(i ) = z|ti ,ti+1∈Ω

ti ,ti+1p (Rd+ν)とおくと,z(i )は

πRd

(z(i )

)= x|ti ,ti+1,

z(i ) =∫

f(z(i )1(ti , u)+ z(i −1)1(ti−1, ti )+·· ·+ z(0)1(t0, t1)+ (ξ

η

))dz(i )(u)

をみたす.Claim 7.1′′′より,z(i )を (7.32)と (7.33)をみたす逐次 (近似により得られる)

解とするならば,Claim 7.2は,z(0) = z(0), z(1) = z(1), . . ., z(N −1) = z(N −1)を imply

する.よって定理 7.1において構成した解を z = z(0)· · · ··z(N −1)とするならば,z = z

となり,解の一意性が分かる.以上のことを,定理として次のようにまとめておく:

定理 7.2. ∀x ∈Ωp(Rd ), ∀ f ∈C∞b (Rν → Rν⊗Rd ), ∀

(ξη

) ∈ Rd+νに対して (7.28)の解は唯一つ存在する.

小節 7.1で提起したODEの初期値問題 (7.3)の答えは次の通りである:

135

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定理 7.3. ∀x ∈Ωp(Rd ), ∀ f ∈C∞b (Rν → Rν⊗Rd ), ∀η ∈ Rνに対して (7.3)の解は唯一つ存

在する.

証明 解の存在性は定理 7.1より従う.一意性については次のようにする: y (1), y (2) ∈Ωp(Rν)を (7.3)の解とすると,定義より

∃z(i ) ∈Ωp(Rd+ν) s.t.

πRd

(z(i ))= x, πRν

(z(i ))= y (i ),

z(i ) =∫

f(z(i )

1 (0, u)+ (0η

))dz(i )(u).

このとき,定理 7.2より z(1) = z(2)であるので

y (1) =πRν

(z(1))=πRν

(z(2))= y (2).

定義 7.7. 定理 7.2,7.3より,x ∈Ωp(Rd ), η ∈ Rν に対し,初期値(0η

)の (7.28)の解を

Z (η, x), (7.3)の解を Y (η, x)と表わすことにする.

7.4. 連続性定理f ∈C∞

b (Rν →Rν⊗Rd ), η ∈Rνを fixする.解の存在性,及び一意性のときのように,まずは,Claim 7.1にある条件の下で連続

性定理を示す.

Claim 7.3. (7.22)と (7.27)をみたす control function ωに対して,(x(m))∞m=1 ⊂Ωp(Rd )

と x ∈Ωp(Rd )は次をみたすとする:

|x(m)1 (s, t )|∨ |x1(s, t )| ≤ (1

2ω(s, t ))1/p ,

|x(m)2 (s, t )|∨ |x2(s, t )| ≤ (1

2ω(s, t ))2/p ,

|x(m)1 (s, t )− x1(s, t )| ≤ ρmω(s, t )1/p ,

|x(m)2 (s, t )− x2(s, t )| ≤ ρmω(s, t )2/p .

ここで (ρm)∞m=1はゼロに収束する正数列.また,(ηm)∞m=1 ⊂Rνは ηに収束するとする.このとき

Z (ηm , x(m)) → Z (η, x) in Ωp(Rd+ν).

証明 x(m), ηm と x, ηに対する逐次近似列をそれぞれ (z(m,n))∞n=0, (z(n))∞n=0とする.このとき,Claim 7.1より

dp

(z(m,n),Z (ηm , x(m))

), dp

(z(n),Z (η, x)

)≤ ∞∑k=n

4hk = 4hn

1−h

136

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であるので

dp

(Z (ηm , x(m)),Z (η, x)

)≤ dp

(z(m,n), z(n))+ 8hn

1−h.

今,写像Φ : Rν×Ωp(Rd+ν) →Rν×Ωp(Rd+ν)を

Φ(y, z) :=(

y,∫

f(z1(0, u)+ (0

y

))dz(u)

)とすると,系 6.1と 6.2よりΦは連続写像,また,逐次近似列の定義 (cf. (7.9))より

z(m,n) =Φ · · · Φ︸ ︷︷ ︸n

(ηm ,

(1,

( x(m)1

0

),( x(m)

2 O

O O

))),

z(n) =Φ · · · Φ︸ ︷︷ ︸n

(η,

(1,

( x1

0

),( x2 O

O O

)))

である.仮定より x(m) → x in Ωp(Rd ), ηm → η in Rν,従って(ηm ,

(1,

( x(m)1

0

),( x(m)

2 O

O O

)))→

(η,

(1,

( x1

0

),( x2 O

O O

)))in Rν×Ωp(Rd+ν)

であるから,各 nに対して

limm→∞dp

(z(m,n), z(n))= 0.

よって

limm→∞dp

(Z (ηm , x(m)),Z (η, x)

)= 0

が分かる.

さて,一般の場合の連続性定理を示す.(x(m))∞m=1 ⊂Ωp(Rd )と x ∈Ωp(Rd )は limm→∞ dp(x(m), x) = 0, (ηm)∞m=1 ⊂ Rνは ηm →

ηとする.Claim 3.2より,任意の部分列 (mk )∞k=1に対し

∃kの部分列 kl ∞l=1, ∃ control function ω

s.t.

|x(mkl)

1 (s, t )|∨ |x1(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)1/p ,

|x(mkl)

2 (s, t )|∨ |x2(s, t )| ≤ (12ω(s, t )

)2/p ,

|x(mkl)

1 (s, t )− x1(s, t )| ≤ 1

2lω(s, t )1/p ,

|x(mkl)

2 (s, t )− x2(s, t )| ≤ 1

2lω(s, t )2/p .

137

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簡単のため,x(mkl)を x(l), ηmkl

を ηl と書くことにする.[0,1]の分割Dを (7.31)をみたすように取る.各 i = 0,1, . . . ,N −1に対し

Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1= Z

(πRν

(Z (ηl , x(l))1(0, ti )

)+ηl , x(l)|ti ,ti+1

),

Z (η, x)|ti ,ti+1= Z

(πRν

(Z (η, x)1(0, ti )

)+η, x|ti ,ti+1

)となる.なお,右辺は rough path x(l)|ti ,ti+1

∈Ωti ,ti+1p (Rd )と初期値πRν

(Z (ηl , x(l))1(0, ti )

)+ηl に対するΩ

ti ,ti+1p 上での (7.28)の一意解である.∀i = 0,1, . . . ,N −1に対して

dp

(x(l)|ti ,ti+1

, x|ti ,ti+1

)= ∥x(l)

1 − x1∥p,[ti ,ti+1] +∥x(l)2 − x2∥p/2,[ti ,ti+1]

≤ ∥x(l)1 − x1∥p +∥x(l)

2 − x2∥p/2

≤ 1

2l

(ω(0,1)1/p +ω(0,1)2/p)→ 0 as l →∞

に注意.i = 0のときは

πRν

(Z (ηl , x(l))1(0, t0)

)=πRν

(Z (η, x)1(0, t0)

)= 0

であるので,上の注意と Claim 7.3より

dp

(Z (ηl , x(l))|t0,t1

,Z (η, x)|t0,t1

)→ 0.

これは,とくに

Z (ηl , x(l))1(0, t1) → Z (η, x)1(0, t1)

を implyするので,再び上の注意と Claim 7.3より

dp

(Z (ηl , x(l))|t1,t2

,Z (η, x)|t1,t2

)→ 0.

以下,これを繰り返すことにより

dp

(Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1

,Z (η, x)|ti ,ti+1

)→ 0, i = 0,1, . . . ,N −1 (7.40)

が分かる.さて,

Z (ηl , x(l))|t0,ti+1= Z (ηl , x(l))|t0,ti

·Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1,

Z (η, x)|t0,ti+1= Z (η, x)|t0,ti

·Z (η, x)|ti ,ti+1

であるから,下の補題 7.7より∥∥∥(Z (ηl , x(l))|t0,ti+1

)1 −

(Z (η, x)|t0,ti+1

)1

∥∥∥p,[t0,ti+1]

138

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≤ 21− 1p

(∥∥∥(Z (ηl , x(l))|t0,ti

)1 −

(Z (η, x)|t0,ti

)1

∥∥∥p,[t0,ti ]

+∥∥∥(

Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1

)1 −

(Z (η, x)|ti ,ti+1

)1

∥∥∥p,[ti ,ti+1]

),

∥∥∥(Z (ηl , x(l))|t0,ti+1

)2 −

(Z (η, x)|t0,ti+1

)2

∥∥∥p/2,[t0,ti+1]

≤ 41− 2p

(∥∥∥(Z (ηl , x(l))|t0,ti

)2 −

(Z (η, x)|t0,ti

)2

∥∥∥p/2,[t0,ti ]

+∥∥∥(

Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1

)2 −

(Z (η, x)|ti ,ti+1

)2

∥∥∥p/2,[ti ,ti+1]

+∥∥∥(

Z (ηl , x(l))|t0,ti

)1 −

(Z (η, x)|t0,ti

)1

∥∥∥p,[t0,ti ]

×∥∥∥(

Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1

)1

∥∥∥p,[ti ,ti+1]

+∥∥∥(

Z (η, x)|t0,ti

)1

∥∥∥p,[t0,ti ]

×∥∥∥(

Z (ηl , x(l))|ti ,ti+1

)1 −

(Z (η, x)|ti ,ti+1

)1

∥∥∥p,[ti ,ti+1]

).

よって,これと (7.40)より,i = 1,2, . . . ,N −1と順次見ていくと∥∥∥Z (ηl , x(l))1 −Z (η, x)1

∥∥∥p→ 0,∥∥∥Z (ηl , x(l))2 −Z (η, x)2

∥∥∥p/2

→ 0

が最後に分かる.これは

dp(Z (ηl , x(l)),Z (η, x)

)→ 0

のことである.

補題 7.7. −∞<σ0 <σ1 <σ2 <∞, x(i ), x ′(i ) ∈Ωσi ,σi+1p (Rd ) (i = 0,1)に対して

∥(x(0)·x(1))1 − (x ′(0)·x ′(1))1∥p,[σ0,σ2]

≤ 21− 1p

(∥x(0)1 − x ′(0)1∥p,[σ0,σ1] +∥x(1)1 −x ′(1)1∥p,[σ1,σ2]

),

∥(x(0)·x(1))2 − (x ′(0)·x ′(1))2∥p/2,[σ0,σ2]

≤ 41− 2p

(∥x(0)2 − x ′(0)2∥p/2,[σ0,σ1] +∥x(1)2 −x ′(1)2∥p/2,[σ1,σ2]

+∥x(0)1 −x ′(0)1∥p,[σ0,σ1] ×∥x(1)1∥p,[σ1,σ2]

+∥x ′(0)1∥p,[σ0,σ1] ×∥x(1)1 −x ′(1)1∥p,[σ1,σ2]

).

139

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証明 σ0 = τ0 < τ1 < ·· · < τM =σ2を [σ0,σ2]の分割とする.

σ1 ∈ [σ0,σ2) =M−1⋃i=0

[τi ,τi+1)

であるから,∃i0 ∈ 0, . . . ,M −1 s.t. τi0 ≤σ1 < τi0+1.このとき

M−1∑i=0

∣∣∣(x(0)·x(1))

1(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)1(τi ,τi+1)

∣∣∣p

=i0−1∑i=0

∣∣∣(x(0)·x(1))

1(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)1(τi ,τi+1)

∣∣∣p

+∣∣∣(x(0)·x(1)

)1(τi0 ,τi0+1)− (

x ′(0)·x ′(1))

1(τi0 ,τi0+1)∣∣∣p

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣(x(0)·x(1))

1(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)1(τi ,τi+1)

∣∣∣p

=i0−1∑i=0

∣∣∣x(0)1(τi ,τi+1)− x ′(0)1(τi ,τi+1)∣∣∣p

+∣∣∣x(0)1(τi0 ,σ1)+ x(1)(σ1,τi0+1)− x ′(0)1(τi0 ,σ1)−x ′(1)(σ1,τi0+1)

∣∣∣p

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣x(1)1(τi ,τi+1)− x ′(1)1(τi ,τi+1)∣∣∣p

≤i0−1∑i=0

∣∣∣x(0)1(τi ,τi+1)− x ′(0)1(τi ,τi+1)∣∣∣p

+2p−1∣∣∣x(0)1(τi0 ,σ1)− x ′(0)1(τi0 ,σ1)

∣∣∣p +2p−1∣∣∣x(1)1(σ1,τi0+1)− x ′(1)1(σ1,τi0+1)

∣∣∣p

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣x(1)1(τi ,τi+1)− x ′(1)1(τi ,τi+1)∣∣∣p

≤ 2p−1∥x(0)1 −x ′(0)1∥pp,[σ0,σ1] +2p−1∥x(1)1 −x ′(1)1∥p

p,[σ1,σ2],

M−1∑i=0

∣∣∣(x(0)·x(1))

2(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)2(τi ,τi+1)

∣∣∣p/2

=i0−1∑i=0

∣∣∣(x(0)·x(1))

2(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)2(τi ,τi+1)

∣∣∣p/2

+∣∣∣(x(0)·x(1)

)2(τi0 ,τi0+1)− (

x ′(0)·x ′(1))

2(τi0 ,τi0+1)∣∣∣p/2

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣(x(0)·x(1))

2(τi ,τi+1)− (x ′(0)·x ′(1)

)2(τi ,τi+1)

∣∣∣p/2

=i0−1∑i=0

∣∣∣x(0)2(τi ,τi+1)− x ′(0)2(τi ,τi+1)∣∣∣p/2

140

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+∣∣∣x(0)2(τi0 ,σ1)+ x(1)2(σ1,τi0+1)+ x(0)1(τi0 ,σ1)⊗ x(1)1(σ1,τi0+1)

− x ′(0)2(τi0 ,σ1)− x ′(1)2(σ1,τi0+1)− x ′(0)1(τi0 ,σ1)⊗ x ′(1)1(σ1,τi0+1)∣∣∣p/2

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣x(1)2(τi ,τi+1)− x ′(1)2(τi ,τi+1)∣∣∣p/2

≤i0−1∑i=0

∣∣∣x(0)2(τi ,τi+1)− x ′(0)2(τi ,τi+1)∣∣∣p/2

+4p2 −1

∣∣∣x(0)2(τi0 ,σ1)− x ′(0)2(τi0 ,σ1)∣∣∣p/2

+4p2 −1

∣∣∣x(1)2(σ1,τi0+1)− x ′(1)2(σ1,τi0+1)∣∣∣p/2

+4p2 −1

∣∣∣x(0)1(τi0 ,σ1)− x ′(0)1(τi0 ,σ1)∣∣∣p/2∣∣∣x(1)1(σ1,τi0+1)

∣∣∣p/2

+4p2 −1

∣∣∣x ′(0)1(τi0 ,σ1)∣∣∣p/2∣∣∣x(1)1(σ1,τi0+1)− x ′(1)1(σ1,τi0+1)

∣∣∣p/2

+M−1∑

i=i0+1

∣∣∣x(1)2(τi ,τi+1)− x ′(1)2(τi ,τi+1)∣∣∣p/2

≤ 4p2 −1∥x(0)2 −x ′(0)2∥p/2

p/2,[σ0,σ1]

+4p2 −1∥x(1)2 −x ′(1)2∥p/2

p/2,[σ1,σ2]

+4p2 −1∥x(0)1 −x ′(0)1∥p/2

p,[σ0,σ1]∥x(1)1∥p/2p,[σ1,σ2]

+4p2 −1∥x ′(0)1∥p/2

p,[σ0,σ1]∥x(1)1 −x ′(1)1∥p/2p,[σ1,σ2]

であるから

∥(x(0)·x(1))

1 −(x ′(0)·x ′(1)

)1∥p,[σ0,σ2]

≤ 21− 1p

(∥x(0)1 −x ′(0)1∥p,[σ0,σ1] +∥x(1)1 − x ′(1)1∥p,[σ1,σ2]

),

∥(x(0)·x(1))

2 −(x ′(0)·x ′(1)

)2∥p/2,[σ0,σ2]

≤ 41− 2p

(∥x(0)2 −x ′(0)2∥p/2,[σ0,σ1]

+∥x(1)2 − x ′(1)2∥p/2,[σ1,σ2]

+∥x(0)1 − x ′(0)1∥p,[σ0,σ1]∥x(1)1∥p,[σ1,σ2]

+∥x ′(0)1∥p,[σ0,σ1]∥x(1)1 − x ′(1)1∥p,[σ1,σ2]

).

以上のことを,定理として次のようにまとめておく:

定理 7.4. f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd )とする.このとき,写像

Rν×Ωp(Rd ) ∋ (η, x) 7→ Z (η, x) ∈Ωp(Rd+ν)

141

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は連続である.よって,写像

Rν×Ωp(Rd ) ∋ (η, x) 7→ Y (η, x) ∈Ωp(Rν)

も連続となる.

7.5. Driving pathが smooth rough pathの場合x ∈ (1, x1, x2) ∈ SΩp(Rd )とすると,定義より

∃(xt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rd ) s.t.

(i) xt は区分的にC 1級で x0 = 0,

(ii) x1(s, t ) = xt −xs ,

x2(s, t ) =∫t

s(xu −xs)⊗dxu .

f ∈C∞b (Rν →Rν⊗Rd ), η ∈Rνに対して,(yt )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rν)を次の積分方程式の

一意解とする:

yt = η+∫t

0f (ys)dxs . (7.41)

zt =(

xt

yt

)とすれば (zt )0≤t≤1 は区分的に C 1 級で,これを基にして z = (1, z1, z2) ∈

SΩp(Rd+ν)を

z1(s, t ) = zt − zs ,

z2(s, t ) =∫t

s(zu − zs)⊗dzu

とおく.

Claim 7.4. z = Z (η, x),そして

Z (η, x)1(s, t ) =∫t

sf (zu)dzu ,

Z (η, x)2(s, t ) =Ï

s≤v≤u≤tf (zv )dzv ⊗ f (zu)dzu .

証明 zが初期値(0η

)の (7.28)をみたすことを確かめればよい.まず,定義より

z1(s, t ) =(

xt −xs

yt − ys

),

z2(s, t ) =(∫t

s (xu −xs)⊗dxu∫t

s (xu −xs)⊗d yu∫ts (yu − ys)⊗dxu

∫ts (yu − ys)⊗d yu

)

142

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であるから,πRd (z) = x, z1(0, u)+ (0η

)= zu .注意 6.1より

(∫f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)1(s, t )

=∫t

sf (zu)dzu

=∫t

s

(1 O

f (yu) O

)(dxu

d yu

)

=(

xt −xs∫ts f (yu)dxu

)

=(

xt −xs

yt − ys

) [...⃝ (7.41)より

]= z1(s, t ),(∫

f(z1(0, u)+ (0

η

))dz(u)

)2(s, t )

s≤v≤u≤tf (zv )dzv ⊗ f (zu)dzu

s≤v≤u≤t

(1 O

f (yv ) O

)(dxv

d yv

)⊗

(1 O

f (yu) O

)(dxu

d yu

)

s≤v≤u≤t

(dxv

f (yv )dxv

)⊗

(dxu

f (yu)dxu

)

s≤v≤u≤t

(dxv ⊗dxu dxv ⊗ f (yu)dxu

f (yv )dxv ⊗dxu f (yv )dxv ⊗ f (yu)dxu

)

=( ∫t

s (xu −xs)⊗dxu∫t

s (xu −xs)⊗ f (yu)dxu∫ts

∫us f (yv )dxv ⊗dxu

∫ts

∫us f (yv )dxv ⊗ f (yu)dxu

)

=(∫t

s (xu −xs)⊗dxu∫t

s (xu −xs)⊗d yu∫ts (yu − ys)⊗dxu

∫ts (yu − ys)⊗d yu

) [...⃝ (7.41)より

]= z2(s, t ).

[附記]

1⃝ (xt )0≤t≤1が区分的にC 1級のときは,(7.41)は Picardの逐次近似法により次のようにして解かれる: (y (n)

t )0≤t≤1 ∈C ([0,1] →Rν), n = 0,1,2, . . .を漸化式y (0)

t ≡ η,

y (n)t = η+

∫t

0f (y (n−1)

s )dxs , n ≥ 1

143

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で定義するとき

|y (n)t − y (n−1)

t | ≤ ∥ f ∥∞∥∇ f ∥n−1∞n!

(∫t

0|xs |ds

)n, 0 ≤ t ≤ 1, n ≥ 1 (7.42)

という評価が容易に分かり,このことから (y (n)t )はある (yt )に一様収束し,これが (7.41)

の解となることが従う.そして,解の一意性はGronwallの不等式から一発で出て来るのである.

Rough path xと初期値 ηを与えたとき,積分方程式 (7.28)は,Picardの逐次近似法によって解くということを聞いていたので,6節で定義した x に沿っての積分の評価をきちんとやっておけば,あとは上のような routine workに乗って簡単に行くのだろうとタカを括っていた.ところが,実際はそうとはならなかったのである.何故かというと,1つには上と違って我々は first level pathと second level pathを組にしたものを扱わなければならないということ,それにもっと肝心なのは,x に沿っての積分∫

f(x1(0, u)+a

)dx(u)に対して,次のような不等式が成立しない (or 意味をなさない)

ということなのである:∣∣∣∫ f(x1(0, u)+a

)dx(u)

∣∣∣≤∫| f (

x1(0, u)+a)|d|x|(u).

実は,この種の不等式を使うことにより (7.42)とか Gronwallの不等式等が出て来ていたのである.(しかし,このようなことを今回初めて目にしたわけではなく,すでに確率積分に関してはよく知っていた事実であるから,何を今更という気がしないでもない.)ともかく,このような事情から,我々は (7.28)を逐次近似法で解くとき,まず,逐次

近似解列に対し (7.42)のような globalな評価の代わりに,localな評価を与え,それを基にして localな解の存在性・一意性を示した.そして,次の段階では,この localな評価が関数 f , roughnessの p,そして control function ωの大きさ (i.e., ω(0,1))にしか依っていないことに注意して,localな解を有限個つなぎ合わせて全体に延長することにより,globalな解の存在性・一意性を示したのである.2⃝ 1⃝で述べたように (7.28)の解法は2段階で行なわれる: 「まず localに解き,その後,それらをつなぎ合わせて全体に延長する.」この「解を延長する」ことについては,Lyons-Qianの本 [20]の 162ページの最初の7行からなるパラグラフで述べられているに過ぎない.いくら何でもこの説明はないだろうということで,このノートでは,この

あた

辺りのことをもう少し丁寧に書いたつもりである (でも,まだ不十分かもしれないが....).σ,τ = (s, t ) ∈ [σ,τ]2 ; σ ≤ s ≤ t ≤ τ上の rough pathの空間 Ωσ,τ

p (Rd )とか,2つの rough path x ∈Ωσ,τ

p (Rd )と y ∈Ωτ,λp (Rd )をつなぎ合わせたΩσ,λ

p (Rd )の rough path

x·y とかの記号は,筆者が勝手に作ったものであり,誰か他の人がすでに定義しているかもしれない.3⃝ 定理 7.4は,(7.28)の一意解 Z (η, x)に関する連続性定理であるが,これは定理 6.2,積分

∫f (xu)dx(u)に関する連続性定理の主張に比べてトーンダウンしている.残念なが

ら,今のところ,筆者が (証明)できているのはこの程度である.補足すると,Lyons-Qian

144

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の本 [20]の 158ページの Proposition 6.2.1, or 162ページの Theorem 6.2.1(ii)では,定理 6.2と同様の連続性定理が Z (η, x)についても成り立つと主張している.しかし,彼らの証明には大きな間違いがあり,筆者はその箇所の修復を試みたが出来なかった.ということなので,このノートの定理 7.4の主張で (今のところは)仕方がないのかなぁーという気でいる (口惜しいけれど....).

145

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8. Dyadic polygonal approximation

w(t ) = t (w1(t ), . . . , wd (t ))を原点から出発する d 次元ブラウン運動とし,その path

について, rough path w を対応させることを考えよう.w1(s, t ) = w(t )−w(s)の定義には問題はない.しかし,ブラウン運動のほとんどすべての path w(t )はすべての t で微分不可能のため,滑らかな pathのように w2 を定義することはできない.しかし,確率積分として定義可能である.確率積分には例えば Itô式,Stratonovich式の2つがある.dw(t )で Itô積分,dw(t )で Stratonovich積分を表わすとし,

(wI )2(s, t ) =(∫t

s(w i (u)−w i (s))dw j (u)

)1≤i , j≤d

, (8.1)

(wS)2(s, t ) =(∫t

s(w i (u)−w i (s))dw j (u)

)1≤i , j≤d

(8.2)

と定義する.適当なバージョンを取ることにより,ほとんどすべての w について(wI )2(s, t ), (wS)2(s, t )は (s, t )の連続関数になり,かつほとんどすべての w について,これらを second level pathとする T 2(Rd )-値写像 wI , wS が Chenの恒等式をみたすのは容易に分かる.

(wS)2(s, t ) = (wI )2(s, t )+ t − s

21d注23 (8.3)

となるのも容易に分かる.このことは,命題 4.2と整合する結果である.さらに wS はw-geometric, i.e., (4.6)をみたすことも分かる.確率過程に対するKolmogorovの連続性定理から i = 1については,wに依存する定数

C (w)が存在して |w1(s, t )| ≤C (w)|t−s|1/p (0 ≤ s ≤ t ≤ 1)は分かる.w2(s, t ) = (wS)2(s, t )

の方は,何かの関数 ϕの差 ϕ(t )−ϕ(s)と書けているわけではないので,あまり自明ではないが,Chenの恒等式に注意することにより,やはり Kolmogorov-Centsov流の議論,または Garsia-Rodemich-Rumseyによる Besov norm (cf. 定義 8.3)を用いた議論により定数 C ′(w)が存在して |w2(s, t )| ≤C ′(w)|t − s|2/p (0 ≤ s ≤ t ≤ 1)が成り立つことも分かる.このことから wS は定理 4.3の条件 (b)をみたすことが直ぐに分かり,よってこの定理よりブラウン運動を geometric rough pathの空間に埋め込むことができる.しかし,定理 4.3は wS が具体的にどのような smooth rough pathの極限として書けているかまでは答えていない.今節では,それに対する解答を与える.なお,この節を通じて 2 < p < 3とする.

注意 8.1.

limn→∞

2n−1∑k=0

∣∣∣w(k +1

2n

)−w( k

2n

)∣∣∣2 = d a.s. (8.4)

である.実際,各 i = 1, . . . , d に対して

E

[(2n−1∑k=0

(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))2 −1

)2]注231d は d 次の単位行列を表わす.

146

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=2n−1∑k=0

E

[(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))4]

+2∑

0≤k<l≤2n−1E

[(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))2(w i ( l +1

2n

)−w i ( l

2n

))2]

−22n−1∑k=0

E

[(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))2]+1

=2n−1∑k=0

( 1

2n

)2E[w i (1)4]+2

∑0≤k<l≤2n−1

( 1

2n

)2E[w i (1)2]2 −2

2n−1∑k=0

1

2nE

[w i (1)2]+1

...⃝ w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

) d= w i ( 1

2n

) d=√

1

2nw i (1),

w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

) Í w i ( l +1

2n

)−w i ( l

2n

)(k = l)

= 3

2n+2

2n(2n −1)

2

( 1

2n

)2 −2 ·2n 1

2n+1[

...⃝ E[w i (1)2]= 1, E

[w i (1)4]= 3

]= 1

2n−1

となるから

E

[ ∞∑n=1

(2n−1∑k=0

(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))2 −1

)2]=

∞∑n=1

1

2n−1= 2 <∞.

これは

∞∑n=1

(2n−1∑k=0

(w i (k +1

2n

)−w i ( k

2n

))2 −1

)2

<∞ a.s. (i = 1, . . . , d)

を implyし,よって (8.4)が従うのである.さて,∥w1∥2 <∞のときは

V(∥w1∥2

2,[·,∗],Dn)≥ 2n−1∑

k=0

∣∣∣w(k +1

2n

)−w( k

2n

)∣∣∣2

であるから,これと (8.4)より

limn→∞V

(∥w1∥22,[·,∗],Dn

)≥ d > 0.注24

故に定理 4.3よりwS ∈GΩ2(Rd ) a.s.が分かる.このようなわ け

理由で,今節では,roughness

の p は 2より大きいとした.注24V (ω,D) (ωは control function, D は [0,1]の分割)については定義 4.5を参照.またDn は 2n 等分割である.

147

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(W d ,µ)を d 次元Wiener空間,即ち,µをW d 上のWiener測度とする.

定義 8.1. 各 w ∈ W d に対して,B(·, w) = (B i (·, w)

)i=0,1,...,d ∈ W 1+d を

B0(t , w) = t ,

B i (t , w) = w i (t ), i = 1, . . . , d

により定義する注25.そして n ∈ Nに対して,Bn(·, w)を B(·, w)の 2進折れ線近似,即ち,

Bn(t , w) = (1− 2n t

)B

(⌊2n t⌋2n

, w)+ 2n t B

(⌊2n t⌋+1

2n, w

)(8.5)

とする.Bn(·, w) ∈ H1+d , B0n(t , w) = t に注意.

定義より B(t , w) =(

t

w(t )

)となる.また,w(n)を w の 2進折れ線近似,即ち,

w(n)(t ) = (1− 2n t

)w

(⌊2n t⌋2n

)+ 2n t w(⌊2n t⌋+1

2n

)(8.6)

とするならば

Bn(t , w) =(

t

w(n)(t )

)

である注26.定義 7.1の記号を用いると

πR

(Bn(·, w)1(s, t )

)= t − s,

πRd

(Bn(·, w)1(s, t )

)= w(n)1(s, t ),(8.7)

πR⊗R(Bn(·, w)2(s, t )

)= (t − s)2

2,

πR⊗Rd

(Bn(·, w)2(s, t )

)=∫t

s(u − s)⊗ w(n)(u)du,

πRd⊗R(Bn(·, w)2(s, t )

)=∫t

sw(n)1(s, u)du,

πRd⊗Rd

(Bn(·, w)2(s, t )

)= w(n)2(s, t ).

(8.8)

である.ここで (8.8)の第2式は,部分積分より∫t

s(u − s)⊗ w(n)(u)du =

[(u − s)⊗w(n)(u)

]t

s−

∫t

sdu ⊗w(n)(u)

注25B(·, w)の indexが i = 0,1, . . . , d であることに注意.注26“w(n)”は path w の時刻 t = nでの位置を表わし,一方では 2進折れ線近似を表わす.同じ記号で全く違うものを表わしているので注意が要る.紛らわしいけど,前後の文脈から判断して下さい.

148

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= (t − s)⊗w(n)(t )−∫t

sdu ⊗w(n)(u)

=((t − s)w(n)(t )−

∫t

sw(n)(u)du

)∗=

(∫t

sw(n)1(u, t )du

)∗(8.9)

になることに注意すると,n, m ∈N, 0 < θ≤ 1に対して∣∣∣Bn(·, w)1(s, t )−Bm(·, w)1(s, t )∣∣∣= |w(n)1(s, t )−w(m)1(s, t )|,∣∣∣Bn(·, w)2(s, t )−Bm(·, w)2(s, t )∣∣∣

=∣∣∣πR⊗Rd

(Bn(·, w)2(s, t )

)−πR⊗Rd

(Bm(·, w)2(s, t )

)∣∣∣2

+∣∣∣πRd⊗R

(Bn(·, w)2(s, t )

)−πRd⊗R

(Bm(·, w)2(s, t )

)∣∣∣2

+∣∣∣πRd⊗Rd

(Bn(·, w)2(s, t )

)−πRd⊗Rd

(Bm(·, w)2(s, t )

)∣∣∣21/2

=∣∣∣∫t

s

(w(n)1(u, t )−w(m)1(u, t )

)du

∣∣∣2 +∣∣∣∫t

s

(w(n)1(s, u)−w(m)1(s, u)

)du

∣∣∣2

+|w(n)2(s, t )−w(m)2(s, t )|21/2

≥ |w(n)2(s, t )−w(m)2(s, t )|,

≤(∫t

s|w(n)1(u, t )−w(m)1(u, t )|du

)2 +(∫t

s|w(n)1(s, u)−w(m)1(s, u)|du

)2

+|w(n)2(s, t )−w(m)2(s, t )|21/2

≤∥w(n)1 −w(m)1∥2

H ,θ/2

[(∫t

s(t −u)θ/2du

)2 +(∫t

s(u − s)θ/2du

)2]+∥w(n)2 −w(m)2∥2

H ,θ(t − s)2θ1/2

≤ ∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2

p2(t − s)

θ2+1 +∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ(t − s)θ.

よって∥∥∥Bn(·, w)1 −Bm(·, w)1

∥∥∥H ,θ/2

= ∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2,

∥∥∥Bn(·, w)2 −Bm(·, w)2

∥∥∥H ,θ

≥ ∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ,

≤p2∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 +∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ.

149

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これは

limn,m→∞

[∥∥∥Bn(·, w)1 −Bm(·, w)1

∥∥∥H ,θ/2

+∥∥∥Bn(·, w)2 −Bm(·, w)2

∥∥∥H ,θ

]= 0

⇐⇒iff

limn,m→∞

[∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 +∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ

]= 0 (8.10)

を示している.さて,smooth rough path列

(w(n)

)∞n=1に対して次が成り立つ:

定理 8.1. 0 < θ< 1とする.W d の部分集合 X d を

limn,m→∞

(∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 +∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ

)= 0 (8.11)

が成立する w 全体の集合とする.このとき µ(X d ) = 1が成立する.さらに (8.11)の収束は任意の r > 1に対して Lr の意味での収束でもある.

注意 8.2. 明らかに X d ∈ B(W d ) である (ただし B(W d ) は W d の Borel σ-集合体).何となれば,W d ∋ w 7→ |w(n)i (s, t )−w(m)i (s, t )| ∈ [0,∞)の B(W d )-可測性 (i = 1,2,

(s, t ) ∈), 及び

∥w(n)i −w(m)i∥H ,iθ/2 = sup0≤s<t≤1;

s,t∈Q

|w(n)i (s, t )−w(m)i (s, t )||t − s|iθ/2

よりW d ∋ w 7→ ∥w(n)i −w(m)i∥H ,iθ/2 ∈ [0,∞)はB(W d )-可測であるから.Hölder norm ∥ ∥H ,iθ/2の代りに p/i -variation norm ∥ ∥p/i としても,w 7→ ∥w(n)i −

w(m)i∥p/i が B(W d )-可測であることは直ぐに分かる.だから,X d は p/i -variation

normに依るものとしてもよかったのだが,実際の証明においては variation normより強いHölder norm (実は Besov norm (cf.定義 8.3))による評価をしたので,最初から上のようなものにした.

この定理の証明は,あとでする.(8.10)と定理 8.1より,

(Bn(·, w)

)∞n=1がGΩp(R1+d )で概収束することは直ぐに従う.

これの極限については,次の定理から分かる:

定理 8.2. 各 (s, t ) ∈に対して

limn→∞E

[∣∣∣(Bn)1(s, t )− (B(t )−B(s))∣∣∣2

]= 0,

limn→∞E

[∣∣∣(Bn)2(s, t )−∫t

s(B(t )−B(s))dB(u)

∣∣∣2]= 0.

150

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証明 (8.7), (8.8),そして (8.9)より

(Bn)1(s, t )− (B(t )−B(s)) =(

0

w(n)(t )−w(t )− (w(n)(s)−w(s))

),

(Bn)2(s, t )−∫t

s(B(u)−B(s))dB(u)

=

0

((t − s)(w(n)(t )−w(t ))

−∫ts (w(n)(u)−w(u))du

)∗∫ts (w(n)(u)−w(u))du

− (t − s)(w(n)(s)−w(s))w(n)2(s, t )− (wS)2(s, t )

.

ここで (8.6)より,0 ≤ u ≤ 1に対して

E[|w(n)(u)−w(u)|4]

= E[∣∣∣(1− 2n u)

(w

(⌊2n u⌋2n

)−w(u))+ 2n u

(w

(⌊2n u⌋+1

2n

)−w(u))∣∣∣4]

≤ 8((1− 2n u)4E

[|w(u)−w

(⌊2n u⌋2n

)|4]+ 2n u4E[|w(⌊2n u⌋+1

2n

)−w(u)|4])

= 8((1− 2n u)4E

[|w(

u − ⌊2n u⌋2n

)|4]+ 2n u4E[|w(⌊2n u⌋+1

2n−u

)|4])[...⃝ w(t )−w(s)

d= w(t − s) (0 ≤ s < t )]

= 8((1− 2n u)4E

[|w( 2n u

2n

)|4]+ 2n u4E[|w(1− 2n u

2n

)|4])= 8

((1− 2n u)4E

[∣∣∣√

2n u

2nw(1)

∣∣∣4]+ 2n u4E[∣∣∣

√1− 2n u

2nw(1)

∣∣∣4])[

...⃝ w(λt )d=pλw(t ),とくに w(λ)

d=pλw(1)

]= 8

((1− 2n u)4 2n u2

22n+ 2n u4 (1− 2n u)2

22n

)E

[|w(1)|4]= 8

((1− 2n u)2n u

)2

22n

((1− 2n u)2 + 2n u2)E

[|w(1)|4]≤ E

[|w(1)|4]2

1

4n(8.12)

であるから

w(n)(t )−w(t )− (w(n)(s)−w(s)) → 0 in L2,

(t − s)(w(n)(t )−w(t ))−∫t

s(w(n)(u)−w(u))du → 0 in L2,∫t

s(w(n)(u)−w(u))du − (t − s)(w(n)(s)−w(s)) → 0 in L2.

151

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よって,あとは

w(n)2(s, t )− (wS)2(s, t ) → 0 in L2

を示せばよい.この収束は

w(n)2(s, t ) =∫t

sw(n)(u)⊗ w(n)(u)du −w(n)(s)⊗ (w(n)(t )−w(n)(s))

=∫t

0w(n)(u)⊗ w(n)(u)du −

∫s

0w(n)(u)⊗ w(n)(u)du

−w(n)(s)⊗ (w(n)(t )−w(n)(s)),

(wS)2(s, t ) =∫t

sw(u)⊗dw(u)−w(s)⊗ (w(t )−w(s))

=∫t

0w(u)⊗dw(u)+ t

21d −

(∫s

0w(u)⊗dw(u)+ s

21d

)−w(s)⊗ (w(t )−w(s)),

そして (8.12)より∫t

0w(n)(u)⊗ w(n)(u)du →

∫t

0w(u)⊗dw(u)+ t

21d in L2 (8.13)

を確かめることに帰着する.(8.6)より

左辺=l∑

j=0

∫ j+12n

j2n

w(n)(u)⊗ w(n)(u)du −∫ l+1

2n

tw(n)(u)⊗ w(n)(u)du[

ここで簡単のために l := ⌊2n t⌋]

=l∑

j=0

∫ j+12n

j2n

(( j +1−2n u)w

( j

2n

)+ (2n u − j )w( j +1

2n

))⊗2n(w

( j +1

2n

)−w( j

2n

))du

−∫ l+1

2n

t

((l +1−2n u)w

( l

2n

)+ (2n u − l)w( l +1

2n

))⊗2n(w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))du

= 1

2

l∑j=0

(w

( j

2n

)+w( j +1

2n

))⊗ (w

( j +1

2n

)−w( j

2n

))−

( (l +1−2n t )2

2w

( l

2n

)+ 1− (2n t − l)2

2w

( l +1

2n

))⊗ (w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))

152

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...⃝∫ j+1

2n

j2n

( j +1−2n u)du 2n =∫1

0vdv = 1

2,

∫ j+12n

j2n

(2n u − j )du 2n =∫1

0vdv = 1

2,

∫ l+12n

t(l +1−2n u)du 2n =

∫l+1−2n t

0vdv = (l +1−2n t )2

2,∫ l+1

2n

t(2n u − l)du 2n =

∫1

2n t−lvdv = 1− (2n t − l)2

2

= 1

2

l∑j=0

w( j

2n

)⊗ (w

( j +1

2n

)−w( j

2n

))+ 1

2

l+1∑j=1

w( j

2n

)⊗w( j

2n

)− 1

2

l∑j=0

w( j +1

2n

)⊗w( j

2n

)−

( (l +1−2n t )2

2w

( l

2n

)+ 1− (2n t − l)2

2w

( l +1

2n

))⊗ (w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))= 1

2

l∑j=0

w( j

2n

)⊗ (w

( j +1

2n

)−w( j

2n

))− 1

2

l∑j=0

(w

( j +1

2n

)−w( j

2n

))⊗w( j

2n

)+ 1

2w

( l +1

2n

)⊗w( l +1

2n

)−

( (l +1−2n t )2

2w

( l

2n

)+ 1− (2n t − l)2

2w

( l +1

2n

))⊗ (w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))[

w(0) = 0に注意]

= 1

2

∫ l+12n

0w

(⌊2n u⌋2n

)⊗dw(u)− 1

2

(∫ l+12n

0w

(⌊2n u⌋2n

)⊗dw(u)

)∗+ 1

2w

( l +1

2n

)⊗w( l +1

2n

)−

( (l +1−2n t )2

2w

( l

2n

)+ 1− (2n t − l)2

2w

( l +1

2n

))⊗ (w

( l +1

2n

)−w( l

2n

)).

ここで伊藤の公式より

w(τ)⊗w(τ) = (wα(τ)wβ(τ))α,β=1,...,d

=(∫τ

0wα(u)dwβ(u)+

∫τ

0wβ(u)dwα(u)+δαβτ

)α,β=1,...,d

=∫τ

0w(u)⊗dw(u)+

(∫τ

0w(u)⊗dw(u)

)∗+τ1d

であるから

上式

153

Page 162: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

=∫ l+1

2n

0w(u)⊗dw(u)+ 1

2

l +1

2n1d

+ 1

2

∫ l+12n

0

(w

(⌊2n u⌋2n

)−w(u))⊗dw(u)

− 1

2

(∫ l+12n

0

(w

(⌊2n u⌋2n

)−w(u))⊗dw(u)

)∗−

( (l +1−2n t )2

2w

( l

2n

)+ 1− (2n t − l)2

2w

( l +1

2n

))⊗ (w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))=

∫ ⌊2n t⌋+12n

0w(u)⊗dw(u)+ 1

2

⌊2n t⌋+1

2n1d

− 1

2

∫ ⌊2n t⌋+12n

0

(w(u)−w

(⌊2n u⌋2n

))⊗dw(u)

+ 1

2

(∫ ⌊2n t⌋+12n

0

(w(u)−w

(⌊2n u⌋2n

))⊗dw(u)

)∗−

( (1− 2n t )2

2w

(⌊2n t⌋2n

)+ 1− 2n t 2

2w

(⌊2n t⌋+1

2n

))⊗ (w

(⌊2n t⌋+1

2n

)−w(⌊2n t⌋

2n

)).

故に,n →∞とすれば (8.13)は容易に分かる.

各 w ∈ X d に対して

B(w) := limn→∞Bn(w) in

(GΩp(R1+d ), dp

)(8.14)

とおくと

(Bn)1(w)(·,∗) ⇒ B1(w)(·,∗),

(Bn)2(w)(·,∗) ⇒ B2(w)(·,∗).

定理 8.1より,これは概収束である.一方,定理 8.2より,各 (s, t ) ∈に対して

(Bn)1(s, t ) → B(t )−B(s) in L2,

(Bn)2(s, t ) →∫t

s(B(u)−B(s))dB(u) in L2

であるから,確率 1で

B1(s, t ) = B(t )−B(s),

B2(s, t ) =∫t

s(B(u)−B(s))dB(u).

これは確率過程(∫t

s(B(u)−B(s))dB(u)

)(s,t )∈の連続なバージョンとして

(B2(s, t )

)(s,t )∈

が採れ,そして B = (1,B1,B2) ∈GΩp(R1+d ) (a.s.)となることを云っている.

154

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定義 8.2. (8.14)の B を canonical rough pathとよぶ.

さて,定理 8.1の証明をする.そのために,次の定義と命題を用意する:

定義 8.3. 連続関数 ψ : → V の Besov normを

∥ψ∥B,m,θ :=Ï

0≤s<t≤1

|ψ(s, t )|m(t − s)2+mθ

dsdt

1/m

(∈ [0,∞])

と定義する.ただし V は Banach空間, m ∈ [1,∞), θ ∈ (0,1].

x1,及びCx,y (cf. (4.2))の Hölder normをこの Besov normで評価できる.

命題 8.1. 注27 x, y ∈ Hd に対して,次の評価が成り立つ:

(i) ∥x1∥H ,θ/2 ≤ 8 ·81/m(1+ 4

)∥x1∥B,m,θ/2.

(ii) ∥Cx,y∥H ,θ ≤ 32 ·721/m(1+ 2

)(∥Cx,y∥B,m,θ+2(1+ 2

)∥x1∥B,2m,θ/2∥y1∥B,2m,θ/2

).

さらに Gauss型確率変数の次の性質を用いる.例えばこれは,Ornstein-Uhlenbeck

semigroupの hypercontractivityを用いて示される.証明については [23]の命題 2.14

を参照注28.

命題 8.2. ϕi (·) ∈ L2([0,1] → Rd )とし Xi (w) = ∫10 (ϕi (t ), dw(t ))と定める.F (x1, . . . , xn)

を N 次多項式とし,G(w) = F (X1, . . . ,Xn)とおく.q ≥ 2とする.このとき,N , q にのみ依存する定数CN ,q が存在して注29

∥G∥Lq ≤CN ,q∥G∥L2 .

定理 8.1の証明 (8.11)を示すには,

∞∑n=1

E[∥(w(n +1))1 − (w(n))1∥H ,θ/2 +∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥H ,θ

]<∞ (8.15)

を示せば良い.簡単のため w(n +1)(t )−w(n)(t ) = zn(t )と書く.以下で,順を追ってE

[|zn(t )− zn(s)|4], E[|Czn ,zn (s, t )|2], E

[|Czn ,w(n)(s, t )|2], そして E[|w(n)(t )− w(n)(s)|2]

を実際に計算し,その後で命題 8.1,及び 8.2を用いて (8.15)を示す.それは 9段階から成る長いものとなっている.途中の計算をなるたけ省略せずに愚直にした

せ い

所為である.

注27命題 8.1の証明は小節 A.1で与える.注28命題 8.2は,定理 8.1,及び Claim 9.2, 9.3の証明において使われる.だから,[23]の命題 2.14を単に引用して済まるのはいくらなんでも無責任過ぎるので,(肝心なところは

くだん

件の命題に任せるとしても)一応の証明を小節 A.2で与えておく.注29定数 CN ,q と命題 8.1(ii)における (i.e., (4.2)により定義される)Cx,y は全く違うものなので注意が必要!

155

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1 n ∈N, k2n ≤ t ≤ k+1

2n (k = 0,1, . . . ,2n −1)に対して

zn(t ) = ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)). (8.16)

とくに

zn( k

2n

)= zn(k +1

2n

)= 0. (8.17)

...⃝ (8.6)より, k2n ≤ t ≤ 2k+1

2n+1 のときは

zn(t ) = (2k +1−2n+1t )w( k

2n

)+ (2n+1t −2k)w(2k +1

2n+1

)− (k +1−2n t )w

( k

2n

)− (2n t −k)w(k +1

2n

)= (2n t −k)

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= (

(2n t −k)∧ (k +1−2n t ))(

2w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)),

2k+12n+1 ≤ t ≤ k+1

2n のときは

zn(t ) = (2k +2−2n+1t )w(2k +1

2n+1

)+ (2n+1t −2k −1)w(k +1

2n

)− (k +1−2n t )w

( k

2n

)− (2n t −k)w(k +1

2n

)= (k +1−2n t )

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= (

(2n t −k)∧ (k +1−2n t ))(

2w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)).

2 0 ≤ s < t ≤ 1, n ∈Nとする.このとき適当な 0 ≤ k ≤ l ≤ 2n −1に対して

k

2n≤ s ≤ k +1

2n,

l

2n≤ t ≤ l +1

2n

である.Case 1 k = l のときは

E[|zn(t )− zn(s)|4]

= d(d +2)( 1

2n

)2((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4.

Case 2 k < l のときは

E[|zn(t )− zn(s)|4]

= d(d +2)( 1

2n

)2((

(2n t − l)∧ (l +1−2n t ))2 + (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

)2.

156

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...⃝ Case 1のとき.

k

2n≤ s < t ≤ k +1

2n

であるから,(8.16)より

zn(t )− zn(s) = ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= (

(2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s))

×(w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)))となるので

E[|zn(t )− zn(s)|4]

= ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

×E

[∣∣∣w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))∣∣∣4]

= ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

×E

[(|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|2 −2⟨w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

), w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)⟩+ |w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|2)2]

= ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

×E

[|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|4 +4⟨w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

), w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)⟩2

+|w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|4−4|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|2⟨w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

), w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)⟩−4⟨w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

), w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)⟩|w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|2+2|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|2|w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|2].

ここで

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

) Í w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

) d= w( 1

2n+1

) d=√

12n+1 w(1),

157

Page 166: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

) d= w( 1

2n+1

) d=√

12n+1 w(1)

に注意すると

E[|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|4]= E[|w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|4]=

( 1

2n+1

)2E

[|w(1)|4]= d(d +2)( 1

2n+1

)2,

E[⟨w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

), w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)⟩2]

= E[⟨√

12n+1 ξ,

√1

2n+1η⟩2] [ここで ξ Í η, ξ,η

d= N(0,1d ) (1d は d 次の単位行列)]

= ( 1

2n+1

)2E[(

d∑i=1

ξiηi )2]= ( 1

2n+1

)2d∑

i , j=1E[ξiξ j ]E[ηiη j ] = d

( 1

2n+1

)2,

E[|w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)|2]= E[|w(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)|2]= 1

2n+1E

[|w(1)|2]= d

2n+1.

これを上式に代入すると

E[|zn(t )− zn(s)|4]

= ((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

×

2d(d +2)( 1

2n+1

)2 +4d( 1

2n+1

)2 +2d2( 1

2n+1

)2

= d(d +2)( 1

2n

)2((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s))4.

次に Case 2のとき.

k

2n≤ s ≤ k +1

2n≤ l

2n≤ t ≤ l +1

2n

であるから,(8.16)より

zn(t )− zn(s)

= ((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)(w

(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)))− (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))(

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)))

158

Page 167: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

となるので

E[|zn(t )− zn(s)|4

]= E

[(((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2∣∣∣w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

))∣∣∣2

−2((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

⟨w

(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))⟩+ (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

∣∣∣w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))∣∣∣2)2]

= ((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)4E[∣∣∣w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

))∣∣∣4]+4

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2((2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

× E[⟨w

(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))⟩2]

+ ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4E[∣∣∣w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))∣∣∣4]−4

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)3((2n s −k)∧ (k +1−2n s))

× E[∣∣∣w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

))∣∣∣2

⟨w

(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))⟩]−4

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)3

× E[⟨

w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))⟩∣∣∣w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))∣∣∣2]+2

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2((2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

× E[∣∣∣w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

))∣∣∣2

∣∣∣w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

))∣∣∣2].

159

Page 168: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

ここで

w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

))

Í w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)),

w(2l +1

2n+1

)−w( l

2n

)− (w

( l +1

2n

)−w(2l +1

2n+1

)) d=√

12n w(1),

w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)− (w

(k +1

2n

)−w(2k +1

2n+1

)) d=√

12n w(1)

に注意すると

上式= ((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)4( 1

2n

)2d(d +2)

+4((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2((2n s −k)∧ (k +1−2n s))2( 1

2n

)2d

+ ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4( 1

2n

)2d(d +2)

+2((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2((2n s −k)∧ (k +1−2n s))2( 1

2n

)2d2

= d(d +2)( 1

2n

)2(

(2n t − l)∧ (l +1−2n t ))4

+2((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2((2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

+ ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

= d(d +2)( 1

2n

)2(

(2n t − l)∧ (l +1−2n t ))2 + (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

2.

3 n ∈N, 0 ≤ s ≤ t ≤ 1に対して

E[|zn(t )− zn(s)|4]≤ d(d +2)

(( 1

2n

)2 ∧ (t − s)2).

...⃝ まず a ∈Rに対して

a ∧ (1−a) = 1

2+ (

a − 1

2

)∧ (1

2−a

)= 1

2−|a − 1

2|

に注意.0 ≤ s < t ≤ 1としてよい.k

2n ≤ s < t ≤ k+12n (k = 0,1, . . . ,2n −1)のときは,2の Case 1より

E[|zn(t )− zn(s)|4]= d(d +2)

( 1

2n

)2(1

2−|2n t −k − 1

2|− 1

2+|2n s −k − 1

2|)4

≤ d(d +2)( 1

2n

)2(2n t −k − 1

2− (

2n s −k − 1

2

))4

160

Page 169: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

= d(d +2)( 1

2n

)2(2n(t − s))2(2n t −2n s)2

≤ d(d +2)(( 1

2n

)2 ∧ (t − s)2)

[...⃝ k ≤ 2n s < 2n t ≤ k +1より 0 < 2n t −2n s ≤ 1

].

k2n ≤ s ≤ k+1

2n ≤ l2n ≤ t ≤ l+1

2n (0 ≤ k < l ≤ 2n −1)のときは,2の Case 2より

E[|zn(t )− zn(s)|4]

= d(d +2)( 1

2n

)2(

(2n t − l)∧ (l +1−2n t )) · ((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)+ (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s)) · ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2

≤ d(d +2)( 1

2n

)21

2

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)+ 1

2

((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2

[...⃝ 0 ≤ (2n t − l)∧ (l +1−2n t ), (2n s −k)∧ (k +1−2n s) ≤ 1

2

]≤ d(d +2)

( 1

2n

)2 1

4

(2n t − l +k +1−2n s

)2

[...⃝ (2n t − l)∧ (l +1−2n t ) ≤ (2n t − l), (2n s −k)∧ (k +1−2n s) ≤ k +1−2n s

]= d(d +2)

( 1

2n

)2 1

4

(2n(t − s)− l +k +1

)2

≤ d(d +2)( 1

2n

)2 1

4

(2n(t − s)

)2[

...⃝ 0 ≤ 2n(t − s)− l +k +1 ≤ 2n(t − s)]

= d(d +2)

4(t − s)2.

また

((2n t − l)∧ (l +1−2n t )

)2 + ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2 ≤ (1

2

)2 + (1

2

)2 = 1

2

より

E[|zn(t )− zn(s)|4]≤ d(d +2)

4

( 1

2n

)2

となるから

E[|zn(t )− zn(s)|4]≤ d(d +2)

4

(( 1

2n

)2 ∧ (t − s)2).

4 0 ≤ s < t ≤ 1, n ∈Nとする.このとき 0 ≤ k ≤ l ≤ 2n −1に対して

k

2n≤ s ≤ k +1

2n,

l

2n≤ t ≤ l +1

2n

161

Page 170: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

である.Case 1 k = l のときは

Czn ,zn (s, t )

= 1

2

((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)).

Case 2 k < l のときは

Czn ,zn (s, t )

=Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)+Czn ,zn

( l

2n, t

)+ (zn

(k +1

2n

)− zn(s))⊗

(zn(t )− zn

( l

2n

)).

...⃝ Case 1のときは

k

2n≤ s < t ≤ k +1

2n.

(8.16)より[ k

2n , k+12n

]上で

zn(u) = ((2n u −k)∧ (k +1−2n u)

)(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)),

zn(u) = 2n(1u< 2k+1

2n+1−1u> 2k+1

2n+1

)(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))であるから

Czn ,zn (s, t )

=∫t

szn(u)⊗ zn(u)du − zn(s)⊗ (

zn(t )− zn(s))

=∫t

s

((2n u −k)∧ (k +1−2n u)

)2n

(1u< 2k+1

2n+1−1u> 2k+1

2n+1

)du

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))− (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))(

(2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s))

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))=

22n

∫t

s

((u − k

2n

)1u< 2k+1

2n+1− (k +1

2n−u

)1u> 2k+1

2n+1

)du

− ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)+ (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

162

Page 171: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))=

22n

∫ k+12n

s

((u − k

2n

)1u< 2k+1

2n+1− (k +1

2n−u

)1u> 2k+1

2n+1

)du

−22n∫ k+1

2n

t

((u − k

2n

)1u< 2k+1

2n+1− (k +1

2n−u

)1u> 2k+1

2n+1

)du

− ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)+ (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

×

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)).

ここで,a < bのとき,a ≤ ∀s ≤ bに対して∫b

s

((u −a)1u< a+b

2− (b −u)1u> a+b

2

)du =−1

2

((s −a)∧ (b − s)

)2,∫s

a

((u −a)1u< a+b

2− (b −u)1u> a+b

2

)du = 1

2

((s −a)∧ (b − s)

)2(8.18)

...⃝ a ≤ s ≤ a +b

2のときは

第1式の左辺=∫ a+b

2

s(u −a)du −

∫b

a+b2

(b −u)du

=∫ b−a

2

s−avdv −

∫ b−a2

0vdv =−

∫s−a

0vdv =−1

2(s −a)2,

第2式の左辺=∫s

a(u −a)du =

∫s−a

0vdv = 1

2(s −a)2.

a +b

2≤ s ≤ bのときは

第1式の左辺=−∫b

s(b −u)du =−

∫b−s

0vdv =−1

2(b − s)2,

第2式の左辺=∫ a+b

2

a(u −a)du −

∫s

a+b2

(b −u)du

=∫ b−a

2

0vdv −

∫ b−a2

b−svdv =

∫b−s

0vdv = 1

2(b − s)2.

に注意すれば

Czn ,zn (s, t ) =

22n(−1

2

)((s − k

2n

)∧ (k +1

2n− s

))2

+22n 1

2

((t − k

2n

)∧ (k +1

2n− t

))2

163

Page 172: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

− ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)+ (

(2n s −k)∧ (k +1−2n s))2

×

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= 1

2

((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)2 − ((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2

−2((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)((2n t −k)∧ (k +1−2n t )

)+2

((2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)2

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= 1

2

(2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

2

×(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))⊗ (2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)).

とくに s = k2n , t = k+1

2n とすると

Czn ,zn

( k

2n,

k +1

2n

)= 0. (8.19)

Case 2のときは

k

2n≤ s ≤ k +1

2n≤ l

2n≤ t ≤ l +1

2n

であるから,補題 4.1(ii), (8.17),そして (8.19)より

Czn ,zn (s, t )

=Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)+Czn ,zn

(k +1

2n,

l

2n

)+Czn ,zn

( l

2n, t

)+ (zn)1

(s,

k +1

2n

)⊗ (zn)1(k +1

2n,

l

2n

)+ (zn)1(s,

l

2n

)⊗ (zn)1( l

2n, t

)=Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)+ l−1∑j=k+1

Czn ,zn

( j

2n,

j +1

2n

)+

l−1∑j=k+2

(zn)1(k +1

2n,

j

2n

)⊗ (zn)1( j

2n,

j +1

2n

)+Czn ,zn

( l

2n, t

)+

((zn)1

(s,

k +1

2n

)+ (zn)1(k +1

2n,

l

2n

))⊗ (zn)1( l

2n, t

)=Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)+Czn ,zn

( l

2n, t

)+ (zn

(k +1

2n

)− zn(s))⊗

(zn(t )− zn

( l

2n

)).

5 4の Case 1のときは

E[|Czn ,zn (s, t )|2

]= 1

4E

[|zn(t )− zn(s)|4

]≤ d(d +2)

4

(( 1

2n

)2 ∧ (t − s)2),

164

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4の Case 2のときは

E[|Czn ,zn (s, t )|2

]≤ 9

2d(d +2)

(( 1

2n

)2 ∧ (t − s)2).

...⃝ まず,Case 1のときは

E[|Czn ,zn (s, t )|2

]= 1

4

((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4

×E

[∣∣∣2w(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)∣∣∣4]

= 1

4

((2n t −k)∧ (k +1−2n t )− (2n s −k)∧ (k +1−2n s)

)4( 1

2n

)2d(d +2)

= 1

4E

[|zn(t )− zn(s)|4

]≤ d(d +2)

4

(( 1

2n

)∧ (t − s)2) [

...⃝ 3より]

.

次に Case 2のときは

E[|Czn ,zn (s, t )|2

]≤ E

[(|Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)|+ |Czn ,zn

( l

2n, t

)|+ |zn(k +1

2n

)− zn(s)||zn(t )− zn( l

2n

)|)2]

≤ 3

E

[∣∣∣Czn ,zn

(s,

k +1

2n

)∣∣∣2]+E[|Czn ,zn

( l

2n, t

)|2]+E

[|zn

(k +1

2n

)− zn(s)|4]1/2

E[|zn(t )− zn

( l

2n

)|4]1/2 [

...⃝ Schwarzの不等式]

= 3

1

4E

[|zn

(k +1

2n

)− zn(s)|4]+ 1

4E

[|zn(t )− zn

( l

2n

)|4]+E

[|zn

(k +1

2n

)− zn(s)|4]1/2

E[|zn(t )− zn

( l

2n

)|4]1/2

≤ 3

d(d +2)

4

(( 1

2n

)2 ∧ (k +1

2n− s

)2)+ d(d +2)

4

(( 1

2n

)2 ∧ (t − l

2n

)2)

+√

d(d +2)(( 1

2n

)2 ∧ (k +1

2n− s

)2)√

d(d +2)(( 1

2n

)2 ∧ (t − l

2n

)2)

≤ 9

2d(d +2)

(( 1

2n

)2 ∧ (t − s

)2).

6 ∀n ∈N, ∀(s, t ) ∈に対して

E[|Czn ,w(n)(s, t )|2

]≤ d3/2(d +1)1/2

( 1

2n∧ (t − s)2

).

165

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...⃝ (8.6)より

w(n)(u) =2n−1∑k=0

2n1[ k2n , k+1

2n )(u)(w

(k +1

2n

)−w( k

2n

))(8.20)

である.(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))k=0,1,...,2n−1

Í

(w

(k +1

2n

)−w( k

2n

))k=0,1,...,2n−1

に注意すれば,(8.16)と (8.20)より(zn(u)

)0≤u≤1 Í (w(n)(u)

)0≤u≤1. (8.21)

確率空間 (W d ,µ)を拡張することにより,(w(t ))0≤t≤1と独立な (原点から出発する) d

次元 Brown運動(B(t )

)0≤t≤1を適当に取ってきて,B(n)(·)を B(·)の 2進折れ線近似と

する注30.このとき (8.21)より

Czn ,w(n)(·,∗)d=Czn ,B(n)(·,∗).

ここで (B(t )−B(n)(t )

)0≤t≤1

Í

(B(n)(t )

)0≤t≤1

(8.22)

に注意すると注31,∀(s, t ) ∈に対して

E[|Czn ,B(s, t )|2

]= E

[|Czn ,B−B(n)(s, t )+Czn ,B(n)(s, t )|2

]= E

[|Czn ,B−B(n)(s, t )|2

]+E

[|Czn ,B(n)(s, t )|2

] [...⃝ (8.22)より

]≥ E

[|Czn ,B(n)(s, t )|2

]= E

[|Czn ,w(n)(s, t )|2

].

ただし Czn ,B(s, t ) =∫ts

(zn(u)− zn(s)

)⊗dB(u).

zn Í Bであるから

最左辺=d∑

α,β=1E

[(∫t

s

(zα

n (u)− zαn (s)

)dBβ(u)

)2]

=d∑

α,β=1E

[E

[(∫t

s

(zα

n (u)− zαn (s)

)dBβ(u)

)2 ∣∣∣σ(zn(r);0 ≤ r ≤ 1

)]]

=d∑

α,β=1E

[∫t

s|zα

n (u)− zαn (s)|2du

]注30(8.5)を参照.ただし Bn を B(n)と書くことにする.注31念のため,(8.22)を小節 A.3で確かめておく.

166

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= dE[∫t

s|zn(u)− zn(s)|2du

]= d

∫t

sE

[|zn(u)− zn(s)|2

]du

≤ d∫t

s

(E

[|zn(u)− zn(s)|4

])1/2

du

≤ d∫t

s

√d(d +2)

(( 1

2n

)∧ (u − s))du

[...⃝ 3より

]≤ d3/2(d +2)1/2

( 1

2n∧ (t − s)2

).

7 ∀n ∈N, ∀(s, t ) ∈に対して

E[|w(n)(t )−w(n)(s)|2]≤ d(t − s).

...⃝ (8.6)より

w(n)(t )−w(n)(s)

=

2n(t − s)(w

(k +1

2n

)−w( k

2n

)),

k

2n≤ s < t ≤ k +1

2nのとき,

(2n t − l)(w

( l +1

2n

)−w( l

2n

))+w

( l

2n

)−w(k +1

2n

)+ (k +1−2n s)

(w

(k +1

2n

)−w( k

2n

)),

k

2n≤ s ≤ k +1

2n≤ l

2n≤ t ≤ l +1

2nのとき.

よって, k2n ≤ s < t ≤ k+1

2n のときは

E[|w(n)(t )−w(n)(s)|2]= (

2n(t − s))2E

[|w(k +1

2n

)−w( k

2n

)|2]= (

2n(t − s))2 d

2n

= d2n(t − s)(t − s) ≤ d(t − s),

k2n ≤ s ≤ k+1

2n ≤ l2n ≤ t ≤ l+1

2n のときは

E[|w(n)(t )−w(n)(s)|2]= (2n t − l)2E

[|(w

( l +1

2n

)−w( l

2n

)|2]+E

[|w( l

2n

)−w(k +1

2n

)|2]+ (k +1−2n s)2E

[|w(k +1

2n

)−w( k

2n

)|2]167

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= (2n t − l)2 d

2n+ d

2n(l −k −1)+ (k +1−2n s)2 d

2n

= d

2n

((2n t − l)(2n t − l)+ l −k −1+ (k +1−2n s)(k +1−2n s)

)≤ d

2n2n(t − s) = d(t − s).

8 0 < ∀θ< 1に対して

∞∑n=1

E[∥(zn)1∥H ,θ/2

]<∞.

...⃝ 0 < ∀θ < 1を fix. m ∈ [1,∞)を 1−θ > 12m となるように取る.命題 8.2,そして 3

より

E[|zn(t )− zn(s)|4m

]= E

[(|zn(t )− zn(s)|2)2m]

≤C 2m2,2mE

[|zn(t )− zn(s)|4

]m

≤C 2m2,2m

(d(d +2)

)m(( 1

2n

)2m ∧ (t − s)2m)

であるから

E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]= E

[Ï0≤s<t≤1

|(zn)1(s, t )|4m

(t − s)2+2mθdsdt

]=

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[|zn(t )− zn(s)|4m

]dsdt

≤C 2m2,2m

(d(d +2)

)mÏ

0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθ

(( 1

2n

)2m ∧ (t − s)2m)dsdt .

ここで,次の評価式を注意しておく: 0 < ε≤ 1, b > 1, a > b −1に対してÏ0≤s<t≤1

1

(t − s)b

(ε∧ (t − s)a)

dsdt ≤ a

(a −b +1)(b −1)ε

a−b+1a . (8.23)

168

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...⃝ 変数変換 u = s, v = t − sより

左辺=Ï

0<u,v<1,u+v<1

v−b(ε∧ va)dudv

=∫1

0v−b(ε∧va)dv

∫1−v

0du

=∫1

0v−b(ε∧ va)(1− v)dv

≤∫1

0v−b(ε∧ va)dv

=∫ε1/a

0va−b dv +ε

∫1

ε1/av−b dv

=[ va−b+1

a −b +1

]ε1/a

0+ε

[−v1−b

b −1

]1

ε1/a

≤ 1

a −b +1ε

a−b+1a + 1

b −1ε

a−b+1a

=右辺.

この評価式を上式に使うと

E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4m

≤(C 2m

2,2m

(d(d +2)

)m 2m

(2m −1−2mθ)(1+2mθ)

( 1

2n

)2m−1−2mθ)1/4m

=C 1/22,2m

(d(d +2)

)1/4( 2m

(2m −1−2mθ)(1+2mθ)

)1/4m( 1

22m−1−2mθ

4m

)n.

これは∞∑

n=1E

[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4m <∞

を implyする.さて,命題 8.1(i)より

∞∑n=1

E[∥(zn)1∥4m

H ,θ/2

]1/4m ≤ 8 ·81/4m(1+ 1

) ∞∑n=1

E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4m

<∞.

よって

E[∥(zn)1∥H ,θ/2

]≤ E

[∥(zn)1∥4m

H ,θ/2

]1/4m

に注意して∞∑

n=1E

[∥(zn)1∥H ,θ/2

]<∞.

169

Page 178: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

9 0 < ∀θ< 1に対して

∞∑n=1

E[∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥H ,θ

]<∞.

...⃝ 0 < ∀θ< 1を fix. まず,(4.2),そして補題 4.1(i)より

(w(n +1))2(s, t )− (w(n))2(s, t )

=Cw(n+1),w(n+1)(s, t )−Cw(n),w(n)(s, t )

=Cw(n+1)−w(n),w(n+1)−w(n)(s, t )+Cw(n+1)−w(n),w(n)(s, t )−C∗w(n+1)−w(n),w(n)(s, t )

+ w(n)1(s, t )⊗ (w(n +1)1(s, t )−w(n)1(s, t )

)=Czn ,zn (s, t )+Czn ,w(n)(s, t )−C∗

zn ,w(n)(s, t )+w(n)1(s, t )⊗ (zn)1(s, t )

となるから

∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥H ,θ = sup0≤s<t≤1

|(w(n +1))2(s, t )− (w(n))2(s, t )||t − s|θ

≤ ∥Czn ,zn∥H ,θ+2∥Czn ,w(n)∥H ,θ+∥w(n)1∥H ,θ/2∥(zn)1∥H ,θ/2.

今,m ∈ [1,∞)を 1−θ> 12m となるように取る.命題 8.1より

∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥H ,θ

≤ 32 ·721/2m(1+ 1

)(∥Czn ,zn∥B,2m,θ+2(1+ 1

)∥(zn)1∥2B,4m,θ/2

)+64 ·721/2m(

1+ 1

)(∥Czn ,w(n)∥B,2m,θ+2(1+ 1

)∥(zn)1∥B,4m,θ/2∥w(n)1∥B,4m,θ/2

)+

(8 ·81/4m(

1+ 1

))2∥w(n)1∥B,4m,θ/2∥(zn)1∥B,4m,θ/2

= 32 ·721/2m(1+ 1

)∥Czn ,zn∥B,2m,θ

+64 ·721/2m(1+ 1

)∥Czn ,w(n)∥B,2m,θ

+64 ·721/2m(1+ 1

)2∥(zn)1∥2B,4m,θ/2

+ (128 ·721/2m +64 ·81/2m)(

1+ 1

)2∥(zn)1∥B,4m,θ/2∥w(n)1∥B,4m,θ/2.

よって

E[∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥2m

H ,θ

]1/2m

≤ 32 ·721/2m(1+ 1

)E

[∥Czn ,zn∥2m

B,2m,θ

]1/2m

+64 ·721/2m(1+ 1

)E

[∥Czn ,w(n)∥2m

B,2m,θ

]1/2m

170

Page 179: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

+64 ·721/2m(1+ 1

)2E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/2m

+ (128 ·721/2m +64 ·81/2m)(

1+ 1

)2E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4mE

[∥w(n)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4m.

命題 8.2,そして 7より

E[∥w(n)1∥4m

B,4m,θ/2

]= E

[Ï0≤s<t≤1

|w(n)(t )−w(n)(s)|4m

(t − s)2+2mθdsdt

]=

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[|w(n)(t )−w(n)(s)|4m]dsdt

0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[( d∑i=1

(w(n)i (t )−w(n)i (s))2)2m]

dsdt

≤ d2m−1d∑

i=1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[|w(n)i (t )−w(n)i (s)|4m

]dsdt

≤ d2m−1C 4m1,4m

d∑i=1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[|w(n)i (t )−w(n)i (s)|2

]2mdsdt

≤ d4mC 4m1,4m

Ï0≤s<t≤1

(t − s)2m−2−2mθdsdt

= d4mC 4m1,4m

( 1

2m −1−2mθ− 1

2m −2mθ

)であるので,8より

∞∑n=1

E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/2m <∞,

∞∑n=1

E[∥(zn)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4mE

[∥w(n)1∥4m

B,4m,θ/2

]1/4m <∞.

次に,命題 8.2,そして 5より

E[∥Czn ,zn∥2m

B,2m,θ

]= E

[Ï0≤s<t≤1

|Czn ,zn (s, t )|2m

(t − s)2+2mθdsdt

]=

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[( d∑α,β=1

(Cα,β

zn ,zn(s, t )

)2)m]

dsdt

≤ d2(m−1)d∑

α,β=1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[|Cα,β

zn ,zn(s, t )|2m

]dsdt

≤ d2(m−1)C 2m2,2m

d∑α,β=1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[(Cα,β

zn ,zn(s, t )

)2]m

dsdt

171

Page 180: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

≤ d2mC 2m2,2m

(9

2d(d +2)

)mÏ

0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθ

(( 1

2n

)2m ∧ (t − s)2m)dsdt .

よって,8より∞∑

n=1E

[∥Czn ,zn∥2m

B,2m,θ

]1/2m <∞.

上と同様にすると

E[∥Czn ,w(n)∥2m

B,2m,θ

]≤ d2(m−1)C 2m

2,2m

d∑α,β=1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθE

[(Cα,β

zn ,w(n)(s, t ))2

]mdsdt .

ここで,6より

上式

≤ d2mC 2m2,2m

(d3/2(d +1)1/2)m

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+2mθ

(( 1

2n

)m ∧ (t − s)2m)dsdt

≤ d2mC 2m2,2m

(d3/2(d +1)1/2)m 2m

(2m −1−2mθ)(1+2mθ)

( 1

22m−1−2mθ

2

)n

[...⃝ (8.23)より

].

よって∞∑

n=1E

[∥Czn ,w(n)∥2m

B,2m,θ

]1/2m <∞.

以上のことから∞∑

n=1E

[∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥H ,θ

]≤

∞∑n=1

E[∥(w(n +1))2 − (w(n))2∥2m

H ,θ

]1/2m

<∞.

8節を終える前に,次のことを注意しておく:

Claim 8.1. X d を定理 8.1におけるW d の部分集合,即ち,

X d =

w ∈ W d ; limn,m→∞∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 = 0, lim

n,m→∞∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ = 0

とする.このとき次が成り立つ:

(i) X dは定数倍に関して不変である, i.e., cX d ⊂ X d (∀c = 0).従って,測度µε(·) =µ(ε−1· )

(分散が異なる測度)についてもほとんどすべての w で w(n)が収束する.(ii) X d は Hd の元を加える操作に関して不変である, i.e., X d +h ⊂ X d (∀h ∈ Hd ).

172

Page 181: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

証明 (i)は

(cw)(n)1 = cw(n)1, (cw)(n)2 = c2w(n)2

より明らか.以下,(ii)を示す.まず,次のことから始める.

1 ∀h ∈ Hd に対して

h(n) → h in Hd as n →∞.

...⃝ [0,1)の σ-集合体列 Fn∞n=1を

Fn :=σ([ k

2n,

k +1

2n

); k = 0,1, . . . ,2n −1

), n ≥ 1

とおく.明らかにFn ⊂Fn+1 (∀n ≥ 1),そして

∞∨n=1

Fn =B([0,1)

)である.

([0,1),B

([0,1)

),P(dx) = dx

)を Lebesgue確率空間とするならば,マルチン

ゲール収束定理注32より,∀X ∈ Lr ([0,1),P) (1 ≤ r < 1)に対して

E[X |Fn

]→ X a.s. and in Lr as n →∞,

そして

E[X |Fn

]= 2n−1∑k=0

2n1[k

2n , k+12n

)∫ k+12n

k2n

X dP

である.今,h ∈ Hd の 2進折れ線近似 h(n)は

h(n)(u) = (1− 2n u

)h(⌊2n u⌋

2n

)+ 2n uh(⌊2n u⌋+1

2n

),

よって

h(n)(u) =2n−1∑k=0

2n1[k

2n , k+12n

)(u)(h(k +1

2n

)−h( k

2n

))=

2n−1∑k=0

2n1[k

2n , k+12n

)(u)∫ k+1

2n

k2n

h(u)du

注32例えば,Durrett [7]の 4章の Theorem 5.7, あるいは Stroock [24]の Corollary 5.2.7を参照.[7]には,exampleや exerciseがたくさん載っていて,その1つ1つを checkするのは簡単ではないようです.でも,読み甲斐のある本だと筆者は思っています.

173

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= E[h |Fn

]となるので,上の収束定理より

h(n) → h a.s. and in L2.

これは,明らかに

h(n) → h in Hd

を云っている.以下 w ∈ X d , h ∈ Hd とする.

2 (w +h)(n) = w(n)+h(n)であるので

∥(w +h)(n)1 − (w +h)(m)1∥H ,θ/2 = ∥w(n)1 −w(m)1 +h(n)1 −h(m)1∥H ,θ/2

≤ ∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 +∥h(n)1 −h(m)1∥H ,θ/2

≤ ∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2 +|h(n)−h(m)|H[...⃝ (4.3)より

].

ここで,w ∈ X d より第1項→ 0, 1より第2項→ 0であるから

limn,m→∞∥(w +h)(n)1 − (w +h)(m)1∥H ,θ/2 = 0.

3 補題 4.1(i)より

(w +h)(n)2(s, t )− (w +h)(m)2(s, t )

=Cw(n)+h(n),w(n)+h(n)(s, t )−Cw(m)+h(m),w(m)+h(m)(s, t )

=Cw(n)+h(n),w(n)+h(n)(s, t )−Ch(n),h(n)(s, t )

− (Cw(m)+h(m),w(m)+h(m)(s, t )−Ch(m),h(m)(s, t )

)+Ch(n),h(n)(s, t )−Ch(m),h(m)(s, t )

=Cw(n),w(n)(s, t )+Cw(n),h(n)(s, t )−C∗w(n),h(n)(s, t )+ h(n)1(s, t )⊗w(n)1(s, t )

−Cw(m),w(m)(s, t )−Cw(m),h(m)(s, t )+C∗w(m),h(m)(s, t )−h(m)1(s, t )⊗w(m)1(s, t )

+Ch(n),h(n)(s, t )−Ch(m),h(m)(s, t )

= w(n)2(s, t )−w(m)2(s, t )

+Cw(n)−w(m),h(n)(s, t )+Cw(m),h(n)−h(m)(s, t )

−C∗w(n)−w(m),h(n)(s, t )−C∗

w(m),h(n)−h(m)(s, t )

174

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+ (h(n)1(s, t )−h(m)1(s, t )

)⊗w(n)1(s, t )

+h(m)1(s, t )⊗ (w(n)1(s, t )−w(m)1(s, t )

)+Ch(n)−h(m),h(n)(s, t )+Ch(m),h(n)−h(m)(s, t )

となるので

∥(w +h)(n)2 − (w +h)(m)2∥H ,θ ≤ ∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ

+2∥Cw(n)−w(m),h(n)∥H ,θ+2∥Cw(m),h(n)−h(m)∥H ,θ

+∥h(n)1 −h(m)1∥H ,θ/2∥w(n)1∥H ,θ/2

+∥h(m)1∥H ,θ/2∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2

+∥Ch(n)−h(m),h(n)∥H ,θ+∥Ch(m),h(n)−h(m)∥H ,θ.

ここで (4.3)と (4.4)より

上式≤ ∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ

+2∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2|h(n)|H +2∥w(m)1∥H ,θ/2|h(n)−h(m)|H+|h(n)−h(m)|H∥w(n)1∥H ,θ/2

+|h(m)|H∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2

+∥h(n)1 −h(m)1∥H ,θ/2|h(n)|H +∥h(m)1∥H ,θ/2|h(n)−h(m)|H≤ ∥w(n)2 −w(m)2∥H ,θ

+∥w(n)1 −w(m)1∥H ,θ/2

(2|h(n)|H +|h(m)|H

)+|h(n)−h(m)|H

(2∥w(m)1∥H ,θ/2 +∥w(n)1∥H ,θ/2 +|h(n)|H +|h(m)|H

).

よって

limn,m→∞∥(w +h)(n)2 − (w +h)(m)2∥H ,θ = 0.

故に 2と 3より w +h ∈ X d .

175

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9. 確率微分方程式 vs.常微分方程式

9.1. 確率微分方程式の解は連続関数であること(W r ,µ)を r 次元 Wiener空間,V0,V1, . . . ,Vr ∈ Cb(Rd → Rd ), a ∈ Rd とする注33.定

義 8.1より B(·, w) ∈ W 1+r , そしてこれの 2進折れ線近似を Bn(·, w) ∈ H1+r とするとき,(Y (t , w)

)0≤t≤1,

(Yn(t , w)

)0≤t≤1 をそれぞれ次の確率微分方程式 (略して SDE), 常微分方

程式 (略して ODE)の一意解とする:

Y (t ) = a +r∑

α=0

∫t

0Vα

(Y (s)

)dBα(s), (9.1)

Yn(t ) = a +r∑

α=0

∫t

0Vα

(Yn(s)

)dBα

n (s). (9.2)

このとき次の SDEの近似定理が知られている (例えば [11]の 6章の Theorem 7.2注34を参照):

命題 9.1. limn→∞E

[max0≤t≤1

|Y (t )−Yn(t )|2]= 0.

f (x) := (V0(x),V1(x), . . . ,Vr (x)

) ∈C∞b

(Rd →Rd ⊗R1+r )

とおくと,定理 7.2より,各 x ∈Ωp(R1+r )に対して

∃1z ∈Ωp(R1+r+d ) s.t.

πR1+r

(z)= x,

z =∫

f(z1(0, u)+ (0

a

))dz(u).

定義 7.7より z = Z (a, x), Y (a, x) :=πR1+r

(Z (a, x)

)である.とくに x ∈ SΩp(R1+r )のとき

は,Claim 7.4より

Y (a, x)1(s, t ) = yt − ys ,

ただし (yt )0≤t≤1 は ODE

yt = a +r∑

α=0

∫t

0Vα(ys)dxα

s

注33今節では,Wiener空間の次元は r とする.注34この Theoremでは,B を一様近似するものとして 2進折れ線近似 (Bn)∞n=1 を含むより一般的なものを考え,それに対するODE (9.2)の解が SDE (ただし適当に drift項を補正した SDE) (9.1)の解に命題 9.1の意味で収束することを示している.証明は分量があって読み甲斐というか計算のし甲斐がある.是非,一度は実際に読んでみて下さい.(ちなみに,筆者は昔,まだ [11]が本となる前のプレプリントのとき,これを読みました.プレプリントだからページ数がやたら多くて凄かったのを覚えています.)

176

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の一意解である.ここで smooth rough path xとして Bn を採ると

Y(a,Bn(w)

)1(s, t ) = Yn(t , w)−Yn(s, w).

w ∈ X d (cf.定理 8.1)に対して

Bn(w) → B(w) in(GΩp(R1+r ), dp

)であるので,連続性定理,即ち,定理 7.4より

Y(a,Bn(w)

)→ Y(a,B(w)

)in

(GΩp(R1+r ), dp

).

従って

Y(a,Bn(w)

)1(0, ·)+a ⇒ Y

(a,B(w)

)1(0, ·)+a.

定理 8.1よりこの収束は概収束,また命題 9.1より,適当な部分列に沿って nを無限大にすると

左辺= Yn(·, w) ⇒ Y (·, w) a.a. w

であるから

Y (·, w) = Y(a,B(w)

)1(0, ·)+a a.a. w

が分かる.以上のことを定理としてまとめておく:

定理 9.1. SDE (9.1)の一意解は canonical rough path Bの連続汎関数である!

9.2. Canonical rough pathを近似する smooth rough pathの列Canonical rough path B を近似する smooth rough pathの列は

(Bn

)∞n=1 の他にもた

くさんあることを渡辺 [28]に従って見よう注35.(hn)∞n=1をH r の完全正規直交基底 (略して CONB)とし,各 n ∈Nに対して,⟨hn , w⟩H

を hn に対応する 1次のWiener chaos,即ち,次のWiener積分とする注36:

⟨hn , w⟩H =r∑

α=1

∫1

0hα

n (u)dwα(u).

簡単のため,Qn(w) :=n∑

k=1⟨hk , w⟩H hk ∈ H r とかくことにする.このQn(w)から定まる

smooth rough pathを

Qn(w) = (1,Qn(w)1,Qn(w)2

)とする.注35本来は,このことは 8節で扱う話である.が,少し遅くしてこの小節でする.前の小節 9.1とは独立している.注36⟨hn , w⟩H は,写像H r ∋ h 7→ ⟨hn , h⟩H ∈Rの確率拡張である.

177

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Claim 9.1. 各 (s, t ) ∈に対して,n →∞のとき

Qn(w)1(s, t ) → w1(s, t ) in L2, (9.3)

Qn(w)2(s, t )−n∑

k=1Chk ,hk (s, t ) → (wI )2(s, t ) in L2. (9.4)

ここで

w1(s, t ) = w(t )−w(s), (wI )2(s, t ) =∫t

s(w(u)−w(s))⊗dw(u).

証明 まず,次のことを注意する: eα = t (0, . . . ,α1, . . . ,0)とするとき

hαk (t )−hα

k (s) =∫1

01(s,t ](u)hα

k (u)du

=⟨

(·∧ t −·∧ s)eα, hk

⟩H

(9.5)

であるから,Parsevalの等式より

n∑k=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 =n∑

k=1

⟨(·∧ t −·∧ s)eα, hk

⟩2

H

→∣∣∣(·∧ t −·∧ s)eα

∣∣∣2

H= t − s. (9.6)

1 (9.3)を示す.

Qn(w)1(s, t ) =n∑

k=1⟨hk , w⟩H (hk )1(s, t )

=n∑

k=1

r∑α=1

∫1

0hα

k (u)dwα(u)(hk (t )−hk (s)

),

w1(s, t ) = w(t )−w(s) =∫1

01(s,t ](u)dw(u)

であるから

|Qn(w)1(s, t )−w1(s, t )|2

=r∑

β=1

( n∑k=1

r∑α=1

∫1

0hα

k (u)dwα(u)(hβ

k (t )−hβ

k (s))−∫1

01(s,t ](u)dwβ(u)

)2

=r∑

β=1

( r∑α=1

∫1

0

n∑k=1

hαk (u)

(hβ

k (t )−hβ

k (s))dwα(u)

)2

−2r∑

α=1

∫1

0

n∑k=1

hαk (u)

(hβ

k (t )−hβ

k (s))dwα(u)

∫1

01(s,t ](u)dwβ(u)

178

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+(∫1

01(s,t ](u)dwβ(u)

)2

.

期待値を取ると

E[|Qn(w)1(s, t )−w1(s, t )|2

]=

r∑β=1

E

[( r∑α=1

∫1

0

n∑k=1

hαk (u)

(hβ

k (t )−hβ

k (s))dwα(u)

)2]−2

r∑α=1

E[∫1

0

n∑k=1

hαk (u)

(hβ

k (t )−hβ

k (s))dwα(u)

∫1

01(s,t ](u)dwβ(u)

]+E

[(∫1

01(s,t ](u)dwβ(u)

)2]=

r∑β=1

r∑α=1

∫1

0

( n∑k=1

hαk (u)

(hβ

k (t )−hβ

k (s)))2

du

−2∫t

s

n∑k=1

k (u)(hβ

k (t )−hβ

k (s))du +

∫1

01(s,t ](u)du

[

...⃝ E[∫1

0f α(u)dwα(u)

∫1

0f β(u)dwβ(u)

]= δαβ

∫1

0f α(u) f β(u)du

]=

r∑β=1

r∑α=1

n∑k,l=1

∫1

0hα

k (u)hαl (u)du

(hβ

k (t )−hβ

k (s))(

l (t )−hβ

l (s))

−2n∑

k=1

(hβ

k (t )−hβ

k (s))2 + t − s

=

r∑β=1

n∑k,l=1

⟨hk , hl⟩H(hβ

k (t )−hβ

k (s))(

l (t )−hβ

l (s))

−2n∑

k=1

(hβ

k (t )−hβ

k (s))2 + t − s

=

r∑β=1

n∑k=1

(hβ

k (t )−hβ

k (s))2 −2

n∑k=1

(hβ

k (t )−hβ

k (s))2 + t − s

[

...⃝ ⟨hk , hl⟩H = δkl

]=

r∑β=1

(t − s −

n∑k=1

(hβ

k (t )−hβ

k (s))2

).

よって (9.6)より (9.3)が分かる.

2 次に (9.4)を示す.まず,定義 4.3より

Qn(w)2(s, t )−n∑

k=1Chk ,hk (s, t )

179

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=C∑nk=1⟨hk ,w⟩H hk ,

∑nk=1⟨hk ,w⟩H hk

(s, t )−n∑

k=1Chk ,hk (s, t )

=n∑

k,l=1⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HChk ,hl (s, t )−

n∑k,l=1

δklChk ,hl (s, t )

=n∑

k,l=1

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl

)Chk ,hl (s, t )

であるから

E

[∣∣∣Qn(w)2(s, t )−n∑

k=1Chk ,hk (s, t )− (wI )2(s, t )

∣∣∣2]

= E

[ r∑α,β=1

( n∑k,l=1

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Cαβ

hk ,hl(s, t )−

∫t

s

(wα(u)−wβ(u)

)dwβ(u)

)2]

=r∑

α,β=1

E

[( n∑k,l=1

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2]−2

n∑k,l=1

Cαβ

hk ,hl(s, t )E

[(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)∫t

s

(wα(u)−wβ(u)

)dwβ(u)

]+E

[(∫t

s

(wα(u)−wβ(u)

)dwβ(u)

)2]=:

r∑α,β=1

(Eαβ

1 +Eαβ2 +Eαβ

3

). (9.7)

Eαβ1 を計算する.まず

n∑k,l=1

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Cαβ

hk ,hl(s, t )

=n∑

k=1

(⟨hk , w⟩2H −1

)Cαβ

hk ,hk(s, t )+ ∑

1≤k,l≤n;k =l

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HCαβ

hk ,hl(s, t )

=n∑

k=1

(⟨hk , w⟩2H −1

)Cαβ

hk ,hk(s, t )+ ∑

1≤k<l≤n⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H

(Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

)と書き直す.

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl ; 1 ≤ k ≤ l <∞は L2(W r ,µ)の直交系で

E[(⟨hk , w⟩2

H −1)2

]= 2,

E[(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H

)2]= 1 (k = l)

に注意すると

Eαβ1 = E

[( n∑k=1

(⟨hk , w⟩2H −1

)Cαβ

hk ,hk(s, t )

+ ∑1≤k<l≤n

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H(Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

))2]

180

Page 189: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

=n∑

k=1E

[(⟨hk , w⟩2H −1

)2](

Cαβ

hk ,hk(s, t )

)2

+ ∑1≤k<l≤n

E[(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H

)2](

Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

)2

= 2n∑

k=1

(Cαβ

hk ,hk(s, t )

)2

+ ∑1≤k<l≤n

(Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

)2

= 2n∑

k=1

(Cαβ

hk ,hk(s, t )

)2

+ ∑1≤k<l≤n

((Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 +2Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t )+ (

Cαβ

hl ,hk(s, t )

)2)

= 2n∑

k=1

(Cαβ

hk ,hk(s, t )

)2 + ∑1≤k,l≤n;

k =l

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 + ∑1≤k,l≤n;

k =l

Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t )

=n∑

k,l=1

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 +n∑

k,l=1Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t ).

次に Eαβ2 , Eαβ

3 を計算する.まず∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u) =

∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u),

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H =r∑

i=1

r∑j=1

∫1

0hi

k (u)dw i (u)∫1

0h j

l (u)dw j (u)

=r∑

i , j=1

( ∫1

0

(∫u

0hi

k (v)dw i (v))h j

l (u)dw j (u)

+∫1

0

(∫u

0h j

l (v)dw j (v))hi

k (u)dw i (u)

+δi j

∫1

0hi

k (u)h jl (u)du

)[

...⃝伊藤の公式より]

であるから

E[∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

]= E

[∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

]= 0,

181

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E[(∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

)2] = E[(∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

)2]= E

[∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)2du]

=∫t

sE

[(wα(u)−wα(s)

)2]

du

=∫t

s(u − s)du = (t − s)2

2,

E[⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H

∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

]=

r∑i , j=1

E

[ ∫1

0

(∫u

0hi

k (v)dw i (v))h j

l (u)dw j (u)∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

+∫1

0

(∫u

0h j

l (v)dw j (v))hi

k (u)dw i (u)∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

+δi j

∫1

0hi

k (u)h jl (u)du

∫1

01(s,t ](u)

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

]=

r∑i , j=1

δ jβE

[∫1

01(s,t ](u)

(∫u

0hi

k (v)dw i (v))h j

l (u)(wα(u)−wα(s)

)du

]+δiβE

[∫1

01(s,t ](u)

(∫u

0h j

l (v)dw j (v))hi

k (u)(wα(u)−wα(s)

)du

]=

r∑i , j=1

δ jβ

∫t

sh j

l (u)E[∫u

0hi

k (v)dw i (v)∫u

01(s,u](v)dwα(v)

]du

+δiβ

∫t

shi

k (u)E[∫u

0h j

l (v)dw j (v)∫u

01(s,u](v)dwα(v)

]du

=

r∑i , j=1

δ jβ

∫t

sh j

l (u)δiα

(∫u

shi

k (v)dv)du +δiβ

∫t

shi

k (u)δ jα

(∫u

sh j

l (v)dv)du

=∫t

shβ

l (u)(∫u

shα

k (v)dv)du +

∫t

shβ

k (u)(∫u

shα

l (v)dv)du

=∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)hβ

l (u)du +∫t

s

(hα

l (u)−hαl (s)

)hβ

k (u)du

=Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t ).

よって

Eαβ2 =−2

n∑k,l=1

Cαβ

hk ,hl(s, t )

(E

[⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H

∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

]−δkl E

[∫t

s

(wα(u)−wα(s)

)dwβ(u)

])=−2

n∑k,l=1

Cαβ

hk ,hl(s, t )

(Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

),

182

Page 191: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

Eαβ3 = (t − s)2

2.

今,上で求めた Eαβ1 , Eαβ

2 , Eαβ3 を (9.7)に代入すると

E[|Qn(w)2(s, t )−

n∑k=1

Chk ,hk (s, t )− (wI )2(s, t )|2]

=r∑

α,β=1

n∑k,l=1

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 +n∑

k,l=1Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t )

−2n∑

k,l=1Cαβ

hk ,hl(s, t )

(Cαβ

hk ,hl(s, t )+Cαβ

hl ,hk(s, t )

)+ (t − s)2

2

=r∑

α,β=1

(t − s)2

2−

n∑k,l=1

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 −n∑

k,l=1Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t )

.

さて,Parsevalの等式より∞∑

k,l=1

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 =∞∑

k=1

∞∑l=1

(∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)hβ

l (u)du)2

=∞∑

k=1

∞∑l=1

⟨(∫·

01(s,t ](u)

(hα

k (u)−hαk (s)

)du

)eβ, hl

⟩2

H

=∞∑

k=1

∣∣∣(∫·

01(s,t ](u)

(hα

k (u)−hαk (s)

)du

)eβ

∣∣∣2

H

=∞∑

k=1

∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)2du

=∫t

s

∞∑k=1

(hα

k (u)−hαk (s)

)2du

=∫t

s(u − s)du

[...⃝ (9.6)より

]= (t − s)2

2. (9.8)

Schwarzの不等式より,これは

∞∑k,l=1

∣∣∣Cαβ

hk ,hl(s, t )

∣∣∣∣∣∣Cαβ

hl ,hk(s, t )

∣∣∣≤√√√√ ∞∑

k,l=1

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2

√√√√ ∞∑k,l=1

(Cαβ

hl ,hk(s, t )

)2

= (t − s)2

2<∞ (9.9)

を implyするから,

limn→∞

n∑k,l=1

Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t ) =

∞∑k=1

∞∑l=1

Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t ).

183

Page 192: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

ここで部分積分より

Cαβ

hl ,hk(s, t ) =

∫t

s

(hα

l (u)−hαl (s)

)hβ

k (u)du

= (hα

l (t )−hαl (s)

)hβ

k (t )−∫t

shβ

k (u)hαl (u)du

=∫t

s

(hβ

k (t )−hβ

k (u))hα

l (u)du

に注意すると

右辺

=∞∑

k=1

∞∑l=1

∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)hβ

l (u)du∫t

s

(hβ

k (t )−hβ

k (u))hα

l (u)du

=∞∑

k=1

∞∑l=1

⟨(∫·

01(s,t ](v)

(hα

k (v)−hαk (s)

)dv

)eβ, hl

⟩H

×⟨(∫·

01(s,t ](v)

(hβ

k (t )−hβ

k (v))dv

)eα, hl

⟩H

=∞∑

k=1

⟨(∫·

01(s,t ](v)

(hα

k (v)−hαk (s)

)dv

)eβ,

(∫·

01(s,t ](v)

(hβ

k (t )−hβ

k (v))dv

)eα

⟩H

= δαβ

∞∑k=1

∫t

s

(hα

k (v)−hαk (s)

)(hβ

k (t )−hβ

k (v))dv

= δαβ

∞∑k=1

∫t

sdv

∫v

shα

k (u)du∫t

vhβ

k (u)du

= δαβ

∞∑k=1

∫t

sdv

⟨(·∧ v −·∧ s)eα, hk

⟩H

⟨(·∧ t −·∧ v)eβ, hk

⟩H

= δαβ

∫t

sdv

∞∑k=1

⟨(·∧ v −·∧ s)eα, hk

⟩H

⟨(·∧ t −·∧ v)eβ, hk

⟩H

= δαβ

∫t

sdv

⟨(·∧ v −·∧ s)eα,

(·∧ t −·∧ v)eβ

⟩H

= δαβ

∫t

sdv

∫1

01(s,v](u)1(v,t ](u)du

= 0.

よって (9.4)が分かる.

α, β= 1, . . . , r に対して

Cαβ

hk ,hk(s, t )+Cβα

hk ,hk(s, t ) = (

hαk (t )−hα

k (s))(

k (t )−hβ

k (s))

である (cf. (4.6)).α=βのときは

Cααhk ,hk

(s, t ) = 1

2

(hα

k (t )−hαk (s)

)2

184

Page 193: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

であるから,(9.6)よりn∑

k=1Cαα

hk ,hk(s, t ) → t − s

2as n →∞, α= 1, . . . , r . (9.10)

α =βに対しては,(hk )∞k=1が単にCONBであるということだけから,級数∞∑

k=1Cαβ

hk ,hk(s, t )

の収束性は一般に出てこない (cf.例 9.2).

系 9.1. もしn∑

k=1Cαβ

hk ,hk(s, t ) → 0 as n →∞ ((s, t ) ∈, α =β) (9.11)

ならば,各 (s, t ) ∈に対して

Qn(w)2(s, t ) → (wS)2(s, t ) in L2. (9.12)

ここで

(wS)2(s, t ) =∫t

s

(w(u)−w(s)

)⊗dw(u).

実は (9.3)の収束はもっとよい:

Claim 9.2. 0 < θ< 1, M > 21−θ ∨2に対して

limn,m→∞E

[∥Qn(w)1 −Qm(w)1∥M

H ,θ/2

]= 0.

証明 n < m とする.命題 8.1(i)より∥∥∥Qn(w)1 −Qm(w)1

∥∥∥M

H ,θ/2

=∥∥∥ ∑

n<k≤m⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥M

H ,θ/2

≤(8 ·81/M(

1+ 4

))M∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥M

B,M ,θ/2

= 8M+1(1+ 4

)MÏ

0≤s<t≤1

∣∣∣∑n<k≤m⟨hk , w⟩H(hk (t )−hk (s)

)∣∣∣M

(t − s)2+M θ2

dsdt

であるから

E

[∥∥∥Qn(w)1 −Qm(w)1

∥∥∥M

H ,θ/2

]≤ 8M+1(1+ 4

)MÏ

0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+M θ2

E

[∣∣∣ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H(hk (t )−hk (s)

)∣∣∣M]

.

185

Page 194: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

ここで命題 8.2より

E

[∣∣∣ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H(hk (t )−hk (s)

)∣∣∣M]

= E

[( r∑α=1

( ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H(hα

k (t )−hαk (s)

))2)M/2]

≤ rM2 −1

r∑α=1

E

[∣∣∣ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H(hα

k (t )−hαk (s)

)∣∣∣M]

≤ rM2 −1C1,M

r∑α=1

E

[∣∣∣ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H(hα

k (t )−hαk (s)

)∣∣∣2]M/2

= rM2 −1C1,M

r∑α=1

( ∑n<k≤m

(hα

k (t )−hαk (s)

)2)M/2

である.(9.6)より

最右辺

≤ r M/2C1,M (t − s)M/2, ∀n < m,

→ 0 as n, m ∞,

また,M の取り方よりÏ0≤s<t≤1

(t − s)M/2

(t − s)2+M θ2

dsdt =∫1

0dt

∫t

0(t − s)

M2 (1−θ)−2ds

=∫1

0dt

∫1

0t

M2 (1−θ)−1(1−σ)

M2 (1−θ)−2dσ[

...⃝変数変換 s = tσ]

= 1M2 (1−θ)

1M2 (1−θ)−1

<∞

であるから,Lebesgueの収束定理より Claimの主張が直ぐに分かる.

次に,(9.4)の収束を Claim 9.2のようによくする為には,次のような技術的な条件を課さなければならない:

Claim 9.3. 0 < θ< 1, M > 11−θ ∨2に対して

limn,m→∞

∥∥∥ ∑n<k≤m

Chk ,hk

∥∥∥B,M ,θ

= 0 (9.13)

を仮定するならば

limn,m→∞E

[∥∥∥Qn(w)2 −Qm(w)2

∥∥∥M

H ,θ

]= 0.

186

Page 195: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

証明 n < m とする.補題 4.1(i)より

Qm(w)2 −Qn(w)2

=C∑mk=1⟨hk ,w⟩H hk ,

∑mk=1⟨hk ,w⟩H hk

−C∑nk=1⟨hk ,w⟩H hk ,

∑nk=1⟨hk ,w⟩H hk

=C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk

+C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk −C∗∑

n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,∑

1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk

+( ∑

1≤k≤n⟨hk , w⟩H (hk )1

)⊗

( ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

)であるから,命題 8.1(ii)より∥∥∥Qm(w)2 −Qn(w)2

∥∥∥H ,θ

≤∥∥∥C∑

n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,∑

n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥H ,θ

+2∥∥∥C∑

n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,∑

1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥H ,θ

+∥∥∥ ∑

1≤k≤n⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥H ,θ/2

∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥H ,θ/2

≤ 32 ·721/M(1+ 2

)(∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥B,M ,θ

+2(1+ 2

)∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥2

B,2M ,θ/2

)+64 ·721/M

(1+ 2

)(∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥B,M ,θ

+ 2(1+ 2

)∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥B,2M ,θ/2

×∥∥∥ ∑

1≤k≤n⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥B,2M ,θ/2

)+

(8 ·8

12M

(1+ 2

))2∥∥∥ ∑1≤k≤n

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥B,2M ,θ/2

∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥B,2M ,θ/2

.

よって

limn,m→∞E

[∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥M

B,M ,θ

]= 0, (9.14)

limn,m→∞E

[∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥M

B,M ,θ

]= 0, (9.15)

limn,m→∞E

[∥∥∥ ∑n<k≤m

⟨hk , w⟩H (hk )1

∥∥∥2M

B,2M ,θ/2

]= 0 (9.16)

を checkすればよい.Claim 9.2より,(9.16)の収束は,すでに分かっていることである.

187

Page 196: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

(9.15)の収束については,命題 8.2より

E

[∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑1≤k≤n⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥M

B,M ,θ

]= E

[Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+Mθ

∣∣∣ ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HChk ,hl (s, t )∣∣∣M

dsdt

]=

Ï0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+MθE

[( r∑α,β=1

( ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HCαβ

hk ,hl(s, t )

)2)M/2]

≤Ï

0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+Mθ(r 2)

M2 −1

r∑α,β=1

E

[∣∣∣ ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HCαβ

hk ,hl(s, t )

∣∣∣M]

≤ r M−2C2,M

r∑α,β=1

Ï0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+MθE

[( ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HCαβ

hk ,hl(s, t )

)2]M/2

= r M−2C2,M

r∑α,β=1

Ï0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+Mθ

( ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2)M/2

[...⃝ ⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H ; 1 ≤ l ≤ n < k ≤ m

は正規直交系だから

].

ここで ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2

= ∑n<k≤m

∑1≤l≤n

(∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)hβ

l (u)du)2

≤ ∑n<k≤m

∞∑l=1

⟨(∫·

01(s,t ](u)

(hα

k (u)−hαk (s)

)du

)eβ, hl

⟩2

H

= ∑n<k≤m

∫t

s

(hα

k (u)−hαk (s)

)2du

=∫t

s

∑n<k≤m

(hα

k (u)−hαk (s)

)2du ≤∫t

s(u − s)du = (t − s)2

2, ∀n < m,

→ 0 as n, m ∞,Ï0≤s<t≤1

(t − s)M

(t − s)2+Mθdsdt = 1

M(1−θ)

1

M(1−θ)−1<∞

に注意すれば (9.15)は直ぐに分かる.(9.14)の収束については,上と同様にすると

E

[∥∥∥C∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk ,

∑n<k≤m⟨hk ,w⟩H hk

∥∥∥M

B,M ,θ

]

188

Page 197: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

= E

[Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+Mθ

∣∣∣ ∑n<k,l≤m

⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩HChk ,hl (s, t )∣∣∣M

dsdt

]= E

[Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+Mθ

∣∣∣ ∑n<k,l≤m

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Chk ,hl (s, t )

+ ∑n<k≤m

Chk ,hk (s, t )∣∣∣M

dsdt

]≤ E

[(Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+Mθ

∣∣∣ ∑n<k,l≤m

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Chk ,hl (s, t )

∣∣∣Mdsdt

)1/M

+(Ï

0≤s<t≤1

1

(t − s)2+Mθ

∣∣∣ ∑n<k≤m

Chk ,hk (s, t )∣∣∣M

dsdt)1/M

M]≤ 2M−1

Ï0≤s<t≤1

1

(t − s)2+MθE

[∣∣∣ ∑n<k,l≤m

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Chk ,hl (s, t )

∣∣∣M]

dsdt

+2M−1∥∥∥ ∑

n<k≤mChk ,hk

∥∥∥M

B,M ,θ

≤ 2M−1r M−2C2,M

r∑α,β=1

Ï0≤s<t≤1

dsdt

(t − s)2+Mθ

×E

[( ∑n<k,l≤m

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2]M/2

+2M−1∥∥∥ ∑

n<k≤mChk ,hk

∥∥∥M

B,M ,θ.

ここで Claim 9.1の証明の 2での Eαβ1 の計算,そして (9.8)と (9.9)より

E[( ∑

n<k,l≤m

(⟨hk , w⟩H⟨hl , w⟩H −δkl)Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2]= ∑

n<k,l≤m

(Cαβ

hk ,hl(s, t )

)2 + ∑n<k,l≤m

Cαβ

hk ,hl(s, t )Cαβ

hl ,hk(s, t ) ≤ (t − s)2, ∀n < m,

→ 0 as n, m ∞であるから (9.14)は直ぐに分かる.

(9.13)を implyする十分条件を1つ挙げておく:

補題 9.1. 0 < θ′ < 1に対して

limn,m→∞

∥∥∥ ∑n<k≤m

Chk ,hk

∥∥∥H ,θ′

= 0

ならば,0 < ∀θ< θ′, ∀M > 1θ′−θ ∨1に対して

limn,m→∞

∥∥∥ ∑n<k≤m

Chk ,hk

∥∥∥B,M ,θ

= 0.

189

Page 198: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

証明 ∀(s, t ) ∈に対して∣∣∣ ∑n<k≤m

Chk ,hk (s, t )∣∣∣≤ ∥∥∥ ∑

n<k≤mChk ,hk

∥∥∥H ,θ′

|t − s|θ′

であるから

∥∥∥ ∑n<k≤m

Chk ,hk

∥∥∥M

B,M ,θ=

Ï0≤s<t≤1

∣∣∣∑n<k≤m Chk ,hk (s, t )∣∣∣M

(t − s)2+Mθdsdt

≤Ï

0≤s<t≤1

∥∥∥ ∑n<k≤m

Chk ,hk

∥∥∥M

H ,θ′|t − s|Mθ′−2−Mθdsdt

=∥∥∥ ∑

n<k≤mChk ,hk

∥∥∥M

H ,θ′1

M(θ′−θ)

1

M(θ′−θ)−1

→ 0 as n, m ∞.

(9.6)より,(s, t ), (s′, t ′) ∈に対して∣∣∣ n∑

k=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 −n∑

k=1

(hα

k (t ′)−hαk (s′)

)2∣∣∣

=∣∣∣ n∑

k=1

(⟨(·∧ t −·∧ s)eα, hk

⟩2

H−

⟨(·∧ t ′−·∧ s′)eα, hk

⟩2

H

)∣∣∣=

∣∣∣ n∑k=1

⟨(·∧ t −·∧ s +·∧ t ′−·∧ s′)eα, hk

⟩H

×⟨(·∧ t −·∧ s ·−∧ t ′+·∧ s′

)eα, hk

⟩H

∣∣∣≤

√n∑

k=1

⟨(·∧ t −·∧ s +·∧ t ′−·∧ s′)eα, hk

⟩2

H

×√

n∑k=1

⟨(·∧ t −·∧ s ·−∧ t ′+·∧ s′)eα, hk

⟩2

H

[...⃝ Schwarzの不等式

]≤

∣∣∣(·∧ t −·∧ s +·∧ t ′−·∧ s′)eα

∣∣∣H

∣∣∣(·∧ t −·∧ s ·−∧ t ′+·∧ s′)eα

∣∣∣H[

...⃝ Besselの不等式]

=√∫1

0|1(s,t ](u)+1(s′,t ′](u)|2du

√∫1

0|1(s,t ](u)−1(s′,t ′](u)|2du

≤(√∫1

01(s,t ](u)du +

√∫1

01(s′,t ′](u)du

√∫1

0

(1(s,t ](u)+1(s′,t ′](u)−21(s,t ](u)1(s′,t ′](u)

)du

[...⃝ Minkowskiの不等式

]

190

Page 199: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

≤ 2√

t − s + t ′− s′−2(t ∧ t ′− s ∨ s′)∨0

≤ 2√

|t − t ′|+ |s − s′|

...⃝ a, b ∈Rに対して

|a −b| = a ∨b −a ∧b,

a +b = a ∨b +a ∧b

であるから

|t − t ′|+ |s − s′|− (t − s + t ′− s′−2(t ∧ t ′− s ∨ s′)∨0

)= |t − t ′|+ |s − s′|− (t + t ′)+ s + s′+2(t ∧ t ′− s ∨ s′)∨0

= t ∨ t ′− t ∧ t ′+ s ∨ s′− s ∧ s′

− t ∨ t ′− t ∧ t ′+ s ∨ s′+ s ∧ s′+2(t ∧ t ′− s ∨ s′)∨0

= 2(t ∧ t ′− s ∨ s′)∨0− (t ∧ t ′− s ∨ s′)

= 2

(0∨ (s ∨ s′− t ∧ t ′)

)≥ 0

.

これは,∑n

k=1

(hα

k (·)−hαk (∗)

)2∞n=1 ⊂C (→R)が一様有界で同等連続な関数列である

ことを implyしているので,(9.6)の収束は上一様収束である.再び (9.6)より

0 ≤ t − s −n∑

k=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 =∞∑

k=n+1

⟨(·∧ t −·∧ s)eα, hk

⟩2

H

≤ t − s, ∀(s, t ) ∈, ∀n ∈N

に注意すると,0 < ∀θ′ < 1に対して

sup0≤s<t≤1

∣∣∣∑nk=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 − (t − s)∣∣∣

(t − s)θ′

= sup0≤s<t≤1

(∣∣∣∑nk=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 − (t − s)∣∣∣

|t − s|)θ′∣∣∣ n∑

k=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 − (t − s)∣∣∣1−θ′

≤(

sup(s,t )∈

∣∣∣ n∑k=1

(hα

k (t )−hαk (s)

)2 − (t − s)∣∣∣)1−θ′

→ 0 as n →∞

が分かる.これは云い換えるとn∑

k=1Cαα

hk ,hk(s, t ) → t − s

2in ∥ ∥H ,θ′ (α= 1, . . . , r) (9.17)

である.このことを踏まえて,我々は次のような定理を提起する:

191

Page 200: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

定理 9.2. (i) 0 < ∀θ< 1, ∀M ≥ 2に対して

E[∥Qn(w)1 −w1∥M

H ,θ/2

]→ 0 as n →∞.

(ii) ある θ′ ∈ (0,1)に対してn∑

k=1Cαβ

hk ,hk(s, t ) → 0 in ∥ ∥H ,θ′ (α =β) (9.18)

ならば,0 < ∀θ< θ′, ∀M ≥ 2に対して

E[∥Qn(w)2 − (wS)2∥M

H ,θ

]→ 0 as n →∞.

証明 まず Claim 9.2より

limn,m→∞E

[∥Qn(w)1 −Qm(w)1∥M

H ,θ/2

]= 0, 0 < ∀θ< 1, ∀M ≥ 2.

次に (9.18)と (9.17)より,補題 9.1の条件は明らかに成り立つので,Claim 9.3より

limn,m→∞E

[∥Qn(w)2 −Qm(w)2∥M

H ,θ

]= 0, 0 < ∀θ< θ′, ∀M ≥ 2.

この2つの収束は,それぞれ次のことを implyする:

∃Q1 s.t.

• ∋ (s, t ) 7→Q(w)1(s, t ) ∈Rr は連続,

• W r ∋ w 7→Q(w)1(s, t ) ∈Rr は可測,

• E[∥Q(w)1∥M

H ,θ/2

]<∞,

• limn→∞E

[∥Qn(w)1 −Q(w)1∥M

H ,θ/2

]= 0,

∃Q2 s.t.

• ∋ (s, t ) 7→Q(w)2(s, t ) ∈Rr ⊗Rr は連続,

• W r ∋ w 7→Q(w)2(s, t ) ∈Rr ⊗Rr は可測,

• E[∥Q(w)2∥M

H ,θ

]<∞,

• limn→∞E

[∥Qn(w)2 −Q(w)2∥M

H ,θ

]= 0.

とくに,各 (s, t ) ∈に対して

Qn(w)1(s, t ) →Q(w)1(s, t ) in L2,

Qn(w)2(s, t ) →Q(w)2(s, t ) in L2

である.ところで,Claim 9.1と系 9.1より,各 (s, t ) ∈に対して

Qn(w)1(s, t ) → w1(s, t ) in L2,

192

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Qn(w)2(s, t ) → (wS)2(s, t ) in L2

であるので,上のことと合わせれば

Q(w)1 = w1, Q(w)2 = (wS)2 a.s.

よって定理の主張が分かる.

注意 9.1. 実は,渡辺 [28]は,条件 (9.18)の下で

E[∥Qn(w)2 − (wS)2∥M

H ,θ′]→ 0 as n →∞

であると主張している.しかし,我々の Besov normを介するやり方ではここまでは云えそうにない.上の定理の主張が限界である.

以下,条件 (9.18)が成立する例,or 成立しない例をそれぞれ呈示する.まず,これが自明に確かめられる例を渡辺 [28]から紹介する:

例 9.1. (i) ( fn)∞n=1 を L2([0,1] → R) の CONB とし, fn,i ∈ L2([0,1] → Rr ) (n ∈ N, i ∈1, . . . , r)を

fn,i = fn ei , ei = t (0, . . . ,i1, . . . ,0)

とおくと,( fn,i )n∈N,i∈1,...,r は L2([0,1] →Rr )の CONBを成すことが容易に分かる.そこで H r の CONB (hn,i )n∈N,i∈1,...,rを

hn,i (·) :=∫·

0fn,i (u)du

と採る.このとき

Cαβ

hn,i ,hn,i(s, t ) = 0 (α =β, n ∈N, i ∈ 1, . . . , r)

である.何となれば,定義より f αn,i = δαi fn に注意すれば,α =βのとき

Cαβ

hn,i ,hn,i(s, t ) =

∫t

s

(hα

n,i (u)−hαn,i (s)

)hβ

n,i (u)du

=∫t

s

(δαi

∫u

sfn(v)dv

)δβi fn(u)du

= δαiδβi

Ïs<v<u<t

fn(v) fn(u)dvdu

= 0

となるから.

193

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(ii) L2([0,1] → R)の CONBとして典型的なものは三角関数系であろうが,ここではそれではなくて次のように定義される Haar関数系 (χp)∞p=0 を考える

注37:χ0(t ) := 1[0,1)(t ),

χ2n+k (t ) := 2n/21[k

2n , 2k+12n+1

)(t )−2n/21[2k+12n+1 , k+1

2n

)(t ), n ∈ 0,1,2, . . ., 0 ≤ k < 2n .

この (χp)∞p=0が L2([0,1] →R)の CONBを成すことは容易に分かる.これに対応するH r

の CONBは (hp,i (·) = (∫·

0χp(u)du

)ei

)p∈0,1,2,...,i∈1,...,r

である.

⟨hp,i , w⟩H =r∑

α=1

∫1

0hα

p,i (u)dwα(u)

=r∑

α=1

∫1

0δαiχp(u)dwα(u)

=∫1

0χp(u)dw i (u), i = 1, . . . , r

より,各 p ∈ 0,1,2, . . .に対して

r∑i=1

⟨hp,i , w⟩H hp,i (·) =r∑

i=1

∫1

0χp(u)dw i (u)

(∫·

0χp(u)du

)ei

= (∫·

0χp(u)du

)∫1

0χp(u)dw(u).

ここで p = 0のときは ∫1

0χ0(u)dw(u) = w(1),

∫t

0χ0(u)du = t ,

p = 2n +k (n ∈ 0,1,2, . . ., k ∈ 0, . . . ,2n −1)のときは∫1

0χ2n+k (u)dw(u) = 2n/2

(w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)+w(2k +1

2n+1

))= 2n/2

(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

)),∫t

0χ2n+k (u)du = 2n/2

(2k +1

2n+1∧ t − k

2n∧ t − k +1

2n∧ t + 2k +1

2n+1∧ t

)= 2n/2

((t − k

2n

)+∧ (k +1

2n− t

)+)注37indexの付け方が違うこと,即ち,p = 0,1,2, . . .としていることに注意.

194

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であるから

r∑i=1

⟨h0,i , w⟩H h0,i (t ) = t w(1),

2n−1∑k=0

r∑i=1

⟨h2n+k,i , w⟩H h2n+k,i (t )

=2n−1∑k=0

2n((

t − k

2n

)+∧ (k +1

2n− t

)+)(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))=

2n−1∑k=0

((2n t −k

)+∧ (k +1−2n t

)+)(2w

(2k +1

2n+1

)−w( k

2n

)−w(k +1

2n

))= zn(t )

[...⃝ (8.16)より

]= w(n +1)(t )−w(n)(t ).

ただし n = 0のときは w(n +1)(t )−w(n)(t ) = w(1)(t )− t w(1)と解する.よって

r∑i=1

⟨h0,i , w⟩H h0,i (t )+N−1∑n=0

2n−1∑k=0

r∑i=1

⟨h2n+k,i , w⟩H h2n+k,i (t )

= t w(1)+N−1∑n=0

(w(n +1)(t )−w(n)(t )

)= w(N)(t ), N ∈N.

今,h0,1, . . . , h0,r , h1,1, . . . , h1,r , . . . , hp,1, . . . , hp,r , hp+1,1, . . . , hp+1,r , . . .

と並べたものを (hn)∞n=1 とする (hn = h⌊ n−1r ⌋,r n−1

r +1 である).このとき

QrN (w) =rN∑

k=1⟨hk , w⟩H hk

=rN∑

k=1

⟨h⌊ k−1

r ⌋,r k−1r +1, w

⟩H

h⌊ k−1r ⌋,r k−1

r +1

= ∑0≤k<rN

⟨h⌊ k

r ⌋,r kr +1, w

⟩H

h⌊ kr ⌋,r k

r +1

=N∑

n=1

∑r(n−1)≤k<r n

⟨h⌊ k

r ⌋,r kr +1, w

⟩H

h⌊ kr ⌋,r k

r +1

=N∑

n=1

∑0≤i<r

⟨hn−1,i+1, w⟩H hn−1,i+1

= ∑0≤n<N

r∑i=1

⟨hn,i , w⟩H hn,i

195

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となる.これと先に見たことからQr2N (w) = w(N)が分かる.これは,定理 9.2が確かに定理 8.1の拡張であることを示唆している.

次に,(9.18)をみたさない例を挙げておく注38:

例 9.2. 簡単のため r = 2とする.ϕk , ψl ∈ H2 (k, l ∈Z)を

ϕk (t ) =(

cos(2k −1)πt

sin(2k −1)πt

),

ψl (t ) =(−sin(2l −1)πt

cos(2l −1)πt

)

とおく.ϕk k∈Z∪ ψl l∈Zが H2の CONBであることは容易に確かめられる注39.このとき

C 11ϕk ,ϕk

(s, t ) = 1

2((2k −1)π

)2

(sin(2k −1)πt − sin(2k −1)πs

)2,

C 22ϕk ,ϕk

(s, t ) = 1

2((2k −1)π

)2

(cos(2k −1)πt −cos(2k −1)πs

)2,

C 12ϕk ,ϕk

(s, t ) = 1

(2k −1)π

t − s

2+ 1

2((2k −1)π

)2

[2cos(2k −1)πt sin(2k −1)πs

− sin(2k −1)πt cos(2k −1)πt

− sin(2k −1)πs cos(2k −1)πs],

C 21ϕk ,ϕk

(s, t ) =− 1

(2k −1)π

t − s

2+ 1

2((2k −1)π

)2

[2cos(2k −1)πs sin(2k −1)πt

−cos(2k −1)πs sin(2k −1)πs

− sin(2k −1)πt cos(2k −1)πt],

C 11ψl ,ψl

(s, t ) = 1

2((2l −1)π

)2

(cos(2l −1)πt −cos(2l −1)πs

)2,

C 22ψl ,ψl

(s, t ) = 1

2((2l −1)π

)2

(sin(2l −1)πt − sin(2l −1)πs

)2,

C 12ψl ,ψl

(s, t ) = 1

(2l −1)π

t − s

2+ 1

2((2l −1)π

)2

[−2sin(2l −1)πt cos(2l −1)πs

+ sin(2l −1)πt cos(2l −1)πt

+ sin(2l −1)πs cos(2l −1)πs],

C 21ψl ,ψl

(s, t ) =− 1

(2l −1)π

t − s

2+ 1

2((2l −1)π

)2

[−2sin(2l −1)πs cos(2l −1)πt

+cos(2l −1)πs sin(2l −1)πs

+ sin(2l −1)πt cos(2l −1)πt]

注38例 9.1だけでは片手落ちだと思うので.....注39これは,三角関数系 1∪

p2sin2mπt ,

p2cos2nπt ; m, n ∈Nが L2([0,1] →R)の CONBであること

を使って直ぐに分かる.

196

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であるから,各 k ∈Zに対して

C 12ϕk ,ϕk

(s, t )+C 12ψk ,ψk

(s, t ) =−(C 21ϕk ,ϕk

(s, t )+C 21ψk ,ψk

(s, t ))

= t − s

(2k −1)π− sin(2k −1)π(t − s)(

(2k −1)π)2 .

明らかに,∑

k∈Zsin(2k−1)π(t−s)

((2k−1)π)2 は [0,1]2上絶対一様収束し,その和はゼロである.また,

0 < θ′ < 1, KbZ (即ち,Zの有限部分集合 K)に対して

∑k∈K

|sin(2k −1)π(t − s)|((2k −1)π

)2 ≤ ∑k∈K

|sin(2k −1)π(t − s)|θ′((2k −1)π

)2

≤ ∑k∈K

|(2k −1)π|θ′ |t − s|θ′((2k −1)π

)2

≤( ∑

k∈Z

1

|(2k −1)π|2−θ′)|t − s|θ′

= 2

π2−θ′( ∞∑

k=1

1

(2k −1)2−θ′)|t − s|θ′

=(

2

π2−θ′(1− 1

22−θ′)ζ(2−θ′)

)|t − s|θ′[

...⃝ x > 1のとき∞∑

k=1

1

(2k −1)x= (

1− 1

2x

)ζ(x)

]であるので,0 < θ< θ′に対して

sup0≤s<t≤1

1

(t − s)θ

∣∣∣ ∑k∈K

sin(2k −1)π(t − s)((2k −1)π

)2

∣∣∣= sup

0≤s<t≤1

(1

|t − s|θ′∣∣∣ ∑

k∈K

sin(2k −1)π(t − s)((2k −1)π

)2

∣∣∣) θθ′ ∣∣∣ ∑

k∈K

sin(2k −1)π(t − s)((2k −1)π

)2

∣∣∣1− θθ′

≤(

2

π2−θ′(1− 1

22−θ′)ζ(2−θ′)

) θθ′

(sup

(s,t )∈[0,1]2

∣∣∣ ∑k∈K

sin(2k −1)π(t − s)((2k −1)π

)2

∣∣∣)1− θθ′

→KZ

0.

今 ∑k∈N

1

2k −1= ∑

k∈(−N)∪0

| 1

2k −1| =∞

に注意すると,∀c ∈ [−∞,∞]に対して

∃k(·): N→Z 全単射 s.t. limN→∞

N∑n=1

1

(2k(n)−1)π= c. (9.19)

197

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上で見たことから,0 < ∀θ< 1に対して

N∑n=1

sin(2k(n)−1)π(t − s)((2k(n)−1)π

)2 → 0 in ∥ ∥H ,θ as N →∞.

c ∈Rのときは

N∑n=1

t − s

(2k(n)−1)π→ c(t − s) in ∥ ∥H ,1 as N →∞,

c =∞ or −∞のときはN∑

n=1

t − s

(2k(n)−1)π→ c as N →∞ (0 ≤ s < t ≤ 1).

以上のことをまとめると(i) c ∈Rのときは,0 < ∀θ< 1に対して

N∑n=1

(C 12ϕk(n),ϕk(n)

(s, t )+C 12ψk(n),ψk(n)

(s, t ))=−

N∑n=1

(C 21ϕk(n),ϕk(n)

(s, t )+C 21ψk(n),ψk(n)

(s, t ))

→ c(t − s) in ∥ ∥H ,θ as N →∞.

(ii) c =∞ or −∞のときはN∑

n=1

(C 12ϕk(n),ϕk(n)

(s, t )+C 12ψk(n),ψk(n)

(s, t ))=−

N∑n=1

(C 21ϕk(n),ϕk(n)

(s, t )+C 21ψk(n),ψk(n)

(s, t ))

→ c as N →∞ (0 ≤ s < t ≤ 1).

注意 9.2. 渡辺 [28]が注意していることであるが,定理 9.2(i)の収束は概収束でもある.即ち,0 < ∀θ< 1に対して

µ( n∑

k=1⟨hk , w⟩H hk → w in ∥ ∥H ,θ/2 as n →∞

)= 1. (9.20)

これは,伊藤-西尾の定理注40([12])より証明出来ると渡辺 ([28])は云っている.が,少し心配なところがある.その気がかりは,注意 4.3で述べたことだが,Banach空間(CH ,q(R),∥ ∥H ,q) (0 < q < 1)の非可分性から来ている.[12]の結果をこの Banach空間に直接使えないので,その代わりにほんの少しだけ小さくした Banach空間

ϕ ∈CH ,q(R) ; limδ0

sup0≤t ,s≤1;

0<|t−s|≤δ

|ϕ(t )−ϕ(s)||t − s|q = 0

注40これは,実確率変数の場合の Lévyの3収束同等定理の

、 可、 分 Banach空間値確率変数への拡張,即ち,、

 可、 分 Banach空間に値を取る独立確率変数を項とする級数の法則収束,確率収束,概収束が同等であることを主張する定理である.

198

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を考え (これは Ciesielski [5]より可分である),これに対し [12]の結果を適用するのである.実は,この Banach空間に関する [5]の結果を用いた簡単な (9.20)の証明が,Kerkyacharian-Roynette [13]より与えられている.一見の価値があると思う.しかし,次のような

わ け

理由で,我々はこのノートではその証明を紹介しないことにした.定理 8.1より

µ((

1, w(n)1, w(n)2)→ (

1, w1, (wS)2)

in dp as n →∞)= 1 (2 < ∀p < 3)

である.同様のことが定理 9.2の場合にも云える,即ち,(9.20)と釣り合う形で

µ(Qn(w)2 → (wS)2 in ∥ ∥H ,θ as n →∞

)= 1

が云えればよいのだが,今のところ,まだ出来ていない (というか,本当はどうなのか分かっていない)注41.これと (9.20)をペアにしたもので1つと考えている筆者にとって,今ここで慌てて (9.20)の証明だけを与える必要もないと判断したのである.

9.3. 定理 9.1の補完この小節は,小節 9.2の続きであるが,小節を新しくする.W 2の sup-norm ∥ ∥∞を,いつものように ∥w∥∞ = max

0≤t≤1|w(t )|とすると,(W 2,∥ ∥∞)

は可分 Banach空間である.次の claimは渡辺 [28]による.

Claim 9.4. 0 < t ≤ 1とする.(i) H2から Rへの写像

H2 ∋ h 7→C 12h,h(0, t ) ∈R,

H2 ∋ h 7→C 21h,h(0, t ) ∈R

は (W 2,∥ ∥∞)上の連続関数に拡張できない.(ii) (wS)

122 (0, t ), (wS)

212 (0, t )は (W 2,∥ ∥∞) 上連続変形をもたない.ここで (wS)

αβ

2 は(wS)2 の (α,β)成分を表わす.

証明 (i) C 12h,h(0, t )+C 21

h,h(0, t ) = h1(t )h2(t )であるので,h 7→C 12h,h(0, t )について見れば

よい.背理法により示す.即ち,h 7→C 12

h,h(0, t )は (W 2,∥ ∥∞)上に連続に拡張できると仮定し,その拡張を F (w)とする.例 9.2での H2の CONB ϕk k∈Z∪ ψl l∈Zを採る.c ∈R

に対して,(9.19)をみたす部分列を k(n)∞n=1 とし

Qn(w) =n∑

i=1

(⟨ϕk(i ), w⟩H ϕk(i ) +⟨ψk(i ), w⟩H ψk(i ))

注41適当な部分列 nk ∞k=1に対して, limk→∞

Qnk (w)2 = (wS )2 in ∥ ∥H ,θ a.s.ではある.

199

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とおく.このとき,定理 9.2 (の証明をほんの少し修正することに)より,0 < ∀θ < 1,∀M ≥ 2に対して

E[∥Qn(w)1 −w1∥M

H ,θ/2

]→ 0,

E

[∥∥∥Qn(w)2(s, t )− (wS)2(s, t )− c( 0 1

−1 0

)(t − s)

∥∥∥M

H ,θ

]→ 0.

これは,適当な部分列 n′に対して

µ

w ∈ W 2 ;

∥Qn′(w)−w∥∞ → 0,∥∥∥CQn′ (w),Qn′ (w)(0, ·)− (wS)2(0, ·)− c( 0 1

−1 0

)·∥∥∥∞ → 0

= 1

を implyするので,確率 1で

F (w) = limn′ F

(Qn′(w)

)= lim

n′ C 12Qn′ (w),Qn′ (w)(0, t )

= (wS)122 (0, t )+ ct .

c ′ = c なる c ′ ∈Rに対して同様のことを行なうと

F (w) = (wS)122 (0, t )+ c ′t a.s.

これは c ′ = cと矛盾する.よって h 7→C 12h,h(0, t )は (W 2,∥ ∥∞)上に連続に拡張できない.

(ii) (wS)122 (0, t )+ (wS)

212 (0, t ) = w1(t )w2(t )であるので,(wS)

122 (0, t )がW 2 上連続変形

をもたないことを云えば十分である.(wS)

122 (0, t )が連続変形 F (w)をもつと仮定する.h ∈ H2を任意に fixする.Cameron-

Martin公式より,変換W 2 ∋ w 7→ w +h ∈ W 2 は µに関して絶対連続であるので

F (w +h) = ((w +h)S

)12

2 (0, t ) µ-a.s.

ここで,確率 1で

右辺=∫t

0

(w +h

)1(s)d(w +h

)2(s)

=∫t

0w1(s)dw2(s)+

∫t

0h1(s)dw2(s)+

∫t

0w1(s)dh2(s)+

∫t

0h1(s)dh2(s)

= (wS)122 (0, t )+ [

h1(s)w2(s)]t

0 −∫t

0w2(s)dh1(s)+

∫t

0w1(s)dh2(s)+h

122 (0, t )

= F (w)+h1(t )w2(t )−∫t

0w2(s)dh1(s)+

∫t

0w1(s)dh2(s)+C 12

h,h(0, t )

200

Page 209: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

に注意すると

F (w +h) = F (w)+h1(t )w2(t ) −∫t

0w2(s)dh1(s)

+∫t

0w1(s)dh2(s)+C 12

h,h(0, t ), ∀w ∈ W 2.

とくに w = 0とすると

F (h) = F (0)+C 12h,h(0, t ).

これは,H2 ∋ h 7→C 12h,h(0, t ) ∈ RがW 2 上への連続拡張をもつことになってしまい,(i)

に反する.よって (wS)122 (0, t )はW 2 上連続変形をもたない.

定義 4.7において,d = 2とすると

R2+1 =

x1

x2

x12

; x1, x2, x12 ∈R

,

(4.11)のベクトル場 V1, V2 ∈X(R2+1)は

V1 = ∂

∂x1− 1

2x2 ∂

∂x12, V2 = ∂

∂x1+ 1

2x1 ∂

∂x12

となる.今,次のような R2+1 上の SDEを考える:

Y (t ) = y +2∑

α=1

∫t

0Vα

(Y (s)

)dwα(s). (9.21)

ここで y =

y1

y2

y12

∈R2+1. この SDEは (4.12)において形式的に hα(t ) = wα(t )とした方

程式である.実は (4.14)のように,これの解 Y (t )は

Y (t ) = Y (t , y ; w)

=

y1 +w1(t )

y2 +w2(t )

y12 + 12

(∫t0

(x1 +w1(s)

)dw2(s)−∫t0

(x2 +w2(s)

)dw1(s))

=

y1 +w1(t )

y2 +w2(t )

y12 + 12 (x1w2(t )−x2w1(t ))+ 1

2

((wS)

122 (0, t )− (wS)

212 (0, t )

) (9.22)

と explicitに与えられる.Claim 9.4の主張を,この Y (·, y ; w)についてのものとして述べ直しておく:

201

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定理 9.3. 各 t > 0, y ∈ R2+1 に対して,(9.21)の解 Y (t , y ; w)は (W 2,∥ ∥∞)上連続変形をもたない.しかし,Y (t , y ; w)を与える式 (9.22)より,これは明らかに dp (2 < p < 3)

に関して wS = (1, w1, (wS)2

)の連続汎関数である.

この定理の後半の主張は,定理 9.1を使うまでもなく明らかである.前半の主張もClaim 9.4の云い換えに過ぎない.ここで声を大にして云いたい注42ことは

「SDEの解は,ブラウン運動だけの汎関数と見たときは,一般に連続でないが,ブラウン運動とその 2重Wiener積分をペアにしたものの汎関数と見れば,いつでも連続になる」

ということである.

[附記]

1⃝例 9.2で我々は天下り的にH2の CONB ϕk k∈Z∪ ψl l∈Zを与えたが,実はこれは次のように由緒あるというか素性のはっきりしたものである.

H2 ∋ h 7→ S(·, h) ∈ H1 を

S(t , h) = 1

2

(C 12

h,h(0, t )−C 21h,h(0, t )

)= 1

2

∫t

0

(h1(s)h2(s)−h2(s)h1(s)

)ds, t ∈ [0,1] (9.23)

とおく.ここで H2 上の対称 Hilbert-Schmidt作用素 Aを(Ah)1(t ) = t

4h2(t )− 1

2

∫t

0h2(s)ds,

(Ah)2(t ) =− t

4h1(t )+ 1

2

∫t

0h1(s)ds

とすると S(1, h) = ⟨Ah, h⟩H ,そして Aの固有値は

λk = 1

2(2k −1)π, k ∈Z,

λk に対する固有空間は,ϕk , ψk によって spanされる 2次元部分空間となる.2⃝ (9.23)で h(·)の代わりに w(·)として定義した式を S(t , w)とする (上と同じ記号を使うが...),即ち

S(t , w) = 1

2

∫t

0

(w1(s)dw2(s)−w2(s)dw1(s)

)= 1

2

((wS)

122 (0, t )− (wS)

212 (0, t )

).

これを Lévyの stochastic area (確率面積)という.Claim 9.4を S(t , w)について云い直すと注42以前にも,同じことを云ったけど.....

202

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「t > 0のとき,S(t , w)は (W 2,∥ ∥∞)上連続変形をもたない」

となる.池田-渡辺 [11] or Stroock-Varadhan [25]より,次のことがよく知られている: ∀ε> 0,

∀h ∈ (W 2

)∗ ⊂ H2 (ここで(W 2

)∗はW 2 の dual)に対して

limδ0

µ

(|S(1, w)−S(1, h)| > ε

∣∣∣ ∥w −h∥∞ < δ

)= 0. (9.24)

これは,一見すると上の S(t , w)の不連続性と相矛盾するように思える.しかし,この不連続性を “概収束”,(9.24)の収束を “確率収束”と解するならば何ら

お か

可笑しくない (と思う).ところがである.杉田 [26]は

「(9.24)において,sup-norm ∥ ∥∞ を別のmeasurable normに取り換えるならば,これは成立しない」

ことを示している.彼の主張をもう少し正確に述べると

∃A: Rの可算稠密部分集合

s.t.

各 a ∈ Aに対して,次のようなmeasurable norm ∥ ∥(a) が存在する:

limδ0

µ

(|S(1, w)−S(1, h)−a| > ε

∣∣∣ ∥w −h∥(a) < δ

)= 0, ∀ε> 0, ∀h ∈ H2.

∥ ∥(a) は ϕk , ψl により具体的に定義される Hilbertian measurable normである.詳しいことは

くだん

件の論文を参照して欲しい.この杉田の結果から,stochastic area S(t , w)は Claim 9.4が主張する以上に,

、 本、 当に

不連続なのである.

203

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附録

A.1. 命題 8.1の証明この命題を Stroockの本 [24]の Lemma 3.4.13に従って示す (手許に彼の本があるの

でこれを参考にした.だから,元々の論文 [10]まで遡って確かめたわけではない.が,たぶん同じだろうと思う).

補題 A.1. m ∈ [1,∞), θ ∈ (0,1]とする.ϕ ∈C ([0,1]2 → V ), ψi ∈C ([0,1]2 → Vi ) (i = 1,2)

は次をみたすとする: ある 0 < A,B1,B2 <∞に対してÏ[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ϕ(s, t )||t − s|θ+2/m

)m

dsdt ≤ A,Ï[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ1(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt ≤ B1,Ï[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ2(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt ≤ B2

(ここで V , Vi は Banach空間, |ϕ(s, t )| = |ϕ(s, t )|V , |ψi (s, t )| = |ψi (s, t )|Vi ). このとき

∃(tn)∞n=0 s.t.

0 < t0 < 1, 0 < tn+1 <(1

2

) 2mmθ+2 tn ,

|ϕ(tn+1, tn)| ≤ 16 · (36A)1/m(1+ 2

)(dθ

n −dθn+1),

|ψ1(tn+1, tn)| ≤ 4 · (36B1)1/2m(1+ 2

)(dθ/2

n −dθ/2n+1),

|ψ2(tn+1, tn)| ≤ 4 · (36B2)1/2m(1+ 2

)(dθ/2

n −dθ/2n+1).

ここで dn := (12

) 2mmθ+2 tn (n ≥ 0).

証明 まず,簡単のため

I(t ) :=∫

[0,1]\t

( |ϕ(s, t )||t − s|θ+2/m

)m

ds,

J1(t ) :=∫

[0,1]\t

( |ψ1(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

ds,

J2(t ) :=∫

[0,1]\t

( |ψ2(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

ds

とおく.仮定より ∫1

0I(t )dt ≤ A,

∫1

0J1(t )dt ≤ B1,

∫1

0J2(t )dt ≤ B2.

1 0 < ∃t0 < 1 s.t. I(t0) ≤ 3A, J1(t0) ≤ 3B1, J2(t0) ≤ 3B2.

204

Page 213: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

...⃝ (0,1)の部分集合 E , F1, F2を

E := t ∈ (0,1) ; I(t ) > 3A,

F1 := t ∈ (0,1) ; J1(t ) > 3B1,

F2 := t ∈ (0,1) ; J2(t ) > 3B2

とおく.もし,λ(E) > 0 (ここで λは Lebesgue測度)ならば

A ≥∫1

0I(t )dt ≥

∫E

I(t )dt > 3Aλ(E)

となるので,λ(E) < 13 . λ(E) = 0ならばこれは明らかに成り立つから λ(E) < 1

3.同様にして λ(F1) < 1

3 , λ(F2) < 13 . よって

λ(E ∪F1 ∪F2) ≤λ(E)+λ(F1)+λ(F2) < 1.

これは (0,1) \ (E ∪F1 ∪F2) = ;を implyするので,1の主張が従う.

2 0 < ∀τ< 1に対して

0 < ∃tτ < dτ := (12

) 2mmθ+2τ s.t. I(tτ) ≤ 6A

dτ,

( |ϕ(tτ,τ)||τ− tτ|θ+2/m

)m

≤ 6I(τ)

dτ,

J1(tτ) ≤ 6B1

dτ,

( |ψ1(tτ,τ)||τ− tτ|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J1(τ)

dτ,

J2(tτ) ≤ 6B2

dτ,

( |ψ2(tτ,τ)||τ− tτ|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J2(τ)

dτ.

...⃝ (0, dτ)の部分集合G (i ), i = 1, . . . ,6を

G (1) := t ∈ (0, dτ) ; I(t ) > 6A

,

G (2) := t ∈ (0, dτ) ;

( |ϕ(t ,τ)||τ− t |θ+2/m

)m > 6I(τ)

,

G (3) := t ∈ (0, dτ) ; J1(t ) > 6B1

,

G (4) := t ∈ (0, dτ) ;

( |ψ1(t ,τ)||τ− t |θ/2+1/m

)2m > 6J1(τ)

,

G (5) := t ∈ (0, dτ) ; J2(t ) > 6B2

,

G (6) := t ∈ (0, dτ) ;

( |ψ2(t ,τ)||τ− t |θ/2+1/m

)2m > 6J2(τ)

とおく.もし λ(G (1)) > 0ならば

A ≥∫1

0I(t )dt ≥

∫G (1)

I(t )dt > 6A

dτλ(G (1))

205

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となるので λ(G (1)) < dτ

6 . もし λ(G (2)) > 0ならば

I(τ) =∫

[0,1]\τ

( |ϕ(t ,τ)||τ− t |θ+2/m

)m

dt

≥∫

G (2)

( |ϕ(t ,τ)||τ− t |θ+2/m

)m

dt

> 6I(τ)

dτλ(G (2))

となるので λ(G (2)) < dτ

6 . 以下同様にして

λ(G (3)) < dτ

6, λ(G (4)) < dτ

6,

λ(G (5)) < dτ

6, λ(G (6)) < dτ

6.

よって

λ(G (1) ∪·· ·∪G (6))≤λ(G (1))+·· ·+λ(G (6)) < dτ.

これは (0, dτ) \(G (1) ∪·· ·∪G (6)

) = ;を implyし,2の主張が従う.

3 t0を 1で見つけた数とする.2において τ= t0と採ると

0 < ∃t1 < d0 := (12

) 2mmθ+2 t0 s.t. I(t1) ≤ 6A

d0,

( |ϕ(t1, t0)||t0 − t1|θ+2/m

)m

≤ 6I(t0)

d0,

J1(t1) ≤ 6B1

d0,

( |ψ1(t1, t0)||t0 − t1|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J1(t0)

d0,

J2(t1) ≤ 6B2

d0,

( |ψ2(t1, t0)||t0 − t1|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J2(t0)

d0.

次に τ= t1と採ると,ある t2 ∈ (0, d1) (d1 := (12

) 2mmθ+2 t1)に対して 2が成り立つ.以下,

これを繰り返すことにより

∃(tn)∞n=0 s.t. 0 < t0 < 1, 0 < tn+1 < dn := (12

) 2mmθ+2 tn ,

I(t0) ≤ 3A, J1(t0) ≤ 3B1, J2(t0) ≤ 3B2,

I(tn+1) ≤ 6A

dn,

( |ϕ(tn+1, tn)||tn − tn+1|θ+2/m

)m

≤ 6I(tn)

dn,

J1(tn+1) ≤ 6B1

dn,

( |ψ1(tn+1, tn)||tn − tn+1|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J1(tn)

dn,

J2(tn+1) ≤ 6B2

dn,

( |ψ2(tn+1, tn)||tn − tn+1|θ/2+1/m

)2m

≤ 6J2(tn)

dn.

206

Page 215: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

4 ∀n ≥ 0に対して

|tn − tn+1|θ/2+1/m ≤ tθ/2+1/mn = 2dθ/2+1/m

n

= 4(dθ/2+1/m

n − 12 dθ/2+1/m

n

)≤ 4

(dθ/2+1/m

n −dθ/2+1/mn+1

)[ ...⃝ dθ/2+1/m

n+1 = 12 tθ/2+1/m

n+1

≤ 12 dθ/2+1/m

n

].

このことから

|tn − tn+1|θ+2/m =(|tn − tn+1|θ/2+1/m

)2

≤(4(dθ/2+1/m

n −dθ/2+1/mn+1

))2

≤ 16(dθ+2/m

n −dθ+2/mn+1

)[

...⃝ x ≥ y のとき (x − y)2 ≤ x2 − y2]

.

5 3と 4より

|ϕ(tn+1, tn)| ≤(6I(tn)

dn

)1/m |tn − tn+1|θ+2/m

≤( 6

dn

6A

dn−1

)1/m16

(dθ+2/m

n −dθ+2/mn+1

)[

n = 0のときは dn−1 = d−1 := 0]

= 16(36A)1/m∫dn

dn+1

( 1

dn dn−1

)1/mduθ+2/m

≤ 16(36A)1/m∫dn

dn+1

( 1

u2

)1/mduθ+2/m[

...⃝ dn+1 < u < dn ならば u2 < dn dn−1

]≤ 16(36A)1/m

∫dn

dn+1

u−2/m(θ+ 2

m

)uθ+2/m−1du

= 16(36A)1/m(1+ 2

)(dθ

n −dθn+1

),

|ψi (tn+1, tn)| ≤(6Ji (tn)

dn

)1/2m |tn − tn+1|θ/2+1/m

≤( 6

dn

6Bi

dn−1

)1/2m4(dθ/2+1/m

n −dθ/2+1/mn+1

)= 4(36Bi )1/2m

∫dn

dn+1

( 1

dn dn−1

)1/2mduθ/2+1/m

207

Page 216: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

≤ 4(36Bi )1/2m∫dn

dn+1

( 1

u2

)1/2mduθ/2+1/m

≤ 4(36Bi )1/2m∫dn

dn+1

u−1/m(θ2 + 1

m

)uθ/2+1/m−1du

= 4(36Bi )1/2m(1+ 2

)(dθ/2

n −dθ/2n+1

).

系 A.1. ϕ, ψ1, ψ2は補題 A.1にあるものとする.このとき

∃(t ′n)∞n=0 s.t.

t ′0 = 1− t0, 0 < t ′n+1 < d ′n := (1

2

) 2mmθ+2 t ′n ,

|ϕ(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 16 · (36A)1/m(1+ 2

)(d ′θ

n −d ′θn+1),

|ψ1(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 · (36B1)1/2m(1+ 2

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1),

|ψ2(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 · (36B2)1/2m(1+ 2

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1).

証明 補題 A.1において ϕ, ψ1, ψ2の代わりに

ϕ(1− s,1− t ), ψ1(1− s,1− t ), ψ2(1− s,1− t )

を考えると,これらはC ([0,1]2 → V )等の元でÏ[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ϕ(1− s,1− t )||t − s|θ+2/m

)m

dsdt

[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ϕ(s, t )||t − s|θ+2/m

)m

dsdt ≤ A,Ï[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψi (1− s,1− t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt

[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψi (s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt ≤ Bi ,

そして t0 ∈ (0,1)を補題 A.1の証明 1にある数とすると∫[0,1]\1−t0

( |ϕ(1− s,1− (1− t0))||1− t0 − s|θ+2/m

)m

ds

[0,1]\t0

( |ϕ(s, t0)||t0 − s|θ+2/m

)m

ds ≤ 3A,Ï[0,1]\1−t0

( |ψi (1− s,1− (1− t0))||1− t0 − s|θ/2+1/m

)2m

ds

[0,1]\t0

( |ψi (s, t0)||t0 − s|θ/2+1/m

)2m

ds ≤ 3Bi .

よってあとは,補題 A.1を適用して系にあるような (t ′n)∞n=0を得る.

208

Page 217: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

命題 8.1(ii)の証明 ∥Cx,y∥B,m,θ < ∞, ∥x1∥B,2m,θ/2 < ∞, ∥y1∥B,2m,θ/2 < ∞ とする.0 ≤σ< τ≤ 1を任意に fixし,ϕ ∈C ([0,1]2 →Rd ⊗Rd ), ψi ∈C ([0,1]2 →Rd ) (i = 1,2)を次のように定義する:

ϕ(s, t ) :=Cx,y(σ+ (τ−σ)(s ∧ t ),σ+ (τ−σ)(s ∨ t )

),

ψ1(s, t ) := x1(σ+ (τ−σ)(s ∧ t ),σ+ (τ−σ)(s ∨ t )

),

ψ2(s, t ) := y1

(σ+ (τ−σ)(s ∧ t ),σ+ (τ−σ)(s ∨ t )

).

このとき Ï[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ϕ(s, t )||t − s|θ+2/m

)m

dsdt

= 2Ï

0≤s<t≤1

(|Cx,y

(σ+ (τ−σ)s,σ+ (τ−σ)t

)||t − s|θ+2/m

)m

dsdt

= 2Ï

σ≤s′<t ′≤τ

(|Cx,y

(s′, t ′

)|( |t ′−s′|τ−σ

)θ+2/m

)mds′dt ′

(τ−σ)2[...⃝変数変換 s′ =σ+ (τ−σ)s, t ′ =σ+ (τ−σ)t

]= 2(τ−σ)mθ

Ïσ≤s<t≤τ

(|Cx,y

(s, t

)||t − s|θ+2/m

)m

dsdt

≤ 2(τ−σ)mθ∥Cx,y∥mB,m,θ

= 2((τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ

)m,Ï

[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ1(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt

= 2Ï

0≤s<t≤1

( |x1(σ+ (τ−σ)s,σ+ (τ−σ)t

)||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt

= 2Ï

σ≤s′<t ′≤τ

(|x1

(s′, t ′

)|( |t ′−s′|τ−σ

)θ/2+1/m

)2mds′dt ′

(τ−σ)2

= 2(τ−σ)mθ

Ïσ≤s<t≤τ

( |x1(s, t

)||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt

≤ 2(τ−σ)mθ∥x1∥2mB,2m,θ/2

= 2((τ−σ)θ/2∥x1∥B,2m,θ/2

)2m,Ï

[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ2(s, t )||t − s|θ/2+1/m

)2m

dsdt

≤ 2((τ−σ)θ/2∥y1∥B,2m,θ/2

)2m.

209

Page 218: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

よって補題 A.1,及びその系 A.1より

∃(tn)∞n=0, ∃(t ′n)∞n=0

s.t.

|ϕ(tn+1, tn)| ≤ 16 ·721/m(τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ(1+ 2

)(dθ

n −dθn+1),

|ϕ(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 16 ·721/m(τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ(1+ 2

)(d ′θ

n −d ′θn+1),

|ψ1(tn+1, tn)| ≤ 4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,2m,θ/2(1+ 2

)(dθ/2

n −dθ/2n+1),

|ψ1(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,2m,θ/2(1+ 2

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1),

|ψ2(tn+1, tn)| ≤ 4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥y1∥B,2m,θ/2(1+ 2

)(dθ/2

n −dθ/2n+1),

|ψ2(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥y1∥B,2m,θ/2(1+ 2

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1).

ここで,各 n ∈Nに対してtn+1 < tn < ·· · < t1 < t0 = 1− t ′0 < 1− t ′1 < ·· · < 1− t ′n < 1− t ′n+1

は [tn+1,1− t ′n+1]の分割,よって

σ+ (τ−σ)tn+1 <σ+ (τ−σ)tn < ·· · <σ+ (τ−σ)t0

<σ+ (τ−σ)(1− t ′1) < ·· · <σ+ (τ−σ)(1− t ′n+1)

は [σ+ (τ−σ)tn+1,σ+ (τ−σ)(1− t ′n+1)]の分割であるので,補題 4.1(ii)より∣∣∣Cx,y(σ+ (τ−σ)tn+1,σ+ (τ−σ)(1− t ′n+1)

)∣∣∣≤

n∑k=0

∣∣∣Cx,y(σ+ (τ−σ)tk+1,σ+ (τ−σ)tk

)∣∣∣+

n∑k=0

∣∣∣Cx,y(σ+ (τ−σ)(1− t ′k ),σ+ (τ−σ)(1− t ′k+1)

)∣∣∣+

( n∑k=0

∣∣∣x1(σ+ (τ−σ)tk+1,σ+ (τ−σ)tk

)∣∣∣+

n∑k=0

∣∣∣x1(σ+ (τ−σ)(1− t ′k ),σ+ (τ−σ)(1− t ′k+1)

)∣∣∣)×

( n∑k=0

∣∣∣y1

(σ+ (τ−σ)tk+1,σ+ (τ−σ)tk

)∣∣∣+

n∑k=0

∣∣∣y1

(σ+ (τ−σ)(1− t ′k ),σ+ (τ−σ)(1− t ′k+1)

)∣∣∣)=

n∑k=0

|ϕ(tk+1, tk )|+n∑

k=0|ϕ(1− t ′k+1,1− t ′k )|

210

Page 219: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

+ n∑

k=0|ψ1(tk+1, tk )|+

n∑k=0

|ψ1(1− t ′k+1,1− t ′k )|

× n∑

k=0|ψ2(tk+1, tk )|+

n∑k=0

|ψ2(1− t ′k+1,1− t ′k )|

≤ 16 ·721/m(τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ(1+ 2

) n∑k=0

(dθk −dθ

k+1)+n∑

k=0(d ′θ

k −d ′θk+1)

+4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,2m,θ/2

(1+ 2

) ·4 ·721/2m(τ−σ)θ/2∥y1∥B,2m,θ/2(1+ 2

) n∑

k=0(dθ/2

k −dθ/2k+1)+

n∑k=0

(d ′θ/2k −d ′θ/2

k+1)2

= 16 ·721/m(τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ(1+ 2

)(dθ

0 −dθn+1 +d ′θ

0 −d ′θn+1

)+16 ·721/m(τ−σ)θ∥x1∥B,2m,θ/2∥y1∥B,2m,θ/2

(1+ 2

)2(dθ/2

0 −dθ/2n+1 +d ′θ/2

0 −d ′θ/2n+1

)2.

故に,n →∞のとき

tn+1 → 0, t ′n+1 → 0, dn+1 → 0, d ′n+1 → 0

に注意すると∣∣∣Cx,y(σ,τ

)∣∣∣≤ 16 ·721/m(τ−σ)θ∥Cx,y∥B,m,θ

(1+ 2

)2

+16 ·721/m(τ−σ)θ∥x1∥B,2m,θ/2∥y1∥B,2m,θ/2(1+ 2

)24

≤ 32 ·721/m(τ−σ)θ(1+ 2

)(∥Cx,y∥B,m,θ+2(1+ 2

)∥x1∥B,2m,θ/2∥y1∥B,2m,θ/2

).

これは命題 8.1(ii)の主張である.

補題 A.1′′′. m ∈ [1,∞), θ ∈ (0,1]とする.ψ ∈C ([0,1]2 → V )は次をみたすとする.ある0 < B <∞に対して Ï

[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ(s, t )||t − s|θ/2+2/m

)m

dsdt ≤ B.

このとき

∃(tn)∞n=0, ∃(t ′n)∞n=0

211

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s.t.

0 < t0 < 1, t ′0 = 1− t0,

0 < tn+1 < dn = (12

) 2mmθ+4 tn , 0 < t ′n+1 < d ′

n = (12

) 2mmθ+4 t ′n ,

|ψ(tn+1, tn)| ≤ 4 · (4B)1/m(1+ 4

)(dθ/2

n −dθ/2n+1),

|ψ(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 · (4B)1/m(1+ 4

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1).

証明 先の補題 A.1と全く同じように

J(t ) =∫

[0,1]\t

( |ψ(s, t )||t − s|θ/2+2/m

)mds

とおくと,仮定より ∫1

0J(t )dt ≤ B.

1 0 < ∃t0 < 1 s.t. J(t0) ≤ B.

...⃝ F = t ∈ (0,1) ; J(t ) > Bとおくと,λ(F ) = 0 or λ(F ) > 0. λ(F ) > 0のときは

B ≥∫1

0J(t )dt ≥

∫F

J(t )dt > Bλ(F )

より λ(F ) < 1. よって (0,1) \ F = ;.

2 0 < ∀τ< 1に対して

0 < ∃tτ < dτ =(1

2

) 2mmθ+4τ s.t. J(tτ) ≤ 2B

dτ,( |ψ(tτ,τ)|

|τ− tτ|θ/2+2/m

)m ≤ 2J(τ)

dτ.

...⃝ (0, dτ)の部分集合 F (1), F (2)を

F (1) = t ∈ (0, dτ) ; J(t ) > 2B

dτ,

F (2) = t ∈ (0, dτ) ;

( |ψ(t ,τ)||τ− t |θ/2+2/m

)m > 2J(τ)

とおくと,λ(F (1)) < dτ

2 , λ(F (2)) < dτ

2 . このことから (0,1) \(F (1) ∪F (2)

) = ;.

3 1と 2より

∃(tn)∞n=0 s.t.

0 < t0 < 1, 0 < tn+1 < dn := (12

) 2mmθ+4 tn ,

J(t0) ≤ B,

J(tn+1) ≤ 2B

dn,( |ψ(tn+1, tn)||tn − tn+1|θ/2+2/m

)m ≤ 2J(tn)

dn.

212

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4 ∀n ≥ 0に対して

|tn − tn+1|θ/2+2/m ≤ tθ/2+2/mn = 2dθ/2+2/m

n

= 4(dθ/2+2/m

n − 12 dθ/2+2/m

n

)≤ 4

(dθ/2+2/m

n −dθ/2+2/mn+1

)であるから,3より

|ψ(tn+1, tn)| ≤(2J(tn)

dn

)1/m |tn − tn+1|θ/2+2/m

≤ 4(4B)1/m( 1

dn dn−1

)1/m(dθ/2+2/m

n −dθ/2+2/mn+1

)= 4(4B)1/m

∫dn

dn+1

( 1

dn dn−1

)1/mduθ/2+2/m

≤ 4(4B)1/m∫dn

dn+1

( 1

u2

)1/mduθ/2+2/m

= 4(4B)1/m∫dn

dn+1

u−2/m(θ2 + 2

m

)uθ/2+2/m−1du

= 4(4B)1/m(1+ 4

)(dθ/2

n −dθ/2n+1

).

5 1 ∼ 4の計算を ψ(·,∗)の代わりにψ(1−·,1−∗)に対して行なう.∫[0,1]\1−t0

( |ψ(1− s,1− (1− t0))||1− t0 − s|θ/2+2/m

)m

ds =∫

[0,1]\t0

( |ψ(s, t0)||t0 − s|θ/2+2/m

)m

ds

= J(t0) ≤ B

に注意すれば

∃(t ′n)∞n=0 s.t.t ′0 = 1− t0, 0 < t ′n+1 < d ′

n := (12

) 2mmθ+4 t ′n ,

|ψ(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4(4B)1/m(1+ 4

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1

).

命題 8.1(i)の証明 ∥x1∥B,m,θ/2 <∞とする.0 ≤σ< τ≤ 1を任意にfixし,ψ ∈C ([0,1]2 →Rd )を次のように定義する:

ψ(s, t ) := x1(σ+ (τ−σ)(s ∧ t ),σ+ (τ−σ)(s ∨ t )

).

このとき Ï[0,1]2\(s,s) ;0≤s≤1

( |ψ(s, t )||t − s|θ/2+2/m

)m

dsdt

= 2Ï

0≤s<t≤1

( |x1(σ+ (τ−σ)s,σ+ (τ−σ)t

)||t − s|θ/2+2/m

)m

dsdt

213

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= 2Ï

σ≤s<t≤τ

(|x1

(s, t

)|( |t−s|τ−σ

)θ/2+2/m

)mdsdt

(τ−σ)2

= 2(τ−σ)mθ/2Ï

σ≤s<t≤τ

( |x1(s, t

)||t − s|θ/2+2/m

)m

dsdt

≤ 2(τ−σ)mθ/2∥x1∥mB,m,θ/2

= 2((τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2

)m

であるから補題 A.1′′′より

∃(tn)∞n=0, ∃(t ′n)∞n=0

s.t.|ψ(tn+1, tn)| ≤ 4 ·81/m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2

(1+ 4

)(dθ/2

n −dθ/2n+1),

|ψ(1− t ′n+1,1− t ′n)| ≤ 4 ·81/m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2(1+ 4

)(d ′θ/2

n −d ′θ/2n+1).

よって ∣∣∣x1(σ+ (τ−σ)tn+1,σ+ (τ−σ)(1− t ′n+1)

)∣∣∣=

∣∣∣ n∑k=0

x1(σ+ (τ−σ)tk+1,σ+ (τ−σ)tk

)+

n∑k=0

x1(σ+ (τ−σ)(1− t ′k ),σ+ (τ−σ)(1− t ′k+1)

)∣∣∣=

∣∣∣ n∑k=0

ψ(tk+1, tk )+n∑

k=0ψ(1− t ′k+1,1− t ′k )

∣∣∣≤

n∑k=0

|ψ(tk+1, tk )|+n∑

k=0|ψ(1− t ′k+1,1− t ′k )|

≤ 4 ·81/m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2(1+ 4

)(dθ/2

0 −dθ/2n+1 +d ′θ/2

0 −d ′θ/2n+1

)≤ 8 ·81/m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2

(1+ 4

).

最後に,n →∞とすると

|x1(σ,τ

)| ≤ 8 ·81/m(τ−σ)θ/2∥x1∥B,m,θ/2(1+ 4

).

これは命題 8.1(i)の主張である.

A.2. 命題 8.2の証明肝心な部分は,重川 [23]の命題 2.14を見てもらうことにして,ここではこれを使う

ことにより,命題 8.2が如何に証明できるのかを見る.

214

Page 223: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

各 k ∈ 0,1,2, . . .に対して,Hk を k 次の重複Wiener積分の空間とし,L2(W d ,µ)でのHk への直交射影を Jk とする.

くだん

件の命題より,Hk は Lq(W d ,µ) (q ≥ 2)の閉部分空間で

∥F∥L2 ≤ ∥F∥Lq ≤ (q −1)k/2∥F∥L2 , F ∈Hk (A.1)

が成り立つ.今

G ∈H0 ⊕·· ·⊕HN

であるから

G =N∑

k=0JkG .

このことから

∥G∥L2 =( N∑

k=0∥JkG∥2

L2

)1/2 ≥ 1pN +1

N∑k=0

∥JkG∥L2 ,

∥G∥Lq = ∥N∑

k=0JkG∥Lq ≤

N∑k=0

∥JkG∥Lq .

ここで (A.1),そして上の第 1の評価式より

∥G∥Lq ≤N∑

k=0(q −1)k/2∥JkG∥L2

≤ (q −1)N/2N∑

k=0∥JkG∥L2

≤ (q −1)N/2p

N +1∥G∥L2 .

よってCN ,q = ((q −1)N (N +1)

)1/2として命題 8.2の主張は成り立つのである.

A.3. (8.22)の確認(w(t )−w(n)(t )

)0≤t≤1 Í (w(n)(t )

)0≤t≤1を checkすればよい.

w(t )−w(n)(t ), w(n)(s) ; 0 ≤

t , s ≤ 1は平均ゼロの Gauss系であるので

E[(

w(t )−w(n)(t ))⊗w(n)(s)

]= 0, 0 ≤ t , s ≤ 1

を示せばよい.k, l = 0, . . . ,2n −1に対して

k

2n≤ t ≤ k +1

2n,

l

2n≤ s ≤ l +1

2n

215

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とする.(8.6)より

E[(

w(t )−w(n)(t ))⊗w(n)(s)

]= E

[(−(2n t −k)

(w

(k +1

2n

)−w(t ))+ (k +1−2n t )

(w(t )−w

( k

2n

)))⊗

((2n s − l)w

( l +1

2n

)+ (l +1−2n s)w( l

2n

))]=−(2n t −k)(2n s − l)E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l +1

2n

)]− (2n t −k)(l +1−2n s)E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l

2n

)]+ (k +1−2n t )(2n s − l)E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗w( l +1

2n

)]+ (k +1−2n t )(l +1−2n s)E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗w( l

2n

)].

簡単のため

Bτ :=σ(w(r) ; 0 ≤ r ≤ τ

), 0 ≤ τ≤ 1

とする.

Case 1 k = l のとき.このときは

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l +1

2n

)]= E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

(k +1

2n

)]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗ (

w(k +1

2n

)−w(t ))]

+E

[E

[w

(k +1

2n

)−w(t )∣∣∣ Bt

]⊗w(t )

]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗ (

w(k +1

2n

)−w(t ))]

= (k +1

2n− t

)E[w(1)⊗w(1)]

[...⃝ w

(k +1

2n

)−w(t )d=

√k +1

2n− t w(1)

],

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l

2n

)]= E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( k

2n

)]= E

[E

[w

(k +1

2n

)−w(t )∣∣∣ Bt

]⊗w

( k

2n

)]= 0,

216

Page 225: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l +1

2n

)]= E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w(k +1

2n

)]= E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗E[

w(k +1

2n

) ∣∣∣ Bt

]]= E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗w(t )]

= E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗ (w(t )−w

( k

2n

))]= (

t − k

2n

)E[w(1)⊗w(1)],

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l

2n

)]= E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( k

2n

)]= E

[E

[w(t )−w

( k

2n

) ∣∣∣ Bk/2n

]⊗w

( k

2n

)]= 0.

よって

E[(

w(t )−w(n)(t ))⊗w(n)(s)

]=−(2n t −k)(2n s − l)

1

2n(k +1−2n t )E[w(1)⊗w(1)]

+ (k +1−2n t )(2n s − l)1

2n(2n t −k)E[w(1)⊗w(1)]

= 0.

Case 2 k > l のとき.このときは k ≥ l +1,よって

k +1

2n≥ t ≥ k

2n≥ l +1

2n≥ s ≥ l

2n

であるので

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l +1

2n

)]= E

[E

[w

(k +1

2n

)−w(t )∣∣∣ Bt

]⊗w

( l +1

2n

)]= 0,

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l

2n

)]= E

[E

[w

(k +1

2n

)−w(t )∣∣∣ Bt

]⊗w

( l

2n

)]= 0,

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l +1

2n

)]= E

[E

[w(t )−w

( k

2n

) ∣∣∣ Bk/2n

]⊗w

( l +1

2n

)]= 0,

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l

2n

)]= E

[E

[w(t )−w

( k

2n

) ∣∣∣ Bk/2n

]⊗w

( l

2n

)]= 0.

よって

E[(

w(t )−w(n)(t ))⊗w(n)(s)

]= 0.

217

Page 226: Roughpathanalysis 入門 - 京都大学...われていたから,それ以外の人達にはそこのところを適当に読み飛ばさなければなら ず読み辛かったかもしれない.)

Case 3 k < l のとき.このときは k +1 ≤ l,よって

k

2n≤ t ≤ k +1

2n≤ l

2n≤ s ≤ l +1

2n

であるので

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l +1

2n

)]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗E

[w

( l +1

2n

) ∣∣∣ B k+12n

]]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

(k +1

2n

)]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗ (

w(k +1

2n

)−w(t ))]

= (k +1

2n− t

)E[w(1)⊗w(1)],

E[(

w(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

( l

2n

)]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗E

[w

( l

2n

) ∣∣∣ B k+12n

]]= E

[(w

(k +1

2n

)−w(t ))⊗w

(k +1

2n

)]= (k +1

2n− t

)E[w(1)⊗w(1)],

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l +1

2n

)]= E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗E[

w( l +1

2n

) ∣∣∣ Bt

]]= E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗w(t )]

= E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗ (w(t )−w

( k

2n

))]= (

t − k

2n

)E[w(1)⊗w(1)],

E[(

w(t )−w( k

2n

))⊗w( l

2n

)]= E

[(w(t )−w

( k

2n

))⊗E[

w( l

2n

) ∣∣∣ Bt

]]= (

t − k

2n

)E[w(1)⊗w(1)].

よって

E[(

w(t )−w(n)(t ))⊗w(n)(s)

]=

−(2n t −k)(2n s − l)

1

2n(k +1−2n t )

− (2n t −k)(l +1−2n s)1

2n(k +1−2n t )

+ (k +1−2n t )(2n s − l)1

2n(2n t −k)

218

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+ (k +1−2n t )(l +1−2n s)1

2n(2n t −k)

E[w(1)⊗w(1)]

= 0.

219

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参考文献[1] S. Aida (会田茂樹), Rough path analysisとはなんだろうか,阪大確率論セミナー予稿 (2004年 6/22).

[2] S. Aida (会田茂樹), Rough path analysisの確率解析への応用,確率論サマースクール予稿 (2004年 8/18∼21).

[3] J.-M. Bismut, Large deviations and the Malliavin calculus, Progress in Math., 45,

Birkhäuser, 1984.

[4] M. Bruneau, Variation totale d’une fonction, Lecture Notes in Math., 413 (1974).

[5] Z. Ciesielski, On the isomorphisms of the spaces Hα and m, Bull. Acad. Polon. Sci.,

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223

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おわりにサマースクールの講師の件は,昨年 (2003年)の大シンポのときに頼まれました.し

かし,時間が十分にあるからとそれには全く手を付けず注43,実際にや

遣り出したのが 6

月の下旬で注44,“はじめに”に書いたように会田氏の阪大確率論セミナーでのノート[1]を基に,それの計算をしながら原稿を書くということをし,手書き原稿注45が出来たのが 7/20,その日のうちに TEXファイルの入力を開始し,一応,TEX原稿が出来上がったのが 7/27でした.残り 4日間でミスの修正,文章の手直し,そしてイントロ (“はじめに”)の作文・入力を行ない,何とか締切り 7/31に間に合い,予稿 (の pdfファイル)

を九大の深井さんに e-mailで送ったのでした.よくもまぁ~締切りを守れたなと我ながら感心しています.まだ,小生には火事場

の馬鹿力があったんだと気づかされました.もう,これで,どんな、 締、 切、 りも怖くなく

なりました注46.サマースクールの後,予稿に確率部分を書き足す作業を,今度は,ぼちぼち行ない,

何とか夏休みの終わる 9月末にほぼ仕上げ,細かなところを直して (整えて)今回のノートと相成りました.このノートは,ちょっと恥かしい位に証明を書いています.これは,誰かの為という

よりも,小生自身の為です.自分が昔勉強した (読んだ)論文・本を改めて読むとき,その当時は分かっていた証明が直ぐには出来なくて困ることがよくあります.結局,証明を思い出すのではなくその当時の頭に戻して証明を仕直すことになるわけで,そんなときこのようなノートがあると,その手間が軽減されるんじゃないかと思ったからです.この rough path analysisに関する (私的と云っていいかもしれない注47)ノートが,少

なからず皆さんの役に立ってくれることを願っています.

注43その間は,他の計算をしていました.注44相棒の会田氏には何かと心配をかけた (やきもきさせた)のではないかと思います.注45A4計算用紙で 200ページ位です.注46これは冗談です.注47備忘録といった性格も多少はあります.昔だったら,それは手書きのものだったのでしょうが,今は TEXなんて代物のおかげで,このような,内容はともかくとして,ちょっと見には,本みたいなものが出来てしまいます.また,これをインターネットを通じて,簡単に,そして一方的に世の中に発表出来てしまうので,恐い (しかし便利な)世の中です.努めて,正確な間違いのないことを発信しないといけないなと思っています.

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索引定義定義 1.1 1定義 1.2 7定義 1.3 7定義 2.1 14定義 3.1 29定義 3.2 29定義 3.3 30定義 3.4 30定義 3.5 33定義 4.1 36定義 4.2 37定義 4.3 37定義 4.4 42定義 4.5 45定義 4.6 46定義 4.7 51定義 4.8 51定義 4.9 53定義 4.10 54定義 4.11 68定義 5.1 89定義 6.1 100定義 6.2 102定義 7.1 113定義 7.2 114定義 7.3 115定義 7.4 115定義 7.5 116定義 7.6 129定義 7.7 136定義 8.1 148定義 8.2 155定義 8.3 155

Claim

Claim 1.1 1Claim 1.2 7Claim 2.1 14Claim 2.2 15Claim 2.3 21Claim 3.1 30Claim 3.2 32Claim 4.1 37Claim 4.2 45Claim 4.3 54Claim 4.4 61Claim 4.5 68Claim 4.6 72Claim 4.7 76Claim 4.8 78Claim 4.9 80Claim 5.1 90Claim 5.2 93Claim 6.1 100Claim 7.1 127Claim 7.1′′′ 129Claim 7.2 132Claim 7.3 136Claim 7.4 142Claim 8.1 172Claim 9.1 178Claim 9.2 185Claim 9.3 186Claim 9.4 199

命題命題 2.1 16命題 4.1 52命題 4.2 71命題 8.1 155命題 8.2 155命題 9.1 176

定理定理 1.1 5定理 2.1 19定理 2.2 24定理 3.1 33定理 3.2 33定理 4.1 41定理 4.2 42定理 4.3 42定理 4.4 72定理 5.1 89定理 6.1 104定理 6.2 105定理 7.1 132定理 7.2 135定理 7.3 136定理 7.4 141定理 8.1 150定理 8.2 150定理 9.1 177定理 9.2 192定理 9.3 202

系系 2.1 27系 3.1 33系 3.2 34系 4.1 59系 6.1 111系 6.2 112系 7.1 124系 9.1 185系 A.1 208

例例 9.1 193例 9.2 196

補題補題 1.1 2補題 4.1 37補題 4.2 39補題 4.3 46補題 4.4 62補題 7.1 117補題 7.2 118補題 7.3 119補題 7.4 120補題 7.5 123補題 7.6 125補題 7.7 139補題 9.1 189補題 A.1 204補題 A.1′′′ 211

注意注意 1.1 2注意 1.2 7注意 2.1 14注意 2.2 19注意 3.1 29注意 3.2 30注意 4.1 54注意 4.2 72注意 4.3 85注意 4.4 86注意 5.1 89注意 6.1 103注意 7.1 114注意 7.2 115注意 7.3 115注意 8.1 146注意 8.2 150注意 9.1 193注意 9.2 198

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