原子力の地震リスクマネジメント...

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東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 高田毅士 原子力の地震リスクマネジメント について 日本原子力学会 断層の活動性と工学的なリスク評価 2015.10.20

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東京大学大学院工学系研究科建築学専攻

高田毅士

原子力の地震リスクマネジメント について

日本原子力学会 断層の活動性と工学的なリスク評価 2015.10.20

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発表概要

1. 福島事故後の原子力界に対して思うこと

2. 最近の高田研の研究紹介

3. リスク論に基づく原子力安全確保の考え方

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最近の原子力界に対して思うこと

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リスク論の必要性

1リスクマネジメントの正しい理解の必要性

R=PC Pのみ、あるいは、Cのみの議論では不十分。

リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いは?

2リスク論的思考から見えてくるもの

・「絶対安全論至上主義」から生じるいろいろな不条理 →リスク論で解決できるものも多い。工学とリスク論

・トータルシステム、トータルプロセスとしての安全確保の概念

(細分化され全体が見えにくい状態の回避)

→ トータルシステム→プラントの俯瞰的・総合的挙動評価

→ トータルプロセス→関連分野を串刺しにした安全性の定量化

R= Hazard × Vulnerability × Exposure

→ 分野を超えた一貫性の確保、工学的説明性の向上にも有効、リスコミも含

→ 安全かどうかでなくて、どれぐらい安全かの議論にすべし

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「安全」であることの言い方

3「安全」の表し方

安全とは、

受け入れ不可能なリスクが存在しないこと(ISO/IEC GUIDE 51:1990)

freedom from unacceptable risk

許容できないリスクがないこと(ISO/IEC GUIDE 51:2014)freedom from risk which is not tolerable

「~のないこと」の表現→ 悪魔の証明

「起きないこと」や「存在しないこと」を証明することは困難。「ある(存在する、起きる)」ことを証明するためには一例を挙げれば良いだけなのですが、「ない(存在しない、起きない)」ことを証明するためには、全てを調べ尽くさなければならず、それは不可能に近い。

「~のないこと」で安全を定義するよりも、「こうありたい状態」で定義することのほうがより積極的かつ前向きな表現(北村談)

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工学の責任

4福島原発事故について

耐震設計審査指針(2006)における「残余のリスク」の評価、なにも実施されていない。

→ やっておけば福島事故は軽減できたかも。

リスク概念で福島事故を未然に防げたか?

→ NO. もともと知識の不十分な領域の自然現象

→ しかし、事故の緩和には役に立ったと考えられる。

理学(Science) と工学(Engineering)の立場の違いから生じる誤解?

→ 工学がもっと安全確保に責任を持つべき

→ 理学に安全と言わせてきたか

科学の問題から工学の問題であることの認識が必要

→ 安全性、経済性、機能性のトレードオフの問題であることの認識へのパラダイムシフト。工学的意思決定とは?

トランスサイエンスの問題。

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電力、政府、規制局、学術界に対する信頼の失墜 なかでも、学術者・技術者に対する不信 学術的な問題に対して、原子力推進派の専門家と慎重派の専門家の意見の対立 地震や津波などの自然現象は、データが少ない、実験ができない、例外が多いなどの理由で、複雑で不確実である。このような場合には、専門家の意見が極めて重要な影響を与える。 ↓ いろいろな学説、解釈が存在しうる。 → 対象とする問題が、どれだけ分かってどれだけ不確実であるかを明確にする

ことが必要、それには幅広い専門分野からの意見を収集することが必要 できるだけ純粋科学的、多面的に対象問題を明らかにする必要 そして、予め合意された意思決定法に従って、ものをきめてゆくことになる

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科学者・専門家の役割

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安全審査・信頼回復

(その後の安全審査について)

・規制におけるリスク概念の欠如→リスク概念の導入は原子力発電を保有する国としての責務。工学(適正なリスクレベルにする技術)そのものの理解が必要

・安全審査について、「透明性」と「公開性」に加え、さらに「説明性」の向上が必要。

・技術的、本質的な議論の整理、311を踏まえた現行指針の点検が必要

・既存炉の再稼働の議論とは別に、腰を据えた科学的・工学的対応が今必要

(信頼回復のために)

・信用(信頼)回復のために何をすべきか? 科学者、工学者、規制、電力、政府、自治体、公衆、マスコミなど各々が考える必要有。

・原子力発電に関わる課題の整理が必要。理学の課題、工学の課題、経済の課題、社会の課題、政治の課題、世界的な課題、現在は全てが交錯してしまっている。問題の所在の明確化、整理が必要、少なくとも工学の問題は?

・我が国に定着していない安全思想←外来語による概念ばかり(リスク、バックチェック、バックフィット、ストレステスト、クリフエッジ、レジリエンス、DID等々)→原子力界では安全確保も借り物のままか?

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最近の高田研の研究紹介

(1)原発裁判の判決内容分析(2014卒論)

(2)不信の要因分析(2014修論)

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原発裁判における判決に至る論理分析

訴訟名 判決年 原告 被告 判決

志賀原発2号機建設差止訴訟第1審 2006 住民 北陸電力 住民側勝訴

志賀原発2号機建設差止訴訟第2審 2009 北陸電力 住民 住民側敗訴

大飯原発3、4号機運転差止訴訟第1審 2014 住民 関西電力 住民側勝訴

○本研究で対象とする判例

【設計段階】 ・耐震基準

・耐力想定

【審査】 ・司法審査の問題

・審査体制の不備

【住民の被害】 ・事故想定の規模

・被ばく想定

【事故対応】 ・イベントツリー

・人的ミスの考慮

【原発訴訟における主な争点】 【志賀原発1審・大飯原発1審】

“基準となる地震動の過小評価” を主な根拠とする判決。

(その他の論点についても議論は行われているが、主たる判決の根拠にはなっていない。)

菊池豪(2015)、東京大学卒業論文より抜粋

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不確定性の存在を主な根拠とする論理

【住民の主張】

地震加速度として過去最大の4022ガル(岩手県)を想定すべきである。

【関西電力の主張】 地域差を考慮した検討により、地震加速度を1260

ガルと想定した。

【判決根拠】 1260ガルを超える地震加速度が大飯原発に到来しないという科学的根拠に基づく確実な想定は不可能である。

(例)【大飯原発1審】想定すべき地震加速度

【前提事実】 過去、想定を超える地震動が原子炉を襲ったことがある。

【判断】 基準値を超える地震動が大飯原発を襲う危険性がある。

想定が確実でないから受け入れられない

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人命の喪失と技術

【一般原則】 技術が含むリスクと、技術がもたらす利益を比較

【志賀原発1審・2審】 「リスク」=

住民が一定以上被ばくすること

【大飯原発】 「リスク」=

住民が命を落とすこと

技術は人命よりも劣位に立つものである。(人格権)

より合理的な意思決定につなげるには?

大飯原発においては「住民が命を落とすこと」と「原発がもたらす利益」が比較されている。

技術と人命の喪失を単純に比較するという論理自体がどうか?

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アンケート調査

• 誰の

• 何に

• どれくらい

不信を感じたかを分析

することで、不信を規定する因子を同定するというミクロ的視点

新聞報道分析

不信形成に関わる報道量の推移を分析することで、国民の不信が時系列的にどのように形成されていったかを調べるマクロ的視点

目的:原発に関する不信が発生する原因の同定

手法:

研究の目的と概要

福田佳彰(2015.3) 修士論文「福島原発事故における不信の規定因の同定」より

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アンケート内容

○原発事故前後の賛成反対(賛成→反対など)

○リスク管理者(政府・首相・東京電力・保安院・専門家)に対する不信度(「信頼していた」~「不信を感じていた」の5段階)

○不信事象に関する不信度(「非常に不信を感じた」~「全く不信を感じなかった」の5段階)

例:政府の「直ちに影響はない」という発言

例:首相が事故直後に福島第一原発を視察したこと

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アンケート調査

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アンケート調査

アンケート実施条件

0

20

40

60

80

100

10代 20代 30代 40代 50超

アンケートの題名 福島原発事故に関わる不信形成

対象者

性別 男女

年齢 10代~80代

地域 全国

人数 400人

期間 2014年12月18日

実施者情報の開示 なし

回答者への報酬 ポイント付与

回答者への結果開示 なし

回答方法 スマートフォン(iOS+Android)

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設問内容 第一因子 第二因子 第三因子 第四因子 第五因子

A35 九州電力が原発再稼動に関する説明会で「やらせ」を行ったことについて

0.939 -0.134 -0.134 -0.022 0.116

A34 洗えば大丈夫といっていたほうれん草が、洗った後も基準値を超えていたことについて

0.755 -0.005 0.089 -0.079 0.043

A23 東電の津波への対策について 0.702 -0.031 0.089 0.035 -0.068

A14 原発事故のレベルが日毎に高くなっていったことについて

0.648 -0.272 0.31 0.179 0.043

A13 東電が事故の進行状況を適切に説明しなかったことについて

0.642 -0.283 0.257 0.293 0.002

A24 「想定外」という言葉による釈明について 0.576 0.169 0.05 -0.029 -0.02

A26 事故対応にあたり海外の協力を断ったことについて 0.548 -0.006 0.083 0.064 0.017

A36 東電社員ではなく、下請け・孫請けの社員が実質的な作業をしていることについて

0.543 0.115 0.12 -0.034 -0.013

A27 放射線の人体への影響の被曝限度の説明について 0.538 0.148 0.083 0.117 -0.098

A19 専門家が東電から研究費を受け取っていたことについて 0.482 0.127 0.068 0.067 -0.032

A22 東電の清水社長が事故3週後に入院したことについて 0.459 0.239 0.055 0.043 0.03

A25 福島原発の廃炉を回避するために海水注入が遅れたのではないかという報道について

0.437 0.177 0.043 0.091 0.066

A31 東電社長が被災地を回って謝罪したことについて -0.183 0.728 -0.015 0.11 0.053

A30 首相が事故直後に福島第一原発を視察したことについて -0.035 0.641 -0.079 -0.022 0.21

A32 事故後の計画停電が、「原発がなくなると不便になる」というアピールのように感じて

0.314 0.575 -0.184 0.01 -0.159

A18 原発にヘリによる注水を行ったことについて -0.078 0.427 0.178 0.041 -0.019

A20 避難指示を出したことで、移送中の病院患者が亡くなったことについて

0.231 0.09 0.554 -0.175 -0.001

A12 東電が安全性をPRしていたホームページが事故後に削除されていたことについて

0.337 -0.12 0.448 0.205 0.081

A15 政府が周辺住民に「自主避難」を指示したことについて 0.212 0.165 0.372 0.056 0.078

A9 政府によるSPEEDIのデータ公表が遅れたことについて 0.291 0.047 -0.081 0.652 0.008

A10 政府によって「メルトダウン」発言をした保安院審議官が更迭されたことについて

0.164 0.242 -0.151 0.52 0.079

A8 新聞による過大報道について 0.163 0.068 -0.107 0.227 0.433

A28 首相が2011年5月、唐突に浜岡原発停止の要請をしたことについて

0.057 0.314 0.349 -0.171 0.414

信頼性係数α 0.919 0.743 0.704 0.677 0.623

アンケート調査結果の分析

結果分析

因子分析(最尤法・

プロマックス回転)

5つの因子が抽出され

それぞれ、

①利己性因子

②アピール因子

③無責任因子

④隠蔽因子

⑤過剰反応因子

と不信の5つの規定因

を特定

不信事象の因子負荷量

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新聞報道分析

目的:不信形成に関わる報道量の推移を分析することで、国民の不信が時系列的にどのように形成されたかを調べる。

手法:ヨミダス歴史館(読売新聞記事データベース)を利用し、原発事故に関して信頼の欠如や不信形成に関わる記事を抽出し、それらの記事の報道量・内容を分析することで、国民の不信が時系列的にどのように形成されていったのかを分析する。

利己性 (想定外ORやらせOR保身OR利己) AND 原発

アピール ((社長 AND 謝罪) OR (首相 AND 視察) OR 安全 OR

計画停電) AND 原発 AND アピール

無責任 (自主避難 OR 対策不足) AND 原発

隠蔽 (SPEEDI OR メルトダウン ) AND (情報 OR 公表)AND

(隠蔽 OR 遅れ)AND 原発

過剰反応 (メディアOR原発停止OR反原発デモOR危険)AND

(過剰OR過敏ORアレルギー) AND 原発

不信規定因に関わる記事の抽出に用いた検索式

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新聞報道分析

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研究のまとめ

原発裁判の判決文の分析より

① 不確定性を持つ技術に対し、不確定性を持つことを根拠として、技術を否定するという論理展開。

②「技術は人命よりも劣位に立つものである。(人格権の主張)」という考え方?

不信の規定因の分析結果より

一般国民は、原子力関係者の以下の行動、言動等の中で以下の要因によ

り「不信」を抱く傾向がある。

①利己性因子、②アピール因子、③無責任因子、④隠蔽因子

⑤過剰反応因子

全体的に利己性因子とアピール因子に関わる報道が多い

事故初期は利己性因子に関わる報道量が多いが、事故後2年を経過するとアピール因子に関わる報道量が増える傾向有

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リスク論に基づく原子力確保

の考え方

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新規制基準の基本的考え方(2014.2)と課題

①「深層防護」の徹底

目的達成に有効な複数の(多層の)対策を用意し、かつ、それぞれの層の対策を考えるとき、他の層での対策に期待しない。

② 共通要因故障をもたらす自然現象等に係る想定の大幅な引き上げとそれに

対する防護対策を強化、地震・津波の評価の厳格化、津波浸水対策の導入、多様性・独立性を十分に配慮、火山・竜巻・森林火災の評価も厳格化

③ 自然現象以外の共通要因故障を引き起こす事象への対策を強化

火災防護対策の強化・徹底、内部溢水対策の導入、停電対策の強化(電源強化)

④ 基準では必要な「性能」を規定(性能要求) 基準を満たすための具体策は事業者が施設の特性に応じて選択

課題

1)どのように「深層防護」を実施するか? 設計ーAM対策ー防災のバランス

2)リスク論への転換の必要性 ⇒ 「残余のリスク」の評価の重要性

3)安全目標が示されていないこと ⇒ PRAの実施の必要性

4)現実的に対応可能な技術が排除されてしまっていること ⇒多様な安全確保の受入

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リスクベーストか、リスクインフォームドか?

■ リスクに基づく安全設計と評価 (risk-based safety assessment and design)

■ リスク情報活用した安全設計と評価 (risk-informed safety assessment and

design)

G. Apostolakis の発表資料(2014.2)より抜粋

Traditional “Deterministic”

Approach

• Unquantified probabilities

•Design-basis accidents

•Defense in depth and safety

margins

•Can impose unnecessary

regulatory burden

•Incomplete

Risk-Based

Approach

• Quantified probabilities

•Thousands of accident

sequences

•Realistic

•Incomplete

Risk-Informed

Approach

•Combination of

traditional and risk-

based approaches

through a

deliberative

process

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リスクマネジメントの目的

地震・津波を受ける原子力発電所のリスクを計量し、社会が受容できる水準と照らして、発電所を利用するかどうかの意思決定を行うため。

• 定性的目標から定量的目標へのより高い議論へ(安全かどうかでなくて、どれ

くらい安全か?)

• 「絶対安全論至上主義」から生じるいろいろな不条理の解消

• 「トータルシステム」→細分化され全体が見えにくい状態の回避、

• プラントの総合的挙動評価(ロバスト性確保)、マルチハザードへの適切な対

応の実現

• 「トータルプロセス」→関連分野を串刺しにした安全性の総合的定量化の実現

(分野を超えた安全確保の思想の一貫性の確保)

• 異分野連携のツールとして、工学的説明性の向上

• 科学技術と社会との接点をつなぐ役割(リスコミ)として

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多段階リスクマネジメントのスキーム

リスク低減領域

リスク保有領域

被害規模

C

発生確率

P

高確率

低確率

被害小 被害大

リスク一定曲線

(R=PC)

R=P×C

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対応領域I

対応領域II

対応領域III

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設計-AM対策-防災-リスク評価の領域

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地震工学会 「耐津波工学の体系化(2015.3)」報告書より抜粋

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発表のまとめ

1. 福島事故後の原子力界に対して思うこと

リスク論、工学、科学の役割、信頼回復

2. 最近の高田研の研究紹介

原発裁判の論理分析、不信の要因分析

3. リスク論に基づく原子力安全確保の考え方

分野横断の活動、地震工学会の耐津波工学の活動

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