PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い...

6
PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別 誌名 誌名 長野県水産試験場研究報告 = Bulletin of Nagano Prefectural Fisheries Experimental Station ISSN ISSN 02893045 著者 著者 小松, 典彦 上島, 剛 降幡, 充 尾崎, 照遵 巻/号 巻/号 15号 掲載ページ 掲載ページ p. 21-25 発行年月 発行年月 2014年3月 農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センター Tsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research Council Secretariat

Transcript of PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い...

Page 1: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用いた信州サーモンの簡易魚種判別

誌名誌名長野県水産試験場研究報告 = Bulletin of Nagano Prefectural FisheriesExperimental Station

ISSNISSN 02893045

著者著者

小松, 典彦上島, 剛降幡, 充尾崎, 照遵

巻/号巻/号 15号

掲載ページ掲載ページ p. 21-25

発行年月発行年月 2014年3月

農林水産省 農林水産技術会議事務局筑波産学連携支援センターTsukuba Business-Academia Cooperation Support Center, Agriculture, Forestry and Fisheries Research CouncilSecretariat

Page 2: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

(15), 21 -25 (2014) 長野水試研報

PCR・RFLP法およびマイクロサテライト DNAマーカーを用いた

信州サーモンの簡易魚種判別

充・尾崎照遵キ剛・降幡小松典彦・上島

A simple identification of Shinsyu Salmon in the salmonid fishes, using PCR-RFLP and

microsatellite DNA markers

Norihiko Komatsu, 00 Ueshima, Mitsuru Furihata and Akiyuki Ozak:i*

遺伝子による判別が行われている。特に缶詰のような加

工品など、外観からの判別が困難であるような場合に、

このような手法は有効である。例えば、 PCR-制限酵素断

片長多型法(以下、 PCR-RFLP法)によるサパ属やアジな

どの魚種判別技術が開発されている。 1,2)また、果樹な

どの農産物の品種判別においては、マイクロサテライト

DNAマーカー(以下、 MS-DNAマーカー)が利用されて

いる。 3)これらの方法で着目すべき点は、 DNAシークエ

ンサーなどの高価な分析機器等を使用せずとも、比較的

簡便に実施できることである。

そこで、本研究ではPCR-RFLP法とMS-DNAマーカー

を用いて、安価かっ簡便に種々のサケ・マス類と信州、|サ

ーモンを判別する技術を開発した。

信州サーモンは、ニジマス Oncorhynchusmykiss四倍

体雌とブラウントラウト Salmotrutω性転換雄の交配に

よって作出される全雌異質三倍体品種である。現在、長

野県を代表する特産品として、県内のマス類養殖業者が

主体となって、地域ブランド化を推し進めており、年々

その生産量を伸ばしている。本品種は消費者にとって、

その外観が他のサケ・マス類とよく似ており、区別がつ

きにくい。また、フィレーなどに加工された状態では、

外観からは他のサケ・マス類と区別することは極めて困

難である。したがって、他の安価なサケ・マス類による

食品偽装に対して、信州サーモンの魚種判別技術が必要

であると考える。

近年、産地偽装や品種表示不正などの防止手段として、

判別に用いた魚種とその由来および供試した方法表l

ニジマス

ニジマス

ニジマス三倍体

ニジマス四倍体

ブラウントラウトタイセイヨウサケ S.salar

ベニザケ o.nerka

ギンザケ0.kisutch

ヤマメ O.nωsou n幻 sou

アマゴ O.n幻 souishikawae

信州サーモン

ギンヒカリ・1

魚沼深雪ますη

ヤシオマス(中禅寺湖系統)勺

ヤシオマス(ドナルドソン系統)η

絹姫サーモン(イワナ系)吋

絹姫サーモン(アマゴ系)吋'13年成熟系ニジマス

勺ニジマスとアメマス Salvelinus仰 co問問お leucomaenおの全雌異質三倍体

勺ニジマスの全雌三倍体

叫ニジマスとイワナ S.leuco間四日の全雌異質三倍体

吋ニジマスとアマゴの全雌異質三倍体

有用なMS-DNAMS-DNAマーカー

マーカーの選抜 による魚種判別

o 0 0 0 0 0

0

0

0

0

0

0

0

PCR-RFLP法

。。0000000000000

供試魚の産地

長野県水産試験場産

チリ産養殖(市販品刺身)

長野県水産試験場産

長野県水産試験場産

長野県水産試験場産ノルウェー産養殖(市販品刺身)

アメリカ産天然(市販塩蔵品)

チリ産養殖(市販塩蔵品)

長野県水産試験場産

長野県産

長野県水産試験場産

群馬県産

新潟県産

栃木県産

栃木県産

愛知県産

愛知県産

魚種

句,ょっ“増養殖研究所*水産総合研究センター

Page 3: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

長野水試研報 (15), 21 -25 (2014)

材料と方法

供試魚

本研究で供試した魚種を表lに示した。これらのうち、

PCR-RFLP法では15種類を、有用なMS-DNAマーカーの

選抜では3種類を、MS-DNAマーカーによる判別法では12

種類を供試した。

DNAの抽出およびPCR反応液の調製

PCR-RFLP法およびMS-DNAマーカーによる魚種判別

では、供試魚の鰭もしくは筋肉組織10mgから、Puregene

Cell and Tissue Kit (G印刷 Systems,Pennsylvania, U. S.

A. )を用いて、 DNAを抽出した。 PCR反応液の組成は、

終濃度が0.5unitsのTaKaRaEx TaqもしくはTaKaRaEx

Taq Hot Start Version (Takara Bio, Shiga, Japan)、1xEx

Taq buffer、0.2mmol/L dNTP Mixture、0.5問nollLの各フ。

ライマーセットとなるよう調製した反応液に1.0μlの鋳

型DNA溶液を添加し、滅菌超純水を加えて全量を20μl

とした。

U.S.A. )により電気泳動 (1800V、1.5日寺間) した。その

後、 FMBIOIII Multi View fluorescenceimage analyser

(Hitachi Solutions, Tokyo, Japan) により泳動像を読み取

り、それぞれ比較した。

MS一 DNAマーカーによる魚種判別

魚種判別に有用と判定された3つのMS-DNAマーカー

(Ssa402UoS、Ssa419UoSおよび01¥仏tI1372) についてPCR

を実施し、ニジマスを雌親魚とする魚種群と信州、|サーモ

ンが判別可能か検討した。 PCR条件については、 950Cで5

分の変性の後、 950Cで30秒、 58

0Cで60秒、 72

0Cで60秒を

36サイクル、最終伸長を720Cで10分とした。プライマー

には、 Ssa402UoSのフォワードプライマー(グーGCTTT

GGCAATGCATGTGGTAA T -3 ,)およびリパースプライ

マー(タ-CCTATCCCTGTTGTTGCTGAC・-3')、 Ssa419UoS

のフォワードプライマー(グ-GGTCGTATCGCGTTTCA

表2 有用性の選抜に供したMS-DNAマーカー

MS-DNAマーカー

01¥1仏tI1020魚種判別に有用なMS-DNAマーカーの選抜では、供試 01¥仏tI1066

魚の鰭から、 QuickGene (F可iFilm, Tokyo, Japan) を用い 01¥仏11084

てDNAを抽出した。終濃度が0.025unitsのTaKaRaEx Taq 01¥仏tI1148

(Takara Bio)、1xbuffer、0.2mmollL dNTP、2.0mmollL OMMl155

MgClz、l%BSA、0.05μnoνLの蛍光標識したフォワード OMMl158

プライマ一、0.5μmollLのリパースプライマーとなるよう

調製した反応液6.0μlに、 10ng/μlの鋳型DNA溶液5.0μlを

添加し、全量を11μlとした。

PCR-RFLP~去

OMMl168

01¥1仏tI1197

0恥仏tI1204

01¥1仏11209

OMM1213

OMM1214

PCR-RFLP法については、 Russellet al. (2000) の方法4) OMM1236

を参考とした。前述のとおり PCR反応溶液を作製し、940C、01¥仏11237OMM1294 5分の変性の後、 94

0Cで40秒、 50

0Cで80秒、 720Cで80秒を

OMM13lO 35サイクル行い、最終伸長を720Cで、7分の条件で、PCRを行

01¥仏11315った。なお、プライマーの塩基配列はフォワードプライ

OMM1372 マーをL14735(5'ーAAAAACCACCGTTGTTATTCAACTA Omy101IUW

-3 ,)、リパースプライマーをH15149ad(グーGCICCTCAR Omy13DIAS

AA TGA YATTTGTCCTCA-3 ,)とした。 Ssa402UoS

PCR産物を制限酵素Dde1、Nla皿、 Sau3A1およびHae Ssa403UoS

Eで370C、1時間処理した後、 3%アガロースゲノレ

(Nusieve 3:1 Agerose, Takara Bio) による電気泳動

(100V、1時間)を行い、 DNA断片長を比較した。

Ssa408UoS

Ssa413UoS

Ssa41冗JoS

Ssa418UoS

Ssa419UoS 魚種判別に有用なMS一DNAマーカーの選抜 Ssa4DIAS

判別に有用であるMS-DNAマーカーの選抜を行うため、 S仕1INRA

既報のサケ・マス類の33種類のMS-DNAマーカー(表2) Str4INRA

のプライマーセットを用いて、 PCRを行った。 PCR条件 S仕5INRA

Accession No.もしくはReference

AF346679

AF346697

AF352754

AY039630

AY039637

AY039640

AF469958

AF46θ982

AF469989

AF469993

AF469996*

AF470016

AF470017

AF470054

073550

073554

BV005159

AY518334

AF239030

AJ402719

AJ402720

AJ402725

AJ402730

AJ402734

AJ402735

AJ402736

私信

αlarbi, K., and R Guyornard, Jouy-en-Josas, Il'恨A5)

αlarb~ K., and R Guyornard, Jouy-en-Josas, Il'ほA5)

αlarb~ K., and R Guyornard, Jouy-en-Josas, Il'ほA5)

については、 950Cで5分の変性の後、 950Cで30秒、 580Cで S仕7INRA 団的i,K., and R Guyornard, Jouy叩 -Josas,凹RA5)

60秒、 720Cで60秒を36サイクノレ、最終伸長を720Cで10分 S仕11INRA Gharb~ K., and R Guyornard, Jouy-en-Josas,町RA5)

とした。それらのPCR産物を7M尿素を含む6%アクリル *登録された塩基配列中に01¥仏tI1213と01¥1仏tIl214の2領域を含

アミドゲノレ (PAGE-PLUSConcen凶 t疋, A恥偲ESCO,Ohio, む。

つ山つ山

Page 4: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

GGA-3') およびリパースプライマー (5'-TGCTGCAA

T AAAGAGATGCTTGTT -3 ,)、 OMMI372のフォワー ド

フ。ライマ ー (グーCACTTCATGATGCCGAAAGCAG-3,)

およびリパースプライマー (5'ーCCCCCATCATGACTC

CT TCTAGTT-3') の3セットを用いた。PCR産物は3%ア

ガロースゲル (Agarose HS, Wako Pure Chemical

Industries, Osaka, Japan)を用いた電気泳動 (100V、1時

間)により分析 した。

結果

PCR-RFLP法による魚種判別

長野水試研報 (15), 21 -25 (2014)

ザケであった。Haeillによる酵素処理では、ブラウン ト

ラウトとそれ以外の魚種のグループの2つに分けられた。

また、それぞれの制限酵素により得られたDNA断片長

は異なっており 、酵素聞で同一長のDNA断片は得られな

かった。

魚種判別に有用なMS-DNAマーカーの選抜

サケ ・マス類の33種類のMS-DNAマーカーの電気泳動

像を比較した結果、タイフ。A:ニジマスにPCR産物が認め

られるMS-DNAマーカー (6種類)、タイプB:ブラワント

ラウトにPCR産物が認められるMS-DNAマーカー (1種

PCRによる増幅産物を制限酵素Dde1、NIα回、Sau3A 表3 魚種判別に有用と判定されたMS-DNAマーカ ーとタイプ

IおよびHaeillで処理したDNA断片の電気泳動像を図l 分類のタ イプ MS-DNAマーカー

に示した。

Dde 1による酵素処理では、各魚種のバンドパターン

は、ベニザケとニジマスを雌親魚とする魚種のグループ、

タイセイヨウサケとブラウントラウ トのグループ、ヤマ

メとアマゴのグソレープ、ギンザケの4つに分けられたO

Nlaillでは、同様にバンド、パターンは5つのグループに分

けられ、タイセイヨウサケとブラウントラウ トのクツレー

プ、ヤマメとアマゴのグ、ループ、ニジマスを雌親魚とす

る魚種のグ、ノレープ、ベニザケ、ギンザケであった。Sau3A

Iでは、 4つのグ、ループに分けられ、タイセイヨウサケ、

ブラウントラウト、ヤマメおよびアマゴのクツレープ、ニ

ジマスを雌親魚とする魚種のグノレープ、ベニザケ、ギン

DdeI

zhr向日同一回一SI-E 需輔 i [ • >> F? 圃輔帽・・・・ー “ー~

-ー i

0恥仏11148

01仏11158

01仏11214

OMM1294

01⑪ 11315

Ssa402UoS

Ssa419UoS

OMMI372

Omy13DIAS

S甘7INRA

等分類のタイプは、A:ニジマスにPCR産物が認められるMS-

DNAマーカ一、 B:ブラウントラウトにPCR産物が認められる

MS-DNAマーカ一、C:ニジマスとブラウン トラウト に長さの

異なるPCR産物が認められるMS-DNAマーカーを示す。

A

B

C

Sa1l3AI nuE白HRU

onunu

HXHU

U白

oho

-54321

M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1314 15 M M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1314 15 M

Nlam Haem

明'

&a

F

』号,バ‘.

1H・M

・-幽-ME-

au--M国,-M冨

-・・・ー・掛値・・柚叫叩‘.

置 56789H)

111回II_IMI.土ご画ー・・・・・・ 唄酬・:.IIIIIIi:Il舗脚国e ・・‘a ・・~

M 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 1112 1314 15 M

図 1 PCR-RFLP法における制限酵素処理後のサケ ・マス類のDNA断片の泳動像

1:ベニザケ、2:タイセイヨウサケ、3:ギンザ ケ、 4:ブラ ウントラウト、 5:ヤマメ 、 6:ア マ ゴ、7:ニ ジ

マス (チリ 産)、 8:ギン ヒカリ、 9:ニ ジマス三倍体、 10:ヤ シオマス (中禅 寺湖系)、11:ヤシオマス (ド

ナル ドソン系)、 12:魚沼深雪ます、 13・絹姫サーモン(イワナ系)、 14・絹姫サーモ ン (アマ ゴ系)、 15:

信州サーモン、 M:20 bp DNA Ladder

Jっ“

Page 5: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

長野水試研報 (15), 21 -25 (2014)

類)、タイプC:両者でPCR産物が認められるが、互いに

長さが異なるMS-DNAマーカー (3種類)の3タイプに分

類可能で、あった(表3)。それ以外のMS-DNAマーカーに

ついては、バンドが得られない、あるいはバンドが多数

認められて分析が煩雑となるため、判定に有用ではなか

った。

これら3タイフ。のMS-DNAマーカーのうち、通常用いら

れる低分解能の電気泳動装置においても判定が容易に行

えるものとして、タイプA: Ssa402UoS、タイプB:

Ssa419UoS、タイプC:OMMI372を選抜した。

MS-DNAマーカーによる魚種判別

Ssa402UoSについては、信州サーモンで160-200bp付近

にバンドが確認できた(図2上段)。ニジマス、ギンヒカ

リ、ニジマス三倍体、ヤシオマス、魚沼深雪ます、絹姫

サーモン(イワナ系)は160-200bp付近にバンドが確認

でき 、信州サーモンとよく似たパタ ーンであった。

Ssa419UoSで、は、信州サーモンとブラウントラウトで550

bp付近に同ーと考えられるバンドが確認できた(図2中

段)。魚沼深雪ますと絹姫サーモン(イワナ系)にもパン

M12345678 9 10 11 M

図2 ニジマスを雌親魚とする魚種のMS-DNAマーカーの

泳動像

1ニジマス (チリ 産)、2・ギン ヒカ リ、 3ニジマス三倍

体、 4:ヤシオマス (中禅寺湖系統)、5:ヤシオマス (ド‘ナノレ

ドソン系統)、 6魚沼深雪ます、7:絹姫サーモ ン (イワナ

系)、8:絹姫サーモ ン (アマゴ系)、9信州サーモ ン、 10:

ニ、ジマス (長野水試産)、11:ブラウン トラウ ト、 M:20 bp

DNALadder

24

ドは認められるものの、長さが290-320bp付近で、あり、

明らかに信州サーモンおよびブラウン トラウト と異なる

もので、あった。その他の魚種で、はバン ドは認められなか

った。OMMI372では、信州サーモンに190bp付近と220

240 bp付近にバンドが確認できた(図2下段)。ニジマス、

ギンヒカ リ、 魚沼深雪ますは190bp付近に、ャ、ンオマス

と絹姫サーモン(イワナ系)は190bp付近と210bp付近に、

絹姫サーモン(アマゴ系)では190bp付近と220bp付近、ブ

ラワン トラウトでは220bp付近にバンドが確認できた。

信州サーモンの190bp付近のバンド、はニジマスと、220bp

付近のバンドはブラウン トラウ トとそれぞ、れ同一のバン

ドと考えられた。

考察

PCR-RFLP法では、制限酵素の種類毎に得られるDNA

断片のパターンはそれぞれ異なることから、一つの酵素

で同ーのDNA断片パターンを示す魚種間であっても、複

数の酵素を組み合わせることにより 、魚種を判別する こ

とが可能となる。本研究では、ブラウン トラ ウト以外の

全ての魚種で、|司ーのDNA断片パターンを示すHaeillを除

いた3種類の制限酵素を併用する ことで、ニジマスを雌

親魚とする魚種群とその他のサケ ・マス類(ベニザケ、

タイセイ ヨウサケ、ギンザケ、ブラウントラウ 卜、ヤマ

メおよびアマゴ)とに大別することが可能であった。本

研究の目的である信州サーモンの判別においては、

PCR-RFLP法だけでは不十分であることも分かつた。

そこで、ニジマスを雌親魚とする魚種群から信州|サー

モンを判別することを目的として、既報のMS-DNAマー

カーを用いた魚種判別が可能であるか検討した。信州サ

ーモンは、ニジマスとブラワントラワ トの交雑種である

ことから、両者の遺伝子を持っている。めしたがって、

前述のタイプA、タイプBおよびタイプCのMS-DNAマー

カーの条件をすべて満たす魚種が高確率で信州サーモ

ンと判定できると予想される。そこで、低分解能の泳動

装置でも解析が容易なものとして、タイフ。AのSsa402UoS、

タイフ。BのSsa419UoS、タイプCのOMMI372を選抜し、

ニジマスを雌親魚とする魚種の判別を行った。その結果、

前述の条件に合致するものは、信州サーモンのみであり、

ニジマスを雌親魚とする魚種群の中から、信州サーモン

を判別する ことが可能であることが示された。アガロー

ス電気泳動は安価であり 、分析にかかる時間や労力が少

ないという利点があるが、分解能が比較的低く、バンド

が判別 しにくいこともある。大量のサンフ。ルを簡易判別

した際に、このような疑陽性のサンフ。ルがあった場合に

はアク リルアミ ド電気泳動による確定検査を実施する

ことで解決が可能と考える。

以上より 、PCR-RFLP法とMS-DNAマーカーによる魚

種判別技法の併用することで、比較的簡易かっ安価に信

州サーモンとその他のサケ ・マス類との判別が可能であ

Page 6: PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い …PCR-RFLP法およびマイクロサテライトDNAマーカーを用い た信州サーモンの簡易魚種判別

長野水試研報 (15), 21 -25 (2014)

ることが示された。

要約

1. 信州、|サーモンと他のサケ・マス類を判別するために、

PCR-RFLP法およびMS-DNAマーカーによる魚種判別

法の有用性を検討した。

2. Dde 1、NlaIIl、Sau3A1の3つの制限酵素を用いた

PCR-RFLP法により、信州|サーモンを含むニジマスを

雌親魚とする魚種群とその他のサケ・マス類に大別す

ることが出来た。

3. ニジマスを雌親魚とする魚種群の中から信州サー

モンを判別するため、 3つのMS-DNAマーカー、

Ssa402UoS、Ssa419UosおよびOMM1372によるPCR産

物長のパタ}ンを比較したところ、信州サーモンを簡

易的に判別することが可能であった。

4. 上記の2つの遺伝子工学的手法を併用することで、

17種類のサケ・マス類から信州サーモンを判別するこ

とが可能で、あった。

文献

1) サパ属魚類の魚種判別マニュアル.(独)農林水産消費

安全技術センターおよび(独)水産総合研究センター, 2007; 1・14

2) サパ属魚類の魚種判別マニュアル.(独)農林水産消

費安全技術センターおよび(独)水産総合研究センター, 2007; 1・15

3) Kimura T., Shi Y. Z., Shoda M.,Kotobuki K., Matsuta

N.,Hayashi T., B叩 Y.,Yamamoto T. Identification of Asian Pear Varieties by SSR Analysis. Breeding Science 2002; 52: 115・121.

4) Russell J. V., Hold G. L., Pryde S. E., Rehbein H., Quinteio J., Rey-Mendez M., Sotele C. G., Perez-Martin R. 1., Santos A. T., Rosa C. Use of res甘iction企agmentlength polymorphism to distinguish between salmon

species. J. Agric. Food Chem. 2000; 48: 2184・2188.

5) Gharbi K., Gautier A., Danzmann R. G., Gharbi S., Sakamoto T., Hoyheim B., Taggart J. B., Caimey M., Powell R., Krieg F., Okamoto N., Ferguson M. M., Holm L., Guyomard R. A Linkage Map for Brown Trout

(Salmo trutta) : Chromosome Homeologies and

Comparative Genome Organization With Other

Salmonid Fish. Genetics 2006; 172: 2405-2419.

6) 小原昌和,惇回郁夫.染色体操作による異質三倍体品種「信州サーモン」の開発.水産育種 2008; 37: 61-66

Fhd

ワ白