「日本沿岸の流れシリーズ 3 山陰沿岸の流れ - mlit.go.jp水路部技報 Vol. 13....

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水路部技報 Vol. 13. 1995 「日本沿岸の流れシリーズ 3 山陰沿岸の流れ 宣好・佐藤 敏:海洋研究室 万代康史・後藤礼介:沿岸調査課 Current along t heSaninCoast NobuyoshiYoshiandSatoshiSato・ MarineResearchLaboratory Y asushiMandaiandReisukeGoto: CoastalSurveysandCartography Division 1. は じめに 山陰沿岸 山陰沿岸海域は対馬暖流が対馬海峡を通って日本 海に流入するところである 。流況は,対馬海流水の 影響下にある,対馬暖流は西から東に流れ,その主 流は蛇行していて流路は一定しない。 この海域の流 況は,対馬暖流の変動によりほぼ決定され非常に複 雑な流況となっている。海上保安庁水路部では,沿 岸の海の基本図の作業の一環として, 1986 年から 1993 年の聞に山陰沿岸海域において流れの観測を実 施してきた。この観測の結果第 1 図に測点を示すよ うに島根県から京都府までの沿岸域を網羅するよう な形で観測資料を得ることができたので,ここでそ の観測成果について概要を報告する 。 2.観測 今回実施された沿岸流観測は,第 1 図及び第 1 に示すとおり島根県から京都府(経ケ岬)までの沿 岸域と隠岐諸島周辺の18 カ所で, 1986 年から 1993 まで 6 8 月の夏季に, 自記式流向流速計(アンデ ラーの RCM-4, RCM-7, RU-2 )を使用して, 32 昼夜連続観測または 15 昼夜連続観測を実施した。 観測層は海面下lOm である 。 3. 成果 成果として第 2 図に各観測点の流向流速のス ティ ックダイアグラムを示す。 -74- 1) 440555 流向別流速頻度は北~東の流れが全体の 7 割を 占めていた 。 潮流成分は小きかった。 2) 440554 1992 7 7 日を境に前半は北流が優勢ななか にも 1 l 回の南流が見られ,南北流を繰り返し ていた。 これは周期約20 時間の慣性振動と考えら れる。後半はほとんど北東流であ った。 浜田で観測した風と比較したところ, 7 7より以前は北東,以降は南西の風が卓越しており 風との対応はよかった。 流速としては,それほど強くなか った。 また, 潮流成分も小きかった。 3) 440528 流向は北北東が卓越していた。潮汐との関係は, あまり明確でなかった。 4) 440529 流向は東北東が卓越していた。 5) 440539 流向別流速頻度は東~東北東であ ったが周期的 に転流していた。 潮流成分はO.lkn 以下で非常に弱かった。 6) 440540 流向別流速頻度は東~東南東の流れであった が,右廻りに 1 回転して転流する日も数日あった。

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水路部技報 Vol. 13. 1995

「日本沿岸の流れシリーズ 3」山陰沿岸の流れ

吉 宣好 ・佐藤 敏:海洋研究室

万代康史・後藤礼介:沿岸調査課

Current along the Sanin Coast

Nobuyoshi Yoshi and Satoshi Sato・ Marine Research Laboratory

Y asushi Mandai and Reisuke Goto : Coastal Surveys and Cartography Division

1. は じめに山陰沿岸

山陰沿岸海域は対馬暖流が対馬海峡を通って日本

海に流入するところである。流況は,対馬海流水の

影響下にある,対馬暖流は西から東に流れ,その主

流は蛇行していて流路は一定しない。この海域の流

況は,対馬暖流の変動によりほぼ決定され非常に複

雑な流況となっている。海上保安庁水路部では,沿

岸の海の基本図の作業の一環として, 1986年から

1993年の聞に山陰沿岸海域において流れの観測を実

施してきた。この観測の結果第 1図に測点を示すよ

うに島根県から京都府までの沿岸域を網羅するよう

な形で観測資料を得ることができたので,ここでそ

の観測成果について概要を報告する。

2.観測

今回実施された沿岸流観測は,第 1図及び第 1表

に示すとおり島根県から京都府(経ケ岬)までの沿

岸域と隠岐諸島周辺の18カ所で, 1986年から1993年

まで6~8月の夏季に, 自記式流向流速計(アンデ

ラーの RCM-4,RCM-7, RU-2)を使用して,

32昼夜連続観測または15昼夜連続観測を実施した。

観測層は海面下lOmである。

3.成果

成果として第 2図に各観測点の流向流速のス

ティ ックダイアグラムを示す。

-74-

1) 440555

流向別流速頻度は北~東の流れが全体の 7割を

占めていた。

潮流成分は小きかった。

2) 440554

1992年 7月7日を境に前半は北流が優勢ななか

にも 1日l回の南流が見られ,南北流を繰り返し

ていた。これは周期約20時間の慣性振動と考えら

れる。後半はほとんど北東流であった。

浜田で観測した風と比較したところ, 7月7日

より以前は北東,以降は南西の風が卓越しており

風との対応はよかった。

流速としては,それほど強くなかった。また,

潮流成分も小きかった。

3) 440528

流向は北北東が卓越していた。潮汐との関係は,

あまり明確でなかった。

4) 440529

流向は東北東が卓越していた。

5) 440539

流向別流速頻度は東~東北東であったが周期的

に転流していた。

潮流成分はO.lkn以下で非常に弱かった。

6) 440540

流向別流速頻度は東~東南東の流れであった

が,右廻りに 1回転して転流する日も数日あった。

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水路部技報 Vol. 13. 1995

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各点の流向流速スティックダイアグラム及25時間移動平均値のスティックダイアグラム

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第 2ー l図

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各点、の流向流速スティックダイアグラム及び25時間移動平均値のスティックダイアグラム

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第2-2図

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各点、の流向流速スティックダイアグラム及び25時間移動平均値のスティックダイアグラム

-78-

第 2-3図

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水路部技報 Vol. 13. 1995

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第 2ー 4図 各点の流向流速スティックダイアグラム及び25時間移動平均値のスティックダイアグラ

(測点440454と440455は,流向流速スティックダイアグラムのみである)

-79ー

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水路部技報

潮流成分はO.lkn以下で非常に弱かった。

7) 440526

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,恒流成分も0.2

kn程度の東向きとなっていた。流向はほとんど変

化がなく東流傾向を示していた。

8) 440527

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,恒流成分も0.2

kn程度の東向きとなっていた。流向はほとんど変

化がなく東流傾向を示していた。

9) 440541

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,流向は,ほぽ東流

を示しまれに l回転して転流を示す日もあった。

10) 440542

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,流向は,ほぽ東流

を示しまれに 1回転して転流を示す日もあった。

11) 440552

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,流向は,東北東

~東流傾向を示していた。

12) 440553

潮流成分はO.lkn以下と弱〈,流向は,東~東南

東流傾向を示していた。

13) 440557

流向は,殆ど北東~東方向を占めていた。 7日

程度の周期の流況変動が見られた。

14) 440556

流向は,殆ど東方向を占めていた。 7日程度の

周期の流況変動が見られた。

隠岐諸島付近

15) 440516

恒流成分は東南東を示している,潮流成分は東

西方向で 1日周潮流が0.4kn半日周潮流が約0.1

kn程度であった。流向流速頻度分布は,殆ど東及

び南西方向を示していた。

隠岐諸島

16) 440515

恒流成分は東南東を示している,潮流成分は南

北万向で 1日周潮流が0.4kn半日周潮流が約0.2

kn程度であった。流向流速頻度分布は,殆ど北及

ぴ南南東方向を示していた。

17) 440455

Vol. 13. 1995

潮流成分は弱〈,流向別流速頻度は,半数以上

が北北東~東北東を示している。

18) 440454

潮流成分は弱〈,流向別流速頻度は,殆どが北

東~東方向を示している。

4. 山陰の流れ

第3図に流向別流速頻度分布図,第 4図に恒流図

を示した。

日本海で大きな影響を持つ海流としては,対馬暖

流がある。今回観測した山陰沿岸の流況は,対馬海

峡から流入するこの対馬暖流に大きく影響される。

対馬暖流の流路は水塊配置に左右され,蛇行型, 三

分校型等のいろいろな説があり,変化に富んだ複雑

なものとなっている。今回の観測海域である山陰(島

根県~京都府)沿岸の流れとしては,第 5図の八管

海洋速報からもわかるように山口県沖から東向きに

流れる対馬l暖流の一部が島根県沿岸には入り岸に

沿ってそのまま隠岐海峡を越えて鳥取県沿岸~京都

府沿岸を東向きに流れるものと考えられる。観測海

域が岸よりのため,沿岸沖合い全体として,どのよ

うな流れて。あるか把握することはできない。しかし,

山陰(島根県~京都府)沿岸(岸付近)の流れの傾

向としては,ある程度把握できたものと考える。以

下に山陰(島根県~京都府)沿岸と隠岐諸島付近の

2つの海域にわけて山陰の流況を述べることとす

る。

山陰 (島根県~京都府)沿岸

恒流としては,沿岸に沿って能登半島方向 (北

北東~東)に向かつて流れている。

測点440528の日御碕沖では隠岐諸島方向に他の

測点よりも強い流れがあった

隠岐諸島付近

恒流としては,隠岐諸島の北側では,山陰(島

根~京都)沿岸の流れと同様に能登半島方向(東

北東)に向かつて流れている。

-80-

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水路部技報

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第5図八管海洋速報(海流図)

隠岐諸島の南側では,島後水道付近では水道を

抜けた南方向の流れがあった。

また,さらに南に位置している測点440516では,

ちょうど島にぶつかった反流の様に東方向の流れ

カずあった。

5. おわりに

今回の報告は1986年から1993年までの 6~ 8月の

夏季に沿岸の海の基本図作業として実施された山陰

沿岸の18カ所の流れの観測についてとりまとめたも

のである。観測の多くは,岸近くに観測点を設けて

実施されたものであるが,各記録とも対馬暖流の影

響を受け東向きの流れが卓越し,この海域の流れの

特性を反映した,立重な資料となっていた。

今回は観測成果の概要紹介にとどま ったが,今後

はさらに対馬暖流の変動や水塊配置との関係や気象

条件の影響について調べるとともに,夏季以外の資

料の収集を図り,山陰沿岸海域の沿岸流の季節変動

についても調べることとしたい。

-82ー

Vol. 13. 1995