QIAGEN eyes

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Sample & Assay Technologies 6 June 2013 QIAGEN eyes News & Topics from QIAGEN Contents Worldwide Research Hot News がんやその他疾患のバイオマーカーとして のエキソソーム 2 5 Biobanking Review 個別化予防を目指した J-MICC Study 参加して 14 15 Advance research 老化スイッチをオンにする microRNA がんの診断や治療に用いる 6 7 Seminar Report ツベルクリン検査に替わる全血を用いた 結核感染検査法 16 17 Pathway Application 生物学者のためのシステムサイエンス入門 8 12 Letter from Technical Service 18 QIAGEN クイズ 19 Hot New Products 新製品ご案内 13 Information ご案内および次号予告 20

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Sample & Assay Technologies

6June 2013

QIAGEN eyesNews & Topics from QIAGEN

Contents

Worldwide Research ̶ Hot News がんやその他疾患のバイオマーカーとしてのエキソソーム 2~ 5

Biobanking Review 個別化予防を目指した J-MICC Studyに 参加して 14~ 15

Advance research 老化スイッチをオンにする microRNAを がんの診断や治療に用いる 6~ 7

Seminar Report ツベルクリン検査に替わる全血を用いた 結核感染検査法 16~ 17

Pathway Application 生物学者のためのシステムサイエンス入門 8~ 12

Letter from Technical Service 18

QIAGENクイズ 19

Hot New Products ̶ 新製品ご案内 13 Information ̶ ご案内および次号予告 20

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2 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Worldwide Research ̶ Hot News

エキソソーム中の生体分子のプロフィールを、がん

などの疾患のバイオマーカーとして利用できるので

はないか、エキソソームから高純度の DNA、RNA、miRNAを分離すれば、そのプロフィールが評価できるのではないかという考えがある。エキソソーム

は健康な細胞からも病気の細胞からも同じように 生体液(脳脊髄液、尿、血液、血清など)に放出さ

れるが、病気の細胞のエキソソームには、その病気

に特有の核酸やタンパク質の発生源が壊れずに高濃

度で存在する。また、がん細胞は正常な健康細胞に

比べてはるかに大量のエキソソームを放出すること

が知られている。

エキソソームは、体液を超遠心分離機にかけ分離す

ることで得られるので、疾患の診断や観察をする 目的には、侵襲性の高い生体検査に比べてはるかに

好ましい検査対象である。エキソソームに含まれて

いる物質は元の細胞を示す構成になっているが、元

の細胞と比べた場合には、特定の物質の比率が過多

または過少ということもある。そのことから、エキ

ソソームに積み込む際に物質を選択するメカニズム

が働いていると考えられるが、そのメカニズムは

まだ突き止められていない。また、細胞が RNAを

所定の位置に配置する際に識別する RNAの「郵便番号」として用いているとの仮説も提出されている

が、証明はされていない。

いくつかの企業が、エキソソームに含まれている バイオマーカーを利用して、がんその他の疾患を診

断し、観察するツールの開発を進めている。さらに

はエキソソーム除去を利用した疾患治療法も将来性

があると考えられている。例えば、がん関連エキソ

ソームは免疫反応を抑制し、血管新生を促進するこ

とがある。このようなエキソソームを取り除けば、

腫瘍増殖が阻止され、抗がん剤で効果をあげる時間

が稼げる。さらには、エキソソームに治療薬分子を

装填し、がん細胞などの標的に送り込めるようにな

る可能性もある。例えば、がん細胞中に発現してい

る特定のがん遺伝子に対応する、サイレンシング

RNAという低分子干渉 RNA(siRNA)を細胞内に送り込む治療法が実現するかもしれない。どの製薬

会社も、そのような新しい角度からの治療法開発に

対して非常に熱心になっている。

エキソソーム/バイオマーカー研究診断技術開発企業次ページ以降のインタビュー記事にも紹介されて

いる Exosome Diagnostics社やNanoSight社の他にも、エキソソーム/バイオマーカー研究向けの技術

を開発中、あるいは商品化に乗り出した企業やエキ

ソソーム・ベースの診断観察検査製品を開発中の企

業がいくつもある。Caris Life Sciences社もそのような企業の一つで、全く新しい特許出願中のプラッ

トフォームを採用し、血液から抽出した疾患関連の

微細小胞を迅速正確に同定し、種別を分析する技術

を開発している。Caris社では、「当社独自の有望な技術だ。がん患者の早期診断検査、疾患観察、治療

by Michael D. O’Neill

エキソソームは微細な細胞中の膜小胞(直径で 30~ 100 nm)で、健康な細胞、がん細胞を問わず様々な細胞から放出され、元の細胞

に対応した膜や細胞のタンパク質、DNAやmicroRNA(miRNA)、mRNAなど各種 RNAの小片を含んでいる。エキソソームはエンドソー

ム経路と呼ばれるプロセスや細胞膜を通して細胞から放出されるのではないかと推測されている。その放出の正確なメカニズムはまだ

明らかではないが、エキソソームが細胞間の情報交換を行なっているとも考えられている。例えば、がん細胞が放出するエキソソーム

からは、免疫系抑制、血管新生促進によって、がんの成長を促す物質が見つかっている。

がんやその他疾患のバイオマーカーとしてのエキソソーム

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Worldwide Research ̶ Hot News

Douglas Taylor博士は、1980年に がん患者の末梢循環系から、腫瘍

が放出したエキソソームを発見し

た(1)。さらに、2008年発表の「エキソソームの miRNAで卵巣癌の徴候を判定する」という研究論

文(2)は、引用回数で世界の十指に入るという画期的な研究であ

る。Taylor博士は米国ケンタッキー州 University of Louisvilleの Department of Obstetrics & Gynecologyの教授を務めるほか、American Society for Exosomes and Microvesiclesの会長も務めている。現在は、妊娠を原因とする非癌性疾患に関連

したエキソソームの分子的特徴を判定する研究に専念してい

る。Taylor博士は、エキソソームに含まれているタンパク質、miRNA、長鎖ノンコーディング RNA、piRNA、LINE、SINE、tRNAなどあらゆる形の分子の特徴に注目しており、最近では妊娠 15週間の女性の血液から取り出したエキソソームのプロテオームの特徴から、早産する胎児と臨月に生まれる胎児を

判定できることを実証した。Taylor博士は、「エキソソームの数とサイズを観察するナノ粒子トラッキング分析(NTA)では、NanoSight社の新技術が非常に役立った。この技術は、原理的には部屋に細い明るい光が差し込むと普通では見えない埃

の粒子が輝いて見えるのに似ている。エキソソームを含んだ

溶液にレーザー・ビームを照射し、浮かび上がった映像を高

解像度カメラで撮影する。数やサイズばかりか、物質の蛍光

性も検出できる。例えば、蛍光性の抗体でエキソソーム中の

がん固有の抗原を検出することもできる。合成エキソソーム

を開発し、治療薬分子を直接患部にまで送ることもできる。

また、siRNAを腫瘍細胞に送り込み、免疫抑制と血管新生の活動を阻止することもできる。エキソソーム/バイオマーカー

研究の用途は思いつく限りいくらでもある」と語っている。

エキソソーム/バイオマーカー研究の発展についてエキソソーム/バイオマーカー研究の発展について最新情報を得るため、この分野をリードする方々にインタビューを行なった。

Douglas Taylor博士

1980年代に撮影されたエキソソームの電子顕微鏡写真の複製画像提供:Dr. Douglas Taylor

反応観察など直接臨床に用いることができる」とし

ている。一方、Apogee社は、微細小胞や微粒子径の測定に理想的とする光散乱測定標準化の新しい較

正法を発表している。日本の東レ株式会社はエキソ

ソームから高純度の miRNAを抽出する方法を開発し、高感度マイクロアレイを組み合わせて複数の種

類の miRNAを一度に検出する能力と高いデータ再現性を実現している。Excytex社は細胞外小胞の分野の研究者が必要とするツールの提供を目指してい

る。同社製品の 2つの柱は XCX-targetと XCX-mimicで、前者はあらゆるエキソソームに抗体を自由に

コーティングできる。また後者はエキソソームの脂

質二重膜をまね、脂質粒子で構成されるリポソーム

で、細胞内タンパク質、核酸、膜貫通タンパク質な

どを含み、そのまま実験の標準対照に用いるほか、

蛍光細胞分析分離装置などの較正に用いる。iZON社の製品、qNanoは生理学的条件下で小胞サンプルの物性を詳しく判定する機能がある。

今回紹介したのは、発展目覚ましいエキソソーム/

バイオマーカー分野の研究用製品と、その研究から

生まれる効果的な臨床適用のほんの一例に過ぎない。

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Worldwide Research ̶ Hot News

Jan Lötvall博士

Exosome Diagnostics 社 研 究 部長、Johan Skog博士やその同僚の COO、David Okrongly博士にも話を聞いた。2008年、Skog博士は Harvard Medical SchoolとMassachusetts General Hospitalで働いている時に、血清その他

の体液のエキソソーム中の RNAで腫瘍による突然変異を初めて

検出した(3)。現在、Exosome Diagnostics社は個別化医療で用いるために体液から取り出した、エ

キソソームその他の微細小胞を基

礎とする分子診断テストを開発し

ている。同社は、コンパニオン診

断で用いる体外診断薬とリアルタ

イム疾患観察の商品化を進めてお

り、近い将来製品の発表を予定している。Okrongly博士は、「現在、各種体液から高品質のエキソソームを抽出する技術

に対して相当規模の研究市場がある。これに応える新技術を

発表すれば未開拓の分野が開ける。エキソソームを基礎とし

た研究で新発見が相次ぐ夢のような時代だ。生体液から取り

出した患者の疾患固有のバイオマーカーを容易にリアルタイ

ムで判定できるようになれば、個別化医療向けの効率的な創

薬を目指している製薬会社には非常に魅力的なことだ」と述

べている。Skog博士も、「最近、National Institutes of Health Common Fundがエキソソーム/バイオマーカー研究の支援に1億 3,000万ドルを計上したことからも、この分野の重要性が認識され始めていることは明らかだ」と述べている(4)。

ス ウ ェ ー デ ン の University of Gothenburgの臨床アレルギー学教授で、現 International Society for Extracellular Vesicles(国際細胞外小胞学会;ISEV)会長の Jan Lötvall医学博士にも話を聞いた。Lötvall博士は2007年にエキソソームが mRNAおよび miRNAを使っ

て細胞間で情報を伝達していることを発見した学者で(5)、その発見の報告論文は既に 1,100回以上も引用されている。Lötvall博士は、「エキソソーム/バイオマーカー研究分野の 大きな前進には重要な発見が必要だ。まず様々な微細小胞の

厳密な分離、識別手段を確立すること。第二に物質がエキソ

ソームに積み込まれる過程とあわせて、細胞の状態でこの過

程が変化する機序を発見すること。同じ細胞でもストレス下

にある場合とそうでない場合とでは、エキソソーム中の物質

比率が変わることが知られている。第三にエキソソームが形

成される過程自体がまだよく分かっていない。これを解明す

ることも重要だ」と述べている。将来については、Taylor博士と同じくエキソソームは、標的となるがん細胞に直接 siRNAなどの治療薬分子を送り込む手段として有望だと語っている。

またエキソソームは、ヒトの母乳も含めてほぼ全ての体液に

含まれている。エキソソームが母親から乳児に情報を伝える

運搬装置の役目を担っていることも考えられる。さらにエキ

ソソームは唾液にも含まれており、「キスすればどうなるのだ

ろう?」という挑発的な質問も投げ返している。現在、Lötvall博士はアレルギー/喘息研究の一環として患者の鼻から分離

したエキソソームのプロテオームを調べている。また、ISEVは 2013年 4月 17日から 20日まで米国マサチューセッツ州ボストン市で年次総会を開き (http://www.isevmeeting.org)、最新のエキソソーム研究の進展も発表されると語っている。

Johan Skog博士および David Okrongly博士

Johan Skog博士(上) David Okrongly博士(下)

透過型電子顕微鏡によるエキソソーム/微細小胞の画像エキソソーム/微細小胞は細胞から活発に放出され、血液、尿、脳脊髄液などの体液から分離することができる。エキソソームの大きさは、従来、直径 30~ 90 nm(白矢印)とされているが、100 nmを超える大型の微細小胞も活発に放出される(黒矢印)。この微細小胞は、放出した細胞由来の RNAやタンパク質をその中に取り込んでいる。このような内容物は非常に安定しており、様々な体液に存在する RNaseなどの酵素に破壊されないよう保護されている(画像提供:Johan Skog, PhD, Chief Scientific Officer, Exosome Diagnostics Inc.)。

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Worldwide Research ̶ Hot News

“BioQuickニュース 日本語版”のご紹介

“WORLDWIDE RESEARCH ̶ HOT NEWS”は、サイエンスライターとして 30年以上の豊富な経験を有するマイケル D. オニール氏によって取材編集されています。株式会社キアゲンは同氏が編集長を務める独立系科学メディア“BioQuickニュース 日本語版”に協賛しています。

注目のストーリー(記事は週 3回更新)

■■ 近視遺伝子24種同定される

■■ リンパ性白血病の「弱点」突き止める

■■ がん細胞の成長を止める機序が明らかに、がん治療に道開くか

■■ 糖尿病治療に膵臓細胞リプログラミング

■■ 細胞核とミトコンドリアのDNAの異なる突然変異による相互作用

“BioQuickニュース 日本語版”は、下記ウェブサイトより無料で購読できます。

http://qiagen.biomarket.jp/

参考文献

1. Taylor, D.D., Homesley, H.D., and Doellgast, G.J., “Binding of Specific Peroxidase-Labeled Antibody to Placental-Type Alkaline Phosphatase on Tumor-Derived Membrane Fragments,” Cancer Research 40:4964-4969 (1980).

http://cancerres.aacrjournals.org/content/40/11/4064.full.pdf

2. Taylor, D.D. and Gercel-Taylor, C., “MicroRNA Signatures of Tumor-Derived Exosomes As Diagnostic Markers of Ovarian Cancer,” Gynecologic Oncology 110:13-21 (2008).

http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0090825808003430

3. Skog, J., Würdinger, T., van Rijn, S., Meijer, D.H., Gainche, L., Curry, W.T., Carter, B.S., Krichevsky, A.M., and Breakefield, X.O., “Glioblastoma Microvesicles Transport RNA and Protein That Promote Tumor Growth and Provide Diagnostic Biomarkers,” Nature Cell Biology 10:1470-1476 (2008).

http://www.nature.com/ncb/journal/v10/n12/abs/ncb1800.html

4. http://researchaffairs.med.ufl.edu/2012/07/06/nih-common-fund-to-support-extramural-undiagnosed-diseases-and-extracellular-rna-communication-initiatives/

5. Valadi, H., Ekström, K., Bossius, A., Sjöstrand, M., Lee, J.J., and Lötvall, J.O., “Exosome-Mediated Transfer of mRNA and miRNA Is a Novel Mechanism of Genetic Exchange,” Nature Cell Biology 9:652-659 (2007).

http://www.nature.com/ncb/journal/v9/n6/full/ncb1596.html

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Advance research

この 10年で、ヒトではゲノムの 98%もの領域が タンパク質をコードせず、non-coding RNA(ncRNA)に転写されていることが明らかにされた。そのなか

には 21塩基程度の二本鎖の miRNAが多く含まれており、部分的に相補的な配列をもつ mRNAと結合することで、様々な遺伝子の発現を制御するという。

既に 2000種以上のmiRNAが同定されており、発生、分化、老化、がんや感染症などの疾患と、実に様々

な生命現象の制御への関与がわかってきている。

広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 細胞分子生物学研究室の田原栄俊教授は、長年にわたり細胞老

化の分子メカニズム研究を続け、現在は miRNAと 細胞老化との関わり、特にがん化との関連解析や、

がんの診断および治療への成果応用を目指している。

細胞老化を制御するmiR-22田原教授が主な研究対象とするのは、miR-22と呼ばれる miRNA。ヒトの線維芽細胞を対象に、細胞が老化したときに高発現する miRNAを探索したところ、miR-22に行き当たったという。若く正常な線維芽細胞に miR-22を導入する実験を行ない、これらの

細胞では細胞の巨大化や bガラクトシダーゼ遺伝

子の発現上昇といった、

細胞老化の特徴がもたら

されることも確認した。

つづいて田原教授は、

miR-22とがんとの関連も解析。「がん細胞は細

胞の老化機構が破綻し、

制御不能な不死化を遂げ

た細胞だと考えられま

す。逆に考えると、がん

発生、分化、老化、がんや感染症と、実に様々な生命現象に関与しているmiRNA(microRNA)。その一つを用いて、がんに対する核酸医薬、

早期診断や予後診断を実用化させようとの試みが行なわれている。

注目の研究者紹介

老化スイッチをオンにする microRNAをがんの診断や治療に用いる広島大学大学院 医歯薬保健学研究院 細胞分子生物学研究室田原 栄俊 教授

細胞を老化させることができれば、増殖を抑制でき

ると思われます」と田原教授。早速、がん患者由来

の細胞を対象に qRT-PCRを用いて解析したところ、乳がんや子宮頸がんの多くで、miR-22の発現が抑制されていることがわかったという。

さらに、上記のようながん細胞に miR-22を導入すると、老化が誘導されて増殖能が抑制されること

も確かめた。田原教授は「miR-22が SP1、SIRT1、CDK6などの遺伝子を抑制し、がん細胞が失っていた老化プログラムを正常化するのだと考えてい

ます」とし、「詳細な分子メカニズムには未解明な

部分もありますが、最近の実験では、SP1、SIRT1、CDK6以外の miR-22のターゲット遺伝子も、やはり老化を制御していることが分かってきています。

miRNAを診断や核酸医薬へ利用することが有望視されている理由は、複数の遺伝子、例えば 100種類などの遺伝子を制御し、網羅的にパスウェイを抑

制することです。おそらく miR-22は、単一のパスウェイではなく、多様に機能することで、複数の パスウェイを通して相乗的に老化を誘導しているの

でしょう(図 1)」と続ける。

miRNAを応用した創薬と診断一連の成果により、田原教授は老化を誘導する

miRNAを用いた創薬を目指している。「miR-22を含め、老化を誘導する複数の miRNAが、共通して抑制する遺伝子が見つかっています。その遺伝子を

ノックダウンすることで、がん細胞は効率良く老化

誘導され死滅しました。私たちは、このような遺伝

子をノックダウンし、老化を誘導する核酸医薬を考

えています」と田原教授。

一方で、miRNAが直径 50~ 100 nmほどの小胞(エキソソーム)に内包され、細胞から血液やリンパ液図 1. 老化誘導miRNAによる細胞老化の制御

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Advance research

などの体液中に分泌されて、全身をめぐることも注

目されてきている。2011年には「国際細胞外小胞学会(ISEV)」も組織され、田原教授も立ち上げから参画している。エキソソームの研究は、核酸医薬の

デリバリーへの応用やバイオマーカーとした非侵襲 的診断への応用を可能とするとして注目されている。

エキソソームを含む体液由来の miRNAを用いた診断の実用化には、個人差、性差、年代差、日動変動

などの影響が大きく、予後診断のように同一の患者

の経過を観察するのが好ましいと予測されている。

miRNAプロファイリングの課題診断のためのバイオマーカーとして注目されるエキ

ソソーム由来の miRNAであるが、エキソソームのみを精製する必要があるのか、また、そのための 手法があるのか、といった問題が浮上している。

エキソソーム由来のものだけを抽出する確固たる

技術は、まだ充分に確立されていない。体液中の

miRNAの内訳は、エキソソーム由来が約 30%で、70%は HDLやタンパク質と結合して複合体を形成した状態だとされる。複合体を形成しているものが、

どの組織の細胞に由来するのか、どのようにして体

液中に入るのかはよくわかっていない。「不完全な

がらエキソソーム由来のみを精製したものと、体液

全体のものを比較したところ、かなりの部分が共通

していたとの報告もあります。私が研究対象とする

miRNAも共通しているため、今のところは体液全体の miRNAを解析対象にしています。研究対象のmiRNAがエキソソーム由来と体液全体とを比較して結果が同等か、またはエキソソームを精製しない

と見られないマーカーであるかを理解して解析する

ことが重要です」。田原教授はそうコメントする。

体液中の miRNAプロファイリングの定量においては、何を基準にするのかという「標準化」が鍵を握る。

田原教授は「定量における miRNAの標準化にはいくつかの手法があります。一つは、miRNA精製過程で線虫などの外来性 RNAを一定量スパイクし、その量をもとに回収率をノーマライズする方法。もう

一つは、網羅的解析の過程においてサンプル間で比

較的変動の少ない miRNAが明らかになるので、そのような変動の少ない複数の miRNAを用いる方法です。これらの複数の方法を標準化に用いています」

とした上で、「いずれにしても、研究者自身が自分の

実験系において、変動が少ない miRNAであることを確認して標準化に用いることが重要です」と話す。

解析の今後については、今のところは qRT-PCRが主流だが、田原教授は「miRNAの配列と量をみるという意味で、同時に調べられる次世代シークエン

サーの重要性も今後は増す」と考えている。

本格的な実用化に向けて現在は、さらに臨床検体を豊富に扱える場を求め、

これまでの研究成果の事業化も進めている(株式会

社ミルテル;http://mirtel888.wix.com/mirtel)。これにより、基礎研究レベルの超先進的な診断をより

多くの人への提供が可能になり、同時に多検体を測

定することによる診断精度の向上が期待できる。

「現在の健康診断は、よほどひどくない限り、結果

が顧みられることがありません。私は血液由来の簡

便な検診で、現在の健康状態、将来の発病リスク、

持病の予後などを明確に示せるようにしたいと考え

ています」。取材の最後をそう締めくくった田原教

授。解決すべき課題はなお多いが、研究の実用化を

果たすべく、果敢な挑戦を続けている。

田原 栄俊 教授

「今までにやった研究で、まだがん患者さんを誰も助けていない」。そう強く

思って研究を進めている。背景にあるのは、かつて大学のラボで一緒に研究

していた後輩が、27歳で発病した胃がんの全身転移のために 36歳の若さで逝ってしまったという痛恨の経験。「これからは、2人に 1人ががんになる時代ですが、早期発見、早期治療で、元気に老いることが重要です。患者

さんの負担が少なく、確実な早期診断を確立したい。自分の家族や大事な人

に定期的に受けさせたい検査にするのが目標です」。

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8 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Pathway Application

今回からの連載では、システム生物学の理解を深

めるために必要なシステムサイエンスの基礎を、

CellDesignerなどのソフトウェア・ツール群をどのように利用して研究するかという側面も加えながら

解説したいと思う。生命システムを理解するために

は、その要素の理解と同時に、要素がどのように相

互作用し、システムとしてどのように挙動するのか、

どのような「設計原理」が背後に読み取れるのかな

どを理解する必要がある。この分野は、未だに発展

途上の分野であるが、極めて大きな可能性に満ちて

いる分野だと考えている。

それと同時に、システムサイエンスやエンジニア リングにおいての「理解」したという感覚や重要な

ポイントが、なぜこれからの生命科学や医学研究に

とってより重要になるのかを議論したいと思ってい

る。システムバイオロジーの研究を通じて、世界中

の数多くの生物学、医科学の研究者の方々と議論し

てきたが、何が重要かの認識や「理解」したという

感覚に、私が違和感を抱くことや、逆に違和感を抱

かれることもよくある。この原因の一部は、システ

ムという、ある意味で実体感のないものが対象であ

ることなどにある。遺伝子ならば塩基配列、タン

パク質ならその立体構造や結晶化された粉として、 さらには細胞や臓器など、生物学の多くの研究対象

は「これ!」と示すことができる。しかし、システ

ムは、そのネットワークを示してもシステムのダイ

ナミクスという本質を示している訳ではない。その

意味で、曖昧模糊としていて、それがどうして目の

前の生命現象と関係するのか分からないと感じる方

も多いと思う。もう一つの理由は、何をもって「理

解した」と感じるかの感覚の違いがあるのではない

生物学者のためのシステムサイエンス入門(第 1回)

かと思う。例えば、システムサイエンスのバックグ

ラウンドを持っている人間(生物学の知識もしっか

り持っているとする)が、「遺伝子 Xが、YYYの過程に重要な役割を果たしていると分かりました」と

いう話を聞いても、正直、「何で、これで分かった

と思えるのだろう?」ということもある。これは、

各々のバックグラウンドによって、なにを分かれば、

それなりに「理解した」とするかが違うからではな

いかと思う。例えば、エンジニアは回路などを解釈

して動作を説明できても理解したとは感じず、実際

に自分で設計して、組み立てて、設計通りに動作し

て、初めて少し分かったと感じるのである。このよ

うな感覚の違いも感じていただきながら、システム

的なアプローチへ理解を深めていただければと思

う。生物学は、他の分野の成果を貪欲に取り込んで

きた分野である。システムサイエンスの概念をこの

時期に本格的に取り込むのは、今後の生物学の発展

にとって重要だと感じている。

システムサイエンスと生命現象には多くの接点が

あるが、最初にシステム制御に関係する話から始め

たいと思う。システム制御は、システムの特定の

パラメータが想定しているような挙動をするため

の制御である。代表的な制御には、①フィードフォ

ワード制御、②ネガティブ・フィードバック制御、

③ポジティブ・フィードバック制御などがある。

フィードフォワード(FF)制御は、オープンループ制御とも呼ばれ、ある事象が起きたなら、それを トリガーにどのような制御を行なうかがあらかじめ

決まっていて、その制御を実行するというものであ

る。例えば、晴れて日が出てきたらクーラーをONにする、というような制御である。

北野 宏明 博士

北野 宏明 博士(特定非営利活動法人 システム・バイオロジー研究機構 代表)

これまで数回に渡ってシステムバイオロジーの研究に利用するソフトウェアの解説をしてきた。今回からは、これらのツールを使いこ

なすための基礎知識として、システムサイエンスの議論をしようと思う。例えば、CellDesignerなどを使って分子間相互作用ネットワー

クや遺伝子制御ネットワークを記述したとする。これらは、動的シミュレーションやデータのマッピングなどに使うことが多いのだが、

さらにそのネットワークの構造から、どのような「回路」が構成されていて、それがどのような機能を有すると推定されるかなどを

読み取ることもできる。私の経験からすると、思っている以上に豊富な知見を得られると考えている。そこで、ネットワークを解読し

て、そこに意味を見いだすヒントとなることを解説してみたいと思う。

Page 9: QIAGEN eyes

Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 9

Pathway Application

フィードフォワード制御と対照的なのが、ネガティ

ブ・フィードバック(NFB)制御である。これは、システムが設定された状態を維持するように、シス

テムの状態と目標値との乖離を検知して、それを修

正するような制御を行なう手法である。フィード

フォワード制御が、「太陽が出てきたらクーラーを

入れる」とするのに対して、ネガティブ・フィード

バック制御では、「室温が設定温度より高くなって

きたので、クーラーを入れる」という制御を行なう

という違いがある(図 1)。

ここで、よく利用されるネガティブ・フィードバッ

ク制御について、もう少し細かく説明しよう。よく

引き合いに出されるサーモスタットは、部屋の温度

が一定になるような制御を行なう。例えば、摂氏

28度と設定すれば、28度より下がってくると、ヒーターが稼働し、28度まで暖気を送り込む。逆に 28度を超えてくると、冷気を送り込み、28度まで冷却する。これは、一種のネガティブ・フィードバッ

ク機構である。ここでは、室温が制御対象のパラメー

タであり、摂氏 28度がシステム・パラメータの目標値、つまりセットポイントである。図 2に、この場合の制御機構の概略と制御がどのように行なわれ

るかの簡略化した図式を示した。これは、制御工学

の用語で Bang Bang制御またはヒステリシス制御と呼ばれる方法で、制御対象の機器がON/OFFでのみ制御される方式である。さらに、よく見ると、

この制御ロジックでは、室温が目標温度を少しでも

超えるとクーラーが起動し、少しでも下回るとヒー

ターが起動するというある意味では、過剰に制御が

効いた状態になっている。実際には、例えば目標温

度から上下 0.5度ぐらいの誤差は許容範囲であると考えると、ここまで過剰に制御を行なう必要は無い。

図 3は、このシステムで、目標値に対して上下 0.5度の誤差を許容した場合の図である。ヒーターと

クーラーの駆動時間が大幅に短縮され、より効率的

な制御が行なわれていることが分かる。

図 1. フィードフォワード制御とネガティブ・フィーバック制御

図 2. 簡単なネガティブ・フィードバックの例簡便のため、制御機器の停止条件は図示していない。

図 3. 許容範囲を設定した制御簡便のため、制御機器の停止条件は図示していない。

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10 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Pathway Application

これらフィードフォワード制御やネガ

ティブ・フィードバック制御は、生体内

でも頻繁に利用されている。例えば、大

腸菌のヒートショック・プロセスでは、

rpoH RNAが、フォールドされた形で多く存在するが、これに熱が加わるとフォー

ルドが解けて翻訳プロセスが開始され、

s32因子が生成される。これは、フィードフォワード制御と考えることができる。

このプロセスは、温度上昇により s32の生成という制御をしている。s32は、熱によって変成したタンパク質の修復プロ

セスに関係するのだが、変成タンパク質

の存在を感知して s32の生成を行なっている訳ではなく、温度上昇により変成タ

ンパク質が発生するということを、ある意味で予測

しての制御である。もちろん、このプロセスは、「予

測」ということが行なわれる訳ではないので、進化

的に、温度上昇時に s32の生成が細胞機能の維持に有効であり、それが進化的に優位に働いたために

この制御が進化的に獲得されたと考えられる。

また、ネガティブ・フィードバック制御も見られる。

ヒートショック・プロセスでは、平常時にヒート

ショック因子(HSF)とヒートショックタンパク質(HSP)が結合して抑制されているが、ヒートショックによりミスフォールドした変成タンパク質が発生

すると、HSPは HSFと解離し、変成タンパク質と結合する。このため、HSFは三量体を作り核移行し、ゲノム上の HSE(ヒートショックエレメント)に結合して HSP遺伝子群の転写翻訳が引き起こされる。

この過程では、HSPがセンサーとして機能し、遊離して核移行した HSFの量が、図 2や図 3における差分出力となる。HSFは、HSP遺伝子群を活性化させ、その結果として生成される HSPが、変成タンパク質を修復し、その量が減少する

ことで、再度 HSPと HSFの結合が増え、HSFの低下、即ち差分出力の減少となる。このループは、一つのネガティブ・フィー

ドバック制御である。図 4をよく見ると、このループだけではなく、HSPが大量に

生成された場合、遊離している HSFに結合し、HSPの転写活性の影響を与えるループも考えられる。こ

れは、第 2のフィードバック・ループである。

さて、このようなフィードバック機構を CellDesignerで記述するとどのようになるであろうか?ここで 気を付けるべきことは、電子回路と違い、生命現象

のプロセスの場合は、統一的な記述手法が確立して

おらず、記述の恣意性が排除できないことである。

図 5では HSPは、変成タンパク質を正常なタンパク質に修復する触媒的な解釈で記述した。図 6では、HSPと変成タンパク質が複合体を形成し、修復後に解離するというプロセスを明示的に記述してい

る。どちらの記述も、このプロセスを十分理解して

図 4. ヒートショック応答に関係するシステム制御の簡略図

図 5. CellDesignerによる記述 1

Page 11: QIAGEN eyes

Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 11

Pathway Application

いる人間が読むならば問題は無い。しかし、これを

シミュレーションを行なうために使おうとすると、

図 5の記述では問題が発生する。つまり、フリーなHSPの量を計算できないのである。このプロセスでは、フリーの HSPと HSFの量がシステムの挙動を決定付ける重要パラメータである。つまり、システ

ム解析を行なうためには、このような重要因子の挙

動はできるだけ詳細にモデル化する必要があるとい

うことを示唆している。

さらに、図 6と図 4を比べると、フィードバック・ループの流れは、図 4の方が分かりやすい。これは、CellDesignerの標準的な記述方法である Process Diagramが、分子間相互作用の過程をグラフィックに記述することを中心に考えており、影響や情報の

流れを明示するために設計されていないということ

に起因する。

この問題は、Process Diagramから影響や情報の流れを視覚化する Activity Flowと呼ばれる形式に変換することで解決する。では、最初から Activity Flowで記述するべきかといえば、そうとも言えない。影

響や情報の流れ中心の記述では、相互作用の詳細

やタンパク質の状態変化などが明示的に記述され

ず、動的シミュレーションの精度を欠くことになる。 生物学で扱うプロセスは非常に多面的であり、一つ

の形式で十分に記述する形式は生み出されていない

し、今後ともそのような形式が提案されるかは疑問

である。むしろ複数の形式を連動させ、その実態を

可視化し、理解するアプローチが有効であろう。

次に、これらの可視化された図から、システム論と

してどのような解釈が可能かを議論しよう。ここで

は、実際のヒートショック・プロセスのバイオロジー

は一端横において、純粋に回路構成から何が言える

のかを議論する。

図 7は、Activity flow的な影響伝搬の記述である。ここでは、HSPと HSFの複合体などが省略されている。なぜならば、このシステムで純粋に回路構成か

ら推定すると、重要なのは HSFと HSP量的変化であり、HSPと HSFの複合体の量的変化自体が、挙動の記述には重要ではないと考えられるからである。

もちろん、HSPと HSFの複合体から分離した

図 7. 影響伝搬の記述矢印は、効果(量的変化)の増大を、角の丸い四角は、タンパク質、四角は遺伝子を表す。

図 6. CellDesignerによる記述 2

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12 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Pathway Application

HSPが変成タンパク質の修復も行なうが、大きな温度ストレスの場合には、修復のメインは転写因子と

しての HSFによって転写活性が得られ、大量に生産された HSPであろう。その場合には、HSPと HSFの複合体の挙動はセンサーとしての挙動と簡略化し

て問題は無く、それは HSFの量で代替できる。もちろん、後で述べるように軽微な変動に対する修復は、

HSPと HSFとの複合体から分離した HSPが主に行なっているとも考えられる。このシステムを特徴付

ける一つのパラメータは dHSP/dHSFである。他には、温度変化一度あたりの変成タンパク質の増加

量や HSP一分子当たりの変成タンパク質修復速度、HSPの分解速度などである。dHSP/dHSFは、HSFの変化分に対してどのくらいの HSPの量的変化が起きるかであり、これは 1を大きく上回る(おそらく 10とか 100とかのレベル)ことが想定され、ここで一種の増幅器の役割を果たしていると言える。

つまり、10分子のフリーな HSFに対して、100分子や 1000分子、場合によってはそれ以上の HSPが生成され、変成タンパク質の修復に使われるという

ことである。逆に、dHSP/dHSF<1ということは考えにくい。この場合、HSPと HSFの複合体から分離した HSPより少ない数の HSPが、少し時間がたってから到着するということであり、あまり役に立つ

とも思えない。それなら、通常時からの HSPと HSFの複合体の数を何割か増やせば、より効果的である。

また、dHSP/dHSFが、HSFの量に対して一定の値を持つのか(線形システム)、HSFがある一定量になってから HSPの活発な転写活性が引き起こされるのか(閾値システム)なども重要な点である(図

8)。先ほどの空調システムの例を考えるなら、HSFがある一定量になると HSP遺伝子群の転写が活性化すると考えるのが効率的である。一定量以下の状

態では、HSPと HSFの複合体から分離した HSPが修復をしていると考えられる。同時に、このプロセ

スは非常に早く修復作業に取りかかることが可能で

あり、まずは、このプロセスを起動して、大量の転

写・翻訳を経て生成される HSPの到着を待つとも考えられる。

合理的なシステム設計の観点から考えれば、非線形

システムで、線形近似区間が dHSP/dHSF>>1となるような、いわゆる非線形高利得負帰還増幅器とし

て機能するシステムであると推測できる。もちろん

進化の過程で合理的ではないがそれなりに機能する

ので、現在のところ残っている回路や別の主目的の

ために存在する回路もある。とはいうものの多くの

重要な回路は、工学的にもある程度合理的な解釈が

可能なことがほとんどである。

これらの推論が正しければ、このシステムの回路面

からの設計原理を検証する上で、測定するべきパラ

メータは、温度変化毎の dHSP/dHSFの値、温度変化毎の変成タンパク質量、温度変化毎のフリー HSP量の変化とその細胞内動態、HSF上昇から転写開始、HSP生成までの時間遅れ、HSPの変成タンパク質修復速度、HSPのターンオーバーなどである。中には測定が困難な項目もあるが、リストとしてはこ

のようなものである。これらのパラメータは、この システムの環境変動に対する、量的ならびに時間的

な動特性と変化に対する応答性を特徴付けるもので

ある。

このようなことは、実際に対象となる生物現象の

データがなくとも、回路構成とシステム設計の知識

があればある程度は可能である。このような議論を

する利点は、これらの議論から、システムとして重

要なパラメータや挙動を事前に理解し、それを実験

計画に反映することができる点にある。

今回取り上げた、ネガティブ・フイードバックでも、

色々な回路構成や機能のものがある。次回は、その

中から代表的例を議論してきたいと思う。

図 8. 線形応答と非線形応答

Page 13: QIAGEN eyes

Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 13

QIAGENは、2012年後半より非常に煩雑な次世代シークエンス(NGS)ワークフローの改善の提案

を開始しました。今号では、次世代シークエンサーを用いた研究の中で特に多くの方がお困りの、

RNA-seqの効率を向上するキットをご紹介します。

次世代シークエンスワークフロー 第 2弾

オーダーインフォメーション

製品名 内容 Cat. no.

GeneRead rRNA Depletion Kit (6) For 6 x 100 µl reactions: HMR rRNA Depletion Probes, Antibody Solution, Hybridization Buffer, Bio-Mag Protein G Beads, RNase-free Water, RNase Inhibitor, Small Spin Columns, Reaction Tubes

180211

リボソーム RNA(rRNA)は全 RNAの 85~ 90%を構成し、シークエンシングを行なう際の S/N比の低下を招くことにより、目的の RNAの検出を困難にします。本キットは、ヒトやマウス、ラットなどの様々な生物種からの mRNAおよびノンコーディング RNAの完全回収を確保しながら rRNAを効果的に除去します。

GeneRead rRNA Depletion KitNGSに最適な選択性と効率性の高い rRNA除去

より効果的で特異的な rRNA除去各メーカーのプロトコールに従い、Jurkat細胞からの mRNAをrRNA除去または濃縮処理した。すべての除去/濃縮サンプルを同一方法でライブラリを構築し、IlluminaのMiSeqシステムでマルチプレックスシークエンス解析をした。シークエンスのリードを Bowtie 2によって Ensembl® RNAデータベースにマッピングし、各ライブラリで Ensemblバイオタイプにマップしたリードの割合(%)をプロットした。

40

20

60

0E社 I社 QIAGEN Poly A

80

100

Other non-coding scRNAmt-rRNA rRNA Protein coding

各RN

A種のリードの割合(%)

Antibody

Matched probe

rRNA

Matched probe

rRNA

Protein Gbead

抗体を介した捕獲(GeneRead)

直接捕獲

Streptavidinbead

RNA

Mismatched probeMismatched probe

RNA

Protein G

bead Streptavidinbead

GeneReadでは 2段階の特異性を統合:DNA/RNAシークエンス特異性と抗体結合A オリゴヌクレオチドプローブが完全にマッチしている場合、直接捕獲(例;ビオチン‐ストレプトアビジンビーズを用いた捕獲)でも、抗体を介した捕獲(GeneRead rRNA Depletion Kit)でも、rRNAは捕獲される。 B プローブが rRNA以外の RNA種にクロスハイブリダイズすると、ミスマッチしているプローブ/ RNA複合体は GeneRead rRNA Depletionシステムでは認識されず、非特異的な除去が避けられる。一方、直接捕獲ではこの第 2段階の特異性はなく、他の RNA種が rRNAとともに除去される可能性がある。

Hot New Products ̶ 新製品ご案内

Page 14: QIAGEN eyes

14 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Biobanking Review

個別化予防を目指した J-MICC Studyに参加して

1人の将来のがん発症の確率(リスク)の大きさを、その人の遺伝的要因と、ライフスタイル・環境要因の両方からきめ細かく推

計することができるようになるからです。加えて、その個人のど

のライフスタイルを改善することで、そのリスクをどれくらい低

下させられるかを推量することができるようになります。これら

の情報を元に、その個人に合った疾病予防プログラムを作成し、

その実行を促すというのが、この研究が目指します個別化がん予

防の姿です。

この研究はコーホート研究ですから、研究参加者を長期間にわた

り追跡調査し、がんをはじめとする生活習慣病の発症の有無と生

死および死因を把握する必要があります。私達は、コーホート研

究活動の本質は、研究参加者を追跡することにあると考えていま

す。各研究サイトの疫学研究者が中心となって、2025年まで追跡調査を精力的に行なう予定です(図 1)。2012年 10月時点で、1,393人の癌罹患と1,679人の死亡とその死因を把握しています。

図 1. J-MICC Study 活動のタイムスケジュール

2. 生体試料の保管と活用本研究への参加に同意していただきました研究参加者からは、

14ccの採血をして、血漿、血清、バフィーコートに分離します。

1. J-MICC Studyって何?日本多施設共同コーホート研究(Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort[J-MICC]Study)は、35歳~ 69歳の一般健常者を全国 12の研究グループ(表 1)が共通の研究計画に従って募集して行なっている、日本で最初の大規模なゲノムコーホート

研究です。2005年に文部科学省科学研究費補助金「がん特定領域研究」として研究参加者のリクルートを開始し、2010年からは、文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究「がん研究分野の特性等を踏まえた支援活動」の中の「がん疫学・予防支援活動」と

して活動しています。私は 2010年にこの研究組織の主任研究者となり、それまでの愛知県がんセンターでの一研究サイトとして

の関わりから、研究活動全般のマネージメントをするようになり

ました。

■ 千葉県がんセンター研究局がん予防センター

■ 静岡県立大学食品栄養科学部公衆衛生学

■ 名古屋大学大学院医学系研究科予防医学

■ 愛知県がんセンター研究所疫学・予防部

■ 名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学

■ 滋賀医科大学公衆衛生学

■ 京都府立医科大学大学院医学研究科地域保健医療疫学

■ 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部予防医学

■ 九州大学大学院医学研究院予防医学

■ 九州大学大学院医学研究院感染環境医学

■ 佐賀大学医学部予防医学

■ 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科国際島嶼医療学

表 1. 研究実施機関

2012年 12月末時点で 9万 2千人の研究参加者のリクルートを終えました J-MICC Studyの主な研究目的は、がんをはじめとする生活習慣病のリスクを遺伝的要因と環境要因の両方から検討す

るとともに、その交互作用を明らかにすることです。なぜこのこ

とが個別化(がん)予防につながるかと言いますと、日本人 1人

田中 英夫 博士(愛知県がんセンター研究所 疫学・予防部 部長)

生体試料を患者情報とリンクさせていきながら、資料の蓄積を行なっていくバイオバンクは、一般健常者の

健康状態、生活習慣などを細かく追跡していくコーホート研究と密接な関係があります。また個別化医療、

個別化予防を目指した医療を実現していくには、個々の患者の様々な背景を極力正確に把握し統計的な解析

を行なうことが必要となります。今回の Biobanking Reviewでは、愛知県がんセンター研究所の田中英夫先

生に日本多施設共同コーホート研究の概要をご紹介いただきます。

Page 15: QIAGEN eyes

Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 15

Biobanking Review

最大で 8.69倍も乳がんに発症しやすいことがわかりました(図2-1)。また、既知の環境要因に加えて、これらの SNPを組み合わせることで、乳がん発症の予測精度が向上することがわかりまし

た(図 2-2)。

今後は、追跡結果が蓄積される J-MICC Study全体のデータを解析することで、個人の特性に応じたより精度の高いがん発症予測モ

デルが生まれるものと期待できます。

4. 国内のゲノムコーホート研究との連携強化日本の一般健常人を対象としたゲノムコーホート研究は、欧米諸

国や韓国などと比べてその規模が小さく、しかも後発進したもの

が多いことから、国内では互いに連携し、オールジャパンで研究

の国際競争力を高める必要があるとの認識がコーホート研究を担

当する研究者を中心に広まっています。J-MICC Studyは、これまでに山形大学 GCOEコホート(約 1万 5千人)と、慶応大学が運営する鶴岡メタボロームコホート(1万人を予定)と、調査票の共通化を図るなどして、若い研究者同士が将来協同して統合解

析を行なえるよう、連携体制を構築しています。また、国立がん

研究センターが運営する、次世代多目的コホート(JPHC-NEXT)研究と、将来の統合解析が可能となるよう、調査票情報の統合の

ための妥当性研究を協同で進めています。さらに、今年からリク

ルートが始まる東北メディカルメガバンクの住民コホート(宮城

県 5万人、岩手県 3万人を予定)とも、緊密に連携を図っていきたいと考えています。

これらの一般健常人を対象としたゲノムコーホートは、創薬を はじめとする日本の医学研究全体を支える強力なインフラになり

ます。研究活動の発展にご理解とご支援をお願い致します。

その半量ずつを、各研究サイトと中央事務局のあります名古屋大

学予防医学講座でそれぞれ保管しています。この分散保管体制は、

名古屋大学予防医学がリクルートした研究参加者の分を連携コー

ホート(後述)があります山形大学で保管していただく体制が整っ

たことで完成し、大規模災害に備えています。

J-MICC Studyは現在「がん支援活動」からの科研費で活動しており、生体試料を用いた国内のがん研究者への研究支援を組織的に

行なっています。J-MICC組織内に「協同研究促進委員会」を置き、外部の研究者からの利活用の要望を受けて、これを公平かつ有効

に支援できるよう努めています。私達の強みは、臨床現場では得

難い一般健常人の生体試料が、対象者の詳細な属性情報付きで多

数あることです。例えば、「BMIが 25以上の閉経後女性の DNA○○人分」といった形で、研究利用の支援ができます。関心のあ

る方は、当研究のホームページ(http://www.jmicc.com/)の「生体試料を用いた研究支援」をご覧ください。

3. 個別化予防につながる研究成果のイメージ個別化予防の第 1ステップは、個人のがんなどの病気の発症確率を、できるだけ正確に予測するための根拠を得ることです。研究

サイトの 1つである愛知県がんセンターでは、同中央病院の初診患者さん約 2,000人を対象に、海外のGWAS研究で女性乳がんの発症に関連することがわかった候補遺伝子多型(SNP)について、その関連の強さの程度を検証・確認するとともに、それらの

SNPsと、肥満や生殖歴といった既知の乳がん環境リスク要因を組み合わせて、日本人女性の乳がん発症予測モデルを作成しまし

た。検証の結果、7ヵ所 14個の SNPが乳がんリスクに関連し、これらの SNPを 10~ 14個持つ人は、0~ 3個持つ人に比べて

図 2-1. 乳がんの素因遺伝子を何個持つかによって対象者を 5つのグループに分けて乳がんリスクを比較した成績Sueta A, et al. Breast Cancer Res Treat. (2012)より作図

図 2-2. 個人の遺伝的要因と環境要因の両方を組み合わせると、将来の乳がん発症をより正確に予測できることを示す ROC曲線Sueta A, et al. Breast Cancer Res Treat. (2012)より作図

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16 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Seminar Report

2011年 9月より正式にQIAGENの製品ポートフォリオの一部となったクォンティフェロン TBゴールド(QFT)を紹介する。QFTは全血を検体として使用し、血液中のリンパ球の 1種であるエフェクター T細胞を結核菌特異抗原で刺激し、産生させたサイトカインである Interferon-γの量を ELISA法で測定し、結核感染の有無を検査する試薬として世界で広く利用されている。日本国内では、2005年に体外診断薬として承認を受け、保険点数は 630点であり、現在第 3世代が販売されている。BCGワクチン既接種の影響を受けるツベルクリン反応検査とは違い、高い特異度と感度を持つQFTは画期的であると同時に、これまでの結核検査の在り方を大きく変えることとなった。その一方、本検査による潜在性結核感染(LTBI)の補助診断について、ユーザーに正しく理解していて頂くことも必要である。この様なことから 2009年より全国の主要都市にてセミナーやシンポジウムを積極的に開催しており、現在では年 6回程行なわれている。今号ではその中から「QFTセミナー in仙台」および「QFTテクニカルセミナー」で行なわれた発表内容の一部を紹介する。

ツベルクリン検査に替わる全血を用いた結核感染検査法クォンティフェロン TBゴールド̶ Changing the way the world looks at TB ̶

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Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 17

Seminar Report

QFTセミナー in仙台「QFTセミナー in仙台」は、昨年 11月に岩手県立中央病院副院長の武内健一先生を座長に迎えて、東北地区の医療従事者 120名が参加し、開催された。同病院 ICNの福田祐子看護師長は、院内における結核感染診断の難しさと対策の重要性を訴えられ、QFTを利用することで効率的に対応できることを発表された。 また岩手県宮古保健所長の柳原博樹先生は、今後日本の社会問題となるであろう高齢者施設における結核集

団感染の事例を紹介された。現在日本では、全結核

患者における 70歳以上の割合は、50%以上との報告があり(1)、介護老人施設などで勤務する介護従事者などの若者が、高齢者の結核に感染する恐れが

あるほか、日本の結核罹患率の低下を妨げる要因に

もなると発表された。最後に、公益財団法人結核予

防会 結核研究所副所長の加藤誠也先生が、日本が結核低蔓延国を目指すためには、引き続きの結核対

策が重要であると同時にQFTによる潜在性結核感染者を早期に発見し、治療することがカギであると

話され、参加者からも多くの共感が得られた。

QFTテクニカルセミナーQFTでは、製品の市場への浸透とともに、製品に関する技術的な側面での情報提供の場を設けるため、「QFTテクニカルセミナー」も開催している。本年 2月に東京九段下で開催した本セミナーは、実際に検査を実施している検査技師 50名が参加された。株式会社メディトランセの木原綾子技師からは、QFT検査で最も重要となる「検体輸送」と「培養」に関する技術的な発表をして頂き、再度各施設での手技や検査手順

の見直しを促された。また大阪市保健所の松村美恵子主幹からは、保健所における疑似検体を用いたキッ

トのロット間差や結果へのQFTの精度管理などへの取り組みについて発表された。本分野のQFTの精度管理については、日本国内において公的機関等による取り組みや支援が進んでおらず、今後他の検査項目

でも同様の取り組みが重要であると思われる。最後に招請講演として米国第 2位の規模を誇る検査センター、LabCorpよりお招きしたMelodie Beardに、米国における結核対策とQFT検査について紹介して頂いた。結核低蔓延国の米国の結核罹患率は、3.6(対 10万人)(2)で、日本の 4分の 1以下(17.7/10万人 2011年)である。しかしながら同施設における本検査の拡販率は、毎年 50%以上となっており、結核撲滅に政府一丸となって進められているという。 セミナーでは、全米における同施設での検査の運用

方法はもとより、どのようにして検査の精度を保ち

ながら、普及したのかを分り易く発表して頂いた。

結核中蔓延国である日本において、キアゲン社は

QFT検査を製品として販売するだけでなく、今後も日本の結核罹患率低下にこのQFTが貢献できるよう、引き続き各地でのセミナーやシンポジウムを開

催していく。また結核が大きな問題となる新たなる

分野(介護老人施設、透析、リウマチなど多岐に渡

る分野)での普及を進めるべく、今後も啓発活動を

行なっていく予定である。

加藤 誠也 先生

柳原 博樹 先生

武内 健一 先生

Melodie A. Beard, MT(ASCP)

参考文献

1. 結核の統計 2012 新規登録結核患者にしめる高齢者結核の割合の年次推移より

2. 結核の統計 2012 世界各国の全結核届出率の年次推移より

Page 18: QIAGEN eyes

18 www.qiagen.co.jp Issue 6/2013

Letter from Technical Service

貴重なサンプルからの RNA 精製。より最適な製品選択から研究は始まります。

ご不明な点、ご質問はテクニカルサポート(E-mail:[email protected])へお問い合わせください。

Spotlight on Expertise迅速な RNA安定化 ̶ 組織、細胞に応じた製品選択を

– 細胞保存用に RNAlater®を使用したのですが、遠心してもペレットが浮遊してしまいます。

– 組織を保存する際、RNAlaterを使用しているのですが、同様に細胞も使用できますか?

細胞保存用に最適化された RNAprotect® Cell Reagentをご使用ください。

RNA安定化試薬 RNAlaterに関して、このようなご質問をよくお寄せ頂きます。

実は RNAlaterは組織保存用のため、細胞の場合、RNAlater自体の粘性により 細胞中への液の浸透が難しくなり、ペレットが液面に浮いてしまうケースがあ

ります。その場合、適切に細胞内 RNAを安定して保存、精製することができません。そこで細胞内により浸透するよう最適化され、また培養液を除去する

ことなく迅速に RNAを安定化する RNAprotect Cell Reagentをご案内すると、 「知らなかった!」とお声を頂くことがございます。

高精度な遺伝子発現解析データを得るためにも、今一度サンプル保存・安定化

を見直す機会にして頂ければと思います。

組織保存用:RNAlater RNA Stabilization Reagent(Cat. no. 76104、76106)

細胞保存用:RNAprotect Cell Reagent(Cat. no. 76526)

RNAprotect Cell Reagent

Q

A

Did you know?Expired Date ̶ 使用保証期間について

– ラボの掃除をしていたら、使いかけ/未使用の古いキットを発見!まだ使用は可能ですか?

– 使用保証期間が箱に記載されていないため、わかりません。

英語版 Handbookに目安の使用保証期間 *が記載されています。

一部の製品を除き、ご購入いただいた製品自体には、使用保証期間(Exp.-Date)の記載がございません。実は各製品の英語版 Handbookに目安の期間が記載されているのをご存知でしょうか。

ウェブサイトでの英語版 Handbookのダウンロードおよび保証期間の確認方法

1. QIAGENウェブサイト www.qiagen.co.jpの検索ボックスに製品名あるいは Cat. no.を入力し、検索。 “関連資料”タブの“Kit Handbooks”から (EN)と表記のある Handbookをダウンロードしてください。

2. 英語版 Handbook内の“Storage”に“At least XX months under these condition”のように目安の 使用保証期間が記載されています。

注意:こちらに記載されている期間は皆様のお手元に届いてからの日数とお考えください。

ご購入された時期がご不明な場合は、箱に記載されている保証番号と Lot No.をお知らせ頂ければ、 より詳細に購入時期や使用保証期間をお伝えすることも可能です。

* 英語版 Handbook内の“Storage”に記載された適切な条件下で保存されていない場合は保証対象外となります。予めご了承ください。

Q

A

Page 19: QIAGEN eyes

Issue 6/2013 Sample & Assay Technologies 19

QIAGENクイズ

?

QIAGENクイズ

大腸菌由来のプラスミド精製時にコンタミしてくるエンドトキシンは、様々なアプリケーションに悪影響を及ぼします。以下のアプリケーションの悪影響で、エンドトキシンが原因で起こる特徴的な症状は次のどれでしょうか。該当する番号をお選びください。

1)OD260/280 nmの低下

2)顕著なトランスフェクション効率の低下

3)RT-PCRでのNo Template Controlでの増幅

4)精製された DNAの分解

ヒント:弊社ウェブサイト(www.qiagen.co.jp)の検索ボックスに “バクテリア由来のエンドトキシン除去”を入力しクリック!

前号の QIAGENクイズの正解:4番(15~ 100 µg)

応募方法:

クイズの解答と氏名、所属(施設名、学部、研究室名)、住所、電話番号、

メールの件名に“QIAGENクイズ応募”とご記入の上、電子メール

[email protected])にてご応募ください。抽選で 30名様に 弊社から粗品を送付させていただきます。

応募期間:2013年 7月 26日(金)まで

またご応募された方には、定期的に弊社の製品、アプリケーション

情報満載のメールマガジンを送付させていただきます。

注:当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせて頂きます。

QIAGEN Plasmid Kitおよび 2x CsCl密度勾配遠心法は、共に比較的低いエンドトキシンレベルで高純度の DNAが得られます。シリカ懸濁液で精製した DNAには、明らかにより多量のエンドトキシンが混入しています。EndoFree® Plasmid Kit(Cat. no. 12362など)で精製した DNAには、無視できるわずかなエンドトキシン(<0.1 EU/µg Plasmid DNA)しか混入していません。

特許をもつ EndoFree Plasmid法は、スタンダードのQIAGEN Plasmid精製法にエンドトキシン除去が組み込まれています。

関連アプリケーションのご紹介

プラスミド精製法とトランスフェクション効率の比較表記の方法でそれぞれ 2回個別に精製した pRSVcatを COS-7、HeLa、LMH細胞にはリポソーム系試薬を、Huh7 細胞にはリン酸カルシウムを用いて 2回トランスフェクションを行なった。QIAGEN Plasmid Kitで精製した DNAでの効率を 100%とした場合の相対的な割合で、平均 トランスフェクション効率を表示した。

0

20

60

100

140

180

COS-7 HeLa Huh7

Silica-gel slurryQIAGEN Plasmid KitEndoFree Plasmid Kit2 x CsCl

Ave

rage

tran

sfec

tion

effic

ienc

y (%

)

Page 20: QIAGEN eyes

Sample & Assay Technologies

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株式会社 キアゲン n 〒 104-0054 n 東京都中央区勝どき 3-13-1 n Forefront Tower II Tel:03-6890-7300 n Fax:03-5547-0818 n E-mail:[email protected]

Trademarks: QIAGEN®, EndoFree®, RNAprotect® (QIAGEN Group); Life Technologies®, Ion Torrent® (Life Technologies Corporation.); Illumina®, MiSeq® (Illumina, Inc.); Covaris® (Covaris Inc.); Ensemble® (Genome Research, Ltd.).“RNAlater®” is a trademark of AMBION, Inc., Austin, Texas and is covered by various U.S. and foreign patents.本文に記載の会社名および商品名は、各社の商標または登録商標です。 2302124 05/2013 © 2013 QIAGEN, all rights reserved

次号予告

がんのメカニズムを解明するために、エピジェネティクス、オミックス解析、次世代シークエンサー

等の新規技術など様々なアプローチが取られています。最近の分子病態学の一例として上皮間葉転移

(EMT)の機能が明らかにされ、新しいがん治療戦略として注目を集めています。また、がん幹細胞を特定するマーカーが発見され源巣撲滅の研究も進んでいます。次号では、これら最近のがん研究ホット

トピックスについてご紹介します。

記載のQIAGEN製品は研究用です。疾病の診断、治療または予防の目的には使用することはできません。最新のライセンス情報および製品ごとの否認声明に関してはウェブサイト www.qiagen.co.jpの“Trademarks and Disclaimers”をご覧ください。QIAGENキットの Handbookおよび User Manualは www.qiagen.co.jpから入手可能です。

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