「アイヌ民族に関する新法問題について」の答申...申 略一、新法の必要性...

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申略一、新法の必要性

□⑪アイヌの現状

いアイヌは、自然の豊かな恵みを受けて、独自の生活と文

字化を築き上げてきた。しかし、本州・四国・九州の各地か

髄らの移住者が増加し、北海道の開発が本格的に進む中で、

縦アイヌの生活の基盤と文化が奪われ、同時に、古くから培

るわれてきた習慣、生活態様などにより、激しく変化する社

附会に対応することができず、社会的にも経済的にも恵まれ

純ない環境のもとにある人たちが多かった。

眼その後の歴史的経過の中で、明治一一一十一一年(一八九九

列年)に「北海道旧土人保護法」が制定され、さらに昭和四

r十九年二九七四年)からは一一次にわたる「北海道ウタリ

Ⅲ福祉対策」が推進されてきた。これらによって、アイヌの

110

資料

が諺この度結論を得たので、別紙のとおり報告します。

北海道においては、本報告の趣旨を踏まえ、アイヌ民族

に関する新法の制定を国に対して強く要望することを期待

します。

なお、検討に際して収集及び調査した資料などの主なも

のについては、別冊のとおりです。

答申の中では、国はアイヌ民族の権利宣言を定めるとともに、

人権擁護の強化、教育や文化面での民族政策の実施、経済自立に

むけた基金の創設やアイヌ民族の代表を含む審議機関の新設を提

案しており、北海道ウタリ協会などの、これまでの主張を大枠で

盛り込んでいる。

北海道ウタリ協会の関係者も、基本的には同答申を評価してお

り、同知事も、近くこの答申を踏まえ、新法制定を国に働きかけ

る方針を明らかにしている。

そこで、本号では、①アイヌ民族に関する新法問題についての

答申、②この「答申」に関する『北海道新聞』の社説、③この「答

申」に関する衆議院内閣委員会の議事録を紹介する。なお、北海

道ウタリ協会は、五月に開催される総会で同「答申」に関する見

解をまとめるとしている。(編集部)

制定すべきだ、との答申をまとめた。

アイヌ民族を対象とした「北海道旧土人保護法」二八九九年

制定)の改廃問題をめぐり、北海道知事の私的諮問機関である

「ウタリ問題懇話会」(座長・森本正夫北海学園理事長)は三年

半の審議を経て、三月一一二日、「旧土人保護法はその意義を失っ

ている」として、アイヌ民族の権利を明記した「アイヌ新法」を

「アイヌ民族に関する新法問題について」の答申

-、報告

生活の状況は改善が図雪われたものの、まだなお多くの点に

おいてかなりの格差が存在していろ。

昭和六十一年(一九八六年)六月に北海道が実施した

「ウタリ生活実態調査」によると、その人口は一一四、三八

一人であり、生活水準、就労状況、所得水準、高校。大学

への進学状況などの点で一般道民との間に格差があり、特

に、高校・大学への進学状況についての格差が著しい。ま

た、アイヌに対する差別の事例も指摘されており、前記「ウ

タリ生活実態調査」のアンケートの結果でも、一一三・一パ

ーセントの人が、「ひどい差別を経験したことがある」と

答え、また、差別が「現在もある」という回答が調査対象

者の六一・二パーセントにものぼっていろ。このような差

別は、一般国民のアイヌの人たちに対する理解が十分でな

いことから生じているものである。

さらにアイヌは、独自の宗教・言語・文化を形成し保持

している民族であるが、伝承者が高齢化していることなど

から、アイヌ語及びアイヌ文化の継承・保存活動の一層の

促進が課題となっていろ。

②「北海道旧土人保護法」の実態

「北海道旧士人保護法」は、アイヌに土地を下付して農

業を奨励することをはじめ、医療、生活扶助、教育の奨励

などの保護対策を行うことを通じて、日本国民に同化させ

昭和六十三年三月一一十一一日

北海道知事横路孝弘殿

ウタリ問題懇話会

座長森本正夫

当懇話会は、昭和五十九年十月、北海道知事から北海道

旧土人保護法及び新法に関することについて検討するよう

依頼を受け、今日まで三年余にわたり審議を重ねてきた

(資料)①

アイヌ民族に関する新法問題について

昭和六十三年三月

アイヌ民族に関する新法問題について

ウタリ問題懇話会

研究部
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していた土地及びそこにある資源に対する権利、伝統文化

を維持し発展させる権利、〉さらに一部には政治的自決権を

包含する内容の権利として、諸外国並びに国際的な場でも

主張され論議されていろ。

当懇話会においても、「先住権」を根拠として、アイヌ

が先住していた土地及びそこにある資源に対する補償とし

ての「自立化基金の創設」、伝統文化を維持し発展させる

ための「教育・文化の振興」、さらには、政治的自決を表

申現するための「議会における特別議席の確保」などを内容

答とする「アイヌ新法(仮称)」を制定すべきとの主張があ

仰った。

脈「先住権」の概念は、いまだ法的に明確に確立されてお

やらず、またその内容についても検討すべきことが残されて

鵬いろ。しかし、アイヌ民族が北海道(北方領土の島々を含

雛む)などに先住していた事実は明らかであり、また明治一一一

朔十二年(一八九九年)に日本政府がアイヌを国民に同化ざ

関せることを目的に「北海道旧土人保護法」を制定したこと

灘は、北海道に土着する民族としてのアイヌが存在すること

狼を認めていたことを意味するものである・とのようなこと

河から、「先住権」がわが国におけるアイヌ民族の地位を確

r立するための「アイヌ新法(仮称)」を制定する、一つの

畑有力な根拠になり得ろという点については、当懇話会にお

112

ることを目的に、明治三十一一年(一八九九年)に制定され

た。.

その後、同法は数度にわたって改正され、特に、第二次

大戦後は日本国憲法の下における社会保障制度及び公教育

制度の拡充などにより、社会保障や教育に関する規定が削

除された。今日、同法の規定のうち実際に機能しているの

は、下付された土地の譲渡などにあたって北海道知事の許

可を必要とすることと、共有財産の管理を定めた規定のみ

といえる。

しかし、下付された土地の現状をみろと、昭和六十二年

(一九八七年)一一一月三十一日現在で残っているのは一、一一一

六○ヘクタール余りで、全下付地面積九、○六一ヘクタール

の一五パーセントに過ぎなくなっていろ。もともと下付さ

れた土地の中には農耕に適さない荒地や傾斜地なども多く

みられ、また十五年以内に開墾しなければ没収するという

「成功検査」が条件となっていたため、下付された土地を

実際に手に入れることのできなかったアイヌも多かった。

「成功検査」によって没収された土地は、全下付地面積の

二一・五パーセントにあたる一、九五○ヘクタールにのぼ

っていろ。さらに、第二次大戦後に行われた農地改革の際

に、北海道からの買収除外措置の要請にもかかわらず、こ

れらの土地も自作農創設特別措置法による農地買収の対象

いて意見の一致をみた。

以上のような検討の結果、アイヌの人たちと一般国民と

の格差と現存する差別を是正・解消し、アイヌ民族の言語

・文化を継承・保存するためには、もとよりアイヌの高い

自覚と積極的な努力が不可欠であるが、同時に国におい

ても、新たな施策の展開を図ろことが必要であると考え

ろ。二、提一一一戸

当懇話会は、現行の「北海道旧土人保護法」及び「旭川

市旧土人保護地処分法」を廃止するとともに、以下のよう

な内容を含む「アイヌ新法(仮称)」を国が制定すること

を提言する。

山アイヌの人たちの権利を尊重するための宣言

日本国憲法の下において、アイヌの人たちの権利が十分

に尊重され、その社会的・経済的地位が確立されるよう権

利宣言を定めること。

②人権擁護活動の強化

学校教育、就職、結婚、その他の日常生活において、ア

イヌに対する差別が存在している現状を改善するために、

アイヌに対する人権擁護活動の強化を図ろこと。

③アイヌ文化の振興

アイヌ語及びアイヌ文化の継承・保存並びに普及に関す

となり、全下付地面積の二五・六パーセントにあたる一一、

三一八ヘクタールが強制買収されていろ。

また、共有財産については、明治時代の漁場経営の収益

金や宮内省からの教育資金としての御下賜金などのほか、

共有の土地などを北海道知事(北海道庁長官)が管理をし

てきた。これまでに土地などについてはそれぞれ処分さ

れ、昭和六十三年(一九八八年)一月現在、預金として九

九一、四三八円が管理されているのみである。

なお、旭川市では、度重なる下付予定地をめぐる紛争の

ため昭和九年(一九三四年)に「旭川市旧土人保護地処分

法」が制定され、北海道庁から旭川市に貸付されていた土

地が、アイヌに個人有または共有財産として下付された。

下付された土地の所有権に対する制限については、北海道

旧土人保護法の規定が準用されていろ。共有財産とされた

土地は、第二次大戦後、農地改革の対象となった。

以上のように、「北海道旧土人保護法」及び「旭川市旧

土人保護地処分法」の実態を検討した結果、現在では土地

の譲渡に対する規制などの必要性が薄れており、当懇話会

は、これらの法律が今日もはやその存在意義をほとんど失

っているものと判断する。

③「先住権」と「アイヌ新法(仮称)」

「先住権」は、一般に、先住民族の居住するないし居住

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的措置の必要性などについて』アイヌ関係者及び各界・各

層の有識者により検討・協議を行うことを目的として、昭

和五十九年二九八四年)十月に「ウタリ問題懇話会」を

設置した。

当懇話会は、今後のウタリ福祉対策のあり方及び新たな

法的措置の必要性などについて具体的に検討を進めるた

め、それぞれ分科会方式で検討することとし、昭和六十年

度からは「福祉対策分科会」と「新法問題分科会」を設置

し、検討を行ってきた。このうち、福祉対策については昭

申答和六十一年度中に検討を終え、昭和六十二年(一九八七

〃年)三月に報告を行っていろ。

に新法問題については、新たな法的措置の必要性や諸外国

車の少数民族対策などについてさらに調査・検討を要する事

轆項が多かったため、昭和六十二年度も引き続き審議を行

縦い、このほどその結論を得るに至ったものである。

ろ昭和五十九年度に懇話会を設置して以来、新法問題に関

附しては、七回の懇話会と二十四回の分科会を開催し、さら

純に、外国へ出向いての調査も行うなど膨大な労力と時間を

狼費やして審議を行った。

汀以下、年度ごとの新法問題についての検討経過の概要を

r報告する。

u一一、検討の経過

ろ活動を援助するとともに、アイヌ民族文化を総合的に研

究する国立のアイヌ民族研究施設を設置すること。

側自立化基金の創設

アイヌの自立的活動を促進するために、「アイヌ民族自

立化基金(仮称)」を設置すること。なお、その基金の運

営にはアイヌの自主性が最大限に確保されるとともに、国

の適正な監督が及ぼされるものとする。

⑤審議機関の新設

アイヌの民族政策並びに経済的自立を図ろための産業政

策を継続的に審議するため、アイヌ民族の代表を含む審議

機関を新設すること。

検討の過程において、国会及び地方議会にアイヌ民族代

表の特別議席を設けるべきとの主張があった。

しかし、アイヌ民族に特別議席を付与することは、日本

国憲法における選挙権の平等(第十五条第一項、第三項及

び第四十四条但し書)及び国会議員が全国民の代表である

こと(第四十三条第一項)の規定からみて、一般の国民と

区別してアイヌという特別の選挙人の範ちゅうを認めるこ

とは、憲法に抵触する疑いが濃厚であり、それを認めろた

たことを付言する。

当懇話会においては、次のような点についても論議され

三、付言

めには、憲法改正が必要であることから、このような憲法

改正の妥当性、さらにはアイヌ民族に特別議席を付与する

考え方そのものに疑問が呈された。

また、「アイヌ新法(仮称)」においては、法律の対象

となる「アイヌ」をどのように定義するかという問題があ

る。これについては、アイヌとしての血があること及び本

人の自発的意志の尊重という二つの要素を考慮する必要が

あるとされた。

さらに、都道府県及び関係市町村が努めるべき施策につ

いては、国が特別の財政措置を講ずるべきてあるとされ

た。【昭和五十九年度】

懇話会の設置に先だち、委員選考のため謡北海学園理事

長森本正夫氏、北海道ウタリ協会理事長野村義一氏、北海

道埋蔵文化財センター常務理事(当時)藤本英夫氏、北海

道商工会議所連合会専務理事(当時)広瀬弘氏、札幌人権

擁護委員連合会会長村部芳太郎氏の五氏を推薦委員とし、

昭和五十九年二九八四年)+|月十六日に推薦委員会を

開催し、委員候補者の推薦を行った。

この結果、推薦委員を含む十五氏を委員として委嘱し、

昭和五十九年(一九八四年)十二月六日、第一回の懇話会

を開催した。

昭和五十九年度中には、二回の懇話会を開催し、分科会

を設置しての検討などの運営方針を決定したほか、ウタリ

福祉対策の施策概要及びアイヌの歴史的背景並びに北海道

ウタリ協会総会において決議した「アイヌ民族に関する法

律(案)」などについての説明を受けた。

【昭和六十年度】

昭和六十年度からは、臨時委員として五氏を追加委嘱

し、福祉対策及び新法問題の二つの分科会において具体的

な検討を開始した。

新法問題分科会は五回開催し、北海道旧土人保護法の制

定及び改正の経過並びにその施行の実態として土地の下付

一、ウタリ問題懇話会設置の経過

昭和五十九年二九八四年)五月、北海道ウタリ協会総

会において決議された「アイヌ民族に関する法律(案)」

について、同年七月北海道知事及び北海道議会議長に対

し、その実現について配慮されたい旨の陳情があった。

また、第二次北海道ウタリ福祉対策(昭和五十六’六十

二年度)の最終期限も迫ってきた。このようなことから、

北海道では、今後のウタリ福祉対策のあり方及び新たな法

Ⅱ、審議の経過

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前年度に引き続き分科会を毎月開催し諺諸外国の少数民

族対策については、国連における少数者保護問題の検討の

一環として、東京外国語大学斎藤惠彦教授を招き、「国際

的人権保障のしくみ」と題する講演を聴取したほか、一ニ

ージーランドの先住民問題に関して、現地への手紙による

照会結果が報告された。

さらに、関係国の少数民族対策について具体的に調べる

ため、九1十月にはアメリカ合衆国(アラスカ州を含む)

申及びオーストラリア、ニュージーランドの各国に委員を派

答遣し、現地において直接調査を行い、その結果が報告され

〃た。

にまた、ILO(国際労働機関)が一九五七年(昭和三十

二一一年)に採択した「独立国における原住民並びに他の種族・

髄民及び半種族民の保護及び同化に関する条約(第一○七

縦号)」の改正に関した問題についても検討を行った。

る新たな法的措置の必要性と具体的措置については、前年

鮒度に引き続きウタリ協会の具体的提案に基づき、「農林漁

と脚業」、「商工業・労働」、「自立化基金」、「審議機関」などに

烟ついての検討を行ったほか、アイヌ民族の歴史について共

刊通の認識を持つため「アイヌ研究史から見たアイヌの歴

r史」、「津軽(藩)と蝦夷島(北海道)との関係」について

Ⅳ委員の調査結果が報告された。

状況へ住宅・教育・医療などの施策、農地改革に伴う下付

地の取り扱いなどの問題について検討した。さらに、アイ

ヌのこれまでの歴史的経過・背景などに関して、明治以降

の新冠(にいかつ塁)御料牧場の設置及び拡張などに伴う

アイヌの取り扱い、樺太・千島交換条約に伴う樺太アイヌ

の強制移住、旭川市近文(ちかぷみ)における土地の問題

などのほか、ウタリ協会の調査による差別の実例などにつ

いての検討を行った。

また、委員により静内町で面接調査を実施した。

諸外国の少数民族対策に関しては、委員の分担を決めて

調査・検討を行うこととし、アメリカ合衆国の先住民の現

状と施策、中華人民共和国の少数民族関係の法制度、オー

ストラリアの先住民対策などに関しての報告が行われたほ

か、わが国が批准している国際人権規約の問題などについ

て検討を行った。

]二月には全体の懇話会を開催し、これらについての概要

を報告するとともに、昭和六十一年度の審議の方針につい

て協議を行ったP.

【昭和六十一年度】

前年度に引き続き七回の分科会を開催し、北海道旧土人

保護法の施行の実態として、教育・医療の問題について追

加資料などにより検討したほか、農地改革による下付地の

買収にかかる訴訟の例などについて検討した。また、委員

により旭川市と鵡川町で面接調査を実施した。

さらに、現行法を廃止した場合の問題点や、近年の国会

における北海道旧士人保護法及びウタリ対策に関する質疑

の経過などについて検討した。

諸外国における少数民族対策については、アメリカ合衆

国(アラスカ・ハワイ)の先住民法制、ニュージーランド

の先住民対策の諸問題のほか、アメリカにおける差別解消

策と逆差別の問題、先住民の優先処遇と法の下の平等の問

題、先住民族と先住権及びインディアンの定義の問題など

が報告された。

新たな法的措置の必要性と具体的措置については、ウタ

リ協会の提案した「アイヌ民族に関する法律(案)」に関

して、「具体的な考えかた」の提案を求め、それに基づ

き、「基本的人権」、「参政権」、「教育・文化」についての

検討を行った。また、北海道が実施した「昭和六十一年北海

道ウタリ生活実態調査」の結果についても検討を行った。

十一月及び三月の一一度八全体の懇話会を開催し、これら

についての概要を報告するとともに、昭和六十二年度の審

議の方針について協議した。なお十一月以降は分科会を毎

月開催し、審議の促進を図った。

【昭和六十二年度】

ウタリ問題懇話会委員名簿

座長◎森本正夫北海学園理事長

慨雛鋼蝿o中村睦男北海道大学法学部教授

委員◎秋田春蔵北海道ウタリ協会理事

委員大野政義北海道ウタリ協会副理事長

委員◎小川隆吉北海道ウタリ協会理事

委員貝沢正北海道ウタリ協会副理事長

委「員◎川上

実前旭川アイヌ協議会会長

委負◎熊本信夫北海学園大学法学部教授

委員小林善直平取すずらん福祉園園長

委員竹本源也北海道農業協同組合中央会常

務理事

委員辻

勉前北海道観光連盟専務理事

委員◎常本照樹北海道教育大学札幌分校助教

委員照井秀夫北海道指導漁業協同組合連合

会専務理事

委員遠山敏男前北海道商工会議所連合会常

その後、これまでの調査・検討を踏まえて総合的な討議

を行い、報告書を取りまとめたものである。

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118 -Jノイヌ剪瀞升ば(一室ご」門出〒

脈を-工に構成されていう○・

つアイヌの権利宣一一一一□、¥

》臥緬辨癖》褐罪》瀬川一鮒道ウタリ協会は「民》

〆」

脚いうアイヌの主張はほ

狼が、当然のことだろう。

河一部には「国会と地一

F‐を設けよ」とのアイヌ酎

朋どまっていることに、一

の答申

委委委委委委どでの「先住権」確認と「旧土人保護法」の廃止、新法の

制定を決議したことに始まる。道ウタリ協会は五十九年五

月、「アイヌ民族に関する法律案」を採択、知事と道議会

に新法制定への協力を要請した。

ウタリ問題懇話会はこれを受けて設置されたが、六十一

年秋、中曽根首相(当時)が「日本は単一民族国家」と発

言したことから、アイヌの人たちの反発を買い、苦難と差

別の歴史を強いられたアイヌ民族の存在が、逆に浮かび上

がる結果になったことは記憶に新しい。

こうした経過もあり、今回の報告書の心臓部をなす「ア

イヌ新法(案)」は、五項目すべてが道ウタリ協会の主張

を元に構成されていろ。

アイヌの権利宣言、差別排除のための人権擁護活動の強・

化、国立アイヌ民族研究施設の設立、アイヌ民族自立化基

金の創設、それにアイヌ民族の代表を含む審議機関の設置

貝◎土橋信男

員◎野村義一

員、広瀬

員◎藤本英夫

員o向井政次郎

員◎村部芳太郎

(敬称略・委員は五十音順

「国会と地方議会にアイヌ民族代表の特別議席

」のアイヌ側の主張が、報告書の「付言」にと

》ことに、不満を持つ向きもいるようだ。しか

「民族の存在と権利の保障を認めよ、と

』ほぼ裏付けられた」と歓迎していろ

務理事

北星学園大学文学部教授

北海道ウタリ協会理事長

㈱ちとせデパート会長

北海道文化財研究所所長

北海道ウタリ協会理事

札幌人権擁護委員連合会会長

◎印は新法問題分科会所属委員)

「アイヌ新法」の制定に努力を

アイヌ民族に対する政策のあり方を審議していた横路知

事の私的諮問機関・ウタリ問題懇話会が、最終報告書をま

とめ知事に提出した。

報告書は、現行の「北海道旧土人保護法」はもはや存在

意義を失った、としてその廃止を求める一方、アイヌ民族

の権利宣言を含む「アイヌ新法(仮称)」を制定するよう、

呼び掛けていろ。

北海道ウタリ協会などアイヌの人たちの主張を大幅に取

り入れており、基本的には評価できる内容といえる。

だが、法律の廃止も制定も国の仕事である。アイヌ民族

の存在をようやく〃認知〃したばかりの政府が相手では、

今後、新法の必要性を理解させるのに多くの時間を要しよ

》つ。道は、今回の報生口書についてアイヌの人たちはもとよ

り、一般道民からも幅広く意見を聴き、早急に道内世論を

まとめる必要がある。そのうえで国に対し、アイヌ新法の

制定をねばり強く働きかけるべきだろう。

アイヌ新法問題は五十七年五月、道ウタリ協会が本道な

(資料)②

『北海道新聞』(一九八八年三月一一四日)社説

し、そこまで踏み込むのは「憲法に抵触する疑いが濃厚」

と報告書も指摘しているように、疑問といわざるを得な

い。仮に、報告書に基づいてアイヌ新法が制定されても、ア

イヌの人たちが置かれた厳しい環境がただちに変わるわけ

ではない。が、現行の侮辱的な名称の保護法が廃止され、

民族としての権利を認めた新法が成立するという、その事

実だけでも、アイヌの人たちに大きな希望を与えるのでは

ないか。

報告書の新法案は決して万全なものではない。むしろ、

アイヌの人たちが和人と対等の立場に立つための第一歩に

すぎないだろう。だが、それすらも成立どころか、国会提

出さえ容易ではあるまい。中央ではそれほどまでに、アイ

ヌ問題に対する理解が不足しているのだ。

それだけに道や道ウタリ協会は、政府などに根気よい働

きかけを行い、新法問題に理解を深めてもらう必要がある。

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121「アイヌ民族に関する新法問題について」 120  ̄

の答申

o小渕国務大臣はい。

上げましたように、その内容その他拝見した上でないと申

し上げられませんし、また、聞くところによりますと、い

ろいろ法律化すべきことについてはどうかなという考え方

を持っておる向きもあるということでもございますので、

今申し上げられることは、政府としては慎重に対応いたし

たい、こういうことしか答弁できないと思いますが、御理

解をいただきたいと存じます。

o五十嵐委員道もまだその報告を得てこれから議論をす

るところであろうと思いますから、その検討がなされて出

てまいりましたら、ぜひひとつ誠意を持って御研究を賜り

たい、こういうぐあいに思います。よろしゅうございます

か。

o五十嵐委員北海道の問題でありますが、九十年前に制

定された北海道旧土人保護法にかわって、アイヌの差別撤

廃と復権を盛り込んだ、新しい精神を背景とした法律とい

うものをつくろうということで審議を続けておりました横

路北海道知事の諮問機関、ウタリ問題懇話会が、長い間の

議論を終えて、一昨日、一一十一一日ですか、最終報告書をま

とめて横路知事に提出をいたしました。

その骨子とするところは、五つばかりあって、「アイヌ

の人たちの権利が十分に尊重され、その社会的、経済的地

位が確立されるよう権利宣言を定めろ」「差別が存在して

いる現状を改善するために、アイヌに対する人権擁護活動

の強化を図ろ」「アイヌ語、文化の継承、普及を援助し、

国立のアイヌ民族研究施設を設置する」「アイヌの自主性

が最大限に確保されろ『自立化基金(仮称廷を設置する」、

それから、「経済的自立を図ろための産業政策を継続的に

審議するため、アイヌ民族の代表を含む審議機関を新設す

る」、こういうこと等巻盛り込んだ報告が出ました。了

道は、この報告書に基づいて基本方針をまとめて、新年

(資料)③

第百十二回国会衆議院内閣委員会

(’九八八年三月一一四日)

度早々にも国に要請をしたい、こういうことのようであり

ます。先ごろの横路知事のコメントを見ましても、そうい

う趣旨のことが言われているわけであります。

そこで、政府といたしましては、そういうような道の作

業が行われて知事が要望をいたしました折には真剣な御検

討をいただきたい、こういうぐあいに思いますが、官房長

官いかがですか。

o小渕国務大臣結論を申し上げれば、その北海道知事さ

んからのお話を承りました以降、勉強ざしていただきたい

と思いますが、この私的諮問機関であるウタリ問題懇話会

から北海道知事に対してウタリにかかわる報告がなされた

ということは、私も新聞報道等で承知をいたしておるとこ

ろでございますが、まだ内容につきまして十分承知をいた

しておらないところでございます。

今、この報告に対して道としてどういうふうに対応され

るかということを御勉強中だと聞いておるのですが、今先

生からは、その結果、政府の方に出してきたら、こういう

ことのようでございますが、知事さんから正式なお話がご

ざいますれば、誠意を持ってこれを承りたいと思っており

ます。

ただ、この北海道知事さんからの報告を受けて、これを

法律化するかどうかということにつきましては、冒頭申し

ロエムコb・誤ヨ「1

東京部落解放研究第55.5G号 特集④部落解放運動と社会啓発

,

⑨行政啓発の現状を批判する 松浦利貞

③<聞き取り>世良田のr部落史を語る会」松島益平・松島一心・木村猛/川元・藤沢

鰯干葉県部落問題啓発センターの「実験」鎌田公平③関東水平社運動の軌跡(第五回)山口千代次/本田豊②<連載漫画>弾左衛門風雲録③<科学時評>原発を廃絶せよ

早瀬二朗

生越忠イ円旨⑦、、、「、

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