Q&Aコーナー RI検査日頃の疑問にお応えします~ 散 12回 岡山技塾...

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Q&Aコーナー RI検査日頃の疑問にお応えします~ 散乱線補正のポイント 12岡山技塾 倉敷中央病院 放射線センター 松友 紀和

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Q&Aコーナー ~RI検査日頃の疑問にお応えします~

散乱線補正のポイント

第12回 岡山技塾

倉敷中央病院 放射線センター

松友 紀和

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◆無関係な位置で計測される

◆γ線の方向が変わり計測されない

第12回 岡山技塾

核医学の信号で起きていること

吸収 (absorption)

散乱 (scatter)

減弱 (attenuation)

○吸収により光子が計測されない

○γ線の方向が変わり計測されない

× ◆吸収により光子が計測されない

30-40%

25-50%

★2つの現象をまとめて「γ線の減弱」と言う

ガンマカメラから信号を見ると

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核医学における散乱線

○光電効果(光電吸収) ,コンプトン散乱 ,干渉性散乱

○核医学ではコンプトン散乱が主

●X線,γ線と物質の相互作用

○光子のエネルギーと方向が変わる

○コンプトン散乱線の割合

●コンプトン散乱

99mTcで20-30% 201Tlで40-50%

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0

0.2

0.4

0.6

0.8

1

1.2

50 70 90 110 130 150 170

Re

lati

ve v

alu

es

Energy[kev]

第12回 岡山技塾

散乱線の問題

●その1

110-125 keV 85-105 keV 70-80 keV

126-154 keV main

99mTc LEHR

散乱線は位置情報を持たない

99mTcのエネルギピーク(140keV)

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散乱線の問題

●その2

散乱線の混入によりコントラストが低下

ドーナツ状ファントム

Mix-DP

5cm 10cm

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散乱線補正法

○ Convolution Subtraction(CONV)法

○ Scatter Line Spread Function(SLSF)法

○ Transmission Dependent

Convolution Subtraction(TDCS)法

○ Triple Energy Window(TEW)法

○ Dual Energy Window Subtraction(DEWS)法

○ Dual Photo peak Window(DPW)法

○ Effective scatter source estimation(ESSE)法

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散乱線補正法

●TDCS法

○QSPECT DTARG法で採用されている散乱線補正法

○散乱線分布をモデル化し測定データから差し引く 方法

○減弱係数分布を用いて場所による散乱線の変化を 正確に表現し,高い精度の補正を実現

従来のデコンボリューション法は散乱線によるボケが位置に依存しないと仮定していたので精度に問題があった

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散乱線補正法

●TDCS法

Hidehiro lida et al, Effects of Scatter and Attenuation Correction on Quantitative Assessment of Regional Cerebral Blood Flow with SPECT. J Nucl Med, 1998; 39:181-189

投影データ 事前に求めた 散乱応答関数

減弱係数分布

散乱率(トランスミッションファクタ)を荷重としてかけてピクセル毎に散乱線変化を求める 重畳積分

→投影データ(散乱線成分) ↓

元の投影データから引く

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散乱線補正法

●DEW法

main Window

P1

sub Window

P2 真のカウント= P1‐P2xk値

primary+scatter

scatter

○メインウインドウ内の散乱線を,サブウインドウ(コンプトンウインドウ)のカウント分布から推定し,差し引く方法

k値:スケールファクタ

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散乱線補正法

●DEW法

○簡便であり,ほとんどの装置で応用可能

○光電ピーク内の散乱光子とサブウインドウ内の 散乱光子が対応していない

○単一エネルギー核種に限る

○k値の最適化が問題

メインウインドウ内:1-2次のコンプトン散乱線 散乱線ウインドウ内:高次のコンプトン散乱線

K値は実験的に求められるため,線源分布や吸収体分布,装置(コリメータ)に依存する

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散乱線補正法

○k値の影響 k = 0.5

TEW

main window:140keV±10% scatter window: 112 keV±10%

k = 1.0 k = 1.5

k = 2.0 k = 2.5

LEHR

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散乱線補正法

●TEW法

scatter

primary+scatter main Window 投影:P1 幅:W1

sub Window 投影:P2 幅:W2

真のカウント =P1‐(P2/W2+P3/W3)×W1/2

推定される scatter

台形の面積 (上底+下底)x高さ/2

○メインウインドウの両端に設定したサブウインドウから 散乱線成分を近似し,減算処理を行う方法

sub Window 投影:P1 幅:W3

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散乱線補正法

●TEW法

○複雑な散乱課程を考える必要がない

○視野外の散乱線も補正できる

○複数ピークや複数核種にも対応できる

○幅の狭いサブウインドウを使用するので統計変動の 影響を受ける

○サブウインドウデータに対する適切な前処理フィルタ の設定が必要

TEWは登録商標のため,東芝以外はこの言葉を使用できない 散乱線を引きすぎる傾向にある?

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散乱線補正法

○サブウインドウに対するフィルタの影響

サブウインドウ画像

cutoff:none 0.22cycles/cm 0.34cycles/cm

0.60cycles/cm 0.72cycles/cm 0.47cycles/cm

0.985

0.9852

0.9854

0.9856

0.9858

0.986

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

基準画像との誤差

(NM

SE)

遮断周波数 cycles/cm

遮断周波数

平滑化

低い 高い

強い 弱い

誤差

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散乱線補正の効果

○散乱線補正あり(TEW法)

○散乱線補正なし

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○臨床画像

散乱線補正の効果

コントラスト↑均一性↓

骨シンチ

タリウムシンチ

ガリウムシンチ TEW(+) TEW(-)

TEW(+) TEW(-)

TEW(+) TEW(-)

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●投影データのカウント低下(TEW法)

散乱線補正の影響

収集処理条件の

工夫が必要

散乱線成分を減算する方法 ↓

カウントは低下

0

20

40

60

80

100

120

投影データのカウント

約37%down

約23%down

123I-IMP (LME-FAN)

99mTc-HMPAO (LEHR)

散乱線補正前

散乱線補正後

散乱線補正前

散乱線補正後

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補正をうまく使う

●定量性の向上(脳血流シンチ)

Hidehiro lida et al: Effects of Scatter and Attenuation Correction on Quantitative Assessment of Regional Cerebral Blood Flow with SPECT. J Nucl Med 1998; 39:181-189.

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補正をうまく使う

●装置(コリメータ)依存性の軽減

散乱線補正を行うことで装置(コリメータ)依存性

を軽減できる

測定データに混入する散乱線は装置(コリメータ)により

異なる

LEHR LMEGP

散乱線補正後

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Collimator Correction method

No correction Mathematically calculated ratio

IDW0 IDW1

LEHR 2.13 2.27 1.76 2.60

MEGP 2.46 2.53 2.26 2.60

LMEHR 2.36 2.41 2.12 2.60

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補正をうまく使う

●定量性の向上(123I-MIBG H/M比の標準化)

Eur J Nucl Med Mol Imaging (2009) 36:560–566

散乱線補正なし

散乱線補正あり

理論値

Table 2 Planar H/M ratios obtained from the phantom study: LEHR vs. ME vs. LMEHR collimators (anterior phantom B)

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散乱線補正のポイント

○γ線が発生した本来の位置情報を持たない

○コントラストや定量性を低下させる

散乱線は不要な信号

●散乱線は

「散乱線を投影データから引くことはカウントを低下させるので問題だ」という意見もありますが…

↓ 無意味な信号を除去するので散乱線補正は大切

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散乱線補正のポイント

○散乱線を何らかの近似により求める方法

○補正の精度や特性を理解し,使用する必要がある

●臨床で用いられる散乱線補正は

放射能分布を正確に捉える技術

核医学技術に 求められるもの