国土研報告会&総合討論 「台風 18 号水害と国土の...

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国土研報告会&総合討論 「台風 18 号水害と の安全を考える」 2011 年の東日本大震災以来,まれに起こる巨大災害への国民的関心が高まっていますが, 一方,誰でも一生に一度は必ず経験する程度の大雨による水害から我々の身の安全を図る ことも重要です。今回は 2013 年台風 18 号による京都府南部の水害を事例として,また, 2012 年の同地域の集中豪雨災害を参考事例として,下記の調査報告とコメントを受け,市 民の目線から見た防災について総合討論をおこないました。 日時:2013 12 21 日(土) 13:0017:00 会場:京大楽友会館 報告,コメントのレジメ,および総合討論の概要 目次 中川 学:宇治水害と天ヶ瀬ダム放流の問題·························································· 2 紺谷吉弘:宇治川堤防破堤の機器の実態································································ 8 池田 碩:破堤寸前だった宇治川・桂川······························································· 18 藪田秀雄:宇治川洪水によって露呈した天ヶ瀬再開発事業の危険性 ··························· 22 開沼淳一:操作規則無視の天ヶ瀬ダム操作(非常事態を招いた水の抱え込みと放流) ··· 36 上野鉄男:台風 18 号による淀川水系の洪水の概要 ················································· 40 梅原 孝:コメント:9.16 台風 18 号水害について ················································· 47 奥西一夫:コメント:市民の生命を守るための予測情報について ······························ 51 総合討論の概要(コーディネーター:上野鉄男)··················································· 52

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国土研報告会&総合討論

「台風 18 号水害と国土の安全を考える」

2011 年の東日本大震災以来,まれに起こる巨大災害への国民的関心が高まっていますが,

一方,誰でも一生に一度は必ず経験する程度の大雨による水害から我々の身の安全を図る

ことも重要です。今回は 2013 年台風 18 号による京都府南部の水害を事例として,また,

2012 年の同地域の集中豪雨災害を参考事例として,下記の調査報告とコメントを受け,市

民の目線から見た防災について総合討論をおこないました。

日時:2013 年 12 月 21 日(土) 13:00~17:00

会場:京大楽友会館

報告,コメントのレジメ,および総合討論の概要

目次

中川 学:宇治水害と天ヶ瀬ダム放流の問題 ·························································· 2

紺谷吉弘:宇治川堤防破堤の機器の実態································································ 8

池田 碩:破堤寸前だった宇治川・桂川······························································· 18

藪田秀雄:宇治川洪水によって露呈した天ヶ瀬再開発事業の危険性 ··························· 22

開沼淳一:操作規則無視の天ヶ瀬ダム操作(非常事態を招いた水の抱え込みと放流) ··· 36

上野鉄男:台風 18 号による淀川水系の洪水の概要 ················································· 40

梅原 孝:コメント:9.16 台風 18 号水害について ················································· 47

奥西一夫:コメント:市民の生命を守るための予測情報について ······························ 51

総合討論の概要(コーディネーター:上野鉄男) ··················································· 52

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2013年台風18号水害報告会(宇治川・保津川&サッカースタジアム・由良川・大戸川)

2013年12月21日

国土問題研究会 中川 学

報告要旨

1.台風18号水害降雨の特徴

2.天ケ瀬ダムクレストゲート放流と沿川の浸水被害

3.亀岡盆地の浸水被害とサッカースタジアム計画の問題

4.大戸川水害と大戸川ダム効果

5.由良川沿川の地理的特徴と18号水害の概要

2013年 台風18号水害 降雨の特徴

死者・行方不明:9名(全国)*京都なし

床上・床下浸水家屋:約4500戸

台風18号水害 降雨の特徴

福知山市三和雨量

「高原状態」の降雨波形

(京都府hpより)

天ヶ瀬ダムクレストゲート(非常用洪水吐)からの緊急放流 天ヶ瀬ダムから放流量:1151トン

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宇治川宇治橋の水位状況宇治川の「月の輪」水防工法跡

月の輪実施個所以外のパイピング痕跡宇治川堤防パイピング箇所のボーリングコア

宇治川高水位のために内水被害に遭った三栖地域

伏見港公園テニスコート

宇治川高水位のために内水被害に遭った三栖地域

伏見港公園テニスコート

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台風18号水害 亀岡浸水状況 台風18号水害 亀岡浸水状況

山陰線亀岡駅水没 (苗村亀岡市会議員提供写真)

亀岡サッカースタジアム計画

(京都府hpより)

亀岡駅北地区区画整理予定地

亀岡サッカースタジアム盛土造成計画

(亀岡みらいつくり隊hpより)

台風18号水害 亀岡浸水状況

(苗村亀岡市会議員提供写真)

鶴見川遊水地に造られた横浜総合競技場

多目的遊水地完成後平成11年撮影(月刊「河川」より)

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鶴見川遊水地に造られた横浜総合競技場

河川から溢れた洪水を地下部分に貯留する概念図(国交賞作成パンフより)

ピロティ型式となっている横浜スタジアムの構造(国交賞作成パンフより)

(国交省hpより)

狭い谷底平野

由良川沿川の地理的特徴

由良川沿川の地理的特徴

連続堤防築堤不可

(国交省hpより)

由良川沿川の浸水状況

(国交省hpより)

台風18号福知山の浸水被害

嵩上げされた造成地へ移転後の戸田地区

台風18号福知山の浸水被害

浸水痕跡

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台風18号福知山の浸水被害

堤防未完成部分

台風18号福知山の浸水被害

中丹支援学校(福知山) 台風18号浸水痕跡

台風18号水害 水害史に残るワンカット

台風18号福知山の浸水被害 台風18号福知山の浸水被害

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台風18号滋賀県大戸川の浸水被害 台風18号滋賀県大戸川の浸水被害

台風18号滋賀県大戸川の浸水被害 台風18号滋賀県大戸川の浸水被害

台風18号滋賀県大戸川の浸水被害 台風18号滋賀県大戸川の浸水被害

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宇治川堤防破堤の危機の実態

紺谷 吉弘(国土問題研究会)

国土研報告会&総合討論

「台風18号水害と国土の安全を考える」2013年12月21日(土)13:00~17:00

会場:京都大学楽友会館

クレストゲート使用による1151トン/秒放流(撮影:中川学)

(7;30~10:30?)

左岸から見た京阪宇治駅

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莵道丸山樋門付近 丸山樋門背後の住宅地

丸山樋門背後は茶畑~京阪宇治駅まで浸水 畑から堤防を見る

2013年9月16日,菟道丸山地域の浸水太閤堤公園化計画が、古い住宅地を恒常的水害地に変えた!

2012年8月14日の浸水状況

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戦川河口付近9月17日 宇治川から泥水が戦川をさかのぼる戦川流域からの流入は宇治川増水以前

右岸での1つ目の月の輪工法 コンクリートタイル5枚目まで水位上昇

京滋バイパス下の水位を示すゴミ 農業用水のくみ上げ場(階段6段目まで)

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京滋バイパスから撮影 京滋バイパス左岸

堤防天端から1.1m下に水の噴き出し跡→堤防内部に「みずみち」がある

粘土分の多い層と礫主体の層との境界で水が噴き出した

吹き前公園の水の浸潤跡

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右岸での2つ目の月の輪工法 堤防内に亀裂とみずみち

右岸での3つ目の月の輪工法 アリの穴から砂が流れ出した跡

弥陀次郎川合流点 弥陀次郎川合流点より上流を望む

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天端から水面まで1.6m 弥陀次郎川の未改修部分宇治川最高水位時の流入量はわずかであった

桃山南団地付近の狭窄部・泥が堆積 46km地点

泥の汚れが波打っている(バックウォーター現象?)山科川合流点

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中野団地のパラペット・ずれや沈下がある 山科川の状況

堂の川から山科川へポンプ排水 京阪桃山南駅付近(水は濁っていない)

1160トン/秒放流時に流れは停滞した。桃山南団地付近の堤防壁面堆積物

コンクリートタイル3枚目(?)から採取

上から6番目

から植物片急増(流れの停止)

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山科川河口右岸の堆積物 泥の付着状況はバックウォータを示している

堤防漏水の3つのタイプ①堤防上部(積み増し部分)のみずみちからの漏水②堤防主部のみずみち(亀裂・生物作用による)からの漏水③パイピングによる漏水(岡本川と戦川)

1953年当時の巨椋池地形断面(増田富士雄リライト)槇島で5m以上、向島で7m以上河床低下が進行した

宇治川の河床低下 宇治川と桂川・鴨川はつながっている

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宇治川最高水位時の観月橋(池田碩撮影) 平常水位時の観月橋左岸(池田碩撮影)

右岸堤防の漏水(池田碩撮影) 住宅の石垣の間から水が噴き出した跡

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9月16日午前10時羽束師橋下流で氾濫

読売新聞9月17日(午前9時59分河村道浩氏撮影)

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2013.9.16 台風18号災害破堤寸前だった宇治川・桂川

調査報告 池田 碩

④緊急放流で1964年完成以来初めて実施した上段のクレストゲートからの放流(写真:国交省天ケ瀬ダム管理事務所)

平常時の天ヶ瀬ダム

月の輪工作業地:左後ろの建物はアル・プラザ

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月の輪工作業地49k地点:右後方の橋は京滋バイパス、緊急ボーリング作業中

宇治川最高水位時、観月橋上より下流の近鉄鉄橋を望む

手前のパイプは大阪ガスのガス管

通常水位時の宇治川: 同じ位置から下流を望む

最高水位に達した宇治川観月橋南側橋詰水面は石垣上面より1.1m

通常水位に戻った状態の宇治川観月橋南側橋詰(9月26日) 駐車場奥の土蔵の石垣の間,及び歩道下の石垣の間から水

が噴き出していた。 歩道の天端から水面まで1.1m,駐車場に面する堤防の石垣の高さは1.6m。

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堤防の石垣の間から水と共に砂が流れだした跡がある。水の噴き出した個所にはペ

ンキで印がつけられている。

鴨川堤防の左の曲線は旧堤防。現堤防と旧堤防の間の農地は水没し、広大な池になっている。

桂川の越流個所と鴨川の越流個所京都府河川課資料

堤防を越水し流下してきた激流によって裏側の一部が流出したのを土嚢で防いでいる

桂川の越流箇所11月31日、この日土嚢の撤去作業が行われていた。

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桂川の堤防越流箇所この堤防を越水した激流によって堤体裏側の一部が流出した。11月31日土嚢の撤去作業が行われた

桂 川

鴨 川

下鳥羽下鳥羽小学校

(避難場所)

読売新聞9月17日

9時59分撮影

鴨川堤防を越流し、道路に激流がはしる。

流木を引っかけた龍神橋と土嚢 鴨川堤防の越流箇所:土嚢が二重に積み上げられ、板が張られている。

鴨川堤防天端の新しいひび割れ。路面は傾き堤防斜面はふくらんでいるのを確認する。

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台風18号豪雨 天ヶ瀬ダム緊急放流

宇治川天ヶ瀬ダム(多目的ダム)は、9月16日午前8時40分、流入量が最大毎秒1,360m3の現行天ヶ瀬ダム

の想定内の洪水にもかかわらず、ダム水位が76.0m を超えたということで、緊急放流・防災操作によって最大毎

秒1,160m3(計画840m3)(クレストゲート190、コンジトゲート790、天ヶ瀬発電所180)の放流を実

施した。その結果宇治川ははん濫の危機が生じ、6万2千人の市民に避難指示が発令されるというかってない事態が

起こった。(1965年 9月17日毎秒1528m3、1972年 9月16日毎秒1281m3、1982年 7月31日毎秒1370m3の洪水が

天ヶ瀬ダムに流入したが、計画の840m3を超える放流をおこなっていない。)

今回、天ヶ瀬ダム緊急放流によって、3つの問題が明るみに出てきた。

1、ダムは洪水に対して一定の範囲内で効果を持つが、操作を間違えば人災ともいえる問題を引き起こす可能性があ

ること。

2、宇治川右岸堤防(京滋バイパス上下流)が浸透破堤の危機の直面したこと。天ヶ瀬ダム再開発による宇治川洪水

時毎秒1,140m3放流および琵琶湖後期放流対応時毎秒1,500m3放流計画に関して、宇治川堤防の安全性

に疑問を呈した私たちへの国土交通省の宇治川堤防安全説明が実際は安全ではないことを明らかにした。

3、最大毎秒1,160m3の緊急放流に伴い下流の宇治川の水位が急上昇し、各地点で計画高水位・危険水位を突破

し、宇治川はん濫の危機が生じたこと。

今回の事態を機に一部に天ヶ瀬ダム再開発を促進せよという声があるが、むしろこれを機に天ヶ瀬ダム再開発による

宇治川洪水時毎秒1,140m3放流および琵琶湖後期放流対応時毎秒1,500m3放流計画の危険性について考えた

い。

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Ⅱ 「淀川水系河川整備計画」 天ヶ瀬ダム再開発、塔の島地区改修

「淀川水系河川整備計画」

山科川合流点より上流の宇治川においては、

天ヶ瀬ダムを効果的に運用し宇治川及び淀川本川におい

て洪水を安全に流下させるとともに、

琵琶湖に貯留された洪水の速やかな放流を実現するため、

1,500m3/sの流下能力を目標に、塔の島地区における

河道整備及び天ケ瀬ダム再開発事業による天ケ瀬ダムの

放流能力の増強を行う。

これにより、宇治川においては、戦後最大の洪水である昭

和28年台風13号洪水を安全に流下させることが可能

となるとともに、

淀川水系全体の治水安全度の向上に効果のある大戸川ダ

ム、天ケ瀬ダム再開発と合わせ、その結果、降雨確率で概ね

1/150の洪水に対応できることとなる。

なお、塔の島地区については、優れた景観が形成されてい

ることに鑑み、学識経験者の助言を得て景観、自然環境の

保全や親水性の確保などの観点を重視した整備を実施す

る。

1)天ヶ瀬ダム再開発の概要 430億円

①天ヶ瀬ダム地点における計画高水流量毎秒2080m3

のうち、毎秒940m3の洪水調節を行う

(放流量1140m3)。琵琶湖の水位低下のために最大毎

秒1500m3の放流能力を確保する。

②京都府の水道用水を確保するために、天ヶ瀬ダムから

の取水量を毎秒0.3m3を0.9m3にする。

③発電能力の増大を図り、喜撰山発電所において最大出

力466,000kw の発電、天ヶ瀬発電所において最

大出力92,000kwの発電を行う。

④既設天ヶ瀬ダムの放流能力について、制限水位

(E.L.+72.0m)における放流能力最大毎秒900m3から、

発電最低水位(E.L.+67.1m)において最大毎秒150

0m3に増強するため、左岸部にトンネル式放流施設(放

流能力最大毎秒600m3)を設ける。 ・宇治川洪水時:流入量毎秒2,080m3、

放流量毎秒1,140m3。(洪水調節940m3)

(二次調節:枚方流量をはん濫危険水位(毎秒10,700m3)以内

とするために、天ヶ瀬ダム流入のピーク確認後、枚方流量毎

秒8,000m3以上となる時点から二次調節を開始。

二次調節放流量毎秒400m3。)

・琵琶湖後期放流対応時:流入量毎秒1,500m3、

放流量毎秒1,500m3。

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2)現行天ケ瀬ダムの概要

(1)洪水調節

天ケ瀬ダム地点の計画高水量毎秒1,360m3

を毎秒840m3に調節して宇治川の氾濫を防

ぐ。さらに、下流淀川のピーク時には毎秒16

0m3に調節して下流域の洪水を防ぐ(二次調

節)。

(2)水道

宇治市、城陽市、八幡市、久御山町の3市1町

に供給する上水道用水として最大毎秒0.3m3

をダム湖より取水している。また、毎秒0.6

m3の水量について天ケ瀬ダム再開発事業を前

提とした暫定取水を行っている。

(3)発電

天ケ瀬ダム下流の天ケ瀬発電所は最大使用水

量毎秒186.14m3で最大発電力92,000kwの発電

を行い、また上流にある喜撰山発電所は天ケ瀬

ダム貯水池を下部調整池として最大使用水量

毎秒2488m3で最大466,000kWの発電を行っ

ている。 天ケ瀬ダムの現況施設能力は、制限水位(E.L.+72.0m)で毎秒約900

m3 であり、常時満水位(E.L.+78.5m)で非常用洪水吐を使う場合は毎

秒1,630m3。

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宇治川右岸堤防天端

台風18号

洪水水位

マーク(宇治

市)

堤防

コンクリートブロック貼り上端 コンクリ

ートブロ

ック貼り

上端

2013年11月2日宇治川調査 薮田

天ヶ瀬ダム再開発 宇治川治水計画は危険

宇治川右岸堤防 49.4km地点

計画高水位(H.W.L)O.P.=17.74m。

現況5313洪水時O.P.+16.34m。

整備計画後5313洪水時O.P.+16.83m。

整備計画後後期放流時O.P.+17.07m。

改修が進むほど洪水水位が上昇し、危険になる計画。

直轄河川重要個所箇所別調書

宇治川右岸49.4km地点

堤防高さは、O.P.+19.37m。

計画堤防余裕高 1.50m。

2013年9月台風18号洪水

今回の洪水水位はO.P.+ m。

堤防天端までの余裕が1m程度の危険な水位。

堤防のコンクリート貼りの上端をはるかに超えてい

る。

下流から京滋バイパス宇治川大橋方向

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2

宇治川右岸堤防

計画高水位マーク(宇治市)

O.P.17.9mとよめる

2013年9月16日 台風18号洪水水位

宇治川右岸堤防 菟道丸山第一樋管

宇治市マーク O.P.+18.2m とよめる

直轄河川重要個所箇所別調書

宇治川右岸50.0~50.6km区間の堤防高さは、O.P.+19.36m

計画堤防余裕高 1.50m

2013年9月台風18号洪水

洪水水位はO.P.+18.2m。

堤防天端までの余裕がわずか1、1mの危険な水位であった。

天ヶ瀬ダム再開発 宇治川治水計画は危険

宇治川右岸堤防 50.2km地点

計画高水位(H.W.L)O.P.=17.88m

現況5313洪水時O.P.+16.78m

整備計画後5313洪水時O.P.+17.37m

整備計画後後期放流時O.P.+17.60m

改修が進むほどに洪水水位が上昇し、危険になる計画であることを示

している。

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3

2013年9月16日

台風18号洪水水位マーク(宇治市)

O.P.18.2mとよめる

菟道丸山第二樋管

宇治川右岸堤防

計画高水位マーク(宇治市)

O.P.17.87mとよめる

菟道丸山第二樋管

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Ⅲ 計画高水位突破 宇治川はん濫の危機

主な地点 計画高水位(m)

(はん濫危険水位)

ピーク水位 (m)

計画高水位超過時間h

流量 (m3/s)

概要Ⅱ

既往最高水位 (m) 既往最高水位はDB登録データから検索されたもので、

観測開始以来の最高水位と異なる場合がある。

槇尾山 51.90k (3.60) 9/16 9:00 3.87 2005/7/19 3.35

宇治 50.50k 5.06 9/16 10:00 5.32

9:00~11:00 3h

1,400 2006/7/19 3.39 (昭和28 年台風13 号宇治橋水位3.23m)

*菟道丸山樋門 50.2k O.P.+17.88 O.P.+18.2

向島 44.90k 4.11

(3.50)

9/16 10:00 4.59

9:00~13:00 5h

1995/5/12 2.10

淀 38.90k 5.60 9/16 10:00 5.87

9:00~12:00 4h

1995/5/12 3.26

宇治三川 35.70k 9/16 11:00 7.02 1993/7/5 4.36

羽束師(桂川)42.30k 7.89 9/16 9:00 9.36 3,500

加茂(木津川)66.50k (6.00) 9/16 6:00 4.83 3,900

枚方 25.90k (5.50) 9/16 12:00 4.53 9,500

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2,天ヶ瀬ダム再開発 宇治川洪水時毎秒1,140m3放流の懸念

天ヶ瀬ダム再開発後の宇治川治水計画は、宇治川洪水時に天ヶ瀬ダムから毎秒1,140m3、

琵琶湖後期放流対応時に毎秒1,500m3放流を計画している。

宇治川洪水時の計画は、天ヶ瀬ダム放流量1,140m3、宇治発電所放流量60m3、残留域

からの流量を合わせて宇治地点流量1,420m3(山科川合流点直上流)である。

現在、宇治川宇治橋下流域はすでに毎秒1,500m3の流下能力のための河床掘削を終えて

いる。

今回の天ヶ瀬ダム緊急放流における最大毎秒1,160m3の放流は、計画通りなら計画高水

位以下で流下するはずであったが、結果は宇治川各地点で計画高水位を突破する事態が起こ

った。

その原因は台風18号の降雨が広範囲に強い雨であったことから三川合流部の水位が高く

なり(9月16日11:00 7.02m)、宇治川への逆流現象が起こったのではないか

ということである。

11月22日の淀川河川事務所の説明では逆流現象については未検証であるとの回答であ

った。

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桂川、宇治川、水津川の三大河川が、水津川は淀川と35.

8k地点で合流し、桂川が37.0k地点で合流している。

この三川合流部に三川から洪水がどの様な時間帯でどの

様な流量でもって到達するかということで三川合流部の

水位が決まってくる。三川合流部の水位の高さによって逆

流現象が発生し、各河川の水位を上昇させる現象がおこり

うる。「淀川水系における水理特性及び流出現象の検討に

関する報告書 近畿地方整備局河川部」によると、「昭和

28年台風13号洪水は、各支川流域において同時に強雨

があったため洪水のピークが重なり、木津川、桂川の稀に

みる大洪水がほぼ同時に合流したため、宇治川の水位も高

まり、向島、観月橋下流約2kmの左岸が約450m被堤した。」

「三川合流部では昭和47年及び昭和57年の洪水時に

水津川からの洪水が宇治川や桂川に逆流するという現象

が起こっており、流量観測においても宇治川の淀地点や桂

川の納所地点などで逆流現象が確認されている」と記して

いる。

今回の宇治川各地点で洪水が計画高水位を超えた事態は、

16日午前、宇治川を観た人が宇治川の流れが遅かったと

話していることを含めて、三川合流部の水位上昇によって

宇治川の流速が遅くなった、あるいは逆流現象が起こった

ことが原因として推測される。

天ヶ瀬ダム1,140m3放流が、淀川枚方に対する二次調

節を行うために天ヶ瀬ダムの洪水調節容量を有効活用す

るためのものであると考えた場合、枚方流量が8,000

m3 を超える事態は降雨が広範囲で強い雨というパターン

が想定され、その場合三川合流部の水位が高くなることが

考えられ、実際に二次調節は可能であるのか疑問である。

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大戸川

瀬田川洗堰

木津川 計画高水

流量 6200m3/s

枚方

①1040

③1500

①840 二次調節160

②1140 二次調節400 ②1420

③1500

②整備後 宇治川淀川洪水時

③整備後 琵琶湖後期放流対応 琵琶湖沿岸浸水被害対策?

天ヶ瀬ダム

天ヶ瀬ダム再開発事業

制限水位(E.L.+72.0m)900m3/s を

発電最水位(E.L.+67.1m)1500m3/s

に増強。

トンネル式放流設備を設ける。

毎秒 600m3(E.L..72.0m:整備計画)

③1500

②2080

①1360

③1500

枚方計画高水流量 12000m3/s はん濫危険水位 10700m3/s

ダム容量

2000万 m3

S28 台風 13 号1780m3 S28台風13号1780m3

塔の島

二次調節開始条件

天ヶ瀬ダム流入量のピーク確認

後 枚方流量 8000m3/s 以上

山科川

宇治川 計画高水

流量 1500m3/s

桂川 計画高水

流量 5200m3/s

5.1 琵琶湖・宇治川・淀川の洪水調節計画

①整備前 現況 S28年台風13号洪水 琵琶湖

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宇治川水位縦断図 別紙-587,588

志津川

白 川

宇治発電所放流口

宇治発電所余水吐

戦 川

弥陀次郎川山科川宇治川派流濠 川

東高瀬川

東 川

古 川

0.0

5.0

10.0

15.0

20.0

25.0

37.0k 38.0k 39.0k 40.0k 41.0k 42.0k 43.0k 44.0k 45.0k 46.0k 47.0k 48.0k 49.0k 50.0k 51.0k 52.0k 53.0k 距離標

標高(O.P.m)

現況 最深河床高 現況 平均河床高

現況堤防高 (左岸) 現況堤防高 (右岸)

現行計画 高水位 (現状河道5313洪水時)

(整備計画河道5313洪水時) (整備計画河道後期放流時)

整備計画後後期放流時水位昭和28年台風13号型洪水1.0倍水位(細:現況)昭和28年台風13号型洪水1.0倍水位(太:整備後)

42

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宇治川大橋付近

隠元橋付近

49.4K

47.6K

1m

10m

1m

10m

※現況断面形状:H13測量

HWL=17.44

HWL=17.74

O.P.+17.07m(整備計画後後期放流時)

O.P.+11.61m(現況平水位,整備計画後平水位)O.P.+11.48m(現況低水位,整備計画後低水位)

O.P.+9.58m(現況平水位,整備計画後平水位)O.P.+9.43m(現況低水位,整備計画後低水位)

O.P.+16.87m(整備計画後後期放流時)

整備計画河床

現況河床

O.P.+16.61m(整備計画後5313洪水時)

O.P.+16.83m(整備計画後5313洪水時)O.P.+16.34m(現況5313洪水時)

O.P.+16.18m(現況5313洪水時)

O.P.+7.92m

O.P.+9.15m

別紙-588,878,1100,1123,1125,1190,1200,1201,1212

2

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51.2K

HWL=18.54

1m

10m

1m

10m

51.0K+150 朝霧橋

HWL=18.42

※現況断面形状:H13測量

O.P.+18.52m(整備計画後後期放流時)

O.P.+15.58m(現況平水位)

O.P.+15.07m(整備計画後平水位)O.P.+15.48m(現況低水位)

O.P.+14.94m(整備計画後低水位)

O.P.+18.40m(整備計画後後期放流時)

O.P.+15.55m(現況平水位)

O.P.+14.95m(整備計画後平水位)O.P.+15.43m(現況低水位)

O.P.+14.82m(整備計画後低水位)

整備計画河床

現況河床

O.P.+18.23m(整備計画後5313洪水時)

O.P.+18.35m(整備計画後5313洪水時)

O.P.+18.30m(現況5313洪水時)

O.P.+18.33m(現況5313洪水時)

O.P.+13.52m

O.P.+13.99m

O.P.+13.82m

O.P.+13.94m

別紙-588,878,1100,1123,1125,1190,1200,1201,1212

7

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(国土研報告会) 2013.12.21. 開沼淳一

操作規則無視のダム操作~非常事態を招いた水の抱え込みと放流

1 天ヶ瀬ダムの建設経過と概要 ・ 昭和 28 年 9 月災害 宇治川左岸下流部で破堤 巨椋池が復活

淀川水系改修基本計画(昭和 29 年 12 月)…瀬田川洗堰、高山ダム、天ヶ瀬 ダムの 3 ダムを柱とする洪水調節計画

・日本最初の多目的ダム(昭和 32 年 3 月 特定多目的ダム法) しかし、天ヶ瀬ダム竣工の翌年(昭和 40 年)発刊の「天ヶ瀬ダム建設誌」

には「発電は洪水調節に支障を与えないように行うものとする」と記述 治水優先のダムとして位置づけ

<天ヶ瀬ダムの水位管理> サーチャージ水位…洪水時に

一時的に貯めることがで きる最高水位 78.5m

常時満水位…平常時(非洪水期) に利水目的のため貯めること が出来る最高の水位 洪水期制限水位…洪水期(6 月

16 日~10 月 15 日)に利水 目的のため貯める ことが出来る最高 水位 72.0m

発電最低水位…発電に利 用できる最低の水位 68.6m(天ヶ瀬ダム 再開発で 1.5m 下げ、 67.1m にする)

最低水位…堆砂面の高さ の水位 58.0m

☆ 非洪水期は常時満水位

78.5m と発電最低水位

68.6m の間の量が発電

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に使える

2 天ヶ瀬ダム操作規則とダム操作 <天ヶ瀬ダムにおける洪水調節時の操作規則から> ◎ 予備放流(15 条) 所長は、洪水期において、水位が予備放流水位(標高 58.0m)を超えている場合に、

洪水調節を行う必要が生ずると認めるときは、その時点での台風の位置及び予測雨量を

勘案し、水位を予備放流水位に低下させるため、毎秒 840 ㎥の水量を限度として、ダ

ムからの放流を行うものとする。ただし、気象、水象その他の状況により特に必要と認

めるときには、当該限度にかかわらず、下流に支障を与えない限度の流量を限度として、 ダムから放流を行うことができる ◎ 洪水調節(第 16 条) 所長は、洪水期においては、次の各号により洪水調節を行わなければならない。ただ

し、気象、水象その他の状況により特に必要があると認めるときは、このかぎりではな

い。 1 流入量が 840 ㎥/s 以上のとき(次に掲げるときは除く)毎秒 840 ㎥の水量を放 流すること 2 と 3 は 2 次調節の関係の規定 ○ 予備放流には第 1 次と第 2 次がある。

第 1 次予備放流:水位を 72.0m から 64.8m まで下げる 第 2 次予備放流:水位を 64.8m から 58.0m まで下げる

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○ 天ヶ瀬ダムの防災操作の効果について (平成 25 年 9 月)台風 18 号 の図から言えること

・ 台風 18 号豪雨に対して、予備放流は全く行われなかった。(第 15 条無視) ・ 洪水調節時の最大放流量とされている 840 ㎥/s を超える放流が 6 時間行われ、

最大の放流量は 1,160 ㎥/s で、840 ㎥/s を約 300 ㎥/s 超えた。(第 16 条無視) ・ 840 ㎥/s を超えて流された水量は約 400 万㎥となる。(6 時間×3,600 秒×300

㎥/s×約 2/3=432 万㎥)その量は発電に使用される水量に相当する。(洪水期

制限水位 72.0m と発電最低水位 68.6m の間の水量)。第 1 次予備放流をするだ

けで、操作規則第 16 条の規定の放流量は守れた。 ・ ダムの効果としてダムに貯めた水量約 790 万㎥と記述されているが、その量は

空き容量(洪水期制限水位とサーチャージ水位との間の容量[968 万㎥])で対応

できる量。

○ 従来のダム操作 ・ 予備放流に関すること

ダム諸量基本データベースより(http://www2.river.go.jp/dam/base) 平成 5 年~18 年のデータをチェック

① 水位 63.26m(h6.9.29) ② 水位 64.82m (h9.6.20) ③ 水位 61.90m(h9.7.26) ④ 水位 58.35m (h10.9.22) ⑤ 水位 62.63m(h10.10.17) ⑥ 水位 64.41m (h11.6.9) ⑦ 水位 67.68m (h16.10.21)

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発電最低水位 68.6m よりも水位を下げたのが 7 回ある 予備放流はされていた

・ 洪水調節時の放流量に関すること 最大放流量は 840 ㎥/s 未満の流量

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- 1 -

台風 18 号による淀川水系の洪水の概要 上野 鉄男

1.淀川水系の洪水位の時間的変化

図 1 宇治川・淀川の洪水位の時間変化(矢印は水位のピークを示す)

図 2 木津川・淀川の洪水位の時間変化(矢印は水位のピークを示す)

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- 2 -

図 3 桂川・淀川の洪水位の時間変化(矢印は水位のピークを示す)

・以上の図において、各地点の洪水波形から判断すると、宇治川と桂川の洪水のピークは 11時ころにほぼ同時に合流点に到達したと考えられる。

・木津川の洪水のピークは、宇治川と桂川の洪水のピークよりも 1 時間程度早く合流点に到達

したと考えられる(後で説明する)。 ・全体としてみれば、淀川の3つの支流の洪水のピークがほぼ同時に合流点に到達したと考え

てもよい。 このため、三川合流点の上下流の水位が異常に高くなったと考えられる。 とりわけ、河道勾配が小さい宇治川はこの背水の影響を受けて水位が異常に高くなった。 また、木津川の八幡の水位は三川合流点の水位ピークの影響で、木津川独自の洪水によるピ

ークよりも約 1 時間遅れてピークが発生したと考えられる(後で説明する)。 ・桂川の洪水流量が最も多く、次いで宇治川が多く、木津川の流量は相対的に小さかった。 ・後述するダムによる洪水調節が上下流の洪水波形を変化させている。 宇治川の天ヶ瀬ダム:関ノ津と槇尾山の間 桂川の日吉ダム:井戸と新町の間 木津川の高山ダム:島ヶ原と有市の間 洪水波の伝搬を考慮すると、天ヶ瀬ダムの洪水調節の記録には疑問が感じられる。 また、ダムによる洪水調節の結果として、3つの支流の洪水のピークがほぼ同時に合流点に

到達したとすると、洪水調節に問題がないとは言えないことになる。 ダムによる洪水調節は、淀川水系全体の洪水を考慮して、総合的に統合管理するべきである。

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- 3 -

2.淀川水系下流部の各観測地点の最高水位

図 4 淀川下流部の各観測地点の最高水位

淀川水系下流部の各観測地点の最高水位の標高と河口からの距離の関係を図 4 に示した。 ・このデータを基にすると、桂川の桂までの水面勾配(1/1787)と木津川の祝園までの水面勾

配(1/1506)はほぼ同程度である。 一方、宇治川の宇治までの水面勾配は、小さく 1/6900 程度である。 ・宇治川の水面勾配が小さいことが、三川合流点の背水の影響を受けて、宇治川のかなり上流

まで水位が異常に高くなった原因である。 ・宇治川では、ピーク流量は計画高水流量よりかなり小さかったにもかかわらず、後述するよ

うに、洪水位が計画高水位を超える時間が宇治地点でも、向島、淀地点でも発生した。 ・木津川の祝園から三川合流点までの距離と桂川の天竜寺から三川合流点までの距離はほぼ同

じ 56km 程度である。 一方、洪水ピークの到達時間は前者の間では約 3 時間であるのに対して、後者の間では約 2

時間である。 したがって、洪水のピークは木津川の祝園から三川合流点まで約 2 時間で到達したが、三川

合流点の背水の影響を受けて、その約 1 時間後に三川合流点に近い木津川の八幡(2地点

間の距離は 2.2km)の洪水位がピークになったと考えられる。

宇治

保津峡

天竜寺

加茂

向島

祝園

羽束師

八幡

宇治川三川

枚方

福島

本川毛馬

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3.計画高水位前後の水位が発生した地点

表 1 各地点の水位から計画高水位を差し引いた高さ(m)

宇治川 淀川 桂川 木津川

時刻 宇治 向島 淀 高浜 天竜寺 桂 羽束師 納所 島ヶ原 八幡

0 -3.38 -6.26 -6.88 -7.14 -1.49 -2.11 -4.02 -4.93 -4.05 -7.78

1 -2.64 -4.87 -5.90 -6.25 -1.11 -1.69 -2.94 -3.88 -3.21 -7.18

2 -2.17 -3.83 -4.93 -5.46 -0.48 -1.20 -1.69 -2.89 -2.51 -6.47

3 -1.94 -3.24 -4.20 -4.79 -0.17 -0.81 -0.60 -1.83 -2.16 -5.81

4 -1.71 -2.59 -3.23 -4.11 0.16 -0.61 0.32 -0.87 -2.03 -5.06

5 -1.41 -1.78 -2.16 -3.31 0.41 -0.49 0.82 -0.29 -1.94 -4.06

6 -1.09 -1.18 -1.42 -2.63 0.53 -0.37 1.02 -0.01 -1.81 -3.08

7 -0.80 -0.69 -0.86 -1.97 0.65 -0.29 1.20 0.23 -1.73 -2.16

8 -0.27 -0.18 -0.36 -1.41 0.68 -0.25 1.38 0.56 -1.48 -1.48

9 0.14 0.27 0.07 -0.99 0.77 -0.28 1.47 0.82 -1.01 -1.07

10 0.26 0.48 0.27 -0.75 0.68 -0.37 1.42 0.89 -0.97 -0.88

11 0.00 0.42 0.26 -0.68 0.44 -0.48 1.24 0.81 -1.34 -0.86

12 -0.21 0.23 0.10 -0.74 0.10 -0.64 1.00 0.63 -1.89 -0.93

13 -0.37 0.02 -0.11 -0.88 -0.24 -0.85 0.65 0.34 -2.56 -1.11

14 -0.52 -0.19 -0.36 -1.08 -0.53 -1.05 0.25 0.04 -3.28 -1.30

15 -0.65 -0.41 -0.64 -1.30 -0.78 -1.23 -0.16 -0.31 -3.92 -1.54

16 -0.80 -0.63 -0.92 -1.54 -0.78 -1.28 -0.54 -0.63 -4.53 -1.77

17 -0.95 -0.83 -1.19 -1.80 -0.82 -1.31 -0.82 -0.92 -5.12 -2.05

18 -1.12 -1.06 -1.45 -2.04 -0.93 -1.37 -1.06 -1.17 -5.56 -2.36

19 -1.67 -1.43 -1.73 -2.27 -1.07 -1.45 -1.30 -1.43 -5.89 -2.67

計画高水位 5.06 4.11 5.60 6.41 2.50 5.06 7.89 5.50 9.10 6.41

・表 1 において、+の太字は計画高水位を超える水位が発生したことを示す。 一方、-の太字は計画高水位の 1m 下から計画高水位までの水位が発生したことを示す。 これらの発生は、堤防にとっては極めて危険な状況であることを意味する。 ・桂川では、天竜寺、羽束師、納所で長時間にわたって、計画高水位を超える水位が発生した。 とりわけ、羽束師では計画高水位を 1m 以上も超える水位が 6 時間も発生した。 ・宇治川ではピーク流量は計画高水流量よりかなり小さかったにもかかわらず、計画高水位を

超える水位が宇治地点で 2 時間以上、向島で 4 時間以上、淀で 3 時間以上も発生した。 ・木津川では、計画高水位を超える水位が発生しなかったが、島が原地点と八幡地点では計画

高水位の 1m 下から計画高水位までの水位が発生した。 ・淀川では、高浜地点で計画高水位の 1m 下から計画高水位までの水位が発生した。

その下流の枚方地点の最高水位は計画高水位よりかなり小さく、1.83m 低かった。 ・以上から、三川合流点付近の水位が異常に高く、その影響が上下流に広がったと言える。

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4.主要なダムの洪水調節効果

図 5 淀川水系のダムの位置図(国土交通省資料より)

図 6 天ヶ瀬ダムの操作と降雨量(国土交通省資料より)

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図 7 日吉ダムの操作と降雨量(国土交通省資料より)

図 8 高山ダムの操作と降雨量(国土交通省資料より)

・天ヶ瀬ダムの洪水調節では、洪水のピーク流量を 510m3/s 低減したという説明になってい

るが、洪水のピークを約 3 時間遅らせた結果、桂川の洪水とピークが重なったわけである

から、洪水調節の方法に問題があると言える。 大目に見ても、洪水の低減効果は、1360m3/s から 1160m3/s への 200m3/s にしかならず、

洪水調節をしなくとも、1360m3/s のピーク流量は桂川からの洪水ピークが到達する 3 時

間前に合流点に到達していたと考えられ、淀川水系全体にとっての天ヶ瀬ダムの洪水調節

効果は極めてわずかであると言える。 ・日吉ダムは、ダムの水位が低かったので、最大限の洪水調節を行うことができたと言える。

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・高山ダムの洪水調節では、放流量のピーク付近では、洪水調節量は極めてわずかであり、こ

の放流量のピークが、宇治川と桂川の洪水のピークが重なった 11 時より少し前に合流点

に到達したのである。 したがって、放流量のピークよりも数時間遅れた流入量のピーク付近で約 1120 m3/s を低減

したとしても淀川水系全体にとっては、小さな効果しかないと言える。図において、「約

1120 m3/s 低減」を強調していることは欺瞞である。

5.桂川流域の降雨について

京北(上流) 総雨量:313mm、1 時間雨量:38mm、24 時間雨量:286.5mm

園部(中流) 総雨量:311.5mm、1 時間雨量:34.5mm、24 時間雨量:285.0mm

長岡京(下流) 総雨量: mm、1 時間雨量:48mm、24 時間雨量:271.5mm

図 9 アメダス降水量時系列グラフ(京都地方気象台資料より)

桂川の洪水流量が最も多かったので、桂川流域の主要地点の降雨の状況を図 9 に示した。

・京北(上流)、園部(中流)、長岡京(下流)の 3 地点とも、総雨量が 300mm 前後、24時間雨量が 270~290mm、時間雨量が 30mm 以上の降雨があった。

・時間雨量に関しては、各地点とも 30mm 前後の降雨が 3~4 時間連続していた。 20mm 以上の降雨では、5~6 時間連続していた。

・上記の連続した比較的大きい降雨量が桂川の大きな洪水をもたらした。 ・3 地点とも、24 時間雨量が観測史上最大を記録した。 京 北 :286.5mm 過去の最大:230mm(1995 年)

園 部 :285.0mm 過去の最大:202mm(2004 年) 長岡京 :271.5mm 過去の最大:251mm(1983 年)

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2014/1/5

1

9.16台風18号水害について

台風18号水害を考える国土研報告会 2013年12月21日

宇治・防災を考える市民の会 梅原 孝

9.16災害で志津川左岸山が崩落

上の写真は、9月5日の現地

計画放流量超える天ヶ瀬ダム放流で被害?

宇治川左岸・市道山王仙郷谷線、天ヶ瀬ダム、計画放流量840㌧毎秒を超える1,150㌧放流等に よ り 生 活 道 路 冠 水通行止めに。

写真・16日午前7時33分頃

毎秒1150㌧放流で、下流被害 国土研 実態

解明へ 自主調査10月15日 嵐山、亀岡10月29日 大戸川、宇治川

宇治川 計画高水位(5.6m)を超えるなぜ超えたのか 「会」11⽉11⽇に9項⽬の質問書を淀川河川と淀川ダム統管に

提出質問1 緊急放流、予備放流、予備放流した場合の

シミュレーション結果について

回答:緊急放流(緊急防災操作)は強い降雨と

大きい流入量が継続しことにより、操作開始

水位76mを超過していたので実施した。

• 予備放流は降雨予測の結果、洪水調節が必要と認められなかったことから実施しなかった。 シミュレーションは費用、金がかかるのでやらない。 13.11.22淀川ダム回答

最大1160㌧、クレストゲート190㌧放流

質問2 計画放流量を上回る放流時におけるクレスト

ゲート、コンジットゲート、天ケ瀬発電所等の放流量は、

それぞれ幾らであったのか。

回答:最終値として最大放流量は,

9月16日8時40分で毎秒1160㌧。

内訳は クレストゲート190㌧、コンジットゲー

ト790㌧、天ケ瀬発電所180㌧

13.11.22淀川ダム回答

宇治地点で1300㌧流れた

質問3 宇治川の出水状況について

質問4 「向島水位観測所において計画高水位を超

過した」との報告を第1報でされているがそれぞれ

の地点の超過数量は

回答:宇治地点(宇治橋下流50m地点)で

1300㌧。 水位の暫定値は16日10時で

向島4.59m(4.11m)、淀5.87m(5.6m)、宇治

5.32m(5.06m)である(括弧内は計画水位)。

13.11.22淀川河川回答

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2014/1/5

2

洪水調節時の操作規則

質問5 操作規則では、「下流に支障を与えない限度の

流量を限度として、ダムから放流を行うことができる。」

とされているが・・・

回答:予備放流,洪水調節による水位の低下と

いう操作が行われている。操作時には、下流

に支障を与えない程度の流量で放流を行って

いる。

13.11.22淀川ダム回答

喜撰山ダム湖 ほぼ満水位状態

質問6 喜撰山ダム湖について15、16日の状況及

びどのように活用されたのか。

回答:喜撰山ダムは、16日の午前5時30分時

点で96%で、ほぼ満水位状態であった。

13.11.22淀川ダム回答

*9/28城南新報 淀川ダム統「降雨前のダム湖水位は68.7㍍で通常(72㍍)より低かった。これは喜撰山発電所の揚水後だったためで・・・」

バックウォーター、未検証

質問7 天ヶ瀬ダム下流域の被害状況、

質問8 宇治川の水位上昇の要因・バックウォーター

現象による影響、桂川・木津川の出水流量について

回答:桂川の羽束師地点で整備計画値3600㌧

に対して3500㌧、木津川加茂地点で3900㌧。

• バックウォーター効果については未検証。

13.11.22淀川河川回答

右岸堤防において月の輪工法

質問9 宇治川右岸堤防で月の輪工法が実施された

ことについて詳細な報告を願いたい。

回答:水防工法を4箇所で実施した。いずれも

右岸で、淀競馬場・京大防災研・京滋バイパ

ス上下流付近である。

・平成10年におこなった質問に対して、パイピング対

策は完了しているとの回答であったが?

回答:再度の確認のためにボーリングを行って

いる。 13.11.22淀川河川回答

11.22回答で明らかになったこと

① 操作規則に基づく「予備放流をしなかった」

② 洪水時にクレストゲート、天ケ瀬発電所の

活用が可能なこと

③ 喜撰山ダムの活用が不十分であった

④ 操作規則「下流に支障を与えない流量を放

流」を軽視して計画放流量を超えて放流した

⑤ 堤防に月の輪工法が実施されるなど、宇治

川堤防の脆弱性がより明確になった

① 操作規則に基づく「予備放流をしなかった」

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2014/1/5

3

水系名:淀川

観測日時 中河内 マキノ 吉槻 片山 彦根 沖ノ島 永源寺 野洲川 大河原 水口 堅田 甲賀 安曇川 蒲生 栃生 能登瀬

雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量 雨量

2013/9/15 1:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/15 2:00 0 0 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 1 32013/9/15 3:00 0 0 1 0 2 1 0 0 0 0 2 0 1 1 0 0 82013/9/15 4:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/15 5:00 0 1 0 0 1 1 2 2 7 3 1 3 0 2 1 1 252013/9/15 6:00 4 4 4 9 8 8 11 6 6 5 8 7 6 7 7 6 1062013/9/15 7:00 5 5 6 2 3 3 10 2 7 6 2 4 3 6 8 8 802013/9/15 8:00 6 4 1 2 1 1 2 3 1 3 0 2 1 3 4 4 382013/9/15 9:00 0 0 0 0 1 0 3 2 2 2 2 1 0 0 4 1 182013/9/15 10:00 0 0 1 0 0 0 4 1 3 0 0 1 0 1 3 1 152013/9/15 11:00 2 0 1 0 0 0 3 0 1 0 0 0 0 0 0 1 82013/9/15 12:00 0 0 0 0 0 0 1 2 3 1 0 3 0 0 0 0 102013/9/15 13:00 0 1 1 0 1 3 4 7 3 33 5 23 1 13 8 1 1042013/9/15 14:00 1 2 0 1 3 6 4 2 2 6 5 5 0 3 17 1 582013/9/15 15:00 8 3 0 4 3 0 1 2 0 1 2 3 1 0 9 5 422013/9/15 16:00 0 1 0 1 1 1 1 3 0 1 2 2 1 1 3 4 222013/9/15 17:00 1 0 0 0 0 0 0 4 0 1 3 3 0 0 3 2 172013/9/15 18:00 1 2 2 0 1 3 4 22 4 6 20 8 2 2 21 0 982013/9/15 19:00 3 3 3 4 4 7 9 10 14 21 9 22 4 17 19 2 1512013/9/15 20:00 6 7 13 5 6 13 20 20 14 6 13 8 13 8 17 4 1732013/9/15 21:00 14 5 6 11 2 15 13 21 14 8 12 10 6 6 16 4 1632013/9/15 22:00 5 8 1 2 2 17 20 13 21 5 8 9 7 3 30 7 1582013/9/15 23:00 11 11 5 5 6 15 34 26 38 11 14 16 6 11 26 17 2522013/9/15 24:00:00 8 14 14 6 11 22 47 38 41 11 25 15 5 10 34 25 326

12時間雨量 75 71 59 52 57 116 193 187 181 130 133 145 57 94 230 95

2013/9/16 1:00 11 14 16 3 6 12 58 16 23 7 22 12 2 5 32 25 2642013/9/16 2:00 5 16 11 2 6 16 48 20 22 11 20 11 6 7 37 22 2602013/9/16 3:00 15 14 17 10 11 25 61 25 34 6 15 9 14 8 44 25 3332013/9/16 4:00 19 20 14 13 8 17 46 21 21 6 13 10 16 9 43 21 2972013/9/16 5:00 9 12 14 11 19 16 53 18 34 34 12 13 17 30 34 24 3502013/9/16 6:00 15 15 17 11 21 15 41 7 41 55 7 18 15 44 37 27 3862013/9/16 7:00 22 24 17 15 14 20 36 5 41 9 7 4 13 10 18 23 2782013/9/16 8:00 13 17 14 9 12 11 17 2 25 7 1 2 4 10 8 14 1662013/9/16 9:00 5 3 5 2 4 2 11 8 8 3 1 2 2 3 7 6 722013/9/16 10:00 4 5 1 1 2 2 3 4 4 2 4 1 1 3 4 2 432013/9/16 11:00 1 4 0 1 0 0 3 1 3 0 1 0 0 0 6 0 202013/9/16 12:00 2 7 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 7 0 182013/9/16 13:00 5 6 2 3 1 0 2 0 0 0 0 0 0 0 1 1 212013/9/16 14:00 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12013/9/16 15:00 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 12013/9/16 16:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 17:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 18:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 19:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 20:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 21:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 22:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 23:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 24:00:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

12時間雨量 126 158 128 81 104 137 379 127 257 140 103 82 91 129 278 190

24時間雨量 201 229 187 133 161 253 572 314 438 270 236 227 148 223 508 285

観測日時 新町 桂 西別院南田原上池田 鎌倉 殿田 周山 雲ヶ畑 園部

2013/9/15 1:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

2013/9/15 2:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/15 3:00 2 4 3 4 4 1 3 0 3 32013/9/15 4:00 7 1 8 10 6 1 6 4 1 42013/9/15 5:00 3 2 2 2 2 1 3 0 2 52013/9/15 6:00 11 11 12 8 6 12 8 10 10 102013/9/15 7:00 5 3 1 1 0 8 10 11 7 22013/9/15 8:00 3 8 2 0 0 5 5 5 7 22013/9/15 9:00 1 0 1 0 0 1 2 1 1 32013/9/15 10:00 1 0 0 0 0 2 1 2 0 02013/9/15 11:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/15 12:00 1 0 3 1 0 0 0 0 0 12013/9/15 13:00 8 3 7 4 2 4 6 2 2 92013/9/15 14:00 4 0 4 5 4 2 5 2 1 52013/9/15 15:00 3 3 8 5 3 2 3 2 2 112013/9/15 16:00 6 4 9 6 4 5 5 7 3 72013/9/15 17:00 5 4 12 9 6 11 5 5 5 142013/9/15 18:00 7 5 10 8 4 18 11 12 6 132013/9/15 19:00 6 4 7 4 4 10 6 6 5 82013/9/15 20:00 7 8 9 7 5 9 8 11 9 82013/9/15 21:00 11 12 14 9 8 10 12 11 9 132013/9/15 22:00 10 18 14 18 14 12 10 13 11 132013/9/15 23:00 17 19 30 21 15 15 13 15 11 252013/9/15 24:00:00 25 22 30 20 19 24 27 23 16 332013/9/16 1:00 41 42 36 21 10 30 36 39 25 382013/9/16 2:00 24 27 31 19 12 40 26 35 25 232013/9/16 3:00 28 23 34 16 11 38 23 38 16 292013/9/16 4:00 20 28 27 11 13 29 15 29 17 252013/9/16 5:00 21 17 20 5 11 19 14 15 19 162013/9/16 6:00 15 7 21 7 15 19 14 10 29 172013/9/16 7:00 8 7 17 3 6 10 9 9 10 72013/9/16 8:00 3 10 3 2 4 9 4 5 9 42013/9/16 9:00 2 1 1 1 0 5 2 5 5 12013/9/16 10:00 0 1 0 0 0 3 1 1 1 12013/9/16 11:00 1 0 0 0 0 4 2 1 1 12013/9/16 12:00 0 0 0 0 0 1 0 1 1 02013/9/16 13:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 14:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 15:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 16:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 17:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 18:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 19:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 20:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 21:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 22:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 23:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 02013/9/16 24:00:00 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

306 294 376 227 188 360 295 330 269 351

水系名:淀川 桂川流域

② 洪水時にクレストゲート、天ケ瀬発電所の活用が可能なこと

クレストゲート

190㌧(680㌧)

コンジットゲート790㌧(840㌧)

天ケ瀬発電所

180㌧(180㌧)

9月16日1160㌧放流 (現行で1700㌧可能)

再開発?

• 天ケ瀬ダム 15日 580万㌧貯留

予備放流していれば約6m水位低下に

再開発後

洪水期 1140+601200㌧放流になる?

現在 840+60で900㌧

9.16 1150+60=1210

③ 喜撰山ダム・洪水前から満水位 活用が不十分であった

16日の午前5時30分

時点で96%、ほぼ満水位状態。13.11.22淀川ダム回答

総貯水量 722.7万㌧有効貯水量532.6万㌧

再開発後でなくても9.16では満水位に。

大量流入時に活用できていない

④ 操作規則「下流に支障を与えない放流」を軽視して超過放流

洪水調節時の操作規則「下流に支障を与えな

い限度の流量を限度として、ダムから放流を

行うことができる。」

回答:予備放流,洪水調節による水位の低下と

いう操作が行われている。操作時には、下流

に支障を与えない程度の流量で放流を行って

いる。ほんとうに支障がなかったのか要検証

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2014/1/5

4

⑤ 月の輪工法実施など、宇治川堤防の脆弱性がより明確になった

水が吹き出し、水防工法を淀競馬場・京大防災研・京滋バイパス上下流付近4箇所で実施

回答:再度の確認のためにボーリングを行っている。

13.11.22淀川河川回答

毎秒1160㌧放流で下流に被害観測所記号 観測所名 水系名 河川名

1368060475060 天ヶ瀬ダム 淀川 宇治川

抽出期間 2013 年 9 月 15 日~2013 年 9 月 17 日

Water Information System By MLIT 2002

左図 緑○部分が計画放流量を上回った期間

宇治市内の被害状況 ①• 9/17洛タイ報道 木幡池(14.3ha)が溢れ、木幡熊小路、五ヶ庄西川原、北ノ庄

266戸浸水被害。菟道丸山 徐々に水が濁りだし9時頃に膝あたりまで水位が

• 9/20洛タイ報道 宇治市議会報告 床上30軒、床下247軒 計277軒

• 池内光宏諸員(社会)は「京滋バイパス下流の右岸堤防から水の音が聞こえた。早急の堤防改修が必要ではないのか」とただした。島峯理事は「水の昔は市でも把握している。国交省も現場を確認しており、必要な対策を取っていく」とした。ただ、「今回、1200㌧近くの放流があったが、堤防に十分な強度はあったと思う」と認識を示した。

• 城南新報9/20報道 天ヶ瀬ダムの緊急放流に伴い、宇治橋付近で毎秒1200㌧

の流量があったことに関しては池内光宏議員(社会議員団)が「京滋バイパス下流の右岸で、土手の中から水の苦がしていた。堤防は大丈夫か。計画する1500

㌧放流は抜本的に見直すべき」と不安視。島峯理事は「水の苦は市も把握しており、国交省に現場を見てもらった。調査結果を踏まえ、必要な対策を申し入れる。十分な強度を求めていく」と理解を求めた。

• 城南新報10/8報道 市議会建設水道常任委員会7日災害 現地調査

「菟道丸山第2排水樋菅」 池内議員「写真を示して宇治川から逆流した」

宇治市「早めに閉めると内水排除できず、総合的な判断の中で午前10時頃に閉

鎖した」

宇治市内の被害状況 ②• 城南新報10/8報道 市議会建設水道常任委員会7日災害 現地調査

• 木幡池では容量を超過したため、仁良川の水を流し込めす、木幡熊小路や五ケ庄西川原の地域で住宅冠水被害が発生した。仁良川の水位は、通常ならばOP(大阪湾最低潮位)12・7㍍であるものが、15.2㍍と2・5㍍も上昇。委員らは水位の最高到達点を目視するとともに、流れ込む木幡池・南地を確認した。

• 城南新報10/24報道 宇治市総合計画審議会・建設都市整備専門部会(部会長

=塚口博司立命館大教授)が23日、市役所で開かれた。先月の宇治川氾濫危機を踏まえ、委員が「右岸堤防から水が噴き出していた。堤防強化を」と意見。市によると、国交省が現在調査中で、必要に応じて改修等がされるという。

• 10/29洛タイ報道 宮本繁夫委員(共産)は、台風18号災害における同地区の外

水(宇治川の水)の逆流を指摘。・古園維持課長は「可能性は否定できない。(樋門操作を)検証し、タイミングなどを検討したい」とした。また委員が内水をポンプアップで宇治川に排出する計画はないのか尋ねると、安田部長は「ポンプも手法のひとつとし、検討したい」とした。台風18号の際、音が鳴るなどの報告があった

京滋バイパス付近の宇治川右岸堤防について、宮本委員が「淀川水系河川整備計画の堤防強化箇所に位置づけられていたのか」と聞いた。島峯理事は「強化箇所ではない。現在、国交省が調査しており、その結果、必要となれば強化されると考える」と説明。今回の約1200㌧放流に対し、理事は改めて「一部で水が噴

くなどしたが、基本的に堤防の強度は保たれたと思う」と見解を示した。

滋賀・京都他の9.16被害状況

全壊 半壊 床上浸水 床下浸水 一部損壊 典拠

滋賀県 3 73 226 670 314 消防庁・第10報

京都府 2 4 1890 3489 15 消防庁・第10報

大阪府 10 180 10 消防庁・第10報

兵庫県 29 126 5 消防庁・第10報

奈良県 19 93 14 消防庁・第10報

和歌山県 3 18 77 182 237 消防庁・第10報

全壊 半壊 床上浸水 床下浸水 一部損壊 典拠

滋賀県 3 73 305 818 309 毎日・滋賀版9/11

近畿の中でも異常に多い、京都府の被害状況滋賀県被害で琵琶湖の水位上昇による被害数は?

予防対策

想定される悪化にどう備えるか

予防(よぼう)とは、想定される悪化に対して事前に備えておくこと。

「自然災害は止めることができないが、被害は対策により最小限度に食い止めることができる。」・・・・防災の基本的考え

★隠さない、ごまかさない、逃げない、うそをつかない の姿勢を行政が貫くことが最大の防災

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コメント:市民の生命を守るための予測情報について

奥西一夫

◎宇治市から市民への情報発令の経過(宇治市危機管理室に取材)

情報発信方法:登録メール(NTT ドコモのエリアメール)および広報車

(1)9 月 16 日午前 1 時 25 分 槇尾山地点での水位が 3.0 メートルに達し,淀川ダム統合管理事

務所(以下「統管」と略称)より「はん濫注意情報」が発表された。

(2)午前 5 時 30 分 槇尾山水位が午前 5 時頃に 3.5 メートルに達したことによる「はん濫警戒情

報」が統管から発表された。

(3)午前 6 時 30 分 天ヶ瀬ダムで計画規模を超える洪水時のダム放流を開始。その後継続して

ダムの構造調節がおこなわれた。

(4)午前 7 時 20 分 槇尾山水位が 3.6 メートル(はん濫危険水位)に達し,なお,今後の放流量

の増加による水位の上昇が見込まれたことなどから,洪水やはん濫の恐れが高まっていると判断

し,午前 7 時 50 分に避難指示を発令した。(山間地域への情報発令は割愛)

◎宇治市から市民への情報発信の問題点

・上記(1)(2)の時点で,その後の水位上昇に関する予測情報が宇治市にもたらされず,宇治

市でも予測をすることができなかった。そのため,法定の避難準備情報を発令するかどうかを判

断できなかった。この致命的ミスのため,避難指示が発令されても,多くの市民は避難を実行で

きなかった。

・上記(3)の時点で統管はこれまで宇治市に通知していた天ヶ瀬ダム放流量を通知せず,「計画

規模を超える放流」という定性的通知に切り替えた。宇治市ではインターネットでリアルタイム

公開されている天ヶ瀬ダム放流量を把握した。しかし放流量の時間変化は予測できなかった。

・上記(4)の時点で,今後の 高水位を予測することができなかったので,「洪水やはん濫の恐

れが高まっている」との予測の確実性が明らかでなかった。

◎予測情報の利用・活用について

・市民に避難準備や避難行動を的確に呼びかけるためには 3時間後の水象予測が適当と考えられる。

1 時間後の水象予測は確実性が高いが,呼びかけを頻繁に改訂しなければならない。3 時間後に

は概ね現在とは水象が変わっており,あらたな予測が必要となる。

・自然河川の水象予測には降水量の測定値と予測値を併用する(「集中時間」を考慮)。

・宇治川の場合は天ヶ瀬ダムの放流量の予測が決定的に重要であるが,統管に何を期待できるか?

・アメダス降水量と 3 時間スパンの降水量予測を気象庁の HP から入手し,3 時間スパンで天ヶ瀬

ダム流入量を予測し,天ヶ瀬ダムの操作に関する「読み」を織り込んで,天ヶ瀬ダム放流量の予

測をおこなう必要がある(統管は放流量予測を宇治市に伝えないとして)。

・3 時間スパンの降水量予測は,局地性降雨に対しても確実度が高い(気象庁と国交省が合同検証)。

3 時間スパンの水象予測はタンクモデル等の簡易な流出モデルで行うことができそうである。天

ヶ瀬ダムの操作を事前に「読む」ことはかなり難しい。 (終)

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国土研調査報告会(2013 年 12 月 21 日)における総合討論の要旨

上野(コーディネーター):総合討論を始める前に私からレジメ集の「台風 18 号による淀川水系の洪水の

概要」に沿ってコメントしたい(詳細はレジメにゆずる)。最初に宇治川,桂川,木津川に沿う各地点

の水位記録からピーク水位を追跡し,これら三川の洪水ピーク時刻が三川合流部でほぼ揃ってしまった

ことを明らかにした。次にピーク水位を上流から下流に繋げた断面図を見ると,宇治川では背水の影響

が起こりやすいことが分かる。また,計画高水位を超える水位が出現した時刻を各河川の各地点につい

て調べると,三川合流部での水位が異常に高く,その影響が上下流に拡がったと言える。桂川上流の日

吉ダムの洪水調節とくらべると天ヶ瀬ダムの操作の異常性がはっきり分かる。

中川:各地点の水位の値の意味は?

上野:各地点の水位標水位に適当なゼロレベルの変更を施して,グラフが重ならないようにしたものであ

る。したがって,水位の絶対値を正しく表していないが変化のようすは正しく表現されている。

上野:最初に宇治川を含めて淀川水系の洪水実態に関する討論をしたい。

小林:月の輪工法に関連して,岡本地区の人の話を聞いたが,彼は高校 3 年の時に見た昭和 28 年水害の時

の宇治川の流れは,最初はやはりゆっくりだったが,向島の下流で堤防がきれると,途端に流れが速く

なったと言っている。

志岐:ちょっと一般化して考えたい。津波にも恐い津波と恐くない津波がある。もうひとつの話は行政が

どこまで真剣かと言うことで,淀川水系の場合,その特性に合った治水をするということになっている

が,今の話によると三川合流部でピークが重なってしまった。それは悪気があってのことではないだろ

うが,誤りがあったのか,それとも大阪を守るためにはその方がよかったのかという問題がある。

奥西:11 月 22 日に淀川河川事務所へ行って,あらかじめ出しておいた質問への回答を貰ったが,今日の

報告で明らかになった問題点に関連する質問には回答なしであった。したがって,どういう意図で天ヶ

瀬ダムを操作したかについて,いろいろ臆測せざるを得ない。

池谷:私の経験から言うと,情報公開請求をすると良いと思う。裏付け調査をして執拗に請求すれば出さ

ざるを得なくなる。上野さんへの質問で,桂川流域の降雨量について,各雨量観測点の流出時間は?

上野:今の所調べていない。

池谷:流出時間を考えると,例えば京北町でこれだけの雨が降ってもこれだけの水位にはならないと思う。

梅原:私も同様の意見であるが,1 時間あたりの雨量を考えると,とてもそれだけの洪水流量になること

が理解できない。レジメ集の「9.16 台風 18 号水害について(梅原 孝)」に沿って説明する。タイトル

画面は山腹崩壊の写真。志津川の増水は昨年の水害時の 7 割程度であった(レジメでは省略)。志津川

から宇治市中心部に行く道路(天ヶ瀬ダム直下流)の冠水の状況,そして天ヶ瀬ダムの放流について。

国交省は我々の質問に答えないが,既に大量の雨が降っているのに予備放流をしなかったことは到底理

解できない。天ヶ瀬ダム再開発によって 1500 トン放流が可能になるとしているが,今回の洪水で,再開

発をしなくても 1500 トン放流が可能であることが分かった。また再開発計画の中で喜撰山ダムの治水活

用が謳われているが,今回それができるのにされなかった。その他,琵琶湖再開発の効果として,瀬田

川洗堰を全閉したが滋賀県の被害が少なかったことを指摘している。

薮田:危機的な状況があったのに宇治市を含めて行政の対応が非常に鈍感であった。下流の水位が低い時

に天ヶ瀬ダムから放流して洪水調節容量を回復することができたのに,逆に洪水をため込んでいる。何

を考えているのか分からない。結局そのツケが市民に回ってくる。

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志岐:防災対策はまず行政がおこなうことであるから,行政が何を考えて防災対策をおこなったかを知る

ことがまず大事である。行政の人がどういう発想をしているのかが分からないので,関係の方からでも

何か教えて頂きたい。次に,今何をすべきかを考えると,来年の雨期までに国交省に何をやらせるかと

いう問題がある。

池谷:上野さんの報告で雨量の話があったが,雨量は流域を単位にして考える必要がある。京都府全域と

か,必ずしも流域雨量に関係のない雨量指標で議論しても意味がない。

浜辺:志岐先生がいわれた問題について。私は国交省で道路と河川の事務をやってきたが,一口に言って

道路は利便性の追求,河川は安全性の追求だと言える。一方,組織面を考えると,具体的に仕事をする

出先機関は責任だけ持たされて権限がなく,忙しい。そこで地方整備局から末端現場に到る体制が問題

になる。今回の水害に関しては,天ヶ瀬再開発の問題も絡み,かなり大きい圧力がかかる中で問題が生

じたのではないか。私達は組合活動や研究活動を通じてそのような問題をなくする努力をしている。

志岐:先ほどの議論に戻るが,立場が違えば考え方が違う。また人が代われば考え方が変わる。小泉内閣

の時に住民の意見を聞かない方向に変わったようである。また,えてして民主的な団体は内部的な意見

の違いを前向きの力にすることができない傾向がある。

奥西:レジメ集に 2 つの文章を載せて貰っているが「コメント:市民の生命を守るための予測情報につい

て」に沿ってコメントする。今回の水害で宇治市は避難指示を出したが,避難準備情報を出していなか

ったので,大多数の市民は避難できなかった。宇治市は宇治川の現況をかなりタイムリーに把握できる

ようになったが,予測までは到っていない。避難指示は当然,はん濫が起こる前に出されるが,その時

に予測情報が全くないと,市民は避難の必要度や緊急度を判断できない。予測の第一である気象庁の降

水量予測は確度がかなり上がっていることを国交省でも確認している。予測された降水量を用い,流出

解析によって洪水量を予測計算する技術は確立している。問題はダム操作を第三者が予測できないこと

である。当事者に情報を求めるしかない。

加納:ダムは個別に設計されるが,ダム群を連携して操作することについてはどうなっているか?

奥西:そういうことに関する論文はたくさん出ているが,実務面ではかなり遅れているように思う。少な

くとも利根川や淀川についてはダム統合管理事務所というのがあって,互いに連携して操作するという

建前はある。

加納:操作規則ではどうなっているか?

奥西:詳しくは知らないが,例えば瀬田川の洗堰は,下流のダムで洪水調節をしている時は全閉するとい

う規則になっている。もっときめ細かい操作があり得ると思うが,そこまでは行っていないようである。

幸:阪神大震災の後の室崎さんの談話であるが,危機的な状況の中で個別に判断して行動や操作をするだ

けでは不十分で,あらかじめきちっとした手順を決めて組織的な対応をする必要性を述べている。

薮田:住民の危機感が希薄なことも問題だ。堤防が漏水しても安全だと言われれば安心している。実際に

漏水の現場を見せると市民の見方も変わる。専門家の知識を集めて学習会などをする必要がある。

上野:まだ議論は尽きないと思うが時間になった。今日の報告会ではいろんな人がそれぞれ調べたことを

持ち寄って議論したので,必ずしも系統立った議論はできなかったが,今後の調査研究の方向を考える

材料が出たように思う。今日の理事会でも重要なテーマについて議論を煮詰めるための研究会を立ち上

げることが確認されたが,ダム・池水問題の研究会を是非立ち上げて議論を進めて行きたい。