消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線...

8
2 2 2 2 2 2 2 20 0 0 0 0 0 0 0 01 1 1 1 1 1 1 1 11 1 1 1 1 1 1 1 1 1. . . . .8 8 8 8 8 8 8 8 8 N N N N N N N N N No o o o o o o o o. . ナキウサギ photo by 大橋 晃 勤医協中央病院副院長 心臓血管センター長 鈴木 隆司 本年4月に勤医協中央病院の副院長を拝命いたしました。日頃、医療連携、特に病診連携の大切さを実 感しており、地域の医療について、いよいよ自ら真剣に目を向ける時が来たと思っております。当院では、 この4月に病棟を再編成し、疾患別センターを稼働させました。 (8ページをご参照下さい)最終型は 2013年の新病院オープン時になりますが、すっきりとした構造になり、医療内容の充実が図れると思っ ております。ご期待に添えるよう、一層努力して参ります。 さて、心臓血管センターの近況です。心臓血管外科の道井先生が着任されてはや10ヶ月がたちました。 心臓手術をしたご高齢の患者さんが次々と立ち上がって退院して行くのを見ると、心臓手術に対する認識 が変わります。豊富な経験に基づいた治療方針から、微妙なさじ加減まで、臨床の基本はやはり Experienced Based Medicineなのだと、今更ながら再認識させて頂いております。 特 集 勤医協 中央病院 消化器センター 治療の最前線 社団法人北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院・勤医協伏古10条クリニック

Transcript of 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線...

Page 1: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

222222220000000001111111111111111111.....888888888NNNNNNNNNNooooooooo..

ナキウサギ photo by 大橋 晃

勤医協中央病院副院長心臓血管センター長

鈴木 隆司

 本年4月に勤医協中央病院の副院長を拝命いたしました。日頃、医療連携、特に病診連携の大切さを実感しており、地域の医療について、いよいよ自ら真剣に目を向ける時が来たと思っております。当院では、この4月に病棟を再編成し、疾患別センターを稼働させました。(8ページをご参照下さい)最終型は2013年の新病院オープン時になりますが、すっきりとした構造になり、医療内容の充実が図れると思っております。ご期待に添えるよう、一層努力して参ります。 さて、心臓血管センターの近況です。心臓血管外科の道井先生が着任されてはや10ヶ月がたちました。心臓手術をしたご高齢の患者さんが次々と立ち上がって退院して行くのを見ると、心臓手術に対する認識が変わります。豊富な経験に基づいた治療方針から、微妙なさじ加減まで、臨床の基本はやはりExperienced Based Medicineなのだと、今更ながら再認識させて頂いております。

特 集 勤 医 協中央病院 消化器センター 治療の最前線

社団法人北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院・勤医協伏古10条クリニック

Page 2: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

勤医協中央病院消化器センターの紹介

消化器センター長 石後岡 正弘

当院での消化器疾患治療の最前線

 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と治療をすすめています。従ってこれまで以上に入院期間の短縮も可能となり患者様への負担も軽減できると考えています。 疾患に関しては、食道・胃・小腸・大腸などの消化管はもちろんのこと、肝臓・胆嚢・胆管・膵臓など消化器全般すべての疾患を扱っています。癌治療においては、内視鏡治療、腹腔鏡や胸腔鏡を使用した手術をはじめ、抗癌剤治療、焼灼治療、経動脈的治療など最先端の技術を駆使して治療にあたっています。急性腹症などの急性期疾患に関しては、24時間の救急体制により緊急手術をはじめとする緊急処置も対応しており、札幌市医師会の消化器二次救急当番病院に指定されています。 また、厚労省の臨床研修指定病院、日本病院機能評価機構認定病院として研修医をはじめ、多数の医療人の育成にも努めています。

1.急性腹症①急性虫垂炎 全身麻酔下での腹腔鏡下虫垂切除術を第一選択にしています。3ポート(12mm、5mm、5mm)で施行していま

すので術後の痛みの軽減や創も目立たない利点があり、術後2-4日で退院が可能です。さらに膿瘍形成や腹膜炎などの重症例に対しても24時間の外科救急体制にて緊急手術を施行しています。成人だけでなく小児にもおこなっています。②急性胆嚢炎 発症後4日以内であれば早期の手術治療をすすめています。腹腔鏡下胆嚢摘出術を第一選択にしています。4ポート(10mm、5mm、5mm、5mm)で施行していますので術後の痛みも軽く創も目立ちません。手術治療の成果は向上していますので術後4日程度で退院できます。また壊死性や穿孔性などの重症例は緊急手術可能です。胆管結石による胆管炎には、内科による内視鏡的胆管ドレナージ載石術や、外科による腹腔鏡下胆管切開載石術などの緊急処置にて救命に努めています。(写真1)③消化管穿孔(潰瘍、憩室など) 胃・十二指腸潰瘍穿孔に対しては、軽度であれば保存的治療を、中等度以上では腹腔鏡下大網充填術を施行しています。大腸憩室などによる下部消化管穿孔に対しても、症例により腹腔鏡下手術を選択しています。④腸閉塞 術後の癒着性イレウスや内ヘルニアに対しては腹腔鏡下手術も導入しています。絞扼性や壊死性など緊急を要する場合は前述の体制を敷いていますのでいつでも緊急手術が可能です。⑤そけい(大腿)ヘルニア嵌頓 用手的に環納が不能、イレウス状態では緊急手術を施行します。根治的にはtension freeな手術(UHS、クーゲルパッチなどのメッシュ状のシートを挿入し補強する)を選択しています。

2.癌治療①胃癌 粘膜内にとどまる早期癌に対しては、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行しています。この方法は1982年当院で開発導入したERHSE法が原型で、さらに1997年全身麻酔下でのS-ERHSE法に発展後、現在ではさまざまなデバイスの開発や手技的向上もあり、飛躍的に進歩しています。当センターでは、患者様外科医師チーム

はじめに

手術の最前線

写真1:腹腔鏡下胆嚢摘出術

2T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 3: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

の苦痛の軽減と安全性から長時間症例においては全身麻酔下での施行を選択し、さらに粘膜下層癌や潰瘍瘢痕並存、未分化癌など困難例に対しても積極的に施行しています。(写真2) 上記対象外の早期癌に対しては、腹腔鏡下胃切除術(LAG)を選択しています。本術式に関しても1999年より導入し積極的に施行しています。 進行癌での胃全摘術では、膵臓温存脾摘を原則とした2群リンパ節郭清(D2)を施行しています。術後補助化学療法は、進行度ⅢやⅡの一部症例に対してS-1の内服を第一選択としています。非治癒切除や再発例に対してもS-1+CDDPを基本とした化学療法を外来化学療法室を中心に積極的に施行しています。②大腸癌 小さなポリープや粘膜癌に対しては内視鏡的粘膜切除術(ポリペクトミー、EMR)を施行しています。最近では、広範囲病変や粘膜下層癌に対して先進医療として内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に施行し良好な成績を得ています。(写真3)

 外科手術においては、早くから腹腔鏡下手術を導入し、現在では進行度Ⅲの進行癌でも腹腔鏡下手術を選択しています。また下部直腸癌へも適応を拡げています。さらに根治性を損なわず神経温存や肛門温存など機能温存に配慮した術式を選択しています。非治癒切除や再発例には、化学療法としてFOLFIRIやFOLFOXを第一選択とし、分子標的治療薬である、ベバシズマブやセツキシマブ、パニツムマブを加えたレジメンを積極的に施行し予後向上に努めています。③肝臓癌 急性・慢性肝炎や肝硬変は内科で診断治療しています。癌に対しては、内科においてはエタノール注入療法(PEIT)、焼灼療法(RFA;ラジオ波焼灼)、動注塞栓療法(TAI、TAE)を積極的に施行し

写真2:胃ESDの内視鏡所見

消化器外科きらきらナース

消化器内科はつらつナース

写真3:大腸ESDの内視鏡所見

写真4:腹腔鏡下肝部分切除術

消化器外科病棟 消化器内科病棟

3T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 4: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

学会所属・認定施設

日本内科学会日本消化器病学会日本肝臓学会日本消化器内視鏡学会日本大腸肛門病学会日本消化器がん検診学会日本門脈圧亢進症学会日本静脈経腸栄養学会日本食道学会日本胃癌学会

日本大腸癌研究会日本がん治療認定医機構日本外科学会日本消化器外科学会日本胸部外科学会日本肝胆膵外科学会日本内視鏡外科学会日本臨床外科学会日本気管食道科学会日本ストーマ・排泄学会 他

スタッフ紹介

センター長:石後岡正弘(外科副科長)副センター長:森園竜太郎(内科医長)

河島秀昭(副院長、外科)樫山基矢(外科副科長)高梨節二(外科医長)吉田信(外科医長)関川小百合(外科)

古山準一(内科医長)高木秀雄(内科)森田康太郎(内科)後藤哲(内科)

消化器センター医師全員でのカンファランス

ています。外科においては系統的肝切除術を第一選択としています。部位により腹腔鏡下肝切除術も適応としています。また高度肝障害例では腹腔鏡下RFAも選択しています。大腸癌などの転移性肝癌に対しても、切除可能例では積極的に外科切除を選択しています。(写真4)④胆道癌 肝内胆管癌、肝門部胆管癌、胆管癌、胆嚢癌では、切除可能症例に対しては積極的に根治手術を選択しています。広範囲胆管癌には肝切除+膵頭十二指腸切除術(HPD)も施行しています。また大量肝切除予定症例には術後の肝機能維持と安全性を考慮して術前に門脈塞栓術を施行しています。⑤膵臓癌 遠隔転移のない切除可能症例には、膵頭十二指腸切除術(PD)+血管合併切除などの根治切除術を積極的に選択しています。また術後の補助化学療法としてS-1+GEMを外来化学療法室にて施行しています。⑥食道癌 粘膜癌には、EMRを選択していますが、最近では適応を拡大し施行しています。手術例には胸腔鏡補助下手術を選択し、根治性と手術侵襲の軽減に努めています。⑦その他 炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎など)や肛門疾患(痔核、裂肛、痔ろう、直腸脱など)に対しても積極的に治療を施行しています。副腎や腎などの後腹膜臓器の腫瘍に対しても外科で鏡視下切除を積極的に施行しています。

 当院では1975年の開院以来、勤医協綱領に基づき「いつでも、どこでも、だれもが安心してかかれる」無差別・平等の医療の実践をめざしてきました。現在では無料・低

おわりに

函館出身、函館中部高卒、1985年弘前大学医学部卒。卒業してすぐに勤医協中央病院外科に就職しました。これまでに全道に広がる勤医協の関連病院、診療所をはじめ、慶應義塾大学病院への国内留学を経験してきました。専門は消化器外科、特に食道・胃外科です。現在も仕事を中心とした日々を送っていますが、週末には子供の少年野球チームのお手伝いや応援などに時間を費やしています。

プロフィール

石後岡正弘(いしごおかまさひろ)

額診療制度があり差額ベッド料をとらない数少ない病院です。従って、経済的にも安心で、良質で安全な医療を、すべての消化器疾患患者様に前述のような診断と治療を享受していただけます。ICUや透析施設も有し、麻酔科医も多数常勤していますので、内科的な併存症や重篤な病態でも手術治療ができる体制をとっております。さらに専門医師のみならず看護師などさまざまな医療スタッフがチームとして治療に全力で取り組んでいます。 消化器センターは、地域の中核病院として、札幌市東区、北区、白石区の医療機関をはじめ、連携医療機関様や地域住民の方々との協力・支援をいただきながら進めて参りたいと存じます。 今後とも宜しく御願い申し上げます。

4T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 5: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

身麻酔下行っています。これにより長時間鎮静に伴う誤嚥や肺炎などの合併症の予防、鎮静が不十分な事による苦痛を取り除く事を可能にしています。【最近の工夫】 S-ERHSEは、以前は2チャンネルの内視鏡(1本の内視鏡に2つの鉗子口があり、2種類の器具を出す事ができる)で行っていましたが、剥離を行う時に切開する場所の視野を十分に確保する事が困難な時がありました(写真1)。

 これを改善する為に、現在では通常の内視鏡に経鼻内視鏡を併用した、S-ERHSEを行っています(無論全身麻酔下です)(写真2)。

 また病変部位によっては内視鏡の先端に透明フード(写真3)を装着して、病変の中に潜り込んで剥離したり(写真4)、切開する電気メスも以前の針状メスから、先端が丸くて穿孔の危険の少ないメス(写真5)を使用して治療を行っています。

 早期胃癌の内視鏡治療は、約40年前にポリープを対象にしたポリペクトミーに始まり、1980年代に入って根治度の評価が行える方法として、内視鏡的粘膜切除術が登場しました。当院では1982年に内視鏡的粘膜切除(ERHSE)を開発し、現在までに900件近い治療を行っています。この治療法は外科治療と比較して、より少ない侵襲で早期胃癌を治療する手技として普及していきました。【何処まで内視鏡的に治療が可能なのか】 胃癌治療ガイドラインによると、  『2cm以下の肉眼的粘膜癌と診断され、組織型が分化型の病変。肉眼型は問わないが、陥凹型では潰瘍が無いものに限る』 とされています。当院ではERHSE開発当初より、『病変の大きさは問わない』として治療を行ってきました。これは当院で過去に行われた膨大な胃癌の外科手術症例を調べた結果、分化型で潰瘍を伴わない粘膜癌には、リンパ節転移が無い事が解っていたからです。 現在では国立がんセンターと癌研究会付属病院の手術症例の検討により、①粘膜癌、②分化型癌、③併存潰瘍が無い、③'併存潰瘍のある場合の癌は大きさが3cm以内である事、この①②③、もしくは①②③'の条件を満たすものが、局所治療で根治可能であると考えられています。現在全国の限られた施設では、病変の大きさを問わずに内視鏡治療を行っていますが、当時の問題点としては、大きな病変や曲面上にある病変の一括切除が困難であった事です。

【S-ERHSEの登場】 上記問題を克服する為に、当院では1997年より粘膜下層を剥離して病変を切除する、S-ERHSEを考案しました。これにより技術的に困難であった2cm以上の病変の一括切除も可能となりました。なお当院では、S-ERHSEを原則全

消化器副センター長

森園 竜太郎

早期胃癌に対する内視鏡治療

写真1:1本の内視鏡で病変の把持と剥離を行うため剥離面が見づらい

写真5:フラッシュナイフ写真4

写真2:経鼻内視鏡で病変を把持し 通常の内視鏡で病変を剥離している

写真3

5T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 6: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

 孤立性胃(胃底部)静脈瘤の治療法としてのバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(balloon-occluded retrograde transvenous obliteration;B-RTO)は、1991年当院の金川らによって開発され、その優れた静脈瘤廃絶効果から、その有用性は現在本邦において広く認知されています。その当院での肝臓分野の医療を継続・発展すべく日夜努力しています。 私たちの病棟では、毎朝、肝臓疾患に限らず、個々の症

消化器内科医長

古山 準一

勤医協中央病院「医療・福祉宣言(理念)」2003年1月31日作成  2007年8月2日改訂

 私たち勤医協中央病院は、地域の人々に支えられ、この地域になくてはならない病院として発展していくことを目指し、ここに「勤医協中央病院 医療・福祉宣言」を発表し、「勤医協綱領」に基づき、その実現に努めます。

1.安全・安心で納得のいく医療・福祉をすすめます。2. 地域・友の会とともに健康で住みやすいまちづくりをめざします。3.互いに学び成長する職場・病院づくりに努力します。

【基本方針】1) 東区の地域に根ざして、患者さんの要求に応え、急性期医療を中心に保健予防から在宅医療まで総合的に医療・福祉を担う地域中核病院として発展していきます。

2) 患者さんとの信頼関係を大切にしながら、より良質で安全な、そして安心できる医療を「共同の営み」として提供できる病院をめざします。

3) 臨床研修病院として、民主的な集団医療の実践をめざし、人間としての尊厳および権利を尊重できる医療人を育成します。

4) 子供から高齢者まで安心して住みつづけられるまちづくり、憲法と平和が守られる国づくり、医療改善の運動をすすめます。

5) 勤医協綱領に基づき「いつでも、どこでも、だれもが安心してかかれる」無差別平等の医療の実践をめざします。

例に関して、検査・治療の現状・方針をディスカッションし、情報の共有および最善の治療を行えるように努めています。また、外科的治療の適応に関しては、外科とのカンファランスを行い決定しています。「消化器病センター」に移行する事により、更に、診断・治療がより良くスムーズな流れとなると考えています。 肝細胞癌に関して、慢性肝疾患の定期検査は、超音波検査・造影CT検査・造影MRI(Gd-EOB-DTPA)検査にて行っています。肝細胞癌が認められた時の治療方針は、『科学的根拠に基づく肝癌診療ガイドライン』の診療アルゴリズムで指標とされている「肝障害度」「腫瘍数」「腫瘍径」に加え、「癌の悪性度(転移のしやすさ、再発のしやすさ)」、および「癌の存在部位(肝表面か深部か)」などを考慮して決定しています。例えば、癌の存在部位が肝表面の時は、ラジオ波焼灼術(RFA)では癌細胞が周辺臓器へ飛び散る危険性が高いため肝切除術を優先し、癌の存在部位が深部の時には、外科的治療では侵襲が大きすぎるためにRFAを優先しています。 局所治療(外科的肝切除・経皮的局所治療)が可能な癌に対しては、まず、血管造影(経動脈性門脈造影、腹腔動脈・肝動脈造影)を行います。必要な場合は、動脈造影下CT(経動脈性門脈造影下CT(CTAP)、肝動脈造影下CT(CTHA))

消化器内科 定例朝カンファランス RVSを使用して癌を検索

【治療成績と偶発症】 当院で行われたERHSE又はS-ERHSEの治癒切除率は95%を超え、治癒切除と判断された症例の再発率は0%です(非治癒切除と判断された症例に対しては、外科切除又は厳重な経過観察を行っています)。2010年度の内視鏡治療による偶発症は穿孔が2.8%、後出血が8.3%でした。いずれも保存的治療や内視鏡的止血にて治癒しています。

肝細胞癌治療の現状

6T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 7: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

1994年旭川医科大学卒業。卒後勤医協中央病院にて初期研修を行い、釧路、北見、余市、旭川にて勤務した後に、再び勤医協中央病院での勤務となり現在に至る。専門は主に消化管(内科)。後継者育成とワークライフバランスに知恵をしぼる毎日を過ごしている。

プロフィール

森園竜太郎(もりぞのりゅうたろう)

1988年 旭川医科大学卒業。大学時代は、バスケット部所属。専門は肝臓。肥満解消に1994年に始めたジョギングを、ほぼ毎朝2km、現在も継続中。今ではそのジョギングが、病棟からのコールなどで出来ないと、一日中体の調子が悪く感じてしまう。最近は「山登り」も行っている。でも時間と体力の限界から、「モイワ山」がほとんどです。

プロフィール

古山準一(こやまじゅんいち)

2013年春勤医協中央病院は新築移転します 2013年春の移転・開院に向けて、今年5月連休明けより本工事が着工となりました。 建設地の様子もだいぶにぎやかとなりましたが、近隣の皆様のご理解とご協力も賜り、276本の杭工事も終了し、現在は基礎をつくるために地面を掘削しての工事がさかんに行われています。一方、院内では工事の進捗状況に合わせて、部門毎に建築図面の最終チェックを設計者とすすめており、図面との「にらめっこ」。最後の確認作業ということもあり、職員の働き方や、患者さんの動線、物の配置、コンセントの種類や数、位置や高さに至るまで、1つ1つをイメージしながら確認作業をすすめています。 年内は2階部分までの躯体ができる計画です。今秋には病室のモデルルームをつくり、実際に検証しながら確認作業も行う予定です。工期は21ヶ月間、長いようであっという間の準備期間となりそうです。

新住所 札幌市東区東苗穂5条1丁目

を施行し、その結節が癌か否か、他部位の肝細胞癌の拾い上げを行います。引き続き、基本的にLipiodolを使用した肝動脈化学療法、肝動脈化学塞栓療法を施行します。Lipiodolを癌に貯留させておく事によって、その後施行される経皮的局所治療の効果判定に非常に有用となります。また、後述の超音波検査にて描出できない癌に対して、内科的治療として最後の手段となるCTガイド下局所治療のメルクマールとしても非常に大切なものとなります。 多発性病変に対してはリザーバー肝動注化学療法を行っていましたが、最近では2009年に日本でも切除不能肝細胞癌に対して適応追加がされたソラフェニブ(ネクサバール®)による治療も行っています。 経皮的局所治療として、当院では、ラジオ波焼灼術(RFA)を中心に、エタノール注入療法(PEIT)を行っています。これらの治療は、超音波検査で癌を描出できないと安全で

確実に施行ができません。超音波の死角に対しては、人工胸水などで対処しています。最近では、CT、MRIの精度が向上し、肝細胞癌が小さい状態でも指摘される事が多くなり、それらは通常の超音波検査では描出できない事も多くあります。この様な場合には、造影エコー(ソナゾイド)検査、CT画像を取り込んだリアルタイムバーチャルソノグラフィー(RVS)、そして、前述のCTガイド下穿刺などの方法で局所治療を行っています。RVSは、今みえている超音波画像と同調するCT画像が映し出される装置で、治療すべき結節の位置を確認するのに有用であり、これを参考に局所治療を行っています。 今後は、肝細胞癌の治療時以外の日常の管理をお願いできる開業医の先生方や、地域病院の先生との連携を図りながら、肝細胞癌患者さんの生命予後やQOLの改善を図っていけたらと考えています。

7T A M A N E G I T S U U S H I N

Page 8: 消化器センター 治療の最前線 · 消化器疾患治療の最前線 消化器センターでは、内科と外科の垣根のない連携の強 化により、患者様の立場に立って効率的で合理的な診断と

[発行責任者] 勤医協中央病院事務長 村口一耕

www.kin-ikyo-chuo.jp

●〒007-8505 札幌市東区伏古10条2丁目15-1 TEL.011-782-9111 FAX.011-781-0680●〒007-0870 札幌市東区伏古10条3丁目2-8 TEL.011-786-5588 FAX.011-782-3428●〒007-0870 札幌市東区伏古10条2丁目14-16 水島ビル2階 TEL.011-789-6100 FAX.011-787-0750●E-mail:[email protected] TEL.011-787-7037 FAX.011-784-2735

勤医協中央病院

勤医協伏古10条クリニック

勤医協メンタルクリニック東

勤医協中央病院 医療連携室携帯はこちらから

本誌は再生紙および植物油インキを使用しています。

サンワドー

勤医協伏古10条クリニック

東在宅総合センター

新道ひまわり薬局勤医協札幌ふしこ歯科診療所

ひまわり薬局

勤医協メンタルクリニック東

セブンイレブン

びっくりドンキー

回転寿しトリトン

北ガスジェネックスBigBoy

宮の森北24条通

札樽自動車道 伏古IC

札幌新道

苗穂通

コープさっぽろ勤医協中央病院

202020202020202001111111111.8.88.88888

00000011111111888888888No.No.N

表紙の写真 ナキウサギは、北海道の大雪山系や日高山脈などの冷涼な地に棲む、「氷河期の生き残り」と言われる動物です。かって士幌高原道路の開発でその生息地が脅かされそうになった時、道議会でストップをかけるため論陣を張りました。その調査のため何度も然別湖周辺を訪れましたが、愛くるしい中にもどこか哲学者然とした姿にすっかり虜になりました。道路計画はストップされ、ナキウサギを守ることができましたが、その後はあまり会いに行く機会がなくなりました。今年は何年ぶりかでまた会いに行こうと思っています。ナキウサギ 名誉院長 大橋 晃

ヒロシマ、ナガサキ、フクシマ……8月には忘れてはならない悲しい出来事があるが、残念ながら今年はさらに増えた。2年前に講習会で初めて福島を訪れた。東北や東京は何度も行っているが福島は初めて。札幌から行くにはなんともアクセスの悪い場所だったが、福島空港が開港され改善された直後だった。特産物がたくさんありお土産には困らなかった。そんなほのぼのとしたところが一躍有名になってしまい残念でならない。医療に携わるものとして、はっきりNOと声をあげなければならない時だろう。

編 集 後 記

4月 疾患別センター 開始しました 2011年4月、勤医協中央病院は、その医療内容と教育機能の向上をめざして病棟改編を行いました。新たに誕生した各疾患センターでは、外科系・内科系を問わず、入院患者受け入れを行い、各科の総力で一層質の高い診療と研修を提供していこうと考えています。 各センターはそれぞれ独自に医療内容の発信や連携の推進といった役割を担い、それが可能となるよう整備を進めていく所存です。わたしたちは、「急性期の医療、がん診療、専門的医療を提供し、連携と共同を広げながら、まちづくりに貢献できる病院」をめざして、地域の皆様のお役に立てる病院づくりを進めて参ります。地域の医療、福祉関係者の皆様には、今後とも

忌憚のない御指導・御鞭撻をいただきたく、宜しくお願い申し上げます。 また、診断未確定の事例や多臓器不全への対応は救急診療部や総合診療センターで従来通り行いますので、御活用いただければ幸甚です。 高齢化社会、貧困と格差の拡大、そして東日本大震災による未曾有の被害といった困難な時代ではありますが、地域の皆様とともに、国民皆保険を守り、よりよい医療が実現できるように尽力して参りますので、どうぞ今後ともよろしくお願い申し上げます。

院長 田村裕昭

4月からの病棟編成●3階東 呼吸器センター、乳腺センター●3階西 消化器センター●4階東 運動器・リウマチセンター

●4階西 消化器センター●5階東 心臓血管センター●5階西 総合診療センター

●6階 回復期リハビリ病棟●7階 ホスピスケアセンター●8階 糖尿病内分泌・腎臓病センター

8T A M A N E G I T S U U S H I N