「急性期医療」至上主義と勤労者医療 としての「治療・就労の両 … ·...

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第 38 号(平成 29 年 2 月) ▶診療情報提供書等ご送付いただく際は、封筒に「診療情報提供書在中」とご明記ください。 鷲見 正敏 院 長 良質で心のこもった医療を 働く人と地域のために 「急性期医療」至上主義と勤労者医療 としての「治療・就労の両立支援」 神戸労災病院の院長職を拝命しましてから 2 年と 10 カ月の月日が流れました。この間、ご存知のように、保険医療 体制が大きく変革され、また、さらに近い将来にはもっと大きく新たな波が押し寄せようとしています。「高齢化社会」 の到来により、高額化の一途を辿っている医療費を賄う資金が枯渇してきたことが最大の原因だそうで、より有効に資 源を利用するためにも、医療費を削減しなければならないという「大命題」が闊歩しているわけです。これでもか、こ れでもかと説明がなされ、しかも周辺の患者さんの年齢層が確かに高齢化している現実を目の当たりに見ますと、確か にそうなのかもしれない、と説得されそうです。(ただし、年寄りが増えているというよりも、年寄りがより元気になり、 平均年齢の上昇が端的に示しているように、見た目の年齢層が 10 年ばかり高齢の方へ平行移動しているという印象が 一番強いように思います。) 医療費を削減するため、お金をたくさん使用する「急性期医療」の現場を物理的に削減させ、その代り、削減された 場所には、より多くの資源を投入するということ、削減した出費は個人に回すことで、全体としての出費は抑えられる だろうという政策だと理解されます。このため、「急性期医療」を担う条件が徐々に厳しくなりつつあり、これを維持 するために大変な努力を強いられている病院が少なくはないようです。当院でもこの「急性期医療」を維持するために 様々な工夫を繰り返している次第です。 もちろん、「急性期医療」を維持するということは、それだけ資源の投入が担保されるということになりますので、 病院活性化を確保するためにも重要な要素ではあります。建前では、いやいや、「急性期医療」だけが「医療」ではあ りませんヨ。それ以外の領域でこそ先生方にはご活躍をいただいて、患者さんが地域でうまく療養のできる体制を確保 しなければなりませんヨ、とは言うものの、現実に医療関係者とくに若い働き盛りの医師たちが目指すものにとっての 二者択一は「急性期医療」ということに自然となってきます。ただ、このような傾向を「腑に落ちない」と思う「こころ」 の中の「澱」を忘れてはならないように思います。資源をふんだんに消費するけれども短期間で勝負する「急性期医療」 神戸労災病院理念 www.kobeh.johas.go.jp

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第 38 号(平成 29 年 2月)

▶診療情報提供書等ご送付いただく際は、封筒に「診療情報提供書在中」とご明記ください。

鷲見 正敏院 長

良質で心のこもった医療を    働く人と地域のために

「急性期医療」至上主義と勤労者医療としての「治療・就労の両立支援」

 神戸労災病院の院長職を拝命しましてから 2 年と 10 カ月の月日が流れました。この間、ご存知のように、保険医療

体制が大きく変革され、また、さらに近い将来にはもっと大きく新たな波が押し寄せようとしています。「高齢化社会」

の到来により、高額化の一途を辿っている医療費を賄う資金が枯渇してきたことが最大の原因だそうで、より有効に資

源を利用するためにも、医療費を削減しなければならないという「大命題」が闊歩しているわけです。これでもか、こ

れでもかと説明がなされ、しかも周辺の患者さんの年齢層が確かに高齢化している現実を目の当たりに見ますと、確か

にそうなのかもしれない、と説得されそうです。(ただし、年寄りが増えているというよりも、年寄りがより元気になり、

平均年齢の上昇が端的に示しているように、見た目の年齢層が 10 年ばかり高齢の方へ平行移動しているという印象が

一番強いように思います。)

 医療費を削減するため、お金をたくさん使用する「急性期医療」の現場を物理的に削減させ、その代り、削減された

場所には、より多くの資源を投入するということ、削減した出費は個人に回すことで、全体としての出費は抑えられる

だろうという政策だと理解されます。このため、「急性期医療」を担う条件が徐々に厳しくなりつつあり、これを維持

するために大変な努力を強いられている病院が少なくはないようです。当院でもこの「急性期医療」を維持するために

様々な工夫を繰り返している次第です。

 もちろん、「急性期医療」を維持するということは、それだけ資源の投入が担保されるということになりますので、

病院活性化を確保するためにも重要な要素ではあります。建前では、いやいや、「急性期医療」だけが「医療」ではあ

りませんヨ。それ以外の領域でこそ先生方にはご活躍をいただいて、患者さんが地域でうまく療養のできる体制を確保

しなければなりませんヨ、とは言うものの、現実に医療関係者とくに若い働き盛りの医師たちが目指すものにとっての

二者択一は「急性期医療」ということに自然となってきます。ただ、このような傾向を「腑に落ちない」と思う「こころ」

の中の「澱」を忘れてはならないように思います。資源をふんだんに消費するけれども短期間で勝負する「急性期医療」

神戸労災病院理念

www.kobeh.johas.go.jp

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」を手相お「くしろよで」療医「」域地「ぞうどは」後たげ投「、」げ投はてっぎち「」げ投はてっぎち「ばれすもと、はのもういと

といった乱暴で個々の状況に対する配慮に欠ける「医療」に変質する可能性は高いと思います。実際に、患者さんが「ち

ぎっては投げられた」その後の「対応」への弊害を口にされていることは良くあります。

 ただ、文句ばかりクダクダと申しましても、何も変わらない「全体の」「流れ」があります。そして、そういう風に「何

か変やな」と思いながらも「ズルズル」と「悲惨な」「敗戦」へと突き進んだ過去の記憶もあります。じっと指をくわえて「流

れる」ことだけは避けなければならないと思います。「急性期」も重要ですが、さらにもうひとひねりを、という訳です。

 そこで、わたしたち「神戸労災病院」では厚生労働省が提唱している「治療と就労の両立支援」に着目し、この動き

を前面に押し出そうと思っています。「がん」、「糖尿病」、「脳卒中」あるいは「精神疾患」に罹患した患者さんが「治療」

を継続しながらもとの「就労」状況にできるだけ復帰できるよう支援して行こうというのが、この運動の目的です。労

災疾病などが減少してきている我が国において「労災病院」がそのプレゼンスを発揮できるのは、こういった「治療」

のために「就労」が困難になった患者さんたちと「企業」との間に橋渡しをし「支援」するという活動が重要と考えます。

・心「」析透「」患疾椎脊「」患疾傷外科外形整「、くなでけだ患疾のられこるす導指が府政、はで」院病災労戸神「ちたしたわ 

血管疾患」など幅広い疾患に罹患した方たちの復職に向けた取り組みを計画している次第です。

っ持を野視なき大りよ、どな践実の」療医防予「るよに」クッド「、応対るす対に」害障るよに労過やスレトス「、はにらさ 

て、勤労者のみなさんを援助・支援する病院であるということを目標にすることとしました。

 もちろん、先述の「急性期医療」の維持は最大の命題ですので、病院活性化のための必須条件として邁進して行く所

存なのですが、それのみではなく、「労災病院」ならではの「勤労者医療」を前面に押し出して、今後の診療に当って

行きたいと存じます。まだまだ、雲を掴むようなお話ですが、「復職外来」などの「就労支援組織」を立ち上げ、予防

医療としての「ドック」機能や「ストレス・過労」についての「研究事業」をより発展させる所存ですので、今後とも

当院を温かくお見守り下さい。よろしくお願い申し上げます。

Quanta Litho

尿路結石レーザー導入のお知らせ

 当院では最新の尿路結石治療レーザーQuanta Lithoを導入しました。

 Quanta Litho レーザーは従来から行われている尿路結石レーザー治療装置よ

 患者さまがいらっしゃいましたら、まずは当院泌尿器科をご紹介ください。 Dusting Effect Normal Lithotripsy

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〇 在宅療養支援診療所の届出をされている先生方へ

お 知 ら せ

 昨年 11 月 14 日の「世界糖尿病デー」にちなみ、当院でもイベントを開催しました。 糖尿病に関する展示やビデオ放映のほか、糖尿病教室や自己血糖測定体験、お悩み相談コーナーを企画し、たくさんの方が関心を持ってくださいました。

当院では、患者さまや地域住民の方を対象に様々なイベントを開催しております。これからも広く開かれた病院を目指します。

 『医療安全推進週間』にちなみ、昨年 11 月 21 日~ 25 日までの期間、正しい手洗い方法やマスク装着の仕方について知っていただく体験コーナーや健康相談を企画し、総勢800名の方がご参加くださいました。 また、当院骨粗鬆症外来・楊先生による講演会「骨粗しょう症を知って骨折予防!」のあとは、リハビリ技師による体操コーナーや管理栄養士による講演を行いました。

〇 世界糖尿病デー

〇 医療安全推進週間

 当院では、在宅で療養されている患者さまの病状の急変時には、積極的に入院を受け入れて参ります。 在宅療養支援診療所の届出をしており、「緊急時の入院受け入れ先に苦慮している」「近畿厚生局への届出に当院を連携医療機関として登録したい」といった先生方がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽に地域医療推進室までお問合せください。

● 医師の人事異動について

平成29年1月1日付け(採用)

消化器内科   :花房 正雄

平成29年1月 16日付け(採用)

総合内科     :吉田 公久

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〒651-0053 神戸市中央区籠池通 4丁目 1-23独立行政法人労働者健康安全機構 神戸労災病院 地域医療推進室TEL 078-231-5925 

神戸労災病院マスコットキャラクター

ロッサくん

E-mai l chi ik i@kobeh. johas .go . jp

お問合せ先

2016 年 3 月に核医学診断装置を更新して以降、地域の先生方に多くご利用いただいております。当院で実施可能な主な検査につきまして、ご紹介させていただきます。

脳血流シンチ

・脳血流シンチグラフィ (3D-SSP解析等)  

 脳の血流状態を評価する検査です。最近では、認知症の早期診断、鑑別診断の一助として用いられている検査です。MRI の結果と併せる事でより診断精度を向上することが可能です。

・骨シンチ 主にがん患者の骨転移評価を行う検査です。 一度の検査で全身の評価が可能です。          

・ミオMIBG   心臓の交感神経機能を評価する検査です。 心不全に加え、最近では、パーキンソン病の診断にも用いられる検査です。

・負荷心筋シンチ 心筋の血流状態を評価する検査です。 狭心症・心筋梗塞などの疾患で心筋細胞が生きているかどうかが治療方針選択の一助となります。

・安静心筋シンチ   心筋のエネルギー代謝の変化を評価する検査です。負荷をかけられない方でも心筋細胞の状態を評価することが可能です。

*核医学検査は全て予約制です。*検査のキャンセルにつきましては、検査日前日までに必ず地域医療推進室までご連絡お願いいたします。

GE社製Discovery NM630

核医学検査でわかること

SPECT 装置

主 な 検 査

月 火 水 木 金

負荷心筋シンチ

脳血流シンチ 脳血流シンチ

負荷心筋シンチ 骨シンチ 骨シンチ

ミオ MIBG ミオ MIBG

安静心筋シンチ 安静心筋シンチ