1. 胃の構造1. 復習 胃体部 胃の構造と役割 胃底部 ペプシン 胃酸 粘液 幽門部 噴門 タンパク質を分解 病原菌の殺菌やペプシノーゲンの活性化
Percutaneous Endoscopic Gastrostomy 内視鏡的胃瘻造設術 · 2011-09-28 ·...
Transcript of Percutaneous Endoscopic Gastrostomy 内視鏡的胃瘻造設術 · 2011-09-28 ·...
Percutaneous Endoscopic Gastrostomy
内視鏡的胃瘻造設術
ご案内
社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院
~はじめに~ここ数年、脳の病気などで飲み込む機能が障害され、食べ物や唾液が気管や肺に侵入
し肺炎を起こしたり、飲み込む機能が障害されたために低栄養となり入退院を繰返す患者
様が増えています。それらを解消するため様々な対策が講じられておりますが、その一つと
して内視鏡的胃瘻造設による経腸栄養が普及してきております。当院においても、その施行
頻度が高くなっており、患者様、ご家族の皆様に「内視鏡的胃瘻造設術」をより深く知って頂
くために、パンフレットを作成致しました。
~内ない
視し
鏡的胃瘻造設術きょうてきいろうぞうせつじゅつ
の対象者と適応について~
Q1. 胃瘻はどんな場合に造設されるのですか?
脳の障害、認知症などにより自分で食べる意欲が障害された方。
神経筋疾患などにより、飲み込む機能が障害された方。
頭部、顔面の傷害により食べる機能が障害された方。
食道や胃の病気により、口から食べる機能が障害された方。
鼻から管を入れ経管栄養をされている方で、誤嚥(ごえん※1)してしまう方。
口からご飯は食べられても、誤嚥をしてしまう方。
※ 1 誤嚥(ごえん):食べ物や唾液が肺(気管)に入ることです。普通、食べ物は食道に
入り、肺などには入りません。
Q2. 上記の障害のうち、以下の条件を満たす方が胃瘻造設術の適応者となります
胃瘻造設術に耐えられる全身状態である方。
Q1、で挙げた障害はあるが、胃・腸などの消化吸収機能が正常である方。
経腸栄養を行う期間が4週間以上ある方。
医師、ご家族と相談し、胃瘻がその人にとって最も適した栄養摂取方法であると
判断された方。
胃瘻とは、お腹に作った穴のことです。それに専用の器具と管(チューブ)を取り 付け、その管に栄養剤を流し、胃や腸にて栄養摂取する方法を経腸栄養といいます。
内視鏡を用いて胃瘻を造設する方法は、患者さんへの肉体的、経済的負担が軽いことか
ら、近年日本でも厚生労働省の在宅療養の方針により、欧米をしのぐ勢いで内視鏡を使
用して胃瘻を造設する方が増えています。
~胃瘻い ろ う
とは?経けい
腸ちょう
栄養えいよう
とは?内視鏡術とは?~
内視鏡的胃瘻造設術について Q3. 鼻の管(チューブ)から栄養を入れる経鼻栄養と比べて、
胃瘻栄養の利点は何ですか?
一般的な経鼻栄養では管が鼻・のど・食道にいつも入っているため、のどの辺りが
不潔になり易く不快感や痛みも生じます。また気管への逆流も起こりやすくなります。
そのために肺炎がおこりやすく、物を飲み込む訓練などのリハビリも行いにくいとい
う欠点があります。 胃瘻栄養の場合にも同様の肺炎は起こりますが、経鼻栄養に比べて起こりにくく、
また軽症ですむという傾向があります。リハビリ訓練も行いやすく、介護者の負担も
軽くなるなどといった利点もあります。
内視鏡的胃瘻造設術では、内視鏡を使用し、お腹から直接胃の中に栄養チューブを挿入
しますが、胃瘻には以下に示すように多くの利点があります。
欠
点
利
点
経鼻管(チューブ) 胃瘻
胃瘻造設後 経鼻チューブ挿入中
・管(チューブ)交換が少なくてすむ。
(バンパー式;6ケ月に1回) (バルーン式;2ヶ月に1回)
・見た目が良い。(管が見えない) ・痰が出しやすく、痰の量が減少する。 ・管(チューブ)が太いため、
半固形物が入り、詰まりにくい。・経口摂取と併用でき、介護しやすい。
・ 管(チューブ)の挿入が胃瘻に比べ簡単である。
・管(チューブ)交換が頻回である (2週間に1回)
・ 見た目が悪く、痰が出しにくい。 ・ 自分で管(チューブ)を抜くことが、簡単にできてしまう。
⇒自己抜去してしまう。
・ 胃瘻を作る際に、多少危険がある。 ・胃瘻部に皮膚のトラブルが生じることがある。(「◎皮膚のトラブル」参照)
◎内視鏡的胃瘻造設術の方法
3)針を通してガイドワイヤーを胃の中に挿入し、内視鏡
でガイドワイヤ-を掴みながら、口から体外に抜きま
す。(図2)
図1
図2
図3
図4
図5
Q4. 胃瘻はどうやって作るのですか?また合併症は?
4)ガイドワイヤ-の先に胃瘻管(チューブ)を接続し、お
腹の壁の外よりガイドワイヤ-を引いていきます。
(図3・4)
5)管(チューブ)の端にあるバンパーが胃の壁に到着
したら10数cmに管を切り、体外から飛び出さないよう
にストッパーを装着し終了します。(図5)
注)自己抜去されても、お腹の壁と胃が離れず、再度
胃瘻管(チューブ)が挿入出来るように糸でお腹の
壁と胃を固定する事もあります。
1)緊張をほぐす薬を点滴し、眠ったままで胃カメラを胃の
中に入れます。
2)内視鏡より空気を送り、胃を膨らませ、胃とお腹の壁を
密着させます。体の外からお腹の壁に麻酔を施行し、
針を胃の中へ刺します。(図1)
胃瘻造設術中の合併症
①.出 血
お腹の壁や胃の壁に針を刺すことにより、お腹の中に出血を生じることがありま
す。多くは胃瘻のストッパ-をきつくする事で止血されますが、
まれに輸血が必要な場合があります。また開腹手術にて
止血した症例報告がありますが、当院ではこれまでに出血
にて輸血や開腹手術をしたことはありません。
②.腹膜炎
腸管を誤って刺すことにより、腸液がお腹の中に漏れ、腹膜炎が起きることがあり
ます。多くは薬(抗生剤)にて改善しますが、まれに開腹手術が必要な場合がありま
す。また胃瘻管(チュ-ブ)を自己抜去してしまうと開腹手術が必要になります。その
ため胃瘻造設術後に抑制させていただく場合があります。胃瘻造設時に胃壁固定を
すると自己抜去しても胃瘻再挿入が内視鏡的に可能です。
③.肺 炎
内視鏡を飲みこむことで、術後に肺炎を起こすことがあります。また患者様の状態
により術後しばらくしてから肺炎を起こすことがあります。多くは薬(抗生剤)にて改善
致しますが、患者様の状態により肺炎が悪化し術後 30 日以内に死亡される危険が
1-2%程度あります。
◎ 胃瘻造設術後の予定
Q5. 胃瘻を作ったあとの予定は?
点 滴:4日間で終了します。
食 事:2日後より、少しずつ栄養剤を開始します。
入 浴:4日後より一般入浴可能です。
抜 糸:1週間ほどで抜糸します。
安静度:4日後より術前と同じように動いてもかまいません。リハビリも可能です。
◎ 胃瘻からの食事方法
Q6. 食事の方法は?必要な物はありますか?
☆ 使用する栄養剤の種類・方法につきましては、患者様の状態を考慮し決定させて頂きますが、入
院中は保険適応外の栄養剤を主に使用します(食事代として算定されます)。ただし、退院後、ご
自宅で生活をされる際は、保険適応の栄養剤が多く使用されております。
保険適応の有無にかかわらず、患者様の状態を考慮し、かかりつけ医の先生と事前に相談、
調整をさせて頂いだきます。
☆ 食事の方法は、入院中に看護師が説明を行います。
注:保険適応栄養剤の自己負担額及び入院中の食事代につきましては、患者様の自己負担額割合や身体
障害者手帳をお持ちの方など、それぞれの条件によって違いがございますので、医療福祉相談室まで
お問い合わせ下さい。
胃瘻から食事をする場合、栄養剤には 2 通りあります。
①半固形タイプの栄養剤 ②流動タイプの栄養剤
流動タイプの特徴
●胃や食道からの逆流による肺炎の危険が半固形化タイプに比べ高い ●投与時間が半固形化タイプに比べ長い ●接続チューブなどの洗浄が必要 ● 価格が半固形タイプより安価
※保険適応と保険適応外のものがあり保険適応外の場合 250 円(300kcal)~350 円
(400Kcal)です。
半固形タイプの特徴
●胃や食道からの逆流による肺炎の危険が少ない ●下痢を起こしにくい ●投与時間が流動タイプに比べ短時間 ●容器の洗浄が不要 ● 価格が流動タイプより高価
※ 食品としての扱い(保険適応外)の為、種類によって違いはありますが 300 円(300kcal)~500 円(400kcal)です。
流動タイプの栄養剤は、誤嚥性肺炎を繰り返す危険があります。
胃や食道からの逆流や下痢がおこりにくい、半固形タイプの栄養剤が多く使用
されております。
図10
図11
図12
図13
必要な物 ボトル(図 10)、チューブ(図 11)
注射器、コップ、内服薬、白湯
①上半身を起こします(30度)。 注)寝たままで栄養剤を流すと、栄養剤が逆流して誤嚥を 起こす恐れがあります。
②ボトルと経管チューブをつなぎます。(図12) ③経管チューブのストッパーがかかっていることを確認します。
注)開いたままだと、栄養剤が流れ出てしまいます。
④栄養剤をボトルに入れます。(図13) 1回に投与する量は、患者様の状態やご家族の都合により、一人一人 違いますので、退院までに調整して決定します。
⑤胃瘻管(チューブ)とつなげます。 ⑥ストッパーを調節して栄養剤を流します。約1時間半~2時間で400mlを
流します。
⑦薬は、薬と白湯20mlくらいをコップに入れ、しっかり混ぜます。それを注射器で吸い、胃瘻管(チューブ)の接続部より注入します。
⑧1回量が終了したら、経管チューブと胃瘻管(チューブ)を外し白湯20ml
程度を胃瘻チューブに流します。 ⑨終了後も、逆流を防ぐために、1時間程度上半身を起こしておいて下さ
い。。
①上半身を起こします(30度)。
注)半固形タイプの栄養剤であっても、寝たまま使用
する場合、栄養剤の逆流を起こす恐れがあります。 ②半固形の栄養剤に専用コネクターを接続します。(図 7)
③胃瘻管(チューブ)の接続部より約1分~1分半程で 注入します(図 8)。
④1 回量が終了したら、専用コネクターを水分補給ゼリー
に接続し、同様に接続部より注入します。(図 9) ⑤終了後も、逆流を防ぐために、1 時間程度上半身を
起こしたままにして下さい。
2、流動タイプの食事方法
1、半固形タイプ食事の方法
必要な物 専用コネクター(図 6)
図6 図7
図8 図9
酢を使用して管理
酢なしで管理
(黄色く変色しています。)
◎ 日々のお手入れ
Q7. 日々のお手入れや、注意点は何かありますか? ①.胃瘻周辺を清潔に保つ
退院後は胃瘻部の保護は必要なく、通常どおりに入浴も可能となります。針を刺した部分が水で濡れても問題はないため、胃瘻周囲は特に何も当てる必要はありません。胃瘻周囲を洗わず不潔にしておく事の方が問題ですので、入浴しない日がある場合は、1日1回は、胃瘻周囲を、ぬるま湯や石鹸を用いてきれいにして下さい。また管(チューブ)の同一部位への圧迫を防ぐ為、管の回転を行います。カスのようなものが付いていたら、その都度取り除いてください。(図14・15・16)
☆入院中に看護師が説明を行います。
②.口の中(歯・舌等)を清潔に保つ
・ 口からご飯を食べていないと、食べている人に比べて細菌が 繁殖しやすくなります。
・ その細菌を放置しておくと、肺炎をはじめ、あらゆる感染症の 原因となります。又、口の中を刺激してあげることで、患者様の 爽快感にもつながります。
方法;☆入院中に看護師・言語聴覚士が説明を行います。口の中全体を歯ブラシでブラッシングし、濡らしたガーゼ等でふき取ります。
③.管のお手入れ(カテーテルケア)
・ 管を長持ちさせる為に栄養剤の投与が終了したら、時間を置かずに白湯を流す必要があります。栄養剤や内服薬が残ると管内を清潔に保てません。
・ チューブ型の管の場合、管内に水で希釈した酢水10ml(酢:水=1:10)を満たしておくと汚染を防止する効果があります。 (図17・18)
・ 半年後に管の交換が必要になります。交換時にボタン型の管への交換も可能です。
④.栄養剤の注入について
・ 入院中に、在宅に向けて栄養剤の調整を行いますので、 入院中と同じ方法で行ってください。
退院 1 週間前には、栄養剤は最終的にご自宅で行う物に
変更していきます。
図14
図15
図16
図17
図18
◎ 皮膚のトラブル
Q8. 胃瘻部に何かトラブルは生じますか?
①. 肉 芽にくげ(が)
と ②.瘻孔ろうこう
感染かんせん
肉芽とは、瘻孔周囲に赤く肉が盛り上がった、滲出液(ジュクジュクし
た液)がみられる状態を指します。これは傷の治癒や外からの異物に
対し重要な役割を果たします。(図19)
③.漏れに伴う皮膚炎 (図 21)
栄養剤の漏れ(管と瘻孔の隙間からの漏れ)が持続し、皮膚が常時湿
った状態になると皮膚炎が生じます。また、胃酸の漏れによっても生じま
す。術後しばらくすると、管と瘻孔がなじみ、隙間が埋まり漏れが解消さ
れることもあります。
しかし、これに膿が生じ、腫れや痛みを伴う場合には瘻孔感染が
疑われます。(図20)⇒このような場合には、「かかりつけ医」又は
「当院」へ連絡してください。
◎ 異常時の対応
Q9. 異常時の対応はどのようにすればよいでしょうか?
①.下痢
栄養剤は液体のため、下痢を起すことがあります。下痢を生じた場合には、栄養
剤の注入速度を緩め、状態に合わせて注入速度を調節していきます。
②.嘔吐
栄養剤の注入中に嘔吐を生じる場合がありますが、その場合には、一度注入を中止し
様子を見てください。
下痢・嘔吐を繰り返す方には、栄養剤をカンテンで固めてから注入する方法もあります。
その後問題が無ければ家族の判断で再開しても構いませんが、下痢・嘔吐が続く
場合には ⇒かかりつけ医」又は「当院」へ連絡してください。
③.胃瘻管が抜けてしまった場合
腹膜炎を起したり、瘻孔をふさぐ恐れがあります。この場合には
⇒直ちに、かかりつけ医」又は「当院」へ連絡してください。
④.胃瘻管が抜けそうな場合
自分で管を抜いてしまいそうな場合には、介護服を着用するなどし、管に触れないように
予防することが必要です。
図19
図20
図21
胃瘻の日々のお手入れや、トラブルついてのお問合せは
かかりつけの先生、または相澤病院 内視鏡センターにご連絡下さい。
相澤病院 内視鏡センター 0263-33-8600(代) 内線1091
- かかりつけの先生方へ -
胃瘻造設やカテーテル交換などにつきましては、
相澤病院医療連携センターまでご連絡下さい。
相澤病院 医療連携センター 0263-33-8600(代) 内線1901