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みずほ日本経済情報 20181月号 トピック 賃金と可処分所得 家計の賃金収入は2016年度に過去最高の伸びとなったが、 可処分所得の上昇率は鈍化した。年金給付の抑制などによ り、所得に占める賃金のシェアは今後一段と高まるだろう 景気判断 景気は緩やかに回復している。 輸出・生産活動は緩やかに回復している。また、堅調な雇 用・所得情勢を背景に、消費も緩やかに回復している。

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みずほ日本経済情報

2018年1月号

◆ トピック

賃金と可処分所得

家計の賃金収入は2016年度に過去最高の伸びとなったが、

可処分所得の上昇率は鈍化した。年金給付の抑制などによ

り、所得に占める賃金のシェアは今後一段と高まるだろう

◆ 景気判断

景気は緩やかに回復している。

輸出・生産活動は緩やかに回復している。また、堅調な雇

用・所得情勢を背景に、消費も緩やかに回復している。

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1.総 括

日本経済の現状と先行

日本経済は緩やかに回復している。輸出・生産活動は緩やかに回復してい

る。また、堅調な雇用・所得情勢を背景に、消費も緩やかに回復している。

経済の活動水準は潜在生産量を上回って推移している。

先行きの日本経済は、IT産業を中心とする輸出の回復や個人消費の底堅

い推移などにより、緩やかに回復するとみられる。経済活動の水準は、潜在

生産量を上回って推移するだろう。

トピック

「賃金と可処分所得」

昨年末に公表されたSNA(国民経済計算)年次推計によれば、家計全体

の賃金・俸給の受取額は 2016 年度に前年比+2.34%と、(小数第 2 位まで考

慮すれば)現行基準で遡れる 1994年度以降で最高の伸びとなった。雇用者数

が着実に増加していること、平均賃金も小幅ながら上昇していることなどが

背景にある。一方で、賃金以外の受取・支払を加味した家計の可処分所得は、

+0.7%(2015年度:+1.5%)と伸びが鈍化した。個人企業の稼ぎを表す混

合所得の減少が例年以上に押し下げた面もあるが、賃金に比べ所得の伸びが

低いのは単年度のことではなく(図表 1)、構造的な要因が働いていることも

見逃せない。社会保険料などの支払いに当たる家計の社会負担が恒常的に押

し下げていること、そして賃金に次ぐ大きな構成要素である年金給付の伸び

が鈍化していることだ。後者については、2010年度頃まで拡大の一途を辿っ

てきた所得に占める年金給付額のシェアが、特例水準の解消などを受けて、

近年は横ばいとなっていることがわかる(図表 2)。

今後を見通すと、一貫して上昇してきた年金保険料率が 2017年度以降は頭

打ちとなることを受け、社会負担による押し下げ圧力は幾分緩和するだろう。

一方で、マクロ経済スライドの実施などにより年金給付も抑制され、所得を

下支えする力は弱まるとみられる。逆説的だが、高齢化が進むからこそ、家

計の所得に占める賃金収入の重要性は高まることになりそうだ。

図表 1 賃金・可処分所得の推移 図表 2 可処分所得の内訳

(資料) 内閣府「国民経済計算」より、みずほ総合研究所作成

(注) 雇主の社会負担は雇用者報酬の受取項目と相殺されるため、ここ

では家計負担のみを表示。年金給付額は移転明細表のうち、年金

特別会計と各種共済組合の長期経理の合計値。

(資料) 内閣府「国民経済計算」より、みずほ総合研究所作成

-5

-4

-3

-2

-1

0

1

2

3

2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016

可処分所得

混合所得を除く可処分所得

賃金・俸給

(前年比、%)

(年度)

上段:金額(兆円)、下段:シェア(%)

1995年度 2000 2005 2010 2015 2016

234.8 236.6 223.8 217.2 223.8 229.1

(78%) (77%) (76%) (74%) (75%) (77%)

32.5 26.7 21.5 20.9 25.0 24.5

(11%) (9%) (7%) (7%) (8%) (8%)

30.2 37.2 43.3 48.9 51.5 52.0

(10%) (12%) (15%) (17%) (17%) (17%)

23.6 26.0 23.4 27.4 26.3 26.1

(8%) (8%) (8%) (9%) (9%) (9%)

-29.2 -30.9 -31.5 -33.1 -37.0 -37.6

(-10%) (-10%) (-11%) (-11%) (-12%) (-13%)

10.3 11.6 14.7 12.0 7.7 5.1

(3%) (4%) (5%) (4%) (3%) (2%)

299.3

その他

302.3 307.2 295.1 293.2 297.2可処分所得

賃金・俸給

財産所得(純)

年金給付

その他の社会給付

家計の社会負担

1 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 3: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

図表 3 景気判断

(注) 1.矢印の向きは景気の方向性を示している。上向きが拡大局面、横向きが横ばい局面、下向きが後退局面を意味する。

2. 矢印の色は生産の水準感を示している。白は潜在生産量を上回る、紺は潜在生産量を下回る、白紺の縦縞は潜在生産量

程度の生産量を意味する。

3. 先行き判断は、3 カ月程度先の動きに関する判断を示している。

(資料) みずほ総合研究所

図表 4 景気の全体観を示す主要統計

(注) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3 次産業は第 3 次産業活動指数の値。

2. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。

3. 四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。

(資料) 内閣府「景気動向指数」、「四半期別GDP速報」、経済産業省「全産業活動指数」、「鉱工業指数」、「第 3 次産業活動指数」

12月

(現状判断) (現状判断) (先行き判断)

経済活動の方向性 緩やかに回復している 緩やかに回復している 緩やかに回復する

経済活動の水準 潜在生産量を上回って推移している 潜在生産量を上回って推移している 潜在生産量を上回って推移する

海外経済 緩やかに回復している 緩やかに回復している 緩やかな回復を維持する

輸出 回復が一服している 緩やかに回復している 緩やかに回復する

輸入 弱含んでいる 弱含んでいる 緩やかに回復する

生産・サービス活動 緩やかに回復している 緩やかに回復している 緩やかに回復する

企業収益 回復している 回復している 緩やかに回復する

企業マインド 改善している 改善している 底堅く推移する

設備投資 弱含んでいる 弱含んでいる 緩やかに回復する

雇用者所得 回復傾向にある 回復傾向にある 緩やかな回復が続く

消費者マインド 改善している 改善している 底堅く推移する

個人消費 回復が一服している 緩やかに回復している 底堅く推移する

住宅着工 弱含んでいる 弱含んでいる 弱含みが続く

公的需要 弱含んでいる 弱含んでいる 底堅く推移する

国内企業物価 プラス幅が拡大している プラス幅の拡大が一服している 伸び率は鈍化する

消費者物価 前年比プラス幅が拡大している 前年比プラス幅が拡大している プラス幅が緩やかに拡大する

金融政策 金融緩和を進めている 金融緩和を進めている 現行の政策を維持する

企業部門

家計部門

政府・物価

1月

総括

対外部門

FY2015 FY2016 2017Q2 2017Q3 2017Q4 2017/08 2017/09 2017/10 2017/11 2017/12

景気動向指数 CI 先行指数 前期差、Pt - - - - - 1.9 ▲ 0.7 0.0 2.1 n.a.

CI 一致指数 前期差、Pt - - - - - 1.8 ▲ 1.4 0.2 1.7 n.a.

CI 遅行指数 前期差、Pt - - - - - 0.3 0.8 1.3 0.2 n.a.

DI 先行指数 % - - - - - 81.8 72.7 75.0 72.2 n.a.

DI 一致指数 % - - - - - 77.8 55.6 62.5 57.1 n.a.

DI 遅行指数 % - - - - - 50.0 66.7 100.0 100.0 n.a.

全産業活動指数 全産業 前期比、% 0.9 0.6 1.6 ▲ 0.2 0.0 0.2 ▲ 0.5 0.3 n.a. n.a.

鉱工業 前期比、% ▲ 0.9 1.1 2.1 0.4 0.8 2.0 ▲ 1.0 0.5 0.6 n.a.

第3次産業 前期比、% 1.4 0.4 1.1 ▲ 0.2 0.6 ▲ 0.1 ▲ 0.3 0.2 1.1 n.a.

建設業 前期比、% 1.1 2.2 7.4 ▲ 2.4 ▲ 2.6 ▲ 2.2 ▲ 2.3 ▲ 0.3 n.a. n.a.

国民経済計算 実質GDP 前期比、% 1.4 1.2 0.7 0.6 n.a. - - - - -

前期比年率、% - - 2.9 2.5 n.a. - - - - -

民需 寄与度、%Pt 1.1 0.3 0.7 0.3 n.a. - - - - -

公需 寄与度、%Pt 0.3 0.1 0.3 ▲ 0.1 n.a. - - - - -

外需 寄与度、%Pt 0.1 0.8 ▲ 0.2 0.5 n.a. - - - - -

名目GDP 年率、兆円 533.9 539.3 544.9 549.2 n.a. - - - - -

前期比、% 3.0 1.0 0.8 0.8 n.a. - - - - -

GDPデフレーター 前年比、% 1.5 ▲ 0.2 ▲ 0.5 0.1 n.a. - - - - -

内需デフレーター 前年比、% 0.0 ▲ 0.5 0.3 0.5 n.a. - - - - -

2 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

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2.対外部門

海外経済 海外経済は緩やかに回復している。米国では、12月の製造業の景況感が新

規受注の好調等を背景に上昇した。非製造業は低下したものの、高水準を維

持しており、企業業況は堅調さを維持している。ユーロ圏は、製造・非製造

業ともに上昇した。中国は製造業の景況感が小幅に低下した一方、非製造業

は上昇した(図表 1、2)。

今後の海外経済は、緩やかな回復を維持する見込みである。米国は個人消

費に加え、設備投資が景気を下支えするだろう。ユーロ圏も、内需を中心に

堅調な回復が続くとみられる。中国経済は、構造改革(不動産投機の抑制や

過剰設備・債務の調整など)の推進が重石となる一方、インフラ投資など財

政が下支えし、緩やかな減速に留まる見込みだ。ただし、世界的に上昇して

いる資産価格の調整や中国の改革スピードの加速、地政学的リスクが海外経

済の下押し圧力となる可能性には注意が必要だ。

輸出 輸出は緩やかに回復している。11月の輸出数量指数(※)は、前月比+1.4%

と前月から増加した(図表 3)。EU向けが減少したものの、米国向けが 4カ

月ぶりに増加したほか、アジア向けの増勢が続いた。財別では、電気機器や

輸送用機器、精密機器類が押し上げに寄与した。10~11月を 7~9月期比でみ

ても、前期比+0.9%と上昇している。先行きについては、世界経済の緩やか

な回復が続く中で、輸出も緩やかに回復するとみている。ただし、地政学的

リスクなどに伴う為替変動の影響には注意が必要だ。

インバウンド 11月の訪日外客数は前年比+26.8%、12月は同+23.0%と増加傾向で推移

した(図表 4)。韓国や東南アジアの旅行者が増加したことに加え、5 月から

の中国人向けビザ緩和効果も押し上げ要因となった。また、10~12月期の訪

日外国人旅行消費額は前年比+27.8%と増加傾向を維持した。先行きは、L

CCなどの航空路線の新規就航・増便やクルーズ船の寄港増加、中国人に対

するビザ発給要件の緩和が追い風となって、訪日外客数の増勢は続くだろう。

輸入 輸入は弱含んでいる。11月の輸入数量指数(※)は前月比+1.6%と 5カ月

ぶりにプラスとなった。財別にみると、化学製品や一般機械、電気機器、輸

送用機器など多くの品目で増加した。もっとも、10~11月を 7~9月期比でみ

ると、+0.1%とほぼ横ばいとなっている。先行きは、国内の生産活動や個人

消費の回復に伴い、輸入も緩やかに回復していくだろう。

(※)みずほ総合研究所による季節調整値

経常収支 経常収支(季節調整値)は高めの黒字が続いている。11 月の経常黒字は、

20.4 兆円(年率換算値)と前月から縮小した。貿易収支、サービス収支、第

一次所得収支の黒字幅がいずれも縮小したためである。もっとも、前月が大

幅な黒字だったことの反動によるところが大きく、5カ月連続で 20兆円(年

率換算値)を超える高水準が続いている。

今後も、第一次所得収支の大幅な黒字が続くことから、経常黒字は高水準

を維持する見通しである。

3 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

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図表 1 米欧中の景況感(製造業) 図表 2 米欧中の景況感(非製造業)

(注)指数が50以上で景況感の回復、50未満で景況感の悪化を示唆。

(資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会より、

みずほ総合研究所作成

(注)指数が50以上で景況感の回復、50未満で景況感の悪化を示唆。

(資料)米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会より、

みずほ総合研究所作成

図表 3 輸出数量指数(地域別) 図表 4 訪日外国人客数

(注) みずほ総合研究所による季節調整値。

(資料) 財務省「貿易統計」より、みずほ総合研究所作成 (資料) 日本政府観光局より、みずほ総合研究所作成

図表 5 対外部門の主要統計

(注) 1.実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。

2.四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値・合計値。前期比は、その前四半期に対する変化率。

3.輸出数量及び輸入数量はみずほ総合研究所による季節調整値。

(資料) 財務省「貿易統計」、日本銀行「実質輸出入」、「国際収支統計」、「外国為替相場」、日本政府観光局「訪日外客数」、観光庁「訪日外国人

消費動向調査」、米サプライマネジメント協会、Markit、中国物流購買連合会、CPB Netherlands Bureau for Economic Policy Analysis

45

50

55

60

65

15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7

米国製造業ISMユーロ圏製造業PMI中国製造業PMI

(年/月)

(指数)

50

55

60

65

15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7

米国非製造業ISMユーロ圏非製造業PMI中国非製造業PMI

(年/月)

(指数)

75

80

85

90

95

100

105

110

115

14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7

世界 米国

EU アジア

(2010年=100)

(年/月)

▲ 10

0

10

20

30

40

50

60

70

80

14/01 14/07 15/01 15/07 16/01 16/07 17/01 17/07

中国 NIEs ASEAN

欧米豪諸国 その他 全体

(前年比、%)

(年/月)

FY2015 FY2016 2017Q2 2017Q3 2017Q4 2017/08 2017/09 2017/10 2017/11 2017/12

海外経済 CPB生産指数 前期比、% 1.2 2.2 1.0 0.9 n.a. 0.7 ▲ 0.1 0.2 n.a. n.a.

米国 前期比、% ▲ 1.7 ▲ 0.5 1.4 ▲ 0.2 n.a. ▲ 0.4 0.2 1.3 n.a. n.a.

ユーロ圏 前期比、% 1.5 1.8 1.0 1.3 n.a. 1.1 ▲ 0.4 0.1 n.a. n.a.

アジア 前期比、% 2.7 4.8 0.7 1.6 n.a. 0.6 0.3 ▲ 0.4 n.a. n.a.

製造業の業況

米国(ISM) DI - - - - - 58.8 60.8 58.7 58.2 59.7

ユーロ圏(PMI) DI - - - - - 57.4 58.1 58.5 60.1 60.6

中国(PMI)「国家統計局版」 DI - - - - - 51.7 52.4 51.6 51.8 51.6

実質実効為替レート 前年比、% ▲ 3.1 11.6 ▲ 2.6 ▲ 10.0 n.a. ▲ 9.9 ▲ 11.0 ▲ 11.5 ▲ 9.1 n.a.

輸出 輸出数量 前期比、% ▲ 2.7 2.4 ▲ 0.8 1.9 0.9 3.0 ▲ 1.0 ▲ 0.1 1.4 n.a.

米国向け 前期比、% ▲ 4.6 ▲ 0.1 2.3 2.8 ▲ 1.4 ▲ 0.1 ▲ 0.8 ▲ 1.7 1.6 n.a.

欧州向け 前期比、% 4.7 4.8 2.5 ▲ 4.0 ▲ 0.1 ▲ 0.6 ▲ 2.0 2.7 ▲ 2.3 n.a.

アジア向け 前期比、% ▲ 1.7 3.0 ▲ 1.9 2.4 3.7 2.8 0.8 1.6 1.1 n.a.

 うち中国向け 前期比、% ▲ 2.7 7.6 0.1 1.9 5.0 1.7 3.3 1.2 1.9 n.a.

実質輸出 前期比、% 0.5 4.0 ▲ 0.5 1.9 2.4 3.0 ▲ 5.4 2.6 5.1 n.a.

インバウンド 訪日外客数 前年比、% 45.6 16.2 21.1 18.8 23.6 20.9 18.9 21.5 26.8 23.0

訪日外国人旅行消費額 前年比、% 60.6 2.3 13.0 26.7 27.8 - - - - -

輸入 輸入数量 前期比、% ▲ 2.2 0.8 1.4 ▲ 0.9 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.7 ▲ 0.3 1.6 n.a.

実質輸入 前期比、% 1.3 ▲ 0.2 2.9 ▲ 1.5 1.1 0.6 ▲ 3.7 1.5 3.9 n.a.

対外収支 経常収支 年率、兆円 17.9 20.4 19.1 24.7 24.9 27.3 21.9 29.3 20.4 n.a.

貿易・サービス収支 年率、兆円 ▲ 1.0 4.4 2.2 5.6 7.4 7.0 4.6 9.9 5.0 n.a.

第一次所得収支 年率、兆円 20.9 18.1 18.7 21.6 19.7 22.9 19.8 21.5 18.0 n.a.

4 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

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3.企業部門

生産・サービス活動

生産・サービス活動は緩やかに回復している。11月の鉱工業生産は、前月

比+0.6%と 2カ月連続でプラスとなった(図表 1)。半導体関連を中心に、は

ん用・生産用・業務用機械や電子部品・デバイス工業などが上昇した。10~

11月平均を 7~9月期比でみても前期比+0.8%と増産基調を維持している。

11月の第 3次産業活動指数は前月比+1.1%と大幅に上昇した。対個人、対事

業所サービスともに前月から上昇した。10~11 月平均の 7~9 月期対比は

+0.5%と、プラスに転じた。

先行きも、緩やかに回復するとみている。生産計画では、12月が増産、1

月が減産となっている。電子部品・デバイス工業を中心に、出荷在庫バラン

スは 16カ月ぶりにマイナスに転じており(図表 2)、在庫は積み上がり局面入

りしたが、IT関連需要の底堅さは当面続くことから、回復基調は維持され

るだろう。サービス活動も、世界経済の回復や個人消費の堅調さを背景に、

緩やかに回復する見込みだ。

企業収益・財務 企業収益は回復している。日銀短観(12月調査、以下同)では、2017年度

の経常利益計画(全規模・全業種)が前年比+5.2%と、上期の上振れを受け

て 9月調査から上方修正された(図表 3)。

先行きについては、世界経済の持ち直しが続くことや、サービス活動の回

復を受け、緩やかに回復する見通しである。

企業マインド

企業マインドは改善している。日銀短観では、大企業・製造業の業況判断

DIが5四半期連続で上昇した。資源価格の上昇や商品市況の回復等により、

素材業種中心に改善がみられた。中堅・中小企業の業況判断DIも、約 26年

ぶりの水準へと改善した(図表 4)。単月の指標をみると、12月の景気ウォッ

チャーの現状判断 DIは家計・雇用部門が低下したことから 5カ月ぶりに悪

化したが、DIの水準は高く、昨春以来の改善基調は維持されている。今後

の企業マインドは、底堅く推移するだろう。世界経済の持ち直しや円安がプ

ラス要因となる一方、人手不足や人件費上昇への懸念が重石となりそうだ。

設備投資

設備投資は弱含んでいる。11月の資本財総供給(除く輸送機器)は前月比

+3.1%と 3カ月ぶりにプラスとなったが、10~11月平均を 7~9月期比でみ

ると▲1.4%とマイナスが続いている。

先行指標である 11 月の機械受注(船舶、電力除く民需)は前月比+5.7%

と、2 カ月連続で増加し、10~11 月平均でも 2 四半期連続でプラスとなって

いる。日銀短観の設備投資計画(全規模・全業種)では、中小企業を中心に

上方修正された。機械メーカーの供給制約が重石となる可能性があるが、世

界経済の持ち直しやオリンピック対応、人手不足に伴う省力化投資を中心に、

設備投資は緩やかに回復するだろう。

5 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 7: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

図表 1 鉱工業生産、第 3次産業活動指数 図表 2 出荷在庫バランス

(資料) 経済産業省「鉱工業指数」、「第3次産業活動指数」より、みずほ総合

研究所作成

(注)出荷在庫バランス=出荷前年比―在庫前年比。

(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成

図表 3 経常利益計画(全規模全産業) 図表 4 大企業・中小企業の業況判断DI

(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成

(資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成

図表 5 企業部門の主要統計

(注) 1.実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。

2.四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。

(資料) 経済産業省「鉱工業指数」、「第3次産業活動指数」、「鉱工業総供給表」、「特定サービス産業動態統計調査」、財務省「法人企業統計」、日本銀行「全国企業

短期経済観測調査」、内閣府「景気ウォッチャー調査」、「機械受注統計調査報告」、国土交通省「建築着工統計調査報告」、内閣府「法人企業景気予測調査」

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16/1 16/7 17/1 17/7 18/1

鉱工業生産指数 第3次産業指数

(年/月)

(2010年=100)

補正値

生産

計画

予測指数

(2010年=100)

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

40

50

13/1 14/1 15/1 16/1 17/1

機械系(除く電子部品・デバイス工業)

電子部品・デバイス工業

素材系

(前年比、%)

(年/月)

▲ 10

▲ 8

▲ 6

▲ 4

▲ 2

0

2

4

6

8

3月調査 6月調査 9月調査 12月調査 見込 実績

(前年比、%)

2017年度

2014年度(旧ベース)

2015年度

2016年度

2014年度(新ベース)

▲ 60

▲ 50

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

30

06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18

(%Pt)先行き

大企業製造業

大企業非製造業

(年)

中小企業全産業

FY2015 FY2016 2017Q2 2017Q3 2017Q4 2017/08 2017/09 2017/10 2017/11 2017/12

生産・サービス 鉱工業生産指数 前期比、% ▲ 0.9 1.1 2.1 0.4 0.8 2.0 ▲ 1.0 0.5 0.6 n.a.

活動 鉱工業出荷指数 前期比、% ▲ 1.1 0.8 1.6 0.4 ▲ 0.3 1.8 ▲ 2.5 ▲ 0.4 2.4 n.a.

鉱工業在庫指数 前期比、% 1.1 ▲ 4.0 ▲ 0.5 ▲ 1.6 n.a. ▲ 0.6 0.0 3.2 ▲ 1.0 n.a.

出荷・在庫バランス %Pt ▲ 2.3 4.8 8.2 6.1 n.a. 8.7 3.9 0.7 ▲ 0.5 n.a.

製造工業設備稼働率指数 前期比、% ▲ 2.6 0.6 2.1 ▲ 0.2 n.a. 3.3 ▲ 1.5 0.2 n.a. n.a.

第3次産業活動指数 前期比、% 1.4 0.4 1.1 ▲ 0.2 0.5 ▲ 0.1 ▲ 0.3 0.2 1.1 n.a.

収益・財務 経常利益 前年比、% 4.9 10.0 22.6 5.5 n.a. - - - - -

前期比、% - - 2.2 ▲ 1.5 n.a. - - - - -

製造業 前年比、% ▲ 4.6 9.8 46.4 44.0 n.a. - - - - -

非製造業 前年比、% 10.3 10.2 12.0 ▲ 9.5 n.a. - - - - -

マインド 大企業業況判断DI %Pt - - 20 23 25 - - - - -

製造業 %Pt - - 17 22 25 - - - - -

非製造業 %Pt - - 23 23 23 - - - - -

景気ウォッチャー調査DI %Pt - - - - - 50.0 51.1 52.0 54.1 53.9

設備投資 名目設備投資(ソフトウェア除く) 前期比、% 7.5 2.7 ▲ 2.0 1.0 n.a. - - - - -

製造業 前期比、% 11.2 4.0 ▲ 3.7 0.5 n.a. - - - - -

非製造業 前期比、% 5.6 2.1 ▲ 1.2 1.3 n.a. - - - - -

資本財出荷(除く輸送機械) 前期比、% ▲ 2.2 1.6 5.0 ▲ 0.2 2.4 9.8 ▲ 6.1 1.6 3.8 n.a.

資本財総供給(除く輸送機械) 前期比、% ▲ 2.6 1.0 7.4 ▲ 0.7 ▲ 1.4 5.9 ▲ 3.9 ▲ 2.1 3.1 n.a.

機械受注(船舶・電力除く民需) 前期比、% 4.1 0.5 ▲ 4.7 4.7 3.1 3.4 ▲ 8.1 5.0 5.7 n.a.

建築物着工床面積(非居住用) 前期比、% ▲ 5.0 2.7 3.4 1.8 4.6 7.5 5.9 ▲ 1.0 ▲ 1.3 n.a.

ソフトウェア受注額 前年比、% 1.5 1.1 2.4 1.1 n.a. ▲ 1.3 1.7 ▲ 2.0 ▲ 4.7 n.a.

6 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 8: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

4.家計部門

雇用者所得 雇用者所得は回復傾向にある。11月の失業率は 2.7%と前月から低下し、

1993年 11月以来の低水準に達した。就業者数が 3カ月ぶりにプラス(前月差

+14万人)となる中での改善であり、良好な結果と言える。また、有効求人

倍率は 1.56倍と 2カ月連続で上昇した。11月の名目賃金は、前年比+0.9%

と 4カ月連続でプラスとなった。内訳をみると、所定内給与、所定外給与、

特別給与がいずれも増加した(図表 1)。ただし所定内給与の伸び拡大は、パ

ートタイム比率の低下が主因であり、パートタイム比率が上方修正される傾

向のある確報では、伸びが下振れる可能性がある。実質賃金は、11カ月ぶり

にプラスに転じたが、物価の上昇を受けて小幅なプラスにとどまった。実質

雇用者所得は、雇用者数と名目賃金の増加が押し上げ、同+1.6%とプラス幅

が拡大した。

日銀短観(12月調査)の雇用人員判断DIによると、中堅・中小企業を中

心に人手不足感が一段と強まっており(図表 2)、今後も名目賃金と雇用者数

の増加が続く見通しだ。当面はエネルギー価格の上昇が抑制要因となるもの

の、実質雇用者所得は緩やかな回復が続くだろう。

消費者マインド 消費者マインドは改善している。12月の消費者態度指数は 4カ月ぶりに低

下したものの、均してみれば改善傾向が続いている。3カ月後方移動平均で指

数の内訳をみると、「雇用環境」、「収入の増え方」の上昇が続いている(図表

3)。今後も、株高や雇用者所得の回復などを背景に、消費者マインドは底堅

く推移するとみている。ただし、エネルギー価格(あるいはガソリン)や生

鮮食品価格の上昇が、マインドを下押しするリスクには留意が必要だ。

個人消費 個人消費は緩やかに回復している。11月の実質消費活動指数(旅行収支調整

済)は前月比+0.6%と 2カ月連続で上昇した(図表 4)。非耐久財が押し下げ

た一方、サービスと、耐久財が押し上げた。耐久財は、無資格検査問題によ

り落ち込んでいた自動車販売が持ち直したとみられる。なお四半期ベースで

みても、10~11月の対 7~9月期比は前期比+0.1%と小幅に上昇した。足元

(12月)では、冬物衣料や贈答品、高額商品の販売が好調だった大手百貨店

5社が、5カ月連続で増収となった。自動車販売も、持ち直しが続いている。

先行きは、消費マインドの堅調さを背景に、個人消費も底堅く推移すると

みている。

住宅着工 新設住宅着工戸数は弱含んでいる。12月の着工戸数(季調済み年率)は、

前月比+1.9%と 2カ月ぶりに増加したものの、10~11月を対 7~9月期比で

みると、▲1.4%と 2四半期連続で減少した。個人向けアパートローンの抑制

などを背景に貸家の減少基調が強まる中、住宅着工戸数は今後も弱含みが続

くだろう。

7 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 9: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

図表 1 名目賃金の寄与度分解 図表 2 雇用人員判断DIの推移

(資料)厚生労働省「毎月勤労統計調査」より、みずほ総合研究所作成 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より、みずほ総合研究所作成

図表 3 消費者マインド(3カ月後方移動平均) 図表 4 消費活動指数の推移

(資料)内閣府「消費者態度指数」より、みずほ総合研究所作成 (資料)日本銀行「消費活動指数」より、みずほ総合研究所作成

図表 5 家計部門の主要統計

(注)1. 実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。

2. 消費総合指数は四半期系列、月次系列ごとに季節調整がかけられるため、月次平均と四半期値は一致しない。

3. 実質小売業販売額はみずほ総合研究所による計算値。新車販売台数はみずほ総合研究所による季節調整値。

4. 四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。

(資料) 総務省「労働力調査」「家計調査」、厚生労働省「一般職業紹介状況」「毎月勤労統計」、内閣府「消費動向調査」「消費総合指数」、経済産業省「商業動態統計」、

国土交通省「建築着工統計」、日本銀行「消費活動指数」、日本自動車販売協会連合会等

▲ 1.5

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

16/01 16/04 16/07 16/10 17/01 17/04 17/07 17/10

特別給与 所定外給与

所定内給与 総額

(前年比、%)

(年/月)

▲ 40

▲ 30

▲ 20

▲ 10

0

10

20

10 11 12 13 14 15 16 17 18

大企業・全産業

中堅企業・全産業

中小企業・全産業

(%Pt)

(年)

先行き

過剰

不足

38

40

42

44

46

48

50

16/1 16/4 16/7 16/10 17/1 17/4 17/7 17/10

暮らし向き収入の増え方雇用環境耐久消費財の買い時判断消費者態度指数

(DI)

(年/月)

▲ 1.0

▲ 0.5

0.0

0.5

1.0

1.5

2.0

2.5

16/07 16/10 17/01 17/04 17/07 17/10(年/月)

サービス 耐久財

非耐久財 消費活動指数

(旅行収支調整済)

(%)

FY2015 FY2016 2017Q2 2017Q3 2017Q4 2017/08 2017/09 2017/10 2017/11 2017/12

雇用・所得 完全失業率 % 3.3 3.0 2.9 2.8 2.8 2.8 2.8 2.8 2.7 n.a.

就業者数 前期差、万人 32 65 30 29 ▲ 2 20 ▲ 15 ▲ 6 14 n.a.

有効求人倍率 倍 1.24 1.40 1.49 1.52 1.56 1.52 1.52 1.55 1.56 n.a.

新規求人数 前期比、% 4.2 5.3 1.8 1.9 1.3 2.9 ▲ 0.9 ▲ 0.3 2.4 n.a.

所定外労働時間 前期比、% ▲ 1.3 ▲ 0.7 ▲ 0.4 ▲ 0.2 0.9 ▲ 0.2 1.8 ▲ 1.0 1.5 n.a.

名目賃金 前年比、% 0.2 0.4 0.5 0.2 n.a. 0.7 0.9 0.2 0.9 n.a.

実質賃金 前年比、% ▲ 0.2 0.5 ▲ 0.0 ▲ 0.5 n.a. ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 0.1 n.a.

名目雇用者所得(雇用者数×名目賃金) 前年比、% 1.2 1.8 1.7 1.8 n.a. 2.4 2.2 1.3 2.4 n.a.

実質雇用者所得(雇用者数×実質賃金) 前年比、% 0.9 1.9 1.1 1.0 n.a. 1.6 1.2 0.9 1.6 n.a.

マインド 消費者態度指数 % - - - - - 43.3 43.9 44.5 44.9 44.7

個人消費 消費総合指数 前期比、% 0.6 0.1 0.9 ▲ 0.5 0.5 0.0 ▲ 0.5 0.2 1.1 n.a.

消費活動指数(実質・旅行収支調整済) 前期比、% 0.1 0.4 0.8 ▲ 0.4 0.1 ▲ 0.8 ▲ 0.4 0.4 0.6 n.a.

実質消費支出(二人以上の全世帯) 前期比、% ▲ 1.6 ▲ 1.3 1.0 ▲ 0.4 ▲ 0.7 0.2 0.4 ▲ 2.0 2.1 n.a.

実質小売業販売額 前期比、% 0.7 ▲ 0.1 1.1 ▲ 0.6 0.1 ▲ 0.5 0.0 ▲ 0.4 1.3 n.a.

新車販売台数(乗用車) 年率、万台 411.5 424.3 462.1 434.1 427.5 441.3 436.8 419.8 428.1 434.8

住宅着工 合計 年率、万戸 92.1 97.4 100.2 95.6 94.2 94.2 95.2 93.3 95.1 n.a.

持家 年率、万戸 28.4 29.2 29.5 28.1 27.5 27.5 28.0 27.7 27.4 n.a.

貸家 年率、万戸 38.4 42.7 42.5 42.5 41.2 42.0 43.0 40.7 41.8 n.a.

分譲住宅 年率、万戸 24.7 24.9 27.7 24.7 25.0 23.7 24.2 23.7 26.2 n.a.

8 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 10: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

5.政府部門・物価

公的需要 公的需要は弱含んでいる。10月の公共工事出来高は 5カ月連続で減少した

(図表 1)。先行指標である公共工事請負金額も 12月は再び減少に転じており、

公共投資は今後も弱含みが続くだろう。他方で、政府消費は社会保障給付の

拡大により増加傾向が続き、公的需要全体では底堅く推移する見込みである。

経済政策 12月 22日、政府は 2018年度予算案を閣議決定した。一般会計の総額は過

去最大の 97兆 7,128億円(2017年度当初予算比+0.3%)となった(図表 2)。

27年ぶりの高水準となる税収の見通しを受けて、国債発行額が減少した点や、

一般歳出、社会保障関係費の伸びについて、「経済・財政再生計画」の「目安」

(2016年度~2018年度の 3年間でそれぞれ 1.6兆円程度、1.5兆円程度)を

達成した点は評価できる。また、全世代型の社会保障制度を構築する観点か

ら、「人づくり革命」に関する施策に予算を重点化する方向性も望ましいもの

と考えられる。一方で、社会保障費の伸びについては、薬価の引き下げによ

り計画上の「目安」は達成されたものの、診療報酬本体の改定や保険給付範

囲、高齢者の自己負担の見直し等については踏み込み不足となった。同時に

閣議決定された2017年度補正予算案も公共事業費を中心に2.7兆円の追加歳

出となっており、補正予算が歳出拡大圧力の受け皿となる状況が継続してい

る点は財政ガバナンスの観点から問題があろう。夏頃に策定される見込みの

新たな計画で、持続可能な社会保障制度の構築と財政再建の道筋を示すこと

が必要だ。

国内企業物価 国内企業物価はプラス幅の拡大が一服している。機械類の持ち直しが続い

た一方、石油・石炭製品や非鉄金属などの伸びが鈍化したことから、12月は

前年比+3.1%とプラス幅が縮小した(図表 3)。足元の原油価格の上昇は今後

も一定の押し上げ要因となるものの、前年比でみた伸びは鈍化する見通しだ。

国内企業物価指数の伸び率も鈍化していくだろう。

消費者物価 消費者物価は前年比プラス幅が拡大している。11月の全国コアCPI(生

鮮食品を除く)は、前年比+0.9%と伸びが拡大した(図表 4)。ガソリン価格

の上昇は継続したが、電気・ガス代の上昇が一服したため、エネルギー価格

の伸びは小幅に縮小した。他方で、パック旅行費や宿泊料などが上昇したた

め、生鮮食品及びエネルギーを除くCPIの伸びは高まった。もっとも、12

月の都区部のCPIでは、パック旅行費や宿泊料の伸びが低下しているため、

押し上げは一時的と言えよう。当面、全国コアCPIは、原油価格の上昇を

背景にプラス幅が緩やかに拡大する見通しである。一方、生鮮食品及びエネ

ルギーを除くCPIは、家計の節約志向が未だ根強いことから、力強さを欠

くだろう。

金融政策 日銀は「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」に即して、現状程度の金

利水準を維持すべく金融緩和を進めている。12月 20~21日に開催された金融

政策決定会合では、現状の政策を維持することが決定された。日銀は現行の

政策を維持する見通しである。

9 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

Page 11: みずほ日本経済情報 - mizuho-ri.co.jp · ) 1.全産業活動指数の産業別内訳のうち、鉱工業は鉱工業指数、第 3次産業は第3次産業活動指数の値。

図表 1 公共工事出来高・請負金額の推移 図表 2 2018年度予算案の概要

(注) みずほ総合研究所による季節調整値。

(資料) 国土交通省「建設総合統計」、保証事業会社3社「公共工事前払金保証統計」

より、みずほ総合研究所作成

(資料)財務省資料より、みずほ総合研究所作成

図表 3 国内企業物価指数 図表 4 消費者物価指数

(注)エネルギーは石油・石炭製品、電力・都市ガス・水道の合計。

(資料) 日本銀行「企業物価指数」より、みずほ総合研究所作成 (資料)総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成

図表 5 政府部門・物価の主要統計

(注) 1.四半期の値は、季節調整済みデータが公表されている月までの平均値。前期比・前期差は、その前四半期に対する変化率。

2. 公共工事出来高、公共工事請負金額はみずほ総合研究所による季節調整値。

3. 公共工事出来高は2017年4月より新推計値に変更された。既公表系列と新公表系列を接続させるため、新推計値に基づく2016年度の参考数値と、既公表

値の比率により2017年4月以降の系列の水準を調整している。

4. 物価指数は実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。

(資料) 国土交通省「建設総合統計」、保証事業会社「公共工事前払金保証統計」、財務省「租税及び印紙収入、収入額調」、日本銀行「企業物価指数」

「日本銀行国際商品指数」、総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成

0.9

1.0

1.1

1.2

1.3

1.4

1.5

1.6

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2

15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7

公共工事出来高

公共工事請負金額(右目盛)

(兆円)

(年/月)

(兆円)

10月

税収  59兆790億円 (同+2.4%)

税外収入   4兆9,416億円 (同▲8.0%)

公債金   33兆6,922億円 (同▲2.0%)

国債費 23兆3,020億円 (同▲1.0%)

一般歳出  58兆8,958億円 (同+0.9%)

社会保障費    32兆9,732億円 (同+1.5%)

公共事業関係費  5兆9,789億円 (同+0.0%)

地方交付税交付金 15兆5,150億円 (同▲0.3%)

歳出

 一般会計総額  97兆7,128億円  (前年比+0.3%)

歳入

▲ 5

▲ 4

▲ 3

▲ 2

▲ 1

0

1

2

3

4

14/1 14/7 15/1 15/7 16/1 16/7 17/1 17/7

(前年比、%)他の加工業種 他の素材業種

電子機器・他の機械 エネルギー

化学・非鉄金属 飲食料品

国内企業物価

(年/月)

▲ 0.6

▲ 0.4

▲ 0.2

0.0

0.2

0.4

0.6

0.8

1.0

1.2

1.4

15/04 15/10 16/04 16/10 17/04 17/10

(前年比、%)

(年/月)

生鮮食品を

除く総合

生鮮食品及び

エネルギーを

除く総合

食料(酒類

を除く)及び

エネルギーを

除く総合

FY2015 FY2016 2017Q2 2017Q3 2017Q4 2017/08 2017/09 2017/10 2017/11 2017/12

公的需要 公共工事出来高 前期比、% ▲ 2.0 ▲ 4.5 9.4 ▲ 3.6 ▲ 2.8 ▲ 1.1 ▲ 0.7 ▲ 2.0 n.a. n.a.

公共工事請負金額 前期比、% ▲ 3.8 4.1 ▲ 2.3 ▲ 10.8 2.4 8.3 ▲ 2.7 ▲ 2.4 8.5 ▲ 4.4

税収 一般会計租税・印紙収入 兆円 - - - - - 4.6 3.2 3.6 7.6 n.a.

会計年度累計、兆円 56.3 55.5 - - - 13.6 16.8 20.4 28.1 n.a.

同・前年比、% 4.3 ▲ 1.5 - - - 5.8 5.4 5.0 5.1 n.a.

対外交易環境 対外交易条件 前年比、% 14.1 3.9 ▲ 6.4 ▲ 3.6 ▲ 4.2 ▲ 3.6 ▲ 3.7 ▲ 5.0 ▲ 3.2 ▲ 4.4

輸出物価 前年比、% ▲ 1.3 ▲ 6.9 4.6 8.6 6.1 8.6 9.4 9.7 6.8 2.3

輸入物価 前年比、% ▲ 13.3 ▲ 10.6 11.6 12.6 10.8 12.6 13.6 15.4 10.3 7.1

国内企業物価 総平均 前年比、% ▲ 3.3 ▲ 2.3 2.1 2.9 3.4 2.9 3.1 3.4 3.6 3.1

企業向け 総平均 前年比、% 0.4 0.4 0.8 0.8 n.a. 0.8 0.9 0.8 0.8 n.a.

サービス価格 (消費増税の影響を除く) 前年比、% 0.4 0.4 0.7 0.8 n.a. 0.7 1.0 0.7 0.8 n.a.

国際運輸を除く 前年比、% 0.5 0.5 0.7 0.7 n.a. 0.7 0.8 0.7 0.7 n.a.

消費者物価 総合 前年比、% 0.2 ▲ 0.1 0.4 0.6 0.4 0.7 0.7 0.2 0.6 n.a.

生鮮食品を除く 前年比、% 0.0 ▲ 0.3 0.4 0.6 0.9 0.7 0.7 0.8 0.9 n.a.

生鮮食品及びエネルギーを除く 前年比、% 1.0 0.3 0.0 0.2 n.a. 0.2 0.2 0.2 0.3 n.a.

酒類を除く食料・エネルギーを除く 前年比、% 0.7 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.0 0.1 0.0 0.0 0.0 0.1 n.a.

都区部・総合 前年比、% 0.2 ▲ 0.2 0.0 0.4 0.4 0.5 0.5 ▲ 0.1 0.3 1.0

都区部・生鮮食品を除く 前年比、% 0.0 ▲ 0.4 0.0 0.4 0.7 0.4 0.5 0.6 0.6 0.8

10 みずほ日本経済情報(2018 年 1 月号)

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2018年 1月 18日 発行

[執筆担当]

市川雄介(総括)

03-3591-1289 [email protected]

有田賢太郎(政府・物価)

03-3591-1419 [email protected]

大野晴香(外需)

03-3591-1243 [email protected]

酒井才介(政府)

03-3591-1294 [email protected]

宮嶋貴之(インバウンド)

03-3591-1434 [email protected]

平良友祐(物価)

03-3591-1306 [email protected]

坂本明日香(企業)

03-3591-1435 [email protected]

田村優衣(家計)

03-3591-1416 [email protected]

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