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57.その他えび(アカエビ,モロテアカエビ等) その他えびの 10 支店合計の漁獲金額は,2002 年度には 2400 万円あったが,年々減少して 2015 年度以降は 150 万円 程度まで激減した。 1) 主に大井湊,越ヶ浜,小畑,浜崎,三見の 4 支店で漁獲されているが,小畑,浜崎,三見支店で は内湾性のアカエビなどの小エビ類が主で,その漁業種は小型底曳網と考えられ,大井湊と越ヶ浜支店では,バイ籠 で混獲される沖合性のモロテアカエビが主で,その漁業種はその他漁業と考えられる。そこで以下では,小畑,浜 崎,三見支店の合計と大井湊,越ヶ浜支店の合計データの 2 通りの解析を行った。 1.小畑,浜崎,三見支店の解析結果 小畑,浜崎,三見支店合計の底びき網漁業経営体数は,図 2 に示すように 2002~2008 年度の間に約 6 割に減少し, その後も減少が続いて 2013 年度には 1/3 近くまで減少した。 重回帰分析の結果,表1に示すように両 Case とも無変換・重み無しのほかはすべての場合が統計的に有意で,AIC 値は対数変換・重み無しの場合が最小である。また後述する表 2 左に示すように,対数変換の中では計算結果に相違 がない。そこでここではいずれの Case も対数変換・重み無しの結果を採用した。選択された説明変数は, いずれの Case も経過年数の 2 乗だけで経営体数の項は選択されず,重相関係数はそれぞれ 0.968 と 0.972 であった。結果を図 3~6(Case1)と図 7~10(Case2)に示す。 表 1 その他えび小畑,浜崎,三見支店の各計算結果で最小の AIC 値 無関係は関数関係がない場合の AIC 値,()は解析結果が 5%水準で統計的に有意でないことを示す。 経営体数 経営体数 年度 年度 図2 小畑,浜崎,三見支店合計の小型底びき網漁業経営体数 左:Case1 右:Case2 図 1 その他えびの漁協支店別漁獲金額 (2002~2017 年度) 支店別年度 万円 **** 無関係 重み付き 重み無し 無関係 重み付き 重み無し 無変換 221.1 165.4 (183.9) 221.2 165.2 (183.7) 対数変換 209.6 167.3 164.4 209.9 165.5 162.6 Case1 Case2

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57.その他えび(アカエビ,モロテアカエビ等)

その他えびの10支店合計の漁獲金額は,2002年度には2400万円あったが,年々減少して2015年度以降は150万円

程度まで激減した。1)主に大井湊,越ヶ浜,小畑,浜崎,三見の4支店で漁獲されているが,小畑,浜崎,三見支店で

は内湾性のアカエビなどの小エビ類が主で,その漁業種は小型底曳網と考えられ,大井湊と越ヶ浜支店では,バイ籠

で混獲される沖合性のモロテアカエビが主で,その漁業種はその他漁業と考えられる。そこで以下では,小畑,浜

崎,三見支店の合計と大井湊,越ヶ浜支店の合計データの2通りの解析を行った。

1.小畑,浜崎,三見支店の解析結果

小畑,浜崎,三見支店合計の底びき網漁業経営体数は,図2に示すように2002~2008年度の間に約6割に減少し,

その後も減少が続いて2013年度には1/3近くまで減少した。

重回帰分析の結果,表1に示すように両Caseとも無変換・重み無しのほかはすべての場合が統計的に有意で,AIC

値は対数変換・重み無しの場合が最小である。また後述する表2左に示すように,対数変換の中では計算結果に相違

がない。そこでここではいずれのCaseも対数変換・重み無しの結果を採用した。選択された説明変数は, いずれの

Caseも経過年数の2乗だけで経営体数の項は選択されず,重相関係数はそれぞれ0.968と0.972であった。結果を図

3~6(Case1)と図7~10(Case2)に示す。

表1 その他えび(小畑,浜崎,三見支店)の各計算結果で最小のAIC値

無関係は関数関係がない場合のAIC値,()は解析結果が5%水準で統計的に有意でないことを示す。

経営体数 経営体数

年度 年度

図2 小畑,浜崎,三見支店合計の小型底びき網漁業経営体数

左:Case1 右:Case2

図1 その他えびの漁協支店別漁獲金額

(2002~2017年度)

支店別年度

万円

**** 無関係 重み付き 重み無し 無関係 重み付き 重み無し

無変換 221.1 165.4 (183.9) 221.2 165.2 (183.7)

対数変換 209.6 167.3 164.4 209.9 165.5 162.6

Case1 Case2

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kgの対数

図3,4および図7,8をみると,経営体当たりと合計漁獲量の回帰式は,いずれのCaseも2002年度以降急激に減

少し,2016年度以降は殆ど0に近い。この変動を分解 (図5,9)した結果も両Case殆ど同じで,経営体数項に変化は

なく,現存量項は2002年度から次第に減少が大きくなっている。これから,回帰式の2002年度以降の大きな減少は

経営体数減少と現存量項減少の相乗効果によるものといえる。経営体数項と経営体数の関係はないが,現存量が減少

していれば漁獲率を上げても効果は期待できない。

表2に,2018年度と2017年度の結果の要点を比較して示す。表から,Case2については,2017年度で有意なのは無

変換・重み付きの場合だけであるが,これは上に述べた結果と一致しているから,この結果は安定しているといえ

る。一方Case1については,両年度とも統計的に有意な対数変換の場合でも,経営体数項と現存量項の変化が逆にな

るなど大きな相違がある。これは,線形回帰分析ではデータ区間端部の影響が大きいことと,図2左に示すように経

営体数の変化が直線に近いことによる共線性の影響が大きいためと考えられる。そのため,いずれが真実に近いか

は,今後のデータの推移と,他の情報を勘案して判断する必要がある。

Case1(小畑,浜崎,三見支店)の場合:

年度 年度

図3 経営体当たり漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

図4 合計漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

年度

図5 経営体数項と現存量項の経年変化 実線:経営体数項, 点線:現存量項

図6 経営体数項と経営体数項の関係 縦軸:経営体数項, 横軸:経営体数

経営体数

kg ton

kgの対数

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kg

kgの対数 kgの対数

Case2(小畑,浜崎,三見支店)の場合:

表2 その他えび(小畑,浜崎,三見支店)の2002~2018年度(左)と2002~2017年度(右)の計算結果の比較

左端の数値は関数関係がない場合のAIC値,()は5%水準で統計的に有意でないことを示す。

ton

図7 経営体当たり漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

図8 合計漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

年度 年度

年度

図9 経営体数項と現存量項の経年変化 実線:経営体数項, 点線:現存量項

図10 経営体数項と経営体数項の関係 縦軸:経営体数項, 横軸:経営体数

経営体数

Case1 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数 Case1 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数

重み付き 165.4 減少 一定 過少 重み付き (174.3) 一定 減少 不変

重み無し (183.9) 一定 減少 不変 重み無し (174.3) 一定 減少 不変

重み付き 167.3 一定 減少 不変 重み付き 155.1 減少 一定 過少

重み無し 164.4 一定 減少 不変 重み無し 153.7 減少 一定 過少

無変換221.1

無変換208.3

対数変換209.6

対数変換199.9

Case2 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数 Case2 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数

重み付き 165.2 一定 減少 不変 重み付き 159.4 一定 減少 不変

重み無し (183.7) 増加→一定 減少→微増 過剰 重み無し (174.3) 一定 減少 不変

重み付き 165.5 一定 減少 不変 重み付き (158.1)微減→微増→一定

減少 過少→過剰

重み無し 162.6 一定 減少 不変 重み無し (156.1)微減→微増→一定

減少 過少→過剰

無変換221.2

無変換208.4

対数変換209.9

対数変換200.3

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2.大井湊,越ヶ浜支店の解析結果

大井湊と越ヶ浜支店合計のその他の漁業経営体数は,図11に示すように2002~2008年度の間に1/3以下にまで減

少し,その後は殆ど変化していない。

重回帰分析結果のAIC値を表3に示す。表から,いずれのCaseも対数変換・重み付きの場合だけが有意でなく,

AIC値は無変換・重み付きの場合が最小である。また,後述する表4左が示すように,計算結果はそれぞれのCaseの

各場合がすべて同じである。そこで以下では両Caseとも無変換・重み付きの結果を採用した。選択された説明変数は

いずれも経営体数および経過年数の2乗と3乗で,重相関係数はそれぞれ0.897と0.901であった。結果を図14~17

(Case1)と図18~21(Case2)に示す。

図12,13および図16,17をみると,いずれのCaseも,経営体当り漁獲量の 回帰式は,2008年度に一時的に増加

した後,2016年度まで減少し,その後はやや回復傾向になっているが,合計漁獲量の回帰式は,2002~2016年度の間

に連続的に減少した後,やや回復傾向になっている。この変動を分解 (図14,18)した結果も両Case殆ど同じで,経

営体数項は2008年度を屈折点とする増加曲線となり,一方現存量項は,2002~2016年度の間に減少した後,下げ止

まる(Case1)かやや増加するCase2)減少曲線になっている。Case2の経営体数項は2014年度以降が一定となってい

ることがやや異なるがが,ほとんど差はみられない。これから,経営体当たり漁獲量の回帰式が2007年度まで大きな

変化がないのは,経営体数と現存量減少の効果を経営体数項の増加が補っているからで,2014年度の一時的増加は経

営体数項の変化率が不連続に変化したためである。また,その後の大きな減少は,現存量項の減少が経営体数項の増

加を上回るようになったためで,2016年度以降の下げ止まりは現存量項の下げ止まりによるものである。経営体数項

と経営体数の関係は負の傾斜が次第に大きくなっているから,現状で経営体数が増加すれば却って漁獲量が減少する

可能性が高い。したがって現存量減少の原因を解明する必要がある。

表4に,2018年度と2017年度の結果の要点を比較して示す。2018年度はCase2の現存量項の直近の変化に微増が

加わっているが,これは追加データを反映したもので,計算上の不安定性を示すものではない。その他の計算結果は

両年度のすべての場合が一致しているから,上に述べた結果は計算上安定している。

経営体数 経営体数

年度 年度

図11 大井湊,越ヶ浜支店合計のその他の漁業漁業経営体数

左:Case1 右:Case2

表3 その他えび(大井湊,越ヶ浜支店)の各計算結果で最小のAIC値

無関係は関数関係がない場合のAIC値,()は解析結果が5%水準で統計的に有意でないことを示す。

**** 無関係 重み付き 重み無し 無関係 重み付き 重み無し

無変換 162.1 143.3 145.1 162.4 142.9 145.0

対数変換 164.9 (148.2) 147.6 165.3 (147.9) 147.3

Case1 Case2

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kg

kg

Case1(大井湊,越ヶ浜支店)の場合:

Case2(大井湊,越ヶ浜支店)の場合:

年度 年度

図12 経営体当たり漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

図13 合計漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

年度

図14 経営体数項と現存量項の経年変化 実線:経営体数項, 点線:現存量項

図15 経営体数項と経営体数項の関係 縦軸:経営体数項, 横軸:経営体数

経営体数

kg ton

kg

ton

図16 経営体当たり漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

図17 合計漁獲量の経年変化 実線:回帰式,点線:標準偏差,●:実現値

年度 年度

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kgの対数 kgの対数

その他えびの漁獲量はくるまえびと同様に激減している。この要因を小畑,浜崎,三見の3支店(内湾性のアカエ

ビ類が主)と大井湊,越ヶ浜の2支店(外海性のモロテアカエビが主)に分けて解析すると,2支店ではいずれの

Caseでも現存量の減少が明らかに示されたが,3支店のCase1については,昨年度と今年度で判断の分かれる結果と

なった。その原因は経営体数の変化が直線に近いことによる計算上の不安定性にあると考えられるが,それは今後デ

ータ数が増えれば緩和されると考えられる。その意味では,昨年度より今年度の結果の方が信頼できる。今年度の

Case1とCase2の結果が同じこともそれを裏付ける。したがって,その他えびの漁獲量激減の原因は,経営体数の減少

ではなく現存量の減少である可能性が高い。

参考資料

1) 品川汐夫(2019):旧萩市漁協 10 支店における漁獲組成年変動の相違について,http://www.hagi-

fish.com/R01/houkoku2.pdf

2) 品川汐夫(2019):2002~2018 年度の萩市 10 漁協支店合計の漁獲量組成の経年変化,http://www.hagi-

fish.com/R01/AnnualCatch.pdf

3) 品川汐夫・渡邊俊輝(2019):漁獲量変動要因の重み付き最小二乗法による解析手法,http://www.hagi-

fish.com/R01/CatchVariateAnalysis.pdf

ホーム:http://www.hagi-fish.com/Index.htm

表4 その他えび(大井湊,越ヶ浜支店)の2002~2018年度(左)と2002~2017年度(右)の計算結果の比較

左端の数値は関数関係がない場合のAIC値,()は5%水準で統計的に有意でないことを示す。

年度

図18 経営体数項と現存量項の経年変化 実線:経営体数項, 点線:現存量項

図19 経営体数項と経営体数項の関係 縦軸:経営体数項, 横軸:経営体数

経営体数

Case1 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数 Case1 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数

重み付き 143.3 増加→微増 減少 過剰 重み付き 134.5 増加→微増 減少 過剰

重み無し (145.1) 増加→微増 減少 過剰 重み無し 136.0 増加→微増 減少 過剰

重み付き 148.2 増加→微増 減少 過剰 重み付き 133.1 増加→微増 減少 過剰

重み無し 147.6 増加→微増 減少 過剰 重み無し 132.6 増加→微増 減少 過剰

無変換162.1

無変換153.2

対数変換164.9

対数変換156.7

Case2 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数 Case2 重み AIC 経営体数項 現存量項 経営体数

重み付き 142.9増加→微増→一定

減少→微増 過剰 重み付き 134.5増加→微増→一定

減少 過剰

重み無し 145.0増加→微増→一定

減少→微増 過剰 重み無し (136.2)増加→微増→一定

減少 過剰

重み付き (147.9)増加→微増→一定

減少→微増 過剰 重み付き (133.0)増加→微増→一定

減少 過剰

重み無し 147.3増加→微増→一定

減少→微増 過剰 重み無し (132.4)増加→微増→一定

減少 過剰

対数変換165.3

対数変換157.1

無変換162.4

無変換153.4