P4-011 S11b Suzaku XIS Calibration Status in 2012XIS1 ( PKS2155, RXJ1856, E0102 ) 20091201版...

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Suzaku XIS Calibration Status in 2012 和田師也 1,2 、辻本匡弘 1 、林田清 3 、高橋宏明 3 、中島真也 4 森浩二 5 園田拓矢 5 冨加見千代 5 Eric D. Miller 6 、他 XIS チーム ( 1 ISAS/JAXA、 2 東京大学、 3 大阪大学、 4 京都大学、 5 宮崎大学、 6 MIT) [email protected] すざく衛星搭載 X 線 CCD カメラ XIS (X-ray Imaging Spectrometer) は、2005年の打ち上げ以来、徐々にその性能が変化しており、それに追随する calibration の努力が 継続されている。本講演では 2012年に行われた calibration の結果を報告する。特に (1) Contamination の化学組成および空間分布の経年変化モデルの改訂、(2) Energy gain および resolutionを再現する parameter の改訂、 (3) XIS1 の charge injection (CI) の変更に伴うバックグラウンドのカウントレートの増加、などついて報告する。 1. Contamination 3. CI=6keVでのバックグラウンドの増加 2. Energy gain & Resolution 【 第13回宇宙科学シンポジウム(2013年1月8日 ‒ 1月9日)】 Introduction X線 CCD カメラの表面には時間の経過とともに有機化合物が付着しており、これが汚染物 質(contamination)として特に低エネルギー側の較正精度に影響を及ぼすことが知られ ている。図1は超新星残骸 Cygnus Loop の観測データである。 図1. Contamination のモデル (20091201版) を用いてレスポンスを作成してフィットした 2006年5月の 観測データ(左)と、同じパラメータを用いてプロットした 2012年6月の観測データ(右)。 この影響を補正するため XIS チームでは3つの較正用天体、ブレーザー PKS2155、中性 子星 RXJ1856、超新星残骸 E0102、および昼地球の定期的な観測から CCD カメラに 付着した contamination の量を時間の関数としてモデル化を行ってきた。 従来の contamination のモデルと今回のモデルを使ってレスポンスをそれぞれ作成し、 較正用天体の実際の観測データを用いて比較した結果を図3に示す。PKS2155、 RXJ1856 では視野中心の contamination、Cygnus Loop では空間分布の補正の結果を 確認した。ほとんどの検出器・領域において 0.3~0.6 keV での残差の改善が見られる が、XIS3 については観測時期により残差が増えている場合もある。 今回改訂した contamination のモデルは 2012/09/02 以降にリリースされた CALDB を用いることで使用することができる。 図3. (上) (中) 視野中心における contamination の補正前後での比較。(下) 空間分布の比較。 <従来の contamination モデル> 図2. XIS1 における視野中心での各元素の contamination の経年変化(左)と、XIS1 の N の空間分布の経年変化(右)。 <視野中心のモデル> 従来のモデルでは contamination の組成として H, C, O を考え、これらの比率が一定で あるという仮定のもとにモデルを作っていた。しかし今回の改訂では組成比も時間変化す るとし、また XIS1 については N を組成のひとつとして新たに加えることによりモデルの 改良を行った。 <空間分布のモデル> 昼地球の観測からN輝線とO輝線のフラックスを求め、視野中心に対するフラックスの比か ら contamination の量を中心からの距離の関数としてモデルを作成した。 CCD カメラは宇宙線によるダメージにより電荷トラップが増え、電荷転送効率が低下し てしまう。すざく衛星では 2006年10月 より Spaced-row Charge Injection (SCI) を 行なってきた。CCD に周期的に電荷を注入すること(Charge Injection;CI)により電荷 転送の効率を下げる電荷トラップを埋め、エネルギー分解能を改善することができる。 CI 量は XIS0 と XIS3 は 6keV、XIS1 は 2keV 相当であったが、XIS1 においては 2keV のままだと性能の低下が見られたため 2011年6月から他の検出器と同様の 6keV 相当に増やし性能を回復させた。 しかし XIS1 での CI 量を変更したことにより、これまで問題とならなかった CI行の2つ 後ろの行 (second trail row) での電荷漏れがバックグラウンドのカウントレートの増加 をもたらした。 これを補正するために second tarailing row の除去を行った。その結果 0.4~7.0 keV におけるバックグラウンドのカウントレートが CI=2 keV のときとほぼ一致した。 図6. Second trailing row を除去する前の XIS1 の NXB のイメージの拡大図とスペクトル 図7. Second trailing row を除去した後の XIS1 のNXB のイメージの拡大図とスペクトル Energy gain の補正は makepi ファイルによって行う。最新版の makepi では 1/4 window option, 1/8 window option での観測における gain を normal mode での gain に近づけるように補正をする。しかし 20111227版の makepi では、2011年12月 29日以降の XIS0, XIS3 のデータにこの補正が適応されず、20111018版の gain table が反映されてしまう不具合が見つかった。 20120527 版の makepi で改訂を行いこの不具合を修正した。2012/07/03 以降にリリ ースされた CALDB を使用することでこの更新が適用される。 図4. 20111227版の makepi に期待された補正量と実際の補正量 図5. 20111227版 と 20120527版それぞれの makepi を用いた場合の Perseus cluster の観測による FeXXV 輝線 のエネルギーの比較 P4-011 Cygnus Loop P8 (視野中心) H C N O XIS ドアオープンからの日数 (day) XIS1 ( PKS2155, RXJ1856, E0102 ) 20091201版 20120719版 柱密度 XIS1- Nitrogen 柱密度 視野中心からの半径 (arcmin) <改訂した contamination モデル> 補正量 06/01 XIS0, XIS3 08/22 12/29 経過日数 (2011年, day) 期待された補正量 実際の補正量 XIS1 (CI=2keV) 補正量 06/01 08/22 12/29 経過日数 (2011年, day) 期待された補正量 実際の補正量 XIS1 は今回は CI=2 keV 向けの補正であるため、 CI=6 keV 運用の期間は補 正量を 0 としている。 強度 1 1 0 2 比率 2 0.5 1 Energy (keV) 3 10 半径 3 の円領域内 内縁 3、外縁 6 の円環領域 内縁 6、外縁 9 の円環領域 半径 9 の円領域外 -1 10 強度 1 1 0 2 比率 2 0.5 1 Energy (keV) -1 10 強度 1 1 0 2 比率 2 0.5 1 Energy (keV) XIS0 XIS1 XIS3 PKS2155 2012/04/02 -1 10 強度 1 1 0 2 比率 0.5 Energy (keV) 3 -3 10 -2 10 -1 10 強度 1 1 0 2 比率 0.5 Energy (keV) XIS1 RXJ1856 2012/10/20 3 -3 10 -2 10 -1 10 強度 1 1 0 2 比率 2 0.5 1 Energy (keV) XIS1 Cygnus Loop P8 2012/06/11 3 10 -1 10 CI 行とその前後 あわせた3行 Second trail row への電荷の漏れ 強度 1 10 10 0.1 1 Energy (keV) -3 10 -2 10 -1 10 CI = 2 keV CI = 6 keV カウントレート増加 1/4 Window option Normal mode 期待される値 (FeXXV, 6560 eV) 不具合の発生した日 (2011/12/29) XIS0 XIS3 makepi-20111227 (old) makepi-20120527 (new) 6560 6550 6580 6570 6590 0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day) Line energy (eV) 6560 6550 6580 6570 6590 0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day) Line energy (eV) 6560 6550 6580 6570 6590 0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day) Line energy (eV) 6560 6550 6580 6570 6590 0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day) Line energy (eV) 2006/05/13 強度 1 1 0 2 比率 2 0.5 1 Energy (keV) XIS0 XIS1 XIS3 -1 10 -2 10 2012/06/11 2 0.5 1 Energy (keV) 強度 1 1 0 2 比率 -1 10 -2 10 昼地球 大きなずれ 強度 1 10 10 0.1 1 Energy (keV) -3 10 -2 10 -1 10 CI = 2 keV CI = 6 keV CI=2keV とほぼ一致 CI 行とその前後 あわせた3行 電荷の漏れが 消えている Second tarailing row は default では除去されない。除去したい場合には http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/suzaku/analysis/nxb_ci6kev.html のページを参照していただきたい。 

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Suzaku XIS Calibration Status in 2012 和田師也1,2、辻本匡弘1、林田清3、高橋宏明3、中島真也4、森浩二5、

園田拓矢5、冨加見千代5、Eric D. Miller6、他 XIS チーム (1ISAS/JAXA、2東京大学、3大阪大学、4京都大学、5宮崎大学、6MIT)

[email protected]

すざく衛星搭載 X 線 CCD カメラ XIS (X-ray Imaging Spectrometer) は、2005年の打ち上げ以来、徐々にその性能が変化しており、それに追随する calibration の努力が継続されている。本講演では 2012年に行われた calibration の結果を報告する。特に (1) Contamination の化学組成および空間分布の経年変化モデルの改訂、(2) Energy gain および resolutionを再現する parameter の改訂、 (3) XIS1 の charge injection (CI) の変更に伴うバックグラウンドのカウントレートの増加、などついて報告する。

1. Contamination

3. CI=6keVでのバックグラウンドの増加

2. Energy gain & Resolution

【 第13回宇宙科学シンポジウム(2013年1月8日 ‒ 1月9日)】

S11b

Introduction

X線 CCD カメラの表面には時間の経過とともに有機化合物が付着しており、これが汚染物質(contamination)として特に低エネルギー側の較正精度に影響を及ぼすことが知られている。図1は超新星残骸 Cygnus Loop の観測データである。

図1. Contamination のモデル (20091201版) を用いてレスポンスを作成してフィットした 2006年5月の観測データ(左)と、同じパラメータを用いてプロットした 2012年6月の観測データ(右)。

この影響を補正するため XIS チームでは3つの較正用天体、ブレーザー PKS2155、中性子星 RXJ1856、超新星残骸 E0102、および昼地球の定期的な観測から CCD カメラに付着した contamination の量を時間の関数としてモデル化を行ってきた。

従来の contamination のモデルと今回のモデルを使ってレスポンスをそれぞれ作成し、較正用天体の実際の観測データを用いて比較した結果を図3に示す。PKS2155、RXJ1856 では視野中心の contamination、Cygnus Loop では空間分布の補正の結果を確認した。ほとんどの検出器・領域において 0.3~0.6 keV での残差の改善が見られるが、XIS3 については観測時期により残差が増えている場合もある。 今回改訂した contamination のモデルは 2012/09/02 以降にリリースされた CALDB を用いることで使用することができる。

図3. (上) (中) 視野中心における contamination の補正前後での比較。(下) 空間分布の比較。

<従来の contamination モデル>

図2. XIS1 における視野中心での各元素の contamination の経年変化(左)と、XIS1 の N の空間分布の経年変化(右)。

<視野中心のモデル> 従来のモデルでは contamination の組成として H, C, O を考え、これらの比率が一定であるという仮定のもとにモデルを作っていた。しかし今回の改訂では組成比も時間変化するとし、また XIS1 については N を組成のひとつとして新たに加えることによりモデルの改良を行った。 <空間分布のモデル> 昼地球の観測からN輝線とO輝線のフラックスを求め、視野中心に対するフラックスの比から contamination の量を中心からの距離の関数としてモデルを作成した。

CCD カメラは宇宙線によるダメージにより電荷トラップが増え、電荷転送効率が低下してしまう。すざく衛星では 2006年10月 より Spaced-row Charge Injection (SCI) を行なってきた。CCD に周期的に電荷を注入すること(Charge Injection;CI)により電荷転送の効率を下げる電荷トラップを埋め、エネルギー分解能を改善することができる。 CI 量は XIS0 と XIS3 は 6keV、XIS1 は 2keV 相当であったが、XIS1 においては 2keV のままだと性能の低下が見られたため 2011年6月から他の検出器と同様の 6keV 相当に増やし性能を回復させた。 しかし XIS1 での CI 量を変更したことにより、これまで問題とならなかった CI行の2つ後ろの行 (second trail row) での電荷漏れがバックグラウンドのカウントレートの増加をもたらした。

これを補正するために second tarailing row の除去を行った。その結果 0.4~7.0 keV におけるバックグラウンドのカウントレートが CI=2 keV のときとほぼ一致した。

図6. Second trailing row を除去する前の XIS1 の NXB のイメージの拡大図とスペクトル

図7. Second trailing row を除去した後の XIS1 のNXB のイメージの拡大図とスペクトル

Energy gain の補正は makepi ファイルによって行う。最新版の makepi では 1/4 window option, 1/8 window option での観測における gain を normal mode での gain に近づけるように補正をする。しかし 20111227版の makepi では、2011年12月29日以降の XIS0, XIS3 のデータにこの補正が適応されず、20111018版の gain table が反映されてしまう不具合が見つかった。

20120527 版の makepi で改訂を行いこの不具合を修正した。2012/07/03 以降にリリースされた CALDB を使用することでこの更新が適用される。

図4. 20111227版の makepi に期待された補正量と実際の補正量

図5. 20111227版 と 20120527版それぞれの makepi を用いた場合の Perseus cluster の観測による FeXXV 輝線のエネルギーの比較

P4-011

Cygnus Loop P8(視野中心)

H

C

N

O

XIS ドアオープンからの日数 (day)

XIS1 ( PKS2155, RXJ1856, E0102 )

20091201版 20120719版

柱密度

XIS1- Nitrogen

柱密度

視野中心からの半径 (arcmin)

<改訂した contamination モデル>

補正量

06/01

XIS0, XIS3

08/22 12/29 経過日数 (2011年, day)

期待された補正量

実際の補正量

XIS1 (CI=2keV)

補正量

06/01 08/22 12/29 経過日数 (2011年, day)

期待された補正量

実際の補正量

XIS1 は今回は CI=2 keV向けの補正であるため、CI=6 keV 運用の期間は補正量を 0 としている。

強度

1

1

0

2

比率

2 0.5 1 Energy (keV)

3

10

半径 3ʼ’ の円領域内 内縁 3ʻ‘、外縁 6ʼ’ の円環領域 内縁 6ʻ‘、外縁 9ʼ’ の円環領域 半径 9ʻ‘ の円領域外

-1 10

強度 1

1

0

2

比率

2 0.5 1 Energy (keV)

-1 10 強度 1

1

0

2

比率

2 0.5 1 Energy (keV)

XIS0 XIS1 XIS3

PKS2155 2012/04/02

-1 10

強度

1

1

0

2

比率

0.5 Energy (keV)

3

-3 10

-2 10

-1 10

強度

1

1

0

2

比率

0.5 Energy (keV)

XIS1 RXJ1856 2012/10/20

3

-3 10

-2 10

-1 10

強度

1

1

0

2

比率

2 0.5 1 Energy (keV)

XIS1 Cygnus Loop P8 2012/06/11

3

10

-1 10

CI 行とその前後あわせた3行

Second trail row への電荷の漏れ

強度

1

10

10 0.1 1 Energy (keV)

-3 10

-2 10

-1 10

CI = 2 keV CI = 6 keV

カウントレート増加

1/4 Window option

Normal mode

期待される値 (FeXXV, 6560 eV)

不具合の発生した日 (2011/12/29)

XIS0

XIS3

makepi-20111227 (old) makepi-20120527 (new)

6560

6550

6580

6570

6590

0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day)

Line energy (eV)

6560

6550

6580

6570

6590

0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day)

Line energy (eV)

6560

6550

6580

6570

6590

0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day)

Line energy (eV)

6560

6550

6580

6570

6590

0 1000 2000 3000 打ち上げからの日数 (day)

Line energy (eV)

2006/05/13

強度 1

1

0

2

比率

2 0.5 1 Energy (keV)

XIS0 XIS1 XIS3

-1 10

-2 10

2012/06/11

2 0.5 1 Energy (keV)

強度 1

1

0

2

比率

-1 10

-2 10

昼地球

大きなずれ

強度

1

10

10 0.1 1 Energy (keV)

-3 10

-2 10

-1 10

CI = 2 keV CI = 6 keV

CI=2keV とほぼ一致

CI 行とその前後あわせた3行

電荷の漏れが 消えている

Second tarailing row は default では除去されない。除去したい場合には  http://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/suzaku/analysis/nxb_ci6kev.html のページを参照していただきたい。