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2014.01 金属資源レポート 51 5 Ⅱ.鉛、亜鉛 我が国は黒鉱タイプの鉱床の処理が多く、複雑硫化 鉱の銅、鉛、亜鉛の分離選鉱の技術も多く研究されて Ⅰ.はじめに 鉛、亜鉛、モリブデンはともに銅鉱物を抑制する工程が必要であり、その抑制剤としてはシアンが用いられること が一般的である。連載(3)の金の稿でも述べたようにシアンとは管理さえしっかりしていれば比較的取り扱いやすい 薬剤であり、特に金のように溶剤として取り扱うのでなく抑制剤として使用する分にはほとんど問題が無い量といえ るのであるが、日本の多くの技術者の間ではやはり、忌み嫌うべきものとして取り扱われることが多い。したがっ て、日本の技術者がこれらのフローシートを検討する際にはシアンを最初から検討対象からはずしてしまい、モリブ デンでは硫化法、鉛、亜鉛でも SO2 -温水浮選法を主体として試験する場合が多い。これらの方法も確かに優れた 方法なのではあるが、最初からシアンの適用を外すのではなく、フェロシアン塩等は食品添加剤にも用いられている ことも念頭に入れて、世界標準の抑制剤として試験対象には入れていただきたいのである。 また、選鉱技術者はシアンに留まらず、排水処理全般や鉱山開発における Acid Generation 試験や Weathering 試 験等も担当することが多いので機会があればこれらに関しても纏めてみたいとも考える。ちなみに、鉱山開発のため の 環 境 制 御 技 術 に 関 し て は カ ナ ダ 政 府 の http://www.ec.gc.ca/lcpe-cepa/default.asp?lang=En&n=CBE3CD59-1& offset=8&toc=hide に詳しいので、関係者は一度参考にされるとよいかもしれない。 また、モリブデンは銅の副産物として回収されることが多く、鉛、亜鉛鉱に関しても当然、多元素をそれぞれ分離 する必要がある。したがって、今回は Cu/Mo 分離や Pb/Zn 分離のように多元素分離を行うに際して特に必要なソ ルバーによるマテリアルバランス計算法を中心に論を進めたいと考える。以前にも書いたが、海外の現場で働くにお いて、通常最初に行われることが現場の実態調査であったり、Inventory(仕掛)の調査であることが多い。また、以 前にも述べたが、現場の問題点解決のためにも、デザインのためにもマスバランスを求めることは選鉱技術者として の基本であり、本方法の習得は非常に強い武器になると信じるものである。本方法を使用するためには特別なソフト ウェアーは必要なく、通常広く企業で用いられている Microsoft 社の Excel に無料でついているアドイン、さらに個 人的に費用を抑えたい学生などでは廉価版オフィスソフトである EIOffice 等でも使用することができるので是非覚 えておいてほしい技術として今回ここに記すこととする。 最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5) ―鉛、亜鉛、モリブデン― 中村 威一 金属技術部生産技術課 専門調査員 その他 12.0% ロシア 1.5% スウェーデン 2.0% ボリビア 2.0% インド 2.1% カナダ 2.6% メキシコ 3.6% ペルー 8.8% 米国 10.8% 豪州 15.2% 中国 39.4% 2008 年(世界生産量 3,920 千 t) 図 1. 鉛国別生産量 その他 14.2% ボリビア 3.1% カザフスタン 4.1% アイルランド 3.4% メキシコ 4.1% インド 5.1% 米国 7.0% 豪州 12.6% 中国 27.1% 2008 年(世界生産量 11,755 千 t) カナダ 5.8% ペルー 13.6% 図 2. 亜鉛国別生産量 きたが、現在ではこれらの操業鉱山も閉山になって久 しい。現在世界の国別生産量で見ると、中国が鉛、亜 鉛ともに世界一であるが、詳細なデータが公表されて 445

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2014.01 金属資源レポート 51

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

Ⅱ.鉛、亜鉛 我が国は黒鉱タイプの鉱床の処理が多く、複雑硫化鉱の銅、鉛、亜鉛の分離選鉱の技術も多く研究されて

Ⅰ.はじめに 鉛、亜鉛、モリブデンはともに銅鉱物を抑制する工程が必要であり、その抑制剤としてはシアンが用いられることが一般的である。連載(3)の金の稿でも述べたようにシアンとは管理さえしっかりしていれば比較的取り扱いやすい薬剤であり、特に金のように溶剤として取り扱うのでなく抑制剤として使用する分にはほとんど問題が無い量といえるのであるが、日本の多くの技術者の間ではやはり、忌み嫌うべきものとして取り扱われることが多い。したがって、日本の技術者がこれらのフローシートを検討する際にはシアンを最初から検討対象からはずしてしまい、モリブデンでは硫化法、鉛、亜鉛でも SO2 -温水浮選法を主体として試験する場合が多い。これらの方法も確かに優れた方法なのではあるが、最初からシアンの適用を外すのではなく、フェロシアン塩等は食品添加剤にも用いられていることも念頭に入れて、世界標準の抑制剤として試験対象には入れていただきたいのである。 また、選鉱技術者はシアンに留まらず、排水処理全般や鉱山開発における Acid Generation 試験や Weathering 試験等も担当することが多いので機会があればこれらに関しても纏めてみたいとも考える。ちなみに、鉱山開発のための環境制御技術に関してはカナダ政府の http://www.ec.gc.ca/lcpe-cepa/default.asp?lang=En&n=CBE3CD59-1& offset=8&toc=hide に詳しいので、関係者は一度参考にされるとよいかもしれない。 また、モリブデンは銅の副産物として回収されることが多く、鉛、亜鉛鉱に関しても当然、多元素をそれぞれ分離する必要がある。したがって、今回は Cu/Mo 分離や Pb/Zn 分離のように多元素分離を行うに際して特に必要なソルバーによるマテリアルバランス計算法を中心に論を進めたいと考える。以前にも書いたが、海外の現場で働くにおいて、通常最初に行われることが現場の実態調査であったり、Inventory(仕掛)の調査であることが多い。また、以前にも述べたが、現場の問題点解決のためにも、デザインのためにもマスバランスを求めることは選鉱技術者としての基本であり、本方法の習得は非常に強い武器になると信じるものである。本方法を使用するためには特別なソフトウェアーは必要なく、通常広く企業で用いられている Microsoft 社の Excel に無料でついているアドイン、さらに個人的に費用を抑えたい学生などでは廉価版オフィスソフトである EIOffice 等でも使用することができるので是非覚えておいてほしい技術として今回ここに記すこととする。

最新選鉱技術事情鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

中村 威一金属技術部生産技術課専門調査員

その他 12.0%

ロシア 1.5% スウェーデン

2.0%ボリビア 2.0% インド 2.1% カナダ 2.6%

メキシコ 3.6%

ペルー 8.8%

米国 10.8% 豪州

15.2%

中国 39.4%

2008 年(世界生産量 3,920 千 t)

図 1. 鉛国別生産量

その他14.2%

ボリビア3.1%

カザフスタン4.1%

アイルランド3.4%メキシコ4.1%

インド5.1%

米国7.0% 豪州

12.6%

中国27.1%

2008 年(世界生産量 11,755 千 t)

カナダ5.8%

ペルー13.6%

図 2. 亜鉛国別生産量

きたが、現在ではこれらの操業鉱山も閉山になって久しい。現在世界の国別生産量で見ると、中国が鉛、亜鉛ともに世界一であるが、詳細なデータが公表されて

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

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 鉛と亜鉛の生産量の両方で上位に入っている鉱山としては米国 Red Dog 鉱山と、豪州 Mount Isa 鉱山がある。

おらず正確な実態を把握するのは難しい。 また、中国の詳細はわからないが、主要生産鉱山を図 3 ~ 4 に挙げる。

(千 t)300

250

200

150

100

50

0

Viburnum(米国)

Cannington(豪州)

Mount Isa(豪州)

Red Dog(米国)

San Cristobal(ボリビア)

Brunswick(カナダ)

Cerro de Pasco(ペルー)

Century(豪州)

Rampura-Agucha(インド)

Broken Hill(豪州)

Black Mountain(南ア)

McArthur River(豪州)

Tayahua(メキシコ)

Zinkgruvan(スウェーデン)

Colquijirca(ペルー)

Rosebery(豪州)

Garpenberg(スウェーデン)

Chungar(ペルー)

Tara(アイルランド)

Endeavor(豪州)

坑内掘と露天掘

坑内掘鉱山

露天掘鉱山

図 3. 鉛主要生産鉱山

(千 t)600

500

400

300

200

100

0

Antamina(ペルー)

San Cristobal(ボリビア)

Mount Isa(豪州)

Red Dog(米国)

Zyryanovsky(カザフスタン)

Brunswick(カナダ)

Iscaycruz(ペルー)

Century(豪州)

Rampura-Agucha(インド)

Lisheen(アイルランド)

Skorpion(ナミビア)

McArthur River(豪州)

Vazante(ブラジル)

Cerro de Pasco(ペルー)

Hudson Bay(カナダ)

Golden Grove(豪州)

Kidd Creek(カナダ)

Tara(アイルランド)

坑内掘露天掘

Uchalinsky(ロシア)

Broken Hill(豪州)

図 4. 亜鉛主要生産鉱山

1.Red Dog 鉱山 Red Dog 鉱山の選鉱フローシートを図 5 に示す。 鉱山から採掘された鉱石は、SAG ミル、ボールミルで粉砕され、最初に鉛と亜鉛を一緒に浮かし(バル

ク精鉱)、そのバルク精鉱から、亜鉛を抑制して鉛精鉱を回収し、その沈鉱から次に亜鉛を活性化させて亜鉛精鉱を回収し、その尾鉱は、最初のバルク浮選尾鉱とともに最終尾鉱として尾鉱ダムに送付されるフロー

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最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

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鉛シアノ錯体を抑制剤として使用している。 鉱石から直接、鉛精鉱、亜鉛精鉱で浮遊させる方法も 直 接 優 先 浮 選 と 呼 ば れ て 存 在 す る が、現 在 はJameson Cell 等を用いて、鉛を粗粒のまま回収した後、その沈鉱を逆に IsaMill、Tower Mill 等を用いて微粉砕して単体分離度を進め鉛の実収率をさらに高めるようなフローシートが組まれていることから、微粉砕物量を減少できるバルク浮選法が採用されている。微粉砕すると、通常は微粉の鉱石は気泡の表面を水流とともに移動し、気泡と接触しないために実収率が低下するが、マイクロバブル浮選を用いることで対処している。 マイクロバブル浮選はもともとカラム浮選で泡の粒径を小さくし、接触機会を増加させることで微細粒子の実収率を向上させる目的で、油液分離技術として発展してきた圧を掛けて液中に溶存させた空気を減圧することで、微細な気泡を発生させる技術と組み合わさって発展してきた。マイクロバブルを発生させる機構は種々あるが、その代表的なものの一つが以下に示すように高圧水に高圧空気を混入させてから減圧するEductors という機器を用いる。また、現在は、マイクロバブルを発生させるポンプも開発販売されている。

シートになっている。 ほとんどの鉛、亜鉛鉱物は、複雑硫化鉱として分類でき、実収率の問題は鉱物の存在状態により左右される。例えば、鉱石中に黄鉄鉱が多量に存在するような場合には実収率の向上と選択分離に問題が生じる。しばしば鉛、亜鉛鉱石には少量の銅や金が含まれるが、単体分離した金が存在する場合は、鉛浮選で pH を調整するのに石灰を用いた場合は金実収率が下がり、亜鉛が活性化されることが知られているので、多くの場合ソーダ灰が用いられる。また鉱石にかなりの可溶性塩が含まれている場合にはポリリン酸塩等の試薬も用いられるが、通常の捕収剤はリン酸塩系およびアミルザンセート、起泡剤は MIBC が用いられているようである。通常の鉛、亜鉛分離はフローシートに示すようにバルク精鉱を回収してから亜鉛をシアンと硫酸亜鉛を用いて抑制してから鉛を浮かし、その後、亜鉛を硫酸銅で活性化して浮遊させる方法で行われる。亜鉛抑制剤として使用される硫酸亜鉛はシアンの 3~5 倍添加されるが、鉱石中に金や銀が含有される場合はシアンで溶解される可能性が高いのでシアンと硫酸亜鉛を NaCN:亜鉛を 2:3 の割合で混合しておき亜鉛シアノ錯体が抑制剤として用いられる。ボリビアのサンクリストバル鉱山では銀の品位が高いのでやはり、亜

Trucks withCoarse Orefrom Mine

Crushing

Red Dog Mine Site

Lead-Zinc MineSimplifide Flowsheet

Short TimeStock Pile

PrimaryGrinding

SecondaryGrinding

Prefloat

LeadFlotationLead Regrind

& Cleaning

Reagents

ZincFlotation

Zinc Cleaners

Zinc Regrind

Zinc Filters Lead Filters

ZincConcentrates

LeadConcentrates

To Ship LoadingTailing Impoundment

Fresh Water Supply

Process Water Supply

WaterTreatment Sand

FiltersTo RedDog Creek

図 5. Red Dog 鉱山選鉱フローシート

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図 6. 鉛浮選フロー

図 7. 亜鉛浮選フロー

図 8. Jameson Cell

Pressure Connection

SuctionConnection

Discharge Connection↓

図 9. マイクロバブル用Eductors

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選機を使用している。3~4 段目尾鉱は鉛、亜鉛混合精鉱になる。 亜鉛粗選・清掃選系では亜鉛の活性化のために硫酸銅を添加し、粗選フロスは精選系へ。清掃選フロスは粗選給鉱へ繰り返し。尾鉱は尾鉱シックナーへ送られる。 亜鉛精選系では再磨鉱後 4 段の精選が実施される。1~3 段はコンベンショナルな浮選機、4 段目にはカラム浮選機を使用している。 尾鉱はシックナーで濃縮後、11km 離れた Tailing Dam へ送られる。シックナーオーバーフロー水は亜鉛浮選に繰り返される。尾鉱堆積場のオーバーフロー水は全量蒸発し、プラントには戻らない。 鉛亜鉛分離としては比較的シンプルなフローを用いている。 鉛浮選では亜鉛の抑制には銀が高いので、Zn(CN)2

を用いている。捕収剤はリン酸塩系およびアミルザンセート、起泡剤は MIBC。一方、亜鉛浮選では硫酸銅を亜鉛活性剤として捕収剤はリン酸塩系、起泡剤はMIBC を用いている。 処理量および生産量の計画値は粗鉱 40,000t/日、鉛精鉱 250t/日、亜鉛精鉱 1,100t/日、鉛亜鉛バルク精鉱50t/日。鉛精鉱の実収率は 75% Pb、36.1% Ag、亜鉛精鉱の実収率は 91% Zn、33.4% Ag、銀は鉛鉱物に随伴している割合が高く、鉛精鉱の銀品位は亜鉛精鉱の4~5 倍になっている。

2.サンクリストバル鉱山 ボリビアのサンクリストバル鉱山では Red Dog 鉱山が鉛、亜鉛総合精鉱を回収してから鉛精鉱、亜鉛精鉱に分離するバルク浮選に対して、鉱石から順次、鉛精鉱、その尾鉱から亜鉛精鉱を得るストレート浮選を採用している。また、鉛精選系、亜鉛精選系から得られる精選尾鉱は合わせて、鉛、亜鉛混合精鉱として生産している(現在のフローシートでは鉛、亜鉛混合精鉱は生産されていないとのこと)。 サンクリストバルプロジェクトの権益は米国の資源企業 Apex Silver Mines(エイペックス・シルバー、現 Golden Minerals)が所有していたが、2006 年に住友商事が権益 35%を取得することで同プロジェクトに参入。2009 年には住友商事は同権益を 100%取得している。 1 次破砕をジャイレトリークラッシャで行った後、SAG ミル 1 台、ボールミル 2 台で磨鉱される。ボールミル排鉱は磨鉱サイクロンへ送られそのアンダーフローは鉛採取に Flash Flotation(FF)が採用されている。FF 精鉱は鉛精選系、Tail はボールミルへ送られる。サイクロンオーバーフローは鉛粗選・清掃選系に送付され、亜鉛の抑制のためにシアン化亜鉛を添加され、フロスは鉛精選系へ、尾鉱は亜鉛粗選・清掃選系へ送られる。 鉛精選系では再磨鉱後 4 段の精選が行われる。1~3段はコンベンショナルな浮選機、4 段目にはカラム浮

図 10. サンクリストバル鉱山 フローシート(デザイン時)

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剤として行う。粗選及び精選を行い硫化鉄精鉱を採取している。

重晶石浮選 硫化鉄浮選の尾鉱から重晶石浮選を行う。重晶石浮選では水酸化ナトリウムで pH7 として石油スルフォン酸系の捕収剤を用いて行っている。

スライム銀浮選 破砕から出たスライムは、スライムシックナーに送られた後、サイクロンとデカンターで分級される。粗粒は磨鉱へ、細粒は銀浮選を行い、その浮鉱は銅・鉛セミバルク浮選に送られる。

3.松峰選鉱場 日本では銅、鉛、亜鉛を中心とする複雑硫化鉱(黒鉱)の生産が多く、その分離法も多く研究されてきており、独自の選鉱法も発展してきていた。その代表的な例が松峰選鉱場であり、1994 年の閉山まで数多くの改善が行われてきた。

銅・鉛セミバルク浮選 銅・鉛セミバルク浮選は亜硫酸ガスで pH4.5 消石灰で pH5.5 の条件をつけてジチオリン酸系の捕収剤を添加して行う。銅・鉛セミバルク浮選は、3 次精選まで行い精鉱は銅鉛分離浮選に送られる銅・鉛セミバルク浮選における亜硫酸ガスの抑制作用は、次のように考えられている。 亜硫酸ガスが添加されると、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱表面に亜硫酸塩が生成し捕収剤は吸着しにくい。一方黄銅鉱、方鉛鉱表面には捕収剤が吸着する。この結果、気泡と接触しても表面が親水性になっている閃亜鉛鉱、黄鉄鉱は浮遊しにくい。

銅鉛分離浮選 銅鉛分離浮選ではスチームを直接コンディショナーに入れ、60~70℃に加温して銅を浮鉱、鉛を沈鉱として採取している。銅鉛分離加温浮選は従来の青化ソーダによる分離に代わる方法として開発されたが、選鉱成績の改善はもとより青化ソーダがもたらす環境問題、さらに金、銀の溶解問題も解決し大きな成果を上げることとなった。加温浮選での黄銅鉱・方鉛鉱の分離は、pH6 付近においてパルプを 60~70℃に加温することにより捕収剤が方鉛鉱表面より選択的に脱着し、さらに方鉛鉱表面の酸化による親水性化が方鉛鉱を抑制するものと考えられている。

亜鉛浮選 亜鉛粗選では消石灰を添加し pH8 に調整後、エアレーションを行い硫化鉄抑制条件を付与する。その後硫酸銅及びザンセートを添加して粗選を行う。精選はpH10~11 として 3 次精選まで行い亜鉛精鉱を採取している。

硫化鉄浮選 硫化鉄浮選は硫酸で pH4 としてザンセートを捕収

サンド

磨鉱 Ag浮選

Cu・Pb セミバルク浮選 ↑Ag,Cu,Pb,Zn,Py G

スライム

↑Cu・Pb

Cu・Pb 分離浮選 Zn 浮選

Zn・BaSO4・G↓

↑Cu Pb↓ ↑Zn Py,BaSO4,G↓

BaSO4↓

BaSO4 浮選

BaSO4 G↓

Cu 精鉱 Pb 精鉱 Zn 精鉱 Py 精鉱 尾鉱 尾鉱 BaSO4 精鉱

図 11. 松峰選鉱場SO4・温水浮選法

4.鉛、亜鉛製錬 得られた鉛精鉱、亜鉛精鉱はそれぞれ製錬所に輸送されて、製錬される。代表的な例として鉛製錬所は東邦亜鉛の鉛製錬所である契島製錬所、亜鉛精錬所である安中製錬所のフローシートを以下に示す。また、鉛、亜鉛混合精鉱を同時に処理する ISP 製錬法の例として住友金属鉱山播磨製錬所のフローシートもしめす。

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連載

図 12. 東邦亜鉛(契島製錬所 鉛)

図 13. 東邦亜鉛(安中製錬所 亜鉛)

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ホッパー

精鉱ヤード

破砕機

破砕焼結返粉機

酸化亜鉛団鉱

熱風炉

亜鉛・鉛熔鉱炉

コンデンサー

疎入バケット コークス予熱路

熱風炉及びコークス予熱路へ

ガス

ガス洗滌系統

洗浄ダスト

キャスティング炉

亜鉛鋳造機

粗鉛

送風機

調合亜鉛蒸留亜鉛

前床

冷却桶

鉛ポンプ

焼結塊貯鉱庫

コークス貯蔵庫

焼結機

排ガス除害工程へ

円筒形混合機

図 14. 住友金属鉱山(播磨製錬所 ISP)

酸化亜鉛焼鉱

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連載

販売することは難しく、例え低価格になってもモリブデンの回収を停止することは無くなってきている。 主要な銅-モリブデン分離法を表 1 に示す。 ここで注意することは鉱液に Ca があると銅が活性化して浮きやすくなること。そのために鉱液中に CO2

ガスを吹き込み、鉱液中の Ca を炭酸カルシウムとして除去してからモリブデン浮選を行うことも多い。一方で、銅浮選の段階から石灰で pH を上げて黄鉄鉱を抑制するのではなく、低 pH のまま他の抑制剤で黄鉄鉱を抑制することで石灰の使用量を下げて後段のモリブデン分離を行いやすくする試みもなされている。 モリブデンは非常に浮きやすい鉱物であるのでその捕収剤は一般的なディーゼル油等のオイルが用いられる。ただし、捕収剤としてのオイルは Cornea 21、Sunray DX Vapor oil、Texaco No. 539 のように粘性の高いものほど、実収率の向上が認められるが、精鉱品位は通常わずかに低くなる傾向が認められる。 精鉱品位が低い場合は先にも述べたようにモリブデン精鉱を塩化第 2 鉄等で銅を溶かし、品位を上げるリーチング設備を備えている鉱山が多い。

Ⅲ.モリブデン モリブデン鉱山は中国や北南米に大規模鉱山が多いのであるが、中国を除くと生産の 85%は銅鉱山の副産物として生産されている。 銅鉱山でモリブデンを回収する方法は銅とモリブデンを一緒に浮かし、一旦銅-モリブデンのバルク精鉱を得てから、銅を抑制してモリブデンを浮遊させる方法が用いられる。 かつてはモリブデン価格が低く、分離するコストが高くなる場合はモリブデンを分離せず、そのまま銅精鉱として出荷することが一般的であった。 モリブデン精鉱中の銅品位が高い場合には塩化第 2鉄やシアンで銅をリーチングすることでモリブデン品位を上げて出荷する(これは現在でも行われている)。そのためにモリブデン価格が低くなった場合には、モリブデンの生産供給量が落ち、自然にモリブデン価格は一定になっていたのであるが、現在は銅製錬所がモリブデンが入っていると炉を傷めるとのことで、銅精鉱中のモリブデンはペナルティとなっており、かつてのように銅-モリブデンのバルク精鉱を銅精鉱として

図 15. 世界の主要モリブデン鉱山

FEED Bulk Plant Tailings

Cu Concentrate

Mo Concentrate

Moly Plant

図 16. 銅・モリブデン選鉱フロー概念図

 気泡剤はプラントデータや試験室結果から Pine Oilや alkoxy paraffin が MIBC や glycol タイプよりも実収率が上がる場合が多い。特に泡が固く、流動性に乏しい状況が認められた場合には、乳化剤を添加することで実収率が大きく向上する場合がある。 銅-モリブデン分離では銅の鉱種や脈石の鉱種で分離法は異なるが、主たる観点は以下のとおり。

● 銅、モリブデンのバルク浮選で捕収剤としてザンセートのみを用いている場合は、銅、モリブデン分離で Na2S か NaHS のみで捕収剤が銅表面に吸着しているのを剝がすことができる。捕

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連載

cocite,bornite,covellite,digenite 等 の 場 合は他の方法を検討した方が良い。

 表 2 に参考のために実際のプラントで採用されている分離法と、成績を挙げておく。

収 剤 に dithiophosphate や thionocarbamate を用いた場合は、他の方法を用いる必要がある。

● 銅 鉱 物 が chalcopyrite 主 体 の 場 合 は Na2S かNaHS による銅抑制法が可能であるが、chal-

11‑11.5

表 1. 銅・モリブデン分離法

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連載Copper-molybdenum reagent scheme

Plant

Brenda Cp NaHS Yes― ―

Lornex Cp,Bo NaHS Yes― ―Gibraltar Cp,Bo Na2S No―

Gaspe Cp,Cov,Cc Steam NaHS Na2(CrO4) Yes

Utah Bo,Co Roasting Utah process NaCN, Nokes YesRay Cp Steam Na4Fe(CN)6

Na4Fe(CN)6

Na4Fe(CN)6, NaOCl

Nokes YesChino Cp Steam, roasting NaHS Nokes YesMcGill Cp Steam NaCN Yes

Na4Fe(CN)6Morency Cp,Cc Roasting

Inspiration Cc,Cov Autoclave

Na2Zn(CN4), H2O2 Yes

NaHS, (NH4)2SPima Cp,Cc roast for tale Yes

Na4Fe(CN)6, H2O2San Manuel Cp/Cc Na2Zn(CN)4, H2O2 Yes―

NokesMiami Cp,Cov (NH4)2S Yes―

arsenic NokesChuquicamata Cc NaCN Yes―Nokesarsenic NokesEl Salvador Cc K4Fe(CN)6 Yes―

Na4Fe(CN)6,Southern Yes

El Teniente Cc,Cp NaCN Yes―

NaHSAndinaPeru

Cp ―

Na(ClO4)Copper Cc,Cp ―

Na2S/NaHS(80 :20)Mission Cp NaCN Yes

Na4Fe(CN)6oxidization YesEsperanza Cp Pressure

NokesSierrita Cp Steam Yes

―Utah processSilver Bell Cp,Co Roasting Yes

―NokesBagdad Cc,Cp Cooking Yes

―Nokessteaming Yes

Mineral Park Cp Yes

― NaHS ―Twin Butte Cp Yes

― Na2S ―Balkhashi Cp Yes― Na2S ―Almalyk Cp Yes

Island Copper Cp NaHS Na2Zn(CN)4, NaCN Yes

Canada

USA

Chile

Russia

Copperminerals

Thermaltreatment

Primarydepressant

Secondarydepressant

Leach ofconcentrate

― Na2S ―KadzharanEuropeMedet,

Cp Yes

Steaming Na2S ―Bulgaria Cp Yes

表 2. 実プラント分離法、成績

(1)実プラント分離法

(455)

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62 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

Plant

Gibraltar 60,000 Cp,Bo 0.28 0.01 30.0 85 80 35 60 145 Lornex 90,000 Cp,Bo 0.35 0.01 33.0 85 84 60 50 160 Gaspe 35,000 Cp,Cc,Cov 0.66 0.02 30.0 90 89 55 55 148 Island Copper 35,000 Cp 0.50 0.02 25.0 90 85 66 65 138 Brenda 24,000 Cp 0.20 0.03 25.0 90 78 82 40 220 Granisle Copper 18,000 Cp,Bo 0.43 ― 25.0 ― 85 ― 60 150

Utah Copper 180,000 Cp,Bo,Cov 0.40 0.02 28 90 87 56 55 152 Sierrita 105,000 Cp 0.30 0.02 25 87 84 70 50 166 San Manuel 75,000 Cp,Cc 0.45 0.01 31 87 89 60 60 152 Morency 60,000 Cc,Bo 0.50 0.01 25 ― 85 ― 52 163 Butte 60,000 Cp,Cc 0.60 ― 26 ― 80 ― 50 170 Pima 55,000 Cp,Cc 0.40 0.02 27 64 80 40 60 148 Pinto Valley 50,000 Cp 0.38 0.01 25 ― 82 ― 48 180 Twin Butte 30,000 Cp 0.50 0.02 28 73 76 35 52 165 Mineral Park 200,000 Cp,Cc 0.35 0.02 22 90 75 62 61 158

South Copper(P) 80,000 Cp,Cc 1.1 0.02 30 87 85 38 55 170 El Salvador(C) 25,000 Cc 0.79 0.02 29 95 78 60 65 139 Escondida(C) 120,000 Cc 1.90 ― 44 ― 88 ― 50 160 Disputada(C) 40,000 Cp,Cp 0.80 0.01 29 80 84 40 65 140 El Cobre(C) 18,000 Cp,Cp 1.70 0.05 28 ― 85 ― 60 148 El Teniente(C) Sewell & Colon 60,000 Cp,Co 1.10 0.02 29 95 80 42 65 144

Collauasi(C) 60,000 Cc 1.20 ― 35 ― 88 ― 50 180 Andina 20,000 Cp 1.15 0.015 28 ― 85 ― 70 125

Baghdad 10,000 Cc 0.65 0.03 33 90 86 65 40 225

Major Cu Head Concen-

capacity(tpd) % assay %

Grind %

Canada

USA

Peru(P) & Chile(C)

minerals assay tration Recovery

Cu MoS2 Cu MoS2 Cu MoS2 % K80 < 200 µm mesh

(2)成績

Plant

Acadia Hills 60,000 Cp 0.60 ― 30 ― 88 ― 60 145Mount Isa Copper 65,000 Cp 1.02 ― 25 ― 90 ― 55 172Dos Altosa 35,000 Cp 0.42 ― 28 ― 82 ― 50 1.82Philexa 30,000 Cp,Bo 0.35 ― 25 ― 90 ― 55 158Lepantoa 10,000 Cp 1.50 ― 30 ― 92 ― 60 142Stoninoa 15,000 Cp 0.40 ― 24 ― 85 ― ― ―

Balkhashi 40,000 Cp,Bo 0.40 0.015 24.0 85 85 40 60 143

Mar Coppera 180,000 Cp 0.75 ― 25 ― 85 ― 80 101

Bozchshakul 18,000 Cp 0.58 0.020 18.0 75 78 56 50 178Almalyk 50,000 Cp 0.50 0.01 19 85 77 40 45 190Kadzharan 20,000 Cp 1.25 0.05 17 79 80 68 61 144Agarak 12,000 Cp 1.50 0.02 18 81 79 75 70 118Koundarskoie 30,000 Cp 1.10 0.015 18 83 88 66 66 138

Major Cu Head Concen-

capacity(tpd) % assay %

Grind%

Pacific Rim Australia

Russia

Majdanpek, Yug 15,000 Cp 0.77 0.005 26.5 ― 85 ― 50 169Krivelj Bor 25,000 Cp 0.35 ― 28 ― 78 ― 40 220Medez Bulgaria 28,000 Cp 0.35 0.011 15 65 81 30 55 155

Europe

Mufulira ZCCM 18,000 Bo,Cov 2.45 ― 46.0 ― 88 ― 45 210Palabora SA 80,000 Cp,Bo 0.55 ― 32.5 ― 83 ― 52 170Komoto, Congo

aPhilippines.

15,000 Cc,Bo 4.60 ― 48.0 ― 82 ― 65 139

Africa

Sulfide circuit

minerals assay tration Recovery

Cu MoS2 Cu MoS2 Cu MoS2 % K80< 200 µmmesh

(456)

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2014.01 金属資源レポート 63

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

Plant

Acadia Hills 60,000 Cp 0.60 ― 30 ― 88 ― 60 145Mount Isa Copper 65,000 Cp 1.02 ― 25 ― 90 ― 55 172Dos Altosa 35,000 Cp 0.42 ― 28 ― 82 ― 50 1.82Philexa 30,000 Cp,Bo 0.35 ― 25 ― 90 ― 55 158Lepantoa 10,000 Cp 1.50 ― 30 ― 92 ― 60 142Stoninoa 15,000 Cp 0.40 ― 24 ― 85 ― ― ―

Balkhashi 40,000 Cp,Bo 0.40 0.015 24.0 85 85 40 60 143

Mar Coppera 180,000 Cp 0.75 ― 25 ― 85 ― 80 101

Bozchshakul 18,000 Cp 0.58 0.020 18.0 75 78 56 50 178Almalyk 50,000 Cp 0.50 0.01 19 85 77 40 45 190Kadzharan 20,000 Cp 1.25 0.05 17 79 80 68 61 144Agarak 12,000 Cp 1.50 0.02 18 81 79 75 70 118Koundarskoie 30,000 Cp 1.10 0.015 18 83 88 66 66 138

Major Cu Head Concen-

capacity(tpd) % assay %

Grind%

Pacific Rim Australia

Russia

Majdanpek, Yug 15,000 Cp 0.77 0.005 26.5 ― 85 ― 50 169Krivelj Bor 25,000 Cp 0.35 ― 28 ― 78 ― 40 220Medez Bulgaria 28,000 Cp 0.35 0.011 15 65 81 30 55 155

Europe

Mufulira ZCCM 18,000 Bo,Cov 2.45 ― 46.0 ― 88 ― 45 210Palabora SA 80,000 Cp,Bo 0.55 ― 32.5 ― 83 ― 52 170Komoto, Congo

aPhilippines.

15,000 Cc,Bo 4.60 ― 48.0 ― 82 ― 65 139

Africa

Sulfide circuit

minerals assay tration Recovery

Cu MoS2 Cu MoS2 Cu MoS2 % K80< 200 µmmesh

Plant

Acadia Hills 60,000 Cp 0.60 ― 30 ― 88 ― 60 145Mount Isa Copper 65,000 Cp 1.02 ― 25 ― 90 ― 55 172Dos Altosa 35,000 Cp 0.42 ― 28 ― 82 ― 50 1.82Philexa 30,000 Cp,Bo 0.35 ― 25 ― 90 ― 55 158Lepantoa 10,000 Cp 1.50 ― 30 ― 92 ― 60 142Stoninoa 15,000 Cp 0.40 ― 24 ― 85 ― ― ―

Balkhashi 40,000 Cp,Bo 0.40 0.015 24.0 85 85 40 60 143

Mar Coppera 180,000 Cp 0.75 ― 25 ― 85 ― 80 101

Bozchshakul 18,000 Cp 0.58 0.020 18.0 75 78 56 50 178Almalyk 50,000 Cp 0.50 0.01 19 85 77 40 45 190Kadzharan 20,000 Cp 1.25 0.05 17 79 80 68 61 144Agarak 12,000 Cp 1.50 0.02 18 81 79 75 70 118Koundarskoie 30,000 Cp 1.10 0.015 18 83 88 66 66 138

Major Cu Head Concen-

capacity(tpd) % assay %

Grind%

Pacific Rim Australia

Russia

Majdanpek, Yug 15,000 Cp 0.77 0.005 26.5 ― 85 ― 50 169Krivelj Bor 25,000 Cp 0.35 ― 28 ― 78 ― 40 220Medez Bulgaria 28,000 Cp 0.35 0.011 15 65 81 30 55 155

Europe

Mufulira ZCCM 18,000 Bo,Cov 2.45 ― 46.0 ― 88 ― 45 210Palabora SA 80,000 Cp,Bo 0.55 ― 32.5 ― 83 ― 52 170Komoto, Congo

aPhilippines.

15,000 Cc,Bo 4.60 ― 48.0 ― 82 ― 65 139

Africa

Sulfide circuit

minerals assay tration Recovery

Cu MoS2 Cu MoS2 Cu MoS2 % K80< 200 µmmesh

(457)

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64 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

の関係が成立する。この連立方程式を解くと、最初の式の両辺に t を掛けると、  tF=tC + tTとなり、  (f-t)F =(c-t)Cの関係が成立するので、  C/F =(f-t)/(c-t)実収率は、  cC/fF =(c(f-t))/(f(c-t))として求めることができる。と教科書には書いてあるし、理論的には正しいのであるが、現実的にはそう簡単ではないのである。例えば、今回の Red Dog 鉱山のフローシートでは鉛、亜鉛をバルク浮選で同時に浮かすわけであるが、上記バランス式に示す C/F =(f-t)/(c-t)の関係式を用いようにも Pb、Zn どちらの品位を用いるかで成績は変わってくる(もちろん、どちらの品位を用いても同じ値が出ることが理想ではあるが、実際にはあり得ない)。サンクリストバル鉱山では元々のデザインでは鉛精鉱、亜鉛精鉱の他に鉛亜鉛混合精鉱を生産していることから、通常の Zn、Pb の品位を用いたバランス式だけではそのバランスを求めることができない。また、モリブデンでも銅の副産物として得られている場合は物量を銅品位で求めた後、モリブデンは給鉱品位、精鉱品位でその実収率を求める方法が一般的であるが、その精度は低くなる。さらにモリブデン単独の鉱山であったとしても、品位は非常に低くなり、例えば尾鉱品位が有効数字 1 桁のような場合には、当然、実収率等のその値を用いる値も 1桁の精度しかなく、成績等も正確な数字を把握することはできない。そのような問題点を解決する方法が今回説明するソルバーを用いた計算方法である。 例えば、給鉱の Cu 品位、Zn 品位、Pb 品位の分析値をそれぞれ f1(m)、f2(m)、f3(m)とし(m は mea-sured の意味)、同様に精鉱、尾鉱の Cu 品位、Zn 品位、Pb 品位の分析値を c1(m)、c2(m)、c3(m)、t1(m)、t2(m)、t3(m)とする。そのままではバランスが取れないので、次に全てのバランスが取れる f1(r)、f2(r)、f3(r)(r は Roconciled の意味)の理想的な品位を想定し、その理想品位が実際の分析値に近くなるように最小 2 乗法を用いて最適化するのである(実際には

((measured ― reconciled)/(measured))̂2 の 総 和 が最小になるようにする)。言葉にすると非常にややこ

Ⅳ.ソルバーを用いたマテリアルバランス これまでも数度に渡りマテリアルバランスの重要性に関して述べてきたが、そもそもバランスとは何かについて簡単に振り返ってみたい。

〔バランスとは?〕1.風呂桶の論理 バランスについて考える上では以下のような風呂桶を念頭に浮かべることが重要である。風呂桶に水を入れて、一方で底から水を抜いているような場合、風呂桶に入る水の量と、抜ける水の量が同じであれば中に入っている水の水面は一定であり、この状態がバランスが取れている状態である。ここで重要なのは、あくまで入ってくる水の量と抜け出る水の量が同じというだけで、水面の高さ自体はバランスには影響を与えない。 これは例えば、抜ける水の出口が 2 つになっても変わらない。

 すなわち、系に入ってくる物質の総和が出ていく物質の総和と等しい時、その系はバランスが取れているといえる。 これを通常、バランスで行われる給鉱(F)と精鉱

(C)、尾鉱(T)の関係でいうと  F=C+Tの数式で表される。これは物量の関係式であるが、これはそれぞれ中に入っているメタル量に関しても同様の関係が成立する。例えば給鉱品位(f)、精鉱品位

(c)、尾鉱品位(t)とすると、  fF=cC + tT

(458)

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2014.01 金属資源レポート 65

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

しそうに聞こえるが実際にスプレッドシートを用いると非常に単純なことなので以下を参考に是非試してもらいたい。 実際にスプレッドシート中の Measured は実際の分析値を示しており、Weight に関してはどれかの元素を用いて求めた大体の値を初期値とすればよい。その上で、それらの値を Reconcile に数値貼り付けを行い、最適化の初期値とする。その隣の Metal は Reconcileの項の Weight と Assay を掛け合わせた値であり、Distribution は各 Product のメタル量を Feed 中のメタル量で割った値となる。Relation ではバランスの関係式を表しており、この場合、Feed ― Concentrate ―Tailing が物量、メタル量で全て 0 になるとしている。当然のことであるが、実態調査のような場合はこの関係式を幾つも作成することになる。次の((Meas ―Reco)/Meas)̂2 は実際の Measured と Reconciled の値の差を Measured の値で割ったもの。このように元の値で割り戻さなければ、例えば 1%の Cu に対して絶対値として 0.5%の差は非常に大きいが、90%のSiO2 に対して絶対値としての 0.5%の差は僅かなものとなるので、それぞれの値の割合を等しくするためである。ただし、サイクロンのような粒度分布等を用いる実態調査では Measured で割らずにそのまま(Meas― Reco)̂2 とする必要がある。そのまま、Relation の条件を満たしたうえで((Meas ― Reco)/Meas)̂2 の総和を最小にするような Reconcile 値を求めてもいいの

であるが、通常はその値にサンプリング方法や分析の信頼度などの条件を加味して Importance としてのFactor を掛けて、その Factor を掛けた値を最小化するようにする。 計算途中で収束しませんとのエラーメッセージが出る場合は、最初にスプレッドシートの数式を見直す。よくある間違いは、メタル量を求める際に Weight に$ を付け忘れてそのままカット&ペーストを行っているミスである。スプレッドシートの数式を確認しても収束しない場合はソルバーのオプションを開き、収束条件を緩めるなどして計算することで、エラーを防ぐことができる。

(459)

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66 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

Ⅴ.おわりに ソルバーに関しては、金属資源レポート Vol. 42 No. 5 の「問題が起こった時の解決法」のマスバランスの項や同 Vol. 42 No. 6「世界に通用する日本の選鉱技術者育成」の選鉱物質バランスの項でも簡単に述べてはいたが、日本人が海外の鉱山現場にて働く上で非常に強い武器となると信じており、ぜひ習得してもらいたいと考えている。ただ、実際に本方法に関しては国内外のエンジニアに説明を行ったのだが、実際に現場で働いている海外のエンジニアは 10 分程度説明を行うと、その内容をほぼ理解し、応用するのに対し、日本の学生やエンジニアに対し説明を行っても、どうしてもピンと来ないようである。これは、海外のエンジニアが Excel をはじめとする Spreadsheet を非常に使いこなしているという面もあるのだが、最も大きな違いは、やはり Reconcile(実際の販売量に対して生産量を合わせるように調整すること。多元素系で合わせるのにそれぞれの会社の方法があるが、例えば銅で求めた物量バランスにモリブデン等の収率を合わせると、日データの累計との間に大きな差が生じることも多い)等で苦労しており、その必要性を肌身で感じているためと考えられる。 今回の稿では、選鉱技術者を対象に特に役立つと思えるソルバーによるマテリアルバランスの紹介を念頭に記事を進めたので、選鉱技術者が対象となってしまい、技術的内容に偏りすぎた感がある。したがってこれまでの記事とは趣を異とするかもしれないが、少なくとも、バランスの項で述べた風呂桶の原理に関してはご理解いただきたいのである。設計においても、アカウントに関しても、本概念こそが根幹をなしており、選鉱に関するご理解を深めていただけると信ずるものである。 なお、ソルバーの使い方を示すために、海外の大学で教科書としてよく用いられている“Mineral Process-ing Technology”の第 3 章に述べられている例題をソルバーにて回答しているので参考にしてもらいたい。

(2014.1.8)

2.静的バランスと動的バランス 風呂桶の原理で示すように系に入る量と出る量が同じである場合、風呂桶の水位は一定であり、バランスが取れている。この状態を静的バランスと呼び、例え風呂桶の水位が上下しても長期間の間には、静的バランスは取れていると考えられる。 一方、系に入る水の量が系から出る水の量より多い場合は、当然風呂桶の水位は上がってくる。これを数式に表すと、

系に入ってくる物量=系から出ていく物量+系中の増加物量

として静的バランスに置き換えることができる。このことは特に Monthly Reconciliation である販売量(系から出ていくもの)と処理の成績を合わせる際に重要となり、系の中の Inventory の増減と選鉱処理量、各品位等をソルバーで調整して販売量と一致させることが必要となる。ここで重要なのは静的バランスと異なり、増減の要素があることから時間(期間)の概念が必要となることである。実際に現場では月初めに In-ventory の調査を行い、その前の月の測定値からの増減を求めて、販売量に合わせるように成績を調整しているが、ソルバーを用いることで、その操作は非常に単純化される。

例題

(460)

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2014.01 金属資源レポート 67

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

(ソルバーによる計算参考) ソルバーを利用した Mineral Processing Technology 第 3 章の例題解

1. ソルバーを使用する為の準備

ソルバーアドインを読み込む

ソルバー アドインは Microsoft Office Excel のアドイン (アドイン: Office に独自のコマンドや独自の機能を

追加する追加プログラム。) プログラムで、Microsoft Office または Excel をインストールすると利用可能に

なる。ただし、Excel でアドインを使用するには、最初にそのアドインを読み込む必要がある。

1. (Microsoft Office ボタン) をクリックし、[Excel のオプション] をクリックする。

2.[アドイン] をクリックし、[管理] ボックスの一覧の [Excel アドイン] をクリックする。

3.[検索] をクリックします。

4.[有効なアドイン] ボックスの一覧の [ソルバー アドイン] チェック ボックスをオンにし、[OK] をクリックす

る。

ヒント [有効なアドイン] ボックスの一覧に [ソルバー アドイン] が表示されない場合は、[参照] を

クリックしてアドイン ファイルを見つける。ソルバー アドインが現在コンピュータにインストールさ

れていないというメッセージが表示されたら、[はい] をクリックしてインストールする。

5.ソルバー アドインを読み込むと、[データ] タブの [分析] で [ソルバー] コマンドを利用できるようにな

る。

マクロ参照

ソルバーを標準化する為にはマクロに組み込むのが便利であるが、その場合下記の手順で[参照設定]をす

れば使えるようになる。

(1)Excel VBA のエディタを開く。(コードを書く画面のこと)

(2)メニューで [ツール]-[参照設定]

(3)"SOLVER.xls" を指定し、OK。

もし選択肢に "SOLVER.xls" が無いようであれば、以下の手順を行う。

「SolverOk ヘルプの抜粋」

この関数を使う前に、ソルバー アドインへの参照を設定しておく。

Visual Basic モジュールをアクティブにした状態で、[ツール] メニューの [参照設定] をクリックし、[参照

可能なライブラリ ファイル] の [Solver.xla] チェック ボックスをオンにする。

このチェック ボックスが [参照可能なライブラリ ファイル] に表示されない場合は、[参照] をクリックして

から、Office をセットアップしたフォルダの \Office\Library にある Solver.xla を開く。

2. ソルバーを利用した例題解

例題一覧

例題

(461)

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68 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

給鉱

びサ

(462)

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2014.01 金属資源レポート 69

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

 粉砕系統の循環鉱量とロッドミルおよびサイクロン給鉱に加える水量を計算しなさい。

(463)

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70 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

(464)

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2014.01 金属資源レポート 71

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

図 3.30 交点形式の浮選系統

 すべての質量流量の計算と、流れを計算するための接続マトリックスの利用に十分なデ

ータが得られていることを、接続点の物量割合を求めることで確かめなさい。

(465)

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72 2014.01 金属資源レポート

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

ソルバーによる回答

例題 3.1

比重ビンによるスラリー濃度計算であるが、ここでも難しい式は覚えずに以下の連立方程式を解けばよい。

S+W=1.4

S/2.65+W=1

S:1 リットル容器中の個体重量(kg)

W:1 リットル容器中の水重量(kg)

石英比重:2.65

ここで連立方程式を解けば良いが、上で述べたソルバーを使用する。

ここで最初に表の適当な位置、ここでは B5, B6 に変数名、そしてその横の C5, C6 に実際の変数として適当な数

字(ここでは1)を入れておく。変数である事を示す為に色を変えるなどしておく方が判りやすい。

次に方程式を書くが、ここでは B8, B9 に示す様に左辺ー右辺とし上記変数を用いてそのセルが本来ならば0に

なる様に式を作成する。即ち、

c8 に+c5+c6-1.4

c9 に+c5/2.65+c6-1

を入力する。

次にソルバーを起動すると以下の様なパラメーター設定のウィンドウが立ち上がる。

(466)

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2014.01 金属資源レポート 73

最新選鉱技術事情 鉱種別代表的プロセス編(5)―鉛、亜鉛、モリブデン―

連載

今回の場合、C8, C9 の式が0になるような C5, C6 の値が求まれば連立方程式を解いたことになるので、目的セ

ルは取り敢えず C8 を設定し目標値を値で0とし(今回の場合余り意味は無い。)、変化させるセルは C5, C6 とし、

制約条件として C8, C9=0 を設定する。その上で実行すれば、自動的に C8, C9 が変化し、制約条件を満たす値、

即ち連立方程式の解が求まる事になる。

連立方程式の解が得られ、固体重量、水重量(体積)が求まったのでその上で、

パルプ濃度=個体重量/(個体重量+水重量)X 100

(467)

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ちなみに、今回得た値 330.3896kg/時は本書で示されている回答値 330.5kg/時と異なっているように見えるが、

実際に式 3.6 を解くと、濃度は 45.88745%であり、今回ソルバーで求めた値と完全に一致する。

(式 3.6)

回答

(468)

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例題 3.2

次いで問題 3.2 も同様にソルバーで求めてみる。

(469)

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今回はなんと本書の回答でスラリー2 の回答が間違っている事が判明した。(スラリー2 の固体流量 1.82t/時とし

ているが、正しくは 2.95t/時、従って正しい回答は 5.68t/時である。

どうもスラリー2の濃度を 40%で計算しているようである。やはり、連立方程式は複雑な公式などよりはそのまま

ソルバーで計算させた方が間違いが少ない。

回答

(470)

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例題 3.3

例題 3.3、例題 3.4 に関してはソルバーを使うまでもなく単位を順に揃えて表計算を行えば良い。例題 3.4 は例題

3.2で得られた固体重量、水重量を用いれば単純であるが、例題3.2で得られた値が間違っている為に、例題3.4

の回答も間違えている。(正しくは 46.61%)。

回答

例題 3.4

(471)

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例題 3.5

例題 3.5 は基本式のとおりであるのでソルバーを使用するまでもないのであるが、参考の為以下に示す連立方

程式を解けば即座に計算可能である。

(472)

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例題 3.6

例第 3.6 は現実に近くなってきている。鉱山で産出された銅精鉱は製錬所で積み上げられるまで船で輸送する

為数週間掛かるし、最終的に製錬所と鉱山で生産量が確定するまでに数カ月要する場合もある。実際には鉱山

から船に積み込む際にサンプリングを実施し、仮の販売量を決定するので、その積み出し量と、月末に測定され

る鉱山内での仕掛量(Inventory)の増減と加重平均された日ごとの生産量から月間生産量を計算し成績を得、

鉱山で積み込み時に算定された販売量と製錬所で受け入れた量との間で最終的に確定された販売量の差は、

確定された月の生産量に算入される事が多い。このあたりの操作は非常にややこしいので別項を設けて後述す

る。

今回の例でみると給鉱量 28,760t、加重平均された月別分析品位は給鉱、精鉱、尾鉱がそれぞれ 1.1%、24.9%、

0.12%なので単純に計算すると 1,134.7tの精鉱が生産されているはずである。

一方、販売の観点からみると、今月販売された精鉱量が 1,090.7t に対し、その内 257t は先月生産からの持ち越

し、今月生産分のうち 210t は未販売で来月分への持ち越しとなる。従って、今月の精鉱生産量は 1,043.7tが販

売からみた生産量であり、実際の生産量はこの値に合わせるべきである。問題は先月から持ち越された精鉱の

品位が不明であること。今回は不明のまま計算するが、実際には当然値があるのでそれに合わせて調整を行う

必要がある。

以下に生産量を販売値に合わせた上で、最小 2 乗法で分析値を調整して成績を求めた例を示す。実際には先

にも述べたように販売値が確定していないので確定できないのであるが、原鉱品位を 1.1%から 1.052%に、尾鉱

品位を 0.12%から 0.121%調整し、欠量を出さずに、バランスがとられている。この時の実際の実収率は 88.96%、

理論実収率は 89.52%なる。

(473)

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(474)

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例題 3.7

例題 3.7 は品位の代わりに粒度を用いた例であるが、基本的に品位の場合と違いは無い。

鉱サ

(475)

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例題 3.8

例第3.8は品位の代わりに濃度が用いられているが濃度の場合は湿量(パルプ重量)がベースとなるので、逆数

をかけて行う必要がある。

ただし、濃度を用いる場合は通常、途中で水を加える場合なども良くある事から固体量と水の量を其々変数とし

てバランスを組み固体量/パルプ重量で濃度式を出して、それを測定値と一致させる方法が間違いが少ない。

(476)

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例題 3.9

例題 3.9 にその濃度を用いて固体量と水の量を其々変数としてバランスを組み固体量/パルプ重量で濃度式を

出して、それを測定値と一致させる方法を示す。

(477)

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例題 3.10

例題 3.10 は非常によくある閉回路粉砕のバランスを求めているが、実際の物量バランスではサイクロン給鉱、ア

ンダーフロー、オーバーフローのサンプルを採取し、粒度からバランスを求める事が多い。サイクロンオーバーフ

ローの乾量が給鉱量と等しくなる為、濃度に関係なしにバランスを組めるためである。ただし、濃度は比重ビンで

簡単に求める事が出来る為、概算で繰り返し率を求めるような場合には濃度を用いる。

(478)

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例題 3.11

例題 3.11 は正に濃度を用いて簡易的に磨鉱系のバランスを求める方法であり、通常設置されているサイクロン

給鉱の流量計を日常的にチェックする為にも行われる。一度この様なシートを作っておけば、測定濃度を入力し、

ソルバーを実行させるだけで簡単にバランスが求められるので比較的良く使用される。

 粉砕系統の循環鉱量とロッドミルおよびサイクロン給鉱に加える水量を計算

しなさい。

(479)

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例題 3.12

例題 3.12 も比較的難しそうに見えるが 1 つずつ関係を求めれば簡単に結果が得られる。その結果回答と同じ

24.3m3/h の新水が必要との結果が得られているが、実際には比重選鉱給鉱の水量が 36m3/h に対し、比重選

鉱尾鉱の水量は 55.12m3/h となっており、比重選鉱にも水が大量に使用されている事が判る。従って、新水とし

ては最低 43.4m3/h 必要な事が判る。

図 3.24 スズ選鉱場処理系統

(480)

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(481)

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例題3.13

これまでの例ではソルバーを使用すると言っても基本的に連立方程式を解いていただけであるが、例題 3.13 に

なると少々趣を異にしている。特に重要な項目は品位であっても誤差を含むと言う概念である。ここでの誤差は

相対標準偏差%の形で表されているが、この表は基本的に品位 0.005%の値では相対標準偏差として 12%、品位

2%の値では 6%の相対標準偏差と一応読めるので、取り敢えず線形関係から品位 3.5%では相対標準偏差 8.8%

即ち、3.5%の給鉱品位は 3.2%から 3.8%の可能性があるとの意味合いを持つ。同様に精鉱は 17.2%~18.8%、尾

鉱は 0.91%~1.09%の間を持つ可能性を示している。それを踏まえた上で、実収率がどの程度の範囲になるか

を求めるわけであるが、ここでソルバーの最大値、最小値が活躍する事になる。今回は目的セルは実収率が最

大の時と最小の時を求めるのであるから Conc の Cu Distribution である F28 とし、目標値は最大値とする。変化

させるセルはこれまでの様に重量と、更に今回は其々の品位を範囲の中で変化させるので品位も同様に設定

する。最後に制約条件であるが、これまでの様にバランス式を0にする条件に加え、各品位が最大品位と最小

品位の間になる様に設定する。その上で実行すれば、実収率の最大値は 80.36%、最小値に目標値を設定し実

行すれば実収率の最小値は 69.88%となり、通常の計算では実収率 75.63%として得られているが、実際には

69.88%~80.36%の可能性がある事が判る。

(482)

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この全ての測定データには誤差を含み、その誤差が結果を大きく変化させると言う概念は今後、物量バランスや

Reconciliation を行っていく上で非常に大切な概念となるので改めてここに強調しておく。

(483)

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例題 3.14

例題 3.14 では同様に品位とパルプ濃度があるが、測定値に誤差を想定している。回答では単に精鉱量の相対

標準偏差がパルプ濃度から求めた方が少ないので日常管理をパルプ濃度で行う方が良いとの回答であるが、

実際に品位から求めた精鉱量が 63.3%~90%と非常に高いのに対し、パルプ濃度から求めた精鉱量は 26.9%

~29.6%と値の範囲自体が大きく異なり、誤差範囲の設定そのものが問題である事が判る。実際の日常管理で

は品位や濃度等の多変数を用いて全ての測定値の誤差割合が最小になる様な値を求める方法が用いられ、こ

れを Reconciliation と呼ぶ。以下に実際に本例について Reconciliation を行った結果を示す。

(484)

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(485)

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例題 3.15

例題 3.15 に関しては訳のわからない回答である。例題 3.14 で述べられている様にパルプ濃度から精鉱量を求

めると26.95%、それにSn分析品位を用いて実収率を計算すると、給鉱と精鉱から求めた順算実収率で30.24%、

精鉱と尾鉱から求めた逆算実収率で 34.41%となり、本書回答で示されるような実収率 83.7±2.5%にはなりえな

い。現実に即さない回答である。一応、Reconciliation で求めると、スズ実収率は 36.78%と計算される。

(486)

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例題 3.16

例題 3.16 に関しては計算自体は通常の連立方程式を解くだけの話であり、これまでソルバーを使用してきた人

にとっては簡単極まりない例ではあるのだが、注意すべきは文章から自分でフローシートを書く必要がある事で

ある。ソルバーを使用するのは表計算ソフト上であるが、通常、これらのソフトでは図を作成する事が出来るの

でその機能を用いてテキストボックスとコネクターを用いてフローシートを作成すると便利である。本来マスバラ

ンスを行う上ではこの様にフローシートを作成する事が最初の作業となるので十分練習してもらいたい。

Feed

Rougher

Scavenger

High Conc Low Conc Tailing

(487)

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例題 3.19

例題 3.17,18 は本書に見当たらない。例題 3.19 はフローシートからサンプル数をマトリックスで求めることになっ

ているが、実際には 9=6+3 の関係で 9=100 なので 9,6,3 の物量が求められ、次に 2=3+5 の関係で 3 の物量が

求まっているので 2,5 の物量が求められ、4=8+6 の関係で最初に 6 の物量が求まっているので 4,8 の物量も求ま

ると言うように単純に推論していくと簡単である。

元来、筆者はマトリックスの考え方は問題があると考えている。例えば本例題においても全体の成績を求める為

には 9,3,6 のサンプルだけでよく、繰り返しを検討する場合は通常 7 に流量計は設置されているのでその値を用

いる等の方法を採る事を検討するべきだと考える。又、分割の様なフローがある場合はやはり流量計を用いる

か別の方法を採らなければサンプリングの意味を持たなくなるからである。サンプリングは何のために実施する

かを十分に理解し、その為にどの様なサンプルをとるかを十分に検討するべきである。.

図 3.30 交点形式の浮選系統

 すべての質量流量の計算と、流れを計算するための接続マトリックスの利用に十分なデ

ータが得られていることを、接続点の物量割合を求めることで確かめなさい。

(488)

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その他最適化

例題は以上であるが、本章では続けて最小 2 乗法を用いた最適化計算の例が示されているのでそれについて

も考察する。マトリックスの際と同様に非常に複雑な式が書かれているのだが、残念ながら最小 2 乗法を線形式

で求める為に各成分から重量を平均化し、その値を用いて品位を調整する方法であり、一昔前のコンピューター

の能力が低かった際の方法と言える。ソルバーでは非線形も扱えるので品位を調整しながら重量もそれに合わ

せて最も適切な値に調整する事が出来る。

実際に本書で述べられている調整分析値とソルバーで得られた調整分析値の比較を行ってみよう。

本書で使用された精鉱量が 37.03%、ソルバーで求められた精鉱量が 41.51%と差がある。品位の差で見ていく

と本書ではスズ品位でかなりの調整が認められるのに対し、ソルバーで求めた値ではシリカで比較的大きな差

が認められる。大体、スズ選鉱場でスズ品位に大きな調整を行う事には疑問があるが、取り敢えずここでは数学

的に品位誤差を最小にするという観点で論を進める。ただし、ここで注意してもらいたいのはこの品位誤差、即

ち調整値の 2 乗をそのまま最小にすればよいと言う事ではない事である。例えば 90%の品位を 0.1%調節し

90.1%とするのと 0.09%の品位の物を同じく 0.1%調整して 0.19%とするのでは大きく意味合いが違ってくる事は

明白である。即ち調整値による差は元の測定値に対する割合で考えるべきであり、最小化するのもその割合の

2 乗に対して実施する事になる。そこで、それぞれの品位差を測定値で割った品位差割合を求め、その 2 乗の合

計値を求めると本書の回答では 0.0335、一方のソルバーを用いた値では 0.0075 となり、それぞれ平方根を求め

ると、本書回答では 18%、ソルバーでは 9%とソルバーでは倍の精度を持つと考えられる。

最後にハイドロサイクロンの分布割合の例を示す。考え方はこれまで述べてきたのとほとんど差が無いのだが、

違いは品位の場合と違い、最小化を測定値と調整値の差の 2 乗の合計を用い、品位の様に測定値の値で割っ

た誤差割合を用いないことである。なぜならば、粒度分布では品位の様に独立変数では無く、どこかの粒度幅

の重量割合が変化すれば他の粒度幅の割合も変化する謂わば従属変数であり、全体の重量割合は、もっとも

大きな重量幅を持つ粒度域で決定される為である。簡単に言うと、ある粒度幅で 50%を 51%に調整するのと

1%を 2%に調整するので同じ意味合いを持つと言う事である。結果として、本書の回答例とソルバーで求めた

間でほとんど差が認められない結果となった。

(489)

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通常、この様なサンプリングはサイクロンの分離効率を確認する目的で行うので各サイズの Uf に分配される割

合を求める。その上で、アンダーフローにショートカットする割合としてアンダーフローへの水の配分率を求める。

本例では物量の 85%がオーバーフローに分配されている結果となっており、その結果、水のアンダーフローへの

配分率はわずか 3.09%となっている。

ここまで、ソルバーを用いて全ての例題を解いてきたが、言いたかった事は本章で述べらている様な小難しい式を

理解しなくてもエクセルの様な表計算プログラムに標準装備されているソルバーを用いればより精度の高い汎用

(490)

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性のあるシステムを簡単に作れるので、どうか恐れないで欲しいと言う事を願う為である。是非、恐れずに簡単な

方法を十分に使いこなせるように研鑽をつんでもらいたい。

(491)