日本電力産業の優位性とデジタル化効果試算 -...

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日本電力産業の優位性とデジタル化効果試算 2回 電力インフラのデジタル化研究会(E-Tech研究会) 2017113経済産業省 御中 アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社 東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター 33F Phone : 03- 6264-6300 (代表) URL : http://www.adl.co.jp 資料3

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日本電力産業の優位性とデジタル化効果試算

第2回 電力インフラのデジタル化研究会(E-Tech研究会)

2017年1月13日

経済産業省 御中 アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社

東京都港区東新橋1-5-2 汐留シティセンター 33F

Phone : 03- 6264-6300 (代表) URL : http://www.adl.co.jp

資料3

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Content

1 日本における電力産業の優位性

2 設備管理のデジタル化による効果試算

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日本における電力産業の優位性 日本電力産業の特徴

海外メーカーがガスタービンやボイラ中心のチューニングなのに対し、自社の強みはプラント全体の視点を持てていること。故障などの不具合はタービン領域以外も多く発生しており、その部分をカバーしてあげることは価値になる(タービン周り60に対してその他の不具合は

40のイメージ)(機器ベンダー)

ITベンダー系のプレイヤは、ビックデータの解析により不具合発見はできるが、何が要因か、どう対処すれば良いのかまでは落とし込めない。一方でメーカーやオペレーターは因果関係の知見を元に対処可能(機器ベンダー)

日本の電力産業は人材能力が高い。日本のオペレーションが海外ではできず驚くことが多い(機器ベンダー)

発電、送配電、小売などのVC全体を統括管理していることは、海外に比べての電力会社の特色なので、最適な系統網の敷設や複数発電拠点の群制御などでは付加価値を発揮しやすいのではないか。(機器ベンダー) 日本は雷や震災など災害が多いものの、安定的な電力供給ができているのは、動的な系統シミュレーション

ができているからである。(電力会社)

電源計画の作成から、施工、運用、設備の保守メンテ、廃炉まで長期視点で電力事業に関わる点が日本の電力産業の特色である。海外の場合は建設のみ実施し発電所は売却するなど、プロジェクトの一部のフェーズ

しか担わないことが多い(電力会社)

日本の電力オペレーターやベンダーは海外勢に比べ全体かつ長期視点で事業に関わっており、最適化範囲が広いことが強みの源泉になる可能性がある。

日本電力産業の特徴 関連コメント 海外との比較

オペレーターがPJ全体

(Plan/Assess/EPC/O&M

/廃炉など)

ベンダーが設備全体把握

オペレーターがVC全体把握

発電・送配電・小売のVC全体のノウハウを一事業者が保有

オペレーターが知見保有

海外に比べオペレーターの力が強く、ノウハウを蓄積

産業構造

政策・規制

視点

事業

計画 EPC オペ メンテ 廃棄 アセス

発電 小売 送配電

(VC統合の時代が長い)

オペレーター主導 ベンダー主導

自由化が早期に進みVC分離

燃料輸送 ガス

タービン

蒸気

タービン 投入

プラント全体設計を担う

PJ全体を長期で担う

GT中心

(GE等)

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日本における電力産業の優位性 提供価値

日本電力産業の優位性としては、圧倒的な電力・サービス品質が挙げられ、それを運用能力や全体最適の設計能力が支えている構図になっている。

•停電のしにくさは日本に優位性があるが、良い設備を導入し、適切な保守メンテを実施しているからこそ。国外に受け入れられるコストで上記を実現するのはハードル高い(電力会社)

•日本の電力会社の優位性としては、燃焼効率が高い、設備寿命が長い、安定供給などがあるが、これらは総括原価方式による豊富な資金力と、厳格な定期点検基準により実現できている

ものである(機器ベンダー)

•トータルのライフサイクルコストの観点ではメリットが出る可能性がある(電力会社・機器ベンダー)

日本電力産業の特徴 視点

オペレーターがPJ全体

(Plan/Assess/EPC/O&M

/廃炉など)

機器ベンダーがプラント全体把握

オペレーターが

VC全体把握

発電・送配電・小売のVC全体のノウハウを一事業者が保有

オペレーターが

知見保有

海外に比べオペレーターの力が強く、ノウハウを蓄積

産業

構造

政策・ 規制

事業

日本電力産業の優位性 関連コメント

•ITベンダー系のプレイヤは、ビックデータの解析により不具合発見はできるが、何が要因か、どう対処すれば良いのかまでは落とし込めない。一方でメーカーやオペレーターは因果関係の

知見を元に対処可能(機器ベンダー)

周波数・電圧の安定制御

短い停電時間

災害時対応

(短い復旧時間)

発電オペレーション能力

系統安定化能力

高い環境性能

高い人材能力

電力・サービス品質

(for end-users)

運用能力

(Operation)

基盤となる人材能力の高さ

LCC(要検証)

設備設計能力(Planning) •故障などの不具合はタービン領域以外も多く発生しており、そ

の部分をカバーしてあげることは価値になる(タービン周り60に対してその他の不具合は40のイメージ)(機器ベンダー)

プラント全体最適化

•日本は用地確保が難しく、限られた面積で如何に効率的に送配電網を整備するか考えてきた歴史がある⇔一方で海外は送

配電網の増強により安全性を高めてきた(電力会社) 送配電網最適化

•日本の周波数調整、停電抑止などにつながる系統制御能力は海外に比べても秀でている(機器ベンダー)

(ワンストップソリューション)

•日本の電力産業は人材能力が高い。日本のオペレーションが海外ではできず驚くことが多い(機器ベンダー)

•燃料の状態や、外部環境、電力需要量などに合わせて適切にオペレーションしている(電力会社)

1-1

1-2

1-3

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災害が多いにも関わらず、日本の停電時間は、他の先進国に比べても小さい値となっている。

(出所)東京電力 停電時間の国際比較/日本は2014年度実績。電気事業連合会調べ/アメリカは大嵐を含む2014年実績。(出典)海外電力調査会編「海外電気事業統計」(2015年版)/ドイツ、フランス、イギリスは荒天時を含む2013年実績。 (出典) CEER「Benchmarking Report 5.2 on the Continuity of Electricity Supply」

日本電力産業の優位性 停電のしにくさ/災害対応

停電時間

61

84

33

134

2120

4

米国(NY) 英 独 米国(CA) 仏 日本(平均) 日本(東電)

1軒あたりの停電時間(

分/年)

1-1 1-2

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日本では配電自動化システムの普及、適切な設備保守メンテの徹底、有事の復旧体制整備により事故・災害の影響を最小限に食い止め、停電時間の削減につなげている。

(出所)日本の停電時間が短いのはなぜか(電力改革研究会) 2012/06/07、経済産業省 検討会資料 “配電自動化について”よりADL作成

停電対策の取組の違い

送配電NWの運転自動化

• 日本では送配電ネットワークの自動運転化が進んでおり、遠隔操作可能な開閉器が設置されている

• 遠隔操作可能な開閉器は6~9か所/配電線であり、事故の際、他配電線からの早期普及が可能

• 配電自動化システムの普及率が低く、開閉器の設置のメッシュも、日本と比べて都市部で半分程度、農村部では3分の1程度と少ない。

• 欧米ではスマートグリットに取り組む狙いの一つとして配電自動化システムの普及拡大を掲げるほど。

設備保守メンテを適切に実施

有事の復旧体制整備

• 日本では機器故障が発生した場合は、メーカーとも協力して事故原因を追及し、同型設備の予防保全に役立てている

• また樹木接触による事故防止のための樹木伐採なども、日本では当然のこととして行われている

• 電力会社では常日頃より、訓練を欠かさず、台風襲来時には事務所に復旧要員が待機するなど、事故の発生は避けられないとしても、早期に復旧できるよう、あらゆる備えをしている。

• 日本と比べ、災害発生時の事故原因の追究が不十分(メーカー側に知見が蓄積)

• 樹木接触による事故防止のための樹木伐採が必ずしも実施されていない

• 災害が起こりにくい気候・立地であるため、訓練は最低限度にとどまる。また、末端の作業員では判断できないことが多く、普及に時間がかかることが多い。

日本 欧州、北米

背景 地震、雷など災害が起こりやすい

立地・風土 災害が起こりにくい安定した風土 (米国東海岸のハリケーン程度)

日本電力産業の優位性 停電のしにくさ/災害対応 背景

1-1 1-2

2-2

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2006年に発生した欧州大停電は過負荷に対し連鎖的な送電線遮断が誘発され、停電時間は2

時間超、電力は1,700万kWと大規模な惨事となった。

欧州大停電

総停電量は1,672万kW、影響を受けたのは1000万人、11か国

646万kW

291kW

256kW

211kW 110kW

被害 停電が発生・拡大した背景

• 地球温暖化対策、エネルギー安全保障の観点から、積極的に再生可能エネルギーが導入された

• 電力自由化が進み、発送電が分離していることから、送電線への投資が進みにくい状況になっていた

• 電力網がメッシュ状になっていることから、各所の送電量を事前に予測することが非常に難しく、被害が広範囲に拡大しやすい状況だった

発電側

送電側

(ご参考)日本電力産業の優位性 停電のしにくさ/災害対応 海外事例(欧州)

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米国では、自由化により送配電網の更新が進まず電力の安定供給が実現されにくい構造になっていたため、2000年代まで大規模な停電が頻発していた。

世界各国の電力小売自由化状況

自由化州

非自由化州

凡例:

出所:電気事業連合会他 二次情報よりADLまとめ

1965年 北アメリカ大停電 システムの構築状態の不具合が原因 ナイアガラの発電所から供給される電力は停止し、カナダ・アメリカ北部

が停電となった。 1977年 ニューヨーク大停電 落雷を機に生じた電力負担のアンバランスが原因 完全復旧までに3日を要した。

2000年 カリフォルニア電力危機

電力不足と卸電力価格の高騰による計画的な輪番停電が原因 1998年4月に電力市場の完全自由化をスタートしたカリフォルニア州で、シリコンバレー一帯に輪番停電が実施された。数百万人が影響を受け、卸電力価格の上昇分を小売価格に転嫁できなかった大手電力会社2社が経営危機に陥った。

2003年 北アメリカ大停電 システム障害が原因 アメリカ合衆国4000万人、カナダ1000万人の計5000万人が停電の被害を受け、この停電による金融赤字は60億ドル(約7000億円)と見積も

られた。特に、航空会社や証券取引所は、この日だけで大赤字を計上。

米国における大規模停電

(ご参考)日本電力産業の優位性 停電のしにくさ/災害対応 海外事例(米国)

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日本は他国との連携がないため系統容量が小さく周波数は変動しやすいものの、変動を最小限に抑えることができており、系統運用の技術は高いと言える。 (ただし、日本のような前提に立つ必要がある地域が他にあるのか、その地域で高いレベルの周波数・電圧制御が必要かは不明)

(出所)電気事業の基本的な考え方(一般編) 平成26年7月 電力協同研究会

日本電力産業の優位性 周波数・電圧制御

• 日本の緻密な周波数調整数調整能力は、多国に比べ秀でていると認識している。

- 欧州などの場合は送電線の多国連携が大きく進んでいるが、日本は小さい島国であり、本来は周波数変動が大きくなってしまう 。

- そんな中、現状のレベルに変動幅を抑えていることは、能力が高い。ただし、日本と同様の前提に立つ必要がある国が他にどれだけ存在するのかは分からないが。

機器ベンダー 営業部長インタビュー

1-3 2-2

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周波数が変動すると需要家設備のモーター回転数が変化し、製品の品質悪化、不純物混入、機器の破損等の損害が発生する。

(ご参考)電力品質とは

(出所)電気事業の基本的な考え方(一般編) 平成26年7月 電力協同研究会

電力品質とは

周波数変動

電圧変動

停電(信頼度)

瞬時電圧低下

フリッカ(継続的な微小圧力低下)

高調波

有効電力の需給バランスの変化、大容量発電機の遮断や系統事故による系

統分離等

大容量負荷の開閉、誘導電動機の指導、変圧器の投入等による無効電力

の需給バランスの変化

雷などの自然現象、鳥獣接触、設備不具合等。電力系統の地絡または短絡故障を検出し、事故点を切り離した後

雷などの自然現象が大半。電力系統の地絡または短絡故障を検出し、事故点を切り離すまでの間、電圧低下

ほとんどがアーク炉の始動、停止

位相制御機能をもつ高出力の機器、コンデンサ入力形整流器

発生要因

同期発動機の回転数変動による製品不良の発生

回転機のトルク変動、回転数変動による生産設備への影響

負荷機器の停止

放電灯の消灯、制御装置の誤作動、電動機の速度変動または停止

照明のちらつき

コンデンサや回転機の損失増加、電動機やその他の機器からの騒

音増加

影響

• 糸切れの発生や糸の太さ等の品質に影響(化学繊維製造業)/紙切れの発生や紙の厚さ等の品質に影響(製紙業界)

• 分解・脱硫する圧力制御に影響が生じ、不純物が除去されない(石油業界)

• 圧延工程に不具合が発生し、製品の厚さにムラが発生(鉄鋼業界、アルミニウム業界)

• 緻密な温度制御が必要な化学工場

• 不純物の混入が致命的な電子機器生産工場

• (周波数・電圧変動の項目に類似)

• 作業効率の低下(オフィス、工場作業場など)

• (周波数・電圧変動の項目に類似)

具体例

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周波数については需給バランス制御、電圧については電力系統内の無効電力のバランスにより維持される。

電力品質担保のための取組

(出所)電気事業の基本的な考え方(一般編) 平成26年7月 電力協同研究会

周波数変動

電圧変動

停電

(信頼度)

瞬時

電圧低下

フリッカ(継続的な微小圧力低下)

高調波

電力会社 需要家

設備形成

発電 送配電 系統運用 設備設置・運用

負荷追従能力の確保

AVRによる

自動制御

予備力の確保

-

-

-

-

調相設備の設置

SVC設置(配電)

N-1クライテリアの確保

架空地線の設置

アレスターの設置

-

-

経済負荷配分

負荷周波数制御

電圧監視制御

運用限度の監視

系統切り替え

雷情報の提供

系統切り替え

-

-

-

無停電電源の設置(UPS、CVCF)

フリッカ―対策装置の設置

(SVGなど)

高周波ガイドラインの遵守

(ご参考)日本電力産業の優位性 周波数・電圧制御

• 日本の系統運用担当者は、系統部門だけでなく発電制御についても詳しく、人材の質は海外に比べ高いと感じる。

- 日本の電力会社の系統運用担当者とお話しすると、発電機のコントロールの仕方、出力調整のメカニズムなど深い部分までよく理解している。

- 一方で海外の場合は、自分の担当しかわからない人が多く、理解の程度も劣る。

機器ベンダー 市場開発部長

インタビュー

電力品質担保のための取組

1-3 2-2

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日本は脱硫・脱硝・集塵装置の設置や、有害物質を発生させない運用技術により、他国に比べSOX、NOX等の環境汚染物質の発生を抑えている。

(出所)排出量/OECD.StatExtracts Complete databases available via OECD fs iLibrary、発電電力量/IEA ENERGY BALANCES OF OECD COUNTRIES 2014

EDITION、日本:電気事業連合会調べ 全て2012年度値、中部電力ウェブページ 環境への取組み

日本電力産業の優位性 環境性能

環境性能

2.4

2.0

1.11.0

0.7

0.30.2

1.4

2.0

0.6

1.3

1.0

0.5

0.2

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

仏 加 米 英 伊 独 日本

SOX

NOX

火力発電におけるSOXNOX排出量(2012年)

(g/kWh)

SOX対策

NOX対策

煤塵対策

• 硫黄分の少ない石油や硫黄分を含まないLNGを燃料としたり、排ガスが流れる煙道に排煙脱硫装置を設置し、硫黄酸化物(SOx)の排出量を抑制

• 燃料の燃える速度を遅くして燃焼温度を下げ、窒素酸化物の発生を少なくする方法や、排ガスが流れる煙道に排煙脱硝装置を設置し、NOXの排出量を抑制

• LNG火力の場合、燃料にばいじんの発生がないLNGを使用したり、燃焼状態を常に監視し、ばいじんの発生を抑制

• 石炭火力や石油火力では、排ガスが流れる煙道に静電気を利用した電気式集じん装置を設置し、ばいじんを捕集

脱硝装置

脱硫装置 集塵装置 集塵装置

1-4

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発電効率の良さは、最新設備の導入、適切な設備管理、オペレーション能力により実現されている。

発電効率の高さ

火力発電

発電効率推移

燃料別発電効率

• 日本電力は発電効率が他国に比して高いが、これは最新の設備を取り入れていること、石炭以外の燃料比率が高いこと、適切な設備の保守メンテ、運用能力の高さにより実現されている。

• ただし、発電効率に対しどれが大きなインパクトを及ぼす優位性になっているのかは分からない。

- (特に資金が潤沢だった以前までは)日本の産業にメリットを提供するという視点も持っておられ、最新の発電機を他の国に先駆けて導入されていた。

- 日本の電力会社は、安定供給に対する責任意識が高く、メーカーが推奨する基準で保守・メンテナンスを誠実に実施する。

- 日本の電力産業の強みとなる、長い設備寿命や、安定供給などは厳格な定期点検基準とそれを支える総括原価方式による豊富な資金力により実現できている部分も大きかったと認識している。

- (従って前提が変わる海外の場合に、日本の強みをどれだけ維持できるかは分からない)

機器ベンダー インタビュー(一部再掲)

日本電力産業の優位性 発電効率

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日本は適切な運用管理を行うことで、火力発電の経年劣化が小さいレベルで抑えられている。

(適切な保守管理に基づくものであり、最終的なLCCの低減に繋がるかは要検証)

日本電力産業の優位性 設備寿命

設備寿命の長さ

火力発電の経年劣化比較

• 日本の電力会社の優位性としては、適切な設備管理によって実現される設備寿命が長い、燃焼効率が高い、安定供給などがある。

- 日本の電力会社は、安定供給に対する責任意識が高く、メーカーが推奨する基準で保守・メンテナンスを誠実に実施する。

- 日本の電力産業の強みとなる、長い設備寿命や、安定供給などは厳格な定期点検基準とそれを支える総括原価方式による豊富な資金力により実現できている部分も大きかったと認識している。

- (従って前提が変わる海外の場合に、日本の強みをどれだけ維持できるかは分からない)

機器ベンダー インタビュー

2-1

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要地近接性評価等の託送料金上の考慮が無い場合、卸電力取引の広域化が起こり系統増強が必要になりやすい。現に、米国では電力自由化後、送配電投資額の増加傾向にある。

(出所)Construction Expenditures for Transmission and Distribution Years 1984 through 2013

0

5,000

10,000

15,000

20,000

25,000

30,000

35,000

40,000

0

500

1,000

1,500

2,000

2,500

3,000

3,500

4,000

20,562

15,066

20,858

12,195

20,765

16,923

1990

5,637

21,255

5,280

20,069

5,345

21,659

4,578

20,215 20,571 19,759

4,574 4,873

21,106

2010 2013 2005 1995 2000

10,553

23,660

18,953

8,828

24,972

9,082 9,679

23,333

8,004

22,764

19,830 18,053

4,883

16,194

1985

5,959

21,239 21,058 22,068

5,784

3,489

18,275

3,536

21,311

4,135

10,928 6,104 5,956

21,602

6,665

22,664

6,738

17,683

22,301

20,288

4,147

4,908 5,499 5,372

17,747

20,487

3,961

Ele. Consumption(billion kWh) 右軸

Transmission(Millions of Dollars) 左軸

Distribution(Millions of Dollars) 左軸

(billion of kWh) (Million of Dollars)

発電自由化(1992~)

送配電分離(1996~)

自由化

動向

資産を持たず自ら設備投資をしないISO/RTOには経済性を追求するインセンティブが十分に働きにくいという問題が指摘されている。

ISO/RTOは今や送電計画の策定も

担っているが、信頼度を過度に重視する意思決定により長期的に非効率な設備形成となることが懸念され

ている

(研究機関 研究員)

3-1

日本電力産業の優位性 系統設備の最適化

米国 送配電網投資額の推移

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運転最適化のためには、プラント全体を、故障や不具合の“暗黙的なメカニズム”を含めて把握しているオペレーターの協力が不可欠。

3-2

プロセス全体の最適化

日本電力産業の優位性 プラント全体の最適化

GE

Operator

•海外機器ベンダーはガスタービン周辺にセンサを設置し最適化しているのに対し、電力オペレーターや日本のメーカーはプラント全体を見ており、最適化の範囲が広い。

- 故障などの不具合はタービン領域以外も多く発生しており、その部分をカバーしてあげることは価値になる(タービン周り60に対してその他の不具合は40のイメージ)(機器ベンダー)

•運用効率化のためにはプロセス全体に対する理解は不可欠であり、オペレーターの協力がないと難しい

- IoTで得たデータからは、何が異常か

は分かるが、それに対してどう対処すればいいのか分からない(機器ベンダー)

- またデータのみから結論付けることは危険であり、現場でオペレーションに携わる専門家の意見を聞いて妥当性を確認しなければ、実際の機器制御までつなげられない(機器ベンダー)

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Content

1 日本における電力産業の優位性

2 設備管理のデジタル化による効果試算

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△ △ △ 〇 △ 〇 〇 〇 △ × ‐

設備特性の観点からデジタル化のメリットが大きいのは風力、設備量の観点でインパクトが大きいのは火力・送配電か。

前提としての設備特性の理解

原子力 火力 (石炭・石油・ガス)

水力 太陽光 風力 送電

発電 送配電

配電

※1)資源エネルギー庁エネルギー白書2016を基にADL試算 、2)矢野経済研究所、3)日本風力発電協会、4)電力事業連合会 送配電については2010年の値、一般電力事業者10社の合計値を引用(自営線は含まない) 送電は電線路こう長、配電は電線延長を引用

設備管理にとっての意味合い

•事故を起こさない“制御技術”が非常に重要な意味を持つ

•人が実施するには危険な設備点検の代替余地あ

りか

•エネルギー投入量制御、OTの観

点からの難易度は(他に比して)高くないが、発電設備容量が大きく絶対値として改善効果は高い

•発電所の制御は比較的容易であり、設備の点検管理を合理化する点に改善の余地

ありか

•機器の制御よりも、エネルギー源(日射量)の予測や発電量を下げる要因の排除(汚れ・植栽等)が価値を生む

•環境(風向き・強さ)に適合した設計を行うことにより大幅な発電効率向上が達成される

•点検管理の技術者が不足し、デジタル化のメリットは大きい

•高所にあるため、人力で行う保守・点検は工数がかかり、高コスト

•不具合時の影響範囲も広く、攻めの保守管理が求

められる

•設備量が多く、対象範囲も限られるため、問題が起こった後の対

応が主

•超高圧(~50万V)の電力を運ぶ、太い銅線

•不具合が起きた場合の影響範囲が広い

•変電所で減圧された電力を、需要家へ運ぶ

•不具合が起きた場合の影響範囲は比較的狭い

•安定したエネルギー供給を可能とするが、事故時の被害が甚大

•エネルギー投入量を制御可能だが、投入燃料種類や環境に合わせたタービン制御が必要

•水投入量は制御が容易

•安定的な資源を確保できる場所が限られる

•エネルギー源である日射が天気・時間帯により変動し、発電量が変動

•タービンを使わないため、稼働は容易

•エネルギー源である風の向き・量が不安定で制御が最も困難

•故障事故も多発している

設備容量※ (2020年@日本)

47,549MW1)

(廃炉しない場合) 166,620MW1) 49,203MW1) 1,807MW2) 10万km4) 405万km4) 3,300MW3)

設備の特性

エネルギー源

核分裂

エネルギー 化石資源の燃焼エネルギー

水力の位置エネルギー

太陽光 風力の運動エネ

ルギー ‐

発電方法 タービン

(電磁誘導) タービン

(電磁誘導) タービン

(電磁誘導) 光起電力

タービン

(電磁誘導) ‐

<凡例>

エネルギー投入量制御の難しさ

発電オペレーションの制御の難しさ × 〇 △

(難) (易) × 〇 △

新規価値提供

省力化・効率化 ✔

✔ ✔

✔ ✔ ✔

Page 19: 日本電力産業の優位性とデジタル化効果試算 - METI日本電力産業の優位性とデジタル化効果試算 第2回 電力インフラのデジタル化研究会(E-Tech研究会)

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設備稼働率の向上、保守管理の省力化・効率化という性質の異なる2種類効果について試算を行った。導入率などのパラメタは考慮せず、“ポテンシャル市場”という前提で試算を実施。

設備管理のデジタル化による効果試算 サマリ

原子力 火力

(石炭・石油・ガス)

水力 太陽光 風力 送配電網・変電所

発電 送配電

試算の基本的考え方

最もポテンシャル効果が高いのは、設備容量が大きい火力発電所の稼働率向上効果であり、次に設備量が多い送配電網・変電所点検、制御が難しい風力発電が続く。

設備容量※ (2020年@日本)

47,549MW1) 166,620MW1) 49,203MW1) 1,807MW2) 3,300MW3) 10万km(送) 405万km(配)

※デジタル化の試算効果は、公開情報及び次ページ以降の条件に基き算出

適切な設備管理を実施し、設備稼働率を向上させることで

売上が上昇した場合

遠隔監視・故障予知等による保守メンテの効率化、省人化によりコストが改善した場合

×

試算の基本的考え方

電源別の

発電量

(kwh/年)

電源別稼働率向上率(%)

電力単価

(円/kWh) × ×

稼働率向上分売上増

(円/年) =

×

電源別の

発電量

(kwh/年)

電源別の保守・点検コスト(円/kWh)

保守・点検コスト削減率

(%) × ×

保守点検効率化による費用減(円/

年)

NA NA NA NA

NA NA

設備稼働率の向上

保守管理の省力化・効率化

<凡例>

デジタル化による効果

(小) (大)

△ ◎ ○

◎ ○

○ △ △ △

売上向上系

コスト削減系

省力化・効率化)

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