１（９）アブダビナショナルエキシビションセンター【産業振興施策調査】 １月 31日（金）

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（９）アブダビナショナルエキシビションセンター【産業振興施策調査】

◆調査日：令和２年１月 31日（金）

◆対応者：Ahmed Al Obaidli 氏（ＡＤＮＥＣ最高執行責任者）

Luis Soares 氏（ＡＤＮＥＣ営業部長）

※ＡＤＮＥＣ＝Abu Dhabi National Exhibitions Company

≪調査目的≫

アブダビナショナルエキシビションセンターは、およそ 73,000平方メー

トルの展示場と最大 6,000 人を収容可能な会議室等を備えた大規模コンベ

ンション施設である。

アブダビ国際空港から約 15分という立地にあり、年間 100 を超えるイベ

ントが開催されており、その経済効果は非常に大きなものとなっている。

本市においても、国際会議場と国際展示場を運営しており、ＭＩＣＥの

推進を図っているところであるが、国内間においても、国際間においても、

・マナラット・アル・サーディヤットでの調査後、ＵＡＥ最後の調査先である

アブダビナショナルエキシビションセンターへ向かった。

🚌

★ アブダビナショナルエキシビションセンター

ドバイ国際空港

◆

至 ドバイ ©OpenStreetMap contributors

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ＭＩＣＥの誘致競争は激化している。

そこで、アブダビナショナルエキシビジョンセンターにおけるＭＩＣＥ

誘致等の取り組みを調査することにより、本市における今後の産業振興施

策の参考とするものである。

はじめに、担当者から施設の概要や事業内容などについて説明を聴取した後、

展示場内の各施設の現場視察を行いながら、適宜、質疑応答を行った。その概要

は、以下のとおりである。

～展示会場の全体模型の前で～

＜Ahmed氏＞

左手に少し傾いている建物がありますが、これがキャピタルゲートと呼ばれ

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ているもので、ギネス世界記録に入っていて、約 18度傾いています。

奥に見えるのが展示会場ですが、その前にＶＩＰの方が座るスタンドがあり

ます。これは、1976 年に建設されたもので、その後、何回も増築され、今は展

示会場とつながっていて、別のイベントに使われています。

道路を挟んで反対側には、船着場がありますが、橋がかかっていて、エスカレ

ーターで上がっていただくと反対側まで行くことができます。

＜議員＞

展示場の外のスペースはどのように

して使うのですか。

＜Ahmed氏＞

スタンドは、政府とか軍隊、大統領が

来た時、大きなイベントが行われる時

にＶＩＰが座る場所になります。また、

展示会場がいっぱいになった時に、野

外にもテントをつくって、展示会場に

することもあります。

～会議室への移動中に～

＜Ahmed氏＞

1976年に建設されましたが、ご覧の

ように結構新しく見えるのは、何回も

改修工事が行われているからです。

こちらにレストランがありますが、

レストランの名前を見ていただくと、

「７６」と書いてあります。これは、

この建物がつくられた 1976 年に由来

しています。

～会議室において～

＜Ahmed氏＞

皆さん本日はお越しいただいてありがとうございます。こちらのＡＤＮＥＣ

は国営の会社であるということは、皆さんご存知だと思います。こちらのグルー

プにはいろいろな会社が入っています。今から、こちらで働いているルイスとい

う職員が説明をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

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＜Luis氏＞

まず自己紹介をさせていただき

たいと思います。私はルイス・フロ

ーレンスといいまして、営業のトッ

プマネージャーとして働いていま

す。まずは、いろいろな建物の内容

と展示会場の複合体に関して説明

させていただきます。

説明を始める前に、今皆さんが座

っていらっしゃる場所は、イノベー

ションラップと呼ばれていて、新し

いアイデアを出すための部屋とし

て特別に作られたもので、会議とか打ち合わせを行うために使われています。

ＡＤＮＥＣは、一つの会社ではなく、その会社の下に、展示会場やホテル、Ｖ

ＩＰのツアーの手配など、さまざまな会社があります。今お越しいただいている

展示会場のほかに、ここから１時間 30分くらいのところにあるアルアインとい

う都市に、もう一つの展示会場があります。また、ロンドンで一番大きな展示会

場であるエクセルロンドンもこのグループの中に入っています。私たちは、展示

会場を管理することだけではなくて、私たち自身で展示会の企画も行っていま

す。そのうちで一番大きなイベントは、食料品と食材関係の展示会です。

先ほどご案内させていただいた

とおり、グループの中にホテルが３

軒あります。まずは、ＡＮｄＡＺ（ア

ンダーズ）というホテルで、先ほど

ご説明した傾いた建物の中にあり

ます。もう一つは、ａｌｏｆｔ（ア

ロフト）と言う四つ星のホテルで、

アブダビとロンドンにそれぞれあ

ります。また、それだけではなく、

営業をする中でいろいろなサービ

スも大事だということが分かったので、展示会の宣伝や発表を行うためのＡＤ

ＮＥＣ ＳＥＲＶＩＣＥＳ（アドネックサービス）というメディア関係の会社や

Ｃａｐｉｔａｌ Ｈｏｓｐｉｔａｌｉｔｙ（キャピタルホスピタリティ）という

食事関係の会社もあります。

なぜアブダビという場所に、展示会場をつくって成功することができたのか

と言いますと、ちょうど世界の中心にあるからだと考えています。ここから長く

▲Luis 氏（左）と Ahmed 氏（右）

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ても５、６時間でいろいろなところまで、例えば、シンガポールやインド、ヨー

ロッパまで行くことができます。そして、ここから国際空港まで 15分しかかか

らないので、立地的にも良いと思っています。

展示会の出展者と来場者が宿泊

するために、展示会場の周辺にホテ

ルを建設する必要がありますが、こ

ちらの展示会場には、先ほどご案内

させていただいたとおり、いくつか

のホテルがあります。そして、アブ

ダビ市内には、三つ星から五つ星ま

で、いろいろなカテゴリーのホテル

が合計で 29000室以上あります。

ＡＤＮＥＣを選んでいただける理由についてですが、まずは、大きなイベント

を行う際に、使用できるスペースが非常に広いということがあります。また、空

港に近いというメリットもあり、いろいろな観光地も近くにあります。そして、

５年間に 11個の賞をいただいておりまして、展示会場として成功していると考

えています。

こちらの展示会場の設計に関しまして、アルファベットのＵの形をしています。

第１から第 12まで展示会場がありますが、すべてをつなぐことができます。そ

して、展示会場がいっぱいになった場合は、Ｕ型の中心にあるセントラルプラザ

を屋外展示会場として使用することができます。

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また、先ほど模型で見ていただいたスタンドの前にも広いスペースがあって、

展示会場の中がいっぱいになると、そのスペースも使用します。さらに、高速道

路を渡ったマリーナのところにもイベントスペースがあります。アブダビは 10

月から５月までが気候がいいので、その頃が展示会のシーズンとなっています。

ＩＣＣ ＡＢＵ ＤＨＡＢＩと

いうホールでは、最大で 6000 人

が座って会議を行うことができ

ます。このホールの放送システム

やオーディオシステムは日本製

となっています。このホールは、

天井までの高さが 13.5 メートル

あって、おそらくこの地域で最大

のものだと思っています。また、

広さも 8000 平米ぐらいあって、

いくつかの大きな会議を開催し

ています。昨年９月には、世界エネルギー会議を開催しましたが、２月にはアラ

ブの政治家たちのフォーラムを開催する予定となっています。

ちなみに、日本の会社も新商品の発表のために、私たちのホールをよく利用し

ていただいていますが、昨年の９月には、日産自動車が４ＷＤ車であるパトロー

ルの新型モデルの発表会をされていました。

これまで大きな展示会場やホールについて説明させていただきましたが、大

規模の展示会ばかりではありませんので、20人から 1000人まで座ることができ

るような小規模な部屋も用意されています。

＜議員＞

年間の稼働率はどれくらいです

か。また、展示会の出展者の誘致は

このグループで直接行っているの

でしょうか、あるいは、エージェン

トを使って行っているのでしょう

か。

＜Luis氏＞

ご存知だと思いますけれども、夏は暑くなるので、冬しか仕事ができません。

９月から４月までで 70％になっています。夏は全く展示会を行っていません。

また、展示会の誘致については、サードパーティーを使っている場合もあれば、

こちらのスタッフが直接行っているものもあります。

▲ＩＣＣ ＡＢＵ ＤＨＡＢＩ

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＜議員＞

基本的にはどちらのパターンが

多いのですか。

＜Luis氏＞

サードパーティーの方が多いで

す。サードパーティーについては、

年間で交代することもありますが、

大きなイベントに関しましては、５

年間の契約という場合もあります。

＜Ahmed氏＞

展示会については、現地のいろいろな会社に任せることもありますが、大きな

会議に関しては、アブダビ政府が直接海外に行って誘致を行っている場合があ

ります。

～会議室での説明後、施設内の見学中に～

＜Ahmed氏＞

こちらのスタンドは 1976 年に建設

されたもので、現在改修工事中です。

それでは、少し上からごらんいただ

きたいと思います。

ここまで上がっていただくと、こち

らからマリーナを全体的に見ることが

できます。

今は建設中ですけれども、首長や大

統領などのＶＩＰが来た場合には、じ

ゅうたんを敷いたりするので、雰囲気

が変わります。

さきほどご案内させていただいたよ

うに、マリーナまで行くための橋が左

手の方に見えています。もちろん中に

クーラーがついていて、エスカレータ

ーを使って反対側までスムーズに渡る

ことができます。

▲改修工事中のスタンド

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＜議員＞

セキュリティーは大丈夫ですか。対岸から狙われたりはしないのですか。

＜Ahmed氏＞

イベントがあるときもないときも、警察官が警備しています。

＜Ahmed氏＞

アブダビとアラブ首長国連邦の代

表者で、国の統一を成し遂げたシェ

イク・ザーイド・スルターン・アル・

ナヒヤーンの絵が飾られています。

その隣にあるのは、現大統領である

シェイク・ハリーファ・ビン・ザーイ

ド・アル・ナヒヤーンとドバイ首長で

あるシェイク・ムハンマド・アル・マ

クトゥームです。

「ＴＨＥ Ｌｉｎｋ」と書いてあるのは、古いスタンドと最近できた展示会場

をつなぐためにつくられたものであるということを意味しています。そして、私

たちの歴史と現代を結ぶという意味も込められています。

～キャピタルゲートの前で～

＜Luis氏＞

こちらの中には、美術館やブランド

品のお店が入っています。１階から 18

階までがオフィスで、18階から 33階

までがホテルになっています。五つ星

のホテルで 188部屋あります。

＜議員＞

なぜこのような傾いた建物を建て

ようと思ったのですか。

＜Luis氏＞

ランドマークになるような珍しい建物を設計者に依頼しました。遠くから見

ていただくと、つながって上り坂みたいに見えると思います。ギネス世界記録に

も登録されて、現在は観光地となっています。

▲キャピタルゲート （遠景から見ても傾いているのが分かる）

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≪所感・考察≫

アブダビナショナルエキジビションセンターは、国際展示場としての歴史は

古く、1976 年に建設されている。その後、さまざまな時代のニーズに合わせて

増築・改修が続けられ、現在は７万平方メートルを超えるイベントスペースや

6000席のホール等を有している。

この国際展示場は、国営会社の運営で行われているが、展示会場の運営業務だ

けではなく、いくつかのグループ企業を傘下に有しており、展示会の誘致、ホテ

ル経営、イベント企画、ツアーコーディネート、メディア広報関連、フードサー

▲アブダビナショナルエキシビジョンセンターの「ＴＨＥ Ｌｉｎｋ」において

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ビス等、総合的なサービスで魅力を高め、多くの展示会や国際会議の誘致に成功

している。

アブダビの展示場が成功をおさめている理由としては、まず、飛行機を利用す

れば、ヨーロッパやアジア諸国から５時間程度で来ることができるという「世界

の中心地」に位置しているという点が上げられる。

また、ベースとなる展示会場の周辺環境として重要なホテルに関して、市内に

29000 の客室があるが、その内訳は、五つ星ホテルが 45 棟で 12744 室、四つ星

ホテルが 37 棟で 8182 室、三つ星ホテルが 33 棟で 4720 室となっており、高級

ホテルが充実しているという点が上げられる。

ちなみに、本市には 35000室の客室があるが、ほとんどがビジネスホテルであ

り、五つ星ホテルはなく、四つ星ホテルが数棟あるのみという現状である。

さらに、国際空港から会場まで車で 15分という立地の良さや、近隣にさまざ

まな観光地がある点も大きな利点となっているとのことであった。

しかしながら、本市も高級ホテルさえ誘致できれば、環境面においてはアブダ

ビに決して負けることはないと感じた。リニア中央新幹線が開通すれば、東京ま

で 40分であり、大阪、京都、奈良、富士山、箱根、高山、金沢など、観光地へ

のアクセスも非常に利便性が高い。

東アジア市場が大きな可能性を秘めていることは周知の事実であり、世界中

の３分の１の人口が、飛行機でセントレアまで５時間から６時間程度で来るこ

とができる立地にあるということを考えれば、名古屋は国際都市として大きな

飛躍が可能な素晴らしい可能性を持っていると言える。

昨年、愛知県が空港島に約６万平方メートルの国際展示場を開設したところ

であるが、世界中のニーズを引き出すことができれば、本市でのＭＩＣＥ誘致も

十二分に可能性があると言える。

そのためには、名古屋市国際展示場の改修やホテル誘致、観光地との連携や掘

り起こしを積極的に行い、東京の一極集中を食い止めなければならないと感じ

た。

特に、今後数年間は、行政主導で土台づくりをする必要性があり、いわゆる箱

物だけではなく、世界に冠たる国際都市の構築に向け、国際的視点と知識と人脈

を持つ職員の育成にも力を注ぐべきであると強く感じたところである。

・アブダビナショナルエキシビションセンターでの調査を終え、ＵＡＥにおけ

るすべての調査は終了した。