日本における NC 工作機械のデザインに関する変遷 · nh5000 森精機製作所...

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1 はじめに 11 研究の背景と目的 近年では,工作機械メーカー各社は,ユーザーからのニーズや最新技術を取り入れ,マシニ 2014年7月20日受理,NC 工作機械,マシニングセンタ,数値制御,工作機械業界,デザイン ** 九州大学大学院 ***郡山女子大学 日本における NC 工作機械のデザインに関する変遷 ――マシニングセンタを中心として(2)―― ** *** 1 はじめに 1 1 研究の背景と目的 1 2 研究の方法と対象 2 1980年代後期以降の機械工業デザイン賞にみる MC のデザインの変容 2 1 カラーリングへの注目(1980年代後期) 2 2「スプラッシュガード」から「スプラッシュカバー」への変化(1990年代前期) 2 3 5軸制御 MC と複合加工機の登場とデザイン(2000年代) 3 スプラッシュカバーの役割とデザイン 3 1 スプラッシュカバーの役割 3 2 スプラッシュカバーのデザイン 4 マシニングセンタの色彩傾向 4 1 色彩変化に対する調査方法 4 2 年代別の色彩調査結果 5 6 おわりに 43

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1 は じ め に

1―1 研究の背景と目的

近年では,工作機械メーカー各社は,ユーザーからのニーズや最新技術を取り入れ,マシニ

* 2014年7月20日受理,NC工作機械,マシニングセンタ,数値制御,工作機械業界,デザイン** 九州大学大学院***郡山女子大学

論 文

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷――マシニングセンタを中心として(2)――*

梅 本 良 作** 石 村 眞 一***

1 は じ め に1―1 研究の背景と目的1―2 研究の方法と対象2 1980年代後期以降の機械工業デザイン賞にみる MCのデザインの変容2―1 カラーリングへの注目(1980年代後期)2―2 「スプラッシュガード」から「スプラッシュカバー」への変化(1990年代前期)2―3 5軸制御 MCと複合加工機の登場とデザイン(2000年代)3 スプラッシュカバーの役割とデザイン3―1 スプラッシュカバーの役割3―2 スプラッシュカバーのデザイン4 マシニングセンタの色彩傾向4―1 色彩変化に対する調査方法4―2 年代別の色彩調査結果5 考 察6 お わ り に

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ングセ(1)ンタ(Machining Center,以下,MC)の新機種を市場に投入しているが,その性能・機能

は拮抗している。そうした中で製品を差別化するため,MCの機械外観デザインを重視した新

機種が登場し,数機種が機械工業デザイ(2)ン賞に選定されている。

(3)前報では,MCの草創期から1985年までを範囲として,MCとデザインの関連について考察

した。1960年代の草創期では,技術的な課題の克服に主眼が置かれ,デザイン性を求めるまで

に至らなかった。その後1970年代後期からの普及期において,工場におけるファクトリーオー

トメー(4)

ション(Factory Automation,以下,FA)化の進展や機械加工の自動化,環境と安全性の

重視,さらに事務部門では,オフィスオートメーション(Office Automation,以下,OA)化によ

る色彩変化がみられ,これらが MCのデザインにも影響を与えたことを明らかにした。

1980年代後期には,働く場の快適性,人間と環境に優しい工場などのキーワードが注目され,

工場に設置された工作機械のデザインも,工場環境を明るくするアイテムとなる。

本報は,1980年代後期から2010年までの機械工業デザイン賞を受賞した MCをとりあげ,技

術変遷とデザインとの関連について考察することを目的とする。

1―2 研究の方法と対象

本研究は,文献史料調査やフィールド調査にもとづいて,MCの技術進展とデザインとの関

連を明らかにする。特にフィールド調査では,工作機械業界の技術動向や,ユーザーの利用環

境について考察する。対象期間は,我が国に製造業の FAが定着した1980年代後期から2010年

までとする。それぞれの調査の内容は以下の通りである。

(1)文献史料調査

・産業経済紙の『日刊工業新聞』

・工作機械関連の雑誌『月刊・生産財マーケティング』『機械技術』等に掲載された工作

機械に関する記事,広告

・工作機械メーカー発行のカタログ

(1) JIS B0105「工作機械―名称に関する用語」は,マシニングセンタを次のように定義している。「主として回転工具を使用し,工具の自動交換機能(タレット形を含む)を備え,工作物の取付け替えなしに,多種類の加工を行う数値制御工作機械。」

(2) 機械工業デザイン賞は,主として生産財を対象としたデザイン賞である。1970年にデザインの振興・発展を目的に,日刊工業新聞創刊55周年を記念して創設された。「審査委員会は関係省庁,大学,各工業団体の権威者で構成されています。審査は,製品の品質や安全性に力点が置かれていますが,合わせて性能向上や産業振興のために,新しい時代のデザインの在りようを明らかにしていくことが目的としています」(『第40回機械工業デザイン賞募集要項』2010年)。

(3) 梅本良作「日本における NC工作機械のデザインに関する変遷」『技術と文明』日本産業技術史学会,18巻1号,2013年,1~17頁。

(4) FAとは,工場の生産機能の構成要素である生産設備(製造,搬送,保管などに関わる設備)と生産行為(生産計画,生産管理を含む)とを,コンピュータを利用する情報処理システムの支援のもとに統合化した工場の総合的な自動化を行うことである(日本規格協会編『JISハンドブック14 産業オートメーションシステム』日本規格協会,2008年,166頁)。

技術と文明 19巻2号(120)

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(2)フィールド調査

・工作機械メーカー,デザイン事務所,板金サプライヤーへの聞き取り調査

(3)色彩に関する調査

・ハンディ型マンセル測定専(5)用器を用いた実機のマンセ

(6)ル値測定

2 1980年代後期以降の機械工業デザイン賞にみる MCのデザインの変容

機械工業デザイン賞の受賞製品は,年代を追うごとに NC工作(7)機械が目立ち,MCが複数台

選出される年度も散見される。本報の対象期間である1980年代後期からの受賞 MCには,外観

のデザイン変化だけでなく,新たな機種の登場も見られる。

MCは,生産現場で活用する機械であることから,一般消費者の目に触れることは稀である。

しかしながら,工作機械メーカーの立場からすると,MCは自動車などの大型消費財と開発プ

ロセスが同様と捉えられている。ゆえに MCは,開発の段階からデザイン手法を導入する傾向

が高まったといえる。1980年代後期以降では,MCの外観イメージの変化にその商品価値とし

ての向上効果が看取される。表―1は,1988年から2010年までの間で機械工業デザイン賞に選

出された MCの一覧である。

2―1 カラーリングへの注目(1980年代後期)

1980年代後期は,内需中心の景気拡大がはじまり,それまでの産業機械分野の機械部品加工

から,OA機器関連の需要急増によりユーザーの範囲が広がっていった。生産部門では,MC

の増設により,さらに FA化が進み,工場内は,清潔な環境に変わった。メーカーは,開発した

MCの機体に明るいカラーリングを採用し始め,機械加工現場のイメージアップにつながった。

1988(昭和63)年の受賞機であるヤマザキマザックの AJV60/120立て形 MC(図―1)の塗装

色は,ブルーとホワイトのツートンカラーを採用し,明るい高精度なイメージを表現している。

また,この機種は加工で発生する切屑や切削油が機外に飛散しないようにスプラッシュガード

を完全密閉構造とした。それは,大型MC機種での密閉型スプラッシュガードの先駆けとなった。

次に,1993(平成5)年に受賞した碌々産業の KX形立て形 MC(図―2)では,外観色に,

オフィス部門の OA機器のイメージを取り入れ,グレーとオフホワイトのツートンカラーを採

用している。選出されたこれら機種の共通点は,従来に比べてデザインを重視し,外部のデザ

(5) 使用した測定器は,日本電色工業株式会社製のハンディ型マンセル測定専用器(NR―11HVC)。(6) マンセル値は,マンセル表色系で使われる色相(Hue),明度(Value),彩度(Chroma)によって構成されている。それぞれの尺度値を色相(H),明度(V),彩度(C)の順に併記すると色を指定することができる。表記の例で7.5R4.5/15は,7.5Rがやや YR系(橙色)にかたよる R系(赤)の色相で,明度は中明度の4.5,彩度は最高彩度の15,あざやかな燃えるような赤である。

(7) NC(Numerically Controlled)工作機械とは,「工具と工作物との相対運動を,位置,速度などの数値情報によって制御し,加工にかかわる一連の動作をプログラムした指令によって実行する工作機械」である(日本規格協会編『JISハンドブック13 工作機械』日本規格協会,2009年,19頁)。

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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受賞年度

受賞年度

受賞年度

受賞回

受賞回

受賞回

機種名

機種名

機種名

機械メーカー

機械メーカー

機械メーカー

機械写真

機械写真

機械写真

MC分類

MC分類

MC分類

1988年(昭和63)第18回

AJV60/120

ヤマザキマザック

立て形

1989年(平成 1)

1990年(平成 2)

1993年(平成 5)

第19回 第20回 第23回

OSH-54

大鳥機工 静岡鐵工所 碌々産業

コンパクトミルCM-2000A・T・C KX形

横形

横形

立て形 複合 5軸立て形

立て形 立て形

1999年(平成11)

2000年(平成12)第30回第29回

HFN-C50H

ホーコス

MAM72-3VS

松浦機械製作所

5軸立て形 立て形 立て形

LX-1

松浦機械製作所

森精機製作所

Partner FM-303

森精機製作所

ヤマザキマザック

2001年(平成13)

2003年(平成15)

第31回

2002年(平成14)第32回 第33回

V.Max-800 NV5000 INTEGREX e-1060/8 Mytrunnion

松浦機械製作所 キタムラ機械

立て形

表―1 機械工業デザイン賞(第18回から第40回)MCの受賞機一覧

技術と文明 19巻2号(122)

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受賞年度

受賞年度

受賞年度

受賞回

受賞回

受賞回

機種名

機種名

機種名

機械メーカー

機械メーカー

機械メーカー

機械写真

機械写真

機械写真

MC分類

MC分類

MC分類

NH5000

森精機製作所

横形

2005年(平成17)第35回

2004年(平成16)第34回

MU-400VA

オークマ 松浦機械製作所 森精機製作所

MAM72-63V PC2 NV1500DCG

5 軸立て形

立て形

5軸門形 複合 横形

5軸立て形 立て形

2006年(平成18)第36回

V99

牧野フライス製作所

CUBLEX-25

松浦機械製作所

複合 5軸立て形 5軸立て形

Vertex550-5X

三井精機工業

森精機製作所

DMU50

日本ディエムジー

ヤマザキマザック

2007年(平成19)第37回

VERSATECHV-140N

INTEGREXe-650H-SⅡNMV5000 DCG ULTY901

ヤマザキマザック ニイガタマシンテクノ

立て形

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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受賞年度

受賞年度

受賞年度

受賞回

受賞回

受賞回

機種名

機種名

機種名

機械メーカー

機械メーカー

機械メーカー

機械写真

機械写真

機械写真

MC分類

MC分類

MC分類

DMU80monoBLOCK

DMU40monoBLOCK

日本ディエムジー

5 軸立て形

2008年(平成20)第38回

INTEGREX i-150

ヤマザキマザック 松浦機械製作所森精機製作所

NMH10000 DCG H.Plus-300

複合

5軸立て形

5軸立て形

5軸横形 横型

2009年(平成21)第39回

2010年(平成22)第40回

日本ディエムジー 牧野フライス製作所

FB127

立て形 5軸立て形 5軸立て形

NMV8000 DCG

森精機製作所

森精機製作所

HYPER VARIAXIS630

ヤマザキマザック

NJ35-5AX DMU 80PduoBLOCK

ホーコス

立て形

出所:機械写真は,各機種のカタログによる

技術と文明 19巻2号(124)

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イン会社や機械設計,電機設計の各部門が密接に協力しながら開発を進めたことに(8)ある。

2―2 「スプラッシュガード」から「スプラッシュカバー」への変化(1990年代前期)

1990年代には,MCの外観デザインに大きな変化があらわれた。これまで(9)

ATCの機構は,

機体からはみ出していたが,スプラッシュガードによって覆い隠す構造となった。すなわちス

プラッシュガードは,切屑や切削油の飛散範囲だけでなく,機体全体を覆う大きさに拡大した。

事例として,エンシュウ製立て形 MCの400FAV(図―3)があげられる。この機種では,ス

プラッシュガードが全体を囲み,機械の正面側が大きく曲面に成形された特徴のある外観で

あった。正面カバーと一体感のある曲面扉には,加工状況を確認するための大きな窓が設置さ

れ,その位置と大きさにデザインを考慮したことが推測できる。

このように,機械全体を覆うスプラッシュガードは,安全性,機能性の目的に加えて MCの

イメージを作り出す重要な要素となり,スプラッシュカバーの呼称が,この時期から一般化し

たと言(10)える。

2―3 5軸制御MCと複合加工機の登場とデザイン(2000年代)

2000年代に入り,工作機械のユーザーの裾野が,航空機産業,情報機器分野に広がった背景

もあり,MCは付加価値の高い複雑形状の部品,あるいは,高精度な部品への対応が求められ

(8)「魅せる機能美」『日刊工業新聞』1988年8月2日。(9) ATC(Automatic Tool Changer)とは,工具を自動交換する装置でマシニングセンタが備える機能である(日本規格協会編『JISハンドブック13 工作機械』日本規格協会,2009年,83頁)。

(10) ヤマザキマザック株式会社開発設計事業部グループリーダー浅井英勝氏からの聞き取り調査(2013年3月7日)によると,スプラッシュカバーは附属品でなく MCの機体そのものであり,車のボデーと同様であるという。

図―1 立て形マシニングセンタ AJV60/120出所:ヤマザキマザック株式会社様より提供写真

図―2 立て形マシニングセンタ KX

出所:碌々産業株式会社様より提供写真

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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た。したがって,従来の同時3軸制御から5軸(11)制御による加工方法とその利点が注目された。

また,旋盤加工の機能も併せ持った複合加(12)工機も市場に登場し始めた。

2006(平成18)年に受賞した5機種のうち4機種は,5軸 MCや複合加工機が占めており,

ものづくりの市場にこれらの新機種が普及してきたと推測できる。なかでも,2010年の5軸制

御 MC受賞機,ヤマザキマザックの HYPER VARIAXIS630(図―4)は,デザイン性を重視し,

設計の初期段階より著名な工業デザイナー奥山清行が参画して開発された。

その成果についてヤマザキマザック企画部グループリーダー浅井英勝は,下記のように記述

している。

……従来の工作機械デザインの範疇を大きく越え,最先端モダン工業デザイン傾向に沿っ

た外観とした。一般的な工作機械にありがちな板材を組み合わせた箱型形状にとどまらず,

全体の面構成に流れや方向性を持たせ,ダイナミズムを感じさせるように配慮してある。

さらに,面構成を単純化することで,製造上のコスト削減にも貢献している。作業環境を

明るくするため,機械の外装は明るい白色を広範囲に採用した。ただし,切屑排出口付近

などの汚れがつきやすい部分は,逆に黒色を配した(13)……

(11) 5軸制御 MCでは,直線軸 X,Y,Z軸の同時3軸制御に,回転軸 A,B(または B,C)軸の2軸を付加して合計5軸を制御できる。つまり,工具を任意の方向から加工物に当てることが可能になり,段取り換えの不要,加工工数削減などの効果がある(東芝機械マシニングセンタ研究会『知りたいマシニングセンタ』ジャパンマシニスト社,1982年,31~34頁)。

(12) 複合加工機は,NC旋盤にミーリング機能を付加する設計思想で開発した工作機械であるが,ミーリングをベースとして旋削機能を付加した複合加工機や,ミーリングにレーザー加工を付加するなど,各社の固有技術を踏まえた複合加工機が続々と開発された(伊藤公一「5軸加工できる小型機開発進む」『月刊・生産財マーケティング』2008年10月号)。

図―3 立て形マシニングセンタ 400FAV図―4 5軸制御 MC HYPER VARIAXIS 630出所:エンシュウ株式会社様より提供写真出所:ヤマザキマザック株式会社様より提供写真

技術と文明 19巻2号(126)

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加工プロセス切屑切削油

スプラッシュカバー

機械(マシニングセンタ) インタフェース 人間(作業者)

ATC

情報

機械メーカーは,デザインを外部に依頼することがあるが,通常はその担当デザイナーを公

表していない。しかし,本機ではデザイナーを公表することにより MCのイメージアップを図

り,さらにデザインを通して商品価値を高めた MCとして注目された。

3 スプラッシュカバーの役割とデザイン

工作機械メーカー各社は,1980年代後期から MCのスプラッシュカバーを,オプション仕様

から標準装備に移行し始めた。ゆえに機械工業デザイン賞の受賞機種には,スプラッシュカバー

を備えた MCが選出されている。それらの MCの外観イメージは,立方体を基本とした面構成

で,機械全体を覆う造形が主流になったことがわかる。その背景には,スプラッシュカバーに

要求される機能の変化,そしてデザイン開発の導入があるといえる。

3―1 スプラッシュカバーの役割

作業者と MCを一つの枠組みで捉えると図―5のようになる。この図に示すとおりスプラッ

シュカバーには,3つの役割がある。

(1)安全の役割:切削工具が,被加工物や取り付治具に誤って衝突した際,作業者を保護する。

(2)環境の役割:切屑や切削油剤が機外に飛散することを防止する。

(13) 浅井英勝「工作機械のグッドデザイン」『日本機械学会誌』Vol.115,No.1119,2012年,20~22頁。

図―5 スプラッシュカバーの役割

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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(3)情報の役割:加工プロセス(生産の過程)の情報を提供する。

初期の MCでは,被加工物と切削工具の可動範囲を,板状のガードで囲むことにより工作機

械の安全基準に関する技術上の(14)指針に準拠していた。しかし,1980年代後期以降の MCは,切

削加工時に発生する騒音,切屑と切削油剤の飛散などの周囲環境への配慮を重視するように

なった。このような変化に対応するため,スプラッシュカバーには,機密性を確保した密閉型

の構造が取り入れられた。しかしながら,MCを操作する作業者は,カバーを介して,加工情

報を的確に把握しなければならない。それには,作業用窓の位置や大きさなどの仕様も設計の

重要な要素である。このように,スプラッシュカバーは,作業者と機械が接している面にあた

り,ヒューマン・マシン・インタフェースの役割を担うといえる。

3―2 スプラッシュカバーのデザイン

一方で,スプラッシュカバーのデザインは,イメージを作りだす MCの顔である。デザイナー

の意図を忠実に表現するためには,板金加工技術が重要な鍵となる。大形や,曲面形状にデザ

インされたスプラッシュカバーは,板金サプライヤーに依頼される。なぜなら,工作機械メー

カーは,自社内に MC本体全体を覆うほどのカバーを製作できる設備まで備えていないからで(15)ある。さらにスプラッシュカバーの製作には,精密板金の高度な技術が不可欠なことが理由で

ある。以下の二つの事例がそれを示している。

聞き取り調査により得られた事例のひとつ,板金サプライヤーの株式会社関東(16)精工は,工作

機械カバーのデザインの傾向について,「……工作機械業界では,エルゴノミクス(人間工学)

やエコロジー,ユニバーサルデザインの観点から,意匠性が高い R(17)形状のデザインが採用さ

れるようになってきている(18)……」と述べている。

MCは,機能と生産性重視から無機質な直線的デザインになりがちであるが,角張った部分

に R形状を採用することで,手足が触れても怪我をしない安心感を与えることができる。ま

た,曲面を取り入れた機械外観は,金属で構成された MCに親近感を与えることができる。

次の事例として,工作機械カバーを一貫生産しているオークマスチールテクノ株式(19)会社をあ

げる。ここでは同様にデザインの傾向について,「……外部のデザイン事務所の協力でデザイ

(14) 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき,工作機械の構造の安全基準に関する技術上の指針が公表されている。

(15) 株式会社ワカサ産業の取締役副社長野村光正氏からの聞き取り調査(2013年9月17日)による。(16) 株式会社関東精工は,牧野フライス,東芝機械など大手工作機械メーカーと取引し,3D設計から加工,組立までの一貫体制で製造している。

(17) R形状という表現は,業種や作業内容によって,形状のニュアンスが異なる。通常は,図面で半径値を指す場合に R記号を付加して寸法表示する。ここでは図面と違って,一平面で表現できない立体形状の大きな曲面形状を指している。

(18) 関東精工代表取締役会長増田秀次氏からの聞き取り調査(2012年10月19日)による。(19) オークマスチールテクノ株式会社は,工作機械メーカーオークマの100%子会社で,国内生産機用のスプラッシュカバーを全て生産・調達している。

技術と文明 19巻2号(128)

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スプラッシュカバーの設計工作機械メーカー

展開図面

板金設計工程設計 ブランク加工

板金サプライヤーのスプラッシュカバー製造工程

曲げ加工 仕上げ

塗装

組立

溶接

コーキング

3Dデータ3Dデータ支給の場合展開図面設計

定尺材料から,ネスティングされた展開図の部品を切り出す

ンを一新することにより,曲面を採用したデザインカバーが増えてきた(20)……」と述べている。

これらの事例からスプラッシュカバーは,デザイナーの意図を具現化する重要な構成部品で

あり,そのデザインは,MCの商品価値を高める要素となっていることがわかる。スプラッシュ

カバーの完成度には,精密板金加工の曲げ・溶接・コーキングの工程が,大きく影響する。さ

らに,製造工程の課題だけでなく,外観の質感向上や,塗装レスを目的としてステンレス材を部

分的に使用するなど,スプラッシュカバーのデザイン性はさらに重視される傾向がみてとれる。

図―6は,板金サプライヤーの受注から完成までの製造工程の一例である。機械メーカーか

ら受注したスプラッシュカバーの図面または,形状データを基にして板金設計から製造が行わ

れている。こうした板金サプライヤーの高い技術力によって,スプラッシュカバーの機密性と

デザイン性が実現されている。

4 マシニングセンタの色彩傾向

MCの機械工業デザイン賞の受賞機種を辿ると,その色彩の変容が特徴として挙げられる。

ここでは,市場に登場したMCメーカーの代表的機種を取り上げ,その色彩傾向を明らかにする。

工作機械の色彩は,汚れの目立たない塗装色をベースとして,ごく一部に安全を図る見地か

らの赤色指定,作業性向上や保全を容易にするための色使いがなされるというのが一般的で

あった。しかし明るい色を採用した MCの登場により,工作機械のイメージは大きく変化して

いる。

4―1 色彩変化に対する調査方法

MCの色彩の変遷を調査するにあたり,1986年から2010年までの期間に市場に投入された機

(20) オークマスチールテクノ株式会社取締役上村隆一氏からの聞き取り調査(2012年10月25日)による。

図―6 板金サプライヤーにおけるスプラッシュカバーの製造工程概略図出所:精密板金事業所3社の聞き取り調査により作成注:(1)ネスティングは,ブランク加工(外形抜き加工)する製品を材料に無駄なく配置すること。(2)コーキングは,溶接したカバーに生じる隙間に,耐熱性の目地材を充填して塞ぐ作業。

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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種を対象と(21)した。年代別に MCの塗装色を整理し,カラーマトリ

(22)クス上にのせるために色の測

定(以下測色)を行った。

工業製品の塗装では,マンセル値によって色指定するが,工作機械の塗装においても,従来か

らマンセル値が使用されている。調査では,物理測色と視感測色の2方法を下記のとおり行った。

物理測色方法は,機械を用いた測色である。実機の塗装色のマンセル値をハンディ型マンセ

ル測定専用器で調査した。しかし,経年変化による外観塗装色の退色や塗装面の劣化が発生し

ており,正確な測定値は得られなかったため,視感測色法により測色する方法をとった。

視感測色方法では,工作機械関連の雑誌『月刊・生産財マーケティング』『機械技術』およ

び,カタログから収集した MCのカラー写真をデータ化して,年代別に整理した。5年ごとに

まとめカラーマトリックス上にのせて,主観的評価による MCの色彩の変遷から,パターン化

を試みた。

4―2 年代別の色彩調査結果

カラーイメージマトリックスでは,年代別カラーリングから,色彩の変容が具体的に視覚化

できた。以下年代別の色彩傾向をまとめる。

1980年代後期の特徴として,白とブルーを主体としたツートンカラーを採用した機種が多く

みられた。それまで工作機械は,慣用色として汚れの目立たないグレー系や黄緑色が長期に使

用されていた。しかし,MCが普及して,FA化に進展したことにより,先進性のイメージを

出す目的から,明るい色彩が登場したと考えられる(図―7)。

1990年代前期には,メーカー各社は,他社との差別化や工場の環境改善の意識が高まったこ

とから,明るい色彩をより多く採用するようになったと考えられる(図―8)。また MCの多く

は,機体全体をスプラッシュカバーで覆う箱型形状になったことにより,平面の面積が多くな

る傾向がみられ,デザイン的にブルー系統のワンポイントカラーが使用された。ワンポイトカ

ラーは,主に作業窓が目立つような位置や,機体下部の構造とカバーとの区切りを意図して使

用された。

1990年代後期においては,生産性を重視して,主軸の回転数や送り速度の高速化が進み,技

術的に成熟段階を迎えた。注目された機種の一つである牧野フライス製 V55立て形 MCでは,

高精度で安定感のあるイメージを表現するために,基調色ダークブルーとホワイトのコントラ

ストの強い配色を採用していた。特にホワイトの開閉扉は,作業者に可動部であることをアピー

ルして,操作性を高める効果をもたらしている(図―9)。

2000年代前期に入ると,5軸制御の MCが市場に登場するようになった。外観的には,従来

(21) 対象とした機種は,発売開始年が調査期間内に該当した代表的な MCである。(22) 明度の基準軸である白―黒の垂直座標軸と,これに直交する,可視光線のスペクトルの両極にある赤―青を水平座標軸とする色彩のマトリクス(母型図)である(尾登誠一『色彩楽のすすめ』岩波書店,2004年,74~75頁)。

技術と文明 19巻2号(130)

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② ③④

⑤⑥⑦

⑧⑨

⑩⑪

White

Black

Red Blue

番号 機種名 メーカー①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪

MX-40HAFF510SH-40VC8-460FA45VK45-ⅡSV-40NX76SH-500V55M-H4B

オークマヤマザキマザック森精機製作所大阪機工豊田工機日立精機森精機製作所東芝機械森精機製作所牧野フライス製作所三菱重工業

①②

③④

⑤⑥

⑦⑧

⑨⑩⑪

White

Black

Red Blue

番号 機種名 メーカー①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫

FNC74-A20VMC40MV-55PCV60MAZATECH H-400AJV-60FV45MAZAK-V10PV6650VHF300MC-3VA

牧野フライス製作所エンシュウ森精機製作所大阪機工ヤマザキマザックヤマザキマザック豊田工機ヤマザキマザック豊田工機エンシュウ日立精機オークマ

① ② ③ ④

⑤ ⑥⑦

⑧⑨⑩⑪

⑫⑬

White

Black

Red Blue

番号 機種名 メーカー①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭

400FAVMC-800HVR-40ⅡBMC500MCH630ⅡKCV600JV5MC-40VA-HSB-5V410DMAZATECH H-400VT3APCV40ⅡJRV40A55

エンシュウオークマオークマ東芝機械大阪機工大阪機工豊田工機オークマ静岡鐵工所ヤマザキマザック三井精機工業大阪機工東芝機械牧野フライス製作所

図―9 1990年後期のイメージ

図―7 1980年後期のイメージ

図―8 1990年前期のイメージ

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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①② ③

④⑤ ⑥

⑨⑩

⑪⑫

White

Black

Red Blue

② ③

④⑤ ⑥⑦

⑨⑩⑪

⑬ ⑭ ⑮

White

Black

Red Blue

番号①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬

MD-650VB-SYMC325VM4ⅡMH5000NV5000MB-46VAPV4SFH63MPG8VP600FH550Sa51V22

オークマ安田工業大阪機工森精機製作所森精機製作所オークマ豊田工機豊田工機大阪機工大阪機工豊田工機牧野フライス製作所牧野フライス製作所

機種名 メーカー

番号 機種名 メーカー①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫⑬⑭⑮

VM600VM5ⅢFH450Se500HJE60GE590HeVARIAXIS-630HPX63Vertex550-5XMB-8000HVARIAXIS730-5XⅡMCC1513FB127NVD6000DCGHM800S

大阪機工大阪機工豊田工機豊田工機エンシュウエンシュウヤマザキマザック三井精機工業三井精機工業オークマヤマザキマザック牧野フライス製作所牧野フライス製作所森精機製作所大阪機工

の MCと目立った違いはないが,色彩で高精度,高級感,機能性と形態美の調和を表現してい

る。色彩の傾向は,ホワイト,グレー,ブラックによる無彩色系イメージへの移行がみられる

(図―10)。

2000年代後期では,各社が5軸制御機や複合加工機の新機種を投入した。色彩は,無彩色系

の配色が主流になった。作業者が普段触れる範囲は明るい(ホワイト)色を採用して,暗い(ブ

ラック)色は,普段使用しない装置や,切屑排出口周辺の汚れが付きやすい部分に採用するな

ど,デザインに配慮がされている(図―11)。

色彩イメージの大きな傾向としては,ブルーや一部オレンジなど明るい色のイメージから,

無彩色系の配色を取り入れた変化がわかる。特に2000年代に入り多く登場した新機種は,モノ

トーンを取り入れたデザインが主流となっていった。

図―10 2000年前期のイメージ

図―11 2000年後期のイメージ

技術と文明 19巻2号(132)

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5 考 察

MCのデザイン変遷では,三つの特徴を見出すことができた。一つは,スプラッシュカバー

の形態の変化である。当初の平面的な形態から曲面を取り入れた箱型カバーに進化した。これ

は,機械の可動範囲を覆うことにより,作業者の安全確保,そして MCの周囲に切削油剤を飛

散させない環境への配慮からである。また,スプラッシュカバーを製造する板金サプラヤーの

高い技術力が,機密性とデザイン性を合わせ持つことを可能にしたと考えられる。

二つ目の特徴としては,色彩の変遷である。工作機械の色彩は,グレーや黄緑系が慣用色で

あったが,MCの先進的なイメージを表現した明るい色使いが,1980年代後半から90年代にか

けて工作機械業界の主流となっていった。さらに2000年代に入り,多くの新機種が市場に登場

することで,各社は競合メーカーとの差別化を図る意味から,高精度,高品質そして高級感を

イメージさせるモノトーンの配色を採用するようになった。その背景には,各メーカーにおい

て,MCの技術面での差がほとんど見られなくなったことが考えられる。色彩の変化は,外観

デザインに影響を与え,MCに競争力を付与し,ブランド力を高める要因ともなったと考えら

れる。

三つ目の特徴としては,デザインが技術と作業者(人間)に密接に関わることになった点で

ある。MCは,当初,限られた熟練技能者だけが使いこなす工作機械であったが,コンピュー

タとの融合によって,未経験者でも同じように使用できる端末機に進化した。飛躍的なコン

ピュータ技術の進歩がそれを可能にしたが,操作する作業者と MCが接する部分のインタ

フェースの重要性は基本的には変わらない。作業者の身体的特徴,心理的特徴など種々の特性

を充分考慮してデザインすることで,操作性に優れた,快適な機械となる。さらには安全が確

保され,ミスを最小限にすることができる。このことからデザインは,人間と機械との調和を

図るための重要な手段になると考えられる。

これまで,MCは,生産効率と製品品質(加工物)の良し悪しに影響を及ぼすことから,性

能や精度などの技術開発に重点が置かれていた。そのため作業者が MCを操作する際の満足感,

快適性をふくむユーザビリティには,注意が向けられることが少なかった。しかし一方,自動

車や家電製品などの耐久消費財のデザインは,モノの形態を意図的に変化させることで,消費

者の気持ちを引き付け,市場を開拓していく方策として導入されてきた経緯が(23)ある。

このように生産財である工作機械においても,MCの機能的価値に加え,意味的(24)価値の象徴

といえるデザインにより,高い付加価値を創り出すことに変化していったと考えられる。

(23) 青木史郎,秋元淳「グッドデザイン賞の歴史と現状」『日本機械学会誌』Vol.115,No.1119,2012年,2~8頁。

(24) 意味的価値とは,顧客が商品に対して好みや感性など,主観的に意味づけすることによってうまれる価値である(延岡健太郎『価値づくり経営の論理』日本経済新聞出版社,2011年,138~183頁)。

日本における NC工作機械のデザインに関する変遷(梅本・石村)

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6 お わ り に

本論は,前報に続いて機械工業デザイン賞の受賞機を取り上げ,MCの技術の進展とデザイ

ン導入の関連性について考察した。

しかしながら大手の工作機械メーカーのなかには,MCに加えNC旋盤も主要な生産機種とし

ている企業があり,MCとNC旋盤のデザインの間には共通性がみられる。すなわち,NC旋盤に

ミーリング加工の機能を加えた複合加工機が登場し,技術の進展とともに機能の融合を可能にし

ている。ゆえにNC旋盤のデザインの変容についても,さらなる研究を行う必要があると考える。

また,今後デザイナーと開発者(設計者)との協調,そして,作業者(人間)と MC(機械)

の調和を目指したデザイン,とりわけ人間工学を加味されたデザインの重要性についても,調

査研究を重ねる必要性が見出された。

The Evolution of Numerically Controlled Machine Tool Design in Japan

With a Focus on the Machining Center(2)

by

Ryosaku UMEMOTO & Shin-ichi ISHIMURA

(Graduate School of Kyushu University / Koriyama Women’ s University)

This paper aims to examine the relationships between technical advances and designs of ma-

chining centers(MC)from the late1980s through2010.

During this period two major evolutions were witnessed in the MC manufacturing industry.

One is changes in color. Machine tools used to be conventionally painted gray. However, the

latter half of the 1980s saw machines painted in bright colors such as white or blue. In the

early2000s monochrome coating was popular, and late in the late 2000s the machine tool in-

dustry started standardizing their different color schemes of MCs.

The other evolution is changes in the shape of an MC splash cover. The splash cover was

originally supposed to secure safety of a worker and to prevent splash of cutting fluid and

scatter of machining swarf. But at the present day the splash cover is typically put over the

whole machine. Consequently, the design of a splash cover may affect the image of the MC to

a large degree.

These evolutions taken into account, the external design may well be found to be a signifi-

cant factor to enhance the marketability of an MC. Machining centers are representative ma-

chine tools of productive property. A good MC would need to be so designed that the operator

can work in harmony with it. The introduction of design methods from an ergonomic perspec-

tive is expected to achieve a breakthrough that may develop much further Japan’s machining

center manufacturing with already mature technologies.

技術と文明 19巻2号(134)

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