平成29年度建設部発注工事の事故事例集 - Aichi …...平成29年度工事事故事例① 【労働災害】 【図面・写真等】 積み上がった大型ブロック積が裏側に転倒し作業員が挟まれ死亡
土木工事におけるICT活用事例dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/308t_16.pdfICTブロック据付工...
Transcript of 土木工事におけるICT活用事例dokaikyo.or.jp/back_number/kaishi_new/308t_16.pdfICTブロック据付工...
我 が 社 の 技 術 P R
我 が 社 技 Pの 術 R
♳はじめに
近年、国の施策として建設生産システムの生産
性向上と、より魅力ある建設現場を目指す取り組
みである﹁i-Construction
(アイ・コンストラク
ション)﹂が推進されている⎠
1⎝
。我が国は、少子高
齢化による担い手不足への対応、急速に老朽化す
るインフラの維持管理・更新への対応等様々な課
題を抱えている。このような中、生産性向上に向
けたプロジェクトの一つとして、平成二十八年よ
りICT土工が先行して本格的に採用されてい
る。また、港湾工事においてもICTの導入に向
けて必要なシステムや基準類の検討が進められ
ており⎠
2⎝
、我が社においてもICTの導入を進めて
きた。本報では、道路改良工事、河川改修工事、
及び港湾工事におけるICT活用事例について
紹介する。
♴ 港湾工事におけるICT活用事例
~ICTブロック据付工~
本工事は、沈下した消波ブロックを嵩上げする
ことにより防波堤の消波機能を回復させるため
の工事であった(写真1参照)。所定の個数で消
波性能と耐久性に優れた構造にさせるためには、
事前に測量・調査を綿密に行い現況の複雑な施工
基面を詳細に把握し、据付位置や方向など噛み合
わせに配慮した据付配列を計画する必要があっ
た。そのため、これらの結果を施工に反映させる
必要があり、三次元モデルの作成と模型を使用し
たシミュレーション
の実施に至った。ま
た、潜水士を伴う起
重機船による吊作業
時に懸念されるブ
ロックとの接触災害
を防止するため、
ICT起重機船を採
用した。
1 起工測量
起工測量では3D
レーザースキャナ
(写真2参照)とナ
ローマルチビーム
(写真3参照)を採
用し、気中部と水中
部の測量を実施する
ことで構造全体の点
群データを取得した。
最終的にその点群
データを統合し、施
工区域の三次元モデ
ルを作成することで、
消波ブロックで構成
された複雑な構造物
を詳細に把握するこ
とができた(図1参
照)。 起
工時の測量では、
土木工事におけるICT活用事例
株式会社本間組 土木事業本部 技術部 技術開発研究室 本間 義信
写真 1 既設消波ブロック写真 3 ナローマルチビーム測量 写真 2 3Dレーザースキャナ
102 土地改良 308号 2020.1●
各測線を横断測量する従来型に比べ、潜水士によ
る作業が不要なことや、短時間で高密度な測量が
でき、省人化・効率化につながった。
2 据付シミュレーション
起工測量で得られた点群データから作成した三
次元データを基に据え付け消波ブロックの数量算
出と模型の製作を行った。模型を使い消波ブロッ
クの据付位置や据付方向を噛み合わせがよくなる
ようシミュレーションし、消波ブロック個々の据
付座標を設定した(写
真4参照)。
3 � ICT起重機船
による施工
施工段階ではICT
起重機船(水中3D誘
導システム:N
ETIS-H
RK-170002-A
)を採用し
た(図2参照)。
⑴事前準備
ICT起重機船のオペレーションに必要となる
消波ブロック個々の据付座標と据付順序、計画平
面、断面形状を事前入力した。
⑵吊荷の位置管理
起重機船の船体及びクレーンブーム先端に設置
したGNSSアンテナによる位置情報と、クレー
ンの起伏角度、及びワイヤーの繰り出し長の情報
から、船体の平面位置、クレーンの旋回角、及び
吊荷の三次元座標(x、y、z)をリアルタイム
にシステム管理モニタを通して把握した。
⑶�
潜水士の位置管理
潜水士の位置管理は、船体に設置したトランス
ジューサと潜水士に携行させたトランスポンダ間
で音波を送受波
し、距離と方位
を計測、加えて
潜水士の携行装
置に内蔵した圧
力センサーによ
る水深情報から、
潜水士の三次元
位置(x、y、z)
をリアルタイム
に把握した。
⑷�
施工中の管理画面
図3に施工中の管理画面を示す。管理画面は、
起重機船の操船室、クレーン操作室、及び潜水士
船で確認でき、施工状況を関係者間で共有するこ
とで意思疎通が良好にできる。事前の三次元測量
から得られた平面図、断面図、及びシミュレーショ
ンにより決定したブロック据付位置を入力し、先
に説明した吊荷の現在位置、潜水士の位置、船体
位置、及びクレーンの旋回状況を統合し、リアル
タイムで表示させることで、施工対象となる消波
ブロック堤の構造や、施工状況を空間的に把握す
ることが可能となる。これらの情報からクレーン
オペレータは、肉眼では確認できない水中の施工
状況を視覚的に把握することができる。
⑸安全性
水中でのブロック据付作業時は、クレーンオペ
レータが潜水士位置をリアルタイムで把握でき、
吊荷を中心とした設定範囲内に入った場合、警告
表示により危険を瞬時に認識できる。また、作業
船への積込作業や気中部への据付作業時にはク
レーンブーム先端カメラから吊荷周辺を上空から
監視し、クレーンオペの死角を排除することで吊
荷と作業員の接触を回避できる。
3
道路改良工事、河川改修工事における
ICT活用事例
~ICT土工~
ICT土工を採用した目的は、広大な施工範囲
と急峻な地形での起工測量を安全かつ効率よくで
きる方法であること、急曲線部や構造物取付部な
図 1 統合した三次元モデル
写真 4 模型によるシミュレーション
図 3 「水中3D誘導システム」管理画面
図 2 「水中3D誘導システム」模式図
防波堤
消波ブロック
船位GNSSアンテナ
管理モニタ
トランスジューサ
クレーンカメラ
吊荷(x,y,z)
潜水士(x,y,z)(トランスポンダ)
ブーム先端GNSSアンテナ
我 が 社 の 技 術 P R
ど複雑な形状でも三次元モデルの活用により効率
的な計画、施工が可能であることが挙げられる。
本章では、ICTバックホウを活用した道路改良
工事(掘削、盛土、法面整形)と河川改修工事(築
堤盛土、法面整形)の当社施工事例を紹介する。
1 起工測量
起工測量は、いずれも無人航空機(UAV)を
使用した三次元計測を実施した。施工面積が広く、
急峻な地形も多い現場では、従来の横断測量に比
べ短時間で面的(高密度)
な三次元測量が実施でき
省人化、効率化につな
がった。また、安全面に
おいても従来測量では測
量作業員と重機との接触災害や、急峻な場所、高
所からの転落災害の恐れがあったが、無人航空機
(UAV)を使用することで安全性が向上した。
2 計画(3Dデータの解析)
起工測量により取得した原地形の点群データと
3D設計データから、三次元合成モデルを作成し
た(図4参照)。モデル作成には時間を要したが、
構造物寸法の設計データのチェックや設計書と現
場との形状不一致箇所が確認され省力化ができた。
また、二次元図面では理解しにくい急曲線
部や構造物取付部も、三次元モデルの活用
により説得力のある効果的な説明資料と
なった。
3 ICT建機による施工
受注現場においてICT土工を標準化
させるために弊社で保有したICTバッ
クホウ(PC200i-10
コマツ社製)で施工を
行った(写真5参照)。当該機はGNSS
で取得する位置情報と3D設計データ、
アーム制御システムによるマシンコント
ロール油圧ショベルである。丁張り作業の
省力化、機械操作に熟練度を要しないな
ど、省人化・省力化への対策として効果的
であることを確認できた(写真6参照)。
ただし、GNSSによる位置情報が不可欠
なため、太陽フレアによる電離層の乱れの
影響や、衛星の配置状況による影響で位置
情報の精度が落ち、施工できない時間帯が
発生した事象があり、休止時間を施工歩掛
へ反映させることや、位置情報の精度が維持でき
る手法の採用などが必要であると考える。
4 三次元出来形管理
出来形測定には無人航空機(UAV)と3Dレー
ザースキャナによる三次元測量を実施した。起工
測量同様、短時間で成果が得られるので省力化・
省人化ができた。ただ、出来形測定のコスト低減
のため、測量回数をできるだけ少なくしたいと考
えたが、盛土工事の場合、施工後速やかに法面保
護工(植生)を施す必要があるため、必然的に測
量回数が増え、費用が嵩んだ。
4
おわりに
本報では、生産性向上に向けたICT導入事例
について紹介した。今後は測量・調査設計から施
工・維持管理まで三次元モデルを連携発展させ、
社会資本の整備・管理をおこなうCIM
(Construction Inform
ation Modeling/
Managem
ent
)の導入に向けたシステムの構築、
人材育成などの対応を行い、業務の効率化・高度
化の推進を図るとともに、ICTの幅広い活用に
より受注現場での更なる品質・生産性向上を目指
し、より魅力ある建設現場が実現できるよう技術
開発を継続して取り組んでゆきたい。
参考文献
⑴ i-Constraction
推進コンソーシアムH
P
(http://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.htm
l
)
⑵ICTの全面的な活用の推進に関する実施方針:
第
8回港湾におけるICT導入検討委員会資料、
2019・11
写真 5 ICTバックホウによる法面整形状況 写真 6 ICT土工施工状況
図 4 三次元測量結果画像
103土地改良 308号 2020.1 ●
我 が 社 の 技 術 P R
ど複雑な形状でも三次元モデルの活用により効率
的な計画、施工が可能であることが挙げられる。
本章では、ICTバックホウを活用した道路改良
工事(掘削、盛土、法面整形)と河川改修工事(築
堤盛土、法面整形)の当社施工事例を紹介する。
1 起工測量
起工測量は、いずれも無人航空機(UAV)を
使用した三次元計測を実施した。施工面積が広く、
急峻な地形も多い現場では、従来の横断測量に比
べ短時間で面的(高密度)
な三次元測量が実施でき
省人化、効率化につな
がった。また、安全面に
おいても従来測量では測
量作業員と重機との接触災害や、急峻な場所、高
所からの転落災害の恐れがあったが、無人航空機
(UAV)を使用することで安全性が向上した。
2 計画(3Dデータの解析)
起工測量により取得した原地形の点群データと
3D設計データから、三次元合成モデルを作成し
た(図4参照)。モデル作成には時間を要したが、
構造物寸法の設計データのチェックや設計書と現
場との形状不一致箇所が確認され省力化ができた。
また、二次元図面では理解しにくい急曲線
部や構造物取付部も、三次元モデルの活用
により説得力のある効果的な説明資料と
なった。
3 ICT建機による施工
受注現場においてICT土工を標準化
させるために弊社で保有したICTバッ
クホウ(PC200i-10
コマツ社製)で施工を
行った(写真5参照)。当該機はGNSS
で取得する位置情報と3D設計データ、
アーム制御システムによるマシンコント
ロール油圧ショベルである。丁張り作業の
省力化、機械操作に熟練度を要しないな
ど、省人化・省力化への対策として効果的
であることを確認できた(写真6参照)。
ただし、GNSSによる位置情報が不可欠
なため、太陽フレアによる電離層の乱れの
影響や、衛星の配置状況による影響で位置
情報の精度が落ち、施工できない時間帯が
発生した事象があり、休止時間を施工歩掛
へ反映させることや、位置情報の精度が維持でき
る手法の採用などが必要であると考える。
4 三次元出来形管理
出来形測定には無人航空機(UAV)と3Dレー
ザースキャナによる三次元測量を実施した。起工
測量同様、短時間で成果が得られるので省力化・
省人化ができた。ただ、出来形測定のコスト低減
のため、測量回数をできるだけ少なくしたいと考
えたが、盛土工事の場合、施工後速やかに法面保
護工(植生)を施す必要があるため、必然的に測
量回数が増え、費用が嵩んだ。
4
おわりに
本報では、生産性向上に向けたICT導入事例
について紹介した。今後は測量・調査設計から施
工・維持管理まで三次元モデルを連携発展させ、
社会資本の整備・管理をおこなうCIM
(Construction Inform
ation Modeling/
Managem
ent
)の導入に向けたシステムの構築、
人材育成などの対応を行い、業務の効率化・高度
化の推進を図るとともに、ICTの幅広い活用に
より受注現場での更なる品質・生産性向上を目指
し、より魅力ある建設現場が実現できるよう技術
開発を継続して取り組んでゆきたい。
参考文献
⑴ i-Constraction
推進コンソーシアムH
P
(http://www.mlit.go.jp/tec/i-construction/index.htm
l
)
⑵ICTの全面的な活用の推進に関する実施方針:
第
8回港湾におけるICT導入検討委員会資料、
2019・11
写真 5 ICTバックホウによる法面整形状況 写真 6 ICT土工施工状況
図 4 三次元測量結果画像
104 土地改良 308号 2020.1●