OSの動向から仮想化、IPv6、暗号化、ストレージなど ネット技...

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27 NETWORK magazine June 2009 インフラ ネット技術OS の動向から仮想化、IPv6、暗号化、ストレージなど 2000 年の初頭にブロードバンドが一気に 普及した後、企業活動や我々の生活はネ ットワークに大きく依存するようになった。 では、来るべき「次の 10 年」を見据え、イ ンフラ&ネット技術はどこへ向かうのか?  仮想化や OSIPv6NGN、暗号、スト レージ、WAN 高速化、スマートフォンな ど幅広いキーワードをベースに現状と未来 を解説する。 未来 総力 特集

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27NETWORK magazine June 2009

インフラ&ネット技術のOSの動向から仮想化、IPv6、暗号化、ストレージなど

2000年の初頭にブロードバンドが一気に普及した後、企業活動や我々の生活はネットワークに大きく依存するようになった。では、来るべき「次の10年」を見据え、インフラ&ネット技術はどこへ向かうのか? 仮想化やOS、IPv6、NGN、暗号、ストレージ、WAN高速化、スマートフォンなど幅広いキーワードをベースに現状と未来を解説する。

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インフラ&ネット技術の今と未来総力特集 インフラ&ネット技術の今と未来総力特集

文●宮原徹  編集●金子拓郎

群雄割拠が続くサーバ仮想化の将来

普及の課題はコストにあり?

仮想化技術の1つとして「サーバ仮想化」が注目され始めたのは、2005年から2006年頃だ。それからすでに3年以上が経ち、実際に使ってみた上でのメリット、デメリットも浮き彫りになってきた。サーバ仮想化の現状と3年後を見てみよう。

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サーバ仮想化製品とは

 最初に、現在サーバ仮想化に使われている主要製品について現在の状況と今後についてまとめておこう(表1)。製品は大別してホストOS型とハイパーバイザ型に大別されるが、現在注目されているのは性能の高いハイパーバイザ型である(図1)。 現在、企業のサーバ仮想化で最初に候補に挙がるのはヴイエムウェア

の製品だろう(画面1)。WindowsやLinuxにインストールして使用するホストOS型 の「VMware Server」と、より大規模なシステムで利用できるハイパーバイザ型の「VMware ESX」がサーバ仮想化に対応した製品となっている。前者は無償で利用できるので比較的小規模なシステムで利用されており、後者はブレードサーバと組み合わせて企業のシステムインフラで利用されるようになった。また、無償で利用できるXenやHyper-Vに対抗する

意味合いもあって、VMware ESXのハイパーバイザ部分のみを無償化した

「VMware ESXi」も提供されている。 VMwareの次期バージョンである

「vSphere 4」も2009年4月中にリリースされるが(本稿執筆時点では未リリース)、仮想マシンのスペック向上や仮想ネットワークの改良などが中心でサーバ仮想化そのものでの大きな変更はなく、製品としてはある程度まとまった感がある。 一方、Xenはオープンソースで提供

販売元 製品名 種別 特徴

ヴイエムウェア

VMware ESX ハイパーバイザ 企業などの利用実績が多いが、コストがやや高い

VMware ESXi ハイパーバイザ ESXの基本機能だけ抜き出した無償版

VMware Server ホストOS WindowsおよびLinux上で動作する。無償利用可能

マイクロソフトHyper-V ハイパーバイザ Windows Server 2008の標準機能として搭載されているため、

実質的には無償

Virtual Server ホストOS Windows上で動作する。無償利用可能

シトリックス・システムズ Citrix XenServer ハイパーバイザ オープンソースで開発されている。2009年3月から無償化された

ノベル SUSE Linux Enterprise Server ハイパーバイザ Xenベース。早い段階からXenをサポートし、Windowsの動作もサポート

オラクル Oracle VM ハイパーバイザ Xenベース。Oracleデータベースの動作が保証されている

サン・マイクロシステムズ xVM ハイパーバイザ Xenベース。Solarisの動作もサポートしている

レッドハット KVM ハイパーバイザLinuxカーネルに組み込まれた仮想化技術。厳密にいうとハイパーバイザ型ではない。Red Hat Enterprise Linux 6からサポート予定

表1 おもなサーバ仮想化製品

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されているハイパーバイザ型のソフトウェアだ。サーバ仮想化ソフトウェア本体のコストを考えることなく、本格的なサーバ仮想化環境を構築できるところに強みがある。そのため、Webサービスの企業や大学などを中心に、ある程度自前でシステム構築が行なえるユーザーや、VMware ESXのコストが高すぎると感じるユーザーの間で利用が広がりつつある。 XenはLinuxディストリビューションに組み込まれているもののほか、「Oracle VM」や「Sun xVM」などにも組み込まれて利用されている。また、Xenの開発元であるシトリックス・システムズが開 発している「Citrix Xen Server」はこれまで有償で販売されていたが、2009年3月から基本的に無償で利用できるように変更された。 先行しているVMwareと比較すると、Xenはハイパーバイザとしての機能面で大きく劣るところはない。そして、Linuxなどと組み合わせてシステムの作り込みがしやすいのが大きなメリットだろう。反面、突っ込んだシステム開発の必要がない、あるいはシステム開発ができないユーザーからすると、Xenは取っつきにくいというイメージがあるようだ。また、Xenを組み込んで

いる製品が多岐に渡ってしまっているのもわかりにくい理由の1つかもしれない。今のところ、誰にでも勧められる仮想化サーバ環境には至っていないと思われる。 3つめに紹介するのは、マイクロソフトが2008年夏にリリースしたサーバ仮想化環境「Hyper-V」だ。前の2つの製品に比べると、機能面でやや見劣りする部分もあり、いまのところ大きな規模で利用されているケースは出ていないようだ。後発製品だけに、まだ評価段階にあるともいえる。次期バージョンとなるHyper-V 2.0(Windows Server 2008 R2に搭載)ではライブマイグレーションが装備される。これにより、仮想マシンのホスト間移動時のダウンタイムがかなり短くなり、VMware

にある「VMotion」や Xenの「Live Migration」とほぼ同等になるようだ。このあたりからが本格的な採用検討が可能になる時期ではないだろうか。 そのほかの製品で今後の動向が注目されているのは「KVM」(Kernel Virtual Machine)だろう。Linuxのカーネルに標準で組み込まれた仮想化の仕組みであり、現在でもFedora

(レッドハットが支援しているオープンソースのLinuxディストリビューション)などで先行して利用できるようになっている。商用製品としては、Red Hat Enterprise Linux 6からサポートされることを表明している。Linux系のシステムではXenとKVMの両方を選択できるようになるが、これがどのような影響をもたらすかが注目される。

画面1 VMwareの 管理システム「Vir tualCenter」の 画面。物理マシン上の複数の仮想マシンを一括して管理できる

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図1 ホストOS型とハイパーバイザ型。ホストOSはWindowsやLinuxなどが利用できる

画面2 Hyper-Vの 管理ツール「Hyper -V Manager」の画面。Windows Ser ver 2008の標準的な管理コンソールに統合されている。