木村秋則 自然栽培実践塾 実践レポート NO.11 ·...

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木村秋則 自然栽培実践塾 実践レポート NO.11 NO.11 お米の腐敗実験を実施する パート1 4月6日から、お米の腐敗実験を実施してみました。その様子をレポートします。 1 腐敗実験とは 上の写真は木村興農社で腐敗実験したときの様子です。4つの条件の異なるお米を水 に入れて、しばらく置いたものです。一番右のお米は真っ黒になってよく見えなくなっ ていますが、慣行栽培のお米です。右から2番目は自然栽培を始めて1年目のもの、3 番目は2年目のもの。一番左が3年目のものです。水は左にいくほど透明度が高いです。 黒い水のものは「腐敗」していまして、匂いをかぐと臭いそうです。黄色い水のもの は「アルコール発酵」していまして、人間にとっては比較的無害な方向で反応が進んで います。 詳しい原因はまだ特定されていないそうですが、お米の中に少しでも残留する農薬、 化学肥料により、大気中のバクテリアの繁殖の違いとなって、このような目に見える差 となって現れると考えられています。 栽培方法によって、本当にこのような差が生じるのか? 自然栽培係も実験してみる 事にしました。

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木村秋則 自然栽培実践塾 実践レポート NO.11

NO.11 お米の腐敗実験を実施する パート1

4月6日から、お米の腐敗実験を実施してみました。その様子をレポートします。

1 腐敗実験とは

上の写真は木村興農社で腐敗実験したときの様子です。4つの条件の異なるお米を水

に入れて、しばらく置いたものです。一番右のお米は真っ黒になってよく見えなくなっ

ていますが、慣行栽培のお米です。右から2番目は自然栽培を始めて1年目のもの、3

番目は2年目のもの。一番左が3年目のものです。水は左にいくほど透明度が高いです。

黒い水のものは「腐敗」していまして、匂いをかぐと臭いそうです。黄色い水のもの

は「アルコール発酵」していまして、人間にとっては比較的無害な方向で反応が進んで

います。

詳しい原因はまだ特定されていないそうですが、お米の中に少しでも残留する農薬、

化学肥料により、大気中のバクテリアの繁殖の違いとなって、このような目に見える差

となって現れると考えられています。

栽培方法によって、本当にこのような差が生じるのか? 自然栽培係も実験してみる

事にしました。

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2 実験するお米について

お米は6種類の白米を比較する事にします。

内訳は、1.慣行栽培

(H22年産 石川県産 コシヒカリ)

一般的な農薬、化学肥料を使って作られているお米。H23年3月2

3日に精米し、販売形態で真空パックでない通気口のあるパッケージ

に入った白米を、実験当日開封し使用。

2.有機JAS A

(H22年産 有機JAS認証取得米 ミツヒカリ)

有機JAS認証をとったお米。店で小分けされ、ビニール袋に入って

いた玄米を、実験当日開封し精米して使用。

3.有機JAS 冬水田んぼ

(H22年産 有機JAS認証取得米 コシヒカリ)

有機JAS認証をとった、冬水田んぼを実施しているお米。H23年

3月21日に精米し、販売形態で真空パックでない通気口のあるパッ

ケージに入った白米を、実験当日開封し使用。

4.13年耕作放棄地栽培 無肥料 無農薬1年目

(H22年産 富山県産 てんたかく)

12年間耕作放棄地だった所に、無農薬、無肥料で耕作を始めて1年

目のお米。精米時期は不明の、開封済みの白米を使用。

5.自然栽培 岡山木村式1年目

(H22年産 岡山県産 アサヒ)

岡山県で自然栽培を始めて1年目のお米。精米時期は不明で、岡山県

より市販のビニール袋に入れて持ってきた白米を使用。

6.自然栽培3年以上

(H22年産 秋田県産 ササニシキ)

自然栽培を始めて3年以上経った田んぼで栽培されたお米。販売形態

で真空パックに入っていた玄米を、実験当日開封し精米して使用。

以上6種類を同時に試験し、比較します。

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3 実験方法

実験の方法を紹介します。

① お米をコップに入れる

お米を透明なガラスコップに入れます。

市では新品のガラスコップを使いました。

お米は一握り程度で十分ですが、市では 少

し多めに入れてあります。あまり少なすぎる

と、お米が黒ずんでいくのが判らない時があ

ります。

② コップに水を入れる

コップに水を入れます(水道水でOK

です)。お米がほんの少し隠れるくらいに

します。最初はお米が水分を吸収します

ので、水の量が安定するまで少しずつ継

ぎ足していきます。水が多すぎると、水

面に幕ができて腐敗が止まってしまいま

す。

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③ ラップで蓋をし、穴を開ける

ラップで蓋をし、穴を開けます。市で

は新品のちょっと厚めのビニールを使い

ました。割り箸などで2~3ヶ所穴を開

け、中が酸欠状態にならないようにしま

す。

④ 日当たりの良いところに置く

日当たりの良いところに放置し

ておいて、経過を観察します。夏

場は10日位、冬場は2~3週間

くらいで結果が出るそうです。

4月6日17時、実験開始です。

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4.実験中の変化の観察

2日目(4月7日)

2日目です。特に変化はないようです。

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3日目(4月8日)

3日目です。水が濁ってきました。濁り具合に差がつき始めています。「13年耕作放棄

地栽培 無肥料 無農薬1年目」と「自然栽培3年以上」の2つは、ほとんど濁りがみら

れません。

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4日目(4月9日)

4日目です。多少変化が出てきました。「有機JAS 冬水田んぼ」に多少黒いものが出

始めています。「慣行栽培」も、ほんの少し黒いものが出ています。「有機JAS A」と

「自然栽培 岡山木村式1年目」が濁りがハッキリ確認できます。残り二つは、さほど濁

りがありません。

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6日目(4月11日)

6日目の様子です。もうハッキリした差が付きはじめています。この日より上からの画像

を足しました。「有機JAS 冬水田んぼ」に黒いものがかなり出ています。「慣行栽培」

も黒いものが出ています。黄色く変色し濁っているのはどれも同じですが、「有機JAS

A」と「自然栽培 岡山木村式1年目」がほぼ互角で、濃い黄色です(「自然栽培 岡山木

村式1年目」が水蒸気で見にくくてすいません)。「13年耕作放棄地栽培 無肥料 無農

薬1年目」「自然栽培3年以上」は、それらより濁りがハッキリと少ないです。

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7日目(4月12日)

7日目です。6日目とほぼ同じなのですが、何故か「自然栽培3年以上」の濁りが少な

くなっています。不思議です。

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8日目(4月13日)

8日目です。水面に泡が目立ってきました。「有機JAS 冬水田んぼ」は6日目あたり

から泡が多いのですが、その他も目立ち始めています。「自然栽培3年以上」は水面に気泡

はほとんど見受けられません。

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9日目(4月14日)

前日とほぼ同じ様子です。この時点である程度の結果は出ている気もします。

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10日目(4月15日)

この日は14時の様子です。慣行栽培はコップを振ってしまったために、ちょっと水面

の様子が変わってしまいました。すいません。その他は大きな変化は無いようです。

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13日目(4月18日)移動後

水面の様子がすっかり変わってしまいました。実は4月16日と17日に自然栽培実践

塾があり、そこで実験を展示するために持ち運びをしたのです。水が揺れたせいでしょう

が、このような姿になってしまいました。横から見ると、お米の形が少しつぶれたような

形のものが見受けられますが、原因は運んだ事による振動のせいなのか、製品に由来する

のか、断定は出来ません。実験としては経過が判りにくくなってしまいましたが、とりあ

えずこのまま続けてみようと思います。

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5.ニオイはどうなったか?

13日後(4月18日)の時点のニオイを、全部確認してみました。あくまで個人的

な評価ですが、参考までに書いてみます。

1.慣行栽培

バナナの様なニオイがある。すっぱみのあるニオイもある。くもったような、抜け

の悪い臭いもある。アルコールのニオイはない。

2.有機JAS A

少しバナナの様なニオイがある。アルコールのニオイはない。

3.有機JAS 冬水田んぼ

バナナの様なニオイがある。くもったような、抜けの悪い臭いもある。アルコール

のニオイはない。

4.13年耕作放棄地栽培 無肥料 無農薬1年目

微々たる、くもったような、抜けの悪い臭いがある。アルコールのニオイが強くあ

る。

5.自然栽培 岡山木村式1年目

クサい臭いがある。少しバナナの様なニオイもある。アルコールのニオイもある。

6.自然栽培3年以上

バナナの様なニオイがある。アルコールのニオイもある。

大体こんな印象でした。「におい」は、主観的に「ハッキリと悪臭の系統」と思ったもの

は「臭い」と表記し、それ以外は「ニオイ」と表記しました。

思ったのは、アルコールのニオイがハッキリとするものと、そうではない物があるとい

う事です。これは判る違いだと感じました。無肥料のもの3つがアルコールのニオイがあ

り、他は僕の鼻では感じられませんでした。

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臭気そのものはかなり強いので、もう室内に置いておく事は出来ない感じです。そこで

ベランダに出して実験を続けることにしました。

このような感じです。水、風によるゴミなどは入らないように配慮したのですが、温

度条件は、室内とは変わってくる感じです。

続きはパート2でレポートいたします。