東日本大震災による災害廃棄物受入れに伴う 秋田県内の環境...

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<報 文> 東日本大震災による災害廃棄物受入れに伴う 秋田県内の環境放射能調査結果について ** ・玉 ** ・菅 ** ** ・高 ** ・高 ** キーワード ①東日本大震災 ②災害廃棄物 ③放射能 ④放射性セシウム 東日本大震災の復興支援として実施した岩手県宮古市および野田村の災害廃棄物広域処 理において,広域処理実施前後における関連環境試料の放射能等の測定を実施した。その 結果,すべての試料で放射能濃度は各種基準値を下回っており,災害廃棄物の受入施設周 辺環境への放射性物質の拡散を懸念する必要はないと考えられた。 1. はじめに 平成23年月11日に発生した東日本大震災によ り東北太平洋沿岸自治体は膨大な災害廃棄物を抱 えることになったが,被災地での処理だけでは場 所的・時間的に大きな制約があり,早期復興の妨 げとなっていた。これを受け,国では平成23年月に全国の自治体に災害廃棄物の広域処理につい て協力を要請した。 しかし,被災地の災害廃棄物には,福島第一原 子力発電事故により発生した放射性物質が付着し ているおそれがあったことから,国では平成23年 月に「東日本大震災により生じた災害廃棄物の 広域処理の推進に係るガイドライン」を公表し た。 被災地の隣接県である秋田県は,平成23年10月 に岩手県から宮古市および野田村の災害廃棄物の 処理に係る協力要請を受けた。宮古市および野田 村は福島第一原子力発電施設から200km 以上離 れており,地表面からm 高さの空間線量率は 秋田県と同レベルであること(1) 1) や,岩手県 が実施した事前調査の結果から,宮古市および野 田村の災害廃棄物の放射能は,秋田県内の通常の 廃棄物と同レベルであると推測された。 そのため要請のあった災害廃棄物の性状は本ガ イドラインを満たすことが確認されたこと,同廃 棄物が搬入される秋田県内の各焼却施設には排ガ ス中の飛灰除去装置(バグフィルター等)が設置さ れていることから,各焼却施設周辺環境への放射 性物質の飛散はほぼないと考えられ 2) ,平成24年 月に岩手県宮古市および野田村の災害廃棄物広 域処理に協力することとし,災害廃棄物の処理に 関する基本協定を締結した 3) 。なお,受入れに当 たっては,100 Bq/kg 以下の廃棄物に限定した。 全国環境研会誌 66 10 Results of Environmental Radiation Monitoring Survey in Akita Prefecture for the Disaster Waste Receiving Caused by the Great East Japan Earthquake ** Takashi TAMURA, Masafumi TAMADA, Tsuyoshi SUGAWARA, Hideyuki TAKAHASHI, Tsukasa TAKASHIMA, Hiroshi TAKAHASHI (秋田県健康環境センター) Akita Research Center for Public Health and Environment

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<報 文>

東日本大震災による災害廃棄物受入れに伴う

秋田県内の環境放射能調査結果について*

田 村 高 志**・玉 田 将 文**・菅 原 剛**

高 橋 英 之**・高 嶋 司**・高 橋 浩**

キーワード ①東日本大震災 ②災害廃棄物 ③放射能 ④放射性セシウム

要 旨

東日本大震災の復興支援として実施した岩手県宮古市および野田村の災害廃棄物広域処

理において,広域処理実施前後における関連環境試料の放射能等の測定を実施した。その

結果,すべての試料で放射能濃度は各種基準値を下回っており,災害廃棄物の受入施設周

辺環境への放射性物質の拡散を懸念する必要はないと考えられた。

1. は じ め に

平成23年�月11日に発生した東日本大震災によ

り東北太平洋沿岸自治体は膨大な災害廃棄物を抱

えることになったが,被災地での処理だけでは場

所的・時間的に大きな制約があり,早期復興の妨

げとなっていた。これを受け,国では平成23年�

月に全国の自治体に災害廃棄物の広域処理につい

て協力を要請した。

しかし,被災地の災害廃棄物には,福島第一原

子力発電事故により発生した放射性物質が付着し

ているおそれがあったことから,国では平成23年

�月に「東日本大震災により生じた災害廃棄物の

広域処理の推進に係るガイドライン」を公表し

た。

被災地の隣接県である秋田県は,平成23年10月

に岩手県から宮古市および野田村の災害廃棄物の

処理に係る協力要請を受けた。宮古市および野田

村は福島第一原子力発電施設から200km以上離

れており,地表面から�m 高さの空間線量率は

秋田県と同レベルであること(図 1)1)や,岩手県

が実施した事前調査の結果から,宮古市および野

田村の災害廃棄物の放射能は,秋田県内の通常の

廃棄物と同レベルであると推測された。

そのため要請のあった災害廃棄物の性状は本ガ

イドラインを満たすことが確認されたこと,同廃

棄物が搬入される秋田県内の各焼却施設には排ガ

ス中の飛灰除去装置(バグフィルター等)が設置さ

れていることから,各焼却施設周辺環境への放射

性物質の飛散はほぼないと考えられ2),平成24年

�月に岩手県宮古市および野田村の災害廃棄物広

域処理に協力することとし,災害廃棄物の処理に

関する基本協定を締結した3)。なお,受入れに当

たっては,100Bq/kg以下の廃棄物に限定した。

全国環境研会誌

【T:】Edianserver /環境コミュニケーションズ/全国環境研会誌/第39巻第2号(通巻第131号)/(報文①)東日本 � 校

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10 ―

*Results of Environmental Radiation Monitoring Survey in Akita Prefecture for the Disaster Waste Receiving

Caused by the Great East Japan Earthquake**Takashi TAMURA, Masafumi TAMADA, Tsuyoshi SUGAWARA, Hideyuki TAKAHASHI, Tsukasa TAKASHIMA, Hiroshi

TAKAHASHI (秋田県健康環境センター) Akita Research Center for Public Health and Environment

� 校

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平成24年�月から大仙美郷環境事業組合,平成

24年�月からは秋田市等の県内�カ所の廃棄物処

理施設において,岩手県内の災害廃棄物(可燃物

および不燃物)の広域処理を実施した(表 1,2)。

秋田県健康環境センターでは,秋田県内への災

害廃棄物の搬入に対する県民の不安を解消するた

め,定期的に処分場施設周辺の環境放射能調査を

実施し,放射性物質の拡散状況を把握した。

災害廃棄物の広域処理は順調に進み,平成25年

12月18日をもってすべて終了したことから,今

回,広域処理開始前および広域処理中の施設周辺

土壌・水試料等を対象に実施した放射性物質測定

結果を報告する。

2. 方 法

2.1 試料採取方法

表 1,2 に示した各焼却施設および最終処分場

施設の周辺土壌や周辺河川水等において,平成24

年�月から平成26年�月まで試料採取を実施した

(図 2〜5)。試料媒体は処分場放流水,地下水,

河川水,水道水源,土壌,底質および排水処理汚

泥の計620試料とし,放射性物質の測定項目は,

ヨウ素131(131I),セシウム134(134Cs)およびセシ

ウム137(137Cs)とした。前処理操作は「緊急時に

おけるガンマ線スペクトロメトリ−のための試料

前処理法(文部科学省測定シリーズ No.24)」に準

じて行った。測定操作は「ゲルマニウム半導体検

出器によるガンマ線スペクトロメトリ−(文部科

学省測定シリーズNo.�)」に基づき行った。

水試料は�Lマリネリ容器に入れ,ゲルマニウ

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図 1 秋田県および岩手県内における地表面

から 1 m高さの空間線量率

出典:文部科学省

2610大仙美郷環境事業組合一般廃棄物最終処分場

開始年月日

終了年月日

岩手県宮古市

搬出元

岩手県野田村

可燃物受入施設(焼却施設)

焼却処理量(t)

焼却灰埋立処分場

表 1 可燃物受入れの概要

湯沢雄勝広域市町村圏組合貝沢ごみ処理施設

697.57湯沢雄勝広域市町村圏組合八面一般廃棄物最終処分場

平成24年�月11日

横手市東部環境保全センター 577.59 横手市南東地区最終処分場

平成24年�月�日

平成25年�月19日

秋田市総合環境センター 5931.18秋田市総合環境センター一般廃棄物最終処分場

平成24年�月23日

平成25年�月31日

大仙美郷環境事業組合大仙美郷クリーンセンター

平成24年�月25日

平成24年10月31日

由利本荘市本荘清掃センター 150

広域市町村圏組合一般廃棄物最終処分場

矢島鳥海一般廃棄物最終処分場

4,155

開始年月日

終了年月日

岩手県野田村

搬出元

23,381秋田県環境保全センター(大仙市)

不燃物受入施設(一般廃棄物最終処分場)

平成25年�月22日

処理量(t)

表 2 不燃物受入れの概要

平成24年12月�日 平成25年

12月18日

田沢湖一般廃棄物最終処分場(仙北市)

� 校

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ム半導体検出器付きγ線スペクトロメーター

(SEIKO EG&G 社製)により3,600秒で測定した。

その他試料は U-8 容器に入れ,同測定機器によ

り2,000秒で測定した。

図 6に測定した試料の種類およびその検体数を

示す。

3. 結果および考察

3.1 測 定 結 果131I はすべての試料において不検出(ND)で

あった。なお,検出下限値は,水試料では0.30〜

0.62Bq/L,土壌・底質・排水処理汚泥では3.7〜

9.1Bq/kgであった。134Cs が検出された試料は,災害廃棄物受入後

の大仙美郷処分場(災害廃棄物焼却灰の埋立施設)

周辺土壌における 6.4Bq/kg (検出下限値 5.2

Bq/kg)と横手市環境保全センター(焼却施設)周

辺土壌における6.2Bq/kg(検出下限値5.9Bq/kg)

の�検体であり,国の基準値4)を大きく下回った。

また,受入後の土壌試料の総検体数の1.48%で

報 文

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12 ―

図 2 試料採取(河川水)

図 4 試料採取(土壌)

図 5 試料採取(底質)

図 3 試料採取(地下水)

図 6 放射性物質測定試料数

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あった。137Cs の検出状況を表 3,4 に示した。放流水で

は,�地点�検体において検出されたが,国の基

準値5)を大幅に下回った。土壌試料では,受入前

�検体,受入後36検体において検出されたが,国

の基準値4)を大幅に下回った。

試料別の検出状況を見ると,放流水では,134Cs は ND(検出下限値0.25〜0.62Bq/L),137Cs

は ND〜1.1Bq/L(検出下限値0.28〜0.60Bq/L)

であった。

地 下 水 で は,134 Cs (検出下限値 0.21〜1.0

Bq/L),137Cs(検出下限値0.26〜0.63Bq/L)いず

れもNDであった。

河川水でも,134 Cs (検出下限値0.26〜0.57

Bq/L),137Cs(検出下限値0.21〜0.58Bq/L)いず

れもNDであった。

水道水源でも,134Cs(検出下限値0.28〜0.51

Bq/L),137Cs(検出下限値0.29〜0.59Bq/L)いず

れもNDであった。

土壌では,134Cs は ND〜6.2Bq/kg(検出下限

値1.1〜11Bq/kg),137Cs は ND〜42Bq/kg(検出

下限値2.8〜11Bq/kg)であった。

底質では,134Cs は ND(検出下限値5.5〜6.9

Bq/kg),137Cs は ND〜5.9Bq/kg (検出下限値

5.3〜8.3Bq/kg)であった。

排水処理汚泥では,134Cs(検出下限値5.3〜11

Bq/kg),137Cs(検出下限値5.1〜11Bq/kg)いずれ

もNDであった。

3.2 考 察

土壌,底質,排水処理汚泥試料において,137Cs が検出された件数をまとめると,事前調査

では�検体,事後調査では36検体であった(表 5)。

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― 13

調査地点数

検体数(受入前)

最大数値検出

検体数

大仙美郷処分場

施設名

大仙美郷クリーンセンター

秋田市総合環境センター

検体数(受入後)

最大数値検出

検体数

表 3 処分場放流水等における137Csの検出状況

1 1 ND 0 20 ND 0

放流水 1 1 ND 0 20 ND 0

種別

1 2 ND 0 13 ND〜1.1 5

地下水 2 2 ND 0 2 ND 0

地下水

2 4 ND 0 2 ND 0

地下水 2 4 ND 0 24 ND 0

放流水

由利本荘広域

由利本荘市矢島鳥海

仙北市田沢湖処分場

県環境保全センター

河川水

河川水

放流水

地下水

河川水

放流水

地下水

河川水

放流水

地下水

河川水

水道水源

横手市

湯沢雄勝広域

2

1

1

2

1

1

5

3

37

放流水

地下水

放流水

地下水

河川水

放流水

地下水

2

12

12

4

3

77

1

1

1

1

2

1

1

2

1

1

ND

ND

2

2

2

2

4

2

2

4

2

2

4

1

1

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

9

7

9

9

7

15

15

12

20

20

50

30

343

0

0

0

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

11

11

11

11

6

9

0

0

0

0

0

0

5

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

ND

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

0

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事後調査の結果を見ると,検出率は事前調査結

果より若干上昇したものの,その濃度は低かった

(図 7,8)。

また,事後調査において検出された試料36検体

報 文

全国環境研会誌

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調査地点数

検体数(受入前)

数値検出検体数

大仙美郷処分場

施設名

大仙美郷クリーンセンター

秋田市総合環境センター

県環境保全センター

検体数(受入後)

数値検出

検体数

表 4 周辺土壌等における137Csの検出状況

ND12

67

1処分場排水処理汚泥

周辺土壌 2 2 ND〜11 1 15 ND〜21 8

種別

3 6 ND〜5.9 1 3 ND 0

周辺土壌 6 6 ND〜9 1 42 ND〜21 21

9

0

36

ND12

135

0

土壌 1 1 ND 0 3 ND 0

底質

湯沢雄勝広域

由利本荘市広域

矢島処分場

処分場排水処理汚泥

焼却場周辺土壌

処分場敷地境界土壌

処分場敷地境界土壌

横手市

1

焼却場周辺土壌

処分場敷地境界土壌

処分場排水処理汚泥

焼却場周辺土壌

処分場敷地境界土壌

2

4

1

1

6

1

1

6

1

ND

8

2

0

12

2

0

12

2

ND〜15

ND

ND〜42

ND

ND〜11

ND

0

2

2

0

0

2

8

18

3

3

2

ND

ND

4

1

9

12

0

ND〜18

ND

ND

ND〜42

ND

ND

ND〜21

2

0

0

2

0

0

3

0

検出値 件数 検出率事前調査で検出されていた地点の検体

検出値

事前調査

検出数に占める割合

事後調査

表 5 周辺土壌等における137Csの検出状況の変化

1

1

9

67

ND

〜10 Bq/kg

11〜20 Bq/kg

21〜30 Bq/kg

31〜40 Bq/kg

41〜50 Bq/kg

検出数 計

総検査数

件数 検出率

検出数 計

総検査数

86.6%

6.0%

4.5%

0%

1.5%

1.5%

13%

100%

58

4

3

0

99

18

13

5

0

0

36

135

ND

〜10 Bq/kg

11〜20 Bq/kg

21〜30 Bq/kg

31〜40 Bq/kg

41〜50 Bq/kg

4

8

4

16

73.3%

13.3%

9.6%

5.1%

0%

0%

27%

100%

22.2%

61.5%

80.0%

44.4%

図 7 事前調査における137Cs検出状況 図 8 事後調査における137Cs検出状況

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のうち事前調査でも137Cs が検出されている地点

における検出数は16検体あり,全体の約44%で

あった。チェルノブイリ原発事故から29年経過し

た現在,半減期約30年の137Cs は約1/2に,半減期

約�年の134Cs は約1/8000にまで減衰しているこ

と6),事前調査において134Cs は検出されていな

いことから,事前調査および事後調査の両方で数

値が検出された地点の137Cs はチェルノブイリ原

発事故由来だと思われる。

一方,土壌等の試料において134Cs が検出され

たのは事後調査における大仙美郷処分場周辺土壌

(6.4Bq/kg)と横手市環境保全センター周辺土壌

(6.2Bq/kg)の�検体であり,137Cs も微量(6.8

Bq/kg,12Bq/kg)検出された。福島第一原発事

故直後における134Cs と137Cs の検出比率は約�:

�と報告されている7)ことから,大仙美郷処分場

周辺土壌の試料は福島第一原発事故の影響を受け

ていると思われる。また,横手市環境保全セン

ター周辺土壌については,137Cs が検出比率�:�

よりやや高く検出されたこと,事前調査では137Cs のみ検出されたことから,チェルノブイリ

原発事故の影響に加え,福島第一原発事故の影響

が反映されたと思われる。しかし,検出回数はい

ずれも�回であり影響は一過性であった。

これらをまとめると,全体として,災害廃棄物

受入による放射能の環境への影響は少なかったと

思われる。

4. ま と め

災害廃棄物受入れに伴う事前・事後調査におい

て,地下水・放流水,河川水,汚泥,底質試料か

らは,放射性セシウムはほとんど検出されなかっ

た。土壌試料では放射性セシウムが検出された

が,その濃度は低くまた事前調査時と同レベルで

あることから,施設外部環境への放射性セシウム

の飛散を懸念する必要はないと推察された。

当センターでは,今後も災害廃棄物を受入した

処理施設周辺において,事後調査として関連試料

を測定する予定である。

―引 用 文 献―

1) 文部科学省(2011):文部科学省がこれまでに測定してき

た範囲および岩手県,静岡県,長野県,山梨県,岐阜県,

および富山県内における地表面から�m高さの空間線量

率 http: //radioactivity. nsr. go. jp/ja/contents/5000/

4899/24/1910_111112.pdf

2) 国立環境研究所(2012):放射性物質汚染廃棄物に関する

自治体担当者・専門家向け技術情報等

http://www.nies.go.jp/shinsai/1-1.html

3) 秋田県生活環境部環境整備課(2012):災害廃棄物の広域

処理支援 http: //www. pref. akita. lg. jp/www/genre

/0000000000000/1326170085658/index.html

4) 農林水産省通知消安発第2444号,生産第3442号,林政産

第99号,水推第418号:放射性セシウムを含む肥料・土

壌改良資材・培土及び試料の暫定許容値の設定について,

平成23年�月�日

5) 放射性物質汚染対処特措法施行規則,平成23年環境省令

第33号:事業場及び最終処分場の周辺の公共の水域の水

中の濃度限度,平成23年12月14日

6) 珍田尚俊,柳田知子:秋田県における雨水の全 β放射能

測定結果とその特徴,秋田県健康環境センター年報,4,

2008,91-94

7) 河田燕,山田崇裕:原子力事故により放出された放射性

セシウムの134Cs/137Cs の放射能比について,Isotope

News,5,2012,16-20

東日本大震災による災害廃棄物受入れに伴う秋田県内の環境放射能調査結果について

Vol. 39 No. 2 (2014)

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