地方における地域包括ケアを推進するための...

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地方における地域包括ケアを推進するための情報連携ICTシステムの展開について

2015年 3月23日

医療法人社団鉄祐会 理事長

武藤 真祐

地方創生IT利活用推進会議第2回政策企画ワーキンググループ

資料6

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医療法人社団鉄祐会のご紹介

診療所名医療法人社団鉄祐会祐ホームクリニック(東京都文京区)祐ホームクリニック石巻(宮城県石巻市)

診療内容 在宅医療(24時間365日対応)

組織体制

68名医師 29名(常勤 6名、非常勤 23名)看護師等医療専門職 11名事務職員 28名(事務職 16名、運営部 6名、MCC 6名)

累計患者数 約2,000人(2015年3月時点)

代表者紹介

武藤 真祐(医学博士、循環器専門医、米国医師国家試験合格、米国公認会計士)1996年東京大学医学部卒業。2002年東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了(MBA)。2014年INSEAD Executive MBA。

東大病院、三井記念病院にて循環器内科、救急医療に従事後、宮内庁で侍医を務める。その後マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2010年医療法人社団鉄祐会を設立。

厚生労働省情報政策参与内閣官房IT総合戦略本部 新戦略推進専門調査会 医療・健康分科会構成員内閣官房IT総合戦略本部 地方創生IT利活用推進会議 政策企画ワーキンググループ構成員厚生労働省 緩和ケア推進検討会構成員総務省 在宅医療・介護分野における情報連携基盤の開発及び活用の実証に関する協議会 構成員

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地域包括ケアの必要性と課題

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社会背景

財政状況

国民のニーズ

・2025年の年間死亡者数は160万人を超える・全高齢者の8割は病院で死亡しているが、病床数の増加は見込めない

・都市部を中心に75歳以上高齢者数が増加し、日本の人口の18%に達する(2012年 1511万人→2025年 2179万人)

在宅医療・介護の普及は、今後の日本社会に必須である

・2025年には医療費・介護費あわせて、現在より35兆円増の84.8兆円となる・居宅での在宅医療と介護を受けた場合、入院医療と比較して社会保障費は1/3程度

・人口あたり病床数が多い地域は高齢者医療費が高い

・高齢者は、疾患を複数抱える場合が多く、治療期間は長期化する・日本の75歳以上の高齢者の約22%が要介護認定を受けている(平成21年度時点 301万人)・75歳以上の6割以上は、自宅や施設など住み慣れた場所での療養を望むが、そこでの介護体制に不安を抱える割合は8割以上となっている

■日本の社会背景と在宅医療の重要性

都市部を中心に終末期の療養の場所を自宅や施設にシフトせざるを得ない

・医療費の適正化が求められる

・高齢者を病院で看取る医療は財政的に限界がある

・高齢者の生活を支える医療・介護の提供が求められる

・終末期を、住み慣れた環境で過ごせる体制づくりが望まれている

出所:厚生労働省「平成24年度 高齢社会白書」を中心に、人口問題研究所、各企業の各種統計により抜粋

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在宅医療は、24時間365日の体制で在宅療養生活を支える医療・ケア

一般的に在宅医療とは、患者の自宅に医師が定期的に訪問(月2回以上)して行う、計画的・継続的な医学管理・経過診療を中心に、療養生活全般を支える医療のことを言います。

在宅で診ることが困難と思われがちな医療依存度が高い方、複数の疾患を持つ高齢者でも、安心して自宅で過ごせるよう、24時間365日医師が緊急時に対応できる体制を敷くことが必要です。

「在宅療養支援診療所」は加えて、医療サービスと介護サービスとの連携を担当する介護支援専門員(ケアマネジャー)等と連携していること、当該診療所における在宅看取り数を報告することが求められています。

地域の医療・介護事業者と連携し、実現するチームケアの構成員の1つと言えます。

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地方の在宅医療提供の課題は「居住地域」「資源偏在」「協働体制」

地方において在宅医療が安定して提供されるためには、医療・介護資源を最大化するICTを用いた遠隔医療や多職種連携システム(CN to P*)の推進が必要である

出所:国土地理院、国立社会保障・人口問題研究所、日本遠隔医療学会、厚生労働省、NTTデータ経営研究所の地域医療に関する資料より参照* Care Network to Patients

在宅医療提供者が地域によって偏在している

多職種協働のための仕組みづくりが求められる

居住地域が広範囲で分散している

・在宅診療所、訪問看護事業所が地域により偏在している

・人口減、高齢化を前提とした地域の仕組みづくりが求められる

・医療・介護情報のデータベースを用いた「見える化」が求められる

・地方は面積が広く、人口が分散しているため移動に時間がかかる

・離島への往診は困難である

■地方における在宅医療・介護提供の課題と方向性

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人口密集度では都市部が突出して高い

国立社会保障・人口問題研究所 都道府県,性別人口,人口性比,人口密度および人口増加率 2011年より。祐ホームクリニックにて図表を作成

■全国都道府県別の人口密集度(1k㎡あたりの平均人口)

全国は平均343人

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離島医療は、主に地方における課題である

一般社団法人 日本遠隔医療学会「図説・日本の遠隔医療2013」より

■都道府県別 有人離島305島の内訳(2012年)

・離島では、一般に人口減少と高齢化率上昇が通常の過疎地よりも急速に進行し、医師の確保が困難になっている。

・医療施設の設備が十分でないことが多い

・緊急時の船舶の運航やヘリコプターは気象条件・時間に左右されやすい

・一方、2012年の時点で、96.1%の離

島でブロードバンドが利用可能である

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在宅医療診療所は東日本に少ない傾向にあるなど偏在が見られる

平成24年 在宅医療の最近の動向 厚生労働省医政局指導課 在宅医療推進室

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在宅診療所を支える訪問看護ステーションも偏在が見られる

平成24年 在宅医療の最近の動向 厚生労働省医政局指導課 在宅医療推進室

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厚生労働省は、地域ごとの人口変化に基づく地域包括ケアを推進している

厚生労働省 社会保障審議会「地域包括ケアの構築に向けて」

■地域包括ケアの目的と概念について

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厚生労働省は、医療・介護情報の「見える化」を推進している【24年度要求額 :1804百万円 】

厚生労働省 社会保障審議会「地域包括ケアの構築に向けて」

■地域包括ケアにおける医療・介護情報の「見える化」推進について

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遠隔医療の現状と課題

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医療者同士(D to D)

遠隔医療は多くの実証事業がなされてきたが、普及に課題がある

■日本の遠隔医療の分類と課題

社会医学的・臨床的研究のエビデンス不足

出所:日本遠隔医療学会「2013年10月 図説・日本の遠隔医療2013」、総務省「2011年 遠隔医療モデル参考書」より

医師から患者(D to P)

遠隔医療の主な分類と事例 普及に向けた主な課題

・遠隔画像診断

・遠隔病理診断

・遠隔コンサルテーション

・遠隔カンファレンス

医師から直接提供(D to P)

医師から看護師へ指示(D to N to P)

・在宅の遠隔診療・遠隔妊婦健診・遠隔がん治療 等

・遠隔看護・見守り・健康づくり 等

医療倫理・制度・ガイドラインの再定義の必要性

システム運営費用・教育制度の不足

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多職種情報連携システムの拡大施策

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診療現場と事務スタッフの業務連携を促進し、「医療の質向上」「オペレーションの最適化」「リスクマネジメント」を目的とした、ICTシステムを積極的に活用した在宅医療のオペレーションを実現した

当法人では院内ICTシステムの構築から開始した

在宅医療クラウド

電子カルテ

・在宅医療用電子カルテ・移動中の利用に対応

コンタクトセンター

夜間帯オンコールの1次受け

スケジュール、ルート、タスク管理をマルチデバイスで対応

メディカルクラークセンター

・医療事務の集約化・医師のカルテ口述筆記支援

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次に多職種・患者・家族間の情報連携ICTシステムを構築した

療養病床地域医療情報連携

(SS-MIX2)

一般病院

訪問ヘルパー訪問看護ステーション

薬剤師

在宅医/看護師

診療所

ケアマネジャー

情報連携活用システム

高齢者施設

一般的な病院ネットワーク

■高齢者を支えるために必要な在宅医療・介護情報ネットワーク(Care Network to Patients)

患者本人 家族

総務省 平成24年度補正予算「ICT超高齢社会づくり推進事業」 として石巻市で実施

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「訪問記録の共有」「メッセージ伝達」「スケジュール共有」といった、多職種連携に必要とされるICTシステムを開発した

訪問記録の共有 メッセージ共有 スケジュール共有

・事業者間でのメッセージ機能

・訪問スケジュールを一元化

・在宅医療・介護に関わる共通項目の入力/閲覧

多職種・患者・家族間の情報共有システムがもつ3つの機能

総務省 平成24年度補正予算「ICT超高齢社会づくり推進事業」 として石巻市で実施

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情報連携に関する事業所アンケート結果

・情報が増えても「情報連携で作業量が増えた」という回答は20%だけであった

4 3 20 8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

12月

大いに減った 少し減った 変わりなし 少し増えた

(N=36)

7 21 8

0% 20% 40% 60% 80% 100%

12月

大いに増えた 少し増えた 変わりなし

・「得られる情報の量が増えた」という回答は、80%に上る

(N=36)

引用:医療法人社団鉄祐会 「在宅医療・介護情報連携に関する調査」2014年12月集計

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CN to Pネットワークのさらなる利活用を促進する

個人情報の活用のため、データ管理の中立性・効率性を促進する

・トラフィック数を増やすために、医師だけでなく各職種も積極的に患者導入を増やし、書類授受など既存業務をこのネットワーク上で置き換え、全国への広報活動に力を入れる

・遠隔医療だけでなく生体モニタリングなどの新技術も導入し、ネットワークの利活用を拡大する

持続可能な情報連携ICTシステムを拡大する施策案

・患者個人が全ての医療・介護情報を管理するのは困難であり、多職種・マルチベンダが持つ情報の管理を行う中立的な第三者機関が必要となる

・マイナンバーの医療・介護分野への導入の議論を促進する

・ICT未導入地域では、既存のICTシステムを採用し新規のシステム構築を抑制するインセンティブを導入する

・情報入力負荷を軽減するために、情報入力をサポートするコールセンターや、別々のシステムの連携を可能にする国内共通基盤を構築する

ICTシステム構築・利用の負担を軽減する

■今後の情報連携ICTシステムの拡大における方向性と具体的施策について