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「話すこと・聞くこと 「書くこと」と関連づけた「読むこと」の学習例 」、 科目名 国語総合 単元名 小説「羅生門 (全9間) <教: 羅生門 (芥川龍之介)> 単元の内容 単元の目標 登場人物の心理表現に即して読み味う (意欲関心態度) 小説の設定と出事の推移、そに伴う主人公中心に登場人物の心理の変化、表現に 即して的確に読みと (読む能力) 小説が描こうとした主題的確に読み取、そについて考察し、自の在方生き方 の考えめ (読む能力) 必要な語句の意味、用理解し、語彙豊かにすとともに、表現の工夫について理解 す (知識理解) 指導案の ○読解のはじめの段階で設定的確に読み取、そこかの事件の進行とそに伴う主人公の 授業の概要 心理の変化捉え、その心因考え。 ○場面演じことで、自分の気づかなかった点に気づく、あいまいな理解確かなものとす など、読解め、主題の的確な把握へと導く。 ○場面演じことで、字の奥に広が小説世界への想像豊かにし、そに伴う読解思 考の広がとま実感し、小説読む楽しさ味う。 ○単元のはじめに、会話文の多い、副詞効果的に使用してい短編作品取上げ、場面 演じことで広が、ま読解体験させと効果的であ。取上げ作品例とし ては、安部公房『空飛ぶ男 、武田『信念』などがい。 ○今回の学習指導案では、下人が楼へ飛び上が、駆け降ていくまでの場面、校内の階段 の踊場利用して各が一斉に演じ学習とした。こは、当場面が主題捉え のに重要であこと、また、他者の目意識しないで表現動に取組めこと考えてで あ。しかし、表現動に抵抗の少ないでは、各段落ごとに1割当てて 演じ、当場面代表者にって演じ、動場所教室にす、ということも可能であ う。 単元の評価規準 関心意欲態度 読む能力 知識理解 ①登場人物の心理表現に即 ①構成的確に読み取ってい。 ①文中の難語の意味理解 して読み味おうとしてい ②小説の設定表現に即して的確に読み取っ し 語彙豊かにしてい てい。 ②文中の難読語の読みに慣 ②討議、動、交 ③出事の推移とそに伴う登場人物の心理 、主なものはけ。 通して、自分の読みと考 の変化、表現に即して的確に読み取って ③文中のすぐた表現につい えめうとしてい。 い。 て理解してい。 ④討議、動、交通して、作品 ④文体の特徴理解してい の主題理解し、自分の読みと考えめ てい。

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「話すこと・聞くこと 「書くこと」と関連づけた「読むこと」の学習例」、

1 科目名 国語総合

2 単元名 小説「羅生門 (全9時間) <教材: 羅生門 (芥川龍之介)>」 「 」

3 単元の内容

単元の目標 ア 登場人物の心理を表現に即して読み味わう (意欲・関心・態度)。

イ 小説の設定と出来事の推移、それに伴う主人公を中心に登場人物の心理の変化を、表現に

即して的確に読みとる (読む能力)。

ウ 小説が描こうとした主題を的確に読み取り、それについて考察し、自らの在り方・生き方

の考えを深める (読む能力)。

エ 必要な語句の意味、用法を理解し、語彙を豊かにするとともに、表現の工夫について理解

する (知識・理解)。

指導案の ○読解のはじめの段階で設定を的確に読み取り、そこからの事件の進行とそれに伴う主人公の

授業の概要 心理の変化を捉え、その心因を考える。

○場面を演じることで、自分の気づかなかった点に気づく、あいまいな理解を確かなものとす

るなど、読解を深め、主題の的確な把握へと導く。

○場面を演じることで、活字の奥に広がる小説世界への想像を豊かにし、それに伴う読解・思

考の広がりと深まりを実感し、小説を読む楽しさを味わう。

アドバイス ○単元のはじめに、会話文の多い、副詞を効果的に使用している短編作品を取り上げ、場面を

演じることで広がり、深まる読解を体験させるとより効果的である。取り上げる作品例とし

ては、安部公房『空飛ぶ男 、武田泰淳『信念』などがよい。』

○今回の学習指導案では、下人が楼へ飛び上がり、駆け降りていくまでの場面を、校内の階段

の踊り場を利用して各グループが一斉に演じる学習とした。これは、当場面が主題を捉える

のに重要であること、また、他者の目を意識しないで表現活動に取り組めることを考えてで

ある。しかし、表現活動に抵抗の少ないクラスでは、各段落ごとに1グループを割り当てて

演じる、当場面を代表者によって演じる、活動場所を教室にする、ということも可能であろ

う。

4 単元の評価規準

関心・意欲・態度 読む能力 知識・理解

①登場人物の心理を表現に即 ①構成を的確に読み取っている。 ①文中の難語の意味を理解

、 。して読み味わおうとしてい ②小説の設定を表現に即して的確に読み取っ し 語彙を豊かにしている

る。 ている。 ②文中の難読語の読みに慣

②グループ討議、活動、交流 ③出来事の推移とそれに伴う登場人物の心理 れ、主なものは書ける。

を通して、自分の読みと考 の変化を、表現に即して的確に読み取って ③文中のすぐれた表現につい

えを深めようとしている。 いる。 て理解している。

④グループ討議、活動、交流を通して、作品 ④文体の特徴を理解してい

の主題を理解し、自分の読みと考えを深め る。

ている。

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5 単元の学習指導案

時間 各時間の目標 主な学習活動 各時間の具体的な評価規準 評価方法

1 ・作品を興味を ・範読を聞き、難読語の読みを ア集中して黙読している。 ・観察

もって読もう 確認すると同時に、登場人物 関① *机間指導【 】

( )とする。 と場と場面が変わるところを イ難読語の読みを確認し、難語 ア

・構成を読み取 チェックする。 の意味用法を理解している。 ・点検

る。 ・小説の場面の展開を大きくつ 知①② *語句調べ【 】

・難読語の読み かみ、場と場面によって段落 ウ場と場面の変化を観点に、6 予習プリント

( )を確認する。 分けを行う。 段落に分けることができる。 イ

【 】 ( )(ワークシートAに記入) 読① *ワークシート ウ

*段落分けは、観点によって違う分

け方もできることを確認する。

[ワークシートA]

2 ・作品の設定を ・第1・2段落を音読する。 ア羅生門の荒廃、不気味さと、 ・観察

的確に読み取 (指名読み) 都の衰微ぶりなど設定されて *机間指導

る。 ・音読を聞きながら、下人が置 いる社会情勢を指摘できる。 *発表

【 】 ( )かれている状況(社会情勢と 読② ア・イ・ウ

下人自身の状況)にかかわる イ設定されている下人の年齢・

描写や説明部分に傍線を引 身分・思考の傾向などの人物

く。 像と追い込まれている下人の

。【 】・下人の置かれている状況を理 の状況が指摘できる 読②

解する (挙手による発表) ウア・イを総合し、下人の置か。

・下人の置かれている状況を端 れている状況を端的な言葉で

。 【 】的な言葉で表現する。 表現できる 読②

(挙手による発表)

[板書例①]

3 ・楼の下におけ ・第1・2段落を音読する。 ア下人の低徊する心理と、問題 ・観察

る下人の心理 (指名読み) 解決を先延ばししていた心理 *机間指導

を読み取り、 ・音読を聞きながら、下人の心 がわかる 読②③ *グループ討議。 【 】

その心因を考 理にかかわる描写や説明部分 イ下人の心理の土台となる正義 *発表

( )える。 に波線を引く。 感・倫理観が青年期における ア・イ

・楼の下における下人の心理を 底の浅い、危ういものだった

。 【 】理解する。 ことがわかる 読②③④

・下人の心理の土台となる正義

感・倫理観がいかなるもの

か、理解する。

(グループ討議・発表)

*「積極的に肯定するだけの、勇気

」 。がでずにいた はなぜかを考える

[板書例②]

4 ・はしごの上に ・第3段落を音読する。 ア場の変化、視点の変化を理解 ・観察

おける下人の (指名読み) している 読③ 知③ *机間指導。 【 】【 】

心理の変化を ・音読を聞きながら、下人の行 イ事件の進行と下人の心理の変 *グループ討議

読み取り、そ 動にかかわる描写や説明部分 化を読み取り、時系列に整理 *発表

。 【 】 ( )の心因を考え に傍線を、下人の心理にかか している 読③ ア・イ・ウ

る。 わる描写や説明分部に波線を ウ「この雨の夜にこの羅生門の

引く。 上で」という非合理的判断を

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・はしごの上での下人の行動と する下人の情緒的・感情的な

心理の変化を理解する。 正義感・倫理観を理解する。

【 】(挙手による発表) 読③④

・下人の心理を呼び起こす心因

、 。がいかなるものか 理解する

(グループ討議・発表)

*「どうせただの者ではない」+

「六分の恐怖と四分の好奇心」

「恐怖が消えていった」

「悪を憎む心……勢いよく燃え上

がりだした」+

という心理を呼び起こす原因を特

に+に注意して考える。

[板書例③]

5 ・楼の上におけ ・第4・5段落を音読する。 ア事件の進行と下人の心理の変 ・観察

る下人の心理 (指名読み) 化を読み取り、時系列に整理 *机間指導

の変化を読み ・音読を聞きながら、下人の行 している 読③ *グループ討議。 【 】

取る。 動にかかわる描写や説明部分 イ老婆の弁明の論理を整理し、 *発表

。 【 】 ( )・老婆の弁明の に傍線を、下人の心理にかか 理解している 読③ ア・イ・ウ

論理を理解 わる描写や説明部分に波線を ウ「ある勇気」が「盗人になる

し、相対化す 引く。 勇気」であることを読み取っ

。 【 】る。 ・下人の行動にかかわる描写や ている 読③

説明部分の副詞に注目しなが

ら、楼上での下人の行動と心

理の変化を理解する。

(挙手による発表)

*第7時があることをふまえて、大

まかな理解にとどめる。

・老婆の弁明の論理を理解す

る (グループ討議・発表)。

[板書例④]

6 ・下人の行動と ・第6段落を音読する。 ア下人の行動を読み取り、時系 ・観察

心理を読み取 (指名読み) 列に整理している 読③ *机間指導。 【 】

る。 ・音読を聞きながら、下人の行 イ下人の行動を描写する副詞に *グループ討議

・下人の行動の 動にかかわる描写や説明部分 注目し、下人の心理を読み取 *発表

論理を理解 に傍線を、下人の心理にかか っている 読③ (ア・イ。 【 】

)し、それがい わる描写や説明部分に波線を ウ下人の行動の論理を整理し、 ・ウ・エ

。 【 】かなるものか 引く。 理解している 読③

を考える。 ・下人の行動にかかわる描写や エ読者にその後を想像させる結

・結びの表現の 説明部分の副詞に注目しなが びの表現効果を理解してい

。 【 】効果について ら楼から降りていく下人の行 る 知③

考える。 動と心理を理解する。

(挙手による発表)

*第7時があることをふまえて、大

まかな理解にとどめる。

・下人の行動の論理を理解す

る (グループ討議・発表)。

・結びの表現効果について理解

する。

・次時のグループ活動について

確認する。

[板書例⑤]

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7 ・現場検証を通 ・グループに分かれ、第3段落 ア積極的にグループ活動に参加 ・観察

して、下人の ~第6段落の現場検証を行 している 関② *巡回指導【 】

行動を具体的 う (グループ活動) イ現場検証を通して、下人の行 *グループ活動。

にイメージ 各階段踊り場 動が非常に情緒的・感覚的判 ・点検

し、その心因 ・検証結果と、感じたこと、考 断によってなされていること *ワークシート

。 【 】 ( )を考える。 えたことをワークシートBに を確認している 読④ ア・イ・ウ

まとめる。 【教室】 ウイに対して自分なりに考え、

[ワークシートB] その考えをまとめている。

【 】読④

8 ・他の生徒と読 ・検証結果と、感じたこと、考 ア積極的にグループ交流に参加 ・観察

みを交流し、 えたことをグループで交流 し、他の生徒の読みと考えを *机間指導

自分の読みを し、発表する。 理解し、自分の読みと考えを *グループ交流

深める。 (グループ交流・ 深めようとしている。 *発表

・主題を探求す 各グループ代表発表) 関② 読④ (ア)【 】【 】

る。 ・主題をワークシートBにまと イ作品の主題を理解している。 ・点検

・自らの在り める (指名による板書) 読④ *ワークシート。 【 】

方、生き方に ・自身の在り方、生き方につい ウ自身の在り方、生き方に照ら *感想文

( )照らして感想 ても考えを深めながら感想文 しながら感想文を書いてい イ・ウ

文を書く。 を書く。 る。 【読④】

9 ・他の生徒の読 ・感想文を発表する。 ア積極的に他の生徒の感想文を ・観察

みから自分の (指名による発表) 聞き、自分の読みと考えを深 *机間指導

読みを深め ・すぐれた表現や文体の特徴を めようとしている。 *発表

。( ) 【 】【 】 ( )る。 理解する 挙手による発表 関② 読④ ア・イ

・すぐれた表現 ・作者について理解する。 イすぐれた表現や文体の特徴を

。 【 】や文体の特徴 指摘できる 知③④

を理解する。

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6 第7時の学習指導案

本時の位置 7時間目(全9時間)

本時の学習目標 ア 現場検証のグループ活動を通して、自分の読みを深めようとする。

(意欲・関心・態度)

イ 現場検証のグループ活動を通して、事件の展開や下人の心理の変化を具体的にイメー

ジし、作者の表現したかったことを的確に読み取る (読む能力)。

事前の準備 ①ストップウォッチを用意する。

*シナリオはあくまで、本文の抜粋にとどめる。②現場検証のためのシナリオを作成する。

③生徒が校内の階段の踊り場で活動することを職員に周知する。

学習内容 学習活動 指導上の留意点及び評価

導 □本時の学習目標を ①本時の目標が、現場検証のグ ・現場検証のシナリオ、ワークシートB、スト

入 確認する。 ループ活動を通して、より能 ップウォッチをグループに配布する。

8 □本時の活動内容を 動的な読みをすることである ・活動内容を説明する。

分 理解する。 ことを理解する。 ・活動場所では、他のクラスの授業に配慮する

②活動内容を理解する。 こと、活動が終了したら速やかに教室に戻る

③役割分担をする。 ことを指示する。

展 □グループ活動を通 ④活動場所に移動する。 ・下人役、老婆役の演技については、副詞に注

開 して、作品を深く 目して行うよう助言する。

⑤各階段の踊り場で、シナリオ40 読み取る。

を使い、現場検証する。 目標アに対する評価規準と評価方法分

[規準]活動に積極的に参加し、自分の読・下人の心理の変化の間隔と

みを深めようとしている。全体の時間を計る。

[方法]観察(活動場所巡回指導)・下人役、老婆役は交代して

[状況Cの生徒への手だて]最低2回は行う。

・グループ内の役割分担を確認し、活動

への参加を促す。

・副詞がある場合とない場合との違いを

考えてみるよう助言する。

目標イに対する評価規準と評価方法

⑥教室に移動する。 [規準]活動を通して、より深い読み取り

をし、作品に対する考えを深めている。

⑦活動を通して、感じたこと、 [方法]点検(ワークシートの記述)

考えたことを交換する。 [状況Cの生徒への手だて]

・下人の心理の変化の数に対して、その

⑧ワークシートBを使って、現 間の時間の合計が長いか短いか考えて

場検証の結果と 感じたこと みるよう助言する。、 、

考えたことをまとめる。 ・心理の変化の幅の大きさに気づかせ、

なぜ短時間でそのような変化をするの

かを考えてみるよう助言する。

ま □本時の学習のまと ⑨活動の感想を交換する。 ・活動の感想は、あくまで「活動してどうだっ

と めをする。 たか」程度のものとする。

め ⑩次時の活動の確認をする。 ・ワークシートBの記入が終わっていない者

、 。2 は 次時までに終わらせておくよう指示する

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[ 板 書 例 ① ][ 板 書 例 ① ][ 板 書 例 ① ][ 板 書 例 ① ]

【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ① 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ① 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ① 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ① 】

下 人 の 置 か れ て い る 状 況 ( 設 定 )

1 社 会 情 勢

こ こ 二 、 三 年 、 災 い が 立 て 続 け に 起 こ る

=地 震 ・ 辻 風 ・ 火 事 ・ 飢 饉

都 は さ び れ き っ て い る

・ 人 が い な い ( 活 気 が な い )

・ 治 安 ・ 風 俗 が 悪 い

・ 人 の 心 も す さ ん で い る

・ 羅 生 門 ( = 都 の 象 徴 ) ひ ど い 有 様

平 安 末 期 = 世 紀 末

不 安 ・ 不 気 味 ・ 最 悪

+ +++

2 下 人 自 身 の 状 況

・ 青 年 ( ~ 才 ? ) … に き び① 人 物 15

16

・ 長 年 、 貴 族 の 家 で 働 く 下 人

( そ の 生 き 方 し か し ら な い )

・ 精 神 的 に 不 安 定 … 天 候 に 左 右

サンチマンタリスム

・ 四 、 五 日 前 に 暇 を 出 さ れ る ( 解 雇 )② 現 在

・ 暮 れ 方 、 羅 生 門 の 下 で 雨 や み を 待 つ

行 き 所 が な く 、 途 方 に 暮 れ る

生 き る か 死 ぬ か の 瀬 戸 際

====

極 限 状 態

[ 板 書 例 ② ][ 板 書 例 ② ][ 板 書 例 ② ][ 板 書 例 ② ]

【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ② 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ② 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ② 】【 第 一 ・ 二 段 落 羅 生 門 の 下 ② 】

下 人 の 心 理途 方 に 暮 れ る ( 明 日 の 暮 ら し を ど う し よ う )

ど う に も な ら な い 手 段 を 選 べ ば 飢 え 死 に

ど う に か し よ う 手 段 を 選 ん で は い ら れ な い

× ×××

選 ば な い と す れ ば 選 ば な い で

盗 人 に な る し か な い 盗 人 に な ろ う

徊低

< し か し >

積 極 的 に 肯 定 す る 感 感 生

勇 気 が な い 義 理 の

正 倫 で=

盗 人 に な る 勇 気 ま

い い 今

浅 う +

の や 期

底 あ 年

< 結 局 > 青

と も か く も 夜 を 明 か そ う

明 日 考 え よ う

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[ 板 書 例 ③ ][ 板 書 例 ③ ][ 板 書 例 ③ ][ 板 書 例 ③ ]

【 第 三 段 落 羅 生 門 に 登 る は し ご 】【 第 三 段 落 羅 生 門 に 登 る は し ご 】【 第 三 段 落 羅 生 門 に 登 る は し ご 】【 第 三 段 落 羅 生 門 に 登 る は し ご 】

事 件 の 進 行 下 人 の 心 理

と も か く も 夜 を 明 か そ う

は し ご に 足 を か け る

誰 か が 火 を 灯 し て い る た だ 者 で は な い

こ の 雨 の 夜 に

こ の 羅 生 門 の 上 で

恐 ろ し い

恐 る 恐 る の ぞ く

死 体死 体 の 中 に 人 間 あ る 強 い 感 情

=( 老 婆 )

六 分 の 恐 怖 … … 恐 ろ し い

+ 分 か ら な い

四 分 の 好 奇 心 … 知 り た い

髪 を 抜 い て い る 恐 怖 が 消 え て い く

状 況 が 分 か る

激 し い 憎 悪

感 感=

悪 に 対 す る 反 感 義 理

悪 を 憎 む 憎 悪 正 倫

こ の 雨 の 夜 に

こ の 羅 生 門 の 上 で 的 的

緒 情≠合 理 的 判 断 情 感

[ 板 書 例 ④ ][ 板 書 例 ④ ][ 板 書 例 ④ ][ 板 書 例 ④ ]

【 第 四 ・ 五 段 落 羅 生 門 の 楼 上 】【 第 四 ・ 五 段 落 羅 生 門 の 楼 上 】【 第 四 ・ 五 段 落 羅 生 門 の 楼 上 】【 第 四 ・ 五 段 落 羅 生 門 の 楼 上 】

事 件 の 進 行 下 人 の 心 理

悪 に 対 す る 反 感

楼 上 へ 飛 び 上 が り 安 ら か な 得 意 と 満 足

=老 婆 を ね じ 付 す

優 越 感

髪 を 抜 く 理 由 を 聞 く 失 望

( 平 凡 な 答 え )

冷 や や か な 侮 蔑 と 憎 悪

老 婆 の 弁 明 を 聞 く

老 婆 の 弁 明 の 論 理

死 人 の 髪 を 抜 く = 悪 ↑ 正 義 ・ 倫 理

死 人 は 蛇 を 干 し 魚 と し て 売 っ て い た = 悪

髪 を 抜 か れ る = 悪

+ 仕 方 が な い

売 ら な け れ ば 死 ぬ

死 人 の 髪 を 抜 い て 売 る = 悪 く な い

下 人 の 反 応

冷 然 と 聞 く … に き び を 気 に し な が ら

あ る 勇 気 が 生 ま れ る

=盗 人 に な る 勇 気

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[ 板 書 例 ⑤ ][ 板 書 例 ⑤ ][ 板 書 例 ⑤ ][ 板 書 例 ⑤ ]

【 第 六 段 落 羅 生 門 の 楼 上 か ら 下 へ 】【 第 六 段 落 羅 生 門 の 楼 上 か ら 下 へ 】【 第 六 段 落 羅 生 門 の 楼 上 か ら 下 へ 】【 第 六 段 落 羅 生 門 の 楼 上 か ら 下 へ 】

下 人 の 行 動 と 論 理

「 き っ と 、 そ う か 」

あ ざ け る 声 で 念 を 押 す

老 婆 の 論 理 を 自 分 の 行 動 の 口 実 に す る

下 人 の 利 用 し た 論 理

老 婆 か ら 引 剥 ぎ を す る = 悪 ↑ 正 義 ・ 倫 理

老 婆 は 死 体 か ら 髪 を 抜 い て い た = 悪

引 剥 ぎ を さ れ る = 悪

+ 仕 方 が な い

売 ら な け れ ば 死 ぬ

老 婆 か ら 引 剥 ぎ を し て 売 る = 悪 く な い

、 老 婆 の 着 物 を は ぎ と るす ば や くす ば や くす ば や くす ば や く、 老 婆 を 死 骸 の 上 へ 蹴 倒 す手 荒 く手 荒 く手 荒 く手 荒 く

、 急 な は し ご を 駆 け 下 り るま た た く 間 にま た た く 間 にま た た く 間 にま た た く 間 に

躊 躇 が な い躊 躇 が な い躊 躇 が な い躊 躇 が な い

下 人 の 行 方 は だ れ も 知 ら な い

( 黒 洞 々 た る 闇 へ ? )

【 現 場 検 証 用 シ ナ リ オ 】【 現 場 検 証 用 シ ナ リ オ 】【 現 場 検 証 用 シ ナ リ オ 】【 現 場 検 証 用 シ ナ リ オ 】

下 人 は 、 両 足 に 力 を 入 れ て 、 い き な り 、 は し ご か ら 上 へ 飛 び 上 が っ た 。

そ う し て 聖 柄 の 太 刀 に 手 を 掛 け な が ら 、 大 股 に 老 婆 の 前 へ 歩 み 寄 っ た 。

老 婆 は 、 一 目 下 人 を 見 る と 、 ま る で 弩 に で も は じ か れ た よ う に 、 飛 び 上 が っ た 。

下 人 「 お の れ 、 ど こ へ 行 く 」。

老 婆 が 、 死 骸 に つ ま ず き な が ら 、 慌 て ふ た め い て 逃 げ よ う と す る 。

下 人 は 、 行 く 手 を ふ さ い で 老 婆 を の の し っ た 。

老 婆 は 、 そ れ で も 下 人 を 突 き の け て 行 こ う と す る 。

下 人 は 、 ま た 、 そ れ を 行 か す ま い と し て 、 押 し 戻 す 。

二 人 は 、 死 骸 の 中 で 、 し ば ら く 、 無 言 の ま ま 、 つ か み 合 っ た 。

下 人 は 、 と う と う 、 老 婆 の 腕 を つ か ん で 、 無 理 に そ こ へ ね じ 倒 し た 。

下 人 「 何 を し て い た 。 言 え 。 言 わ ぬ と 、 こ れ だ ぞ よ 」。

下 人 は 、 老 婆 を 突 き 放 す と 、 い き な り 、 太 刀 の 鞘 を 払 っ て 、 白 い 鋼 の 色 を そ の 目 の 前 へ 突 き 付 け た 。

老 婆 は 、 両 手 を わ な わ な 震 わ せ て 、 肩 で 息 を 切 り な が ら 、 目 を 、 眼 球 が ま ぶ た の 外 へ 出 そ う に な る ほ ど 、 見 開 い て 、 お し

の よ う に 執 拗 く 黙 っ て い る 。

下 人 は 、 初 め て 明 白 に 、 こ の 老 婆 の 生 死 が 、 全 然 、 自 分 の 意 志 に 支 配 さ れ て い る と い う こ と を 意 識 し た 。

下 人 は 、 老 婆 を 、 見 下 ろ し な が ら 、 少 し 声 を 和 ら げ て こ う 言 っ た 。

下 人 「 お れ は 検 非 違 使 の 庁 の 役 人 な ど で は な い 。 今 し 方 こ の 門 の 下 を 通 り か か っ た 旅 の 者

。 、 。 、だ だ か ら お ま え に 縄 を 掛 け て ど う し よ う と い う よ う な こ と は な い た だ 今 時 分

こ の 門 の 上 で 、 何 を し て い た の だ か 、 そ れ を お れ に 話 し さ え す れ ば い い の だ 」。

老 婆 は 、 見 開 い て い た 目 を 、 い っ そ う 大 き く し て 、 じ っ と そ の 下 人 の 顔 を 見 守 っ た 。

老 婆 は 、 か ら す の 鳴 く よ う な 声 で 、 あ え ぎ あ え ぎ 、 言 っ た 。

老 婆 「 こ の 髪 を 抜 い て な 、 こ の 髪 を 抜 い て な 、 か つ ら に し ょ う と 思 う た の じ ゃ 」。

下 人 は 、 老 婆 の 答 え が 存 外 、 平 凡 な の に 失 望 し た 。

老 婆 は 、 片 手 に 、 ま だ 死 骸 の 頭 か ら 取 っ た 長 い 抜 け 毛 を 持 っ た な り 、 蟇 の つ ぶ や く よ う な 声 で 口 ご も り な が ら 、 言 っ た 。

下 人 は 、 太 刀 を 鞘 に 収 め て 、 そ の 太 刀 の 柄 を 左 の 手 で 押 さ え な が ら 、 冷 然 と し て 、 こ の 話 を 聞 い て い る 。

下 人 は 、 右 の 手 で は 、 赤 く ほ お に う み を 持 っ た 大 き な に き び を 気 に し な が ら 、 聞 い て い る 。

下 人 の 心 に は 、 あ る 勇 気 が 生 ま れ て き た 。

老 婆 「 な る ほ ど な 、 死 人 の 髪 の 毛 を 抜 く と い う こ と は 、 な ん ぼ う 悪 い こ と か も し れ ぬ 。 じ

ゃ が 、 こ こ に い る 死 人 ど も は 、 皆 、 そ の く ら い な こ と を 、 さ れ て も い い 人 間 ば か り

だ ぞ よ 。 現 に 、 わ し が 今 、 髪 を 抜 い た 女 な ど は な 、 蛇 を 四 寸 ば か り ず つ に 切 っ て 干

し た の を 、 干 し 魚 だ と 言 う て 、 太 刀 帯 の 陣 へ 売 り に 往 ん だ わ 。 疫 病 に か か っ て 死 な

、 。 、 、な ん だ ら 今 で も 売 り に 往 ん で い た こ と で あ ろ そ れ も よ こ の 女 の 売 る 干 し 魚 は

味 が よ い と 言 う て 、 太 刀 帯 ど も が 、 欠 か さ ず 菜 料 に 買 っ て い た そ う な 。 わ し は 、 こ

の 女 の し た こ と が 悪 い と は 思 う て い ぬ 。 せ ね ば 、 飢 え 死 に を す る の じ ゃ て 、 仕 方 が

な く し た こ と で あ ろ 。 さ れ ば 、 今 ま た 、 わ し の し て い た こ と も 悪 い こ と と は 思 わ ぬ

よ 。 こ れ と て も や は り せ ね ば 、 飢 え 死 に を す る じ ゃ て 、 仕 方 が な く す る こ と じ ゃ わ

い の 。 じ ゃ て 、 そ の 仕 方 が な い こ と を 、 よ く 知 っ て い た こ の 女 は 、 お お か た わ し の

す る こ と も 大 目 に 見 て く れ る で あ ろ 」。

老 婆 の 話 が 終 わ る と 、 下 人 は あ ざ け る よ う な 声 で 念 を 押 し た 。

下 人 「 き っ と 、 そ う か 」。

下 人 は 、 一 足 前 へ 出 る と 、 不 意 に 右 の 手 を に き び か ら 離 し て 、 老 婆 の 襟 髪 を つ か み な が ら 、 か み 付 く よ う に 言 っ た 。

下 人 「 で は 、 お れ が 引 剥 を し よ う と 恨 む ま い な 。 お れ も そ う し な け れ ば 、 飢 え 死 に を す る

体 な の だ 」。

下 人 は 、 素 早 く 、 老 婆 の 着 物 を は ぎ 取 っ た 。 足 に し が み つ こ う と す る 老 婆 を 、 手 荒 く 死 骸 の 上 へ 蹴 倒 し た 。

下 人 は 、 は ぎ 取 っ た 檜 皮 色 の 着 物 を わ き に 抱 え て 、 瞬 く 間 に 急 な は し ご を 夜 の 底 へ 駆 け 下 り た 。

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[ ワ ー ク シ ー ト A ][ ワ ー ク シ ー ト A ][ ワ ー ク シ ー ト A ][ ワ ー ク シ ー ト A ]

□ 登 場 人 物□ 登 場 人 物□ 登 場 人 物□ 登 場 人 物

主 人 公

ほ か

□ 段 落 構 成 ( 場 ・ 場 面 に よ る )□ 段 落 構 成 ( 場 ・ 場 面 に よ る )□ 段 落 構 成 ( 場 ・ 場 面 に よ る )□ 段 落 構 成 ( 場 ・ 場 面 に よ る )

場 ペ ー ジ ・ 行 場 面 ( 下 人 の 行 動 )

Ⅰ ⅰ

Ⅱ ⅲ

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[ ワ ー ク シ ー ト B ][ ワ ー ク シ ー ト B ][ ワ ー ク シ ー ト B ][ ワ ー ク シ ー ト B ]

□ 現 場 検 証 記 録□ 現 場 検 証 記 録□ 現 場 検 証 記 録□ 現 場 検 証 記 録

下 人 の 行 動 下 人 の 心 理 時 間

悪 に 対 す る 反 感

( )楼 上 へ 飛 び 上 が り 老 婆 を ね じ 伏 す 安 ら か な 得 意 と 満 足 優 越 感

髪 を 抜 く 理 由 を 聞 く

失 望冷 や や か な 侮 蔑 と 憎 悪

老 婆 の 弁 明 を 聞 く

あ る 勇 気 ( 盗 人 に な る ) が 生 ま れ る

「 き っ と 、 そ う か 」 と 念 を 押 す

す ば や く 老 婆 の 着 物 を は ぎ 取 る

手 荒 く 死 骸 の 上 へ 蹴 倒 す

瞬 く 間 に 急 な は し ご を 駆 け 下 り る

□ 現 場 検 証 で 感 じ た こ と ・ 考 え た こ と□ 現 場 検 証 で 感 じ た こ と ・ 考 え た こ と□ 現 場 検 証 で 感 じ た こ と ・ 考 え た こ と□ 現 場 検 証 で 感 じ た こ と ・ 考 え た こ と

□ 『 羅 生 門 』 の 主 題 ( 作 者 の 描 き た か っ た こ と )□ 『 羅 生 門 』 の 主 題 ( 作 者 の 描 き た か っ た こ と )□ 『 羅 生 門 』 の 主 題 ( 作 者 の 描 き た か っ た こ と )□ 『 羅 生 門 』 の 主 題 ( 作 者 の 描 き た か っ た こ と )