はじめての「まわしよみ新聞」に笑顔が絶えない学生たち ... ·...

2015.12 Vol. 11 横浜市立西谷中 × セブン&アイ・ホールディングス 静岡大付属島田中 × 読売新聞/ACE 5 佼成学園女子中高 × 順天堂大女性スポーツ研究センター 6・7 鎌倉市立大船中 × 4企業 10・11 学校×企業 巻頭特集 読んで・語って・学ぶ「まわしよみ新聞」 12・13 第64回 読売教育賞 14 お知らせ・短信 15 リレーエッセー ハンガリー・デブレツェン大学「英語で医学を学ぶ」 16 18歳の1票本紙記者 出前授業 2・3 第2回 高校新聞部  インターハイ新聞コンクール結果 4 高校生 東北の被災地とインドネシアを訪問 8.9 はじめての「まわしよみ新聞」に笑顔が絶えない学生たち。大胆な見出しも手作りならでは(東京都西東京市の武蔵野大学で、12・13面へ)

Transcript of はじめての「まわしよみ新聞」に笑顔が絶えない学生たち ... ·...

2015.12

Vol.11

横浜市立西谷中 × セブン&アイ・ホールディングス静岡大付属島田中 × 読売新聞/ACE 5

佼成学園女子中高 × 順天堂大女性スポーツ研究センター 6・7

鎌倉市立大船中 × 4企業 10・11

学校×企業

巻頭特集

読んで・語って・学ぶ「まわしよみ新聞」 12・13  第64回 読売教育賞 14

お知らせ・短信 15  リレーエッセー ハンガリー・デブレツェン大学「英語で医学を学ぶ」 16

「18歳の1票」本紙記者 出前授業 2・3

第2回 高校新聞部 インターハイ新聞コンクール結果 4

高校生 東北の被災地とインドネシアを訪問 8.9

はじめての「まわしよみ新聞」に笑顔が絶えない学生たち。大胆な見出しも手作りならでは(東京都西東京市の武蔵野大学で、12・13面へ)

23 2015.12〈vol.11〉 2015.12〈vol.11〉

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巻頭特集巻頭特集

本紙記者

出前授業

―学校での主権者教育の一助に

り、「4歳の保育園児は一人で

お風呂に入れないよね」など

と問いかけた。渡部詩織さん

(17)は子育ての負担の重さに

驚いた様子で「小さい子どもが

いると共働きはできなくなるの

では」と話した。

政治参加の第一歩

暮らしやすい社会を考える

 

渡辺記者は「暮らしやすい社

会にするにはどうしたらいいの

か。それを考えるのが政治参加

の第一歩」と話し、初日の授業

を終えた。

 

同校では、今春から3年生の

2クラスで主権者教育を行って

いる。授業を担当する松山市の

NPO法人「ネクストコネク

ション」代表、越智大ひ

貴たか

さん

(28)は「続けることで生徒が

自分の意見を持ち、表現できる

ようになってきた。記者の出前

授業は実際の取材に基づいてい

てリアリティーがある。生徒に

も浸透していた」と語った。

(39)」「小学2年の長男(8)」「保

育園に通う長女(4)」、5人の

場合は「おばあちゃん(70)」

の役をそれぞれ決め、共働き家

族を疑似体験した。

 

まず朝起きてから夜寝るまで

の1日に「やるべきこと」「や

りたいこと」をそれぞれが考え

てメモする。互いの1日を持ち

寄り、突き合わせると……。

 「ご飯を作る」「長女の保育

園の送り迎え」「掃除と洗濯」

―。家族の中で誰もやる人が

いなかった。

 5人グループでは、おばあちゃ

ん役に「これもお願い」「あれ

も」。長女役から「おばあちゃ

ん、めっちゃ大変やん」と声が

あがった。

 

話し合いには渡辺記者も加わ

共働き家族を疑似体験

 「君たちが50歳になるころ、

日本の人口は1億人前後。その

後は8700万人まで減るかも

しれないよ」

 

松山市の私立聖カタリナ女子

高校、3年生の教室。読売新聞

東京本社編集委員、渡辺嘉久記

者(51)の言葉に、生徒から

「えー」と驚きの声があがった。

「18歳の1票 

少子化」の紙面

(10月3日)を掲げて「君たち

と同じ18歳の人口も今はピーク

の半分」と説明されると、生徒

はより身近な問題に感じたよう

だ。

 

4~5人ずつに分かれたグ

ループワークでは「商社に勤め

る夫(41)」「百貨店で働く妻

日本の課題を中高生と考える企画「18歳の1票」の記事を

使った読売新聞記者による初めての出前授業が10月15、16

日に行われた。学校での主権者教育の一助になれば、とい

う狙いだ。「少子化」をテーマにした授業の様子を紹介する。

少子化の進む未来を

想像して討論

 

2日目の16日は、少子化が進

む未来を想像し、暮らしへの影

響を考えた。

 

授業は1日目と同様、3年生

を対象に4、5人のグループに

分かれて進められた。

 「高校の生徒が200人から

100人に減ったらどうなるだ

ろう。毎月の授業料を3万円と

すると、生徒数半減で高校の収

入は600万円が300万円に

なるよね」

 

渡辺記者が問いかけた。生徒

は意見を出し合う。

 「先生の給料が減る」「学費が

上がる」。「食堂の料理が値上が

りする」との意見には「えー、

やだ」の声が。

 

渡辺記者は「これまで通り校

舎や体育館の維持にお金をかけ

られるかな。給料を払えず先生

が減ると、必要な教科に専門の

先生を置けなくなるかもしれな

い」と指摘した。

 

グループワーク「日本がもし

100人の村だったら」では、

高齢者が増えると年金もかさ

み、支える現役世代の負担が重

くなることを学んだ。

識者の声に耳傾け

 

授業では話し合いの参考とし

て識者の意見を紹介。実際に取

材した渡辺記者は、紙面掲載の

意見とは別に「18歳の君たち

へ」というメッセージを預かっ

てきていた。

 

岩田喜美枝・資生堂元副社長

(68)「出産、育児期でも仕事は

辞めず、キャリアを築いてほしい」

 

池本美香・日本総研主任研究

員(49)「社会の仕組みに自分

を当てはめるのではなく、生き

づらいと思ったら仕組みを変え

よう。18歳選挙権はその第一歩」

 

増田寛也・元総務相(63)「地

方では若い層が少なくなり、君

たちは期待されている」

生徒「授業で視野が広がった」

 

2日間の授業後、細貝野乃花

さん(18)は「少子化には関心

を持ち続けないといけない。授

業を受けて視野が広がった」と

話した。同校の横山博文教頭

(46)は「主権者教育はホット

な題材がないと心に響かない。

取材を交えた話に新鮮さを感

じ、生徒は興味を持って授業に

臨んでいた」と振り返った。

18歳の1票 本紙での掲載(10月のテーマ「少子化」) 3日●「今を知る」   ……ルポを交え、日本の人口減少の原因を示した10日●「背景を探る」   ……少子化の背景に未婚・晩婚・晩産が関わっていることを解説17日●「予測する」   ……年金などの支え手となる若者が減っていく課題に触れた24日●「話し合う」   ……識者の意見を紹介し、考えるヒントを提供する

「少子化」身近な問題に

人口減で暮らしはどうなる?

◆出前授業は契機に

 

主権者教育の経験が豊富な立

命館宇治中高の杉浦真理教諭

(52)は「主権者教育は、社会

の出来事を自分の課題として捉

えて判断し、社会に働きかける

力を身につけるのが狙いだ。多

くの学校は経験がなく『どうし

たらよいか』と相談される。選

挙管理委員会や新聞社など外部

の組織と連携する出前授業は、

主権者教育に取り組むきっかけ

として活用できる」と話してい

る。

少子化の影響について話し合う生徒たち。中央右は渡辺嘉久編集委員(10月15日、聖カタリナ女子高校で)=秋元和夫撮影

紙面を教材に、話し合う生徒たち(10月16日)

1日目

新聞記者の仕事って? 記者の自己紹介

「日本の人口は何人?」「18歳人口は?」

クイズ形式で今を知る

「高校の部活動は助っ人頼み」「18歳の1票」の紙面を使い

取材内容を紹介

《グループワーク》「共働き家族を疑似体験」

4、5人に分かれ、家族の1日を疑似体験、子育ての負担を感じる

2日目

「結婚・出産が減った」 人口減少の仕組みを解説

《グループワーク》「生徒数200人の高校が100人に!」

少子化が学校にどう影響するか話し合う

「日本がもし100人の村だったら?」 少子高齢化の未来を考える

「仕組みを『変える』という発想」 識者のメッセージを紹介

●「18歳の1票」~少子化編 出前授業の流れ

(この記事の本文は、読売新聞の教育面で10月31日、11月7日に掲載されました)

第2回 高校新聞部

42015.12〈vol.11〉

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リポート

イ新聞コンクール」(主催・

読売新聞社、後援・全国高

等学校体育連盟、全国高等

学校文化連盟)で、福島県

立郡山東高校新聞部が制作

した「郡山東高校新聞」が

最優秀賞・読売新聞社賞に

選ばれた。

 

ブランケット版見開きの

大胆なレイアウトで、各運

動部部長の写真と一言コメ

ントを掲載してインターハ

イに臨む意気込みを伝える

一方、4回にわたる速報版

の「ひと」欄で、インター

ハイ出場選手などの人物像

をたくみにクローズアップ

したことが高く評価された。

 

このほか、写真や企画な

どで優れた新聞を作った6

インターハイ新聞コンクール

最優秀賞受賞に喜ぶ郡山東高校新聞部の部員たち

大胆なレイアウトが高く評価された「郡山東高校新聞」

【審査員】審査員長・中村明(読売新聞東京本社紙面審査委員長)松井孝二(全国高等学校新聞教育研究会長)中根淳一(神奈川県立横須賀高校教諭)秋山哲也(読売新聞東京本社写真部長)

最優秀賞●読売新聞社賞 ………………… 福島県立郡山東高校

優 秀 賞●ルポルタージュ(ポカリスエット賞) ………………… 弘学館高校(佐賀県)●記  事 …… 滋賀県立彦根東高校 ………………… 崇徳高校(広島県)●写  真 …… 長崎県立西陵高校●企  画 …… 兵庫県立神戸鈴蘭台高校●レイアウト …… 向上高校(神奈川県)

奨 励 賞◆山形県立米沢興譲館高校 ◆石川県立金沢泉丘高校 ◆同金沢桜丘高校 ◆福井県立美方高校 ◆山梨県立甲府第一高校 ◆静岡県立韮山高校 ◆同沼津東高校 ◆全国高校総体奈良県高校生活動「わっしょい倭」 ◆島根県立出雲高校 ◆長崎県立長崎工業高校

校に優秀賞、9校1団体に

奨励賞が贈られた。今年は

昨年より5件多い32校1団

体から応募があった。

選手支える

周辺の人の熱気も

 

審査員長の中村明・読売

新聞東京本社紙面審査委員

長は「各校の紙面からは、

インターハイにチャレンジ

する部員だけでなく、選手

たちを支える周辺の人たち

の熱気も伝わってきた。選

手の戦いぶりを的確に報じ

る記事、臨場感あふれる写

真など、紙面づくりの基本

を押さえた本格的な新聞が

多かった」と講評している。

最優秀に

福島県立郡山東高

32校1団体が応募

 

全国高校総体(インター

ハイ)や予選などを取材し

た学校新聞を顕彰する「第

2回高校新聞部インターハ

5 2015.12〈vol.11〉

学校×企業

社会の変化に合わせた

進化を学ぶ

 

横浜市立西谷中学校で11月10

日、「職業の話を聞く会」が開

かれ、読売教育ネットワークに

参加しているセブン&アイ・

ホールディングスは、トレーニ

ング部の島哲朗さんと千後嘉子

さんが1年生に「『近くて便利』

を考える」をテーマに授業を

行った。

 

最初に島さんがセブン‐イレ

ブンの現在の店舗数や米国から

始まった歴史などを紹介。日本

の1号店は1974年、東京都

江東区で、朝7時から夜11時ま

での営業だったが、1年後には

24時間営業になったと説明。小

売店の減少、少子高齢化、女性

就業率の高まりなど、社会の変

化に合わせ、営業時間や品揃え

を変え、商品の宅配も開始して

いることを明らかにした。

 

生徒たちはその後、5班に分

かれ、架空の町の地図を使った

シミュレーションゲームを行っ

た。地図に描かれた工場地帯、

住宅地、海辺、山間、駅前、大

「ことばの授業」ワークショップ静岡大付属島田中 × 読売新聞・ACE

横浜市立西谷中

×

セブン&アイ・ホールディングス

出前授業「近くて便利」を考える

地図を広げて説明する千後さん。別の教室では読売新聞社とNPO法人企業教育研究会による「ことばの授業」が行われ、生徒たちは取材の仕方、メモの取り方などを学んだ上で架空の市の駅前で発生している放置自転車問題に関する新聞記事を書いた。

学など様々な立地にあるコンビ

ニ店のうち一つを選んで、品揃

えを考え、なぜその店を選び、

そういう品揃えにしたのかを各

班が発表した。5班すべてが駅

前の店を選び、通勤客を意識し

て傘や新聞を品揃えとして挙げ

た班もあった。

 

最後に千後さんは「実際は、

毎日品揃えを考えています。雨

が降りそうなとき、お祭りのあ

るときでお客さんのほしいもの

が変わるから

です。注意し

てみてくださ

い」と締めく

くった。

 

授業を受け

た服部凌吾君

(13)は「お

客さんのこと

を考えている

努力が伝わり

ました」と話

していた。

国語科教員ら

記事の書き方学ぶ

 

静岡大学付属島田中学校(静

岡県島田市)で11月6日、ワー

クショップ「実社会・実生活で

役立つ『書く力』とは」が開か

れ、講師の読売新聞東京本社教

育ネットワーク事務局の保井隆

之記者が、わかりやすい文章の

書き方などを伝えた。

 

講義は、読売新聞がNPO法

人企業教育研究会(通称AC

E、理事長=藤川大祐・千葉大

学教授)と取り組む出前授業

「ことばの授業」のデモンスト

レーションを通して、県内の国

語科の教員ら、教育関係者約40

人が記事の書き方を実際に体験

する形で進められた。

 「ことばの授業」は、記者が

教員志望の大学生スタッフとペ

アを組んで進行し、児童生徒が

楽しみながらコミュニケーショ

ン・スキルを身につけられる構

成になっている。「インタビュー

をしよう」「記事を書こう」「見

出しをつけよう」の3つの基本

プログラムがあり、毎年全国の

小中高校約60校で実施している。

 

架空の事件を扱った映像が流

れ、まず保井記者が目撃者役の

山田恵李さん(千葉大大学院1

年)にインタビューを行い、そ

の場で記事を執筆。

 

保井記者は書き上げた原稿

をみせ、「最も大切な内容を最

初に書く」「その後は大切な順

に書いていく」など、「逆三角

形の文章」を意識して文を書く

ことを強調。記事を書くポイン

トを押さえた後、参加者はプロ

ジェクターに映されたニュース

を見て、実際に記事を書く練習

をした。

 「直す箇所がほとんどない」

と保井記者から花丸をもらっ

た中学校教諭の佐藤陽介さん

(23)は「文章の中で、なにが

大切かを意識するだけで、文章

が上手く書けたような気がしま

す」と笑顔で語っていた。また

参加者からは「書くことの大切

さを改めて感じた」「子どもた

ちにも、このプログラムを受け

させたいと思った」などの声も

上がった。

山田さん(右)とのかけ合いで「ことばの授業」のデモンストレーションをする保井記者

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リポートリポート

 順天堂大学女性スポーツ研究センターは10月26日、佼成学園女子中学高等学校(東京都世田谷区)で「女性アスリートのコンディショニング」「女性スポーツリーダーシップ」をテーマにした出前授業を行った。2014年全国高校総体で27年ぶり2度目の優勝を達成したハンドボール部のほか、バスケットボール部とバレーボール部に所属する中高生、監督ら約70人が専門家の講義に耳を傾けた。

 

第2部では小笠原悦子セン

ター長が登場した。

 

小笠原さんの講義は、女性ス

ポーツ振興に向けた取り組みの

説明から始まる。

 「既に国際競技団体の女性役

員比率は2割近くに達し、昨

年、世界女性スポーツ会議は

『4割』という目標を打ち出し

ました」。世界がダイナミック

に動きだしていると話した後、

一拍おいて「日本はどうかとい

うと5%程度。これが現実で

す」。

失敗恐れず、よいチーム作り

 

何とか現状を打破したい、女

性リーダーを一人でも多く育成

したい。その思いにかられ、今

夏、日本初の女性コーチアカデ

ミーを企画し、元五輪メダリス

トら32人が2泊3日の勉強会に

参加したことを紹介。その勉強

会で実践したコーチング理論を

披露したうえで、「よいチーム

を作るにはどうしたらいい?」

と生徒たちに投げかけた。

 「成果があがるムードを作る

こと。それぞれの強

みを最大限に活かせ

る価値観を育むこ

と。失敗を恐れるカ

ルチャーを作って

は決して勝てませ

ん」。小笠原流リー

ダーシップを伝授し

ていく。

大切なイメージ

トレーニング

 

夢を視覚化する大

切さも説いた。

 

中学時代から五輪

の競泳コーチを目指

してきた自らの体験

女性アスリートの心得を指南

 

若い女性アスリートは太るこ

とを気にせず、必要なエネル

ギーを摂取すること。怠ると

……無月経や疲労骨折など女性

特有のスポーツ障害になります

─。講師役の鯉川なつえ副

センター長が生徒たちに伝えた

メッセージだ。

 

鯉川さんは1993年、ハー

フマラソン学生日本新記録を

マーク、2大会連続でユニバー

シアード代表になった長距離ラ

ンナー。実業団を経て、現在は

母校の順天堂大学でスポーツ健

康科学部先任准教授、陸上競技

部女子監督として最新の研究に

基づき学生を指導している。

 

授業では、最高のパフォーマ

ンスを発揮するためには自らの

体を知る必要があると説明し、

月経を司る女性ホルモンの働き

や、なぜ女性がじん帯を損傷し

やすいかをスクリーンに映して

見せた。

 

トップアスリートでもあった

専門家の指摘に、生徒たちは身

を乗り出した。ハンドボール部

はU

18(18歳以下)日本代表

が複数いる強豪で、監督やコー

チ、理学療法士らが選手たちを

手厚くサポートする。だが、激

しいボディコンタンクトや1キ

ロ以上もやせるという激しい練

習で、ケガや月経異常に悩む生

徒が少なくない。

 

そんな彼女たちに鯉川さんが

提示したのは、2007年に

アメリカスポーツ医学会が発

表した「女性アスリートが陥

りやすい3つの障害」(FAT

=Female A

thlete Triad

)だ。

 

3障害とは、①利用可能エネ

ルギーの不足、②視床下部性無

スポーツ障害の予防は食べること!

夢をたぐりよせよう

熱いエール

を語り、「20年間、競泳の全米

女子学生選手権決勝を見学し

て、優勝選手とプールに飛び込

むコーチの姿をまぶたに焼きつ

けた。いつか私もという夢は、

ソウル五輪でかないました」と

イメージトレーニングの大切さ

を訴える。

 「すごいね」とざわつく生徒

たちに、「テキサス大学で短期

インターン中に素晴らしい女性

と出会い、それがきっかけで私

は米国で博士号を取った。みな

さんにも必ずロールモデルはい

る。その人を見つけ、追い続け

てください。たぐりよせれば夢

月経、③骨粗しょう症のこと。

利用可能なエネルギー不足と

は、身体機能が正常に働く余裕

がない状態をさし、鯉川さんは

「この状態が続くと女性ホルモ

ンのエストロゲン分泌が抑制さ

れ、無月経、骨量低下による疲

労骨折につながります」と3症

状の相関関係を解説した。

練習がきつかった日は……

 

予防方法はシンプル、しっか

り食べることだ。必要なエネル

ギーを摂取すればFATになら

ないことを数式で示し、自らの

体験を交えながら「練習がきつ

かったと感じた日は運動終了

から45分以内にエネルギーを

チャージ」「カルシウムを摂取

するなど、アスリート思考の食

習慣を心がけよう」。次々とア

ドバイスしていった。

第1部

第2部

佼成学園女子中高 × 順天堂大女性スポーツ研究センター

鯉川さん(右)の問いかけに手をあげる生徒たち

身振り手振り、熱く語る小笠原さん

出前授業後、体育館で練習するハンドボール部員たち。将来、海外でプレーすることを目指す生徒もいる

◆バスケットボール部・砂川亜紀さん「小さな目標を足がかりに、夢に近づこうという話が勉強になった。弱い自分に勝つことから私は始めたい」

◆バレーボール部・足立沙菜さん「自分のことで精一杯という状況が多いが、仲間をもっと理解しないといけないと思った」

石川浩和 ハンドボール部監督

「思春期の女の子には体重を増やすことへの葛藤があるが、今回、専門家から指摘されて食事の大切さが分かったのではないか。スポーツに打ち込みながら自立した女性を目指すことの意味を教えてくれたのも大きな収穫です」

は近づいてきます」。熱いエー

ルで授業を締めくくった。

相次ぐ質問

目指せD

ual Career

 

全授業が終わると生徒たちか

ら質問や相談が相次いだ。

 「エネルギー摂取の大切さが

分かりました。でも、練習後、

お腹がすきません……」。ハン

ドボール部GKの鈴木梨美さん

が悩みを明かすと、鯉川さんは

「食べるためのエネルギーだけ

は残さないといけない。どうし

ても体が受けつけない場合は牛

乳。豪州ではチョコレートミル

クを飲みます」とアドバイスした。

 

同部前主将の初見実椰子さん

が「女性スポーツの振興のため

に、高校生の私たちが今できる

ことはなんですか」と尋ねると、

小笠原さんは「英語を勉強して

ほしい」と注文。グローバル社

会で英語を駆使できれば情報量

が一気に増えるためで、「学力

の基礎ができていれば必要なと

きにスパートできる。文武両道

のDual Career

を目指せば、自

ら将来を選べる人生が待ってい

ます」。最後まで熱く語った2

人に大きな拍手がわきおこった。

のリスク!30 を切るとカロリー不足

食事から得られるカロリー

運動で消費するカロリー

30100%

体脂肪%除脂肪体重 体重 kg × 1-

女性アスリートが陥りやすい3つの障害

F emale A thlete T riad

利用可能エネルギー

不足

視床下部性無月経 骨粗しょう症

出前授業後も練習!

Jakarta

Miyagi

89 2015.12〈vol.11〉 2015.12〈vol.11〉

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リポートリポート

第12回海外プロジェクト探検隊参加者渡辺 啓介 君 (都立日比谷高校2年)田辺 雄斗 君 (桐蔭学園中等教育学校5年)太田 直希 君 (宮城県仙台第二高校2年)酒井恵理香 さん (渋谷教育学園渋谷高校2年)佐藤 千夏 さん (宮城県気仙沼高校2年)川内 彩可 さん (都立戸山高校2年)

 高校生を海外へ派遣し、ビジネス現場視察や現地の人たちとの交流を通じて体験したことを読売新聞紙上などで発信する「海外プロジェクト探検隊」(主催・読売新聞社、特別協賛・三菱商事、後援・気仙沼市、インドネシア共和国大使館、協力・気仙沼信用金庫)が今夏、実施された。第12回目となる今回は、インドネシア・ジャカルタのプロジェクト現場訪問に加え、東日本大震災の被災地を巡る二つのツアーが組まれた。東京、神奈川、宮城の1都2県から6人が参加し、アジアの発展と被災地復興を共に考え合った。

被災地復興に思い寄せ

海外ビジネス最前線を取材

第12回海外プロジェクト

探検隊

小泉氏「次に自分が

何をするかを考えて」

 

被災地で感じた思いを政治家

と共有したいと、高校生は9

月、復興庁に小泉進次郎・復興

大臣政務官(当時)を訪ねた。

震災の風化が一番の懸念だった。

 

小泉氏は「風化は避けられな

い。嘆くより、一人でも多くの

人が被災者と交流できるように

しよう」と話した。その上で「被

災地訪問をした皆さんは、次の

行動を考えて。自分が、自分の

街が被災した時、次に大きな災

害が発生した時、何をするか考

えてほしい」と呼びかけた。

 

降幡氏はインドネシア語に加

え、地方語のスンダ語の研究者

でもある。「多言語・多文化に

触れること」というタイトルで

講義した。

 

自身のインドネシア留学経験

を話しながら、異なる国の文化

と触れ合う意義、多くの文化と

の交流によって多角的な思考を

身につけることで、自己を再認

識できることなどを説いた。

被災の教訓を伝える意義

 

ジャカルタツアーに先立つ、

7月31日から8月2日、高校生

たちは東日本大震災(2011

年3月11日)による津波で壊滅

状態となった被災地を語り部ガ

イドとともにバスで巡った。宮

城県名取市の閖ゆ

上あげ

地区、同県気

仙沼市、南三陸町など、津波直

撃の傷痕が生々しい現場に声を

失うこともしばしばだった。

 

南三陸町では、同世代の生徒

を含む大勢が亡くなった学校の

校舎などを回った。43人の町職

員らが亡くなった南三陸町の

「防災対策庁舎」は、赤い鉄骨

がむき出しとなった無残な姿を

さらしていた。最後の最後まで

住民に防災無線で津波襲来と避

難を呼びかけていた女性職員が

犠牲となったことなどを聞かさ

れた。被災者、犠牲者の恐怖や

悲しみを思い、みんなで手を合

海外ビジネスに感じた

日本の細やかさ

 

8月25~29日のジャカルタツ

アーでは、三菱商事が出資する

自動車関連企業を中心に巡っ

た。三菱自動車や三菱ふそうト

ラック・バスを生産する「KR

M」社、部品製造の「MKM」

社、完成車の販売、輸入を担う

「KTB」社など。

 

三菱商事は戦後、日本企業で

は初めて現地に自動車工場を

な陽気さと対人関係での積極性

を取り入れることができれば、

より深みのある人間になれると

思った」と話した。

降幡准教授「異文化と

触れ合い、多角的思考を」

 

ジャカルタツアー中、東京外

国語大学の降幡正志准教授が読

売教育ネットワーク初となる海

外での出前授業を実施、探検隊

の高校生が受講した。

日本人職員の説明を聞きながら、MKM社工場を見学する高校生ジャカルタで行われた海外初の出前授業

津波被害を受けた南三陸町の防災対策庁舎前で、地元ガイドの話に聞き入る高校生

高校生との意見交換に臨んだ小泉進次郎氏(右)

もたたえられている。前奏が流

れた途端、大学生から大歓声が

上がり、大合唱となった。

 「日本語で話しかけてもらえ

て感激した。いろんな国の人と

その国の言葉で交流できるよう

に勉強していきたい」と川内彩

可さん。

 

太田直希君は「日本人はつつ

ましさゆえに、国際社会におい

て損をすることもあるのではと

考えた。インドネシア人のよう

わせた。

 

高校生はみんな東日本大震災

当時、小学校6年生だった。激

しい揺れを経験した宮城県から

参加した2人も含め、津波が直

撃した沿岸部に入るのは初めて

だった。佐藤千夏さんは「どこ

で地震が起きても『死者ゼロ』

となるよう、被災体験のある私

たちが教訓を伝えなければ」と

誓いを立てた。

 

田辺雄斗君は「この悲惨な記

憶を風化させてはいけない。自

分の見たことを多くの人に伝え

る使命を背負わされたように感

じている」と話した。

作った。現在は、部品製造から

組み立て、販売、金融まで、「バ

リュー・チェーン」と呼ばれる

幅広いビジネス展開で、トラッ

ク分野では市場占有率トップを

誇る。「乗用車のニーズが高ま

ることを見込んで、新たな工場

建設も進めている」と聞かされ、

高校生たちは日本車の人気ぶり

に改めて気づかされた。

 

酒井恵理香さんは「インドネ

シア国民がどんどん豊かになっ

ている今、電気自動車を生産す

れば、高くても売れるのでは」

と分析して見せた。

 

渡辺啓介君は「ビジネス展開

に日本的な細やかさを感じた。

信頼をいち早く勝ち得たことが

成功の理由ですね」と感想を話

した。

現地の言葉で話す

大切さ知る

 

ジャカルタでは、現地の大学

生との交流も行った。高校生た

ちは日本語を学ぶインドネシア

人学生で作る日本語ミュージカ

ル劇団「en」塾を訪問。日本

での公演経験もあるプロレベル

の寸劇を上演してくれたほか、

東日本大震災の復興を祈って作

られたオリジナルソング「桜よ」

も歌ってくれた。

 

高校生たちは2週間かけて練

習した五輪真弓さんの「心の

友」を披露した。この曲は

1980年代半ばにラジオで流

れたのをきっかけに火がつき、

日本語曲でありながらインドネ

シアでも大ヒットした。現在も

歌い継がれ、「第二の国歌」と

JAPAN

INDONESIA

高校生

東北の被災地と

インドネシアを訪問

1011 2015.12〈vol.11〉 2015.12〈vol.11〉

Yomiuri Education Network

学校×企業学校×企業

東レこれまで漠然と食品加工会社で働きたい、と思っていたが、中空糸膜で水に困っている人を助けられる、炭素繊維で地球環境問題解決のきっかけにできると学んだ。そういう視点を持ったことがなかったので、自分の職業を選ぶ際の参考にしたい。� (鈴木優さん)

JTB鎌倉のことにも触れて、わかりやすく面白かった。1年の時の総合学習『鎌倉の未来を考える』にもつながる話だった。エピソードが楽しかった。�(山本悠月君)

三菱UFJ フィナンシャル・グループあいさつの仕方やマナーって、大切なんだと分かった。お辞儀の角度も教えてもらえて良かった。社会に出てから役立ちそう。� (福嶋聖君)

大和証券�株に興味があったのでこの授業を受けました。難しいところもあったが、知らないことを教えてもらった。新聞も読んでみようと思った。� (松岡直志君)

絵の具で色をつけた水をろ紙でこす(左手前が東レの森山さん)

時刻表で列車の時刻を調べ、提案する列車を探す(奥はJTBの益山賢太さん)

新聞の商況面を見せて説明する大和証券の横山さん

4企業が一斉出前授業

 神奈川県鎌倉市立大船中学校で10月22日、3年生を対象にした出前授業が行われた。読売教育ネットワークに参加している4企業による授業は2時間、90分にわたるもので生徒らは自分で受けたい授業を選んで臨んだ。4企業は、社会的な役割などそれぞれの特色を生かしながら中学生に向けてキャリア教育を行った。

 

今春の修学旅行を大船中

学校側と企画したJTB

は、法人営業横須賀支店長

の益山賢太さん(48)が、

「形には残らないが、心に

残る仕事の魅力」「海外の

人との触れ合いの意味」に

ついて考える授業を行った。

 

1時限目は、益山さん

は、1991年に入社して

からの経験やエピソードを

織り込みながら、「人が動

くことで文化が生まれる。

その交流を促進したい」と

アピール。

 

中でも、生徒の心を捉

えたのは、「山形・最上

三十三観音霊場巡礼」ツ

アーを巡るエピソード。〝最

後の旅行”を覚悟して参加

大和証券

「会社の成り立ちを考える」

JTB

「心に残る仕事の魅力」

札勘の方法の手本を見せる三菱UFJの中野さん(左)

行、家庭、企業の関わりに

触れながら、銀行を取り巻

くお金の流れについて図を

使って説明した。

 

ビジネスマナーを学ぶ時

間も設けられた。入社直後

に行員たちが徹底的に叩き

込まれる名刺交換とお辞儀

の仕方などを、生徒同士ペ

アを組んで実習した。あい

さつの仕方の練習では、講

師から「明るく元気に。あ

ごを引いて背筋をしっかり

伸ばして胸を張って」と実

践的なアドバイスが飛んだ。

 

三菱UFJフィナンシャ

ル・グループは、33人に銀

行の役割や仕組み、ビジネ

スマナーなどを教えた。講

師を務めたのは、同社コー

ポレート・コミュニケー

ション部企画グループの五

味俊哉、中野芙蓉、乙村慶

さんの3人。

 

銀行の業務は中学生には

縁遠いが、講師は「入学・

進学」「結婚」「マイホーム

購入」など、人生の節目ご

とに銀行を利用する機会が

出てくることを紹介。銀

三菱UFJフィナンシャル・グループ

「お金の流れ、マナーの大切さ」�

 

大和証券グループ本社広

報部の横山正浩部長は、会

社や株式についての授業を

行った。「会社って何だろ

うということを考えよう」

と生徒を6、7人の班に分

けてそれぞれ知っている会

社名と業種、その会社はど

ういう形で社会に役立って

いるかについてグループ討

議させた。

 

グループごとの発表後、

東レ

「地球環境問題と向き合う先端材料」

鎌倉市立大船中

 「先端材料と地球環境問

題とのかかわり~素材が社

会を変える~」と題した授

業を行ったのは東レ医薬研

究所(鎌倉市)の森山正樹

研究員。3年生38人の生徒

が熱心に聞き入った。

 

森山さんは、エアコン、

車、テレビ、スマホ、洋服

など様々な製品に東レの

作った素材が使われてい

る、と説明。その例とし

て、ヒートテックを挙げた。

 

地球環境問題を考える材

料として取りあげたのが

「水」。水がいかに貴重かを

説明した後、汚れた水の浄

化に使う先端材料「中空糸

膜」で実験を行った。

 

グループごとの各テーブ

ルには絵の具で色の付いた

色水が置かれている。これ

をろ紙でこしても水の色は

消えないが、中空糸膜でろ

過すると透明な水になる。

一方、中空糸膜でも、塩水

はろ過できないことを確認

し、物質の粒子の大きさの

横山さんは、「会社は物や

サービスを提供して社会の

役に立っています。会社は

賃金を払うことで雇われた

人たちが生活できる。会社

が儲けることで賃金や税金

を払って学校など公共施設

を作ることができる」と付

け加えた。

 

横山さんはまた、会社の

成り立ちを資金の点から説

明、事業拡大をする際に自

己資金だけでは足りなく

なった場合に株式による資

金集めが出来る仕組みにつ

いて歴史を交えて解説し、

新聞の株式欄を手に株をや

りとりする必要が出てきた

ことから証券会社の役割に

ついても紹介した。

株価の変動を考える

 

株の値段、株価が、株を

発行する会社の将来の利益

がどうなるかによって変わ

ることを説明。最近の読売

新聞の同じ日の経済記事を

元に自動車関連のある企業

の株価がどうなるか、生徒

に考えさせた。

 

生徒から出た意見を踏ま

え、横山さんは「正解は

ありません。記事を読むと

景気は良くない。燃料電池

車は3万台の目標はまだ低

いかもしれない。ただ、

CO2削減の流れは世界的

なものであり将来的にはC

O2を出す車は売ってはい

けないかもしれない。その

時に備えている企業をどう

見るかです」と締めくくった。

違いによってろ過できるも

のと出来ないものがあるこ

とを学んだ。

さらに塩水に含まれる塩の

粒子は、「逆浸透膜」とい

う隙間の大きさが1ミリの

100万分の1の先端材料

を使えば海水を淡水化でき

る、と説明、実際にアル

ジェリアや沖縄県北谷町の

淡水化プラントで使われて

いることを紹介した。

した老夫婦に、2人だけの

部屋を急きょ確保するな

ど、サポートに心を砕いた

が、旅行後まもなく夫は亡

くなる。「『観音さまに祈り

たい』という夫の願いもか

ない、2人でゆっくり話す

機会も取れたのは新婚旅行

以来のこと。一生の思い出

になった」という妻の感謝

の言葉に号泣した。そこに

仕事のやりがいを見つけた

―という内容に、教室は

しんとした雰囲気になった。

旅行プランを提案

 

2時限目。生徒たちはグ

ループに分かれ、「京都に

11時30分ごろに着く新幹線

の切符がほしい」という客

の申し込みに、時刻表を使

い、最適な列車の切符を手

配するという実習に臨んだ

ほか、同中の地元・鎌倉

に、海外から観光客をもっ

と呼び込むため何を改善し

たらいいか、グループで話

し合った。

 

益山さんは「2020年

には東京五輪もある。海外

の人と触れ合ってほしい。

相手を知らないと、友だち

にはなれない」というメッ

セージを贈って、授業を終

えた。

地球温暖化対策に

貢献する炭素繊維

 

最後に、森山さんは、自

分の経験を踏まえて、①夢

を持ち続けよう、②不思議

に思う気持ちを大事にしよ

う、③好きなことや得意な

ことを見つけよう、④みん

なの良いところを見つけよ

う、⑤思いきってチャレン

ジしよう

―の5つをメッ

セージとして伝えた。

(各授業の詳細は、教育ネットワークのウェブで紹介しています)

1213 2015.12〈vol.11〉 2015.12〈vol.11〉

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リポートリポート

気になる新聞記事を切り取って持ち寄り、わいわいがやがや。自由に意見を出し合って取捨選択して、オリジナル新聞を再編集する。それを皆で読んで楽しむ――。活力ある街づくりを目指す大阪の元放送作家・むつさとしさんが「住民コミュニケーションのきっかけに」と始めた「まわしよみ新聞」の活動の輪が静かに広がっている。まわしよみ新聞はどのように進めるのか、紹介しよう。

まわしよみ新聞読んで 語って 学ぶ

紙面の作り方にも

個性がキラリ!

見やすさや着眼点の良

さなどを相互評価。

それらを回し読みし、編集上の

力点をグループごとに発表する。

意見交換の末できたのは、「うさちゃん新聞」

「けんこう新聞」「趣味新聞」などの題字が踊る6紙。

選んだ記事を切り抜いて…

新聞を挟んで

熱い議論が

始まる。

教室は次第に

にぎやかな雰囲気に。

まずグループに分かれ

7紙に目を通す。

それぞれが選んだ

記事をグループ内で

順番に論評すること

から始めるのが、

「まわしよみ新聞」

のお作法。

それぞれの「まわし

よみ新聞」を作る

新聞により、こんなに記事の書き方が違うなんて驚き。いつか教壇で新聞を読む楽しさを

伝えたいです。文学部4年 古賀真さん(22)

この日、強く訴えかけたのは

日本人のノーベル賞受賞と

組閣の2大ニュース。

10月7日、木立に包まれた

武蔵野大学(東京都西東京市)で、

教員志望の学生ら36人が受講する

貝塚茂樹教授(51)の授業

「教職実践演習」の中で

「まわしよみ新聞」が行われた。

今後の影響を考えたら「TPP(環太平洋

経済連携協定)の大筋合意」の方が大事なのでは…

いや、読者がそう思うかな?

僕たちは「みらい新聞」です!

他に気になる記事は?

見出しをつけるのは難しい~

僕らの新聞がNO.1!!

記事の書き方も新聞によって違うんだね

タイトルをつけて完成!

「優秀紙」を決めて

全員拍手で

お開きとなった。

授業の最初と最後では

学生の表情が全く違いました。

新聞を媒介に意見をぶつけ

合える面白さが

「まわしよみ新聞」

の広がりを支え

ているんですね!

❶各紙に目を通し、記事を選ぶ

❷選んだ記事について討論

突出した2つの

ニュースを中心に

粛々と編集は

進みそうだったが

……

授業を終えて…

❸グループごとに「新聞」制作

❹発表&相互評価

レイアウトも考えよう

未来の教員に社会を見る目を鍛えてほしいです

貝塚教授

ふだんはネットでニュースをチェックするだけ。こうして丁寧に読む時間はいいですね。看護学部4年・北条恵さん(22)

仲間に『これって何』と尋ねられて語れる楽しさが、学ぶ意欲につながるはずと期待しています。自分の授業の参考にしたいです。東京純真女子大学・間中和歌江准教授

リポート・松本美奈  写真・秋元和夫

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Yomiuri Education Network

リポート

 

学校や地域での優れた教育実践を顕彰する「第64回読売教育

賞」は、全国から13部門に114件の応募があり、最優秀賞は

8部門で9件(地域社会教育活動部門は2件)、優秀賞は12部門

で13件が選ばれた。地域社会教育活動部門で最優秀賞を受賞し

た千葉県立成田西陵高校の清水敏夫教諭の取り組みを紹介する。

第64回

読売教育賞決まる

最優秀賞に8部門9件

優れた教育実践を顕彰

 

千葉県立成田西陵高校の清水

教諭は、同校内に生徒が管理運

営する「昆虫館」「蝶ち

ょうの生態館」

「ふれあい動物園」を開園し、

地域住民との交流を深めている。

 「生徒に身近な生き物の知識

や、他人と関わる力が足りない

と感じたのがきっかけでした」。

る世代とコミュニケーションす

る力が低いのも気になっていた。

 

清水教諭は成田西陵高に赴任

した2005年、身近な生物を

研究し、地域と積極的に交流す

ることを目的にした「地域生物

研究部」を設立。2008年ま

でに、実践の場として3施設を

開園した。

生徒の

コミュニケーション能力向上

 

一般の見学を受け入れてお

り、生徒たちは案内や説明役を

前任校での出来事だ。実習作業

中、生徒が肉食で噛み付くこと

もあるムカデを素手でつかもう

として驚いた。

 

慌てて注意したが、「ムカデ

を初めて見た」と言われてさら

に仰天。祭りなど地域の行事が

減ったためか、生徒たちが異な

最優秀賞 9件

社会科教育

●北海道函館市立亀田中学校 教諭 川端裕介「系統的な法教育によって法の役割を理解させて思考力を育む」

算数・数学教育

●東京大学教育学部付属中等教育学校(東京都中野区)教諭 小張朝子「東京スカイツリーで数学を体感する」

国語教育 ●茨城県結城市立江川北小学校 代表・小倉康雄「思考力・判断力・表現力をはぐくむ国語科学習の指導」

地域社会教育活動

●千葉県立成田西陵高校 教諭 清水敏夫「昆虫館設立から地域との交流を深めるまで」

保健・体育の教育

●岐阜県大垣市立綾里小学校 代表・前田和典「主体的に健康な心と体を育むことができる子の育成」

生活科・総合学習

●広島県福山市立常金中学校 代表・和田啓介「探究的な学びを通して地域の課題解決に挑戦する生徒たちの姿から」

美術教育 ●福井県文化振興課 主任 牧井正人「屏風『落葉』の出前授業は、学校に何をもたらしたのか」

幼児教育・保育

●認定こども園 武庫愛の園幼稚園(兵庫県尼崎市)代表・浜名清美「自ら『もの』『ひと』『こと』に関わる力を育てる」

地域社会教育活動

●認定特定非営利活動法人 ふじみの国際交流センター(埼玉県ふじみ野市) 代表・石井ナナエ「共に学び共に育つ好循環《市民による多文化共生の実践》」

優秀賞 13件 ■国語教育 神奈川県葉山町立葉山中学校教諭 石上佐知子/■算数・数学教育 岩手県岩泉町教育委員会指導主事 佐藤寿仁/■理科教育 清心女子高校(岡山県倉敷市)教諭 秋山繁治/■社会科教育 東京都東久留米市立南中学校非常勤教員 入江昭好/■生活科・総合学習 神奈川県小田原市立桜井小学校総括教諭 木村弘子/■外国語教育 石川県立金沢桜丘高校教諭 前田昌寛/■児童生徒指導 香川県綾川町立綾南中学校長 香川雅之/■教育カウンセリング 埼玉県春日部市適応指導教室「そよかぜ」室長 石川豊/■学校づくり ○岐阜県白川町立蘇原小学校 代表・関文美 ○大阪府和泉市立南松尾中学校教諭 北田里香/■地域社会教育活動 仙台市立郡山中学校長 高橋教義/■幼児教育・保育 東京都品川区立平塚すこやか園 代表・大沢洋美/■美術教育 愛知教育大学付属岡崎小学校(愛知県岡崎市)教諭 神門大知

「蝶の生態館」で飼育中のチョウを手にする清水教諭

担ううち、自作のクイズを館内

に掲示したり、顔見知りになっ

た住民が開くホタル観察会に自

主的に参加したりと、積極性が

出てきたという。「生徒は交流

活動で日頃の学習成果を発表で

き、『伝えたい』と思うことで

さらに学ぶ。コミュニケーショ

ン力も高まった」と手応えを感

じている。

 

2013年には、地域生物研

究部の生徒たちがアブラムシを

駆除するための「生物農薬」と

して飛ばないテントウムシを量

産する技術を開発、高校生によ

る農業アイデアの全国コンクー

ル「全国高校生 

みんなDE笑

顔プロジェクト」で優勝する実

績も挙げた。

 

部員たちは、保育園や小学校

で虫の生態や特徴を教える出前

授業を開いたり、地域に生息す

る虫などを調べたりもしている。

 

清水教諭の専門はクワガタの

研究で、大の昆虫好き。「昆虫

館などが地元の宝として親しま

れるよう、さらに頑張りたい」

と思いを新たにしている。

(最優秀9件の実践報告書の要

旨、選考委員の講評は読売新聞

の10月27日付朝刊に、また最優

秀9件の取り組みは教育面で11

月19日、20日、21日、25日に紹

介されたほか、優秀賞なども各

地域版で掲載されました)

15 2015.12〈vol.11〉

お知らせ・短信

 「読売新聞 大学生マーケティングコンペティション」の公開審査が10月31日に読売新聞東京本社で行われ、慶応義塾大学商学部小野晃典研究室のチームが最優秀賞に輝きました。 マーケティングや広告を学ぶ大学生・大学院生を対象に公募したもので、テーマは「読売新聞の販売促進戦略」。審査委員は、マーケティング共創協会専務理事などを務める笠原耕三氏、東京富士大学教授の山川悟氏、演出家のテリー伊藤氏の3氏が務め、書類による第一次選考を経た5大学・6団体が審査員の質問時間も含め、12分の持ち時間でプレゼンテーションを行いました。

各賞は以下の通り【最優秀賞】 慶応義塾大学 商学部 小野晃典研究室(小黒祐貴、井上雄哉、川村澄明、木田有亮、西森康斗、矢野瑞喜)【優 秀 賞】 法政大学 キャリアデザイン学部 酒井理ゼミナール  【敢 闘 賞】 千葉商科大学 商経学部 外川拓ゼミナール【入  選】 千葉大学 大学院 工学研究科 デザイン科学専攻

      法政大学 経営学部 西川英彦研究室      日本大学 経済学部 江上ゼミナール

 分かりやすくまとめたNIE特集のバックナンバーを先生と児童生徒の人数分、希 望 校 に 無 料 で 差し上 げます。N I E 特集「わくわく新 聞 活用」は、学校の教室で教材として使えるよう、様々なテーマをやさしく解説しています。 朝刊に毎月1回掲載している「わくわく新聞活用」を4回分まとめたものでカラー版、読みがな付きです。学校での授業などにご活用下さい。 ご希望の学校は、①学校名、②所在地、③担当教諭の名前、④連絡方法(電話かFAXなど)、⑤希望の特集号名、部数

(先生+児童生徒人数)を明記のうえ、はがきかメール、ファクスでお申し込み下さい。

●送付先読売新聞東京本社 教育ネットワーク事務局 「NIE特集」係〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1メール:[email protected]ファクス:03-3217-8362なお、特集号の内容は読売教育ネットワークのwebサイトhttp://kyoiku.yomiur i .co . jp/tor ikumi/nie/betsu/contents/post-8.php をご参照ください。

学校教材用新聞特別定価のご案内 読売新聞は、小・中学校や高校、大学などが教材として

「読売新聞」や英字新聞「ジャパン・ニューズ」を活用する場合、定価の半分以下になる「学校教材用新聞特別定価」で提供しています。 同一の日付の新聞をまとめて 10部以上使用する場合が対象です。 読売新聞の一部売り定価は朝刊130円、夕刊50円、ジャパン・ニューズ150円ですが、学校教材用新聞は①10部以上30部まで 朝刊1部40円、夕刊1部20円、ジャパン・ニューズ1部70円②31部目から 朝刊1部30円、夕刊1部10円、ジャパン・ニューズ1部50円 お申し込みは、配達希望日の2日前(土、日、祝日を除く)までに、申込書に必要事項を記入し、FAXで下記へ。申込書は読売新聞のホームページの「学校教材用新聞」 (http://www.434381.jp/26/school/)からダウンロードできます。

●申し込み・FAX番号は以下の通りです■東京本社 03-3216-8824■大阪本社 06-6361-2424■西部本社 092-715-5933■中部支社 052-211-0040■北海道支社 011-231-1729■北陸支社 0766-26-3444

 神田外語大学は、成長著しい東南アジアの現状を報告する小冊子「ASEANの熱い風」(A4判20ページ)を発行しました。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)各国の現状のほか、現地で活躍する日本人ビジネスマン、サッカー選手、アイドルらにインタビューして、若いアジアの国々の魅力を伝えています。 高校生たちにもアジア諸国への関心を持ってもらおうと制作したもので、希望者には無料で進呈します(1人1部)。

●申し込み、問い合わせは学校法人佐野学園 横田弘幸

(神田外語グループ統括主監)住所:〒101-8525東京都千代田区内神田2-13-13☎03・3258・5861E-Mail:[email protected]

最優秀賞に喜ぶ慶應義塾大学商学部小野晃典研究室チーム

読売新聞大学生マーケティングコンペ結果

新聞で紹介したNIE特集を差し上げます

神田外語大学 小冊子「ASEANの熱い風」発行

162015.12〈vol.11〉

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リレーエッセー

海外で学ぶ・リレーエッセー⑪

ハンガリー・デブレツェン大学

「英語で医学を学ぶ」

雙葉高校(東京都千代田区)卒、ハンガリー・デブレツェン大学3年 

䑓だい

もなみ

さん 

後、ほどなくして思い知らされ

ることになった。試験は口頭試

験が多く、上辺だけの知識だけ

では一筋縄で行かないことも少

なくない。しかし現在学んでい

ることがどれほど些細なことに

見えようとも、その一つ一つが

いつか人のために使う事ができ

る貴重な知識となるはずだと言

い聞かせて目の前の勉強に励ん

でいる。

 

医学部6年間のカリキュラム

修了後、ハンガリーの国家試験

に合格すれば、欧州連合(EU)

域内諸国で通用する医師免許が

得られる。その後日本人の学生

のほとんどは帰国して日本の医

師国家試験を受験する。だが、

各学年350人の学生のうち、

6年ストレートで合格できるの

はわずか40%に過ぎない。

 

日々他国からの留学生と勉強

する中で、彼らと比較した時の

自分の未熟さに嫌気がさすこと

も多々ある。しかし同時に、高

い志を掲げ日々勉強することを

惜しまない友人がいるこの素晴

らしい環境にとても感謝してい

る。

 

医学の最初の関門である解剖

学の教授の一人はよく「分厚い

教科書を読まずに近道ばかり探

しながら勉強をするくらいな

ら、医師になることは早めに諦

めなさい。そうでなければ、大

英語の原文はhttp://the-japan-news.com/news/article/0002182620でお読みいただけます。

海外留学を目指す高校生に進学支援を行っているNPO法人「留学フェローシップ」のメンバーが、海外のキャンパスライフをリレー連載します。留学フェローシップの詳細はウェブサイト(http://ryu-fellow.org)へ。

䑓もなみさん(本人提供)

切な20代の時間をハンガリーで

何もせずに過ごすことになって

しまうだろう」と言っている。

この言葉を肝に銘じ、子どもの

頃からの医師になるという目標

を常に持ち続け、ここデブレ

ツェン大学でベストを尽くして

いきたい。

(会報編集部抄訳 T

he Japan N

ews

2015年6月19日)

BudapestBudapest

HungaryRomania

University ofDebrecenUniversity ofDebrecen

 

小さい頃から南アジアや東南

アジアの発展途上国を実際に訪

れる機会があり、その経験から、

世界で本当に医療が必要とされ

ている場で医者として働くこと

を夢見るようになった。そのた

めには最低限英語で医学を学び

たいと思い、日本の高校を卒業

後、ハンガリーの国立デブレ

ツェン大学医学部に入学した。

現在ここで世界各国、30か国以

上から集まる学生と共に英語で

医学を学んでいる。

 

第二外国語で医学を学ぶこと

がどれほど大変なことか、入学

デブレツェン大学ハンガリーの高等教育機関で最古の大学。学生数は30000人を超え、15の学部、三つの農業研究センターがある。