QbDアプローチへの 品質工学の適用と その課題 - NIHSQbDアプローチへの...

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QbDアプローチへの 品質工学の適用と その課題 武田薬品工業株式会社 岡部貴幸 2012/04/11 第9回医薬品評価フォーラム

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QbDアプローチへの 品質工学の適用と

その課題

武田薬品工業株式会社

岡部貴幸

2012/04/11 第9回医薬品評価フォーラム

アウトライン

1. タケダにおけるQbDへの取り組み

2. 品質工学のQbDへの適用

3. QbDアプローチの課題

2

アウトライン

1. タケダにおけるQbDへの取り組み

2. 品質工学のQbDへの適用

3. QbDアプローチの課題

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日本の医薬品は「高品質」です。

世界に通用する「高品質」!

「高品質」が患者さんのためになっているか?

過剰品質になっていないか?

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QbDに取り組むということ

社会への貢献機会の拡大

「適切」な品質の医薬品を、

「適切」なコストで製造し、供給し続ける

QbDは「適切であること」を示すための

グローバル基準の「物差し」

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Qトリオ導入

変化への適応手段

将来的な規制要件化への対応

• 今後求められることを知る

高機能製剤の製品開発

• 製品への深い理解

コスト削減の要求

• 工程への深い理解

収率向上、安価な原料、グローバル生産・・・

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Qトリオが求めていること

Q8:つくりこまれた品質

Q9:品質に影響するリスクの管理

Q10:体系的な品質保証システム

大半は企業がすでに行っていること。

従来からの活動を「明確化」「体系化」し、 評価しやすい形にする。

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「Qトリオ イニシアチブ」

部門横断的なグローバルプロジェクトチーム

複数のサブチームからなる

医薬品品質システム

品質リスクマネジメント

ナレッジマネジメント

PAT

技術移管

デザインスペース

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具体的な取り組み

Q8

パイロットテーマでのQbDアプローチの実践 QbDマニュアルの制定 PATマニュアルの制定 各種ソフトウェアの選定と導入 他

Q9 リスク管理手順の標準化 治験薬開発、技術移転へのQRMの導入 他

Q10 グローバル「質」保証ポリシーの制定 研究部門及び工場の品質マニュアルの制定 業務手順書への落とし込み 他

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アウトライン

1. タケダにおけるQbDへの取り組み

2. 品質工学のQbDへの適用

3. QbDアプローチの課題

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「品質工学」とは?

技術開発を効率的に行う技法

直交表の使用など、「実験計画法」に類似した 手順で進める

実験計画法 品質工学

狙い

・効率のよい実験方法を計画する

・実験結果を適切に解析する

・品質を不安定にする要因を調べる

・「頑健な」システムを構築する

手法 ・影響の高いパラメータの抽出 ・バラツキの把握

・バラツキの低減 ・目標値への落とし込み

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QbDと品質工学

「コントロールできる因子」の影響を把握

「コントロールできない因子」の影響を最小化

リスクの把握と影響の管理:Q9

「頑健なシステム」を目指す

品質と工程の作りこみ:Q8

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「因子」の捉え方

制御因子 信号因子 結果

誤差因子

(ノイズ)

インプット

(X)

アウトプット

(Y) システム

実験計画法では 全て「入力因子」 として扱われる

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開封後の製剤中の含量

「因子」の捉え方(例)

処方 時間 含量

開封後の状態

(光、湿度など) コントロール できる因子

コントロール できない因子

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「バラツキ」に対する考え方

故意にバラつく条件で実験を行い、 まずバラツキをなくす。

x1 x2 X3 0 入力(x) 0 x1 x2 x3

y1

y3

y2

出力

(y)

: 誤差因子A : 誤差因子B : 誤差因子C

2段階設計

1段階設計

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事例1:腸溶性コーティング

主薬を含有する顆粒に、腸溶性ポリマーをコーティング

0

20

40

60

80

100

0 60 120 180

Time [min]

Dis

solv

ed [

%]

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事例1:腸溶性コーティング

各因子とアウトプットの関係

溶出プロファイルの、消化管内pHによる バラツキを抑えるには?

製造条件 時間(X) 溶出率(Y)

消化管内pH

(試験液pH)

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事例1:腸溶性コーティング

信号因子:溶出時間、出力:溶出率

誤差因子:溶出試験液pH(4水準)

制御因子:・1因子2水準+7因子3水準(L18直交表)

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制御因子 水準1 水準2 水準3

A スプレーガン口径(mm) 0.8 1.2 -

B 給気風量(Nm3/min) 1.0 1.2 1.4

C 吸気温度(℃) 40 45 50

D 注液速度(g/min) 13 15 17

E スプレーエア量(NL/min) 75 85 95

F スプレーガン高さ(cm) 10 15 20

G 液中固形分濃度(%) 13.2 10.0 7.8

H 液中アルコール濃度(%) 少 中 多

事例1:腸溶性コーティング

溶出試験結果

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60

Dis

so

lve

d (

%)

Time (min)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60

Dis

so

lve

d (

%)

Time (min)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60

Dis

so

lve

d (

%)

Time (min)

0

20

40

60

80

100

0 20 40 60

Dis

so

lve

d (

%)

Time (min)

pH 6.9

pH 7.2

pH 7.0

pH 7.1

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事例1:腸溶性コーティング

解析結果(要因効果図)

20

6

8

10

12

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1 2 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3

A B C D E F G H

SN

ra

tio

(d

b)

1

2

3

4

5

6

7

8

1 2 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3 1 2 3

A B C D E F G H

Se

nsitiv

ity (d

b)

バラツキへの影響度合い

溶出プロファイルへの影響度合い

ガン口径

給気風量

給気温度

注液速度

スプレーエア

ガン高さ

固形分濃度

溶媒濃度

事例1:腸溶性コーティング

各パラメータの「溶出プロファイル」「バラツキ」への影響度合いを一度に把握。

パラメータ 一因子実験 品質工学

溶出 バラツキ 溶出 バラツキ

ガン口径 ? ? Mid. Mid

給気風量 ? ? High High

吸気温度 ? ? Mid Low

注液速度 High? ? High Low

スプレーエア ? ? High High

ガン高さ High? ? Mid Mid

液濃度 ? ? Mid Low

溶媒濃度 High? ? High High 21

事例2:OD錠の処方設計

一般的に、打錠工程のスケールアップ時には打錠速度が上がり、圧縮時間が短くなる。

圧縮時間が短縮されても、錠剤硬度に 影響の出ない処方・製造条件とは?

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圧縮時間の短縮↓

錠剤硬度の低下↓

硬度が低下しないよう、打錠圧上昇↑

口腔内崩壊時間延長↑

事例2:OD錠の処方設計

各因子とアウトプットの関係

スケールアップによりターンテーブルの回転速度が上がっても、硬度を一定にするには?

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処方・製造条件 打錠圧(X) 錠剤硬度(Y)

ターンテーブル

回転速度

事例2:OD錠の処方設計

信号因子:打錠圧、出力:錠剤硬度

誤差因子:ターンテーブル回転数

制御因子:・11因子2水準(L12直交表)

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制御因子 水準1 水準2

A 結晶セルロース グレード KG-802 UF-711

B 結晶セルロース量(%) 5 15

C L-HPC量(%) 5 15

D 崩壊剤量(%) 2.5 7.5

E 滑沢剤 グレード A B

F 滑沢剤量(%) 1.5 2

G 造粒時品温(℃) 低い 高い

H 1回目混合時間(min) 1 5

I 2回目混合時間(min) 1 5

J - - -

K - - -

事例2:OD錠の処方設計

解析結果(要因効果図)

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24

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1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2

A B C D E F G H I J K

SN

比(d

b)

A:MCC grade

B:MCC ratio (%)

C:LH33 ratio (%)

D:Crospovidone ratio (%)

E:Mg-St grade

F:Mg-St ratio (%)

G:FBG temp. (℃)

H:Mixing1 time (min)

I:Mixing2 time (min)

J:error 1

K:error 2

-38

-37

-36

-35

-34

1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 2

A B C D E F G H I J K

感度

(db

)

A:MCC grade

B:MCC ratio (%)

C:LH33 ratio (%)

D:Crospovidone ratio (%)

E:Mg-St grade

F:Mg-St ratio (%)

G:FBG temp. (℃)

H:Mixing1 time (min)

I:Mixing2 time (min)

J:error 1

K:error 2

<バラツキに影響のある因子> 滑沢剤グレード、造粒時品温、 1回目混合時間

<硬度に影響のある因子> 結晶セルロース量、L-HPC量

バラツキへの 影響度合い

硬度への 影響度合い

事例2:OD錠の処方設計

結果

硬度:40%向上

バラツキ:70%低減(回転速度の影響を軽減)

崩壊時間:15%増加(許容範囲)

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品質工学の検討を通じて

パラメータ選択の妥当性が向上

コントロールできない因子の影響も加味した上で、複数の選択肢から処方・パラメータを設定できる

頑健なシステム

ラボスケールの段階からコマーシャルスケール 以降を意識した処方・製造法となる

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QbDアプローチへの適用

実験計画法(DOE)との使い分け

品質工学・・・研究初期に適する

多因子の影響を一度に把握

コントロールできない要因に対して頑健に

実験計画法・・・研究後期に適する

主効果と交互作用を正確に把握

リスクの高いパラメータに対してピンポイントでの実験

適切な手法を適切な段階で用いる

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アウトライン

1. タケダにおけるQbDへの取り組み

2. 品質工学のQbDへの適用

3. QbDアプローチの課題

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QbDを実践する上での課題

ガイドラインの「向こう側」を見る

有効・安全で高品質の医薬品を提供するために

従来から培ってきたことの活用

変えること、変えないことの見極め

達成したいことの理解と手順への落とし込み

手順の背景となる考え方への深い理解と共有

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議論していきたいこと

当局と企業での認識のすり合わせ

「規制上の柔軟性・弾力性」とは?

申請時のデータの質と量は?

変更のための要求事項の当局間での違い?

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最後に

患者さんへの思いは同じ

QbDを議論の材料として、当局と企業のあるべき姿を共有する。

「こうすればいい」から「こうしたい」への転換

どうすれば「有効」「安全」「高品質」な医薬品で あることを説明できるか、真剣に考える。

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ご清聴ありがとうございました。

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