乳がんの診断と治療 ~センチネルリンパ節生検~ ·...
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乳がんの診断と治療
~センチネルリンパ節生検~
利根中央病院
外科 乳腺担当
中島 弘樹 関原 正夫
これからの内容は、乳がん治療のうち、手術治療のおはなしです。
乳がんの手術には大きく分けて二つの内容があります。
①乳房の手術:乳がん(原発巣)をとる手術
乳房切除術
乳房部分切除術(乳房温存手術)
②リンパ節の手術:リンパ節転移に対する手術
従来の腋窩リンパ節(脇の下のリンパ節)郭清
センチネルリンパ節生検を併用した手術
時代は縮小手術の流れに・・・
乳房の手術に関しては、乳房温存手術が主流になっています。
同時に、リンパ節の手術に関しても、わけ隔てなく一定のリンパ節をとっていた(郭清)時代から、必要以上にリンパ節をとらないようにする手術が主流になりつつあります。
まだ試験段階の治療法ではありますが、多くの施設で行われるようになってきました。
センチネルリンパ節生検併用のリンパ節手術
術後に腕がむくむことがある
郭清(リンパ節をまとめてとる)すると・・
センチネルリンパ節とは・・・
腫瘍(乳がん)周囲のリンパ流(リンパ管内の流れ)を最初に受けるリンパ節。つまり最初に転移が起こるとされるリンパ節です。
センチネル=見張り役 と言い換えることもできます。
センチネルリンパ節
センチネルリンパ節とは
がんが最初に流れ着くリンパ節
リンパ管
乳がんの場所に注射
当院では・・・
2006年8月に癌研有明病院乳腺科での勉強を終え、
私(中島)が利根中央病院に着任しました。
それから約1年の準備期間をへて、2007年8月より
センチネルリンパ節生検を併用した乳癌治療を開始いたしました。
センチネルリンパ節の同定法
① 色素法もしくは蛍光色素法
インジゴカルミン、インドシアニングリーンを用いて検査します。
② RI法
核医学検査のため、施設・設備の問題から実施することができません。
腫瘍径から推測したリンパ節転移陽性率
非浸潤性乳管癌: 0.8%
浸潤癌:
1cm未満: 5%
1cm以上1.5cm未満: 16%
1.5cm以上2cm未満: 28%
2cm以上: 47%
当院でのセンチネルリンパ節生検の適応
1. 2cm以下の浸潤癌か非浸潤性乳管癌。
2. 超音波検査にてリンパ節転移を否定できること。
3. 特殊なタイプの乳がんでないこと。
4. 抗癌剤治療を行っていないこと。
5. 以前に乳がん、リンパ節の手術を行っていないこと。
6. 妊娠、授乳中でないこと。
7. 高度肥満でないこと。
8. センチネルリンパ節生検に同意してもらえること。
手術方法
センチネルリンパ節(SLN)生検
SLN転移あり SLN転移なし
従来どおり腋窩郭清 腋窩郭清省略
迅速病理検査
(30~40分ぐらい)
SLNがわからない場合は、従来どおり郭清を行います。
当院の設備
安全にセンチネルリンパ節生検を行うために必要なのは
①診断機器と技術
②リンパ節同定を行う設備と技術
③転移の有無を診断する設備と技術
① 診断機器と技術
2台の高精細超音波機器を購入しました。
これにより、
①6mm大の小さな乳
がんや一部の非浸潤がんの診断がつくようになりました。
②小さなリンパ節の描出、性状判断も可能となりました。
乳腺超音波検査担当の女性スタッフは、癌研有明病院で乳腺エコー検査のトレーニングを積んでいます。
乳がんの発見には、小さな癌も見逃さない「鷹の目」と「乳がんの知識」が必要です!
② リンパ節同定を行う設備と技術
(購入検討中!)
蛍光法に用いる器械: 赤外線観察カメラシステム(PDE)浜松ホトニクス社製
当院の同定率は現状90%程度です。さらに安全な手術を行うために必要な機械です。
③ 転移の有無を判断する設備と技術
当院では常勤の病理医師、病理スタッフが診断してくれます。
外科医としても安心して、
手術中に検査
(迅速病理検査)
を出すことができます。
最後に
乳がんの診断・治療は日々進歩しています。大都会東京からは離れておりますが、こうした進歩に乗り遅れないようスタッフ一同、日々情熱を持って対応していきたいと思っております。