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敗戦が日本に与えた「平和認識」を「湯の岳 B-29、米

機遭難追悼碑建立」に検証する 芳賀稔幸

■なぜ湯の岳中腹に、B-29、「米機遭難追悼碑」なぞと

いう石碑が建ったのか？

いわき市白水町川平地区から山は、だんだんと勾配

を増して、B-29 が激突したところまでは、かなりな坂

を十分ほど一文字に上り詰める。

長さが 1m50cm ほどもある重い石材を運び上げるに

は容易でない。勿論、人足が複数で当たったはず。据

え付ける作業でさえとても一人仕事では覚束ない。

ところで元を辿れば、 B-29 激突事故は、「捕虜収容

所補給作戦」に発端をなす事故であった。

1945 年 8 月 15 日、日本が降伏するに至り、第二次

世界大戦が終戦を迎えた。

米軍は、日本に囚われ身となった連合軍、 戦時捕虜

と抑留民間人たちに、速やかなる救助支援を本格的に

実施した。

交戦相手国側で、捕虜待遇から解放させて後。引き

上げる間、食料、衣料、医療品を味方に補給する。無

2

事、出身国へ送還させる。軍事同盟による人為的措置

が施された。

歓声を浴びる。勝利に沸き立つ米軍。軍事同盟国、

連合国リーダーシップ、枢軸国の面目を担う重要なミ

ッションであった。

戦時捕虜補給作戦は、1945 年 8 月 27 日から 9 月 20

日まで、第 20 航空軍により実施された。

捕虜が引き上げを完了するまでには、30 日余りが要

するとされ、その間、救援策が緊急であった。

現状を受け、中国、朝鮮、台湾、満州、及び日本全

土に対して戦時捕虜補給作戦が実施された。

全体的計画は、第 20 航空群司令部が担った。航路、

積荷、作戦日は、作戦に従事する航空団が立てた。救

援は、 6 ,9000 人に対して、 30 日分の補給を基礎とし

た。

補給手段は、貨物用落下傘による投下である。40 個

投下単位は重量にして 10 ,000 ポンド。 4 .5t を積載限

界とした。日本本土侵攻を想定して備蓄された備品と

食糧を借用。補給作戦は賄われた。

投下する最良高度は、500 フィート（ 150m）から千

3

フィート（ 300m）の間。165 マイル／時（時速 265km）

を最良飛行速度とした。

しかし、投下高度は、天候と地形によって大幅に変

動された。航空機には、翼の下に 3 フィートの幅で「 PW

Suppl ie s」とマークを明記した。さらに投下が行われ

た状態を写真に撮った。

とにかく救援するには、正確なデータが必要不可欠

である。

本土に点在する収容所がどこに位置するか。さらに

収容されている人口を把握しなければならない。補給

すべき前提としては、最大な問題であった。

直ちに、8 月 27 日、日本側から最初のデータがリス

トアップされた。

8 月 27 日から 9 月 20 日までが、第 58 爆撃航空団、

第 73 爆撃航空団、 313 爆撃航空団、 314 爆撃航空団、

315 爆撃航空団。

さらに各爆撃航空団、所属航空機は、 158 箇所あっ

た戦時捕虜と抑留民間人、収容所に、 900 回に渡る綿

密な探査飛行を行った。準備は万端にまで整えられた

に思われた。

4

各爆撃航空団、所属航空機からは、全部で 4 ,470t も

の補給品が投下された。一機当たりが積載した量は、

すでに積載限界を超えていた。

第 58 爆撃航空団、一機当たり 3 .76t。第 73 爆撃航

空団、一機当たり 5 .05t。313 爆撃航空団、一機当たり

5 .16t。314 爆撃航空団、一機当たり 4t。315 爆撃航空

団、一機当たり 4 .8t。

救援作戦は、 169 箇所あった捕虜と抑留民間人収容

所に実施された。

しかし、11 カ所を数える収容所には、任務が成功し

なかった。主に、クルーが座標から収容所を確認でき

なかった。情報不足が理由として挙げられる。

落下傘による補給物資投下作戦は、殊の外 、難を要

した。地上で犇めく捕虜たちにも、当初、混乱が起こ

った。上空でミッションを担うクルーたちにも焦りが

あった。

直ちに、第 20 航空群司令部は、陸軍郡司郵便局 234、

局長気付において、合衆国陸軍戦略航空軍司令官、宛

てに指示を出した。

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「機長は、何らかの低い雲の下を飛ぶ間は、極度に注

意を払うべきこと」

「何らかの山岳地帯の上空は安全な高度で飛ぶこと。

（中略）もしも天候が任務の遂行を妨げたならば、航

空機は積荷を捨てずに基地に返るものとする」……と

ころが、事故防止に周知を徹底する最中に、 B-29、湯

の岳激突事故は、起った。

他にも、航空機は、 8 機が失われた。隊員は、 77 名

が尊い命を絶った。1945 年 9 月 4 日。日本敗戦から一

カ月も経っていなかった。※ 以 上 、「捕 虜 収 容 所 補 給 作 戦 B -

2 9 部 隊 最 後 の 作 戦 」 を 参 照 し た 。

■ B-29、湯の岳墜落調査は、次のような報告をしてい

る。（映像史料 1 を参照）

筆者は、いわき地域学會「潮流」第 45 報で、「 B-

29、湯の岳墜落報告書」と題し公文書英文 全文を翻訳

した。合わせて参照されたい。ここに抜粋して掲載す

る。

い わ き 市 文 献 案 内 「 Author i t y :NND 735001

By :NARA NARA Date :1973」をテキストとさせて頂い

た。

6

【】内に英文訳を、間に著者による解説を入れてある。

Capta in Sompayrac and crew were in T-21 .The

Tokyo and Nagoya areas were f l own over in an e f for t

t o l o cate &POW camp su f f i c ient ly in the c lear to

drop t he coas t t o coondinates 37°1 ’ N -140°52 ’E,

where he was j o ined by Capt a in b lack in T- 7 and T-

3 o f the 873rd Bomb Squadro n.

【機長 Sompayrac（ハリー・Ａ・サムパリック大尉）

と乗組員は、T-21 に搭乗した。東京と名古屋のエリア

で、捕虜収容所を見つけるために、航空機に搭乗した。

場所は一目瞭然、明らかで、海岸を下降して位置、37°

1 ′ N -140° 52 ′ E を目指す。

第 20 空軍第 498 グループ、第 874、、、

飛行中隊に所属

する彼（機長 Sompayrac .ハリー・ A・サムパリック大

尉）は、 T-7、機長 Black Andrew A（ブラック・アン

ドリュー・ A 大尉）に。さらに第 873、、、

飛行中隊に所属

する爆撃機 T-3 と、合流した】

機長 Sompayrac .ハリー・A・サムパリック大尉と乗

組員は、 T-21 に搭乗。機長を Black Andrew A（ブラ

ック・アンドリュー・A 大尉）とする T-7。さらに合流

7

を重ねた第 873 飛行中隊に所属する爆撃機 T-3。合わ

せて 3 機が現いわき市にあった捕虜収容所に向けてフ

ライとした。

Inter-p lane radio cont act was estab l i she d and

Capta in Sompayrac adv ised the o ther two a i rcra f t

t o remain out over the water and c i r c le and furt her

adv i ced t hat he was go ing to t ry and get under t he

undercast and locate a POW camp known to be in

th is v i c in i ty.

【 飛 行 機 間 で無 線 連 絡 が なさ れ た 。（ 交 信内 容 に よ る

と）、機長 Sompayrac .（ハリー・ A・サムパリック大

尉）は、他の 2 機には、雲上に留まるように助言した。

そうして彼（機長 Sompayrac .ハリー・ A・サムパリッ

ク大尉）は、アンダーキャスト（ the undercast 飛行機

の下に広がる雲の層）に入り込み、雲下付近にある捕

虜収容所を探すつもりであると、無線にてアドバイス

して来た】

The ce i l ing over the bay was est imsted at 600 fee t ,

and over land at 300 fee t .Peaks o n the mainland

could be c lear iy seen o ver t he undercast . In the last

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rad io message rece ived f rom Capta in Sompayrac he

s tated t hat he was fo l l owing a ra i l road t rack which

accord ing to h is maps would lead t hem to the POW

camp.

【「山懐上方、雲高の天井（雲底上方、雲高が尽きるま

で）は、約 180ｍと思われる。地上までは、 90m だ。

本土の山頂がアンダーキャスト上から鮮明に見える」。

Sompayrac 機長（ハリー・ A・サムパリック大尉）か

ら、最後に受け取った交信であった。「彼は、導かれる

ように、捕虜収容所に向かう鉄道を辿っていたようだ」

と、証言者は、振り返る】

Sompayrac 機長（ハリー・ A・サムパリック大尉）

が発する交信は、雲海を彷彿とさせて、かなり幻想的

である。前の交信でアンダーキャストを、out over the

water（水の上に）などと、山懐を the bay（湾）に喩

えている。アンダーキャスト下を比喩的に表現。報告

している。つまりアンダーキャストを境にし て、水上

と水中に喩えている。幻想的な感覚に囚われる原因で

ある。

おそらく機長 Sompayrac .（ハリー・ A・サムパリッ

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ク大尉）自身、内心は深刻な心理状態であったに違い

ない。

「限界だ、山 懐は。 180ｍと 推定された。 地上から約

90m 足らずだ」

前述した通り、「投下する最良高度は、500 フィート

（ 150m）から 1 ,000 フィート（ 300m）の間」とする。

第 20 航空群司令部から下された命令に大きく逸脱し

た。

巨体な B-29 を操縦する高度とは、とても思えない。

アクロバット飛行すらも超えるミッションだ。どう見

ても無茶である。

しかし軍用ヘリが最速輸送軍備として活躍するには、

ベトナム戦争まで待たなければならない。

軍人に課せられるミッションがいかに重圧を担って

いたか。機長 Sompayrac（ハリー・ A・サムパリック

大尉）に筆者は、異常なまでに重責を感じずにはおれ

ない。

「もしも天候が任務の遂行を妨げたならば、航空機は

積荷を捨てずに基地に返るものとする」とした、第 20

航空群司令部陸軍郡司郵便局 234、局長気付とは乖離

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をなす。

墜落した航空機は、現いわき市、好間にあった古河

炭礦内、捕虜収容所（仙台俘虜収容所、第二分所）に

向かっていた。

好 間 に あ っ た 捕 虜 収 容 所 ま で を 、 証 言 者 、 Black ,

Andrew A（ブラック・アンドリュー・A 大尉大尉）が、

he（ Sompayrac ハリー・ A・サムパリック機長）は、

was fo l l owing a ra i l road t rack（捕虜収容所に向かう

鉄道を辿っていたようだ）と、証言する。

好間古河炭礦に続く好間炭礦専用軌道をターゲット

に、有視界で磐城炭礦内郷線を辿っていたかも知れな

い。しかも無茶なアクロバット飛行を強いて。

高度約 90m 足らずでは、おそらく投下されるであろ

う救援物資（ドラム缶に収納）は、落下傘が開く間も

ない。地面に激突したはずだ。

とうとう山腹激突事故は、ターゲットに至る途中。

標高 593 .6m、湯の岳中腹で起こった。

近辺に在住されておられるならば、ご存じであろう

……湯の岳は、阿武隈山地最南端域。土地が隆起して

できた。眺めが好い信仰山岳である。雲を大量に発生

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させる樹木に恵まれた自然を持っている。

登り口から離れていないところからでも、すっぽり

と水蒸気に覆い尽くされる。知らぬ間に姿を消す。

真っ白くカモフラージュされて曇天に溶け込んでし

まう。呆気に取られるほどに早業である。他に峯を並

べる山岳では、たぐいまれなクラウド生産地域である。

まさに湯が立ち昇らんとするほどだ。

He a l so s tat ed that , maneuve r ing space was

extremely l imi ted .Capta in b lack est imated that T-

21 was approx imate ly ten mi les in land at the t ime

o f the recept io n o f th is me ssage .

【彼（ Sompayrac ハリー・ A・サムパリック機長）は

又、操縦スペースが非常に狭く限られていたと伝えた。

機長 Black , Andrew A ブラック・アンドリュー・ A 大

尉（証言者）T-21 は、このメッセージを受け取った時

点で、約 10 マイル（ 16 .1 ㎞）内陸にあったと、推定

した】

巨漢 B-29 を 90m で低空飛行するには、アンダーキ

ャストを境にして、水中に広がる地形は、まるで湾内

である。丁度、お椀の中に入り込んだ恐怖感だ。船舶

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ならいざ知らず、戦闘機より遥かに大きな爆撃機であ

る。壮大な湯の岳裾野を経由するといえども。

T-7 and T-3 co nt inue d to c i r c le f o r appro x imate ly

30 minutes ,but no further contact was est ab l i she d

wi th T-21 .

【 T-7（ Black , Andrew A ブラック・アンドレ・A 大尉）

および T-3（第 873 飛行中隊）は、約 30 分間交信を継

続したが、 T-21（ Sompayrac ハリー・ A・サムパリッ

ク機長）とさらなる交信は、なくなった】

T-3 rad ioed Iwo j ima, adv is ing them o f t he s i tuat io n

and asked for inst ruct ions .

s ince no instruct io ns were t he s i tuat ion , and s ince

the computed fue l re serve was such t hat fur t her

susta ined f l ight was out o f the ques t ion ,both

a i rcra f t re t urn ed to base .

【 T-3 は、硫黄島（米軍占領地。グアム島の戦い、レイ

テ島の戦い、ルソン島の戦い、に、次ぐ戦い。日本軍

が大敗北した。後に、沖縄戦へと展開された）と、交

信した。状況について説明をして、アドバイスを求め

た。しかし、指示はなかった。加えて飛行を継続する

13

にも燃料がなくなった。 2 機とも引き返した】

B-29、湯の岳墜落報告書本文は、いわき市、湯の岳

山腹に墜落した B-29 を、米国が事故調査した報告書、

公文書である。

レポートは六枚。印字を二重にした個所や、手書き

による筆記体。インクリボンによるタイプ印字は、不

鮮明さを増していた。時がうつろうに伴って。解読す

るに難儀で、且つ不能な個所が数カ所、見受けられた。

■加えて報告書本文は、抜粋された経緯が見受けられ

る。度重なる訂正を踏んでいた。一枚目、四枚目、五

枚目、六枚目に、ページ番号が記されていない。

早 速 、 二 枚 目 冒 頭 に REPORT NO, 1(One) (Last

Prev ious No ,11) 【レポート番号、 1（ 1 つ前の番号、

11）】とある。明らかに除外されたファイルが存在した

経緯を示唆している。

書類が綴じられたホッチキス跡を映像で示す。（映像

資料 2、参照）

まず一枚目は、左右一つずつ。後にホッチキスを丁

寧に抜き取っている痕跡が残された。「 RESTRICTED」

をタイプ印字するためである。以後の綴じは、極めて

14

雑で「 RESTRICTED」が確認出来る上部にホッチキス

痕跡。

二枚目は、左右と中央部三カ所にホッチキス跡。後

に ホ ッ チ キ ス を 丁 寧 に 抜 き 取 っ て い る 。 手 書 き で

「 14900」を記すためと推測される。

三枚目は、左右と中央部三カ所にホッチキス跡。後

に ホ ッ チ キ ス を 丁 寧 に 抜 き 取 っ て い る 。 手 書 き で

「 14900」を記すためである。二枚目と三枚目は、同じ

ホッチキス針である。

四枚目は、二枚目と三枚目と同じホッチキス針であ

るが、少なくとも二回以上に渡って抜き取られた痕跡

が見える。

五枚目は、左端だけにホッチキス針痕跡が見える。

書類右端中央部には、すかしらしき模様が浮いている。

まさしく別箇な類の公文書だ。

最後、六枚目に至っては、紐綴じらしき痕跡を左上

部と中央に残す。

いっぽう、四枚目に至っては、報告内容が難解さを

増す。

三 枚 目 Note :On Supp lementa l re ports i t i s not

15

necessary to r epeat answers to quest ions prev ious ly

answered ,exce pt que st ions 1 and 2 . Addi t io nal

s tatement s may be at tached hereto .

XXI BC Casua l ty Form #3 .

【注：補足レポート。質問 1 と 2 を除いて、以前に回

答した質問に対する回答を繰り返す必要はない 。追加

陳述は、これに添付しても好い】

除いたとされる「質問 1 と 2」とは、四枚目に関連

する記述を指している。

2 Inc l s :

Inc l 1 : Miss ing Air Crew Re port

No .1 , 873rd Bo mb Squadron

Inc l 2 :Miss ing Air Crew Repo rt

No .1 , 874th Bo mb Squadron

【二つ包含：その 1: 行方不明な航空クルーレポート。

No.1、第 873 爆撃飛行中隊。

その 2: 行方不明な航空クルーレポート。

No.1、第 874 爆撃飛行中隊】

間違いなく、まだ発見されていないクルーに関して

触れている。「その 1」とは、「第 873 爆撃飛行中隊」

16

に対して成された捜査、又は結果として報告されたレ

ポートである。「その 2」も同様である。

さらに付け加えるならば、四枚目は、ページ番号が

記されてある二枚、三枚目レポートよりも先んじて、、、、

な

されたレポートである。つまり時系列とは逆転する。

加えるに訂正されるまでを過程とする報告書面は、用

済みで抜き取られた。

公文書に関する書式から判断するに、三枚目「 16 .」

までは、ロジャー・Ｂ・コッター大尉により、 承認、、

さ

れた経緯を示す手書きのサインだ。

もっと正確には、ページ番号「 2」が記された三枚目

で「 DATS OF REPORT 7 Sept ember 1945」とは、1945

年 9 月 7 日に起こった事故を指し示した、、、、、

だけである。

最 終 承 認、 、

は 、 あ く ま で 「 E.A. BRADUNAS 中 佐 と

WM.L.トーマス中尉」によりなされた。一枚目、冒頭

「 Date MAR 1 1946」 1946、、、、

年、

3、月、

1、日、である。

ウィリアム・H・ラッセル少佐（ RUSSELL, WILLIAM

H）、只ひとり、遺体が見つからない。行方不明な搭乗

員ウィリアム・H・ラッセル少佐、捜索に、かなり難航

を来たした事態が彷彿される。

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現地では、兵士を捜索する作業が困難を極め ていた。

実際には、日本人がクルー全員を捜索したわけである。

米軍は、現地から報告を受け取るだけであったと、証

言から筆者は聞き及んでいる。

先んじてなされた四と五枚目は、「最終報告に先立つ

死傷者ファイル」である。事故発生から翌年まで六カ

月間、米国国防省管内を慌ただしい経緯が駆け巡った。

上 官 と し て 責 任 あ る ロ ジ ャ ー ・ B ・ コ ッ タ ー 大 尉

(RODGER B COTTER)が煩悶する。焦る心境を彷彿と

させる。確認され殉職者名簿が訂正されるまでを、 如

実に表す。

五枚目、 14 名の内、 13 名だけが記されたクルー名

簿を記す。

Sompayrac , Harry A. ,Capt a in , 0 -433205(P i l o t ) KNB -

4 Sep 45

Beton,So lemo n S . ,Cap . ,0 -728448

Ingram,morr is A . , 1s t Lt . ,0 -815487

Lusk, Henry K. , 2 n d Lt . , 0 -2067058

Mi l le r,Jo hn S . , 2 n d Lt . , 0 -933505

Do l l iver, Rober t C . , Sgy. ,31432044

18

Hood ,Thomas M. ,Jr. , Sgt . ,38542454

Be lachi , Alber t P. , Sgt . , 11091755

Van Malsen, Jack V. , Sgt . ,36400833

Garo fa lo ,Ri chard , Cpl . , 39119050

Bayowsky,Walt er M. ,Cpl . ,12102098

Scherpe lz , I rv in W. ,Cpl . ,16197585

Manr ique z ,Gui l l e rmo ,P fc , 38439712

【ハリー・A・サムパリック大尉。（パイロット）以下、

「 KNB-4 Sep 45」と「シリアルナンバー」は、上記に

同じ。（備考、氏名左上にチェックした痕跡、あり）。

サロモン・ S・ベトン大尉。

モリス・ A・イングラム中尉。（備考、同上）。

ヘンリー・ K・ラスク少佐。（備考、同上）。

ジョン・ S・ミ ラー 少佐。（備考、 Lt .「 L」 左上りに、

「 D」と区別が付かないほどに擦れ、あり。氏名、左に

手書きで「 9」と書き込み）。

ロバート・ C・ドリバー軍曹。（備考、氏名、左に手書

きで「 3」と書き込み）。

トーマス・ M・ハード ,Jr 軍曹。（備考、氏名、左に手

書きで「 6」と書き込み）。

19

アルベルト・ P・ Belachi 軍曹。（備考、氏名、左に手

書きで「 2」と書き込み）。

ジャック・ V・ヴァン・マルセン軍曹。（備考、氏名左

上にチェックした痕跡、あり）。

リチャード・ガロファロ伍長。（備考、氏名、左に手書

きで「 4」と書き込み）。

ワルター・ M・ Bayowsky 伍長。（備考、氏名、左に手

書きで「 1」と書き込み）。

アービン・ W・シェパルツ伍長。（備考、氏名、左に手

書きで「 10」と書き込み）。

ギルモア・マンリケス上等兵。（備考、氏名、左に手書

きで「 8」と書き込み）。】

■総括

「米機遭難追悼碑」が無言で語り掛ける本当の戦後、

敗戦国日本とは……。

難航したクルーの遺体確認と、後に至る「米機遭難

追悼碑」は、無関係なはずはない。筆者は、特に占領

された当時の日本を、内郷市が饒舌に物語っている気

がしてならない。

筆者が探し求めている史料は、「難航したクルーの遺

20

体確認」と、「米機遭難追悼碑」建立がリンクする記録

である。終戦四年目、「昭和二十四年十二月二十日建立、

湯の岳米機遭難追悼碑、内郷町」に関する。特に建立

までを経緯にした史料とは……。内郷市行政鑑定内部

資料だ。

行政に関わる記録が作成されなかったはずがない。

現在残っているか。破棄されてしまったか。せめて欠

片、断片でも好いから触れて記録した郷土歴史家やフ

リーランス・ジャーナリストは、いやしまいか。

もしかすれば保存しているとも限らない。 パソコン

やコピーがない時代である。担当した市職員がこっそ

り青写真に写し取って押入れに。物置か倉に仕舞い忘

れたかも知れない。

検索をまるで一途に拒む雰囲気を醸し出している。

ことごとく抹殺されてでもした気配だ。紋切り型に紹

介、説明する蔵書は、あるにはある。しかし図書館に

四冊、各新聞も、筆者に取っては論外である。行政内

部資料を閲覧するには容易でない。しかし困難さは筆

者にロマンを湧かせた。

筆者は、次工程に入らざるを得ない羽目に追い込ま

21

れた。より丹念に「遭難追悼碑に関する史料収集」を

する。

「米機遭難追悼碑」巡検現場に挙がった声が心に痞つ か

えて忘れられない。「憎んでも憎み切れない相手（米国）

に、どうして「米機遭難追悼碑」なぞを……」

ガイドさんが説明する合間を突いて、巡検現場に声

が上がった。当然な思いである。墜落点から 10m 足ら

ずとされる現場周辺。低樹木が生い茂る斜面、、

に、米機

遭難追悼碑は、屹立していた。太古に突然、山肌から

転がり出たような、人の丈ほどもある歪いびつ

な岩石を台座

にしていた。

建立、経緯は未だひっそりと隠されている。如何ど う

し

ても隠さなければならない理由が、却って 日米間を雄

弁に語っている。皮肉にも……。

さらに筆者は、「戦前から戦後に掛けて日米関係史」

を、より深い知識として習得しなければならない。

行く先に立ちはだかる『東京電力玄関口に聳える排

気塔は、米軍機遭難追悼碑と同じ墓石だった』 を裏付

ける。筆者自らが 蘖ひこばえ

を科学的に論証する。説得させる

ために、より深くこれから取り組まなければならなく

22

なった。

●参考文献

捕虜収容所補給作戦 B-29 部隊最後の作戦。奥住善

重 工藤洋三 福林徹 2008

い わ き 市 文 献 案 内 「 Author i t y :NND 735001

By :NARA NARA Date :1973」。

POW 研究会。

いわき市史、別巻常磐炭田史 P.526「連合軍捕虜」。

いわき市教育文化事業団 1989

近 代 い わ き 経 済 史 考 P.245 ～ 246 。 斎 藤 伊 知 郎

1976

ヤマはふるさと P.117～ 122、P.123～ 131。草野日

出雄 1975

私の追憶 P.11～ 13。続橋逸郎 1974

いわき民報

23

映像史料 1

24

映像史料 2

1 枚目

2 枚目

3 枚目

4 枚目

5 枚目

25

6 枚目