ROM(関節可動域) ROMとは エクササイズ...ROM(関節可動域) エクササイズ...

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ROM( 関節可動域 ) エクササイズ 熊本労災病院 中央リハビリテーション部 ROM とは ROM とは、Range of motion の略で、関節可動域と いう意味です。身体に障害を負い、運動能力が低下す ると関節の動く範囲が狭くなり、ROM が制限されて しまいます。また ROM に制限を受けて関節拘縮が生 じてしまうと日常生活活動が障害され、高齢者では閉 じこもりの原因となる場合もあります。 おもな原因は、筋の拘縮や、骨の病変、運動不足など にあります。(また、外傷や筋の麻痺などで二次的に起 こる場合もあります。) ROM エクササイズの種類 ① 関節可動域の維持および増大を目的とした、 他動的ROMエクササイズ (ROMエクササイズの原則) ② 筋力の増強をも目的とした、自動介助的ROM エクササイズ の二つがあります。 ROM エクササイズの目的 ① 非活動性によっておこる拘縮の予防、及び改善 ② 固有受容器を刺激することによる運動覚、位置覚の 再教育 ③ 関節を動かすことによる関節機能の正常化  ④ 肢位の変化による血流の改善 ⑤ 筋の短縮の予防、及び改善 ⑥ 日常生活動作能力の改善

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ROM( 関節可動域 )      エクササイズ

熊本労災病院中央リハビリテーション部

ROMとはROM とは、Range of motion の略で、関節可動域という意味です。身体に障害を負い、運動能力が低下すると関節の動く範囲が狭くなり、ROM が制限されてしまいます。また ROM に制限を受けて関節拘縮が生じてしまうと日常生活活動が障害され、高齢者では閉じこもりの原因となる場合もあります。おもな原因は、筋の拘縮や、骨の病変、運動不足などにあります。(また、外傷や筋の麻痺などで二次的に起こる場合もあります。)

ROMエクササイズの種類① 関節可動域の維持および増大を目的とした、  他動的ROMエクササイズ  (ROMエクササイズの原則)

② 筋力の増強をも目的とした、自動介助的ROM  エクササイズ

の二つがあります。

ROMエクササイズの目的① 非活動性によっておこる拘縮の予防、及び改善② 固有受容器を刺激することによる運動覚、位置覚の  再教育③ 関節を動かすことによる関節機能の正常化 ④ 肢位の変化による血流の改善⑤ 筋の短縮の予防、及び改善⑥ 日常生活動作能力の改善

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ROMエクササイズの注意点① 運動は疼痛を与えない範囲、もしくはこの範囲をわ  ずかに越える所まで行う (この際の疼痛は、伸張痛  などの数分以内に鎮まる程度でなければならない)。② 運動する関節が安静固定を守るべき場所(関節炎、   炎症症状、術直後などの禁忌状態)でないよう注意  する。 ③ 無理な方向には動かさない④ 対象者のおおよそのROMを知っておく

肩関節(腕の前方挙上)片手で患者の肘を上から、他方で患者の手首を下からつかみ、ゆっくりと上方へ上げていく(痛みの出ない程度に)、頭上にきたとき肘を曲げてもよい(注:腕を引っ張りすぎないこと、意識のない時は肘が額の上程度までを目安とする)。

肩関節(外転・内転)外側より肘を伸ばしたまま側方へ広げる(床に腕がふれるようにして)、ゆっくりと頭上まで(注:90°外転位にて手掌を運動方向へ向ける。意識がない時は肘が耳の高さまでを目安とする)。

関節(外旋・内旋)腕を 90 度外転させ前腕を立て(肘を曲げる)、頭の方向へ、また体側へと動かす。(注:無理に動かさず、腕の重みを利用して、ベッド上に前腕を置く感じで)

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前腕(回内・回外)上肢を体側へおき、肘を立てる(90 度曲げる)。そこで手掌または手背を顔の方へ向け、前腕を回旋させる(注:手関節をひねらないように)。

手関節(掌屈・背屈)肘を立てた位置で、手首を片手で固定し、他方で指を曲げながら手首を前に曲げ、伸ばしながら手首をそらす、手指の運動と一緒に行う(注:指のみ伸ばしすぎないこと)。

肘関節(屈曲・伸展)上体を体側へおき、手指を肩へ、手指をベッドへともっていく(注:強く曲げない、重さを利用する程度で)。

母指(屈伸)手関節を固定し、母指の屈伸を行う。他の手指は前項の手関節の運動と同時に行う。手指全体で丸め込むように曲げ、手のひらで伸ばすようにする。

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股・膝関節の屈曲・伸展膝と踵を下から支え、下肢全体を持ち上げ、膝を胸のほうへ持っていく(注:膝は重力を利用して自然に曲げ、上からは押さないこと)。

下肢伸展挙上膝を伸ばしまま下肢を挙上(70° 程度)する。(注:膝屈筋群の伸張が目的である。挙上していくと膝の屈曲が急に出現する。ごく軽く押さえる程度にとどめ、力を入れて抑え込まないこと)

股関節(外転・内転)踵と膝の下で下肢を持ちあげ(数センチ)、外へ十分に開く(外転に伴い、つま先が外へ向いてくる(下肢外旋)が、常につま先が上を向くように心がける)。注:股関節に既往(手術歴)のある方は十分注意すること)

股関節(内旋・外旋)股・膝関節を90度ぐらいで下肢を保持し、足部を自分側へ(内旋)、反対側へ(外旋)と動かす。注:股関節に既往(手術歴)のある方は十分注意すること)

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足関節(背屈)足部の踵をつかみ、前腕足底を押さえ、他の手で下腿を固定する。踵を引っ張り、腕で足底を押しながら背屈を十分に行う。

まとめ① それぞれの関節の正常なROMを知っておく、また  対象者のおおよそのROMを把握しておくことが必要。② 対象者に安楽な肢位をとらせ、筋緊張を低下させておく。③ 一日最低10回は全ての関節について動かす。④ 痛みを誘発させない。⑤ 可能な限り早期に訓練を開始し、拘縮予防につとめる。