ROAD TEST No 5090 BMW 3-series Touring...BMW 3-series Touring ROAD TEST MODEL TESTED...

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ROAD TEST No 5090 BMW 3-series Touring ビーエムダブリュー3シリーズ・ツーリング BMWの傑作であるF30型3シリーズに、パワフルな6気筒ディーゼルを積んだワゴンが登場。 320dセダンに続く満点評価を、それはわれわれからもぎ取るかに見えたのだが……。 photo: Stuart Price(スチュアート・プライス) WE LIKE 直線路での傑出したパフォーマンス、優れた燃費、心地よく仕上げられた室内 “ラグジュアリー”トリムにはクロームの外装パーツ が多用される。このウィンドウまわりのモールのほ か、テールパイプのフィニッシャーと前後スカートの デコレーションもクローム仕上げだ。 キドニーグリルの縦フィンは、スポーツトリムでは左 右8本ずつで、このラグジュアリートリムでは11本と なる。もっとも、それを数えている暇があったら、クル マを走らせたほうがいい。 ボンネット上には、BMWバッジを頂点としたシンメト リカルな弧が描かれている。水の流れが杭などに当 たって生まれる波のようなビジュアルだ。 このマルチスポーク型18インチホ イールは、日本では328iラグジュ アリーに設定されるもの。欧州で は最大径19インチ(リヤは幅8.5 インチ)も選択できる。 090 AUTOCAR 04/2013

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Page 1: ROAD TEST No 5090 BMW 3-series Touring...BMW 3-series Touring ROAD TEST MODEL TESTED テスト車輌概要 モデル名:330dラグジュアリー 車両本体価格:邦貨換算約600万円

ROAD TEST No 5090

BMW 3-series Touring ビーエムダブリュー3シリーズ・ツーリング

BMWの傑作であるF30型3シリーズに、パワフルな6気筒ディーゼルを積んだワゴンが登場。320dセダンに続く満点評価を、それはわれわれからもぎ取るかに見えたのだが……。photo: Stuart Price(スチュアート・プライス)

WE LIKE 直線路での傑出したパフォーマンス、優れた燃費、心地よく仕上げられた室内

“ラグジュアリー”トリムにはクロームの外装パーツが多用される。このウィンドウまわりのモールのほか、テールパイプのフィニッシャーと前後スカートのデコレーションもクローム仕上げだ。

キドニーグリルの縦フィンは、スポーツトリムでは左右8本ずつで、このラグジュアリートリムでは11本となる。もっとも、それを数えている暇があったら、クルマを走らせたほうがいい。

ボンネット上には、BMWバッジを頂点としたシンメトリカルな弧が描かれている。水の流れが杭などに当たって生まれる波のようなビジュアルだ。

このマルチスポーク型18インチホイールは、日本では328iラグジュアリーに設定されるもの。欧州では最大径19インチ(リヤは幅8.5インチ)も選択できる。

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BMW 3-series Touring ROAD TEST

MODEL TESTED ◎テスト車輌概要

●モデル名:330dラグジュアリー●車両本体価格:邦貨換算約600万円●日本発売時期:未発売●最高出力:258ps/4000rpm●最大トルク:57.1kgm/1500-3000rpm●0-97km/h加速:5.5秒●113-0km/h制動距離:45.0m●最大求心加速度:0.99G●テスト平均燃費:15.1km/ℓ●二酸化炭素排出量:135g/km

WE DON’T LIKE 320dにはおよばない航続距離、運動性能にかかわる装備の選択に注意が必要な点、不十分な標準装備

 “パーフェクトバランス”の6気筒エンジンは初代E21型以来、3シリーズに不可欠のキーアイテムである。最初の6気筒ディーゼルは1985年、E30型に追加された324dだ。その出力はわずか86psだったが、2年後、ターボチャージャー付きの324tdがそれを114psにまで引き上げた。 BMW初のワゴンとなる、初代3シリーズ・ツーリングの登場もこのときである。330dが導入されたのは1999年だ。それは世界初ともいえる真のハイパフォーマンスディーゼルであり、

HISTORY 高性能ディーゼルの先駆け

ルーフラインが伸びたような視覚的効果をもたらすスポイラーが備わる。その下には独立して開閉できるガラスハッチがあり、ゲート全体が開けない状況で活躍する。

荷室の縁はリヤバンパー側へ若干突き出ていて、開口部の下端はスティール製トリムで保護されている。したがって、荷物の積み降ろしでボディに傷をつけたという言い訳はできない。

実用車的ではないスタイリングを演出する傾いたDピラーは、BMW車には重要である。これは、通常なら特徴的なホフマイスターキンクが配されるCピラーに代わるものだからだ。

牽引フックの取り付け位置がおわかりだろうか。万が一、知らないままそれを利用しなければならない状況に陥ったとしても大丈夫だ。なぜなら、リヤバンパーの下から電動で迫り出してくるからだ。

0-100km/h=8.0秒の加速性能を誇った。

1987年、E30型3シリーズでワゴンボディがはじめて設定された。

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ON THE INSIDE

COMMUNICATIONコミュニケーションエクセレント! Bluetoothは標準で、設定は車両側からでも携帯電話側からでもできる。オプションのBMWコネクテッドを選択すれば、iPhone上のアプリを使ってリンクし、インターネットラジオへのアクセスや、携帯電話を使った施錠および解錠、補助ヒーターの電源投入が可能になる。

NAVIGATIONGPSナビゲーション素晴らしい! とくに感心するのが、非常にワイドなプロフェッショナルグレードの8.8インチコントロールスクリーンだ。その分割画面機能はきわめて優秀であ

る。iDriveのロータリーコントローラーによるプログラムもやりやすい。“オススメポイント”のデータベースは膨大なデータ量だが、もう少しナビゲートが簡単だと嬉しい。

ENTERTAINMENTエンターテインメントBMWコネクテッドを選ぶと、ラジオ局の選択の幅が広がる(英国にいてさえ、サンフランシスコのKQED局を聞くことさえできそうなくらいだ)。テスト車両が装備していたオーディオシステムは約5.8万円のシンプルな“ビジネス”グレードだったが、サウンドの明瞭さにもパワーにも不満はなかった。ハーマンカードン製のサラウンドサウンドシステムは約9.4万円のオプションである。

標準のレザーはブラック、ベージュ、そしてこのブラウンから選べる。それ以外の色もオプション設定される。

カップホルダーは小物用トレーの下に隠れている。ホルダーはちょうどいいサイズだが、5シリーズと1シリーズにあるような、キーホルダーを収納するスペースはない。

センターコンソールは、右ハンドル用にきちんとコンバートされている。サラウンドビューカメラとパーキングセンサーは、両手をステアリングから離さず楽に駐車するために便利だ。

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2810mm776mm 1038mm

4624mm 39%

1429mm

49% 51%

840mm min

1110mm max

580mm min

940mm max

910m

m m

in99

0mm

max

970m

m

495-1500 litres

0.31

1811mm1572mm

10.1ºobscured

8.2ºobscured

1531mm

Turn

ing

circle

: 11.3

m

170m

m

Cent

re55m

m

BMW 3-series Touring ROAD TEST

WHEEL AND PEDAL ALIGNMENT ステアリングホイールとペダルの配置

左側には、小さな荷物を収納するのに便利なネットがある。トノカバーはフロアの下に収納が可能だ。

幅:970-1230mm

奥行き:980-1800mm

高さ:430-710mm

FRONTドライビングポジションは低いが、前方視界は良好。とくに左側がよく見える。

HEADLIGHTSハイビームは優秀で、メインビームも必要なレベルよりも明るい。

HOW BIG IS IT? サイズはどれくらい?

VISIBILITY TEST 視認性テスト

リヤシートで移動する乗員にも十分といえる配慮がなされた。もはや後席のスペースにおいて、同クラスのライバルに引けを取ることはない。

ドライビングポジションは調整範囲がきわめて広い。スポーツシートは電動アジャストとヒーターとともにオプションだが、快適でサポート性に優れる。

ドンピシャ。ペダルはふたつとも右足操作にぴったりの位置にあり、その間隔は大きな足であっても十分だ。シートとコラムのアジャスト幅も広いので、脚を真っ直ぐに伸ばしても若干曲げても、絶妙のポジションが決まる。

標準的なシート位置での足元スペース:890mm

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まるで昨年のロードテスト(日本版未掲載)で獲得

した満点評価では十分ではなかったといわん

ばかりに、BMWの3シリーズはさらなる高評価を得

るべく帰ってきた。批評家からの圧倒的な賞賛に刺

激を受けたBMWが、自らの売れ筋であるプレミアム

Dセグメントの増強に関して、それでもなお無為な時

間を過ごしはしなかったのは確実だ。

 昨春に発表されたF30型3シリーズのラインナッ

プは、仕向け地ごとに合理的な取捨選択を経て導

入される。そして英国では現在、135psユニットを積

むエントリーモデルの316iセダンを、約330万円で

オーダー可能である。これは、1.6ℓ直4を搭載する

フォード・モンデオ・エコブーストの最上級グレードより

も安い価格設定だ。さらに、1991年に登場したE34

型525ix以来、久しぶりの4WDセダンとなる320i

xDriveや3シリーズ初の6気筒ディーゼル、さらに

ガソリンエンジンと電気モーターのハイブリッドであ

るActiveHybrid3も選べる。

 そして今や、4ドアセダン以外の選択肢として、実

用性が追求されたワゴンまでが用意されている。こ

れにより、3シリーズのなかでもパフォーマンスと経

済性、実用性、そしてプレミアムな魅力をすべて備え

るだろうモデルの優秀さを確かめる機会が、われわ

れにもたらされた。それこそが、今回テストする

330dツーリングである。

DESIGN&ENGINEERING意匠と技術★★★★★★★★★☆ かつてのBMW車に見られたメカニズム的な多様

性を考えると、3シリーズの顧客に現在用意されて

いる10種類のエンジンのうちで、4気筒ターボでは

ないものが、この330dを含めて3種類のみに限ら

れているのは少々不思議だ。もちろん今後、より高

性能な仕様が追加され、これ以上にパワフルな

ディーゼルモデルも登場するはずではあるが。

 しかし、今回のテスト車のエンジンでも、不満はほ

とんどない。X5やX6に搭載されている“30d”ユニッ

トのアップデート版であり、E90型330dに比べてス

ロットルレスポンスと洗練度、そしてもちろん推進力

で勝っている。最高出力は258ps、最大トルクにい

たっては57.1kgmにも達する。とはいえ、この数値

はもはやセグメントの最高水準ではない。380ps

オーバーの3.0ℓディーゼルが存在するからだ。もっ

とも、このトレンドを生んだのは、ツインターボばかり

かトリプルターボまでも投入した、ほかならぬBMW

自身である。

 3シリーズ・ツーリングのボディは、Bピラーから前

方がセダンと共通で、全長と全幅、それにホイール

ベースが同一だ。しかし、E90型に比べれば全長が

97mm延長されており、その結果、先代よりも居住

性が若干向上している。

 サスペンションもセダンと同様で、フロントがスト

ラット、リヤがマルチリンクだ。5シリーズのようなオー

トセルフレベリングは備えていない。

 エミッションの削減に貢献するZF製の8段A/Tや

“サーボトロニック”可変アシストパワーステアリング

は、330dでは標準装備だ(パワーの劣るエンジンを

選ぶと、どちらもオプションとなる)。ただし、お仕着せ

ですべて込みとしたのは、BMWらしいやり方ではな

い。テスト車に装備される、ドライバーの気分に合わ

せたダンピング制御をセレクトできるアダプティブM

スポーツサスペンションは、車速感応型ではない可

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145km/h 193km/h

29.8s

177km/h

23.1s

48km/h 64 80 97 113km/h 129km/h 161km/h

2.6s 3.7s 9.2s5.3s 7.1s 18.4s11.6s 14.9s

20s10s0 5s 15s 25s

193km/h

21.9s

177km/h

17.7s

48km/h 64 80 97 113km/h 129km/h 145km/h 161km/h

2.1s 3.0 7.1s4.2s 5.5s 14.2s9.1s 11.4s

20s10s0 5s 15s

48-0km/h

48-0km/h

80-0km/h

80-0km/h 113-0km/h

113-0km/h

45.0m

49.4m24.6m

23.2m

8.7m

8.5mDRY

WET

20m10m 40m30m0

Start/finishT1T2

T4

T3

T5 T6

T7

T8

■ドライサーキットBMW330dツーリングラップタイム:1分17秒7ジャガーXF 3.0D S スポーツブレーク参考タイム:1分20秒9

終始、安全で安定した姿勢を保っていたが、ドライハンドリングサーキットの周回では見事なバランスを示した。ESPをもっとも自由度の高いモードに切り替えれば、小さな角度のスリップを許容する。

Start/finishT1

T2

T3

T4

T5T6

T7

TRACK NOTES サーキットテスト

 330dが搭載している57.1kgmを発生する3.0ℓターボディーゼルエンジンのパフォーマンスを直線路でフルに使うと、次のコーナーまではあっという間に到達してしまう。 そのためこの3シリーズ・ツーリングには、ブレーキも優れたものが与えられてい

る。ペダルフィールは良好で、制動力は強力だ。ダンパーを硬いセッティングにしても多少はダイブするが、挙動は十分に抑制されており、動き自体も速くはない。ピッチングあるいはヨーイングの挙動はゆっくり発生し、その後は素早くコーナリング姿勢へと収束していく。

 ターンインは320dや328iのセダンほどシャープではないが、その重量が実測で1735kgあった(320dよりもきっかり200kg重い)ことを考えれば何も不思議ではないだろう。まずまずのグリップを発生してから、限界に近づくにつれて緩やかにアンダーステアに向かうが、これはスロット

ルを戻すか、ブレーキを残してコーナーに進入することで打ち消せる。 ウェット路面では自然に、ドライ路面ではきっかけを与えてやれば、パワーをかけるにつれてオーバーステアに転じる。そのスライドは徐々に増していくため、じつにコントロールしやすい。

ON THE LIMIT 限界時の挙動

BMW330dツーリング

高速コーナーのT4を抜ける際は若干アンダーステア寄りだが、スロットルを多めに開けると容易にそれを抑えることができる。

330dはとても穏やかだ。T5のヘアピン立ち上がりでスロットルを大きく開けたときでさえ、そう思えた。

■ウェットサーキットBMW330dツーリングラップタイム:1分17秒5ジャガーXF 3.0D S スポーツブレーク参考タイム:1分19秒0

後輪駆動ながら、ホイールベースが長めで重量配分が良好な330dは、ウェット路面でも愉しめる。もちろん安全にだ。やはり愉しさは捨てがたい要素だ。

スタビリティコントロールはうまく味付けされている。穏やかに、かつ素早く介入し、即座に駆動力を回復してくれる。

ESPを解除すると、330dはわれわれが望んでいるようなバランスとアジャスタビリティを示す。要するに愉しいのだ。

■発進加速テストトラック条件:乾燥路面/気温12℃0-402m発進加速:14.2秒(到達速度:160.6km/h)0-1000m発進加速:25.8秒(到達速度:205.5km/h)

ジャガーXF 3.0D S スポーツブレーク

■制動距離

97-0km/h制動時間:2.62秒

ON THE ROAD

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変レシオステアリングなどとともにオプションリストを

飾るアイテムだ。

INTERIOR室内★★★★★★★★★☆ 昨年2月にロードテストを行った320dセダンで確

認できたBMWの方法論のほとんどが、この330d

にも当てはまる。キャビンは心地よい。ダッシュボード

はソフトタッチの樹脂が層をなした魅力的デザイン

で、人間工学的に見ても素晴らしい。

 われわれテスターはさまざまな体格の面々が揃っ

ているが、フロントシートは誰もが快適に過ごすこと

ができた。だが、テスト車は電動アジャスト、ランバー

サポート、シートヒーターが備わるオプションのス

ポーツシート(合計で約27万円)を装備していたこと

を考えれば当然かもしれない。調整幅の広いステア

リングコラムのおかげで、ひとつならず複数の快適

なポジションを得ることも可能だろう。

 長年、3シリーズ・ツーリングは、望ましい水準まで

追求された経済性と、研ぎ澄まされたプロポーショ

ンを誇ってきた。この新型も、まさしく1mmたりとも無

駄に大きくはなってはいない。われわれのテストにお

ける、“標準的なシート位置”での後席の“足元スペー

ス”は、ドライバーに890mm(平均値)のスペースを

与えたときに残された数値を表示しているのだが、

今回はきっかり890mmだった。後席のヘッドルーム

は完璧に許容範囲である。

 プレミアムカーを所有することによる犠牲がある

とすれば、それはトランクだ。このクルマの荷室容積

は495ℓで、これは競合車よりも大きく、セダンモデ

ルに比べるとトノカバー下の容積は15ℓも上回って

いるが、それでも巨大というほどではない。シートを

倒せば1500ℓにまで拡大するが、これはフォード・モ

ンデオやプジョー508といった安価な大衆車よりも

小さいのだ。価格の高さはパフォーマンスとステー

タスに見合っているが、スペースも対価に含まれて

いるとは言い難い。

 テールゲートは全体だけでなく、リヤスクリーンの

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BMW 3-series Touring ROAD TEST

この3シリーズは、もっと高価なX5とX6よりも先に、アップデートされたエンジンの恩恵を受ける。

新しいインジェクションシステムと軽量なタービンや内部パーツによって、さらなるパワーと経済性を得ている。

 カーフリークであれば、BMWのコードネームには少なからぬ興味がそそられるだろう。その数字からは、そのモノの成り立ちを読み解くことができるからだ。 この新型330dのエンジンには、N57D3001のコードネームが与えられている。末尾が“00”のユニットは、E90型330dや現行X5/X6のパワーソースだ。“01”はその発展型ユニットで、すでに530d、730d、X3 xDrive30dに搭載されている。 “01”はより軽量なだけでなく、フリクションの少ない内部パーツや新型の高圧フューエルインジェクションシステム、ツインスクロール可変ジオメトリーターボチャージャー、軽量化されたコンプレッサーローターによって、出力が13ps、トルクが2kgm増強されている。加えて、BMWによれば、標準装備の8段A/Tとの組み合わせでは燃費が15%向上し、スロットルレスポンスも鋭く、機械的な洗練度も高まっているという。 N57系列にはN57D30T1や、よりパワフルなN57Sといったトリプルターボ仕様も存在する。3シリーズへの採用や、“M”ディーゼルの登場にも期待が高まるところだ。

コンフォートモードでの乗り心地は、クラス最高レベルといっても過言ではない。

UNDER THE SKIN コードネームの豆知識

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の平均である15.1km/ℓを上回る燃費となるだろう。

なお、法定速度で高速道路を長距離走行した際に

は19.0km/ℓを達成した。エコランを心がければ、そ

れ以上も可能だろう。

 燃料タンク容量は57ℓで、航続距離は850kmほ

どになる。決して悪くはないが、最低でも1000km

弱、さらには1100kmというライバル車が存在する

ことを考慮すると、やや見劣りする印象だ。ただ、欠

点と見なすほどではない

RIDE&HANDLING乗り心地と操縦安定性★★★★★★★★★☆ まずはじめに、オプションについて説明しておこ

う。テスト車両は約11万円のアダプティブMスポー

ツサスペンション(ダンパーの減衰力をダッシュボー

ド上のスイッチで選択できる)と、約3.6万円のバリア

ブルスポーツステアリング(舵角が増すほどにクイッ

 ファミリー向けワゴンがハイエンドスポーツカーと

同等の速さである必要はないという意見もあるだろ

うが、このクルマのそれは安心感のある速さであり、

すぐに慣れるはずだ。4速ギヤで80-113km/hが

2.7秒という性能は、現実世界でも高速道路の合流

などで役立つ。シフトアップを伴う48-113km/h加

速が5.1秒という実力も同様だ。

 目覚ましい直線での加速力に加え、現代の6気筒

ディーゼルとしては比類なきスロットルレスポンスも

特筆すべき点である。そして8段A/Tは反応に優れ、

パドルシフトの応答性はメルセデスのユニットをはる

かにしのぐ。制御も賢い。

 とはいえ、最大の長所はもちろん経済性である。

330dツーリングをわれわれのパフォーマンステスト

並みに全開で走らせると、燃費は6.2km/ℓとなる。

これは前述のフェラーリが日常的な運転で残す数字

とほぼ同じだ。良識的な範囲内で活発に走らせてい

る範囲であれば、われわれが記録したテスト全体で

みの開閉も可能で、電動機構が標準だ。テスト車は

オプションの“コンフォートアクセス”を装備していた

が、これはリヤバンパー下で動かした足をセンサー

で感知し、トランクを開けるギミックである。

PERFORMANCE動力性能★★★★★★★★★★ 全般的にクルマは年を追うごとに速くなる一方だ

が、それにしてもこの事実には驚いてしまう。新車の

状態を維持したフェラーリ348tbが存在したとして、

それを全開で走らせてみても、このディーゼルのワ

ゴンよりも間違いなく遅いのである。

 燃料満タンで2名乗車した330dツーリングは、こ

こMIRAのテストコースで5.5秒で97km/hに達し、

0-402mでは14.2秒を記録した。これは誇張でもな

んでもなく、20年前のジュニア級スーパーカー並み

の速さだといっていい。

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一部バックナンバーは www.autocar.jp に掲載されています。

0 02000 4000 60000

Engine (rpm)

258ps4000rpm

Powe

r out

put (

ps) Torque (kgm

)14

28

55

41

83

69

97304

101

51

253

203

152

57.1kgm1500-3000rpm

57 litres

12345

64km/h 5500rpm

85km/h 5500rpm

127km/h 5500rpm

159km/h 5500rpm

6 250km/h 5143rpm

208km/h 5500rpm

78

250km/h 4315rpm

250km/h* 3430rpm* claimed

■エンジン駆動方式:縦置き後輪駆動形式:直列6気筒ターボ, 2993ccブロック/ヘッド:アルミ軽合金ボア×ストローク:φ84.0×90.0mm圧縮比:16.5:1バルブ配置:4バルブDOHC最高出力:258ps/4000rpm最大トルク:57.1kgm/1500-3000rpm許容回転数:5500rpm馬力荷重比:154ps/tトルク荷重比:34.0kgm/t比出力:86.2ps/ℓ

■メカニカルレイアウト伝統的なBMWの文法どおり、直列6気筒を縦置きした後輪駆動レイアウトを採る。シャシーは高強度スティール製で、ボディパネルやサスペンションにはアルミや強化プラスティックなどの軽量素材も用いられる。重量物を後方へ配置し、前後重量配分は49:51を実現した。320dセダンの50:50よりわずかにリヤ寄りだ。

■燃料消費率オートカー実測値 消費率総平均 15.1km/ℓツーリング 19.0km/ℓ動力性能計測時 6.2km/ℓメーカー公表値 消費率市街地 15.9km/ℓ郊外 22.2km/ℓ混合 19.6km/ℓ燃料タンク容量 57ℓ現実的な航続距離 859kmCO₂排出量 135g/km

■発進加速実測車速mph(km/h) 秒

30 (48) 2.1

40 (64) 3.0

50 (80) 4.2

60 (97) 5.5

70 (113) 7.1

80 (129) 9.1

90 (145) 11.4

100 (161) 14.2

110 (177) 17.7

120 (193) 21.9

130 (209) 27.2

140 (225) -

150 (241) -

■サスペンション前:マクファーソン・ストラット/コイル +スタビライザー後:マルチリンク/コイル+スタビライザー

■ステアリング形式:ラック&ピニオン(電動アシスト)ロック・トゥ・ロック:2.2回転最小回転半径:5.65m

■ブレーキ前:通気冷却式ディスク後:通気冷却式ディスク

■中間加速〈秒〉mph (km/h) 2nd 3rd 4th 5th 6th 7th 8th

20-40 (32-64) 1.7 2.0 - - - - -

30-50 (40-80) 3.0 2.1 2.6 3.7 5.5 - -

40-60 (64-97) - 2.5 2.7 3.6 4.7 6.3 -

50-70 (80-113) - 3.2 2.7 3.6 4.8 6.0 8.8

60-80 (97-129) - - 3.3 3.8 5.0 6.2 8.1

70-90 (113-145) - - 4.8 4.3 5.1 6.4 8.6

80-100 (129-161) - - - 5.1 5.5 6.6 9.2

90-110 (145-177) - - - 7.0 6.4 7.1 9.9

100-120 (161-193) - - - - 7.5 8.1 -

110-130 (177-209) - - - - 9.3 - -

120-140 (193-225) - - - - - - -

130-150 (209-241) - - - - - - -

140-160 (193-257) - - - - - - -

■シャシー/ボディ構造:スティールモノコック車両重量:1680/1735kg(実測)抗力係数:0.31ホイール:7.5J×18inタイヤ:225/45R18スペアタイヤ:なし(ランフラット)■変速機形式:8段オートマティックギヤ比/1000rpm時車速〈km/h〉①4.17/11.6②3.14/15.4③2.11/23.0④1.67/29.1⑤1.29/37.8⑥1.00/48.4⑦0.84/57.8⑧0.67/72.7最終減速比:2.56

■安全装備アイドリング:未計測3速最高回転時:未計測3速48km/h走行時:未計測3速80km/h走行時:未計測3速113km/h走行時:未計測

■安全装備DSC, DTC, CBCEuro N CAP/ 5つ星乗員保護性能/成人:95%, 子供:84%歩行者保護性能:78%安全補助装置性能:86%

注意事項:馬力荷重比とトルク荷重比の計算にはメーカー公称車両重量を使用しています。 © Autocar 2013. テスト結果は権利者の書面による承諾なしに転用することはできません。

ゼロヨン加速のタイムは、1990年代前半のMモデル並みだ。1992年のE36型M3は13.9秒、E34型M5は13.7秒だった。

320dセダンにわずか1.1km/ℓ劣るのみという燃費は、このパフォーマンスとワゴンであることを考慮すれば、特筆に値する。

ROAD TEST

14.2秒

19.0km/ℓ

■今月の数字

■最高速

SPECIFICATIONS 計測テストデータ

DATA LOG

■エンジン性能曲線

096 AUTOCAR 04/2013

クになる)を備えていた。

 金属スプリング(硬さはトリムレベルで変わる)が

標準だが、アダプティブダンピングでは、330dに標

準のランフラットタイヤでも、乗り心地が許容レベル

になる。コンフォート(ほかにはスポーツとスポーツプ

ラスがある)モードならば、ジャガーXFのようなしな

やかさとは異なるが、ドイツ製のライバルに比べて

乗り心地に関する心配は何もない。騒音はテスト機

器が故障中で測定できなかったが、同じ価格帯のど

のクルマと比べてもなんら遜色ないレベルの洗練

度を備えていたのは確かだ。

 ほかの面でも、330dは高さのあるリアボディの追

加による悪影響をほとんど受けていないように思わ

れる。その乗り心地、回頭性、ハンドリングには、3シ

リーズ・セダンと同じ威厳がある。それはすなわち、ド

ライビングがかなりいいということを意味している。

ステアリングはなめらかで、認識できるロードフィー

ルは少ないものの、正確かつレスポンシブで、フリク

ション感は皆無だ。

 ハンドリングは、最新世代の3シリーズにわれわれ

が期待するとおり、敏捷にして確実である。優れた

バランスを示し、ロールとピッチングとダイブは走り

を味わうのにちょうどいい具合だ。

 ドライでもウェットでも、コンディションを問わずブ

レーキは良好である。とくにウェット路面での性能は

優秀で、113km/hから50m以内の距離で停止でき

た。これは素晴らしい成績だ。

BUYING&OWNING購入と維持★★★★★★★★★☆ BMWは英国で目覚ましい販売実績を挙げている

が、それはおもに社用車部門の好調によってもたら

されている。ディーゼルモデルを、税制優遇に配慮

した競争力の高い価格で提供できたおかげである。

また、搭載されるエンジンは、もっともエミッションの

少ない部類に入る。それは、これだけのパワーとパ

フォーマンスを持ちながら、330dツーリングにも当

てはまる。もっとも課税率が低いライバル車と比べ

ても、3つは下の課税枠に収まるのだ。おかげで、こ

のクルマを社用車として使うと、メルセデス・ベンツC

クラスやアウディA4に比べて、1年間で約6.5万円

の経費が浮くことになる。

 リセールバリューも高く、通常の小売市場と社用

車市場のいずれにおいても、それがこのクルマの価

値を高めている。唯一の悩みの種はオプションの費

用と、選ぶオプションの数である。カタログをじっくり

と見るまでもなく、追加装備の価格はすぐに本体価

格の25%に達する。セールスマンは、装備していな

いと手放すときに買い手が付かない要因となりそう

な最低限のオプションを、商談の際には話題に上ら

せるはずだ。そうなれば、少なくとも45万円程度の

追加オーダーなしには、ショールームを出るのはむ

ずかしいかもしれない。だが、在庫が十分あるクルマ

だけに、ためらわずに値切るべきだ(これらはあくま

でも英国での話、のはずだが)。

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Page 8: ROAD TEST No 5090 BMW 3-series Touring...BMW 3-series Touring ROAD TEST MODEL TESTED テスト車輌概要 モデル名:330dラグジュアリー 車両本体価格:邦貨換算約600万円

われわれはこう考える

速くて燃費に優れ、運転が愉しく、所有欲もかき立てられる。実用性を考えた現実的なクルマ選びなら、新車としてベストの一台。

プレミアムブランドのようなバッジの威光には欠けているが、それを補うバリューと運動性能、機敏さ、速さを備えている。

スペックは魅力的だが、ドライビングはそれほどでもない。実力が高く、競争力もあるが、平凡に感じられる。

330dにはおよばないが依然として魅力的で、実用的で、洗練度が高い。

まったく観点の異なる選択肢だが、スマートなルックスと快適なキャビンを備え、魅力は多い。ただし、やや小さい。

4th 5th3rd2nd1st

BMW 3-series Touring ROAD TEST

このラグジュアリートリムを選択した3シリーズの仕上げ品質は、われわれの目からすれば、派手なスポーツトリムのそれより好ましく思える。 マット・プライアー

カップホルダーの上にカバーがほしいのなら装着可能だが、面倒なことに、そのためにはグローブボックスから外さなければならない。 マット・ソーンダース

JOBS FOR THEFACELIFT●マイナーチェンジ時に望むこと

プロフェッショナル・マルチメディアパッケージは高価に思えるが、きっとリセールバリューを高めてくれるだろう。アダプティブサスペンションも同様だ。その点ではおそらくスポーツトリムのほうが、ラグジュアリートリムよりもベターな選択である。

・燃料タンクの容量を増やしてほしい。・いくつかの必須のオプションを標準装

備にしてほしい。・ほかにはほとんどない。

ROAD TEST

AUTOCAR VERDICT ●オートカーの結論

BMW 330d Touring「ディーゼルBMWの新たなランドマークの誕生だ。 オプションを加えると高額だが、相応の価値がある」

めざとい読者諸兄は、この330dツーリングの評価が、われわれが昨年テストした320dセダンの評価(日本

版では未掲載)よりも星がひとつだけ少ないことに気づいたかもしれない。 今回も満点評価を与えたい誘惑に駆られたのは確かだ。なぜならこの330dツーリングは、あらゆる点において320dセダンよりもドライビングが愉しいクルマだからだ。しかしながらわれわれは、その素晴らしさに付随するペナルティに対する感情を、完全にぬぐい去ることができな

かった。それが星ひとつ分の減点につながったのだ。 そのペナルティとは、330dツーリングの理想のドライビング体験を得るためには、内容に対して過度に高いとは思わずにすむ320dツーリングの491万円という予算を、邦貨換算約600万円にまで、大幅に拡大する必要があるという点にほかならない。 けれどそれは、このクルマのパワートレインの稀に見る素晴らしさを損なうものではない。そのパフォーマンスと経済性は最上級である。

TESTERS’ NOTES●テスターのひと言コメント

SPEC ADVICE●購入にあたっての助言

★★★★★★★★★☆

No 5090

結論

車両価格最高出力最大トルク0-97km/h加速最高速度燃料消費率(混合)車両重量(公称値)CO₂排出量

★★★★★★★★★☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★★☆☆ ★★★★★★★☆☆☆ ★★★★★★★☆☆☆

邦貨換算約600万円 邦貨換算約570万円 邦貨換算約400万円 邦貨換算約610万円 邦貨換算約680万円258ps/4000rpm 265ps/3800rpm 200ps/3500rpm 215ps/4000rpm 245ps/4000-4500rpm57.1kgm/1500-3000rpm 63.2kgm/1600-2400rpm 42.9kgm/1750-3000rpm 44.8kgm/1500-3000rpm 50.9kgm/1400-3250rpm5.5秒 6.3秒(0-100km/h公称) 8.6秒(0-100km/h公称) 7.7秒(0-100km/h公称) 6.1秒(0-100km/h公称)250km/h(リミッター) 250km/h(リミッター) 215km/h 225km/h 250km/h(リミッター)19.6km/ℓ 16.7km/ℓ 15.4km/ℓ 15.6km/ℓ 17.0km/ℓ1680kg 1760kg 1615kg 1760kg 1725kg135g/km 159g/km 173g/km 169g/km 164g/km

FORDMondeo 2.2 TDCi Titanium Sportフォード・モンデオ2.2CDIタイタニアム・スポーツ

AUDIA4 3.0 TDI quattro AvantアウディA43.0TDIクワトロアバント

MERCEDES-BENZC350 CDI AMG Sport estateメルセデス・ベンツC350CDIAMGスポーツ・ステーションワゴン

VOLVOV60 D5 R-Design LuxボルボV60Rデザイン・ラックス

TOP FIVE

BMW330d Touring LuxuryBMW330dツーリングラグジュアリー

097www.autocar.jp

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