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基礎にリスクトレーニングやサイコ モータートレーニングの理論を導き、 独自の理論と研究にもとづく指導活 動を展開しているDr.habil.Harald PolsterH.ポルスター)、30年強に 及ぶスピード理論の研究実績にもと づき、独自のスピード理論を展開し、 コオーディネーションとの関連性に おいて「スピード」をひも解く Dr.habil.VossG.フォス)が来日し た。どの講座も講義、演習の順に行 われ、講義内容を演習ですぐに体感 することができた。 1 日目は、コオーディネーション 能力の意義、それぞれの体力要素に もっとも有効な発達時期があること、 段階的にレベルを上げること、など 実験結果やビデオを用いながら、自 動化された動きをどのように意識化 させるかなどの講義が行われた。そ して講義の後に演習を行い、実際に コオーディネーショントレーニング を行いながら、講師による説明をう けた。コオーディネーショントレー ニング体験者は「頭を使うので難し いが楽しい」と言っていた。実際に 見ているだけでも、頭が活性化され たように感じられた。 ●トレーニング科学 去る 5 21 23 日、帝京平成大 学池袋キャンパス(豊島区)にて、 ライプチヒ大学スポーツ科学部・コ レスポの共同企画のコオーディネー ションの理論と方法について集中講 座が開催された。ドイツから 3 名の 講師、ライプチヒ学派のコオーディ ネーション研究の伝統的な継承者で あるDr.Christian HartmannC.ハル トマン)、コオーディネーションを 6 Training Journal August 2010 ON THE SPOT 現場から 1 回トレーニング科学 国際集中講座in Japan コオーディネーショントレーニングの実演 スピードトレーニングも経験 ボールを使ったトレーニングの実演 リスクトレーニングを体験しながら学ぶ

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Page 1: ON THE SPOT - Book House HD · 動を展開しているDr.habil.Harald Polster(H.ポルスター)、30年強に 及ぶスピード理論の研究実績にもと づき、独自のスピード理論を展開し、

基礎にリスクトレーニングやサイコ

モータートレーニングの理論を導き、

独自の理論と研究にもとづく指導活

動を展開しているDr.habil.Harald

Polster(H.ポルスター)、30年強に

及ぶスピード理論の研究実績にもと

づき、独自のスピード理論を展開し、

コオーディネーションとの関連性に

おいて「スピード」をひも解く

Dr.habil.Voss(G.フォス)が来日し

た。どの講座も講義、演習の順に行

われ、講義内容を演習ですぐに体感

することができた。

1日目は、コオーディネーション

能力の意義、それぞれの体力要素に

もっとも有効な発達時期があること、

段階的にレベルを上げること、など

実験結果やビデオを用いながら、自

動化された動きをどのように意識化

させるかなどの講義が行われた。そ

して講義の後に演習を行い、実際に

コオーディネーショントレーニング

を行いながら、講師による説明をう

けた。コオーディネーショントレー

ニング体験者は「頭を使うので難し

いが楽しい」と言っていた。実際に

見ているだけでも、頭が活性化され

たように感じられた。

●トレーニング科学

去る 5月21~23日、帝京平成大

学池袋キャンパス(豊島区)にて、

ライプチヒ大学スポーツ科学部・コ

レスポの共同企画のコオーディネー

ションの理論と方法について集中講

座が開催された。ドイツから 3名の

講師、ライプチヒ学派のコオーディ

ネーション研究の伝統的な継承者で

あるDr.Christian Hartmann(C.ハル

トマン)、コオーディネーションを

6 Training Journal August 2010

ON THE SPOT

現場から

第1回トレーニング科学国際集中講座in Japan

コオーディネーショントレーニングの実演

スピードトレーニングも経験

ボールを使ったトレーニングの実演

リスクトレーニングを体験しながら学ぶ

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際会議場(東京都新宿区)にて行わ

れた。今回のテーマは、「子どもの

発育発達に合わせた体力トレーニン

グ」であった。

基調講演では、最初に柴田真志氏

(兵庫県立大)によって「児童期の

身体活動と生体リズム」について講

義。発揮筋力や筋肥大がどの時間帯

にトレーニングを行うかによって影

響を受けることを示した。日中に光

を浴びないことで夜間の体温低下が

妨げられることを例に挙げ、体温調

節や睡眠において生体リズムの重要

性を示した。子どもの発育発達にお

いてはとくに重要性が高いというこ

とを説明。低体温児や、不登校など

とも関連して、社会的にうまく適応

するためにも体内時計がずれないよ

う、夜間に不要な光を浴びないこと

も子どもにとって重要になるそうだ。

内藤久士氏(順天堂大学)による

基調講演②では「子どもの体力の現

状と課題」と題して、体力測定デー

タの年次推移をさまざまな体力要素

について説明していった。たとえば

持久力については、戦後に一度上昇

を示し、その後下落していくという

傾向がみられた。そのうえで、子ど

もたちの体力低下の原因について、

身体活動の必要性が減少したり、遊

びが多様化したことなど5項目を挙

げ、仲間、空間、時間の「3つの間」

が必要であること、そしてトレーニ

ングに関わる指導者が何か仕掛けを

つくってみては、と内藤氏は提案し

た。「子どもに元気をもたらすため

に、運動の刺激をどう与えるかが重

要。運動の量と質のどちらも大切に

しながら、できることから取り組ん

でほしい」と締めくくった。

富田寿人氏(静岡理工科大学、日

体協日本スポーツ少年団常任委員)

による基調講演③「日本スポーツ少

年団の活動が子どもたちの体力と生

活を支える」では、スポーツ少年団

のこれまでの課題として、勝利至上

主義からの脱却や単一種目でなく複

数種目に関われるようにすること、

指導者の育成などが挙げられ、それ

に対しての取り組みも紹介された。

「子どもたちは練習に飽きると『疲

れた』と表現する。しかし、休憩に

すれば走り回って遊ぶ。子どもの発

想は、砂山や水たまり、ボールも遊

2日目の午前は、スポーツにおけ

るリスクトレーニングでは、最初に

リスクに関するクイズが出された。

普段考えているリスクの考え方とは

違い、リスクとは状況だけでなく感

情が反映し身体フィットネスが妨げ

られるという講義内容で、リスクの

定義ではフィギュアスケートの高橋

大輔選手を例に挙げるなどわかりや

すい内容であった。講義後には演習

も行われ、リスクトレーニングの方

法を講師の説明の後すぐに体感でき、

感情がいかに影響を及ぼしているか

を見ることができた。

午後は、スピードのコオーディネ

ーション的な位相では、走るという

動作は競技スポーツにおいて、単に

走るというパフォーマンスの前提と

なる初歩的な要素だけでなく、他の

パフォーマンス前提と結びついた複

合的に行われる動作であることを示

した。接地時間と遊脚時間において、

U・ボルトが他の選手に比べ接地時

間が短いことを例に、スピードトレ

ーニングとコオーディネーショント

レーニングの関係について講義がお

こなわれた。

演習では、タッピングやドロッ

プ・ジャンプトレーニングにおける

接地時間を測定し、接地時間を短時

間にするためのアドバイスなどが行

われた。

3日目は、1日目、2日目の講義

や、事前に寄せられた質問に対し、

それぞれの講師に答えてもらえる時

間が設けられ、3日間の集中講座は

終了した。

(清水沙織・帝京平成大学在学中)

●ストレングストレーニング

去る6月13日、第10回NSCAジャ

パン総会・基調講演が早稲田大学国

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現場から

NSCAジャパン総会

ドクター、トレーナーそれぞれの現場経験を活かした講習が行われた

Page 3: ON THE SPOT - Book House HD · 動を展開しているDr.habil.Harald Polster(H.ポルスター)、30年強に 及ぶスピード理論の研究実績にもと づき、独自のスピード理論を展開し、

ュース学部講師)からはアメリカン

フットボール部チーフトレーナーの

経験から「スポーツ現場でのトレー

ナー対応――頭・頸部外傷を中心

に」と題した講義が行われた。頻度

としては多くはないものの、重篤な

事故につながる可能性のある頭・頸

部外傷への初期対応、準備しておく

べきもの、理解しておきたい体調の

変化などを現場での経験を交えて説

明していただいた。

また京都府高校野球連盟のメディ

カルサポートを担当している浦山竜

市氏(神奈川県向上高校トレーナー)

からは「高校野球メディカルサポー

ト――京都府高野連の取り組み」と

して、ドクター、PT、ナース、ト

レーナーの四者が高校野球選手のコ

ンディショニングをよくするために

現在行っていること、地方大会での

サポート活動、柔軟性チェックから

わかる投球フォームの問題などにつ

いて実技を交えて講義していただい

た。

最後に「野球現場で起こるアクシ

デント事例とトレーナー対応」とし

て野球の現場でトレーナー活動を続

ける西村典子(東海大学硬式野球部

現場から

アスレティックトレーナー)より、

練習や試合で予想されるスポーツ外

傷を、さまざまなシチュエーション

をもとに説明させていただいた。

参加者は学生から病院で活躍する

PT、専門学校の指導者、高校野球

選手の父母まで多岐にわたり、それ

ぞれが直面するケースをイメージし

ながら、野球を取り囲む環境やスポ

ーツ傷害について理解を深められた

という感想が多く寄せられた。

今後も東海スポーツフィールドネ

ットはさまざまなバックボーンを持

った人々とスポーツを通じてネット

ワークを広げるためのセミナー開催

などを予定しており、学生トレーナ

ーの知識・技術向上から現場経験豊

富なドクター、PT、トレーナー、

トレーニングコーチたちの意見交換

の場として発展していくことを期待

している。 (西村典子)

びに変えてしまう。そのような子ど

もの特性を踏まえて、大人の考えを

押し付けないような指導が必要」と

話し、今後は、子どもたちの身体と

心を育て、ニーズに応える組織を構

築すること、年代別に満足できる一

貫した運動プログラムを提供できる

ようにすることを目標にするそうだ。

●野球

去る 6月26日、東京YMCA社会体

育・保育専門学校にて、第 3回東海

スポーツフィールドネット「高校野

球のアクシデント対応セミナー」が

開催された。東海スポーツフィール

ドネットはさまざまなフィールドで

活躍するスポーツ関係者が集い、と

もに学びながらネットワークづくり

に貢献することを目的に開催されて

いる。

今回は夏の大会が迫る高校野球に

スポットを当て、野球によくみられ

るスポーツ外傷・障害、練習や試合

のときなどに起こるケガや熱中症な

どの体調不良に対する対策、万が一

のときに備えた救急対応や都道府県

単位で広がるメディカルサポートの

取り組み、野球の現場で活動するト

レーナーからのアドバイスなどの講

義が行われた。

まず始めに、スポーツ整形外科ド

クターである中村豊氏(東海大学体

育学部教授)による「スポーツ外傷

の実際」の講義が行われた。野球特

有のスポーツ外傷・障害を関節障害、

神経障害、血行障害の3分野に分類

して解説していただき、野球の現場

では「当たり前」になっているよう

な傷害をいかに減らす努力ができる

かといったお話をうかがった。

吉田早織氏(浜松大学健康プロデ

8 Training Journal August 2010

ON THE SPOT

ドクター、トレーナーそれぞれの現場経験を活かした講習が行われた

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高校野球のアクシデント対応