卜一タルフロータービンシステムの熱力学的検討* (第2報,湿 り ... · 2017....

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i50s 日本 機 械 学 会 論 文 集(B編) 54巻502号(昭63-6) 論 文No.87-1095A 卜一 タル フ ロー ター ビ ン シ ス テ ム の 熱 力 学 的検 討* (第2報,湿り水蒸気 を作動媒体 とす る場合) 爾*1,藤 井.照 重*1 一*2,高 男*3 Cycle Performance of Total Flow Turbine Systems (2nd Report, Utilization of Wet Steam) Koji AKAGAWA, Terushige FUJII, Junichi OHTA, and Shigeo TAKAGI It is important to utilize water-dominated geothermal resources and waste heat sources from factories from the viewpoint of energy saving. The cycle performance of single and double total flow turbine systems (iTS, 2TS) and a single flash turbine system (1FS) is analyzed under the condition of wet steam at the inlet of the systems in a way similar to that described in the 1st report . First, the available energy of the systems is expressed on a T-s diagram, and an optimum intermediate temperature which maximizes the system efficiency of 2TS, 1FS, is clarified . Second, the efficiency of the two-phase flow turbine required for ITS to achieve the system efficiency higher than 1FS is shown and an increase of the system efficiency of 2TS over 1FS is estimated . Moreover, the effects of factors such as inlet pressures and temperatures on the cycle performance of 2TS are shown . Key Words : Power Plant, Geothermal Resources , Cycle Performance, Wet Steam, Total Flow Turbine 1.緒 わが国は火山国であ り,.豊 富 な 地 熱 資 源 が あ る.そ の形 態 は熱 水 量 の 多 い 熱 水 形 地 熱 資 源 の 割 合 が 多 く, トー タル数 千万kWの 発 電 量 が 見 込 まれ て い る(1) .ま た,熱 水 の 存 在 しな い 高 温 乾 燥 岩 体 の 場 合 で も これ に き裂 を人 工 的 に形 成 し そ こへ地 上 か ら水 を還 流 さ せ る こ とに よ りそ の岩 体 の 熱 エ ネ ル ギ を取 り出 す 高 温 岩 体 発 電 が,注 目 され て い る.最 近 わ が 国 で も この き裂 面 形 成 の 研 究 が 進 展 し(2),実 用 化 に近 づ いてお り,地熱 資源の利用可能な範囲が広が りつつある.こ のような 熱水形地熱資源を利用するサイクルとしてはフラッシ ュサイクル ,バ イ ナ リー サ イ クル,ト ー タ ル フ ロ ー タ ー ビ ン サ イ ク ル が あ る(3》 ,フ ラ ッ シ ュサ イ ク ル,バ イ ナ リー サ イ クル は す で に実 用 化 さ れ て い る .一一方, トー タ ル フ ロー タ ー ビ ンサ イ ク ル④ は省 エ ネ ル ギ の 観 点か ら熱水 をも有効 に利 用 し得 る点 で注 目され,この サ イ ク ル で使 用 され る二 相 流 ター ビ ン も多 種 類 の もの *昭 和63年3月19日 関西 支部 第63期定 時総 会 講 演会 にお いて 講演,原稿 受 付 昭 和62年8月31日 . *,神戸大学工学部(㊥657神戸市灘区六甲台町) . *2神戸 大学 大学 院 自然科 学研 究科 . *3(株)神 戸 製 鋼所 機 械技 術 研 究 所(⑰651神戸 市 中央 区脇 浜 町). が研 究 され て い る(5)卿 働.しか し トー タ ル フ ロー タ ー ビ ンサイクルの特性については従来特定の条件について 数 値 計 算 に よ り性 能 が調 べ られ て い るが 詳 細 な 検 討 は まだ な され て い な い状 況 に あ る(a)(11》. そ こで 前 報(12》 では作動媒体のサイクル入口状態が 飽和熱水の場合 について一段 トータルフロータービン シ ス テ ム(1TS),二 段 トータルフローター ビンシステ ム(2TS)をとりあ げ,2TSに対 す る最適 な中間温度 を明 らか に し,1TSが1FS(一段 フラ ッシ ュター ビ ン シス テ ム)よ り全 体 とし て高 効 率 に な る条 件 ,2TS の1FSか らの 効 率 改 善 度 な ど を 明 ら か に し た .本 報 で は,作動 媒 体 の サ イ ク ル入 口 状 態 が 湿 り水 蒸 気 の 場 合 に つ い て,同 様 に1TS,2TS,1FSの 三つのシス テ ム に対 して,そ の基 本 的 特 性 を 明 らか にす る. 2.主 h:比 エ ン タ ル ピ L:仕 事 、P:圧力 S:比 エ ン トロピ t温 T:絶 対温度 Tf:無 次 元 中 間 温 度 〔(7ン ー7む)/(7ト7と)〕

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  • i50s

    日本 機械学 会論文 集(B編)

    54巻502号(昭63-6)

    論 文No.87-1095A

    卜一 タル フ ロー ター ビンシステ ムの熱 力学 的検 討*

    (第2報,湿 り水蒸気を作動媒体 とする場合)

    赤 川 浩 爾*1,藤 井.照 重*1

    太 田 淳 一*2,高 木 茂 男*3

    Cycle Performance of Total Flow Turbine Systems

    (2nd Report, Utilization of Wet Steam)

    Koji AKAGAWA, Terushige FUJII,

    Junichi OHTA, and Shigeo TAKAGI

    It is important to utilize water-dominated geothermal resources and waste heat sources from factories from the viewpoint of energy saving. The cycle performance of single and double total flow turbine systems (iTS, 2TS) and a single flash turbine system (1FS) is analyzed under the condition

    of wet steam at the inlet of the systems in a way similar to that described in the 1st report . First, the available energy of the systems is expressed on a T-s diagram, and an optimum intermediate temperature which maximizes the system efficiency of 2TS, 1FS, is clarified . Second, the efficiency of the two-phase flow turbine required for ITS to achieve the system efficiency higher than 1FS is shown and an increase of the system efficiency of 2TS over 1FS is estimated . Moreover, the effects of factors such as inlet pressures and temperatures on the cycle performance of 2TS are shown .

    Key Words : Power Plant, Geothermal Resources , Cycle Performance, Wet Steam, Total Flow Turbine

    1.緒 言

    わが国は火山国であ り,.豊富な地熱資源がある.そ

    の形態は熱水量の多い熱水形地熱資源の割合が多 く,

    トータル数千万kWの 発電量が見込まれている(1).ま

    た,熱 水の存在 しない高温乾燥岩体の場合でもこれに

    き裂を人工的に形成しそこへ地上から水を還流させる

    ことによりその岩体の熱エネルギを取 り出す高温岩体

    発電が,注 目されている.最 近わが国でもこのき裂面

    形成の研究が進展し(2),実用化 に近づいてお り,地 熱

    資源の利用可能な範囲が広が りつつある.こ のような

    熱水形地熱資源を利用するサイクルとしてはフラッシ

    ュサイクル,バ イナ リーサイクル,ト ータルフロータービンサイクルがある(3》が

    ,フ ラッシュサイクル,バ

    イナ リーサイクルはすでに実用化 されている.一一方,

    トータルフロータービンサイクル④は省エネルギの観

    点か ら熱水 をも有効に利用 し得 る点で注目され,こ の

    サイクルで使用される二相流ター ビンも多種類のもの

    *昭 和63年3月19日 関西支部第63期 定時総会講演会 にお

    いて講演,原 稿受付 昭和62年8月31日 .*,神 戸大学工学部(㊥657神 戸市灘区六甲台町)

    .*2神 戸大学大学院自然科学研究科

    .*3(株)神 戸製鋼所機械技術研究所(⑰651神 戸市 中央区脇 浜

    町).

    が研究されている(5)卿働.し か しトータルフロータービ

    ンサイクルの特性については従来特定の条件について

    数値計算により性能が調べられているが詳細な検討は

    まだなされていない状況にある(a)(11》.

    そこで前報(12》では作動媒体 のサイクル入口状態が

    飽和熱水の場合 について一段 トータルフロータービン

    システム(1TS),二 段 トータルフローター ビンシステ

    ム(2TS)を とりあげ,2TSに 対する最適な中間温度

    を明 らかにし,1TSが1FS(一 段 フラッシュター ビ

    ンシステム)よ り全体 として高効率になる条件,2TS

    の1FSか らの効率改善度などを明らかにした.本 報

    では,作 動媒体のサイクル入口状態が湿 り水蒸気の場

    合 について,同 様 に1TS,2TS,1FSの 三つの シス

    テムに対 して,そ の基本的特性を明らかにする.

    2.主 な 記 号

    h:比 エ ン タ ル ピ

    L:仕 事

    、P:圧 力

    S:比 エ ン トロ ピ

    t温 度

    T:絶 対 温 度

    Tf:無 次 元 中 間 温 度 〔(7ンー7む)/(7ト7と)〕

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    1510 トータル フロー ター ビンシステムの熱 力学的検 討(第2報)

    dha:断 熱 熱 落 差

    銑:シ ス テ ム 入 口 の 作 動 媒 体 の乾 き度

    η:タ ー ビ ン効 率

    万1シ ス テ ム 効 率

    添 字

    1:シ ス テ ム 入 口状 態

    1FS:一 段 フ ラ ッシ ュ シス テ ム

    1TS:一 段 トー タ ル フ ロー ター ビ ン シ ス テ ム

    2TS:二 段 トー タ ル フ ロー ター ビ ンシ ス テ ム

    c:復 水 器

    ノ:フ ラ ッシ ュ し気 水 分 離 後 あ る い は 高 圧段 二 相

    流 タ ー ビ ン出 口 の状 態

    F:フ ラ ッ シ ュ蒸 気 タ ー ビ ン

    T:ト ー タル フ ロー タ ー ビ ン(二 相 流 ター ビ ン)

    3.シ ス テ ム の 構 成

    トー タ ル フ ロ ー タ ー ビ ン シ ス テ ム の1段 と2段 の場

    合 の フ ロ ー シ ー トを 図1(a),(b)に,ま た 比 較 の 対

    象 とす る一 段 フ ラ ッシ ュ シ ス テ ム の例 を 図1(c)に 示

    す.以 降,各 シ ス テ ム を1TS,2TS,1FSと 呼 ぶ.

    図1(c)の1FSは 湿 り蒸 気 を フ ラ ッ シ ュ させ 気 液

    分 離 器Sで 気 液 分 離 し,蒸 気 の み を タ ー ビ ン(FT)へ

    導 い て発 電 させ る シ ス テ ム**1で あ る.

    っ ぎ に 図1璽(a)で は湿 り蒸 気 をそ の ま ま二 相 流 タ ー

    ビ ンTべ 導 く方 式 で あ る.一 方,二 相 流 タ ー ビ ンの効

    率 が 低 い 場 合,シ ス テ ム 効 率 の 改 善 方 法 と し て 図1

    (b)す な わ ち湿 り蒸 気 を まず 高 圧 段 の二 相 流 タ ー ビ ン

    1

    T

    C

    G

    1 F},fF

    T1へ 導 きこのタービンを出た湿 り蒸気 を気液分離器

    で蒸気と熱水に分離 して,蒸 気タービンFTと 熱水タ

    ービンT2で それぞれ発電する方式が考 えられる.こ

    の方式では,地 熱坑井から噴出する湿 り蒸気の乾 き度

    が比較的大 きい場合,4・2節 で述べるように,高 圧段

    の二相流 タービンを設置する必要のない場合が生 じ

    る.

    4.熱 力 学 的 検 討

    4・1シ ステム効率の定義 図2のT-s線 図 に

    おいて各システムに流入する湿 り蒸気の状態を図2中

    点1(乾 き度x,,温 度Ti,飽 和圧力P,)と し,復 水器圧

    力 瓦(飽 和温度TC)ま で仕事をすると考 える.こ の場

    合湿 り蒸気の復水器内の圧力,温 度(瓦,7Dを 外界基

    準とする単位流量あた りの最大仕事(比 エクセルギ)

    は(14》,次式で表 され,

    Lm邸=乃1一 現一7ヒ(St_Sc)=h一 乃`α=∠砺(1)

    断熱熱落差に等しい.す なわちdhaは 最大仕事量 を表

    すので,本 システムの効率 万(すなわちシステムのエ

    クセルギ効率)に は各システムの総出力をこの ∠砺 で

    除 して表す ことにする.

    万=L/dhQ (2)

    S

    f"

    っ ぎ に各 シ ス テ ム の 有 効 仕 事 の相 互 の 関 係 を理 解 し

    や す くす る た め に図2のT-s図 を用 い て 検 討 し よ

    う.こ こで 図2中 の記 号 ④r⑬,… は そ の まわ りの実 線

    の 囲 む 面 積 を 示 す もの とす る.た と え ば面 積 ⑧ は線 分

    f'c~c'b,bf'の 囲 む面 積 で あ る.図1(a)の1TSの 有 ・

    効 仕 事LiTs

    LETS=4hQ・ η,≒(④+⑧+◎+⑭+⑪)η7

    =② η,(3)

    Fτ⑥ ここで面積②=④+⑧+◎+⑭ ゆ である・つぎに1

    C

    (a)一 段 トー タル(b)二 段 トー タル(c)一 段 フ ラッ シュ

    フロー タ ー ビ フー-一ター ビ ター ビン システ

    ン シ ス テ ム ン シス テム ム(1FS)

    (1.TS)(2TS)

    C:復 水 器,FT:蒸 気 タ ー ビ ン,G:発 電 機

    T;T1;T2:二 相 流 タ ー ビ ン,S:気 水 分 離 器

    図1湿 り水 蒸 気 利 用 シス テ ム

    r

    Critics!point

    lPDT1 1りi'

    O⑭ 黙 ⑭P{,T{\

    孟・⑪/'羽\ ⑥映

    ⑪f"¥r

    C'}δ ピ∠

    訓 穐、年1

    S

    図2T-s線 図

    **iこ こで従来 実用化 され てい るシステム の多 くは,地 熱坑 井 か ら噴 出 す る湿 り蒸 気 を気 液 分離 し蒸気 の み を発 電所 の蒸 気

    ター ビンに導 いて いる(F3)が,この場合 は本論 文の1FSの フラ ッシュ圧 力(フ ラ ッシ ュ後 の圧力)を システム入 口圧 力 に等 し く

    した場合(す な わち フラ ッシュしない場合)と 考 え得 る.ま た地 熱坑井 か ら噴 出す る湿 り蒸気 を気 液分離 器で分離 し蒸気 を蒸気

    ター ビンへ 導 き,分 離 され た熱水 をフ ラッシ ュさせ気 液分離 して この低 圧 の蒸 気 をその蒸気 ター ビンの低圧 力 の段 落 へ注 入 す

    る シス テムがダ ブル フラ ッシ ュサ イ クル と呼 ばれ て(13)実用 化 され てい るが,こ れ につい ては別報 でのべ る.

    N工 工一ElectrOnicLibraryService

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    トー タル フロー ター ビ ンシステムの熱力 学的検 討(第2報)1511

    FSの 有 効 仕 事L,Fsは

    ム ∬≒xfF(⑮+◎+⑪+⑭+⑱+◎+⑪)η 。

    (4)

    xfFの つ ぎ の 関係 か ら

    +⑪+⑤+

    +⑬(5)鋤=◎+⑪+⑱+⑱+

    式(4)は つ ぎの よ う に表 され る.

    L・欝=(◎+⑪ ÷⑤+⑬+伽 ⑬)η。 … … …(6)

    "`さ ら に 式(6)を 図2に お い て 前 報(13)の 式(7)を 用 い

    て書 き直 す と,

    ム炉[馴 ⑳謡+(婦

    +-

    x{TfTi≡舞}2]η・(7)

    ここで⑬=④+⑬+◎Qは 温度Tiに おける蒸発潜

    熱である.こ の式中で⑲は温度Tiの 飽和液の 笠 まで

    の断熱熱落差であり,Qと もども蒸気表㈹ か ら求 め

    られる.最 後 に2TSの 有効仕事は

    L・圏二(④+⑭)η,+(1-xf)⑬ η。

    +xノ(⑬+◎+⑪+⑭+⑥+◎+⑪)η 。

    =② η・+τ∫⑬(η。一η。)+(◎+⑪+⑤)η 。

    一(◎+⑪)η 。(8)

    ここで次式(9)が

    ⑨号 《(◎+⑪+⑭)(・一号)

    +喋 (9)

    成 立 す るの で,式(8)は つ ぎの よ う に表 せ る.

    L2TS② ηT

    +(◎ 一#一⑪+⑭+ヱ ∫⑬)(η。一 η7)(10)

    こ こ で ηF=η アな ら式(10)は 式(3),す な わ ちL,Tsと

    近 似 的 に 等 し くな り,Lzzsは 中 間温 度Tfの い か ん に

    か か わ らず ほ ぼ一 定 とな る.

    4・2最 適 中 間 温 度7ン ,。PtlFSお よ び2TSに

    お い て フ ラ ッ シ ュ また は 気 水 分 離 器 の圧 力 が低 下 す れ

    ば,蒸 気 量 は増 加 す る がv蒸 気 の保 有 す る単 位 流 量 当

    た りの 有 効 仕 事 は 減 少 す る.し た が っ て,シ ス テム のノ

    入 口流 量 当 た りの トー タ ル の 出力 を最 大 にす る最 適 な

    フ ラ ッ シ ュ圧 力 が存 在 す る こ とに な る.こ こで,'1FS,

    2TSの 場 合 に つ い て 明 らか に しよ う.

    4・2・11FSの 場 合 式(7)か ら計 算 した 無 次 元

    最 適 中 間 温 度Tf.opt(最 適 フ ラ ッ シ ュ 圧 力 に対 応 す る

    飽 和 温 度 τン,。ptの無 次 元 温 度)を 図3(a) ,(b)中 の

    破 線 で 示 す.ま た 同 図 に 蒸 気 表{15}を用 い て厳 密 に数 値

    計 算 した 結 果 を 実 線 で 示 す.式(7)に よ る値 は 図3

    (b)のPc=5kPa,τ1=0.5の 場 合 を 除 く と よ く近 似

    し得 て い る こ とが わ か る.図3(a),(b)の 比 較 か ら

    最 適 中 間 温 度 は 入 口 乾 き度 に よ っ て 大 き く変 化 し,初

    圧 君,復 水器 内 圧 力 瓦 に も影 響 を受 け て変 化 す る.と

    ころ で 図3(a)に お い て τ1=0.2の 場 合'!が150か ら

    180℃ の 間 で はTf,opt=1と な り,入 口 乾 き度 が0。4

    以 上 の 場 合 す べ てTf。Pf-1と な る.す な わ ち こ の

    T.r,。pt=1で は 図1(c)の1FSの フラ ッ シ ャ を設 置 せ

    ず湿 り蒸 気 を直 接 に気 液 分離 器 へ 導 くほ うが シス テ ム

    効 率 が 高 くな る.

    4・2。22TSの 場 合 次 式(11)が 成 立 す る の で ,

    式(10)は 式(12)の よ うに表 せ る.

    ⑧(」じ∫一τノF)《◎+⑪+⑤+必 ノ⑬+② ηT…(11)

    Lars② η7

    +(◎+⑪+⑭+xrF⑬)(η 。一 η。〉 … … …(12)

    式(12)を 変 形 して

    L2炉 ② ηr+(◎+⑪+⑤+㊦+跡 ⑬)(ηF一 η。〉

    一⑤(η・一 η・)(13)

    こ こで 次 式(14)が 成 立 す るな ら,式(15)が 成 立 す る.

    ⑧ 《◎+⑪+⑤+⑥+xsF⑬(14)

    L27s≧ ② ηr

    +(◎+⑪+⑭+⑰+ヱ ∫.⑬)(η一 η。)…(15)

    N工 工一ElectrOnicLibraryService

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    1512 トータル フロー ター ビンシステムの熱 力学的 検討(第2報)

    す な わ ち 式(15)は 式(14)の 近 似 が 妥 当 な範 囲 で成 立 す

    る.こ の た め に は,⑱ が 小 さ くな らな けれ ば な らな い.

    し た が っ て(a)T1と 笠 の 差 が 小 さ い こ と,(b)η7

    が 小 さい こ とが必 要 で あ る.こ れ らの条 件 が満 た され

    る な ら,1FSの 式(6)と2TSの 式(15)を 比 較 す る

    と,式(15)中 の② η。は 中 間 温 度 に よ ら ず 一 定 な の で,

    両 者 の最 適 中 間温 度 は一 致 す る こ と にな る.こ れ を確

    認 す る た め0.5MPa

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    トー タル フローター ビンシステム の熱力学 的検討(第2報) 1513

    図5湿 り水蒸気の最大仕事量

    図61FSの シス テム効 率

    と入 口温 度t、 の 関 係 を復 水 器 圧 力 と入 口乾 き度 を パ

    ラ メ ー タ と して 図8に 示 す.与 え られ た タ ー ビ ン の

    ηT/ηFが図8中 の(ηT1ηF)`よ り大 きけ れ ば,1TSの ほ

    うが1FSよ りシ ス テ ム効 率 が 高 く有 利 と な る.た と

    え ばt、=150℃,島 敲5kPa,x,=0.1の 場 合 図 よ り(η71

    ηF)C-.615な の で ηFが80%と す れ ば ηTが49.2%

    以 上 あれ ば1TSの ほ うが1FSよ り有 利 にな る.ま た

    入 口乾 き度 が小 さ い ほ うが(η7/ηF)Cが 低 く,ト ー タ ル

    フ ロー タ ー ビ ン シス テ ム の有 利 な範 囲 が 広 い.

    5・42TSの 性 能 特 性

    5・4・1各 ター ビ ン の 出 力2TSの 各 タ ー ビ ン に

    対 す る 出 力(た だ し,シ ス テ ム 入 口 で の単 位 流 量 当 た

    り)とQhQの 比 を ηF=η7=1.0,Pc=5kPa-一 定,初 圧

    P,=0.5,1.5,4.5MPa,x,=0.1に 対 し て 図9(a)に 示

    す.二 つ の 二 相 流 タ ー ビ ンT1,T2の 出力 は 穿 の 増

    大 と と もに そ れ ぞ れ 単 調 に減 少 また は増 加 す る.つ ぎ

    に 入 口 乾 き度 銑 の 影 響 を み る た め に,各 タ ー ビ ン の

    出 力 と 、4島の 比 を ηF=η7=1.0,几=5kPa,n=0.5

    kPa,朗=0.0,02,0.5に 対 し図9(b)に 示 す.図9よ

    り,蒸 気 タ ー ビ ン 町 の 出 力 は.x,=0.0,0.2の 場 合Tf

    に対 し て ピ ー ク が 存 在 す る が,苅 鵠0 .5の 場 合 は ピー

    クが 存 在 しな い こ とが わ か る.図9(a),(b)か ら初

    圧 の 高 圧 段 の タ ー ビ ンT1の 出 力 に及 ぼ す 影 響 は 小

    さ い が,前 報(22?の 」ご戸0の 場 合 と異 な り,初 圧 の 低 圧

    段 二 相 流 タ ー ビ ンT2と 蒸 気 タ ー ビ ンFTの 出 力 に

    及 ぼ す影 響 は比 較 的 大 きい.さ ら に蒸 気 夕 一 ビ ンの 出

    力 と 図6の 万榔 の 特 性 が 相 似 で あ る こ と か ら2TS

    の 特 性 は この 中 の 蒸 気 タ ー ビ ンの 特 性 に よ り主 に 支 配

    され て い る と考 え られ る.こ れ は4・2節 の 結 果 と対 応

    して い る.

    5・4・2シ ス テ ム 効 率

    1.0

    oα8ハwc

    f-+0.6c

    ...

    0.4

    図71FSの 最 大 システム効率

    隔q● 画軸■一 ●■■閣曝 x1器o・5

    、、

    顧 、 、 、、 、

    イ£30.2

    、 、鴨 、 ■一

    一 鴨 一 一 軸 一圃

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    O.y

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    Pe竃5kPar

    -一 一一101.3kPa

    150 zoo

    ㌔ ゜C

    zso

    0.5t.o_z.a3.04.OP

    IMPa

    図81TSと1FSの 限 界 タ ー ビン 効 率 比

    (1)ηT,ηFの 影 響 .η7,ηFの 万欝 に 及 ぼ す 影

    響 を各 々 図10(a),(b)に 示 す.図10中 に は気 水 分 離

    器 出 口 の 乾 き度xfと 各 ター ビ ン の 占 め る 出 力 割 合 が

    示 さ れ て い る.ま ず 図10(a)はP1=0.5MPa,Pc=5

    kPa,ηF=0.8一 定 で ηT=0.0,0.3,0.6と 変 え た 場 合 の

    影 響 で あ る.η アの 増 大 と と も にT1,T2の 仕 事 量 が

    増 大 す るが,町 の 仕 事 量 は あ ま り減 少 しな い.こ れ は

    図10に 示 す よ う にxfす な わ ちFTへ 導 か れ る 蒸 気

    量 が ηTに よ っ て あ ま り変 化 し な い か らで あ る.つ ぎ

    に図10(b)の ηFに つ い て は ,加 に よ っ てFTは 比 例

    して 変 化 す る が,T1,T2の 仕 事 に変 化 が な い.

    (2)初 圧 の 影 響 復 水 器 内 圧 力5kPaに 対 し

    て,初 圧0.5,4.5MPaに つ い て2TSとTFの 関 係 を

    図11(a)に,初 圧0.5,1.5,4.5MPaに つ い て 万欝 と

    ¢1の 関 係 を図11(b)に 示 す.図11(a) ,(1))か らx,

    が0.1程 度 で はrJ2TSへ 及 ぼ す初 圧 の 影 響 は小 さ い が,

    必1が0.25か ら0.7の 範 囲 で は 前 者 の 場 合 よ り影 響 が

    大 きい.

    (3)復 水 器 圧 力 の 影 響 つ ぎ に 初 圧0.5MPa

    に 対 し て 復 水 器 圧 力Pc=5 ,20,101.3kPaに つ い て

    万27sとx,の 関 係 を図12(a),(b)に 示 す.図12(a),

    (b)か ら ヱ1=0.05で は2TSへ 及 ぼ す復 水 器 圧 力 の 影

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    1514 ト・一タル フ ロー ター ビンシス テムの熱力学 的検 討(第2報)

    響 は 小 さ い が,銑 が0.1か ら0.5の 範 囲 で 銑=0.05

    よ り復 水 器 圧 力 の 影 響 が 大 き くな る.

    5・4・32TSの 効 率 改 善 度2TSの1FSか ら の

    効 率 改 善 度 を4η=2TS,max‐TfiFS,tn。 。に よ っ て 評 価 す

    る.式(8),(11)か ら

    L,欝 臨ム 碍一⑥ η。+(② 一◎ 一⑪ 一勘 ⑧)η,

    f16)

    さ ら に両 辺 を② で 除 して 変 形 す る と

    夢 一一 馨+畢 ……(・7)こ こで⑭ と ητの 関係 を調 べ る とほ ぼ 比 例 関 係 に あ り,

    ∠η伽 の ⑰/η。に よ る 影 響 はo.5%以 下 な の で,右 辺

    は ητの 影 響 を無 視 で き る と考 え る.そ こで ηF!η7では

    な く,ηFの 関 数 と し て 、4別衡 の 結 果 を 図13(a),

    (b)に 示 す.図13(a),(b)か ら ∬1が 小 さ い ほ ど,η7

    が大 きい ほ ど シ ス テ ム効 率 の 増 大 が 大 きい.ま た シ ス

    テ ム 効 率 の 増 大 に対 して 銑 が 支 配 的 で あ る こ とが わ

    か る.ま た これ らの 図 か らP1,瓦,xz,ηFが 与 え られ れ

    ば,任 意 の ηTに 対 して 効 率 改 善 度 を 読 取 る こ とが で

    き る.た と え ばR=L5MPa,Pc=5kPa,ηF=・0.8,銑

    =0 .2の 場 合 図13か ら ∠η1η7=0.335,で あ り,ηTが

    0.4な ら4万=0.134す な わ ち13.4%の シ ス テ ム 効 率

    の 増 大 とな る.

    6.結 言

    二相流タービンを含むシステム,一 段 トータルフロ

    ーター ビンシステム(1TS)お よび二段 トータルフロ

    ーター ビンシステム(2TS)の 基本的特性をシステム

    入口で作動媒体が湿 り水蒸気の場合に対して一段 フラ

    ッシュター ビンシステム(1FS)と 関連させて明 らか

    にした.そ の要約はつぎのとお りである.

    (1)各 システムの有効仕事 をT-s線 図上で図示

    した.こ れからシステム効率を最大にする無次元最適

    中間温度を明 らかにした.特 に η71ηF≦0.5の範囲で1

    FSと2TSの 無次元最適中間温度 はほぼ等しくなる.

    (2)2TSは 入口湿 り水蒸気 と復水器内圧力の条

    件 によって高圧段の二相流タービンを設置しないほう

    がシステム効率が高い場合があ り,η7!rlFSO.5の 範囲

    でその条件は1FSの 入 口でフラ ッシュが不要な場合

    とほぼ一致する.

    {a)

    図10

    1.0一 サ1・ 。P1=° ・5瓢Pa

    8:琶 碧:SRPaO.1畿

    nT=o.3

    03

    多馨 難芸FLFha

    OOO与1心

    T*P

    (b)

    2TSに 対 する ター ビン効率 の影響

    (b)

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    トー タル フ ー-一ター ビ ンシステム の熱 力学的検 討(第2報)1515

    (a}

    Q5

    .

    (b)

    図122TSに 対する復水器圧力の影響

    (3)1TSが1FSよ り系全体 として高効率 にな

    る条件を図8に 示した.

    (4)2TSの1FSか らの システム効率改善度 を

    示し,こ れが二相流タービンの効率 と入口の湿 り水蒸

    気の乾 き度に主 に依存することを示した.

    図面作成に協力 していただいた大学院生 中村登志

    君,学 部生 木村宏君,お よび卒業生 吉 田直弘君,

    沢田知行君に感謝 します.

    (1)

    (2)

    (3)

    (4)

    文 献

    塚 倉 ヂ火 力 原 子 力 発 電,26-9(昭50),918.

    阿 部,機 誌.,..1(昭61),159.

    森 。陶 山,地 熱 エ ネ ル ギ 読 本,(昭60),129,オ ー ム 社.

    Austin,A.L.andLundeberg,A.W.,UCRL,50fl46-77

    (1978).

    (b)

    図132TSの1FSに 対 する効 率改 善度

    (5)House,P.A.,UCID,17902(1978).

    (6)Steidel,R.F.xほ か2名,Trans.ASME,IEng.Power,

    104-731(1982},231.

    (7)土 方 ・森,機 論,48-425,B(昭57),160.

    (8)赤 川 ・ほ か4名,機 論50-452,B(昭59),1159.

    (9)佐 藤 ・ほ か2名,機 論,51-464,B,(昭60),1225.

    (10)谷 口 。ほ か4名,機 論52-474,B(昭61),910.

    (11)House,P.A.,UCRL,52480(1978).

    (12)赤 川 ・ほ か3名,機 論,52-480B(昭61),3052.

    (13)相 川 ・川 口,火 力 原 子 力 発 電,26-9(昭50),967.

    (14)石 谷 編,熱 管 理 士 教 本(昭52),共 立 出 版.

    (15)日 本 機 械 学 会 編,1980SI日 本 機 械 学 会 蒸 気 表,(昭55),日

    本 機 械 学 会 。

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